説明

デュプレクサ

【課題】急峻かつ温度安定性に優れたガードバンド側のスカート特性を有し、更に広帯域化が可能なデュプレクサを提供する。
【解決手段】通過帯域の異なる送信フィルタ及び受信フィルタを有するデュプレクサにおいて、フィルタを構成する複数の直列共振子S1〜S8及び複数の並列共振子P1〜P6のうち、ガードバンド側のスカート特性を形成する第1共振子S1〜S4、P4〜P6は、温度補償型のTC−FBARまたはラブ波利用の弾性表面波共振子とし、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する第2共振子P1〜P3、S5〜S8は、非温度補償型のFBARまたは弾性表面波共振子とする。第2共振子の弾性表面波共振子には、LT基板またはLTとSaの貼り合わせ基板を用いた弾性表面波共振子の他、ラブ波利用の弾性表面波共振子を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末の高周波回路等で使用されるデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする無線端末の高周波回路は、共通のアンテナ端子に接続された送信フィルタ及び受信フィルタを含むデュプレクサを備えている。各フィルタには、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)やバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)等の弾性波を利用する弾性波フィルタが用いられ、いずれの弾性波フィルタを用いるかは機器の仕様等に応じて決定される。例えば、送信フィルタ及び受信フィルタの両方をSAWフィルタまたはBAWフィルタとしてもよいし、一方をSAWフィルタ、他方をBAWフィルタとしてもよい。
【0003】
BAWフィルタは、基板上に下部電極、圧電薄膜、及び上部電極が順に積層された圧電薄膜共振子を複数組み合わせて構成される。圧電薄膜共振子としては、例えば下部電極と上部電極とが対向する領域の下に空隙が形成されたFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)タイプや、空隙の代わりに音響反射膜を用いたSMR(Solidly Mounted Resonator)タイプが知られている。また、圧電薄膜の共振周波数の温度係数と逆符号の温度係数を有する温度補償膜が、FBARに挿入された温度補償型のTC−FBAR(Temperature Compensated FBAR)が知られている。TC−FBARでは、フィルタの周波数温度係数TCF(Temperature Coefficient of Frequency)と電気機械結合係数keff(effective coupling coefficient)との間に、トレードオフの関係があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−137317号公報
【特許文献2】特開2004−15397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デュプレクサにおいては、送信フィルタ及び受信フィルタ間における信号の干渉を抑制するために、両フィルタの間にあるガードバンド側のスカート特性が急峻で、且つフィルタの温度安定性が良好であることが好ましい。しかし、上述したTCFとkeffとのトレードオフにより、温度安定性の向上のためにTCFを改善すると、keffが低下してフィルタの帯域幅が小さくなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、ガードバンド側のスカート特性の急峻化及び温度安定性の向上と、フィルタの広帯域化との両立が可能なデュプレクサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、通過帯域の異なる送信フィルタ及び受信フィルタを備えるデュプレクサであって、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタは、それぞれラダー状に接続された複数の直列共振子及び複数の並列共振子を含み、前記複数の直列共振子及び前記複数の並列共振子のうち、前記送信フィルタと前記受信フィルタの間のガードバンド側のスカート特性を形成する複数の第1共振子は、圧電薄膜並びに前記圧電薄膜を挟んで対向する下部電極及び上部電極を含む複数の層からなり且つ前記圧電薄膜の弾性定数の温度係数と逆符号の温度係数を有する温度補償膜が前記上部電極と前記下部電極との間に挟まれた温度補償型圧電薄膜共振子、または弾性表面波共振子のうちラブ波を利用した第1ラブ波型弾性表面波共振子、のうちいずれかの共振子であり、前記複数の直列共振子及び前記複数の並列共振子のうち、前記ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する複数の第2共振子は、圧電薄膜並びに前記圧電薄膜を挟んで対向する下部電極及び上部電極を含む複数の層からなり且つ前記温度補償膜を含まない非温度補償型圧電薄膜共振子、タンタル酸リチウム基板を用いたLT型弾性表面波共振子、タンタル酸リチウム基板をサファイア基板上に貼り付けた基板を用いたLT/Sa型弾性表面波共振子、または前記第1ラブ波型弾性表面波共振子より大きい電気機械結合係数を有する第2ラブ波型弾性表面波共振子、のうちいずれかの共振子であることを特徴とするデュプレクサである。
【0008】
上記構成において、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタの少なくとも一方において、前記複数の第1共振子のうち少なくとも1つの電気機械結合係数は、前記複数の第2共振子のうち少なくとも1つの電気機械結合係数より小さい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタの少なくとも一方において、前記ガードバンド側におけるフィルタの周波数温度係数は、前記ガードバンドと反対側におけるフィルタの周波数温度係数より小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記非温度補償型圧電薄膜共振子である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1共振子を構成する直列共振子と並列共振子の複数の層は1つの層を除いて膜厚が等しく、且つ、前記第2共振子を構成する直列共振子と並列共振子の複数の層は1つの層を除いて膜厚が等しい構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記LT型弾性表面波共振子である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記LT/Sa型弾性表面波共振子である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記第2ラブ波型弾性表面波共振子である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記温度補償膜は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物を主成分とする構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記圧電薄膜は、窒化アルミニウムを主成分とする構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記複数の第1共振子は、同一チップ上に形成されている構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記第1共振子及び前記受信第2共振子が形成されたチップは、実装基板にフリップチップにより搭載されている構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記送信フィルタに含まれる前記第1共振子と前記第2共振子同士、並びに前記受信フィルタに含まれる前記第1共振子と前記第2共振子同士は、それぞれ前記実装基板におけるダイアタッチ層上に形成された配線を介して、互いに電気的に接続されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガードバンド側のスカート特性の急峻化及び温度安定性の向上と、フィルタの広帯域化との両立が可能なデュプレクサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1〜2に係るデュプレクサの回路図である。
【図2】図2は、デュプレクサの通過特性を示す図である。
【図3】図3は、温度補償型圧電薄膜共振子の構成を示す図である。
【図4】図4は、温度補償膜を含まない圧電薄膜共振子の構成を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係るデュプレクサのレイアウトを示す平面模式図である。
【図6】図6は、実施例1に係るデュプレクサのレイアウトを示す断面模式図である。
【図7】図7は、シミュレーションに用いた積層膜の具体的な材質及び膜厚を示す図である。
【図8】図8は、実施例1に係るデュプレクサのフィルタ特性を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2に係るデュプレクサのレイアウトを示す平面図である。
【図10】図10は、LT/Sa基板を用いた弾性表面波共振子の構成を示す図である。
【図11】図11は、LT基板を用いた弾性表面波共振子の構成を示す図である。
【図12】図12は、ラブ波を用いた弾性表面波共振子の構成を示す図である。
【図13】図13は、実施例2に係るデュプレクサのフィルタ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
図1は、実施例1〜2に係るデュプレクサの回路図である。本実施例では、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)のBand2に使用されるデュプレクサ(送信帯域が1850〜1910MHz、受信帯域が1930〜1990MHz)を例に説明を行う。図1に示すように、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ10が、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ12がそれぞれ接続されている。送信フィルタ10及び受信フィルタ12は、それぞれ直列共振子及び並列共振子がラダー状に接続されたラダーフィルタである。アンテナ端子Antは、送信フィルタ10及び受信フィルタ12で共有されており、アンテナ端子Antとグランドとの間には整合用のインダクタL1が接続されている。
【0023】
送信フィルタ10は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に接続された直列共振子S1〜S4と、それぞれの直列共振子間に接続された並列共振子P1〜P3を含む。並列共振子P1〜P3の一端(直列共振子と接続された側と反対側)は共通化され、インダクタL2を介して接地されている。送信端子Txとグランドとの間には、整合用のインダクタL3が接続されている。
【0024】
受信フィルタ12は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に接続された直列共振子S5〜S8と、それぞれの直列共振子間に接続された並列共振子P4〜P6を含む。並列共振子P4〜P6の一端(直列共振子と接続された側と反対側)は、それぞれ別個のインダクタL4〜L6を介して接地されている。受信端子Rxとグランドとの間には、整合用のインダクタL7が接続されている。
【0025】
図2は、デュプレクサを構成する送信フィルタ10と受信フィルタ12のそれぞれの通過特性を示す図である。本実施例に係るBand2用のデュプレクサでは、受信フィルタ12の通過帯域(Rx)が送信フィルタ10の通過帯域(Tx)に比べ高い周波数帯にある。このため、送信フィルタ10の直列共振子S1〜S4及び受信フィルタ12の並列共振子P4〜P6が、送信フィルタ10と受信フィルタ12との間のガードバンド側におけるフィルタのスカート特性(符号20)を形成する。また、送信フィルタ10の並列共振子P1〜P3及び受信フィルタ12の直列共振子S5〜S8が、それぞれ上記ガードバンドと反対側におけるフィルタのスカート特性(符号22)を形成する。
【0026】
図1の直列共振子S1〜S8及び並列共振子P1〜P6には、例えば圧電薄膜共振子や弾性表面波共振子をはじめとする共振子を、機器の仕様等に応じて適宜用いることができる。本実施例では、ガードバンド側のスカート特性を形成する直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6に、温度補償型の圧電薄膜共振子(TC−FBAR)を用いる。また、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8には、温度補償膜を含まない非温度補償型の圧電薄膜共振子(FBAR)を用いる。これらの二種類の圧電薄膜共振子は、以下に詳述するように、それぞれ圧電薄膜並びに当該圧電薄膜を挟んで対向する下部電極及び上部電極を含む複数の層から構成されている。
【0027】
図3は、温度補償型の圧電薄膜共振子(TC−FBAR)の構成を示す図である。図3(a)はTC−FBARを上方向(上部電極側)から見た平面図であり、直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6に共通の図である。図3(b)は受信フィルタ12の並列共振子P4〜P6の断面図、図3(c)は送信フィルタ10の直列共振子S1〜S4の断面図であり、それぞれ図3(a)のA−A線に沿った断面を示す図である。
【0028】
図3(b)に示すように、受信フィルタ12の並列共振子P4〜P6では、基板30上に下部電極32が形成されており、下部電極32の一部が上方向(基板30と反対側)に凸状に湾曲することにより、ドーム状の空隙34が形成されている。更に、下部電極32のうち少なくとも上記の空隙34が形成された領域の一部を覆うように、基板30上に第1圧電薄膜36a、温度補償膜38、第2圧電薄膜36b、上部電極40、及びパシベーション膜42(以上、下部電極32からパシベーション膜42までを積層膜50と称する)が順に積層されている。これにより、上部電極40と下部電極32は、圧電薄膜(第1圧電薄膜36a及び第2圧電薄膜36b)の少なくとも一部を挟んで対向し、当該対向する領域における下部電極32の下方に空隙34を有する構成となっている。
【0029】
図3(a)に示すように、上部電極40と下部電極32とが第1圧電薄膜36a及び第2圧電薄膜36bを挟んで対向する領域は、共振領域52となっている。共振領域52付近における下部電極32の表面には、エッチング媒体導入孔54が設けられている。また、エッチング媒体導入孔54と空隙34との間には、エッチング媒体導入路56が形成されている。また、下部電極32については、点線で示された全体部分のうち、圧電薄膜36の開口部から一部(斜線部)が露出する構成となっている。
【0030】
基板30としては、例えばシリコン(Si)を用いることができるが、他にもガラス、セラミック等を用いることができる。下部電極32としては、例えば基板30側からクロム(Cr)及びルテニウム(Ru)が順に積層された電極膜を用いることができる。上部電極40としては、例えば基板30側からルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)が順に積層された電極膜を用いることができる(Ru層を符号40aで、Cr層を符号40bでそれぞれ図示する)。上記の他にも、下部電極32及び上部電極40には、他にもアルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等の金属層を組み合わせて用いることができる。また、電極膜を2層構造とせずに、1層構造とすることもできる。
【0031】
第1圧電薄膜36a及び第2圧電薄膜36bとしては、例えば窒化アルミニウム(AlN)膜を用いることで、高Q値の圧電薄膜を安定して形成することができる。圧電薄膜としては、他にも酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO)等の圧電材を用いることができる。また、後述する電気機械結合係数keffを大きくするために、上記の圧電材を主成分とする圧電薄膜に、例えばスカンジウム(Sc)等の第3元素を添加し、圧電定数を増加させてもよい。ここで、「主成分とする」とは、窒化アルミニウム等の圧電材が圧電薄膜共振器の圧電薄膜として機能する程度に第3元素を含有する場合を含む。例えば、上記のようにQ値を高めるために圧電薄膜に第3元素(Mで表す)を添加する場合には、MAl1−xNにおいて例えばx<0.5としてもよい。
【0032】
温度補償膜38は、圧電薄膜(36a、36b)の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数を有する膜であり、例えば二酸化珪素(SiO)を用いることができるが、他にも酸化シリコンまたは窒化シリコンを主成分とする膜を用いることができる。すなわち、温度補償膜38が圧電薄膜共振子における温度補償効果を有する範囲において、温度補償膜38の共振周波数の温度係数を大きくする第3元素を添加してもよい。温度補償膜38は、下部電極32及び上部電極40の外側に配置することも可能であるが、下部電極32と上部電極40との間に配置した方が、温度補償膜38の厚みを小さくすることができるため好ましい。
【0033】
パシベーション膜42としては、例えば二酸化珪素(SiO)を用いることができるが、他にも窒化アルミニウム(AlN)等の別の絶縁材料を用いることができる。
【0034】
上述の積層膜50は、例えばスパッタリング法等により成膜を行い、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により所望の形状にパターニングすることで形成することができる。また、積層膜50のパターニングは、リフトオフ技術により行うこともできる。第1圧電薄膜36a、温度補償膜38、及び第2圧電薄膜36bの外周のエッチングは、例えば上部電極40をマスクとしたウェットエッチングにより行うことができる。
【0035】
下部電極32の下方に位置するドーム状の空隙34は、下部電極32を形成する前に予め設けられていた犠牲層(不図示)を、上述の積層膜50の形成後に除去することにより形成することができる。犠牲層には、例えばMgO、ZnO、Ge、SiO等の、エッチング液またはエッチングガスにより容易に溶解することができる材料を用いることができ、例えばスパッタリング法または蒸着法等により形成することができる。犠牲層は、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により、予め所望の形(空隙34の形状)に成形される。積層膜50の形成後は、下部電極32に形成されたエッチング媒体導入孔54及びエッチング媒体導入路56を介して、下部電極32の下にエッチング媒体を導入することにより、犠牲層の除去を行う。なお、空隙34は、基板30を貫通するように形成してもよく、当該空隙34を介して下部電極32の下面が外部に露出する構成としてもよい。
【0036】
図3(c)に示すように、送信フィルタ10の直列共振子S1〜S4の構成は、図3(b)の並列共振子P4〜P6とほぼ同様であるが、上部電極40におけるRu層40aとCr層40bとの間に、共振周波数調整用の付加膜44が形成されている点が異なる。直列共振子S1〜S4は、付加膜44を備えることにより、並列共振子P4〜P6に比べて共振周波数が低周波側にシフトされている。付加膜44としては、チタン(Ti)を用いることができるが、他にもアルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、二酸化珪素(SiO)等を用いることができる。
【0037】
図4は、温度補償膜を含まない非温度補償型の圧電薄膜共振子(FBAR)の構成を示す図である。図3と共通する構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4(a)はFBARを上方向から見た平面図であり、並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8に共通の図である。図4(b)は受信フィルタ12の直列共振子S5〜S8の断面図、図4(c)は送信フィルタ10の並列共振子P1〜P3の断面図であり、それぞれ図4(a)のA−A線に沿った断面を示す図である。
【0038】
図4(b)に示すように、受信フィルタ12の直列共振子S5〜S8は、温度補償膜38を含まない点を除き、図3(b)に示す受信フィルタ12の並列共振子P4〜P6の構成と同様である。また、図4(c)に示すように、送信フィルタ10の並列共振子P1〜P3は、温度補償膜38を含まない点を除き、図3(c)に示す送信フィルタ10の直列共振子S1〜S4の構成と同様である。上記の非温度補償型のFBARでは、温度補償膜38が存在しないため、TC−FBARと異なり圧電薄膜36は2つに分離されていない。
【0039】
図5は、実施例1に係るデュプレクサのレイアウトを示す平面模式図である。直列共振子S1〜S8、並列共振子P1〜P6、及びインダクタL1〜L7は、それぞれ図1に示す回路素子に対応する。図中にクロスハッチで示した領域64は、上記の共振子及びインダクタに接続された配線パターンを示す。図示するように、TC−FBAR型の直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6が、同一の第1チップ60に形成されている。非温度補償型のFBAR型の並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8は、同一の第2チップ62に形成されている。また、異なるチップである第1チップ60及び第2チップ62間における共振子同士の接続(図中の領域66)は、以下に説明するように、チップが実装される実装基板上の表面に形成された配線を介して互いに接続されている。
【0040】
図6は、実施例1に係るデュプレクサのレイアウトを示す断面模式図である。実装基板70は、複数の基板(70a〜70c)が積層された積層基板であり、表面に第1チップ60及び第2チップ62が、バンプ68を介してフリップチップにより実装されている。実装基板70の各層の主面には、それぞれ配線パターン72が形成されており、異なる層の配線パターン72同士は、実装基板70に形成されたビア74を介して互いに接続されている。第1チップ60及び第2チップ62は、実装基板70の表面のダイアタッチ層(70c)上に形成された配線パターン(符号66で図示)を介して、互いに電気的に接続されている。より詳細には、送信フィルタ10に含まれる直列共振子S1〜S4及び並列共振子P1〜P3同士、並びに受信フィルタ12に含まれる直列共振子S5〜S8及び並列共振子P4〜P6同士が、上記ダイアタッチ層70c上に形成された配線を介して、互いに電気的に接続されている。これにより、第1チップ60及び第2チップ62を実装基板70内部の配線パターンを介して接続する場合に比べ、配線のインダクタンス成分を低減し、フィルタ特性への影響を抑制することができる。
【0041】
ここで、図2のようにガードバンドの狭いデュプレクサでは、フィルタにおけるガードバンド側のスカート特性は急峻であることが好ましく、且つフィルタの温度安定性も良好であることが好ましい。スカート特性の急峻化は、電気機械結合係数keffを小さくすることにより、温度安定性の向上は、周波数温度係数TCFを小さくすることによりそれぞれ実現することができる。従って、ガードバンド側のスカート特性を形成する直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6(共に第1チップ60に形成される)は、電気機械結合係数keff及び周波数温度係数TCFが小さくなるようにすることが好ましい。
【0042】
一方、ガードバンドと反対側のスカート特性は、ガードバンド側に比べ急峻性及び温度安定性がそれほど要求されない代わりに、フィルタの通過帯域がなるべく広くなるように設定されることが好ましい。帯域幅の拡大は、keffを大きくすることにより達成することができるが、これはスカート特性の急峻化とはトレードオフの関係にある。従って、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8(共に第2チップ62に形成される)においては、keffが大きくなるようにすることが好ましい。
【0043】
次に、実施例1に係るデュプレクサのフィルタ特性について、比較例に係るデュプレクサと比較したシミュレーション結果について説明する。
【0044】
図7は、シミュレーションに用いた積層膜50の具体的な材質及び膜厚を示す図である。受信フィルタ12の並列共振子P4〜P6(RxP、図3(b))では、下部電極32を膜厚85nmのCr及び膜厚195nmのRuの2層構造(基板30側がCr)、第1圧電薄膜36aを膜厚555nmのAlN、温度補償膜38を膜厚70nmのSiO、第2圧電薄膜36bを膜厚555nmのAlN、上部電極を膜厚195nmのRu(40a)及び膜厚25nmのCr(40b)の2層構造、パシベーション膜42を膜厚20nmのSiOとした。送信フィルタ10の直列共振子S1〜S4(TxS、図3(c))では、上記の膜厚構成に加え、上部電極のRu層40aとCr層40bとの間に形成される付加膜44を、膜厚40nmのTiとした。
【0045】
受信フィルタ12の直列共振子S5〜S8(RxS、図4(b))では、下部電極32を膜厚100nmのCr及び膜厚210nmのRuの2層構造(基板30側がCr)、圧電薄膜36を膜厚1220nmのAlN、上部電極を膜厚210nmのRu(40a)及び膜厚30nmのCr(40b)の2層構造、パシベーション膜42を膜厚20nmのSiOとした。送信フィルタ10の並列共振子P1〜P3(TxP、図4(c))では、上記の膜厚構成に加え、上部電極のRu層40aとCr層40bとの間に形成される付加膜44を、膜厚155nmのTiとした。
【0046】
ガードバンド(GB)側のスカート特性を形成する2組の共振子(P4〜P6及びS1〜S4)を比較すると、付加膜44を除く他の積層膜の材質及び膜厚は全て同一である。ガードバンド(GB)側と反対側のスカート特性を形成する2組の共振子(S5〜S8及びP1〜P3)においても、付加膜44を除く他の積層膜の材質及び膜厚は全て同一である。また、付加膜44の形成に伴う直列共振子S1〜S4における周波数シフト量は、並列共振子P1〜P3における同様の周波数シフト量より大きい。従って、付加膜44の膜厚は、P1〜P3(195nm)の方がS1〜S4(40nm)に比べて大きくなっている。
【0047】
比較例に係るデュプレクサでは、デュプレクサを構成する全ての共振子を、圧電薄膜の中央に温度補償膜を挿入したTC−FBAR型の圧電膜膜共振子とした。その具体的な形態は、図3(a)〜(c)に示したものと同様である。
【0048】
実施例1では、ガードバンド側のスカート特性を形成する直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6において、keffを約4.5%、TCFを約0ppm/℃とした。また、ガードバンド側と反対側のスカート特性を形成する並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8において、keffを約7%、TCFを約−30ppm/℃とした。これに対し、比較例では、ガードバンド側及びその反対側の双方において、TC−FBAR型共振子の使用を想定し、スカート特性を形成する共振子のkeffは約4.5%となっている。
【0049】
図8は、実施例1に係るデュプレクサのフィルタ特性について、比較例との比較を示したグラフである。図8(a)は送信フィルタ10の帯域の通過特性、図8(b)は送信端子Txにおける帯域のリターンロス特性をそれぞれ示す。ガードバンド側のスカート特性を形成する共振子のkeffは、実施例1と比較例で共に約4.5%であるため、スカート特性にもそれほど大きな差はない。これに対し、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する共振子のkeffは、比較例では4.5%であるのに対し、実施例1では7%となっている。このため、実施例1では、比較例に比べてマッチングが改善し、フィルタの広帯域化が図られている。
【0050】
以上のように、実施例1に係るデュプレクサによれば、送信フィルタ10と受信フィルタ12の間のガードバンド側のスカート特性を形成する複数の共振子S1〜S4及びP4〜P6(以下、「第1共振子」とする)は、温度補償型の圧電薄膜共振子(TC−TBAR)となっている。また、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する複数の共振子P1〜P3及びS5〜S8(以下、「第2共振子」とする)は、温度補償膜38を含まない非温度補償型の圧電薄膜共振子(FBAR)となっている。このように、実施例1に係るデュプレクサによれば、第1共振子にはkeff及びTCFの小さい共振子を用い、第2共振子には第1共振子に比べてkeff及びTCFの大きい共振子を用いている。これにより、ガードバンド側のスカート特性の急峻化及び温度安定性の向上と、フィルタの広帯域化との両立を図ることができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、第2共振子にFBAR以外の共振子を用いる例である。
【0052】
図9は、実施例2に係るデュプレクサのレイアウトを示す平面図である。実施例1(図5)と比較すると、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8の形態が、弾性表面波(SAW)共振子となっている。その他の構成は実施例1と同じであり、詳細な説明を省略する。
【0053】
図10〜図12は、様々な形態のSAW共振子の構成を示す図である。図10(a)、図11(a)、図12(a)は平面模式図、図10(b)、図11(b)、図12(b)は上記平面模式図のA−A線に沿った断面模式図である。図10に示す弾性表面波共振子(以下、「LT/Sa型弾性表面波共振子」とする)は、42°YカットX伝播のタンタル酸リチウム(LiTaO)基板80をサファイア基板82の上に貼り付けた基板を用い、当該基板上に櫛形電極84及び反射電極86を形成したものである。タンタル酸リチウム基板80の厚みは例えば20μm、サファイア基板82の厚みは例えば230μmとすることができる。また、櫛形電極84及び反射電極86の電極材料には、例えば主成分のAlにCuを添加した金属を用いることができる。以上のLT型弾性表面波共振子において、keffは約8%、TCFは約−20ppm/℃である。
【0054】
図11に示す弾性表面波共振子(以下、「LT型弾性表面波共振子」とする)は、基板としてサファイア基板を用いずに、42°YカットX伝播のタンタル酸リチウム(LiTaO)基板80を用いた例であり、その他の構成は図10と同様である。上記のLT型弾性表面波共振子において、keffは約8%、TCFは約−40ppm/℃とすることができる。
【0055】
図12に示す弾性表面波共振子(以下、「ラブ波型弾性表面波共振子」とする)は、基板として0°YカットX伝播のニオブ酸リチウム(LiNbO)基板90を用いたラブ波利用の弾性表面波共振子である。ニオブ酸リチウム基板90上には、図10及び図11と同様に櫛形電極84及び反射電極86が形成され、これらの電極を含む基板上面全体が、シリコン酸化膜92により覆われている。櫛形電極84及び反射電極86の電極材料としては、例えばCuを主成分とする金属を用いることができる。上記のラブ波型弾性表面波共振子において、keffは約11%、TCFは約0ppm/℃とすることができる。
【0056】
次に、実施例2に係るデュプレクサのフィルタ特性について、比較例に係るデュプレクサと比較したシミュレーション結果について説明する。実施例2では、ガードバンド側のスカート特性を形成する直列共振子S1〜S4及び並列共振子P4〜P6においては、実施例1と同じくTC−FBAR型共振子の使用を想定し、keffを約4.5%、TCFを約0ppm/℃とした。また、ガードバンド側と反対側のスカート特性を形成する並列共振子P1〜P3及び直列共振子S5〜S8においては、LT/Sa型弾性表面波共振子の使用を想定し、keffを約8%、TCFを約−20ppm/℃とした。これに対し、比較例では、実施例1の場合と同じく、ガードバンド側及びその反対側の双方において、TC−FBAR型共振子の使用を想定し、スカート特性を形成する共振子のkeffを約4.5%とした。
【0057】
図13は、実施例2に係るデュプレクサのフィルタ特性について、比較例との比較を示したグラフである。図13(a)は送信フィルタ10の帯域の通過特性、図13(b)は送信端子Txにおける帯域のリターンロス特性をそれぞれ示す。ガードバンド側のスカート特性を形成する共振子のkeffは、実施例2と比較例で共に約4.5%であるため、スカート特性にもそれほど大きな差はない。これに対し、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する共振子のkeffは、比較例では4.5%であるのに対し、実施例2では8%となっている。このため、実施例2では、比較例に比べてマッチングが改善し、フィルタの広帯域化が図られている。
【0058】
以上のように、実施例2に係るデュプレクサによれば、送信フィルタ10と受信フィルタ12の間のガードバンド側のスカート特性を形成する複数の第1共振子(S1〜S4及びP4〜P6)は、温度補償型圧電薄膜共振子(TC−TBAR)となっている。また、ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する複数の第2共振子(P1〜P3及びS5〜S8)は、タンタル酸リチウム基板を用いたLT型弾性表面波共振子、タンタル酸リチウム基板をサファイア基板上に貼り付けた基板を用いたLT/Sa型弾性表面波共振子、または弾性表面波共振子のうちラブ波を利用したラブ波型弾性表面波共振子となっている。このように、実施例2に係るデュプレクサによれば、実施例1と同様に、第1共振子にはkeff及びTCFの小さい共振子を用い、第2共振子には第1共振子に比べてkeff及びTCFの大きい共振子を用いている。これにより、ガードバンド側のスカート特性の急峻化及び温度安定性の向上と、フィルタの広帯域化との両立を図ることができる。
【0059】
上記の例において、貼り合わせ基板を用いたLT/Sa型弾性表面波共振子は、タンタル酸リチウム基板のみを用いたLT型弾性表面波共振子に比べ、TCFが小さく温度安定性に優れている。また、ラブ波を利用したラブ波型弾性表面波共振子は、keffが大きく広帯域化に有利で、且つTCFが小さく温度安定性に優れた弾性表面波共振子となっている。
【0060】
実施例1〜2では、ガードバンド側の第1共振子として温度補償型圧電薄膜共振子を用いたが、代わりに図12に示すラブ波型弾性表面波共振子を用いてもよい。このとき、ガードバンドと反対側の第2共振子にもラブ波型弾性表面波共振子を用いる場合には、第2共振子の電気機械結合係数keffを第1共振子より大きくする。このとき、keffの小さい第1共振子を第1ラブ波型弾性表面波共振子、keffの大きい第2共振子を第2ラブ波型弾性表面波共振子とそれぞれ称する。ガードバンド側のスカート特性を形成する第1ラブ波型弾性表面波共振子は、実施例1〜2にて示した第2共振子の実施例のいずれとも組み合わせることができる。
【0061】
実施例1〜2では、第1共振子の電気機械結合係数keffは第2共振子のkeffより小さく、第1共振子の周波数温度係数TCFは第2共振子のTCFより小さくなっているが、必ずしも全ての共振子において、上記の関係が満たされていなくともよい。例えば、送信フィルタ及び受信フィルタの少なくとも一方において、第1共振子のうち少なくとも1つのkeffが、第2共振子のうち少なくとも1つのkeffより小さくなっていればよい。また、送信フィルタ及び前記受信フィルタの少なくとも一方において、ガードバンド側におけるフィルタのTCFが、ガードバンドと反対側におけるフィルタのTCFより小さくなっていればよい。
【0062】
また、実施例1〜2では、第1共振子(S1〜S4及びP4〜P6)の全てを第1チップ60上に形成し、第2共振子(P1〜P3及びS5〜S8)の全てを第1チップ60とは別の第2チップ62上に形成したが、共振子の構成はこれ以外の形態であってもよい。例えば、第2共振子のうちS5〜S8を同一チップに形成し、P1〜P3を別のチップに形成するなどしてもよい。
【0063】
ただし、共振子を同一チップに形成する場合、同一のウェハ及び同一のプロセス(素子技術)により共振子の形成を行うことができる。これにより、別々のウェハに別々のプロセスにより共振子の形成を行う場合に比べ、膜厚の調整を容易に行うことができる。例えば、図7に示すように、第1共振子のうちS1〜S4とP4〜P6とでは、1つの層(ここでは、膜厚調整が必要な付加膜44(Ti))を除く全ての積層膜50の膜厚が等しく、これらを同一工程で形成することができる。これにより、共振子の周波数特性を揃え、送信フィルタと受信フィルタのそれぞれのスカート特性における周波数間隔のばらつきを抑制することができる。Band2のようにガードバンドの狭いデュプレクサにでは、ガードバンド側における周波数特性の安定が特に要求されるため、ガードバンド側の第1共振子は同一のチップに形成することが特に好ましい。また、ガードバンドと反対側の第2共振子においても、第1共振子と同様に同一のチップに形成することが好ましい。
【0064】
また、第1共振子及び第2共振子の全てを同一のチップに形成してもよい。この場合、keff及びTCFの異なる二種類の共振子を同一のチップに形成することとなるため、製造工程における工夫が要求される。上記のようなデュプレクサの形成方法としては、例えば最初にチップ上の所定領域に第1共振子の形成を行い、続いて形成済みの第1共振子の上にマスクを施した上で、チップ上の残りの領域に第2共振子の形成を行う方法が考えられる。
【0065】
実施例1〜2では、例えば図3及び図4に示すように、圧電薄膜共振子として下部電極32の下に空隙34が形成されたFBARタイプを例に説明を行ったが、圧電薄膜共振子は温度補償膜を用いるSMRタイプとしてもよい。音響反射膜とは、音響インピーダンスの高い膜と低い膜とが交互にλ/4(λは弾性波の波長)の膜厚で積層された膜であり、下部電極32の下に空隙34に代えて形成することができる。よって、実施例1〜2における温度補償型圧電薄膜共振子は、FBARタイプの圧電薄膜共振子に温度補償膜が挿入された構成に加え、SMRタイプの圧電薄膜共振子に温度補償膜が挿入された形態を含むものとする。
【0066】
また、実施例1〜2では、送信フィルタ及び受信フィルタとして図1に示すラダーフィルタを例に説明したが、ラダーフィルタの具体的構成(直列共振子・並列共振子の数及び配置)は、これに限定されるものではない。整合用インダクタの数及び配置についても、デュプレクサの仕様等に応じて適宜変更することができる。
【0067】
また、実施例1〜2では、低周波側に送信フィルタが、高周波側に受信フィルタがあるデュプレクサを例に説明したが、低周波側に受信フィルタ12が、高周波側に送信フィルタがあってもよい。また、上記実施例ではBand2用のデュプレクサを例に説明したが、上記実施例の構成はこれ以外の周波数帯域を対象とするデュプレクサにおいても同様に適用することができる。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 送信フィルタ
12 受信フィルタ
30 基板
32 下部電極
34 空隙
36 圧電薄膜
38 温度補償膜
40 上部電極
42 パシベーション膜
44 付加膜
50 積層膜
52 共振領域
54 エッチング媒体導入孔
56 エッチング媒体導入路
60 第1チップ
62 第2チップ
64、66、72 配線パターン
68 バンプ
70 実装基板
74 ビア
80 タンタル酸リチウム基板
82 サファイア基板
84 櫛形電極
86 反射電極
90 ニオブ酸リチウム基板
92 シリコン酸化膜
Ant アンテナ端子
Tx 送信端子
Rx 受信端子
S1〜S8 直列共振子
P1〜P6 並列共振子
L1〜L7 インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域の異なる送信フィルタ及び受信フィルタを備えるデュプレクサであって、
前記送信フィルタ及び前記受信フィルタは、それぞれラダー状に接続された複数の直列共振子及び複数の並列共振子を含み、
前記複数の直列共振子及び前記複数の並列共振子のうち、前記送信フィルタと前記受信フィルタの間のガードバンド側のスカート特性を形成する複数の第1共振子は、圧電薄膜並びに前記圧電薄膜を挟んで対向する下部電極及び上部電極を含む複数の層からなり且つ前記圧電薄膜の弾性定数の温度係数と逆符号の温度係数を有する温度補償膜が前記上部電極と前記下部電極との間に挟まれた温度補償型圧電薄膜共振子、または弾性表面波共振子のうちラブ波を利用した第1ラブ波型弾性表面波共振子、のうちいずれかの共振子であり、
前記複数の直列共振子及び前記複数の並列共振子のうち、前記ガードバンドと反対側のスカート特性を形成する複数の第2共振子は、圧電薄膜並びに前記圧電薄膜を挟んで対向する下部電極及び上部電極複数の層からなり且つ温度補償膜を含まない非温度補償型圧電薄膜共振子、タンタル酸リチウム基板を用いたLT型弾性表面波共振子、タンタル酸リチウム基板をサファイア基板上に貼り付けた基板を用いたLT/Sa型弾性表面波共振子、または前記第1ラブ波型弾性表面波共振子より大きい電気機械結合係数を有する第2ラブ波型弾性表面波共振子、のうちいずれかの共振子であることを特徴とするデュプレクサ。
【請求項2】
前記送信フィルタ及び前記受信フィルタの少なくとも一方において、前記複数の第1共振子のうち少なくとも1つの電気機械結合係数は、前記複数の第2共振子のうち少なくとも1つの電気機械結合係数より小さいことを特徴とする請求項1に記載のデュプレクサ。
【請求項3】
前記送信フィルタ及び前記受信フィルタの少なくとも一方において、前記ガードバンド側におけるフィルタの周波数温度係数は、前記ガードバンドと反対側におけるフィルタの周波数温度係数より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のデュプレクサ。
【請求項4】
前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記非温度補償型圧電薄膜共振子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項5】
前記第1共振子を構成する直列共振子と並列共振子の複数の層は1つの層を除いて膜厚が等しく、且つ、前記第2共振子を構成する直列共振子と並列共振子の複数の層は1つの層を除いて膜厚が等しいことを特徴とする請求項4に記載のデュプレクサ。
【請求項6】
前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記LT型弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項7】
前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記LT/Sa型弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項8】
前記第1共振子は前記温度補償型圧電薄膜共振子であり、前記第2共振子は前記第2ラブ波型弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項9】
前記温度補償膜は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物を主成分とすることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項10】
前記圧電薄膜は、窒化アルミニウムを主成分とすることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項11】
前記複数の第1共振子は、同一チップ上に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項12】
前記第1共振子及び前記受信第2共振子が形成されたチップは、実装基板にフリップチップにより搭載されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のデュプレクサ。
【請求項13】
前記送信フィルタに含まれる前記第1共振子と前記第2共振子同士、並びに前記受信フィルタに含まれる前記第1共振子と前記第2共振子同士は、それぞれ前記実装基板におけるダイアタッチ層上に形成された配線を介して、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項12に記載のデュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−110655(P2013−110655A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255545(P2011−255545)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】