説明

デュアルインターフェースICカードの製造方法、およびデュアルインターフェースICカード

【課題】カード基材と外部接続端子基板との接合が安定しており、かつデザイン性に優れたデュアルインターフェースICカードの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、順に、(1)ICチップをアンテナ回路を有するアンテナシート上に搭載してインレットとする工程、(2)インレットをカード基材中に埋設し積層体とする工程、(3)積層体にミリング加工にて、ISO/IEC7816−2に定める端子領域を回避した領域に開口を有するIC非実装外部接続端子基板を埋設しかつ嵌合するための、内側に積層体表面を上面とする凸部を有する凹部を形成する工程、(4)凹部の底面にアンテナ回路の第2の接続パターン群を露出させる工程、(5)開口を有するIC非実装外部接続端子基板を、開口が凸部と嵌合するかたちで凹部に埋設固定しかつ電気的に接続固定する工程からなる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つのICチップで接触及び非接触で外部と情報の授受を行うことができる、デュアルインターフェースICカードの製造方法、及びデュアルインターフェースICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接触ICカードと非接触ICカードの両機能を有する製品に対する要望が高まってきており、このカード用の両機能を有するICチップも開発され商品化されつつある。ここで、このICチップを使用したICカードにおける商品化の一つの形態として、アンテナシート上にICチップを実装し、非接触カード機能用としてアンテナシート上にはアンテナ回路(コイル)を配置し、接触カード機能用としてはISO/IEC7816−2に定める外部接続端子位置が保障できるIC非実装外部接続端子基板を設け、更にそのIC非実装外部接続端子基板に接続ランドを設けてアンテナシートと電気的に接続を行い、デュアルインターフェースICカードとする技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、デュアルインターフェースICカード(接触型非接触型共用ICカード)およびその製造方法が開示されている。ここでは、アンテナコイルとアンテナコイル接続端子が内部に埋設されたカード基体にアンテナコイル接続端子が露出するように切削し、さらにICモジュールを埋設できる深さに二段の凹部を設け、ICモジュールが実装された外部装置接続端子となる基板を当該凹部に嵌合して装着して、ICモジュール側アンテナコイル接合端子とカード基体がわのアンテナコイル接続端子とを電気的に接続し一体化している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された製造方法以外であっても、従来のデュアルインターフェースICカードでは、外部装置接続端子となる基板に直接ICチップが実装されているか、特許文献2に開示されているように、ICを実装していない外部装置接続端子となるタブ基板の裏面側の略中央部に対応するカード基体の位置に、ICチップが実装されている場合が多く、その場合にはICチップが隣接して実装されているため、基板自体に開口部を設けることは考えにくかった。また、ICモジュールを他の位置に設けた場合には、外部装置接続端子となるタブ基板とカード本体との平面的な接続の信頼性を高め、剥離やカード表面の反り変形等の不具合を抑制するための接着方法や接着材料の選択に苦労しているのが実態であった。
【0005】
一方、接触型ICカードもデュアルインターフェースICカードでも、外部接続端子の位置、サイズが前記ISO/IEC7816−2で規格化されており、外部接続端子のデザイン変更による他は差別化が難しかった。また、ICモジュールの形状は、ほぼ矩形であるとか楕円形であり、デザインとしてシンプルなものが多く、デザインに自由度の少ないものであった。
【特許文献1】特開2000−182017号公報
【特許文献2】特開2004−13855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決するものであり、その目的とするところは、カ
ード基材と外部接続端子基板との接合が安定しており、かつデザイン性に優れたデュアルインターフェースICカードの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、ICが実装されていない外部接続端子基板を備え、1チップで接触及び非接触インターフェース機能を有するデュアルICカードの製造方法において、少なくとも以下の工程を含み、かつこの工程順で製造することを特徴とするデュアルインターフェースICカードの製造方法である。
(1)接触型と非接触型の両機能を有するICチップを、アンテナ回路のICチップの接続ランドと対応する第1の接続パターン群と電気的に接続して、該アンテナ回路を有するアンテナシート上に搭載してインレットとする工程。
(2)前記インレットを、絶縁性のカード基材に挟みこみ熱プレスして、前記インレットを前記カード基材中に埋設し積層体とする工程。
(3)前記積層体にミリング(ザグリ)加工にて、ISO/IEC7816−2に定める端子領域を回避した領域に開口を有するIC非実装外部接続端子基板を埋設しかつ嵌合するための、内側に積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)を有する凹部を形成する工程。
(4)前記凹部の底面に、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと接続するための,アンテナ回路の第2の接続パターン群を露出させる工程。
(5)前記開口を有するIC非実装外部接続端子基板を、開口が前記凸部と嵌合するかたちで、接着剤等の接合手段により前記凹部に埋設固定すると同時に、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと対応するアンテナ回路の第2の接続パターン群を電気的に接続固定する工程。
【0008】
次に本発明の請求項2に係る発明は、前記開口を有するIC非実装外部接続端子基板の開口部に嵌合した、積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)に、メッキ、印刷等によるデザイン表示がされていることを特徴とする、請求項1に記載する製造方法で製造されたデュアルインターフェースICカードである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のデュアルインターフェースICカードの製造方法によれば、開口を有するIC非実装外部接続端子基板を、開口が凸部と嵌合するかたちで、接着剤等の接合手段によりミリング加工された凹部に埋設固定されるため、カード基材と外部接続端子基板との接合が従来の平面的接着に対して立体的となるため安定しており、カードの反りや温度変化に伴う伸縮によって外部接続端子基板の剥離等不具合が発生しにくく接合が安定したデュアルインターフェースICカードが得られる。
【0010】
また、本発明のデュアルインターフェースICカードによれば、開口を有するIC非実装外部接続端子基板の開口部に嵌合した、積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)に、印刷等によるデザイン表示をすることが可能であり、デザイン性に自由度を設けたICカードとすることができる。また、IC非実装外部接続端子基板はISO/IEC7816−2で規定した領域を除いた部分を切り取ることができる。このことから、外部接続端子基板自体の形状がデザインとなる。つまり、開口部の形状に意匠性を持たせて、通常金メッキ等の無地外観でもデザイン面の優位性を付与することができる。
【0011】
またさらに、本発明のデュアルインターフェースICカードによる外部接続端子基板中央部の開口部デザインは、接触型ICカードでは実現不可能である。接触型ICカードでは、端子基板中央裏面にはICチップが必ず実装されているため、基板中央をくり抜くことはできない。したがって、本発明のデザインを有するカードは一般的な接触型ICカードから差別化され、デュアルインターフェースICカードすなわち高機能ICカードであ
ることをアピールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のデュアルインターフェースICカードの製造方法を一実施形態に基づいて以下に説明する。
【0013】
図1は、本発明のデュアルインターフェースICカードの製造方法の一実施形態の工程で使用するインレットの構成を説明する概略図である。まず、1チップで接触型と非接触型の両機能を有するICチップ6を、図1(a)に示す様なアンテナシート1に設けられたアンテナ回路2のICチップの接続ランドと対応する第1の接続パターン群3と電気的に接続して、アンテナシート1上に搭載してインレット5とする。
【0014】
PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)あるいはPI(ポリイミド)からなる厚み15〜200μmの絶縁性フィルムに、厚み15〜50μmの銅箔あるいはアルミ箔を、接着層を介して貼り合わせた後に、エッチング法によりアンテナ回路パターンを配置・形成したアンテナシートを準備する。このアンテナシート1上のアンテナ回路2には、ICチップ6の接続ランド(パッド)と接続するための第1の接続パターン群3と、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと接続するための第2の接続パターン群4が備えてある。図1(b)の断面概略図に示すように、ICチップ6は、アンテナ回路の第1の接続パターン群とICチップの接続ランド(パッド)に設けられたバンプとの間に、異方性導電性接着シート(ACF)7を介在させてアンテナシート1にフェースダウンにて実装しインレット5とする。
【0015】
次に、インレット5を、絶縁性のカード基材8に挟みこみ、熱プレスして、インレットをカード基材中に埋設し厚み略0.8mmの積層体9とする。図2(a)は、本発明のデュアルインターフェースICカードの製造方法の一実施形態で熱プレス前の構成部材を断面で示す概略図、図2(b)は、熱プレス・ラミネート後の積層体を断面で示す概略図である。
【0016】
本発明のデュアルインターフェースICカードを構成する絶縁性のカード基材の一例は、図示しないが上部側から順に、第1の表面シートと第1のコアシートからなる絶縁性のカード基材、インレットを挟んで、第2のコアシートと第2の表面シートからなる絶縁性のカード基材となる。通常は、インレットを挟み込んだ第1及び第2のコアシートを、それぞれ多面付けでオフセット印刷またはスクリーン印刷を施した表裏の第1及び第2の表面シートでサンドイッチして熱プレスして積層体としカードベースとする。
【0017】
第1の表面シートは材質としてPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)が好ましく、最表層にリライト層を備える場合もある。第2の表面シートの材質は、カードのカールを避ける為に、第1の表面シートと同じ厚みのPETが好ましい。第1のコアシートは、電気絶縁性の熱可塑性樹脂シートが使用できる。一般には、硬質塩化ビニル(PVC)シートを使用するが、焼却時に有毒ガスを発生するPVCの代替として、非結晶性ポリエステル(例えば、イーストマン・ケミカル社製のEastsr PET−G:テレフタル酸、グリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体)等が好ましく使用できる。第2のコアシートの材質は、熱融着性から第1のコアシートと同じものを使用する。前述した構成で、熱プレス後のカードの総厚が0.68〜0.84mmとなるようにシートを積層する。なおここで、第1及び第2のコアシートは、ICチップ部の高さ、あるいは他の構成材料との関係で1層とすることに限定されず複数層としても良い。また、図示しないが表面シートとコアシートの熱融着性、接着性を助けるための接着性樹脂層の介在あるいは界面の処理に関しては特に限定されない。
【0018】
次に、前記積層体9をカードサイズに抜き加工する。その後、各カードにミリング(ザグリ)加工にて、ISO/IEC7816−2に定める端子領域を回避した領域に開口部(A)14を有するIC非実装外部接続端子基板13を埋設しかつ嵌合するための、内側に積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)11を有する凹部12を形成し、更に、図3に示すように、凹部12の底面に、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと接続するための,アンテナ回路の第2の接続パターン群を露出させる。
【0019】
本発明の製造法の一実施形態では、ICが実装されていない外部接続端子基板13として、片面基板を使用する。図4に、IC非実装外部接続端子基板13の概略図を示す。(a)は断面概略図、(b)は表面概略図である。片面基板は、ガラスエポキシ基材16の片面に銅箔をベースとしており、その表面にNi(ニッケル)メッキが1〜2μm、Au(金)メッキが0.2〜0.3μm施された導体で複数の外部接続端子17が形成されている。各外部端子に対応するガラスエポキシ基材の外部接続端子に対応する位置には、アンテナシートの第2の接続パターン群と電気的に接続を可能とするための開口部(B)15が設けられ、その開口部(B)15の底面の接続ランド21にもNiメッキ、Auメッキが施されている。本発明のポイントとして、この基板には図4(b)に示すように、ISO/IEC7816−2に規定する端子領域20を回避して、その端子領域を除いた部分を切り取ることで開口部(A)14が設けられている。開口部(A)は矩形、楕円形、あるいは特殊デザイン形状として例えば星型、矢印等々としてもよい。
【0020】
次に、IC非実装外部接続端子基板13の外周及び下面の所定の位置にはホットメルトシート等の熱溶融性接着剤19を仮止めし、アンテナシートの第2の接続パターン群4とIC非実装外部接続端子基板13の接続ランド21との接続要素はクリーム半田、あるいは銀系導電性樹脂等の導電性接着剤18を用いて、IC非実装外部接続端子基板をカードベースである積層体の所定の凹部に配置する。IC非実装外部接続端子基板の外部接続端子面より加圧・加熱して、導電性接着剤18であるクリーム半田を溶融あるいは銀系導電性樹脂を硬化させ、IC非実装外部接続端子基板に設けた接続ランド21とアンテナシートの第2の接続パターン群を電気的に接合すると共に、熱溶融性接着剤19が溶融接着して、図5の断面概略図に示すように、開口を有するIC非実装外部接続端子基板が、開口が凸部と嵌合するかたちで、凹部に埋設固定される。以上、説明した工程を経ることで、本発明のIC非実装外部接続端子基板を有するデュアルインターフェースICカードが製造される。
【0021】
各カードには従来と同様に、ホログラム、回折格子、等あるいはリライト機能の付与等様々なオプション加工が施される。またICの初期化とセキュリティ情報の設定や、必要なデータファイルの生成などの0次発行、1次発行が行われる。また、外部との情報のやり取りの機能や各種規格物性に基づいた検査が実施されて使用可能な状態となる。さらに、以上のようにして作製された小切れのカードは、梱包され、輸送され、顧客側に出荷される。最終的には、カードの仕様に応じた発行機を用いて2次発行(パーソナライズ)として、ICエンコードと共に、カードの表面に個別情報を入れる。カード発行機における加工内容としては、モノクロ印字(UG)、カラー印字(写真CP)、オーバーコート等がある。図6(a)に本発明のデュアルインターフェースICカードの一例の外観の説明図を、また(b)に外部接続端子部分の開口形状すなわちカード基材の凸部の形状例の説明図を示す。外部接続端子部分にデザイン表示可能な本発明のカードは、外部接続用端子の接着機能の安定性と共にファッション性が同時に付与される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のデュアルインターフェースICカードの製造方法の一実施形態の工程で使用するインレットの構成を説明する概略図。
【図2】本発明の製造方法の一実施形態での熱プレス前の構成部材および熱プレス・ラミネート後の積層体を断面で示す概略図。
【図3】本発明の製造方法の一実施形態でのミリング加工状態を平面及び断面で説明する概略図。
【図4】本発明の製造方法の一実施形態での、IC非実装外部接続端子基板の概略図。
【図5】本発明の製造方法の一実施形態での、IC非実装外部接続端子基板が凹部に埋設固定された状態を説明する断面概略図。
【図6】本発明のデュアルインターフェースICカードの一例の外観および外部接続端子部分の形状例の説明図。
【符号の説明】
【0023】
1・・・アンテナシート 2・・・アンテナ回路
3・・・第1の接続パターン群 4・・・第2の接続パターン群
5・・・インレット 6・・・ICチップ 7・・・ACF
8・・・カード基材 9・・・積層体 10・・・(小切れ)カードベース
11・・・凸部 12・・・凹部 13・・・IC非実装外部接続端子基板
14・・・開口部(A) 15・・・開口部(B)
16・・・ガラスエポキシ基材 17・・・外部接続端子
18・・・導電性接着剤 19・・・熱溶融性接着剤
20・・・ISO/IEC7816−2規定端子領域 21・・・接続ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICが実装されていない外部接続端子基板を備え、1チップで接触及び非接触インターフェース機能を有するデュアルICカードの製造方法において、少なくとも以下の工程を含み、かつこの工程順で製造することを特徴とするデュアルインターフェースICカードの製造方法。
(1)接触型と非接触型の両機能を有するICチップを、アンテナ回路のICチップの接続ランドと対応する第1の接続パターン群と電気的に接続して、該アンテナ回路を有するアンテナシート上に搭載してインレットとする工程。
(2)前記インレットを、絶縁性のカード基材に挟みこみ熱プレスして、前記カード基材中に埋設し積層体とする工程。
(3)前記積層体にミリング(ザグリ)加工にて、ISO/IEC7816−2に定める端子領域を回避した領域に開口を有するIC非実装外部接続端子基板を埋設しかつ嵌合するための、内側に積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)を有する凹部を形成する工程。
(4)前記凹部の底面に、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと接続するための,アンテナ回路の第2の接続パターン群を露出させる工程。
(5)前記開口を有するIC非実装外部接続端子基板を、開口が前記凸部と嵌合するように、接着剤等の接合手段により前記凹部に埋設固定すると同時に、IC非実装外部接続端子基板の接続ランドと対応するアンテナ回路の第2の接続パターン群を電気的に接続固定する工程。
【請求項2】
前記開口を有するIC非実装外部接続端子基板の開口部に嵌合した、積層体表面を上面とする凸部(非ミリング加工部)に、メッキ、印刷等によるデザイン表示がされていることを特徴とする、請求項1に記載する製造方法で製造されたデュアルインターフェースICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−205338(P2009−205338A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45740(P2008−45740)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】