説明

データキャリアの駆動方法

【課題】
データキャリアにおいて,駆動電源の消耗による電池切れの心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリアの駆動方法を提供すること。
【解決手段】
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアを,少なくとも,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段と,を含んで構成し,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体において,該圧電体にて発電した電圧を前記記憶手段及び送信手段に供給してなるよう,該圧電体の発電部をデータキャリアに電気的に接続し,該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,該電圧を前記データキャリアに供給することにより該データキャリアに設けられた記憶手段及び送信手段を駆動し,該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴としてデータキャリアの駆動方法を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアに係り,特に,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触にて情報を送信または送受信するRFIDの駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアとしては,バーコード,2次元シンボル,RFIDなどがあった。このうち,RFIDからなるデータキャリアは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で情報を送信または送受信するものであり,情報を記憶する記憶部と,情報を非接触で送信または送受信するためのアンテナを備えて構成されているもので,ICタグ,IDタグ,RFタグ,無線タグ,電子タグ,トランスポンダ等,様々な名称が使われている。
RFIDは,電源を内蔵するか外部から電源供給を受けるかの違い等により,自ら所定の情報を含んだ電波を発することが可能なアクティブタイプ(能動形)のRFIDと,外部からの電波(搬送波)の電力を利用して駆動するパッシブタイプ(受動形)のRFIDとの二つのタイプに分けることができる。このうち,アクティブタイプのRFIDにおいては,駆動用の電源が質問器(リーダ/ライタ)の側ではなく,RFIDの側にあり,通常,その駆動電源として電池を備えて構成されている。
【0003】
【非特許文献1】技術総合誌OHM 2003年12月号 第26項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,駆動用の電池を備えたアクティブタイプのRFIDからなるデータキャリアの場合,所定の情報を送信する頻度(通常,アクティブタイプのRFIDは予め決められた間隔で情報を送信するように構成されている)や,送信に必要な電波の強度などに応じて,電池は徐々に消耗していき,ついには情報を送信する電力を発生できなくなる。即ち,RFIDからなるデータキャリアは能動的に情報を送信できなくなり,必要なときに所定の情報を送信できなくなる可能性があるという課題があった。また,一般に電池の寿命はRFIDの記憶部の寿命と比較して短く,このため,RFIDからなるデータキャリアを使用するにあたり,電池が切れるという心配があり,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは二次電池の場合には電池を充電する作業が発生するという課題があった。
【0005】
そこで本件の発明は,データキャリアにおいて,駆動電源の消耗による電池切れの心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリアの駆動方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するために,請求項1の発明においては,
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアを,少なくとも,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段と,を含んで構成し,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体において,該圧電体にて発電した電圧を前記記憶手段及び送信手段に供給してなるよう,該圧電体の発電部をデータキャリアに電気的に接続し,該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,該電圧を前記データキャリアに供給することにより該データキャリアに設けられた記憶手段及び送信手段を駆動し,該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴としてデータキャリアの駆動方法を提供したものである。
【0007】
これにより,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体をデータキャリアに電気的に接続し,該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力をデータキャリアに供給し,一般に,圧電体の寿命は,データキャリアの記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,電池を用いた場合と比べて,電池が切れるという心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続ける駆動方法を提供することが可能となるものである。
【0008】
また、請求項2の発明においては,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段とを備えてICチップを形成し,該ICチップを含んでなる所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアにおいて,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に少なくとも二つの電極を作製し,各々の電極とICチップとを電気的に接続し,該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,該電圧を前記ICチップに供給することにより該ICチップに備えられた記憶手段及び送信手段を駆動し,該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴としてデータキャリアの駆動方法を提供したものである。
【0009】
これにより,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に作製した少なくとも二つの電極と,ICチップとを電気的に接続し,圧電体に機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力をICチップに供給し,一般に,圧電体の寿命は,データキャリアの記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,電池を用いた場合と比べて,電池が切れるという心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,データキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続ける駆動方法を提供することが可能となるものである。
【0010】
また,請求項3の発明においては,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段とを備えてICチップを形成し,該ICチップを含んでなる所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアにおいて,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に少なくとも二つの電極を作製し,片極の電極を介して隣り合うように前記ICチップを配設し,他極の電極とICチップとを電気的に接続し,該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,該電圧を前記ICチップに供給することにより該ICチップに備えられた記憶手段及び送信手段を駆動し,該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴としてデータキャリアの駆動方法を提供したものである。
【0011】
これにより,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に作製した少なくとも二つの電極のうち,片極の電極と隣り合うようにICチップを配設し,他極の電極をICチップとを電気的に接続
することにより,圧電体に機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電体の寿命は,データキャリアに記憶される所定の情報を記憶する記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,電池を用いた場合と比べて,電池が切れるという心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,データキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続ける駆動方法を提供することが可能となるものである。
【0012】
また,請求項4の発明においては,圧電体に作製される少なくとも二つの電極は,圧電体に発生する分極に応じて正電荷が発生する部分,及び負電荷が発生する部分に設けられることを特徴として請求項2又は請求項3記載のデータキャリアの駆動方法を提供したものである。
【0013】
これにより,圧電体の分極に応じて発生する正電荷及び負電荷の部分に電極を設けて請求項2又は請求項3記載のデータキャリアの駆動方法を提供したため,請求項2又は請求項3の効果に加えて,圧電体に発生する電圧を効率よくICチップに供給する事が可能となり,圧電体に加える外部からの衝撃力をより小さくすることができることにより,圧電体の破壊,損傷のおそれが低減し,したがって,より長寿命に情報を送信し続ける駆動方法を提供することが可能となるものである。
【0014】
また,請求項5の発明においては,前記データキャリアは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で記憶手段に記憶された情報を送受信するRFIDであることを特徴として請求項1から請求項4記載のデータキャリアの駆動方法を提供したものである。
【0015】
これにより,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体を駆動電源としてRFIDを駆動させる方法としたため,圧電体に機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,電池が切れる心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続ける駆動方法を提供することが可能となるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,データキャリアにおいて,駆動電源の消耗による電池切れの心配がなく,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリアの駆動方法を提供することができる。
【実施例1】
【0017】
次に,実施の形態について図面を用いて説明するが,先に説明に用いる語句について定義を行っておく。
【0018】
データキャリアとは,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体を指す。この情報媒体としては,バーコード,2次元シンボル,RFIDなどを意味するが,本発明においては,特にRFIDを意味する。尚,2次元シンボルは,PDF417,Date Matrix,Maxi Code,QR Code等をいう。
【0019】
RFIDとは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で情報を送信または送受信するタイプのデータキャリアを指す。
質問器(リーダ/ライタ)とは,RFIDとのデータ交信,制御およびそのデータに関する処理を行う装置である。
【0020】
圧電体とは,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を持った物質で,機械的な衝撃を受けると,衝撃に比例した電圧を発生させるものである。通常,キュリー温度以下の強誘電体領域で圧電性を有するものをピエゾ素子(圧電素子)と呼び,キュリー温度以上の常誘電体領域で圧電性を有するものを電歪素子と呼ぶ。圧電性を有する物質は,自発分極(電荷の偏り)を有しており物質内部に正負それぞれの電荷の中心が存在する。このため,衝撃を受けた場合,物質全体としての分極の方向において物質の表面には正電荷及び負電荷が生じ,両電荷間において電圧を発生するものである。
【0021】
ICとは,トランジスタ,抵抗,コンデンサ,ダイオードなどの素子を集めて基板の上に装着し,各種の機能を持たせた電子回路のことをいう。チップとは,パッケージされた電子回路(IC)を指す。
【0022】
図1には本発明のデータキャリアの駆動方法を具現化するための第一の実施例を示している。データキャリア100は,所定の情報を記憶する記憶手段101と,該所定の情報を無線送信するための送信手段102とを備えて構成され,該記憶手段101,送信手段102に駆動用の電力を供給するための駆動電源としての圧電体103が設けられている。
【0023】
記憶手段101に記憶される所定の情報は,ISOやIEC等で標準化されているように,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0024】
駆動電源として,圧電性を有する物質,即ち圧電体103を用いる。圧電体103の発電部とデータキャリア100とを電気的に接続し,機械的な衝撃を印加した場合には,発生した電圧をデータキャリア100に供給することにより,記憶手段101,及び送信手段102を駆動させ所定の情報を送信する。
【0025】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要である。
【0026】
圧電性を有する物質に機械的な衝撃を印加するために,種々の機構を用いることができる。使用状態によっては,人為的に機械的な衝撃を印加する場合と,データキャリアを付加する対象にその制御プロセスにおいて機械的に衝撃を印加する場合とがある。
【0027】
また,圧電性を有する物質としては,機械的なエネルギーを高効率に電気的なエネルギーに変換できる圧電性物質が有効である。例えば,チタン酸ジルコン酸鉛に代表されるPZT系や,ニオブ酸リチウム(LiNbO)などのような機械電気結合定数の高い圧電性を有する物質を用いて構成するとよい。
【0028】
また,圧電性を有する物質は,軟質と硬質に分類され,軟質の圧電性を有する物質は,キュリー温度が低く,減極が起こりやすく,衝撃に対する再現性が乏しいのに対して,硬質の圧電性を有する物質は,キュリー温度が高く(300℃以上),減極が起こりにくく,再現性が高いため,硬質の圧電性を有する物質を用いることにより,より長寿命で再現性よく電圧を発生することができ,記憶手段,及び送信手段を駆動することが可能である。
【0029】
このように,データキャリア100を構成し,圧電体103と電気的に接続して設けたため,圧電体103に衝撃を印加することにより電圧を発生させ,データキャリアを駆動させることにより,所定の情報を外部に送信させる駆動方法を提供できる。
【0030】
次にデータキャリアの第二の実施例について図2に示している。データキャリア200は,所定の情報を記憶する記憶手段2011と所定の情報を無線にて外部に送信する送信手段2012とを設けたICチップ201とを備えて構成され,該ICチップ201と接続されICチップに駆動用の電力を供給するための,駆動電源としての圧電体203が設けられる。
【0031】
ICチップ201の記憶手段2011に記憶される所定の情報は,前述したように,ISOやIEC等で標準化された,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0032】
記憶手段2011は,情報を記憶するための記憶領域が設けられており,記憶領域はシステム領域と,ユーザ領域に分けられて構成されている。システム領域はRFIDの管理用に使用されるメモリ領域である。ユーザ領域は,利用者が自由に利用できるメモリ領域であり,所定の情報を書き込んで利用する。
【0033】
送信手段2012は,所定の情報を無線にて外部に送信する無線通信回路が設けられており,変調回路が構成されている。
【0034】
所定の情報の書き込みについては,データキャリアを使用する前に質問器(リーダ/ライタ)等を用いて,予め書き込んでおく。書き込み時に使用する電源は,質問器(リーダ/ライタ)から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。または,記憶手段に専用の書き込み装置を用いて直接書き込みを行う。
【0035】
駆動電源として,第一の実施形態と同様,圧電性を有する物質,即ち圧電体203を用いている。圧電体203には,二つの電極A204a及び電極B204bを作製し,各々の電極A,Bと,ICチップ201とを電気的に接続し,機械的な衝撃を印加した場合には,発生した電圧をICチップに供給することにより,ICチップに設けられた記憶手段2011及び送信手段2012を駆動させ所定の情報を送信する。
【0036】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要であるが,第一の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0037】
圧電体203は,該圧電体における分極を生ずる方向において,片面203aと,その対向する面203bとがICチップ201に電気的に接続されている。圧電体203に機械的な衝撃が印加された場合には片面203aと対向する面203bとの間には電位差が生じICチップ201に電源を供給できる。
【0038】
このように,データキャリア200を構成し,圧電体203に作製した電極A,Bと電気的に接続して設けたため,圧電体に衝撃を印加することにより電圧を発生させ,データキャリアを駆動させることにより,所定の情報を外部に送信させる駆動方法を提供できる。
【0039】
次にデータキャリアの駆動方法を具現化するための第三の実施例について図3に示している。データキャリア300は,所定の情報を記憶する記憶手段3011と所定の情報を無線にて外部に送信する送信手段3012とを設けたICチップ301とを備えて構成され,該ICチップ301と接続されICチップに駆動用の電力を供給するための,駆動電源としての圧電体303が一体に設けられる。
【0040】
ICチップ301の記憶手段3011に記憶される所定の情報は,前述したように,ISOやIEC等で標準化された,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0041】
記憶手段3011は,情報を記憶するための記憶領域が設けられており,記憶領域はシステム領域と,ユーザ領域に分けられて構成されている。システム領域はRFIDの管理用に使用されるメモリ領域である。ユーザ領域は,利用者が自由に利用できるメモリ領域であり,所定の情報を書き込んで利用する。
【0042】
送信手段3012は,所定の情報を無線にて外部に送信する無線通信回路が設けられており,変調回路が構成されている。
【0043】
所定の情報の書き込みについては,データキャリアを使用する前に質問器(リーダ/ライタ)等を用いて,予め書き込んでおく。書き込み時に使用する電源は,質問器(リーダ/ライタ)から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。または,記憶手段に専用の書き込み装置を用いて直接書き込みを行う。
【0044】
駆動電源として,第一の実施形態と同様,圧電性を有する物質,即ち圧電体303を用いている。圧電体303には,二つの電極A304a及び電極B304bを作製し,片極の電極,この場合電極A304aと隣り合うようにICチップ301を設けて電気的に接続し,他極の電極,この場合電極B304bとICチップ301とを電気的に接続305する。圧電体303に,機械的な衝撃を印加した場合には,発生した電圧をICチップに供給することにより,ICチップに設けられた記憶手段3011及び送信手段3012を駆動させ所定の情報を送信する。
【0045】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要であるが,第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
圧電体303は,該圧電体における分極を生ずる方向において,片面303aと,その対向する面303bとに電極が作製されている。圧電体203に機械的な衝撃が印加された場合には片面303aと対向する面303bとの間には電位差が生じ,それぞれ設けられた電極A,Bを介してICチップ201に電源を供給できる。
【0047】
このように,データキャリア300を構成し,圧電体303に作製した電極A,Bと電気的に接続して一体に設けたため,圧電体に衝撃を印加することにより電圧を発生させ,データキャリアを駆動させることにより,所定の情報を外部に送信させる駆動方法を提供できる。
【0048】
次に,図4に圧電体を含んで構成されたデータキャリア400の概略図を示す。図3においては,圧電体303はデータキャリア300の外部に設けられていたが,図4においてはデータキャリア400に圧電体403を含めて一体に構成している。401はICチップ,404a,404bは圧電体403に作製された電極である。ICチップ及び圧電体の接続は,図3の実施例と同様であるので説明は省略する。
【0049】
このようにデータキャリア400に圧電体403を含んで構成したため,データキャリア400単体で使用を行いたい場合などに適用できる。
【0050】
次に,圧電体の発電について簡単に説明を行っておく。
図5には,圧電体の内部における分極と,発生する電荷の概略図を示している。発電素子(デバイス)として用いられる圧電体は,単結晶の場合もあるが通常は多結晶から構成されている圧電体セラミックスを用いる場合が多い。
【0051】
多結晶からなる圧電体セラミックスは,各々の結晶においては分極の方向が散逸的であるものの,全体としては一定の方向に分極が発生している。圧電体に衝撃力を加えると,互いの結晶の分極が作用し合い,結晶の片面には正の,他面には負の電荷が発生する。結晶の表面において電荷が発生する部分に電極を作製することで,電極と,電圧供給先とを電気的に接続することにより,衝撃力に応じた電圧を電圧供給先に供給することが可能である。
【0052】
駆動電源となる圧電体としては,高い機械電気結合定数を有する単結晶やセラミックスを用いることができる。例えばチタン酸ジルコン酸鉛に代表されるPZT系や,ニオブ酸リチウム(LiNbO)からなる圧電体を用いる。
【0053】
図4においては,圧電体403の分極を生ずる方向において,片面とその対向する面にAg等の一対の電極404a,404bを作成し,該電極404aと隣り合うように,記憶手段である記憶領域並びに送信手段である無線通信回路を設けたICチップ401を配設し,さらに電極404bとICチップ401とを電気的に接続405する。
【0054】
このようにデータキャリア400を構成することにより,圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,該電圧を前記ICチップに供給することにより,該ICチップに備えられた記憶手段及び送信手段を駆動し,該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させるデータキャリアの駆動方法を提供できる。
【0055】
RFIDとしてデータキャリアを使用する場合,通常は,質問器(リーダ/ライタ)と通信を行うために,アンテナを設ける。例として,図6に,図4のICチップ401の外部にアンテナ402を設けた場合を示す。このデータキャリアを600とする。
【0056】
アルミ,銅,銀などで構成されたアンテナ402をICチップ401と接続してRFIDからなるデータキャリア400を構成する。アンテナは通信する周波数に合わせて適宜設ければよいが,図6のように外部に露出させてもよいし,ICチップの送信手段,即ち無線通信回路に内蔵させて設けたり,ICチップと一体に設けて構成してもよい。この場合には,RFIDを使用するにあたり,アンテナが邪魔にならずに使用が行え,より小型化できるため,データキャリアを付加する対象をより小さなものにも適用することができる。
【0057】
このように構成したデータキャリア600に外部から機械的な衝撃を印加すると,圧電体403において発生した電圧はICチップ401に供給され,該ICチップ401の記憶領域に記憶された所定の情報が無線通信回路によりアンテナ402を介して送信される。
【0058】
尚,いずれの場合においても,印加する衝撃は,圧電体が破壊しないよう適切に与える必要がある。
【0059】
また,本発明の実施例として説明を行ってきたICチップ301における記憶領域3011を読み込み及び書き込み可能なメモリを用い,無線通信回路に変調回路及び復調回路を設けることにより,リードオンリー形のRFIDのみならず,リードライト形のRFIDを構成することができる。前述したように,書き込みに用いる電源は,質問器(リーダ/ライタ)から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。
【0060】
このほか,記憶手段に用いるメモリを一回のみ書き込み可能なメモリを用いて,ライトワンス形,即ち質問器(リーダ/ライタ)を用いて,記憶手段に一度だけ所定の情報の書き込みができ,以降は所定の情報の読み取りのみが可能なタイプとしての使用が可能である。さらに記憶手段に用いるメモリをビット単位もしくはバイト単位で分割し,各分割領域に一度だけ書き込みを行うことでメモリの容量に応じて書き込み回数を複数回可能とした追記形としても用いることができる。
【0061】
このようにRFIDを構成することにより,所定の情報を読み出す一方方向の使用用途から,所定の情報を書き込みできる両方向の使用用途への応用が行える。
【0062】
また,圧電体に印加する力は衝撃力を用いたが,圧電体の特性に基づき,電圧を発生させるような応力を圧電体に印加してデータキャリア,RFIDに駆動電圧を供給させるように設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明におけるデータキャリアを駆動させる方法では,電池が不要で,衝撃が印加された場合に駆動電力を能動的に発生させ,長寿命に使用できるため,産業上機械的な衝撃や応力が加わる状況で用いることができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第一の実施形態を示すブロック図。
【図2】第二の実施形態を示すブロック図。
【図3】第三の実施形態を示すブロック図。
【図4】第四の実施形態を示すブロック図。
【図5】圧電体の発電を示した概略図。
【図6】第五の実施形態を示すブロック図。
【符号の説明】
【0065】
100 データキャリア
101 記憶手段
102 送信手段
103 圧電体
200 データキャリア
201 ICチップ
2011 記憶手段
2012 送信手段
203 圧電体
204a 電極A
204b 電極B
300 データキャリア
301 ICチップ
3011 記憶手段
3012 送信手段
303 圧電体
304a 電極A
304b 電極B
305 電気的接続
400 データキャリア
401 ICチップ
402 アンテナ
403 圧電体
404a 電極A
404b 電極B
600 データキャリア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(データキャリアに圧電体をつないで駆動させる方法)
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアを,
少なくとも,所定の情報を記憶する記憶手段と,
該情報を無線にて送信する送信手段と,
を含んで構成し,
機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体において,該圧電体にて発電した電圧を前記記憶手段及び送信手段に供給してなるよう,該圧電体の発電部をデータキャリアに電気的に接続し,
該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,
該電圧を前記データキャリアに供給することにより該データキャリアに設けられた記憶手段及び送信手段を駆動し,
該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴とするデータキャリアの駆動方法。
【請求項2】
(ICチップを含むデータキャリアと圧電体の電極をつないで駆動させる方法)
所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段とを備えてICチップを形成し,該ICチップを含んでなる所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアにおいて,
機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に少なくとも二つの電極を作製し,
各々の電極とICチップとを電気的に接続し,
該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,
該電圧を前記ICチップに供給することにより該ICチップに備えられた記憶手段及び送信手段を駆動し,
該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴とするデータキャリアの駆動方法。
【請求項3】
(ICチップと圧電体の電極を隣り合わせにつないで駆動させる方法)
所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段とを備えてICチップを形成し,該ICチップを含んでなる所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアにおいて,
機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体に少なくとも二つの電極を作製し,
片極の電極を介して隣り合うように前記ICチップを配設し,
他極の電極とICチップとを電気的に接続し,
該圧電体に機械的な衝撃を印加することにより電圧を発生させ,
該電圧を前記ICチップに供給することにより該ICチップに備えられた記憶手段及び送信手段を駆動し,
該記憶手段に記憶された所定の情報を送出させることを特徴とするデータキャリアの駆動方法。
【請求項4】
(電極の位置)
圧電体に作製される少なくとも二つの電極は,圧電体に発生する分極に応じて正電荷が発生する部分,及び負電荷が発生する部分に設けられることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のデータキャリアの駆動方法。
【請求項5】
(RFIDである)
前記データキャリアは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で記憶手段に記憶された情報を送受信するRFIDであることを特徴とする請求項1から請求項4記載のデータキャリアの駆動方法。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−24102(P2006−24102A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203276(P2004−203276)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000109598)テンパール工業株式会社 (217)
【Fターム(参考)】