説明

データカード挿入装置

本発明は、特に自動車のタコグラフのためのデータカード挿入装置であって、スリット状の収容開口を有するフロントパネルを備え、該フロントパネルを通ってデータカードが挿入可能であり、データカードの挿入方向の後方に配置されているシール装置を備え、該シール装置が挿入方向において収容開口の後方に配置されている、データカードのシールされた挿入のための挿入スリットを有しているデータカード挿入装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のタコグラフのためのデータカード挿入装置であって、スリット状の収容開口を有するフロントパネルを備え、このフロントパネルを通ってデータカードが挿入可能であり、挿入方向においてデータカードの後方に配置されているシール装置を備え、このシール装置が挿入方向において収容開口の後方に配置されている挿入スリットをデータカードのシールされた挿入のために有しているデータカード挿入装置に関する。
この種のデータカード挿入装置においてシール装置は、ばね弾性的に支承されている下側の弾性的なエレメントを有しているということが公知である。弾性的なエレメントはプリロードによって上側のシールエレメントに当接している。弾性的なエレメントとシールエレメントとの間において、弾性的なシールエレメントを押しのけ、そして挿入スリットを形成しながらデータカードは貫通案内可能である。
上記データカード挿入装置は複数の構成部分を有していて、大きなスペース需要を必要としている。
従って本発明の課題は冒頭で述べた形式のデータカード挿入装置を改良して、僅かな構成部分から成っていて、僅かなスペース需要しか必要としないデータカード挿入装置を提供することである。
本発明によれば上記課題は、シール装置が弾性的な材料から成る、1つの部材、つまりワンピースのプレート状のシールエレメントを有していて、このシールエレメントにおいて挿入スリットが切れ目状で、シールエレメントの材料の弾性により閉鎖するように形成されていることにより解決される。
この実施の形態によりシール装置は唯一の構成部分から成っているので、僅かな構成スペースしか必要とせず、簡単な組付けが可能になる。
更にプレート状のシールエレメントは簡単に製造可能でもある。
データカードが挿入スリットに位置しない場合には、挿入スリットはシールエレメントの材料の弾性に基づいて密に閉鎖されていて、そのために付加的なばねエレメントは必要にならない。
挿入スリットに対して横方向で延びている、プレート状のシールエレメントの2つのプレート面は互いに平行に形成されていてよい。
また1つの平面からずれている、1つ又は2つのプレート面の別の実施の形態も可能である。つまり、1つ又は2つのプレート面が凹状、又は凸状、又はルーフ状に形成されていてよい。
好ましくは、挿入スリットの長さはデータカードの幅に相当しているか、又は僅かな程度大きいだけであるので、挿入スリット内に挿入された挿入カードはシールエレメントの弾性により密に取り囲まれている。
この実施の形態では、シールエレメントの弾性的な材料はプラスチックであってよい。
シールエレメントが射出成形部分であると、シールエレメントを簡単に製造することができる。
更にシールエレメントの弾性的な材料がエラストマ、特に熱可塑性のエラストマであってよい。
データカードへの密着性の向上、ひいてはシール確実性の向上は、挿入スリットの互いに相対している長手方向面が互いに向かい合わされたシールリップとして形成されていることにより達成される。
データカードの引抜き時の変形に対する安定性は、シールエレメントが、挿入スリットを完全に又は部分的に包囲する支持フレームにおいて、挿入方向に対向して支持可能であることにより達成される。それと同時に挿入スリットを取り囲む領域もシールされているので、シールエレメントの外側周辺の汚れ及び湿分はデータカード挿入装置のケーシングの内側に到達することはない。
挿入スリットに対して平行な、シールエレメントの1つ又は2つの端部領域、及び/又はシールエレメントにおける挿入スリットの1つ又は2つの端部領域に、挿入方向で延びている1つ又は2つの固定アームが配置されていてよい。固定アームはデータカード挿入装置のケーシングの1つ以上のケーシング部分に固定可能である。この場合、1つ又は複数の固定アームはプレート状のシールエレメントの幅にわたって延びていてよい。
好ましくは、簡単な製造のために及び組付け手間を減じるために、プレート状のシールエレメントと固定アームとが一体に形成されている。
1つ又は複数のケーシング部分はデータカードの挿入のための挿入スロットを完全に又は部分的に形成できる。
この場合、固定アームはケーシング部分を包囲する、半径方向で全周にわたって閉じているプレート状のシールエレメントに対向しているシールエレメントの端部にて開放したスロットエレメントがシールエレメントの挿入スリットから挿入スロットへの移行部は密に閉鎖される。
ケーシング部分におけるスロットエレメントの簡単な組付け及び固定のために、スロットエレメントは、その外側輪郭に応じて形成されているケーシング部分に被せ嵌め可能であってよい。
スロットエレメントの組込み位置におけるスロットエレメントの簡単な位置固定のために、ケーシング部分の外側輪郭が1つ又は複数の突出している突部を有していてよい。これらの突部は固定アーム又はスロットエレメントの対応する切欠きに係合する。
スロットエレメントは十分な形状安定性を、固定アーム又はスロットエレメントの壁厚が、プレート状のシールエレメントの壁厚の数倍に設定されていることにより得られる。この場合、好ましくは、固定アーム又はスロットエレメントの壁厚はプレート状のシールエレメントの壁厚の少なくとも2倍に設定されている。
スロットエレメントの下側の壁において1つ又は複数の貫通している除水開口が形成されていると、データカードと共に挿入スリットを通って侵入してきた湿分の残りが外方に流出することができる。
【0002】
本発明に係るデータカード挿入装置は、好ましくは、前記挿入スリットの長さが前記データカードの幅に相当する。
【0003】
好ましくは、前記シールエレメントの弾性的な材料がプラスチックである。
【0004】
好ましくは、前記シールエレメントが射出成形部分である。
【0005】
好ましくは、前記シールエレメントの弾性的な材料がエラストマ、特に熱可塑性のエラストマである。
【0006】
好ましくは、互いに相対している挿入スリットの長手方向面が、互いに向かい合わされたシールリップとして形成されている。
【0007】
好ましくは、前記シールエレメントが、前記挿入スリットを完全に又は部分的に取り囲む支持フレームにおいて挿入方向に対向して支持可能である。
【0008】
好ましくは、前記シールエレメントの前記挿入スリットに対して平行な1つ又は2つの端部領域に、及び/又は前記シールエレメントに設けられている前記挿入スリットの1つ又は2つの端部領域に、挿入方向において延びている1つ又は2つの固定アームが配置されており、該固定アームが当該データカード挿入装置のケーシングの1つ又は複数のケーシング部分に固定可能である。
【0009】
好ましくは、前記1つ又は複数の固定アームがプレート状の前記シールエレメントの幅にわたって延びている。
【0010】
好ましくは、プレート状の前記シールエレメント及び前記固定アームがワンピースに形成されている。
【0011】
好ましくは、1つ又は複数の前記ケーシング部分が、前記データカードの挿入のための挿入スロットを完全に又は部分的に形成する。
【0012】
好ましくは、前記固定アームが前記ケーシング部分を取り囲むようにして、半径方向で全周にわたって閉鎖されている、プレート状の前記シールエレメントとは反対側にある端部において開放したスロットエレメントを形成する。
【0013】
好ましくは、前記スロットエレメントが該スロットエレメントの外側輪郭に対応して形成された前記ケーシング部分に被せ嵌め可能である。
【0014】
好ましくは、前記ケーシング部分が該ケーシング部分の外側輪郭において、1つ又は複数の突出している突部を有しており、該突部が前記固定アーム又はスロットエレメントの対応する切欠きに係合する。
【0015】
好ましくは、前記固定アーム又は前記スロットエレメントの壁厚が、プレート状の前記シールエレメントの壁厚の数倍である。
【0016】
好ましくは、前記固定アーム又は前記スロットエレメントの壁厚が、プレート状の前記シールエレメントの壁厚の少なくとも2倍である。
【0017】
好ましくは、前記スロットエレメントの下側の壁に、1つ又は複数の貫通している除水開口が形成されている。
【0018】
本発明の実施の形態を図示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】データカード挿入装置の斜視図である。
【図2】挿入領域にデータカードが挿入されている、図1のデータカード挿入装置の一部分の横断面図である。
【図3】データカードがない状態の図2の部分を示した図である。
【図4】シールエレメントの後方からの斜視図を図1のデータカード挿入装置のスロットエレメントと共に示した図である。
【図5】図4のシールエレメント及びスロットエレメントの横断面図である。
【図6】図4のシールエレメント及びスロットエレメントを上から見た図である。
【図7】図4のシールエレメント及びスロットエレメントの端面図である。
【図8】図4のシールエレメント及びスロットエレメントの底面図である。
【0020】
自動車のタコグラフのための図示のデータカード挿入装置は、互いに結合されている上側のケーシング部分2と下側のケーシング部分3とから成るケーシング1を有している。
【0021】
第1のケーシング部分2と第2のケーシング部分3との互いに接している面の間には、データカード5の挿入のための挿入スロット4が形成されている。
【0022】
フロント側においてケーシング1は上側のケーシング部分2と下側のケーシング部分3とに対して所定の間隔をもってフロントパネル6を有している。このフロントパネル6は所定の平面において挿入スロット4に対向してスリット状の収容開口7を有している。
【0023】
上側及び下側のケーシング部分2,3のフロントパネル6寄りの端部は、横置きで方形の横断面をもった外側輪郭を有している。
【0024】
上側のケーシング部分2の上面にも下側のケーシング部分3の下面にも、方形の横断面のそれぞれ突出した5つの突起8が一列に配置されている。
【0025】
上側及び下側のケーシング部分2,3の横置きの方形の横断面をもった外側輪郭に、四角管状のスロットエレメント9が、このスロットエレメント9の内側のスロット10の対応する内側横断面で被せ嵌められている。この場合、フロントパネル側においてスロット10はプレート状のシールエレメント11により閉鎖されている。
【0026】
スロットエレメント9は、シールエレメント11とは反対の側にあるスロットエレメント9の端部が上側及び下側のケーシング部分2,3に設けられている、ストッパ12を形成する段部に当接するまで被せ嵌められている。
【0027】
スロットエレメント9の上側の壁部13と下側の壁部14とは突起8に対応して形成された貫通する切欠き15を有している。これらの切欠き15に、スロットエレメント9が被せ嵌められている場合に突起8が係合する。
【0028】
スロットエレメント9とシールエレメント11とは射出成形加工品としてワンピースに形成されていて、熱可塑性のエラストマから成っている。
【0029】
スロットエレメント9の上側及び下側の壁部13,14の壁厚は、シールエレメント11の壁厚の約3倍になるので、シールエレメント11のフレキシビリティはスロットエレメント9のフレキシビリティよりも大きく設定されている。
【0030】
従って、確かにスロットエレメント9は弾性的な変形下で突起8を越えて、ストッパ12に当接するまで上側及び下側のケーシング部分2,3の外側輪郭に被せ嵌められるが、切欠き15への突起8の係止後にはスロットエレメント9の射出成形による形状を十分に保持している。
【0031】
スロットエレメント9とシールエレメント11との組付け後にフロントパネル6の組付けが行われる。
【0032】
フロントパネル6はシールエレメント11に方向付けられた支持フレーム16を有している。この支持フレーム16の自由な端面側はシールエレメント11に当接する。
【0033】
上側及び下側のケーシング部分2,3、スロットエレメント9及びシールエレメント11、並びにフロントパネル6及び支持フレーム16の製造公差は、フロントフレーム16が軽いプリロードをもってシールエレメント11に当接していることにより補償される。
【0034】
シールエレメント11は切れ目状に貫通している挿入スリット17を有している。この挿入スリット17は挿入スロット4の平面において延びていて、シールエレメント11の材料の弾性により、データカード5が挿入されていない場合には閉鎖されている。
【0035】
挿入スリット17の幅はデータカード5の幅にほぼ相当している。
【0036】
データカード5は、図2から見て取ることができるように、フロントパネル6の収容開口7及び支持フレーム16を通って挿入スリット17に挿入され、且つこの挿入スリット17を通って挿入スロット4に挿入される。
【0037】
この場合、挿入スリット17はデータカード5に対応して拡開されるが、弾性的なプリロードをもってデータカード5を取り囲むようにして密にデータカード5に当接したままである。
【0038】
これによりデータカード挿入装置はタコグラフのような機器において使用することも可能になる。上記機器ではデータカード5は完全に機器に引き入れられるのではなく、図2から分かるように、挿入された状態において部分的にデータカード挿入装置からまだ突出している。
【0039】
挿入装置19内へのデータカード5の挿入時には、弾性的なプリロードによってシールエレメント11のデータカード5への当接により、汚れ及び湿分はデータカード5からシールリップ式に除去される。
【0040】
それでも挿入スリット17を通って侵入してくる残留湿分は挿入スリット17の後方に集められることになり、スロットエレメント9の下側の壁部14における2つの除水開口18を介して排出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車のタコグラフのためのデータカード挿入装置であって、スリット状の収容開口を有するフロントパネルを備え、該フロントパネルを通ってデータカードが挿入可能であり、データカードの挿入方向の後方に配置されているシール装置を備え、該シール装置が挿入方向において収容開口の後方に配置されている、データカードのシールされた挿入のための挿入スリットを有しているデータカード挿入装置において、
前記シール装置が弾性的な材料から成るワンピースのプレート状のシールエレメント(11)を有しており、該シールエレメント(11)において挿入スリット(17)が切れ目状で、前記シールエレメント(11)の材料の弾性により閉鎖するように形成されていることを特徴とする、データカード挿入装置。
【請求項2】
前記挿入スリット(17)の長さが前記データカード(5)の幅に相当する、請求項1記載のデータカード挿入装置。
【請求項3】
前記シールエレメント(11)の弾性的な材料がプラスチックである、請求項1又は2記載のデータカード挿入装置。
【請求項4】
前記シールエレメント(11)が射出成形部分である、請求項3記載のデータカード挿入装置。
【請求項5】
前記シールエレメント(11)の弾性的な材料がエラストマ、特に熱可塑性のエラストマである、請求項3又は4記載のデータカード挿入装置。
【請求項6】
互いに相対している挿入スリットの長手方向面が、互いに向かい合わされたシールリップとして形成されている、請求項1から5までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項7】
前記シールエレメント(11)が、前記挿入スリット(17)を完全に又は部分的に取り囲む支持フレーム(16)において挿入方向(19)に対向して支持可能である、請求項1から6までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項8】
前記シールエレメント(11)の前記挿入スリット(17)に対して平行な1つ又は2つの端部領域に、及び/又は前記シールエレメント(11)に設けられている前記挿入スリット(17)の1つ又は2つの端部領域に、挿入方向(19)において延びている1つ又は2つの固定アームが配置されており、該固定アームが当該データカード挿入装置のケーシング(1)の1つ又は複数のケーシング部分(2,3)に固定可能である、請求項1から7までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項9】
前記1つ又は複数の固定アームがプレート状の前記シールエレメント(11)の幅にわたって延びている、請求項8記載のデータカード挿入装置。
【請求項10】
プレート状の前記シールエレメント(11)及び前記固定アームがワンピースに形成されている、請求項1から9までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項11】
1つ又は複数の前記ケーシング部分(2,3)が、前記データカード(5)の挿入のための挿入スロット(4)を完全に又は部分的に形成する、請求項1から10までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項12】
前記固定アームが前記ケーシング部分(2,3)を取り囲むようにして、半径方向で全周にわたって閉鎖されている、プレート状の前記シールエレメント(11)とは反対側にある端部において開放したスロットエレメント(9)を形成する、請求項1から11までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項13】
前記スロットエレメント(9)が該スロットエレメント(9)の外側輪郭に対応して形成された前記ケーシング部分(2,3)に被せ嵌め可能である、請求項12記載のデータカード挿入装置。
【請求項14】
前記ケーシング部分(2,3)が該ケーシング部分(2,3)の外側輪郭において、1つ又は複数の突出している突部(8)を有しており、該突部(8)が前記固定アーム又はスロットエレメント(9)の対応する切欠き(15)に係合する、請求項7から13までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項15】
前記固定アーム又は前記スロットエレメント(9)の壁厚が、プレート状の前記シールエレメント(11)の壁厚の数倍である、請求項7から14までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。
【請求項16】
前記固定アーム又は前記スロットエレメント(9)の壁厚が、プレート状の前記シールエレメント(11)の壁厚の少なくとも2倍である、請求項15記載のデータカード挿入装置。
【請求項17】
前記スロットエレメント(9)の下側の壁(14)に、1つ又は複数の貫通している除水開口(18)が形成されている、請求項12から16までのいずれか一項記載のデータカード挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−541885(P2009−541885A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517239(P2009−517239)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056625
【国際公開番号】WO2008/003668
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508097870)コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (205)
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D−30165 Hannover, Germany
【Fターム(参考)】