デュプレクサ
【課題】 コモンモードアイソレーションの高減衰量が確保されて、コモンモードアイソレーション特性に優れたデュプレクサを提供する。
【解決手段】 デュプレクサ10は、第1SAWフィルタ部7を有し、且つアンテナ端子1と第1,第2平衡信号端子3a,3bとの間に配置される第2フィルタ6を備える。第1SAWフィルタ部7の中央IDT電極71は、基準接地端子4に接続される第1櫛歯状電極711と、第1平衡信号端子3aに接続される第2櫛歯状電極712と、第2平衡信号端子3bに接続される第3櫛歯状電極713とを含む。第1SAWフィルタ部7の中央IDT電極71は、基準接地端子4に接続されることにより接地されている。
【解決手段】 デュプレクサ10は、第1SAWフィルタ部7を有し、且つアンテナ端子1と第1,第2平衡信号端子3a,3bとの間に配置される第2フィルタ6を備える。第1SAWフィルタ部7の中央IDT電極71は、基準接地端子4に接続される第1櫛歯状電極711と、第1平衡信号端子3aに接続される第2櫛歯状電極712と、第2平衡信号端子3bに接続される第3櫛歯状電極713とを含む。第1SAWフィルタ部7の中央IDT電極71は、基準接地端子4に接続されることにより接地されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数の異なる送信信号と受信信号とを分離するデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
デュプレクサは、分波器またはアンテナ共用器とも呼ばれ、周波数の異なる送信信号と受信信号とを分離するものであり、たとえば携帯電話端末装置に搭載される。デュプレクサは、アンテナ端子、送信側端子、受信側端子、送信用フィルタおよび受信用フィルタを備える。送信側端子から入力された送信信号は、送信用フィルタを通過し、所定の周波数帯域(以下、「送信側通過周波数帯域」ということがある)の信号がアンテナ端子から出力される。また、アンテナ端子から入力された受信信号は、受信用フィルタを通過し、所定の周波数帯域(以下、「受信側通過周波数帯域」ということがある)の信号が受信側端子から出力される。
【0003】
特許文献1には、ラダー型の表面弾性波(Surface Acoustic Wave;以下、「SAW」と略記することがある)フィルタを送信用フィルタとして備え、平衡信号用のバランス型のSAWフィルタを受信用フィルタとして備えるデュプレクサが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されるデュプレクサによれば、受信用フィルタとして、平衡信号用のバランス型SAWフィルタを備えているので、受信用フィルタを通過し、2つの受信側端子から出力される受信側通過周波数帯域内の信号は、互いに逆位相(位相が180°シフトしている)の信号となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デュプレクサにおいて、送信用フィルタを通過する送信信号は、本来アンテナ端子へと向かうが、一部が漏れ電力となって受信側へとリークしてしまう場合がある。
【0007】
特許文献1に開示されるようなバランス型SAWフィルタを備えた従来のデュプレクサは、通常、受信用フィルタにおける受信側通過周波数帯域以外の帯域では同相に近い位相信号で出力されるよう設計されているため、いわゆるアイソレーションはハイアイソレーションとなる。ここでいうアイソレーションとは、2つの受信側端子から出力される2つの信号の位相の差をみるものであり、ディファレンシャルモードアイソレーションとも呼ばれる。
【0008】
ディファレンシャルモードアイソレーションに対し、2つの信号の位相の和をみるのがコモンモードアイソレーションである。近年、このコモンモードアイソレーション特性の改善も要求されるようになってきているが、特許文献1には、コモンモードアイソレーション特性を改善する技術についての開示はない。
【0009】
本発明の目的は、コモンモードアイソレーション特性に優れたデュプレクサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るデュプレクサは、アンテナ端子と、
不平衡信号端子と、
第1、第2平衡信号端子と、
基準接地端子と、
前記アンテナ端子と前記不平衡信号端子との間に配置される第1フィルタと、
縦結合共振子型の第1SAWフィルタ部を有し、且つ前記アンテナ端子と前記第1、第2平衡信号端子との間に配置される第2フィルタと、
を備え、
前記第1SAWフィルタ部は、中央IDT電極と、前記中央IDT電極の一方側で該中央IDT電極と隣接配置される第1隣接IDT電極と、前記中央IDT電極の他方側で該中央IDT電極と隣接配置される第2隣接IDT電極と、を含んで構成され、
前記中央IDT電極が、複数の第1電極指を有する第1櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第2電極指を有し、且つ前記第1平衡信号端子に接続される第2櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第3電極指を有し、且つ前記第2平衡信号端子に接続される第3櫛歯状電極と、を含み、
前記第1櫛歯状電極が前記基準接地端子と電気的に接続されることにより接地されているものである。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、コモンモードアイソレーション特性に優れたデュプレクサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態であるデュプレクサ10の等価回路図である。
【図2】第1SAWフィルタ部7を拡大して示す図である。
【図3】第1SAWフィルタ部7Aを拡大して示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態であるデュプレクサ12の等価回路図である。
【図5】第1SAWフィルタ部11を拡大して示す図である。
【図6】第1SAWフィルタ部11Aを拡大して示す図である。
【図7】第1SAWフィルタ部11Bを拡大して示す図である。
【図8】第1SAWフィルタ部11Cを拡大して示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態であるデュプレクサ15の等価回路図である。
【図10】第1SAWフィルタ部13および第2SAWフィルタ部14を拡大して示す図である。
【図11】第1SAWフィルタ部13Aを拡大して示す図である。
【図12】挿入反射器の接地用電極指の本数と、受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13A】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13B】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13C】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例および比較例のコモンモードアイソレーション特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るデュプレクサについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態であるデュプレクサ10の等価回路図である。デュプレクサ10は、アンテナ端子1と、不平衡信号端子2と、第1平衡信号端子3aと、第2平衡信号端子3bと、基準接地端子4と、第1フィルタ5と、第2フィルタ6とを含む。
【0015】
デュプレクサ10では、第1フィルタ5は、アンテナ端子1と不平衡信号端子2との間に配置され、第2フィルタ6は、アンテナ端子1と第1、第2平衡信号端子3a,3bとの間に配置されている。デュプレクサ10に接続された信号源から発信されて不平衡信号端子2から入力される送信信号は、第1フィルタ5を通過し、送信側通過周波数帯域の信号がアンテナ端子1から出力される。また、アンテナ端子1から入力される受信信号は、第2フィルタ6を通過し、受信側通過周波数帯域の信号が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bから出力される。
【0016】
第1フィルタ5は、高い耐電力性を有するラダー型のSAWフィルタであり、複数の1ポートSAW共振器である、第1共振器51、第2共振器52、第3共振器53、第4共振器54、第5共振器55、第6共振器56、第7共振器57および第8共振器58を、ラダー型に接続して構成される。
【0017】
第1共振器51は、複数の電極指を有するIDT(Inter Digital Transducer)電極である第1共振器電極51aと、第1共振器電極51aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第1共振用反射器51bとを含み、不平衡信号端子2と接続される。第1共振器51の不平衡信号端子2とは反対側に、第2共振器52と第3共振器53とが並列接続されている。
【0018】
第2共振器52は、複数の電極指を有するIDT電極である第2共振器電極52aと、第2共振器電極52aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第2共振用反射器52bとを含む。第3共振器53は、複数の電極指を有するIDT電極である第3共振器電極53aと、第3共振器電極53aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第3共振用反射器53bとを含み、第1インダクタ2aを介して接地されている。
【0019】
また、第2共振器52の第1共振器51とは反対側に、第4共振器54と第5共振器55とが並列接続されている。第4共振器54は、複数の電極指を有するIDT電極である第4共振器電極54aと、第4共振器電極54aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第4共振用反射器54bとを含む。第5共振器55は、複数の電極指を有するIDT電極である第5共振器電極55aと、第5共振器電極55aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第5共振用反射器55bとを含み、第2インダクタ2bを介して接地されている。
【0020】
また、第4共振器54の第2共振器52とは反対側に、第6共振器56が直列接続されている。この第6共振器56は、複数の電極指を有するIDT電極である第6共振器電極56aと、第6共振器電極56aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第6共振用反射器56bとを含む。そして、第6共振器56の第4共振器54とは反対側に、第7共振器57と第8共振器58とが並列接続されている。
【0021】
第7共振器57は、複数の電極指を有するIDT電極である第7共振器電極57aと、第7共振器電極57aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第7共振用反射器57bとを含み、アンテナ端子1と接続される。第8共振器58は、複数の電極指を有するIDT電極である第8共振器電極58aと、第8共振器電極58aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第8共振用反射器58bとを含み、第5共振器55と接続されて、第2インダクタ2bを介して接地されている。
【0022】
本実施形態のデュプレクサ10は、不平衡信号端子2から入力された送信信号が、第1フィルタ5を通過することによって、周波数824〜849MHzの送信側通過周波数帯域を有する信号がアンテナ端子1から出力されるように設計されている。
【0023】
また、アンテナ端子1と、第1フィルタ5および第2フィルタ6の分岐との間には、整合回路として第3インダクタ2cが接続されている。
【0024】
第2フィルタ6は、第1SAWフィルタ部7と、アンテナ端子側共振器8と、第1平衡信号端子側共振器9aと、第2平衡信号端子側共振器9bと、第4インダクタ3cとを含む。
【0025】
アンテナ端子側共振器8は、第2フィルタ6において、アンテナ端子1と接続されるSAW共振器である。アンテナ端子側共振器8は、複数の電極指を有するIDT電極であるアンテナ端子側共振器電極81と、アンテナ端子側共振器電極81に対するSAWの伝搬方向両端に配置されるアンテナ端子側共振用反射器82とを含む。第2フィルタ6において、受信信号が入力されるアンテナ端子1側にアンテナ端子側共振器8を直列に設けることによって、良好に整合をとることができる。
【0026】
次に、第1SAWフィルタ部7について、図2を用いて説明する。図2は、第1SAWフィルタ部7を拡大して示す図である。第1SAWフィルタ部7は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極71と、中央IDT電極71のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極71と隣接配置される第1隣接IDT電極72と、中央IDT電極71のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極71と隣接配置される第2隣接IDT電極73とを含んで構成される。
【0027】
中央IDT電極71は、複数の第1電極指711aを有する第1櫛歯状電極711と、複数の第2電極指712aを有する第2櫛歯状電極712と、複数の第3電極指713aを有する第3櫛歯状電極713とを含む。
【0028】
第1櫛歯状電極711、第2櫛歯状電極712および第3櫛歯状電極713において、各々の第1電極指711a、第2電極指712aおよび第3電極指713aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極(バスバー)から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。
【0029】
第1櫛歯状電極711と第2櫛歯状電極712とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指711aと第2電極指712aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。また、第3櫛歯状電極713は、第2櫛歯状電極712と隣接配置され、第1櫛歯状電極711と第3櫛歯状電極713とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指711aと第3電極指713aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0030】
そして、第1櫛歯状電極711は、自身の帯状電極に設けられる接地用バンプ75を介して基準接地端子4と電気的に接続されることにより接地されている。第2櫛歯状電極712は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続されている。第3櫛歯状電極713は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0031】
これによって、デュプレクサ10では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極71に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、第1櫛歯状電極711から接地用バンプ75を介して基準接地端子4に伝搬させることができる。そのため、コモンモードアイソレーション特性を劣化させる要因となる信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに出力されるのを抑制することができる。したがって、デュプレクサ10は、コモンモードアイソレーションがハイアイソレーションとなり、コモンモードアイソレーション特性を改善することができる。
【0032】
また、デュプレクサ10において、第1櫛歯状電極711を基準接地端子4に接続させる構成は、接地用バンプ75を設ける構成に限定されるものではなく、たとえば図3のようにしてもよい。図3は、第1SAWフィルタ部7Aを拡大して示す図である。図3に示す第1SAWフィルタ部7Aでは、第1櫛歯状電極711の帯状電極と、2つの第1SAWフィルタ用反射器74との間に絶縁体からなるブリッジ絶縁体76が設けられている。そして、ブリッジ絶縁体76の上から接続パターン導体77が設けられている。これにより、第1櫛歯状電極711と2つの第1SAWフィルタ用反射器74とが、接続パターン導体77を介して電気的に接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極711が、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を介して、第1SAWフィルタ用反射器74に接続され、その第1SAWフィルタ用反射器74が基準接地端子4に接続されることにより接地されている。このように構成されたデュプレクサ10では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極71に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を介して、第1櫛歯状電極711から基準接地端子4に伝搬させることができる。
【0033】
なお、第1平衡信号端子側共振器9aは、SAW共振器であり、複数の電極指を有するIDT電極である第1平衡信号端子側共振器電極91aと、第1平衡信号端子側共振器電極91aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第1平衡信号端子側共振用反射器92aとを含む。第2平衡信号端子側共振器9bは、SAW共振器であり、複数の電極指を有するIDT電極である第2平衡信号端子側共振器電極91bと、第2平衡信号端子側共振器電極91bに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第2平衡信号端子側共振用反射器92bとを含む。第2フィルタ6において、信号が出力される第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3b側に、第1平衡信号端子側共振器9aおよび第2平衡信号端子側共振器9bを設けることによって、静電破壊耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、第1平衡信号端子側共振器9aと第1平衡信号端子3aとを接続する信号出力配線と、第2平衡信号端子側共振器9bと第2平衡信号端子3bとを接続する信号出力配線との間には、整合回路として第4インダクタ3cが接続されている。
【0035】
中央IDT電極71に一方側で隣接配置される第1隣接IDT電極72は、複数の第4電極指722aを有する第4櫛歯状電極722と、複数の第5電極指721aを有する第5櫛歯状電極721とを含む。
【0036】
第4櫛歯状電極722および第5櫛歯状電極721において、各々の第4電極指722aおよび第5電極指721aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第4櫛歯状電極722と第5櫛歯状電極721とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第4電極指722aと第5電極指721aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0037】
そして、第4櫛歯状電極722はアンテナ端子側共振器8に接続され、第5櫛歯状電極721は接地されている。
【0038】
中央IDT電極71に他方側で隣接配置される第2隣接IDT電極73は、複数の第6電極指732aを有する第6櫛歯状電極732と、複数の第7電極指731aを有する第7櫛歯状電極731とを含む。
【0039】
第6櫛歯状電極732および第7櫛歯状電極731において、各々の第6電極指732aおよび第7電極指731aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第6櫛歯状電極732と第7櫛歯状電極731とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第6電極指732aと第7電極指731aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0040】
そして、第6櫛歯状電極732はアンテナ端子側共振器8に接続され、第7櫛歯状電極731は接地されている。
【0041】
また、第1SAWフィルタ部7において、第1隣接IDT電極72の中央IDT電極71とは反対側と、第2隣接IDT電極73の中央IDT電極71とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器74が設けられている。中央IDT電極71、第1隣接IDT電極72および第2隣接IDT電極73で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器74によって反射され、定在波を発生させる。
【0042】
本実施形態のデュプレクサ10は、アンテナ端子1から入力された受信信号が、第2フィルタ6を通過することによって、周波数869〜894MHzの受信側通過周波数帯域を有する信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bから出力されるように設計されている。
【0043】
図4は、本発明の第2実施形態であるデュプレクサ12の等価回路図である。デュプレクサ12は、前述したデュプレクサ10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。デュプレクサ12は、第1SAWフィルタ部11の構成が、デュプレクサ10の第1SAWフィルタ部7と異なり、それ以外は同様の構成である。図5は、第1SAWフィルタ部11を拡大して示す図である。
【0044】
第1SAWフィルタ部11は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極111と、中央IDT電極111のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極111と隣接配置される第1隣接IDT電極112と、中央IDT電極111のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極111と隣接配置される第2隣接IDT電極113とを含む。
【0045】
第1隣接IDT電極112は、前述した第1SAWフィルタ部7の第1隣接IDT電極72と同様に構成され、複数の第4電極指1122aを有する第4櫛歯状電極1122と、複数の第5電極指1121aを有する第5櫛歯状電極1121とを含む。第4櫛歯状電極1122はアンテナ端子側共振器8に接続され、第5櫛歯状電極1121は接地されている。
【0046】
第2隣接IDT電極113は、前述した第1SAWフィルタ部7の第2隣接IDT電極73と同様に構成され、複数の第6電極指1132aを有する第6櫛歯状電極1132と、複数の第7電極指1131aを有する第7櫛歯状電極1131とを含む。第6櫛歯状電極1132はアンテナ端子側共振器8に接続され、第7櫛歯状電極1131は接地されている。
【0047】
デュプレクサ12において特徴的な構成は、第1SAWフィルタ部11の中央IDT電極111の構成である。中央IDT電極111は、複数の第1電極指1111aを有する第1櫛歯状電極1111と、複数の第2電極指1112aを有する第2櫛歯状電極1112と、複数の第3電極指1113aを有する第3櫛歯状電極1113と、複数の接地用電極指1114aを有する挿入反射器1114と、挿入反射器1114と基準接地端子4との間に接続された挿入反射器用インダクタ1115とを含む。
【0048】
第1櫛歯状電極1111、第2櫛歯状電極1112および第3櫛歯状電極1113において、各々の第1電極指1111a、第2電極指1112aおよび第3電極指1113aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。
【0049】
第1櫛歯状電極1111と第2櫛歯状電極1112とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指1111aと第2電極指1112aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。また、第3櫛歯状電極1113は、第2櫛歯状電極1112と隣接配置され、第1櫛歯状電極1111と第3櫛歯状電極1113とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指1111aと第3電極指1113aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0050】
挿入反射器1114は、接地用電極指1114aが、第2櫛歯状電極1112および第3櫛歯状電極1113の各電極指と平行になるように、第2櫛歯状電極1112と第3櫛歯状電極1113との間に配置され、かつ該接地用電極指1114aが、第1櫛歯状電極1111の帯状電極と接続されている。この挿入反射器1114は、挿入反射器用インダクタ1115を介して基準接地端子4と接続される。
【0051】
すなわち、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114を介して基準接地端子4に接続されることにより接地されている。また、第2櫛歯状電極1112は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続され、第3櫛歯状電極1113は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0052】
このように構成されたデュプレクサ12では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極111に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、挿入反射器1114および挿入反射器用インダクタ1115を介して、第1櫛歯状電極1111から基準接地端子4に伝搬させることができる。これにより、コモンモードアイソレーション特性を劣化させる要因となる信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに出力されるのを抑制することができる。したがって、デュプレクサ12は、コモンモードアイソレーションがハイアイソレーションとなり、優れたコモンモードアイソレーション特性を有することができる。
【0053】
また、挿入反射器1114に接続された挿入反射器用インダクタ1115によって減衰極周波数を制御することでコモンモードアイソレーションをよりハイアイソレーションとすることができる。
【0054】
さらに、第1櫛歯状電極1111と基準接地端子4との間の接続構造を、挿入反射器1114を介する接続構造とすることによって、前述した接地用バンプ75を設ける接続構造や、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を設ける接続構造と比較して、デュプレクサの小型化を図ることができる。接地用バンプ75あるいは立体構造の接地パターン導体を設ける接続構造の場合、製造ばらつき等を考慮してその周囲にあるものとの間に所定の間隔を空ける必要がある。たとえば、接地バンプ75は、第1隣接IDT電極と第2隣接IDT電極とを接続する配線導体で囲まれる領域の中に設けられるが、この配線導体と接地バンプ75とが接触しないように製造ばらつきも考慮して両者間に60μm程度の間隔を設けておく必要がある。これに対し、挿入反射器1114を介する接続構造とすれば、配線導体など間隔を設けておく必要のあるものが少ない領域へ引き出すことができるため、その分デュプレクサを小型化することができる。また配線導体との間で発生し得る寄生容量を小さくすることができるという利点もある。
【0055】
なお、第1SAWフィルタ部11において、第1隣接IDT電極112の中央IDT電極111とは反対側と、第2隣接IDT電極113の中央IDT電極111とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器114が設けられている。中央IDT電極111、第1隣接IDT電極112および第2隣接IDT電極113で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器114によって反射され、定在波を発生させる。
【0056】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図6のようにしてもよい。図6は、第1SAWフィルタ部11Aを拡大して示す図である。図6に示す第1SAWフィルタ部11Aでは、中央IDT電極111の第1櫛歯状電極1111と、第1隣接IDT電極112の第5櫛歯状電極1121とが、第1共通電極指115により接続されている。また、中央IDT電極111の第1櫛歯状電極1111と、第2隣接IDT電極113の第7櫛歯状電極1131とが、第2共通電極指116により接続されている。
【0057】
このように構成される第1SAWフィルタ部11Aを備えるデュプレクサ12では、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114を介して基準接地端子4に接続されて接地されているだけではなく、接地されている第5櫛歯状電極1121と第1共通電極指115を介して接続され、接地されている第7櫛歯状電極1131と第2共通電極指116を介して接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114の接地用電極指1114a、第1共通電極指115および第2共通電極指116によって、並列接続された状態で接地されている。
【0058】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図7のようにしてもよい。図7は、第1SAWフィルタ部11Bを拡大して示す図である。図7に示す第1SAWフィルタ部11Bでは、挿入反射器1114の接地用電極指1114aのうち少なくとも1つずつが、第2櫛歯状電極1112の第2電極指1112aの間、および、第3櫛歯状電極1113の第3電極指1113aの間に配置されて、第1櫛歯状電極1111の帯状電極に接続されている。
【0059】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図8のようにしてもよい。図8は、第1SAWフィルタ部11Cを拡大して示す図である。図8に示す第1SAWフィルタ部11Cでは、第1隣接IDT電極112の中央IDT電極111とは反対側に第1端部IDT電極117が配置され、第2隣接IDT電極113の中央IDT電極111とは反対側に第2端部IDT電極118が配置されている。
【0060】
第1端部IDT電極117は、複数の第8電極指1172aを有する第8櫛歯状電極1172と、複数の第9電極指1171aを有する第9櫛歯状電極1171とを含む。第8櫛歯状電極1172および第9櫛歯状電極1171において、各々の第8電極指1172aおよび第9電極指1171aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第8櫛歯状電極1172と第9櫛歯状電極1171とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第8電極指1172aと第9電極指1171aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。そして、第8櫛歯状電極1172は、第2櫛歯状電極1112と並列接続状態で第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続され、第9櫛歯状電極1171は接地されている。
【0061】
第2端部IDT電極118は、複数の第10電極指1182aを有する第10櫛歯状電極1182と、複数の第11電極指1181aを有する第11櫛歯状電極1181とを含む。第10櫛歯状電極1182および第11櫛歯状電極1181において、各々の第10電極指1182aおよび第11電極指1181aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第10櫛歯状電極1182と第11櫛歯状電極1181とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第10電極指1182aと第11電極指1181aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。そして、第10櫛歯状電極1182は、第3櫛歯状電極1113と並列接続状態で第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続され、第11櫛歯状電極1181は接地されている。このように端部IDT電極を設けることによって設計の自由度が向上し、通過周波数帯域内のVSWRやバランス度といった特性を最適化しやすくすることができる。
【0062】
図9は、本発明の第3実施形態であるデュプレクサ15の等価回路図である。デュプレクサ15は、前述したデュプレクサ10,12に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。デュプレクサ15は、第2フィルタ6が第1SAWフィルタ部13と第2SAWフィルタ部14とを備えること以外は、デュプレクサ10,12と同様に構成される。図10は、第1SAWフィルタ部13および第2SAWフィルタ部14を拡大して示す図である。
【0063】
デュプレクサ15の第2フィルタ6において、第1SAWフィルタ部13が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3b側に配置され、第2SAWフィルタ部14が、アンテナ端子1側に配置される。
【0064】
第1SAWフィルタ部13は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極131と、中央IDT電極131のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極131と隣接配置される第1隣接IDT電極132と、中央IDT電極131のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極131と隣接配置される第2隣接IDT電極133とを含む。
【0065】
第1隣接IDT電極132は、複数の第4電極指1322aを有する第4櫛歯状電極1322と、複数の第5電極指1321aを有する第5櫛歯状電極1321とを含む。第4櫛歯状電極1322は、第2SAWフィルタ部14の第3隣接IDT電極142の第14櫛歯状電極1422に接続され、第5櫛歯状電極1321は接地されている。
【0066】
第2隣接IDT電極133は、複数の第6電極指1332aを有する第6櫛歯状電極1332と、複数の第7電極指1331aを有する第7櫛歯状電極1331とを含む。第6櫛歯状電極1332は、第2SAWフィルタ部14の第4隣接IDT電極143の第16櫛歯状電極1432に接続され、第7櫛歯状電極1331は接地されている。
【0067】
中央IDT電極131は、複数の第1電極指1311aを有する第1櫛歯状電極1311と、複数の第2電極指1312aを有する第2櫛歯状電極1312と、複数の第3電極指1313aを有する第3櫛歯状電極1313と、複数の接地用電極指1314aを有する挿入反射器1314と、挿入反射器1314と基準接地端子4との間に接続された挿入反射器用インダクタ1315とを含む。
【0068】
挿入反射器1314は、接地用電極指1314aが、第2櫛歯状電極1312および第3櫛歯状電極1313の各電極指と平行になるように、第2櫛歯状電極1312と第3櫛歯状電極1313との間に配置され、かつ該接地用電極指1314aが、第1櫛歯状電極1311の帯状電極と接続されている。この挿入反射器1314は、挿入反射器用インダクタ1315を介して基準接地端子4と接続される。
【0069】
すなわち、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314を介して基準接地端子4に接続されることにより接地されている。また、第2櫛歯状電極1312は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続されている。第3櫛歯状電極1313は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0070】
このように構成されたデュプレクサ12では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極131に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、挿入反射器1314および挿入反射器用インダクタ1315を介して、第1櫛歯状電極1311から基準接地端子4に伝搬させることができる。さらに挿入反射器用インダクタ1315でコモンモードアイソレーションの減衰極周波数を調整することにより、所望の周波数帯をより高減衰にすることができる。したがって、デュプレクサ15は、コモンモードアイソレーションの高減衰量が確保されて、優れたコモンモードアイソレーション特性を有することができる。
【0071】
また、デュプレクサ15において第1SAWフィルタ部13では、第1隣接IDT電極132の第4櫛歯状電極1322が有する第4電極指1322aのうち少なくとも1つが、中央IDT電極131の第2櫛歯状電極1312が有する第2電極指1312aの間に配置されている。さらに、第2隣接IDT電極133の第6櫛歯状電極1332が有する第6電極指1332aのうち少なくとも1つが、中央IDT電極131の第3櫛歯状電極1313が有する第3電極指1313aの間に配置されている。このような電極指配置とすることによって、中央IDT電極131の一部と第1隣接IDT電極132の一部、あるいは中央IDT電極131の一部と第2隣接IDT電極133の一部とが直接交差するため挿入損失を小さくすることができる。
【0072】
なお、第1SAWフィルタ部13において、第1隣接IDT電極132の中央IDT電極131とは反対側と、第2隣接IDT電極133の中央IDT電極131とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器134が設けられている。中央IDT電極131、第1隣接IDT電極132および第2隣接IDT電極133で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器134によって反射され、定在波を発生させる。
【0073】
第2SAWフィルタ部14は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、第2中央IDT電極141と、第2中央IDT電極141のSAWの伝搬方向一方側で該第2中央IDT電極141と隣接配置される第3隣接IDT電極142と、第2中央IDT電極141のSAWの伝搬方向他方側で該第2中央IDT電極141と隣接配置される第4隣接IDT電極143とを含んで構成される。
【0074】
第3隣接IDT電極142は、複数の第14電極指1422aを有する第14櫛歯状電極1422と、複数の第15電極指1421aを有する第15櫛歯状電極1421とを含む。第14櫛歯状電極1422は、第1SAWフィルタ部13の第1隣接IDT電極132の第4櫛歯状電極1322に接続され、第15櫛歯状電極1421は接地されている。
【0075】
第4隣接IDT電極143は、複数の第16電極指1432aを有する第16櫛歯状電極1432と、複数の第17電極指1431aを有する第17櫛歯状電極1431とを含む。第16櫛歯状電極1432は、第1SAWフィルタ部13の第2隣接IDT電極133の第6櫛歯状電極1332に接続され、第17櫛歯状電極1431は接地されている。
【0076】
第2中央IDT電極141は、複数の第12電極指1411aを有する第12櫛歯状電極1411と、複数の第13電極指1412aを有する第13櫛歯状電極1412とを含む。第12櫛歯状電極1411は接地され、第13櫛歯状電極1412はアンテナ端子側共振器8に接続されている。
【0077】
なお、第2SAWフィルタ部14において、第3隣接IDT電極142の第2中央IDT電極141とは反対側と、第4隣接IDT電極143の第2中央IDT電極141とは反対側とに、第2SAWフィルタ用反射器144が設けられている。第2中央IDT電極141、第3隣接IDT電極142および第4隣接IDT電極143で励起されて伝搬するSAWは、第2SAWフィルタ用反射器144によって反射され、定在波を発生させる。このようにSAWフィルタ部を2段構成とすることで、1段構成の場合に比べて高減衰にすることができる。
【0078】
また、デュプレクサ15において、第1SAWフィルタ部13の構成は、たとえば図11のようにしてもよい。図11は、第1SAWフィルタ部13Aを拡大して示す図である。図11に示す第1SAWフィルタ部13Aでは、中央IDT電極131の第1櫛歯状電極1311と、第1隣接IDT電極132の第5櫛歯状電極1321とが、第1共通電極指135により接続されている。また、中央IDT電極131の第1櫛歯状電極1311と、第2隣接IDT電極133の第7櫛歯状電極1331とが、第2共通電極指136により接続されている。
【0079】
このように構成される第1SAWフィルタ部13Aを備えるデュプレクサ15では、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314を介して基準接地端子4に接続されて接地されているだけではなく、接地されている第5櫛歯状電極1321と第1共通電極指135を介して接続され、接地されている第7櫛歯状電極1331と第2共通電極指136を介して接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314の接地用電極指1314a、第1共通電極指135および第2共通電極指136によって、並列接続された状態で接地されている。これによって、第1フィルタ5から第2フィルタ6側にリークしたリーク信号が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに伝搬するのを抑制する効果を向上することができる。
【0080】
次に、前述したデュプレクサ12,15に備えられる挿入反射器の接地用電極指の本数、電極指ピッチについて、説明する。
【0081】
図12は、挿入反射器の接地用電極指の本数と、受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。図12のグラフにおける横軸は挿入反射器の接地用電極指の本数(本)を示し、縦軸は受信周波数帯域内リップル(dB)を示す。なお、図12において、挿入反射器の接地用電極指のピッチは、そのピッチ平均値が、中央IDT電極の全電極指の本数に対しその両端から10%の本数分だけそれぞれ除いた残りの電極指についてのピッチ(以下、「中央IDT電極指ピッチ」という)の平均値と等しくされている。たとえば、中央IDT電極が100本(50対)の電極指からなる場合は、両端からそれぞれ10本を除いた残りの80本の中央IDT電極指ピッチの平均値と接地用電極指のピッチの平均値とが等しくされている。ここで平均値が等しいとは、中央IDT電極指ピッチの平均値をP1、接地用電極指のピッチの平均値をP2としたときに、|P2−P1|/P1≦0.05の場合をいう。なお電極指ピッチとは、隣接する電極指同士の中心間距離をいう。
【0082】
図12のグラフから明らかなように、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた状態で、接地用電極指の本数を18本以下とすることによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。
【0083】
図13A、図13Bおよび図13Cは、ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。図13A、図13Bおよび図13Cのグラフにおける横軸はピッチ変化率(%)を示し、縦軸は受信周波数帯域内リップル(dB)を示す。ここで、ピッチ変化率Pcrは、以下に示す式(1)によって導かれる。
Pcr(%)=((P2−P1)/P1)×100 …(1)
【0084】
図13A(a)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を2本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13A(a)から明らかなように、接地用電極指の本数を2本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−30〜90%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を2本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−20〜80%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態(ピッチ変化率が0%の状態)の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0085】
また、図13A(b)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を4本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13A(b)から明らかなように、接地用電極指の本数を4本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−9〜30%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を4本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−8〜30%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0086】
また、図13B(c)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を6本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13B(c)から明らかなように、接地用電極指の本数を6本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−5〜19%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を6本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−4〜17.5%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0087】
また、図13B(d)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を8本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13B(d)から明らかなように、接地用電極指の本数を8本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−3〜14%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を8本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−3〜12.5%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0088】
また、図13C(e)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を10本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13C(e)から明らかなように、接地用電極指の本数を10本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−2〜11%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を10本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−1〜10%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0089】
(実施例)
以下、本発明の実施形態についての実施例を示す。なお、これらの実施例はあくまで本発明の実施形態の一例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、送信側通過周波数帯域が、周波数824〜849MHz、受信側通過周波数帯域が、周波数869〜894MHzとなるように、デュプレクサを設計した。
【0090】
<実施例1および比較例1のデュプレクサの作製>
(実施例1)
LiTaO3からなる圧電基板を用意し、その主面上に、厚みが6nmのTi薄膜層を形成し、その上に厚み391nmのAl−Cu薄膜層を形成した。
【0091】
次に、レジスト塗布装置により、Ti/Al−Cu積層膜の上にフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。そして、縮小投影露光機(ステッパ)により、図9に示した配置位置を有するように、共振器や信号線、接地線、パッド電極、挿入反射器用インダクタ等となるフォトレジストパターンを形成した。その後、現像装置により、不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
【0092】
次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置により、必要な箇所を残して残りをエッチングで除去し、図9に示した回路構成を実現する回路パターンを形成した。このとき図9に示した挿入反射器1314に接続される挿入反射器用インダクタも他の電極等と同じ薄膜で形成することにより、挿入反射器用インダクタが比較的大きなインダクタンス値を有するようにすることができる。表1にSAWフィルタ部の作製条件を、表2に共振器の作製条件を示す。なお、前述した回路パターンの形成は、多数個取り用の母基板の状態である圧電基板上に、所望の回路パターンを2次元的に繰り返し配置することで行っている。
【0093】
次に、回路パターンの所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical
Vapor Deposition)装置により、圧電基板の主面上に電極パターンおよびSiO2膜を約15nmの厚みに形成した。そして、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行い、RIE装置等でフリップチップ用電極部(入出力電極、接地電極などのパッド電極部分、および環状電極部分)のSiO2膜のエッチングを行った。
【0094】
次に、スパッタリング装置を使用し、SiO2膜を除去した部分に、Cr,Ni,Auよりなる積層電極を成膜した。このときの電極膜厚は約1μm(Cr:0.01μm、Ni:1μm、Au:0.2μm)とした。そして、フォトレジストおよび不要箇所の積層電極をリフトオフ法により同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用バンプを接続するためのフリップチップ用電極部とした。
【0095】
その後、圧電基板に設けられたダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、圧電基板上に電極パターンが形成されてなる状態の多数のチップを得た。
【0096】
次に、インダクタンス素子に相当する線路を内部に設けた回路基板を用意し、その上に、タングステンからなるパターン電極、入出力導体、接地導体、および環状導体の導電材(半田)を印刷してセラミック回路基板を得た。そして、フリップチップ実装装置によって、各チップを、電極形成面を下面にして該セラミック回路基板上に仮接着した。窒素雰囲気中でベークを行い、半田を溶融することによって、チップとセラミック回路基板とを接着した。チップに形成された環状電極と、セラミック回路基板に形成された環状導体とにおいて半田が溶融し、接着することで、チップ表面の電極パターンが気密封止された。
【0097】
さらに、チップが接着されたセラミック回路基板に樹脂を塗布し、ベークを行い、チップを樹脂封止した。
【0098】
そして、セラミック回路基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施して個片に分割することで、回路基板上に実装された状態の、実施例1に係るデュプレクサが得られた。なお、個片に分割された状態のセラミック回路基板は、平面サイズが2.5×2.0mmであり、積層構造を有してなる。
【0099】
実施例1のデュプレクサは、受信用フィルタの第2フィルタが第1SAWフィルタ部と第2SAWフィルタ部を備え、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第2櫛歯状電極と第3櫛歯状電極との間に挿入反射器が配置され、第1櫛歯状電極が挿入反射器を介して基準接地端子に接続されてなる、前述したデュプレクサ15である。
【0100】
(比較例1)
中央IDT電極に挿入反射器が設けられていないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のデュプレクサを得た。この比較例1のデュプレクサは、中央IDT電極において第1櫛歯状電極が、基準接地端子に接続されていない、浮き電極となる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
<実施例1および比較例1のデュプレクサの周波数特性>
実施例1および比較例1のデュプレクサについて、周波数特性を評価した。図14は、実施例および比較例のコモンモードアイソレーション特性を示すグラフである。図14(a)が、実施例1および比較例1のコモンモードアイソレーション特性を示す。図14(a)のグラフにおける横軸は周波数(MHz)を、縦軸はコモンモードアイソレーション(dB)を表している。図14(a)のグラフにおいて、実線A1の特性曲線が実施例1のデュプレクサの結果を示し、破線B1の特性曲線が比較例1のデュプレクサの結果を示す。
【0104】
また、実施例1および比較例1のデュプレクサについての送受信側それぞれの挿入損失と、アイソレーションの減衰量とを表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表3および図14(a)に示す結果から、実施例1のデュプレクサは、挿入反射器が設けられていない比較例1のデュプレクサに比べて、送信側通過周波数帯域F1のコモンモードアイソレーションの減衰量が大きく、優れたコモンモードアイソレーション特性を有していることが分かる。それ以外の特性は、比較例とほぼ同等である。すなわち、挿入損失特性等はほとんど劣化させずにコモンモードアイソレーション特性を大幅に改善することができた。
【0107】
<実施例2および比較例2のデュプレクサの作製>
(実施例2)
実施例1と同様にして、実施例2のデュプレクサを作製した。実施例2のデュプレクサは、図9に示す回路構成からなるデュプレクサ15の第1SAWフィルタ部13を図3に示す第1SAWフィルタ部7Aに置き換えたものである。表4にSAWフィルタ部の作製条件を、表5に共振器の作製条件を示す。
【0108】
実施例2のデュプレクサは、受信用フィルタの第2フィルタが第1SAWフィルタ部を備え、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第1櫛歯状電極が、ブリッジ絶縁体および接続パターン導体による立体構造の接地パターン導体を介して基準接地端子に接続されたものである。
【0109】
(比較例2)
中央IDT電極に立体構造の接地パターン導体が設けられていないこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のデュプレクサを得た。この比較例2のデュプレクサは、中央IDT電極において第1櫛歯状電極が、基準接地端子に接続されていない、浮き電極となる。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
<実施例2および比較例2のデュプレクサの周波数特性>
実施例2および比較例2のデュプレクサについて、周波数特性を評価した。図14(b)が、実施例2および比較例2のコモンモードアイソレーション特性を示す。図14(b)のグラフにおける横軸は周波数(MHz)を、縦軸はコモンモードアイソレーション(dB)を表している。図14(b)のグラフにおいて、実線A2の特性曲線が実施例2のデュプレクサの結果を示し、破線B2の特性曲線が比較例2のデュプレクサの結果を示す。
【0113】
また、実施例2および比較例2のデュプレクサについての送受信側それぞれの挿入損失と、アイソレーションの減衰量とを表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
表6および図14(b)に示す結果から、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第1櫛歯状電極が、ブリッジ絶縁体および接続パターン導体による立体構造の接地パターン導体を介して基準接地端子に接続された実施例2のデュプレクサは、立体構造の接地パターン導体が設けられていない比較例2のデュプレクサに比べて、送信側通過周波数帯域F1のコモンモードアイソレーションの減衰量が大きく、優れたコモンモードアイソレーション特性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0116】
1 アンテナ端子
2 不平衡信号端子
3a 第1平衡信号端子
3b 第2平衡信号端子
4 基準接地端子
5 第1フィルタ
6 第2フィルタ
7,7A,11,11A,11B,11C,13,13A 第1SAWフィルタ部
10,12,15 デュプレクサ
14 第2SAWフィルタ部
71,111,131 中央IDT電極
72,112,132 第1隣接IDT電極
73,113,133 第2隣接IDT電極
1114,1314 挿入反射器
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数の異なる送信信号と受信信号とを分離するデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
デュプレクサは、分波器またはアンテナ共用器とも呼ばれ、周波数の異なる送信信号と受信信号とを分離するものであり、たとえば携帯電話端末装置に搭載される。デュプレクサは、アンテナ端子、送信側端子、受信側端子、送信用フィルタおよび受信用フィルタを備える。送信側端子から入力された送信信号は、送信用フィルタを通過し、所定の周波数帯域(以下、「送信側通過周波数帯域」ということがある)の信号がアンテナ端子から出力される。また、アンテナ端子から入力された受信信号は、受信用フィルタを通過し、所定の周波数帯域(以下、「受信側通過周波数帯域」ということがある)の信号が受信側端子から出力される。
【0003】
特許文献1には、ラダー型の表面弾性波(Surface Acoustic Wave;以下、「SAW」と略記することがある)フィルタを送信用フィルタとして備え、平衡信号用のバランス型のSAWフィルタを受信用フィルタとして備えるデュプレクサが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されるデュプレクサによれば、受信用フィルタとして、平衡信号用のバランス型SAWフィルタを備えているので、受信用フィルタを通過し、2つの受信側端子から出力される受信側通過周波数帯域内の信号は、互いに逆位相(位相が180°シフトしている)の信号となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デュプレクサにおいて、送信用フィルタを通過する送信信号は、本来アンテナ端子へと向かうが、一部が漏れ電力となって受信側へとリークしてしまう場合がある。
【0007】
特許文献1に開示されるようなバランス型SAWフィルタを備えた従来のデュプレクサは、通常、受信用フィルタにおける受信側通過周波数帯域以外の帯域では同相に近い位相信号で出力されるよう設計されているため、いわゆるアイソレーションはハイアイソレーションとなる。ここでいうアイソレーションとは、2つの受信側端子から出力される2つの信号の位相の差をみるものであり、ディファレンシャルモードアイソレーションとも呼ばれる。
【0008】
ディファレンシャルモードアイソレーションに対し、2つの信号の位相の和をみるのがコモンモードアイソレーションである。近年、このコモンモードアイソレーション特性の改善も要求されるようになってきているが、特許文献1には、コモンモードアイソレーション特性を改善する技術についての開示はない。
【0009】
本発明の目的は、コモンモードアイソレーション特性に優れたデュプレクサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るデュプレクサは、アンテナ端子と、
不平衡信号端子と、
第1、第2平衡信号端子と、
基準接地端子と、
前記アンテナ端子と前記不平衡信号端子との間に配置される第1フィルタと、
縦結合共振子型の第1SAWフィルタ部を有し、且つ前記アンテナ端子と前記第1、第2平衡信号端子との間に配置される第2フィルタと、
を備え、
前記第1SAWフィルタ部は、中央IDT電極と、前記中央IDT電極の一方側で該中央IDT電極と隣接配置される第1隣接IDT電極と、前記中央IDT電極の他方側で該中央IDT電極と隣接配置される第2隣接IDT電極と、を含んで構成され、
前記中央IDT電極が、複数の第1電極指を有する第1櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第2電極指を有し、且つ前記第1平衡信号端子に接続される第2櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第3電極指を有し、且つ前記第2平衡信号端子に接続される第3櫛歯状電極と、を含み、
前記第1櫛歯状電極が前記基準接地端子と電気的に接続されることにより接地されているものである。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、コモンモードアイソレーション特性に優れたデュプレクサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態であるデュプレクサ10の等価回路図である。
【図2】第1SAWフィルタ部7を拡大して示す図である。
【図3】第1SAWフィルタ部7Aを拡大して示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態であるデュプレクサ12の等価回路図である。
【図5】第1SAWフィルタ部11を拡大して示す図である。
【図6】第1SAWフィルタ部11Aを拡大して示す図である。
【図7】第1SAWフィルタ部11Bを拡大して示す図である。
【図8】第1SAWフィルタ部11Cを拡大して示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態であるデュプレクサ15の等価回路図である。
【図10】第1SAWフィルタ部13および第2SAWフィルタ部14を拡大して示す図である。
【図11】第1SAWフィルタ部13Aを拡大して示す図である。
【図12】挿入反射器の接地用電極指の本数と、受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13A】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13B】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図13C】ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例および比較例のコモンモードアイソレーション特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るデュプレクサについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態であるデュプレクサ10の等価回路図である。デュプレクサ10は、アンテナ端子1と、不平衡信号端子2と、第1平衡信号端子3aと、第2平衡信号端子3bと、基準接地端子4と、第1フィルタ5と、第2フィルタ6とを含む。
【0015】
デュプレクサ10では、第1フィルタ5は、アンテナ端子1と不平衡信号端子2との間に配置され、第2フィルタ6は、アンテナ端子1と第1、第2平衡信号端子3a,3bとの間に配置されている。デュプレクサ10に接続された信号源から発信されて不平衡信号端子2から入力される送信信号は、第1フィルタ5を通過し、送信側通過周波数帯域の信号がアンテナ端子1から出力される。また、アンテナ端子1から入力される受信信号は、第2フィルタ6を通過し、受信側通過周波数帯域の信号が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bから出力される。
【0016】
第1フィルタ5は、高い耐電力性を有するラダー型のSAWフィルタであり、複数の1ポートSAW共振器である、第1共振器51、第2共振器52、第3共振器53、第4共振器54、第5共振器55、第6共振器56、第7共振器57および第8共振器58を、ラダー型に接続して構成される。
【0017】
第1共振器51は、複数の電極指を有するIDT(Inter Digital Transducer)電極である第1共振器電極51aと、第1共振器電極51aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第1共振用反射器51bとを含み、不平衡信号端子2と接続される。第1共振器51の不平衡信号端子2とは反対側に、第2共振器52と第3共振器53とが並列接続されている。
【0018】
第2共振器52は、複数の電極指を有するIDT電極である第2共振器電極52aと、第2共振器電極52aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第2共振用反射器52bとを含む。第3共振器53は、複数の電極指を有するIDT電極である第3共振器電極53aと、第3共振器電極53aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第3共振用反射器53bとを含み、第1インダクタ2aを介して接地されている。
【0019】
また、第2共振器52の第1共振器51とは反対側に、第4共振器54と第5共振器55とが並列接続されている。第4共振器54は、複数の電極指を有するIDT電極である第4共振器電極54aと、第4共振器電極54aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第4共振用反射器54bとを含む。第5共振器55は、複数の電極指を有するIDT電極である第5共振器電極55aと、第5共振器電極55aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第5共振用反射器55bとを含み、第2インダクタ2bを介して接地されている。
【0020】
また、第4共振器54の第2共振器52とは反対側に、第6共振器56が直列接続されている。この第6共振器56は、複数の電極指を有するIDT電極である第6共振器電極56aと、第6共振器電極56aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第6共振用反射器56bとを含む。そして、第6共振器56の第4共振器54とは反対側に、第7共振器57と第8共振器58とが並列接続されている。
【0021】
第7共振器57は、複数の電極指を有するIDT電極である第7共振器電極57aと、第7共振器電極57aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第7共振用反射器57bとを含み、アンテナ端子1と接続される。第8共振器58は、複数の電極指を有するIDT電極である第8共振器電極58aと、第8共振器電極58aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第8共振用反射器58bとを含み、第5共振器55と接続されて、第2インダクタ2bを介して接地されている。
【0022】
本実施形態のデュプレクサ10は、不平衡信号端子2から入力された送信信号が、第1フィルタ5を通過することによって、周波数824〜849MHzの送信側通過周波数帯域を有する信号がアンテナ端子1から出力されるように設計されている。
【0023】
また、アンテナ端子1と、第1フィルタ5および第2フィルタ6の分岐との間には、整合回路として第3インダクタ2cが接続されている。
【0024】
第2フィルタ6は、第1SAWフィルタ部7と、アンテナ端子側共振器8と、第1平衡信号端子側共振器9aと、第2平衡信号端子側共振器9bと、第4インダクタ3cとを含む。
【0025】
アンテナ端子側共振器8は、第2フィルタ6において、アンテナ端子1と接続されるSAW共振器である。アンテナ端子側共振器8は、複数の電極指を有するIDT電極であるアンテナ端子側共振器電極81と、アンテナ端子側共振器電極81に対するSAWの伝搬方向両端に配置されるアンテナ端子側共振用反射器82とを含む。第2フィルタ6において、受信信号が入力されるアンテナ端子1側にアンテナ端子側共振器8を直列に設けることによって、良好に整合をとることができる。
【0026】
次に、第1SAWフィルタ部7について、図2を用いて説明する。図2は、第1SAWフィルタ部7を拡大して示す図である。第1SAWフィルタ部7は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極71と、中央IDT電極71のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極71と隣接配置される第1隣接IDT電極72と、中央IDT電極71のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極71と隣接配置される第2隣接IDT電極73とを含んで構成される。
【0027】
中央IDT電極71は、複数の第1電極指711aを有する第1櫛歯状電極711と、複数の第2電極指712aを有する第2櫛歯状電極712と、複数の第3電極指713aを有する第3櫛歯状電極713とを含む。
【0028】
第1櫛歯状電極711、第2櫛歯状電極712および第3櫛歯状電極713において、各々の第1電極指711a、第2電極指712aおよび第3電極指713aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極(バスバー)から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。
【0029】
第1櫛歯状電極711と第2櫛歯状電極712とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指711aと第2電極指712aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。また、第3櫛歯状電極713は、第2櫛歯状電極712と隣接配置され、第1櫛歯状電極711と第3櫛歯状電極713とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指711aと第3電極指713aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0030】
そして、第1櫛歯状電極711は、自身の帯状電極に設けられる接地用バンプ75を介して基準接地端子4と電気的に接続されることにより接地されている。第2櫛歯状電極712は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続されている。第3櫛歯状電極713は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0031】
これによって、デュプレクサ10では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極71に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、第1櫛歯状電極711から接地用バンプ75を介して基準接地端子4に伝搬させることができる。そのため、コモンモードアイソレーション特性を劣化させる要因となる信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに出力されるのを抑制することができる。したがって、デュプレクサ10は、コモンモードアイソレーションがハイアイソレーションとなり、コモンモードアイソレーション特性を改善することができる。
【0032】
また、デュプレクサ10において、第1櫛歯状電極711を基準接地端子4に接続させる構成は、接地用バンプ75を設ける構成に限定されるものではなく、たとえば図3のようにしてもよい。図3は、第1SAWフィルタ部7Aを拡大して示す図である。図3に示す第1SAWフィルタ部7Aでは、第1櫛歯状電極711の帯状電極と、2つの第1SAWフィルタ用反射器74との間に絶縁体からなるブリッジ絶縁体76が設けられている。そして、ブリッジ絶縁体76の上から接続パターン導体77が設けられている。これにより、第1櫛歯状電極711と2つの第1SAWフィルタ用反射器74とが、接続パターン導体77を介して電気的に接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極711が、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を介して、第1SAWフィルタ用反射器74に接続され、その第1SAWフィルタ用反射器74が基準接地端子4に接続されることにより接地されている。このように構成されたデュプレクサ10では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極71に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を介して、第1櫛歯状電極711から基準接地端子4に伝搬させることができる。
【0033】
なお、第1平衡信号端子側共振器9aは、SAW共振器であり、複数の電極指を有するIDT電極である第1平衡信号端子側共振器電極91aと、第1平衡信号端子側共振器電極91aに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第1平衡信号端子側共振用反射器92aとを含む。第2平衡信号端子側共振器9bは、SAW共振器であり、複数の電極指を有するIDT電極である第2平衡信号端子側共振器電極91bと、第2平衡信号端子側共振器電極91bに対するSAWの伝搬方向両端に配置される第2平衡信号端子側共振用反射器92bとを含む。第2フィルタ6において、信号が出力される第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3b側に、第1平衡信号端子側共振器9aおよび第2平衡信号端子側共振器9bを設けることによって、静電破壊耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、第1平衡信号端子側共振器9aと第1平衡信号端子3aとを接続する信号出力配線と、第2平衡信号端子側共振器9bと第2平衡信号端子3bとを接続する信号出力配線との間には、整合回路として第4インダクタ3cが接続されている。
【0035】
中央IDT電極71に一方側で隣接配置される第1隣接IDT電極72は、複数の第4電極指722aを有する第4櫛歯状電極722と、複数の第5電極指721aを有する第5櫛歯状電極721とを含む。
【0036】
第4櫛歯状電極722および第5櫛歯状電極721において、各々の第4電極指722aおよび第5電極指721aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第4櫛歯状電極722と第5櫛歯状電極721とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第4電極指722aと第5電極指721aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0037】
そして、第4櫛歯状電極722はアンテナ端子側共振器8に接続され、第5櫛歯状電極721は接地されている。
【0038】
中央IDT電極71に他方側で隣接配置される第2隣接IDT電極73は、複数の第6電極指732aを有する第6櫛歯状電極732と、複数の第7電極指731aを有する第7櫛歯状電極731とを含む。
【0039】
第6櫛歯状電極732および第7櫛歯状電極731において、各々の第6電極指732aおよび第7電極指731aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第6櫛歯状電極732と第7櫛歯状電極731とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第6電極指732aと第7電極指731aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0040】
そして、第6櫛歯状電極732はアンテナ端子側共振器8に接続され、第7櫛歯状電極731は接地されている。
【0041】
また、第1SAWフィルタ部7において、第1隣接IDT電極72の中央IDT電極71とは反対側と、第2隣接IDT電極73の中央IDT電極71とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器74が設けられている。中央IDT電極71、第1隣接IDT電極72および第2隣接IDT電極73で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器74によって反射され、定在波を発生させる。
【0042】
本実施形態のデュプレクサ10は、アンテナ端子1から入力された受信信号が、第2フィルタ6を通過することによって、周波数869〜894MHzの受信側通過周波数帯域を有する信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bから出力されるように設計されている。
【0043】
図4は、本発明の第2実施形態であるデュプレクサ12の等価回路図である。デュプレクサ12は、前述したデュプレクサ10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。デュプレクサ12は、第1SAWフィルタ部11の構成が、デュプレクサ10の第1SAWフィルタ部7と異なり、それ以外は同様の構成である。図5は、第1SAWフィルタ部11を拡大して示す図である。
【0044】
第1SAWフィルタ部11は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極111と、中央IDT電極111のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極111と隣接配置される第1隣接IDT電極112と、中央IDT電極111のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極111と隣接配置される第2隣接IDT電極113とを含む。
【0045】
第1隣接IDT電極112は、前述した第1SAWフィルタ部7の第1隣接IDT電極72と同様に構成され、複数の第4電極指1122aを有する第4櫛歯状電極1122と、複数の第5電極指1121aを有する第5櫛歯状電極1121とを含む。第4櫛歯状電極1122はアンテナ端子側共振器8に接続され、第5櫛歯状電極1121は接地されている。
【0046】
第2隣接IDT電極113は、前述した第1SAWフィルタ部7の第2隣接IDT電極73と同様に構成され、複数の第6電極指1132aを有する第6櫛歯状電極1132と、複数の第7電極指1131aを有する第7櫛歯状電極1131とを含む。第6櫛歯状電極1132はアンテナ端子側共振器8に接続され、第7櫛歯状電極1131は接地されている。
【0047】
デュプレクサ12において特徴的な構成は、第1SAWフィルタ部11の中央IDT電極111の構成である。中央IDT電極111は、複数の第1電極指1111aを有する第1櫛歯状電極1111と、複数の第2電極指1112aを有する第2櫛歯状電極1112と、複数の第3電極指1113aを有する第3櫛歯状電極1113と、複数の接地用電極指1114aを有する挿入反射器1114と、挿入反射器1114と基準接地端子4との間に接続された挿入反射器用インダクタ1115とを含む。
【0048】
第1櫛歯状電極1111、第2櫛歯状電極1112および第3櫛歯状電極1113において、各々の第1電極指1111a、第2電極指1112aおよび第3電極指1113aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。
【0049】
第1櫛歯状電極1111と第2櫛歯状電極1112とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指1111aと第2電極指1112aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。また、第3櫛歯状電極1113は、第2櫛歯状電極1112と隣接配置され、第1櫛歯状電極1111と第3櫛歯状電極1113とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第1電極指1111aと第3電極指1113aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0050】
挿入反射器1114は、接地用電極指1114aが、第2櫛歯状電極1112および第3櫛歯状電極1113の各電極指と平行になるように、第2櫛歯状電極1112と第3櫛歯状電極1113との間に配置され、かつ該接地用電極指1114aが、第1櫛歯状電極1111の帯状電極と接続されている。この挿入反射器1114は、挿入反射器用インダクタ1115を介して基準接地端子4と接続される。
【0051】
すなわち、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114を介して基準接地端子4に接続されることにより接地されている。また、第2櫛歯状電極1112は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続され、第3櫛歯状電極1113は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0052】
このように構成されたデュプレクサ12では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極111に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、挿入反射器1114および挿入反射器用インダクタ1115を介して、第1櫛歯状電極1111から基準接地端子4に伝搬させることができる。これにより、コモンモードアイソレーション特性を劣化させる要因となる信号が第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに出力されるのを抑制することができる。したがって、デュプレクサ12は、コモンモードアイソレーションがハイアイソレーションとなり、優れたコモンモードアイソレーション特性を有することができる。
【0053】
また、挿入反射器1114に接続された挿入反射器用インダクタ1115によって減衰極周波数を制御することでコモンモードアイソレーションをよりハイアイソレーションとすることができる。
【0054】
さらに、第1櫛歯状電極1111と基準接地端子4との間の接続構造を、挿入反射器1114を介する接続構造とすることによって、前述した接地用バンプ75を設ける接続構造や、ブリッジ絶縁体76および接続パターン導体77による立体構造の接地パターン導体を設ける接続構造と比較して、デュプレクサの小型化を図ることができる。接地用バンプ75あるいは立体構造の接地パターン導体を設ける接続構造の場合、製造ばらつき等を考慮してその周囲にあるものとの間に所定の間隔を空ける必要がある。たとえば、接地バンプ75は、第1隣接IDT電極と第2隣接IDT電極とを接続する配線導体で囲まれる領域の中に設けられるが、この配線導体と接地バンプ75とが接触しないように製造ばらつきも考慮して両者間に60μm程度の間隔を設けておく必要がある。これに対し、挿入反射器1114を介する接続構造とすれば、配線導体など間隔を設けておく必要のあるものが少ない領域へ引き出すことができるため、その分デュプレクサを小型化することができる。また配線導体との間で発生し得る寄生容量を小さくすることができるという利点もある。
【0055】
なお、第1SAWフィルタ部11において、第1隣接IDT電極112の中央IDT電極111とは反対側と、第2隣接IDT電極113の中央IDT電極111とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器114が設けられている。中央IDT電極111、第1隣接IDT電極112および第2隣接IDT電極113で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器114によって反射され、定在波を発生させる。
【0056】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図6のようにしてもよい。図6は、第1SAWフィルタ部11Aを拡大して示す図である。図6に示す第1SAWフィルタ部11Aでは、中央IDT電極111の第1櫛歯状電極1111と、第1隣接IDT電極112の第5櫛歯状電極1121とが、第1共通電極指115により接続されている。また、中央IDT電極111の第1櫛歯状電極1111と、第2隣接IDT電極113の第7櫛歯状電極1131とが、第2共通電極指116により接続されている。
【0057】
このように構成される第1SAWフィルタ部11Aを備えるデュプレクサ12では、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114を介して基準接地端子4に接続されて接地されているだけではなく、接地されている第5櫛歯状電極1121と第1共通電極指115を介して接続され、接地されている第7櫛歯状電極1131と第2共通電極指116を介して接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極1111は、挿入反射器1114の接地用電極指1114a、第1共通電極指115および第2共通電極指116によって、並列接続された状態で接地されている。
【0058】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図7のようにしてもよい。図7は、第1SAWフィルタ部11Bを拡大して示す図である。図7に示す第1SAWフィルタ部11Bでは、挿入反射器1114の接地用電極指1114aのうち少なくとも1つずつが、第2櫛歯状電極1112の第2電極指1112aの間、および、第3櫛歯状電極1113の第3電極指1113aの間に配置されて、第1櫛歯状電極1111の帯状電極に接続されている。
【0059】
また、デュプレクサ12において、第1SAWフィルタ部11の構成は、たとえば図8のようにしてもよい。図8は、第1SAWフィルタ部11Cを拡大して示す図である。図8に示す第1SAWフィルタ部11Cでは、第1隣接IDT電極112の中央IDT電極111とは反対側に第1端部IDT電極117が配置され、第2隣接IDT電極113の中央IDT電極111とは反対側に第2端部IDT電極118が配置されている。
【0060】
第1端部IDT電極117は、複数の第8電極指1172aを有する第8櫛歯状電極1172と、複数の第9電極指1171aを有する第9櫛歯状電極1171とを含む。第8櫛歯状電極1172および第9櫛歯状電極1171において、各々の第8電極指1172aおよび第9電極指1171aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第8櫛歯状電極1172と第9櫛歯状電極1171とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第8電極指1172aと第9電極指1171aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。そして、第8櫛歯状電極1172は、第2櫛歯状電極1112と並列接続状態で第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続され、第9櫛歯状電極1171は接地されている。
【0061】
第2端部IDT電極118は、複数の第10電極指1182aを有する第10櫛歯状電極1182と、複数の第11電極指1181aを有する第11櫛歯状電極1181とを含む。第10櫛歯状電極1182および第11櫛歯状電極1181において、各々の第10電極指1182aおよび第11電極指1181aは、それぞれの櫛歯状電極が有する帯状電極から、SAWの伝搬方向に直交する方向に突出して形成されている。第10櫛歯状電極1182と第11櫛歯状電極1181とは、それぞれの帯状電極同士が平行に配置され、かつ両帯状電極の対向領域内で第10電極指1182aと第11電極指1181aとが、SAWの伝搬方向に対して交互に配置されるように、かみ合わせた状態で対向配置させて構成される。そして、第10櫛歯状電極1182は、第3櫛歯状電極1113と並列接続状態で第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続され、第11櫛歯状電極1181は接地されている。このように端部IDT電極を設けることによって設計の自由度が向上し、通過周波数帯域内のVSWRやバランス度といった特性を最適化しやすくすることができる。
【0062】
図9は、本発明の第3実施形態であるデュプレクサ15の等価回路図である。デュプレクサ15は、前述したデュプレクサ10,12に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。デュプレクサ15は、第2フィルタ6が第1SAWフィルタ部13と第2SAWフィルタ部14とを備えること以外は、デュプレクサ10,12と同様に構成される。図10は、第1SAWフィルタ部13および第2SAWフィルタ部14を拡大して示す図である。
【0063】
デュプレクサ15の第2フィルタ6において、第1SAWフィルタ部13が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3b側に配置され、第2SAWフィルタ部14が、アンテナ端子1側に配置される。
【0064】
第1SAWフィルタ部13は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、中央IDT電極131と、中央IDT電極131のSAWの伝搬方向一方側で該中央IDT電極131と隣接配置される第1隣接IDT電極132と、中央IDT電極131のSAWの伝搬方向他方側で該中央IDT電極131と隣接配置される第2隣接IDT電極133とを含む。
【0065】
第1隣接IDT電極132は、複数の第4電極指1322aを有する第4櫛歯状電極1322と、複数の第5電極指1321aを有する第5櫛歯状電極1321とを含む。第4櫛歯状電極1322は、第2SAWフィルタ部14の第3隣接IDT電極142の第14櫛歯状電極1422に接続され、第5櫛歯状電極1321は接地されている。
【0066】
第2隣接IDT電極133は、複数の第6電極指1332aを有する第6櫛歯状電極1332と、複数の第7電極指1331aを有する第7櫛歯状電極1331とを含む。第6櫛歯状電極1332は、第2SAWフィルタ部14の第4隣接IDT電極143の第16櫛歯状電極1432に接続され、第7櫛歯状電極1331は接地されている。
【0067】
中央IDT電極131は、複数の第1電極指1311aを有する第1櫛歯状電極1311と、複数の第2電極指1312aを有する第2櫛歯状電極1312と、複数の第3電極指1313aを有する第3櫛歯状電極1313と、複数の接地用電極指1314aを有する挿入反射器1314と、挿入反射器1314と基準接地端子4との間に接続された挿入反射器用インダクタ1315とを含む。
【0068】
挿入反射器1314は、接地用電極指1314aが、第2櫛歯状電極1312および第3櫛歯状電極1313の各電極指と平行になるように、第2櫛歯状電極1312と第3櫛歯状電極1313との間に配置され、かつ該接地用電極指1314aが、第1櫛歯状電極1311の帯状電極と接続されている。この挿入反射器1314は、挿入反射器用インダクタ1315を介して基準接地端子4と接続される。
【0069】
すなわち、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314を介して基準接地端子4に接続されることにより接地されている。また、第2櫛歯状電極1312は、第1平衡信号端子側共振器9aを介して第1平衡信号端子3aに接続されている。第3櫛歯状電極1313は、第2平衡信号端子側共振器9bを介して第2平衡信号端子3bに接続されている。
【0070】
このように構成されたデュプレクサ12では、第1フィルタ5を通過する送信信号の一部が漏れ電力となって第2フィルタ6側にリークし、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに接続される中央IDT電極131に伝搬された場合であっても、そのリーク信号を、挿入反射器1314および挿入反射器用インダクタ1315を介して、第1櫛歯状電極1311から基準接地端子4に伝搬させることができる。さらに挿入反射器用インダクタ1315でコモンモードアイソレーションの減衰極周波数を調整することにより、所望の周波数帯をより高減衰にすることができる。したがって、デュプレクサ15は、コモンモードアイソレーションの高減衰量が確保されて、優れたコモンモードアイソレーション特性を有することができる。
【0071】
また、デュプレクサ15において第1SAWフィルタ部13では、第1隣接IDT電極132の第4櫛歯状電極1322が有する第4電極指1322aのうち少なくとも1つが、中央IDT電極131の第2櫛歯状電極1312が有する第2電極指1312aの間に配置されている。さらに、第2隣接IDT電極133の第6櫛歯状電極1332が有する第6電極指1332aのうち少なくとも1つが、中央IDT電極131の第3櫛歯状電極1313が有する第3電極指1313aの間に配置されている。このような電極指配置とすることによって、中央IDT電極131の一部と第1隣接IDT電極132の一部、あるいは中央IDT電極131の一部と第2隣接IDT電極133の一部とが直接交差するため挿入損失を小さくすることができる。
【0072】
なお、第1SAWフィルタ部13において、第1隣接IDT電極132の中央IDT電極131とは反対側と、第2隣接IDT電極133の中央IDT電極131とは反対側とに、第1SAWフィルタ用反射器134が設けられている。中央IDT電極131、第1隣接IDT電極132および第2隣接IDT電極133で励起されて伝搬するSAWは、第1SAWフィルタ用反射器134によって反射され、定在波を発生させる。
【0073】
第2SAWフィルタ部14は、縦結合共振子型のSAWフィルタであり、第2中央IDT電極141と、第2中央IDT電極141のSAWの伝搬方向一方側で該第2中央IDT電極141と隣接配置される第3隣接IDT電極142と、第2中央IDT電極141のSAWの伝搬方向他方側で該第2中央IDT電極141と隣接配置される第4隣接IDT電極143とを含んで構成される。
【0074】
第3隣接IDT電極142は、複数の第14電極指1422aを有する第14櫛歯状電極1422と、複数の第15電極指1421aを有する第15櫛歯状電極1421とを含む。第14櫛歯状電極1422は、第1SAWフィルタ部13の第1隣接IDT電極132の第4櫛歯状電極1322に接続され、第15櫛歯状電極1421は接地されている。
【0075】
第4隣接IDT電極143は、複数の第16電極指1432aを有する第16櫛歯状電極1432と、複数の第17電極指1431aを有する第17櫛歯状電極1431とを含む。第16櫛歯状電極1432は、第1SAWフィルタ部13の第2隣接IDT電極133の第6櫛歯状電極1332に接続され、第17櫛歯状電極1431は接地されている。
【0076】
第2中央IDT電極141は、複数の第12電極指1411aを有する第12櫛歯状電極1411と、複数の第13電極指1412aを有する第13櫛歯状電極1412とを含む。第12櫛歯状電極1411は接地され、第13櫛歯状電極1412はアンテナ端子側共振器8に接続されている。
【0077】
なお、第2SAWフィルタ部14において、第3隣接IDT電極142の第2中央IDT電極141とは反対側と、第4隣接IDT電極143の第2中央IDT電極141とは反対側とに、第2SAWフィルタ用反射器144が設けられている。第2中央IDT電極141、第3隣接IDT電極142および第4隣接IDT電極143で励起されて伝搬するSAWは、第2SAWフィルタ用反射器144によって反射され、定在波を発生させる。このようにSAWフィルタ部を2段構成とすることで、1段構成の場合に比べて高減衰にすることができる。
【0078】
また、デュプレクサ15において、第1SAWフィルタ部13の構成は、たとえば図11のようにしてもよい。図11は、第1SAWフィルタ部13Aを拡大して示す図である。図11に示す第1SAWフィルタ部13Aでは、中央IDT電極131の第1櫛歯状電極1311と、第1隣接IDT電極132の第5櫛歯状電極1321とが、第1共通電極指135により接続されている。また、中央IDT電極131の第1櫛歯状電極1311と、第2隣接IDT電極133の第7櫛歯状電極1331とが、第2共通電極指136により接続されている。
【0079】
このように構成される第1SAWフィルタ部13Aを備えるデュプレクサ15では、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314を介して基準接地端子4に接続されて接地されているだけではなく、接地されている第5櫛歯状電極1321と第1共通電極指135を介して接続され、接地されている第7櫛歯状電極1331と第2共通電極指136を介して接続されている。すなわち、第1櫛歯状電極1311は、挿入反射器1314の接地用電極指1314a、第1共通電極指135および第2共通電極指136によって、並列接続された状態で接地されている。これによって、第1フィルタ5から第2フィルタ6側にリークしたリーク信号が、第1平衡信号端子3aおよび第2平衡信号端子3bに伝搬するのを抑制する効果を向上することができる。
【0080】
次に、前述したデュプレクサ12,15に備えられる挿入反射器の接地用電極指の本数、電極指ピッチについて、説明する。
【0081】
図12は、挿入反射器の接地用電極指の本数と、受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。図12のグラフにおける横軸は挿入反射器の接地用電極指の本数(本)を示し、縦軸は受信周波数帯域内リップル(dB)を示す。なお、図12において、挿入反射器の接地用電極指のピッチは、そのピッチ平均値が、中央IDT電極の全電極指の本数に対しその両端から10%の本数分だけそれぞれ除いた残りの電極指についてのピッチ(以下、「中央IDT電極指ピッチ」という)の平均値と等しくされている。たとえば、中央IDT電極が100本(50対)の電極指からなる場合は、両端からそれぞれ10本を除いた残りの80本の中央IDT電極指ピッチの平均値と接地用電極指のピッチの平均値とが等しくされている。ここで平均値が等しいとは、中央IDT電極指ピッチの平均値をP1、接地用電極指のピッチの平均値をP2としたときに、|P2−P1|/P1≦0.05の場合をいう。なお電極指ピッチとは、隣接する電極指同士の中心間距離をいう。
【0082】
図12のグラフから明らかなように、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた状態で、接地用電極指の本数を18本以下とすることによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。
【0083】
図13A、図13Bおよび図13Cは、ピッチ変化率と受信周波数帯域内リップルとの関係を示すグラフである。図13A、図13Bおよび図13Cのグラフにおける横軸はピッチ変化率(%)を示し、縦軸は受信周波数帯域内リップル(dB)を示す。ここで、ピッチ変化率Pcrは、以下に示す式(1)によって導かれる。
Pcr(%)=((P2−P1)/P1)×100 …(1)
【0084】
図13A(a)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を2本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13A(a)から明らかなように、接地用電極指の本数を2本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−30〜90%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を2本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−20〜80%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態(ピッチ変化率が0%の状態)の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0085】
また、図13A(b)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を4本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13A(b)から明らかなように、接地用電極指の本数を4本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−9〜30%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を4本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−8〜30%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0086】
また、図13B(c)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を6本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13B(c)から明らかなように、接地用電極指の本数を6本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−5〜19%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を6本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−4〜17.5%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0087】
また、図13B(d)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を8本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13B(d)から明らかなように、接地用電極指の本数を8本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−3〜14%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を8本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−3〜12.5%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0088】
また、図13C(e)は、挿入反射器の接地用電極指の本数を10本に設定したときの、ピッチ変化率Pcrと受信周波数帯域内リップルとの関係を示す。図13C(e)から明らかなように、接地用電極指の本数を10本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−2〜11%の範囲に設定することによって、受信周波数帯域内リップルを1dB以下に抑制することができる。また、接地用電極指の本数を10本に設定したとき、ピッチ変化率Pcrを−1〜10%の範囲に設定することによって、接地用電極指ピッチの平均値が中央IDT電極指ピッチの平均値と等しくされた基準状態の受信周波数帯域内リップルに対して、0.3dB以下の劣化に抑制することができる。
【0089】
(実施例)
以下、本発明の実施形態についての実施例を示す。なお、これらの実施例はあくまで本発明の実施形態の一例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、送信側通過周波数帯域が、周波数824〜849MHz、受信側通過周波数帯域が、周波数869〜894MHzとなるように、デュプレクサを設計した。
【0090】
<実施例1および比較例1のデュプレクサの作製>
(実施例1)
LiTaO3からなる圧電基板を用意し、その主面上に、厚みが6nmのTi薄膜層を形成し、その上に厚み391nmのAl−Cu薄膜層を形成した。
【0091】
次に、レジスト塗布装置により、Ti/Al−Cu積層膜の上にフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。そして、縮小投影露光機(ステッパ)により、図9に示した配置位置を有するように、共振器や信号線、接地線、パッド電極、挿入反射器用インダクタ等となるフォトレジストパターンを形成した。その後、現像装置により、不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
【0092】
次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置により、必要な箇所を残して残りをエッチングで除去し、図9に示した回路構成を実現する回路パターンを形成した。このとき図9に示した挿入反射器1314に接続される挿入反射器用インダクタも他の電極等と同じ薄膜で形成することにより、挿入反射器用インダクタが比較的大きなインダクタンス値を有するようにすることができる。表1にSAWフィルタ部の作製条件を、表2に共振器の作製条件を示す。なお、前述した回路パターンの形成は、多数個取り用の母基板の状態である圧電基板上に、所望の回路パターンを2次元的に繰り返し配置することで行っている。
【0093】
次に、回路パターンの所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical
Vapor Deposition)装置により、圧電基板の主面上に電極パターンおよびSiO2膜を約15nmの厚みに形成した。そして、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行い、RIE装置等でフリップチップ用電極部(入出力電極、接地電極などのパッド電極部分、および環状電極部分)のSiO2膜のエッチングを行った。
【0094】
次に、スパッタリング装置を使用し、SiO2膜を除去した部分に、Cr,Ni,Auよりなる積層電極を成膜した。このときの電極膜厚は約1μm(Cr:0.01μm、Ni:1μm、Au:0.2μm)とした。そして、フォトレジストおよび不要箇所の積層電極をリフトオフ法により同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用バンプを接続するためのフリップチップ用電極部とした。
【0095】
その後、圧電基板に設けられたダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、圧電基板上に電極パターンが形成されてなる状態の多数のチップを得た。
【0096】
次に、インダクタンス素子に相当する線路を内部に設けた回路基板を用意し、その上に、タングステンからなるパターン電極、入出力導体、接地導体、および環状導体の導電材(半田)を印刷してセラミック回路基板を得た。そして、フリップチップ実装装置によって、各チップを、電極形成面を下面にして該セラミック回路基板上に仮接着した。窒素雰囲気中でベークを行い、半田を溶融することによって、チップとセラミック回路基板とを接着した。チップに形成された環状電極と、セラミック回路基板に形成された環状導体とにおいて半田が溶融し、接着することで、チップ表面の電極パターンが気密封止された。
【0097】
さらに、チップが接着されたセラミック回路基板に樹脂を塗布し、ベークを行い、チップを樹脂封止した。
【0098】
そして、セラミック回路基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施して個片に分割することで、回路基板上に実装された状態の、実施例1に係るデュプレクサが得られた。なお、個片に分割された状態のセラミック回路基板は、平面サイズが2.5×2.0mmであり、積層構造を有してなる。
【0099】
実施例1のデュプレクサは、受信用フィルタの第2フィルタが第1SAWフィルタ部と第2SAWフィルタ部を備え、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第2櫛歯状電極と第3櫛歯状電極との間に挿入反射器が配置され、第1櫛歯状電極が挿入反射器を介して基準接地端子に接続されてなる、前述したデュプレクサ15である。
【0100】
(比較例1)
中央IDT電極に挿入反射器が設けられていないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のデュプレクサを得た。この比較例1のデュプレクサは、中央IDT電極において第1櫛歯状電極が、基準接地端子に接続されていない、浮き電極となる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
<実施例1および比較例1のデュプレクサの周波数特性>
実施例1および比較例1のデュプレクサについて、周波数特性を評価した。図14は、実施例および比較例のコモンモードアイソレーション特性を示すグラフである。図14(a)が、実施例1および比較例1のコモンモードアイソレーション特性を示す。図14(a)のグラフにおける横軸は周波数(MHz)を、縦軸はコモンモードアイソレーション(dB)を表している。図14(a)のグラフにおいて、実線A1の特性曲線が実施例1のデュプレクサの結果を示し、破線B1の特性曲線が比較例1のデュプレクサの結果を示す。
【0104】
また、実施例1および比較例1のデュプレクサについての送受信側それぞれの挿入損失と、アイソレーションの減衰量とを表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表3および図14(a)に示す結果から、実施例1のデュプレクサは、挿入反射器が設けられていない比較例1のデュプレクサに比べて、送信側通過周波数帯域F1のコモンモードアイソレーションの減衰量が大きく、優れたコモンモードアイソレーション特性を有していることが分かる。それ以外の特性は、比較例とほぼ同等である。すなわち、挿入損失特性等はほとんど劣化させずにコモンモードアイソレーション特性を大幅に改善することができた。
【0107】
<実施例2および比較例2のデュプレクサの作製>
(実施例2)
実施例1と同様にして、実施例2のデュプレクサを作製した。実施例2のデュプレクサは、図9に示す回路構成からなるデュプレクサ15の第1SAWフィルタ部13を図3に示す第1SAWフィルタ部7Aに置き換えたものである。表4にSAWフィルタ部の作製条件を、表5に共振器の作製条件を示す。
【0108】
実施例2のデュプレクサは、受信用フィルタの第2フィルタが第1SAWフィルタ部を備え、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第1櫛歯状電極が、ブリッジ絶縁体および接続パターン導体による立体構造の接地パターン導体を介して基準接地端子に接続されたものである。
【0109】
(比較例2)
中央IDT電極に立体構造の接地パターン導体が設けられていないこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のデュプレクサを得た。この比較例2のデュプレクサは、中央IDT電極において第1櫛歯状電極が、基準接地端子に接続されていない、浮き電極となる。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
<実施例2および比較例2のデュプレクサの周波数特性>
実施例2および比較例2のデュプレクサについて、周波数特性を評価した。図14(b)が、実施例2および比較例2のコモンモードアイソレーション特性を示す。図14(b)のグラフにおける横軸は周波数(MHz)を、縦軸はコモンモードアイソレーション(dB)を表している。図14(b)のグラフにおいて、実線A2の特性曲線が実施例2のデュプレクサの結果を示し、破線B2の特性曲線が比較例2のデュプレクサの結果を示す。
【0113】
また、実施例2および比較例2のデュプレクサについての送受信側それぞれの挿入損失と、アイソレーションの減衰量とを表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
表6および図14(b)に示す結果から、第1SAWフィルタ部の中央IDT電極において、第1櫛歯状電極が、ブリッジ絶縁体および接続パターン導体による立体構造の接地パターン導体を介して基準接地端子に接続された実施例2のデュプレクサは、立体構造の接地パターン導体が設けられていない比較例2のデュプレクサに比べて、送信側通過周波数帯域F1のコモンモードアイソレーションの減衰量が大きく、優れたコモンモードアイソレーション特性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0116】
1 アンテナ端子
2 不平衡信号端子
3a 第1平衡信号端子
3b 第2平衡信号端子
4 基準接地端子
5 第1フィルタ
6 第2フィルタ
7,7A,11,11A,11B,11C,13,13A 第1SAWフィルタ部
10,12,15 デュプレクサ
14 第2SAWフィルタ部
71,111,131 中央IDT電極
72,112,132 第1隣接IDT電極
73,113,133 第2隣接IDT電極
1114,1314 挿入反射器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、
不平衡信号端子と、
第1、第2平衡信号端子と、
基準接地端子と、
前記アンテナ端子と前記不平衡信号端子との間に配置される第1フィルタと、
縦結合共振子型の第1SAWフィルタ部を有し、且つ前記アンテナ端子と前記第1、第2平衡信号端子との間に配置される第2フィルタと、
を備え、
前記第1SAWフィルタ部は、中央IDT電極と、前記中央IDT電極の一方側で該中央IDT電極と隣接配置される第1隣接IDT電極と、前記中央IDT電極の他方側で該中央IDT電極と隣接配置される第2隣接IDT電極と、を含んで構成され、
前記中央IDT電極が、複数の第1電極指を有する第1櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第2電極指を有し、且つ前記第1平衡信号端子に接続される第2櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第3電極指を有し、且つ前記第2平衡信号端子に接続される第3櫛歯状電極と、を含み、
前記第1櫛歯状電極が前記基準接地端子と電気的に接続されることにより接地されているデュプレクサ。
【請求項2】
前記中央IDT電極は、複数の接地用電極指を有する挿入反射器をさらに備え、
前記挿入反射器は、前記第2櫛歯状電極と前記第3櫛歯状電極との間に配置され、且つ前記第1櫛歯状電極と接続され、
前記第1櫛歯状電極は、前記挿入反射器を介して前記基準接地端子に接続されている請求項1に記載のデュプレクサ。
【請求項3】
前記挿入反射器と前記基準接地端子との間に接続されたインダクタをさらに備える請求項2に記載のデュプレクサ。
【請求項4】
前記挿入反射器は、
前記複数の接地用電極指の本数が2本であり、
前記中央IDT電極の全電極指の10%相当分の本数を、該中央IDT電極の両端それぞれから除いた残りの電極指についてのピッチの平均値をP1、前記接地用電極指のピッチの平均値をP2としたときに、下記式(1)
Pcr(%)=((P2−P1)/P1)×100 …(1)
で表されるピッチ変化率Pcrが、−30〜90%の範囲に設定されている請求項2または3に記載のデュプレクサ。
【請求項5】
前記第1隣接IDT電極が、複数の第4電極指を有する第4櫛歯状電極と、前記複数の第4電極指の間に配置される複数の第5電極指を有する第5櫛歯状電極と、を有し、
前記第2隣接IDT電極が、複数の第6電極指を有する第6櫛歯状電極と、前記複数の第6電極指の間に配置される複数の第7電極指を有する第7櫛歯状電極と、を有し、
前記第5、第7櫛歯状電極が接地されている請求項1〜4のいずれか1つに記載のデュプレクサ。
【請求項6】
前記第2フィルタが、前記第1SAWフィルタ部と前記アンテナ端子との間に配置される縦結合共振子型の第2SAWフィルタ部を有し、
前記第4、第6櫛歯状電極が前記第2SAWフィルタ部と接続され、
前記複数の第4電極指のうち少なくとも1つが前記複数の第2電極指の間に配置され、
前記複数の第6電極指のうち少なくとも1つが前記複数の第3電極指の間に配置されている請求項5に記載のデュプレクサ。
【請求項7】
前記第1櫛歯状電極と前記第5櫛歯状電極とが第1共通電極指により接続され、
前記第1櫛歯状電極と前記第7櫛歯状電極とが第2共通電極指により接続されている請求項5に記載のデュプレクサ。
【請求項1】
アンテナ端子と、
不平衡信号端子と、
第1、第2平衡信号端子と、
基準接地端子と、
前記アンテナ端子と前記不平衡信号端子との間に配置される第1フィルタと、
縦結合共振子型の第1SAWフィルタ部を有し、且つ前記アンテナ端子と前記第1、第2平衡信号端子との間に配置される第2フィルタと、
を備え、
前記第1SAWフィルタ部は、中央IDT電極と、前記中央IDT電極の一方側で該中央IDT電極と隣接配置される第1隣接IDT電極と、前記中央IDT電極の他方側で該中央IDT電極と隣接配置される第2隣接IDT電極と、を含んで構成され、
前記中央IDT電極が、複数の第1電極指を有する第1櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第2電極指を有し、且つ前記第1平衡信号端子に接続される第2櫛歯状電極と、前記複数の第1電極指の間に配置される複数の第3電極指を有し、且つ前記第2平衡信号端子に接続される第3櫛歯状電極と、を含み、
前記第1櫛歯状電極が前記基準接地端子と電気的に接続されることにより接地されているデュプレクサ。
【請求項2】
前記中央IDT電極は、複数の接地用電極指を有する挿入反射器をさらに備え、
前記挿入反射器は、前記第2櫛歯状電極と前記第3櫛歯状電極との間に配置され、且つ前記第1櫛歯状電極と接続され、
前記第1櫛歯状電極は、前記挿入反射器を介して前記基準接地端子に接続されている請求項1に記載のデュプレクサ。
【請求項3】
前記挿入反射器と前記基準接地端子との間に接続されたインダクタをさらに備える請求項2に記載のデュプレクサ。
【請求項4】
前記挿入反射器は、
前記複数の接地用電極指の本数が2本であり、
前記中央IDT電極の全電極指の10%相当分の本数を、該中央IDT電極の両端それぞれから除いた残りの電極指についてのピッチの平均値をP1、前記接地用電極指のピッチの平均値をP2としたときに、下記式(1)
Pcr(%)=((P2−P1)/P1)×100 …(1)
で表されるピッチ変化率Pcrが、−30〜90%の範囲に設定されている請求項2または3に記載のデュプレクサ。
【請求項5】
前記第1隣接IDT電極が、複数の第4電極指を有する第4櫛歯状電極と、前記複数の第4電極指の間に配置される複数の第5電極指を有する第5櫛歯状電極と、を有し、
前記第2隣接IDT電極が、複数の第6電極指を有する第6櫛歯状電極と、前記複数の第6電極指の間に配置される複数の第7電極指を有する第7櫛歯状電極と、を有し、
前記第5、第7櫛歯状電極が接地されている請求項1〜4のいずれか1つに記載のデュプレクサ。
【請求項6】
前記第2フィルタが、前記第1SAWフィルタ部と前記アンテナ端子との間に配置される縦結合共振子型の第2SAWフィルタ部を有し、
前記第4、第6櫛歯状電極が前記第2SAWフィルタ部と接続され、
前記複数の第4電極指のうち少なくとも1つが前記複数の第2電極指の間に配置され、
前記複数の第6電極指のうち少なくとも1つが前記複数の第3電極指の間に配置されている請求項5に記載のデュプレクサ。
【請求項7】
前記第1櫛歯状電極と前記第5櫛歯状電極とが第1共通電極指により接続され、
前記第1櫛歯状電極と前記第7櫛歯状電極とが第2共通電極指により接続されている請求項5に記載のデュプレクサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【公開番号】特開2011−139122(P2011−139122A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295919(P2009−295919)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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