説明

データをシーケンシャルに記録する記憶装置

【課題】一定のホスト転送レートが断続的に低下する場合でもドライブ転送レートを調整できる記憶装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、上位装置との間で読み書きするデータを一時保管するバッファと、複数のデータをシーケンシャルに記録するように記録媒体と、バッファと記録媒体との間でデータの読み書きを制御する制御部とを含む。制御部は、データを上位装置との間で送受信するホスト転送レートを複数個測定し、データを記録媒体との間で送受信するドライブ転送レートを、ホスト転送レートに近づくように調整し、ホスト転送レートが断続的低下しているかを認定するために、前記測定された複数個に対して第1の比率で、平均のホスト転送レートに対して第2の低下量であるかを判定し、その判定結果に基づいて前記調整されたドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させるように選択する。この引下げにより、長期的なデータ転送レートを改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーケンシャルにデータを記録する記憶装置のデータ転送を改善する方法に関する。より詳しくは、ホスト側の転送レートに断続的低下に併せてテープドライブ側のデータ転送レートを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ媒体は、大量のデータをシーケンシャルに読み書きを安価に記録できる記憶装置として利用されている。大量のデータのバックアップと回復を一定時間内に終わらせることは、テープドライブを含む全体の記憶システムにとって重要である。
【0003】
ホストからデータ書込みにより、テープドライブのバッファメモリ(バッファとも言う)にデータが蓄積される。ドライブ側でのテープでの書込み速度(ドライブ転送速度、ドライブ転送レート)が、ホスト側のデータの書込み速度(ホスト転送速度、ホスト転送レート)よりは早いと、バッファメモリはデータで空になる。バッファメモリが空になると、通常テープドライブは記録媒体を巻戻す、バックヒッチと呼ばれる処理を実行する。バックヒッチは数秒(3〜5秒)かかる。バックヒッチの巻戻し動作の中は、テープドライブはテープ媒体にデータを書込み、バッファにデータを読み出すことはできない。バックヒッチの動作は、ホストのデータの転送を待たせるため全体としてデータ転送レートに影響を及ぼす。なお、ホストからのデータ読出し際には、テープドライブはバッファメモリがデータで一杯になるとバックヒッチを行う。
【0004】
特許文献1は、ドライブ転送レートをホスト転送レートに調整するスピードマッチング技術を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−318571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、テープドライブに搭載されるテープ媒体においても、USBメモリなどのリムーバル媒体同様にファイルシステム経由で利用するようになってきた。IBM社は、テープドライブのためのファイルシステムとしてLTFS (Linear Tape File System)を有する。ホストがLTFSを利用してデータの読み書きを行なうユーザ環境において、ホスト転送レートが断続的(intermittently)に低下しテープドライブにバックヒッチを生じさせる。このバックヒッチが原因で長期的なホスト側の転送レートに悪影響が報告されている。特許文献1は、ホスト転送レートが、平均値で継続維持されている最中に断続的に一定以上低下する速度変化に対応した、テープドライブを提供していない。
【0007】
従って、本発明の目的は、一定のホスト転送レートが断続的に低下する場合でもドライブ転送レートを調整して、ホスト転送レートへの影響を軽減できる記憶装置、その方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明は、上位装置との間で読み書きする前記データを一時保管するバッファと、
複数のデータをシーケンシャルに記録するように記録媒体と、
上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する制御部とを含む記憶装置である。
【0009】
ここで、この装置は、その制御部は、
(a)データを上位装置との間で送受信するホスト転送レートを複数個測定する測定部と、
(b)前記データを記録媒体との間で送受信するドライブ転送レートを、前記ホスト転送レートに近づくように調整する調整部と、
(c)前記ホスト転送レートが断続的低下しているかを認定するために、前記測定された複数個に対して第1の比率で、平均のホスト転送レートに対して第2の低下量であるかを判定する判定部と、
(d)前記判定結果に基づいて、前記調整されたドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させるように選択する選択部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、この装置において、前記測定部は、前記バッファにおける固定データ量の増減の時間を複数個サンプリング測定して、前記ホスト転送レートを算出することを特徴とする。
【0011】
また、この装置において、前記断続的に低下するホスト転送レートの第1の比率は10%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、この装置において、前記断続的に低下するホスト転送レートの第1の比率は3%以下であることを特徴とする。
【0013】
また、この装置において、前記平均のホスト転送レートは、前記複数個の測定サンプリングのうち、第1の比率以外の残りの測定サンプルに基づいて算出されることを特徴とする。
【0014】
また、この装置において、前記断続的に低下するホスト転送レートの第2の低下量は40〜60%であって、ドライブ転送レートを段階的に低下できる場合、前記調整されたドライブ転送レートを第1段階引き下げることを特徴とする。
【0015】
また、この装置において、前記断続的に低下するホスト転送レートの第2の低下量は60%以上であって、ドライブ転送レートを段階的に低下できる場合、ドライブ転送レートを2段階引き下げることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は、データをシーケンシャルに記録するように記録媒体の駆動を制御する方法である。この方法は、上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する。
【0017】
更に、本発明は、データをシーケンシャルに記録するように記録媒体の駆動をコンピュータに制御させるプログラムである。このプログラムは、上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
上記手段を適用された、データをシーケンシャルに記録する記憶装置は、ホスト転送レートが断続的低下する場合であっても長期的なデータ転送レートを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ホスト転送レートが断続的に低下している様子を示す。
【図2】本発明が適用されるテ−プドライブの構成例を示す。
【図3】テ−プドライブ10がホスト30からデータ読出し、及び書込み要求を受取った場合のデータの転送レートの関係を示す。
【図4】本発明の読み書き制御の機能ブロックを示す。
【図5】本発明のテープスピードの選択アルゴリズムのフローを示す。
【図6】ホストがLTFSを介して書込みを行う場合の本発明のドライブ転送速度の選択を行った場合の平均転送速度の長期的な改善を示す。
【図7】ホストがLTFSを介して読出しを行う場合の本発明のドライブ転送速度の選択を行った場合の平均転送速度の長期的な改善を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ホストからテープドライブへデータの書込みの場合について実施の形態(実施例)を主に説明する。なお、ホストがテープドライブからデータの読み出しの時は以下の実施例の考え方は同様に適用される。
【0021】
ホスト側のLTFSがテープドライブを利用する場合、例えば1GBのファイルを多数書き込むような場合、大抵は100MB/sec でデータを送り続ける。一方、ファイルシステムの動作の特殊性より、断続的(intermittently)に50〜100MB 程度の少ないデータを60MB/secといった通常より遅い転送レートで書き込むことがある。具体的には、ホストがLTFSを介して全データ1GBに対して10%に満たないデータ量を通常の転送レート100MB/secより40%も低い60MB/secで断続的に転送する。断続的なホスト転送レートの低下は、頻度は書き込むファイルサイズなどには依存しない。どのタイミングでホスト側の転送レートが低下するか予測不可能である。
【0022】
図1は、ホスト転送レートが断続的に低下している様子を示す。本発明において、図に示すホスト転送レートの短い時間での低下を、ホスト転送レートの断続的低下と呼ぶ。ホストはファイルシステムを介して大量のデータを書込む場合、一貫して平均のホスト転送レートでデータを転送し続けようとする。しかし常にこの一様なホスト転送レートが保たれるわけではない。ファイルシステムは機能上、少ないデータを断続的に低下した転送レートで送る。テープドライブは、ドライブ転送レートが大部分のデータの転送を占める一様なホスト転送レートに一致するように駆動している。テープドライブは、断続的なホスト転送レートの低下を想定してドライブ転送レートを調整させていない。データ量として小さな比率であってもこの断続的なホスト転送レートの低下があると、一時的にバッファメモリではデータが空になる。バッファが空になるとテープドライブはバックヒッチを生じさせ、その動作の間(3〜5秒)ホストからのデータの書込を待たせる。
【0023】
断続的に低下した転送レートにより、全体のデータ量に対して10%以下、更に3%に満たない少ないデータ量が書込まれるにすぎない。このような少ないデータ量について転送レートが低下しても、一様な転送レート100MB/secに対してその値を大きく変動させる要因ではない。例えば、全体のデータ量の10%について断続的なホスト転送レートの低下が平均のホスト転送レートの60%程度ならば、単純平均のホスト転送レートは90MB/sec以上である。全体のデータ量の3%について断続的なホスト転送レートの低下がある場合、単純平均のホスト転送レートは97MB/sec以上である。
【0024】
図2は、本発明が適用されるテ−プドライブの構成例を示す。テ−プドライブ10は、ホスト30から送られた複数のデータを固定長のデータセット(DataSet、及びDSと言う。)単位でテ−プ記録への書込み及び読取りを行う。ホストは30、ファイルシステムを介してテープドライブに書込み、読み出し要求を送る。通信規格としてSCSIを用いる場合、ホスト30は、書き込み/読取りデータのための要求(Write、Read)をテープドライブ10に発行する。
【0025】
テ−プドライブ10は、バッファ12と、読み書きチャネル13と、ヘッド14と、モ−タ15と、テ−プ23を巻きつけるリ−ル22とを含む。読み書き制御16(コントローラ)と、ヘッド位置制御システム17と、モ−タドライバ18とを含む。モ−タ15は、2個のモ−タを設けてよい。テ−プドライブ10は、テープカートリッジ20を着脱可能に搭載する。
【0026】
テープカートリッジ20は、リ−ル21に巻かれたテ−プ23を含む。テ−プ23は、リ−ル21、22の回転に伴い、リ−ル21からリ−ル22の方向へ、又は、リ−ル22からリ−ル21の方向へ、長手方向に移動する。ヘッド14は、テ−プ23が長手方向に移動してテ−プ23に対してデータを書き込んだり、テ−プ23からデータを読出したりする。モ−タ15は、リ−ル21、22を回転させる。また、テープカートリッジ20はカートリッジメモリ(CM:Cartridge Memory)25と呼ばれる非接触不揮発性メモリを備える。搭載されたテープ20のカートリッジCM25は、テープドライブ10により非接触的に読み書きされる。CM25はテープカートリッジの属性(テープディレクトリと呼ばれる)情報を保管する。テープドライブは、読出し及び書込み時に、CMから属性情報を取り出して最適な読み書きができるようにする。
【0027】
読み書き制御16はテ−プドライブ10の全体を制御する。この制御はホスト30から受取ったコマンドに従って、データのテ−プ23への書込みやテ−プ23からの読出しをする。データは、DS単位で、読み書きチャネル13を介してヘッド14によりテ−プ23に書込まれる。また、この制御はヘッド位置制御システム17やモ−タドライバ18を制御し、バックヒッチ動作を行う。
【0028】
バッファ12は、テ−プ23に書き込むべきデータやテ−プ23から読出されたデータを蓄積する。例えば、バッファ12は、DRAMによって構成される。バッファ12は、蓄積されたデータはファーストイン・ファーストアウト(FIFO)によりリングバッファとし機能する。ホスト転送レートとライブ転送レートは多くの場合一致しない。テープドライブは、バッファによりホスト転送レートとドライブ転送レートの差を吸収している。例えば、データの書き込み時には、テープドライブはホストから送られてきたデータをバッファに一旦格納する。その後、テープドライブはバッファに格納されたデータをテープ媒体に書き込んでいる。バッファは数 MB程度のセグメントと呼ばれる領域に分割されている。各セグメントは、テ−プ23に対する読み書きの単位であるDSを格納する。
【0029】
図3は、テ−プドライブ10がホスト30からデータ読出し、書込み要求を受取った場合のデータの転送レートの関係を示す。ホスト転送レートとドライブ転送レートは異なることが示される。テープドライブ10は、この差を1GB程度のバッファ12で吸収することにより、データ転送のパフォーマンスを改善している。
【0030】
ホストからデータの書込みの際のホスト転送レートとドライブ転送レートの関係に説明する。ホスト30は、データ書込みの際一様なホスト転送レートH(100MB/sec)でデータを送る。テープドライブ10の読み書き制御16は、バッファ12からテ−プ23へドライブ転送レートD(140/120/100/80/60/40/20MB/sec)で送る。テープドライブ30は、ホスト転送レートに一致する(マッチング)するように7段階の値から最適なドライブ転送レートを選択できる。ホスト転送レートHは、バッファ12への一定データ量の増加量の時間を複数サンプリング測定して決定される。ドライブ転送レートDは、モータ15により駆動されるテープ23の移動速度により決定される。テープドライブは、スピードマッチング技術によりサンプリング測定されたホスト転送レートに一致させる。より具体的には、テープドライブはそのホスト転送レート以上で最も遅い段階のドライブ転送レートを選択する。
【0031】
図4は、本発明の読み書き制御16の機能ブロックを示す。測定部31は、書込みの際はバッファ12におけるデータの一定の増加量の時間計時からホスト転送レートを多数個のサンプリングの算出をする。調整部32は、ドライブ転送レートをサンプリング測定されたホスト転送レートに一致するように調整した値を与える。判定部33は、サンプリング測定したホスト転送レートが断続的な低下量であるか判定する。選択部34は、調整部32でのドライブ転送レートを判定部33の判定に基づいてレートを引き下げるかの選択判断を行う。なお、ホスト転送レートのサンプリング測定は、一定時間でのバッファでのデータの増減量からホスト転送レートを測定してもよい。また、ホスト転送レートの測定はバッファでのデータ量の変動の測定は例示である。ホストからの読出し要求では、ドライブ転送レートがホスト転送レートより大きいとバッファ12がデータで一杯になりバックヒッチ動作が生じる。バックヒッチは、テ−プ23から読取られたデータの直後のテ−プ位置に読取りヘッド14を位置づけなければならないため一定の時間(3〜5秒)を要する。なお、読み出しの際に測定部31は、バッファ12におけるデータの一定の減少量を測定して複数個のホスト転送レートを算出をする。
【0032】
本発明のテープスピードの選択アルゴリズムを、以下では説明の簡単化のため、テープ媒体へデータを書き込む場合を中心に説明する。好適には、アルゴリズムはテープドライブのファームウェアの一機能として実装される。このスピード選択のアルゴリズムをテープライブラリなどに持たせ、テープドライブは最適なテープスピードをテープライブラリなど外部から教えて貰っても良い。
【0033】
一定のデータ量についてサンプリング測定されたホスト転送レートをHとする。テープスピードはドライブ転送レートを規定する。本発明のテープスピードは、測定されたホスト転送レートに一致するように段階的に設定されたDm(m=1,2,・・、n)から最適な値を選択される。mはスピード指数であり、ドライブ転送レートD1〜Dnの範囲でn 段階変速することを意味する。D1が最速のテープスピードであり、数字が増えるにつれてテープスピードは遅くなる。
【0034】
例示として、ホスト転送レートの平均の転送レートHavから断続的に低下したホスト転送レートHxの低下量t(60%以下)をt=Hav−Hxとする。全転送データの90%以上については、その転送レートをHavは100MB/secである。残りの10%以下についてのホスト転送レートは断続的に低下した転送レートをHx(≦60MB/sec)である。本発明のドライブ転送レートの選択方法は、スピード指数m=m(t)を低下量tの関数としてマッチング技術により調整されたmを補正する。即ち、tの値に基いて指数mは、増加すべきか、または、不変かが判定される。補正されたmによりドライブD=Dmを選択する。
【0035】
本発明のアルゴリズムにより選択されるドライブ転送レート(テープスピード)D=Dmはスピード指数mにより次のように例示される。
・t<40%,m=不変;
・60%>t≧40%,m=m+1;
・t≧60%,m=m+2;とする。
【0036】
本発明の全データ量に対して少ない量についてホスト転送レートが断続的に変化することの判定方法を説明する。バッファメモリのセグメント毎にホストからデータが送られてきた時刻を測定し保持する。一定量のデータ毎 (たとえば100MB 毎) に時刻の差分をサンプリング測定しホスト側の転送レートを算出する。複数個の測定サンプリングから算出された転送レートのうち、大多数の一様な転送レートは平均の転送レートを与える。この平均値に対して少数の算出値が一定値(例えば60MB/sec)以下である場合、断続的に低下したホスト転送レートであると判定される。
【0037】
テープカートリッジ20をテープドライブ10に挿入後にホスト転送レートをサンプリング測定する。テープカートリッジに格納されたCMにLTFSを使用し転送レートに断続的低下があるかの情報を保管しておく。より簡単には、テープカートリッジに格納されたCMの情報を元に、例えばLTFSがそのテープ媒体を利用していることを検知し、転送レートが断続的に変化すると判定しても良い。従って、テープドライブは、カートリッジのCMの情報により、このカートリッジがLTFSを介して利用され断続的に低下することを認識してもよい。また、ホスト自身がLTFSを利用してデータ転送することをテープドライブに知らせることにより、テープドライブは断続的低下のデータ転送があると認識してもよい。
【0038】
図5は、本発明のテープスピードの選択アルゴリズムのフローを示す。図4との機能部分との関連で説明する。
●(510)は、従来のスピードマッチングアルゴリズムにより、テープスピードを算出する。まず、ホスト転送レートをバッファにおいて固定データ量の増加の時間測定から算出する(測定部31)。時間測定は固定データ量の時刻を計時してその差から複数サンプリング的に算出される。ドライブ転送レートD=Dmはサンプリング測定されたホスト転送レートに基づいて調整される(調整部32)。即ち、スピード指数mが調整により決定される。
●(520)は、ホスト転送レートが断続的は所定の断続的な低下であるか判定する(判定部33)。x(断続的低下のデータ量の比率)は、複数個の測定サンプリングのデータに対する、断続的低下の転送レートのデータ量の比率である。断続的低下のホスト転送レートのデータ比率xは、全サンプリングのデータ量のうち10%以下(x≦10%)であるかを確認する。また、断続的低下のレベル(Hx)が、平均のレベルHavに対して40%以上(t≧40%)であるかを確認する。
●(530)はホスト転送レートが断続的低下である場合、スピード指数mを断続的低下レベルtの大きに基づいて増加させる(選択部34)。測定サンプリングについて断続的低下と判断されたものの平均が40%≦x<60%する場合は1段増加(m=m+1)させて1段階ドライブ転送レートを引き下げる。60%≦xの場合は2段増加(m=m+2)させて2段階ドライブ転送レートを引き下げる。
●(540)は、ホスト転送レートが断続的低下しない場合、(510)で調整されたスピード指数mは不変として、ドライブ転送レートを選択する(選択部34)。
●(550)は(530)または(540)において選択されたスピード指数mによりドライブ転送レートを設定し、そのスピードによりテープドライブを駆動する。
【0039】
本発明の対象は断続的に低下するホスト転送レート(例えば60MB/sec)の発生を考慮して、ドライブ転送レートのマッチング技術を補正する考え方である。断続的に低下するホスト転送レートとは、全データ量の10%以下の場合であり、90%以上データ大部分は一様な転送レート(例えば100MB/sec)である。より典型的には、全データ量の0.5〜3%以下について断続的に低下するホスト転送レートであり、残りの転送される全データ量97%は一様な転送レート(100MB/sec)場合である。このような場合、ホスト転送レートの全ての算出サンプリングについて単純平均をしたとしても、平均ホスト転送レートから10%以上を低下させることはない。ドライブ転送レートをこのホスト転送レートにマッチングさせたとしても断続的な急激な転送レートに起因するバックヒッチを回避できない。40%以上のレベルまで急激にホスト転送レートが低下する限られた時間局面においても、バッファが空になりテープドライブにバックヒッチを生じさせる。従来のテープスピードマッチングでは断続的で一定レベルに低下するホスト転送が生じる場合に対応できていない。ホスト転送が断続的に一定レベル以下に急激に低下すると、バッファが空になりバックヒッチが発生し余計な動作の間ホストを待たせる。本発明の意義は、ドライブ転送レートの引き下げという犠牲があっても、ホスト転送をバックヒッチの動作により待たせることはないため、長期的なデータ転送では有利である点である。
【0040】
上述の実施例では、マッチング技術で選択されたドライブ転送レートを断続的ホスト転送レートの低下を検知して段階的に補正している。本発明の範囲には、低下量 tが転送レートが断続的低下を示さない場合は0であり、断続的低下を示す場合は非ゼロの値を持たせるものも含まれる。例えば平均値からの低下量、即ち差分t(t=Hav−Hx)の大きさに応じてドライブ転送レートを減じてもよい。従って、本発明のドライブ転送レートの選択方法は、ドライブ転送レートDが連続的に変更可能な場合にも適用可能である。例えば、マッチング技術によりドライブ転送レートDmをホスト転送レートHavに一致させる値を与える。そのホスト転送レートHavの補正項として段階的転送レベルtの関数f(t)を与えると、D=D(t)=Dm−f(t)として与えられる。関数 f(t)を従来のホスト転送レートと固定されたテープスピードとの相関を考慮してチューニングすることで、さらなる効果の向上が期待される。
【0041】
図6は、ホストがLTFSを介して書込みを行う場合の本発明のドライブ転送速度の選択を行った場合の平均転送速度の長期的な改善を示す。
図7は、ホストがLTFSを介して読出しを行う場合の本発明のドライブ転送速度の選択を行った場合の平均転送速度の長期的な改善を示す。
本発明の効果を測定するために、横軸サイズのファイルを繰り返し書き込んだ場合(図6)、及び、読み出した場合(図7)の転送レートを実機を用いて測定した。本発明のテープスピードの選択アルゴリズムの適用の結果を従来のスピードマッチング方法と比較している。ドライブ転送レートD=Dm(t)の選択では、断続的低下レベルt(=Hav−Hx)が所定のレベル以上の場合、スピード指数mを1増加させ(m=m+1)、そのレベルより小さい場合不変とした。測定誤差による変動を軽減するため、それぞれの場合において5回ずつ転送レートを測定し、最大、及び、最小の値を除いた3回の結果の平均値を採用した。図6及び図7は、横軸がファイルサイズであり、縦軸はそれぞれのサイズのファイルを繰り返し書き込み/読み出しした場合の平均転送レートである。ファイルサイズによらず、本発明を適用することにより全体としてホスト転送レートが、従来にマッチングに比べて長期的には15〜25%向上していることが確認できた。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の範囲は上記実施例には限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0043】
10…テ−プドライブ、
12…バッファ(DRAM)、
13…読み書きチャネル、
14…ヘッド、
15…モ−タ、
16…読み書き制御(コントロ−ラ)、
17…ヘッド位置制御システム、
18…モ−タドライバ、
20…カ−トリッジ、
21,22…リ−ル、
23…テ−プ
30…ホスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置であって、
上位装置との間で読み書きする前記データを一時保管するバッファと
複数のデータをシーケンシャルに記録するように記録媒体と、
上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する制御部と、を含む記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、
データを上位装置との間で送受信するホスト転送レートを複数個測定する測定部と、
前記データを記録媒体との間で送受信するドライブ転送レートを、前記ホスト転送レートに近づくように調整する調整部と、
前記ホスト転送レートが断続的低下しているかを認定するために、前記測定された複数個に対して第1の比率で、平均のホスト転送レートに対して第2の低下量であるかを判定する判定部と、
前記判定結果に基づいて、前記調整されたドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させるように選択する選択部と、を含む請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記バッファにおける固定データ量の増減の時間を複数個サンプリング測定して、前記ホスト転送レートを算出する請求項2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記断続的に低下するホスト転送レートの第1の比率は、10%以下である、請求項1または2記載の記憶装置。
【請求項5】
前記断続的に低下するホスト転送レートの第1の比率は、3%以下である、請求項1または2記載の記憶装置。
【請求項6】
前記平均のホスト転送レートは、前記複数個の測定サンプリングのうち、第1の比率以外の残りの測定サンプルに基づいて算出される請求項4または5に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記断続的に低下するホスト転送レートの第2の低下量は40〜60%であって、ドライブ転送レートを段階的に低下できる場合、前記調整されたドライブ転送レートを第1段階引き下げる請求項6記載の記憶装置。
【請求項8】
前記断続的に低下するホスト転送レートの第2の低下量は60%以上であって、ドライブ転送レートを段階的に低下できる場合、ドライブ転送レートを2段階引き下げる請求項6記載の記憶装置。
【請求項9】
データをシーケンシャルに記録するように記録媒体の駆動を制御する方法であって、
上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、
記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、
前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する、方法。
【請求項10】
データをシーケンシャルに記録するように記録媒体の駆動をコンピュータに制御させるプログラムであって、
上位装置との間のデータのホスト転送レートが平均の転送レートに対して第1の比率で断続的に第2の低下量で低下する場合、
記録媒体との間のデータのドライブ転送レートを第3のレベルまで低下させ、
前記バッファと前記記録媒体との間でデータの読み書きを制御する、ことをコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93084(P2013−93084A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235707(P2011−235707)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】