説明

データキャリア

【課題】
駆動電源の消耗による電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリア,特にアクティブタイプのRFIDからなるデータキャリアを提供すること。
【解決手段】
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアであって,少なくとも,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段と,該記憶手段及び該送信手段に電力を供給する駆動電源とを備え,前記駆動電源は機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成されていることを特徴としてデータキャリアを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアに係り,特に,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で情報を送信または送受信するRFIDに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアとしては,バーコード,2次元シンボル,RFIDなどがあった。このうち,RFIDからなるデータキャリアは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で情報を送信または送受信するものであり,情報を記憶する記憶部と,情報を非接触で送信または送受信するためのアンテナを有して構成されているもので,ICタグ,IDタグ,RFタグ,無線タグ,電子タグ,トランスポンダ等,様々な名称が使われている。
RFIDは,電源を内蔵するか外部から電源供給を受けるかの違いにより,自ら所定の情報を含んだ電波を発することが可能なアクティブタイプ(能動形)のRFIDと,外部からの電波(搬送波)の電力を利用して駆動するパッシブタイプ(受動形)のRFIDとの二つのタイプに分けることができる。このうち,アクティブタイプのRFIDにおいては,駆動用の電源を内蔵しており,電源として電池を備えて構成されている。
【0003】
【非特許文献1】技術総合誌OHM 2003年12月号 第26項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,駆動用の電池を備えたアクティブタイプのRFIDからなるデータキャリアの場合,所定の情報を送信する頻度(通常,アクティブタイプのRFIDは予め決められた間隔で情報を送信するように構成されている)や,送信に必要な電波の強度などに応じて,電池は徐々に消耗していき,ついには情報を送信する電力を発生できなくなる。即ち,RFIDからなるデータキャリアは能動的に情報を送信できなくなるという課題があった。また,一般に電池の寿命はRFIDの記憶部の寿命と比較して短く,このため,RFIDからなるデータキャリアを使用し続けるためには,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生するという課題があった。
【0005】
そこで本件の発明は,データキャリアにおいて,駆動電源の消耗による電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリア,特にアクティブタイプのRFIDからなるデータキャリアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するために,請求項1の発明においては,
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアであって,少なくとも,所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送信する送信手段と,該記憶手段及び該送信手段に電力を供給する駆動電源とを備え,前記駆動電源は機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成されていることを特徴としてデータキャリアを提供したものである。
【0007】
これにより,駆動電源として機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成し,データキャリアに機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電性を有する物質の寿命は,データキャリアの記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続けることが可能となるものである。
【0008】
また、請求項2の発明においては,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りもしくは書き込みが可能な情報媒体であるデータキャリアであって,少なくとも,
所定の情報を記憶する記憶手段と,該情報を無線にて送受信する送受信手段と,該記憶手段及び該送受信手段に電力を供給する駆動電源とを備え,前記駆動電源は機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成されていることを特徴としてデータキャリアを提供したものである。
【0009】
これにより,駆動電源として機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成し,データキャリアに機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電性を有する物質の寿命は,データキャリアの記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続けることが可能となるものである。
【0010】
また,請求項3の発明においては,前記データキャリアを,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で記憶手段に記憶された情報を送信または送受信するRFIDであることを特徴として請求項1または請求項2記載のデータキャリアを提供したものである。
【0011】
これにより,RFIDの駆動電源として機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成し,該RFIDに機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電性を有する物質の寿命は,RFIDに記憶される所定の情報を記憶する記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,アクティブタイプのRFIDにおいて,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続けることが可能となるものである。
【0012】
また,請求項4の発明においては,所定の情報を記憶する記憶領域と該所定の情報を無線にて外部に送信する無線通信回路とを設けたICチップと,前記ICチップと接続され,該ICチップに駆動用の電力を供給するための,機械的な衝撃を与えることにより電力を発生する圧電体からなる駆動電源と,前記ICチップに設けられた無線通信回路と接続され前記所定の情報を無線にて送信するためのアンテナと,を備えたRFIDからなることを特徴としてデータキャリアを提供したものである。
【0013】
これにより,RFIDの駆動電源として機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体を用いて構成し,該RFIDに機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電体の寿命は,RFIDに記憶される所定の情報を記憶する記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,アクティブタイプのRFIDにおいて,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続けることが可能となるものである。
【0014】
また,請求項5の発明においては,所定の情報を記憶する記憶領域と該所定の情報を無線にて外部に送信もしくは外部からの無線信号を受信する無線通信回路とを設けたICチップと,前記ICチップと接続され,該ICチップに駆動用の電力を供給するための,機械的な衝撃を与えることにより電力を発生する圧電体からなる駆動電源と,前記ICチップに設けられた無線通信回路と接続され前記所定の情報を無線にて送受信するためのアンテナと,を備えたRFIDからなることを特徴としてデータキャリアを提供したものである。
【0015】
これにより,RFIDの駆動電源として機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電体を用いて構成し,該RFIDに機械的な衝撃を印加することにより,所定の情報を送信するための駆動用の電力を得ることができ,一般に,圧電体の寿命は,RFIDに記憶される所定の情報を記憶する記憶手段の寿命と同程度に長寿命であるため,アクティブタイプのRFIDにおいて,電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業といった後工程の作業が発生することなくメンテナンスフリーで,しかも,RFIDからなるデータキャリアから能動的に情報を送信できなくなるおそれがなく長寿命に情報を送信し続けることが可能となるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,データキャリアにおいて,駆動電源の消耗による電池の残存容量の確認や電池の交換作業,もしくは電池を充電する作業が発生せず,長寿命に所定の情報を送信できるデータキャリア,特にアクティブタイプのRFIDからなるデータキャリアを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に,実施の形態について図面を用いて説明するが,先に説明に用いる語句について定義を行っておく。
【0018】
データキャリアとは,所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体を指す。この情報媒体としては,バーコード,2次元シンボル,RFIDなどを意味する。このうち,2次元シンボルには,PDF417,Date Matrix,Maxi Code,QR Code等がある。
【0019】
RFIDとは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で情報を送信または送受信するタイプのデータキャリアを指す。
質問器(リーダ/ライタ)とは,RFIDとのデータ交信,制御およびそのデータに関する処理を行う装置である。
【0020】
圧電性を有する物質とは,機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する物質で,機械的な衝撃を受けると,衝撃に比例した電圧を発生させるものである。通常,キュリー温度以下の強誘電体領域で圧電性を有するものをピエゾ素子(圧電素子)と呼び,キュリー温度以上の常誘電体領域で圧電性を有するものを電歪素子と呼ぶ。圧電性を有する物質は,自発分極(電荷の偏り)を有しており物質内部に正負それぞれの電荷の中心が存在する。このため,衝撃を受けた場合,分極の方向において物質の表面には正電荷及び負電荷が生じ電圧を発生するものである。
【0021】
図1には本発明のデータキャリアの第一の形態を示している。データキャリア100は,所定の情報を記憶する記憶手段101と,該所定の情報を無線送信するための送信手段102と,該送信手段に駆動用の電力を供給するための駆動電源103とを備えて構成されている。
【0022】
この形態は,記憶手段101に予め所定の情報を書き込んでおき,使用の際には,所定の情報を読み取りのみ行うことが可能なリードオンリー形のデータキャリアである。
【0023】
記憶手段101に記憶される所定の情報は,ISOやIEC等で標準化されているように,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0024】
駆動電源103には,圧電性を有する物質を用いており,機械的な衝撃を印加すると電圧を発生する。この電圧を用いて,送信手段を駆動させ所定の情報を送信する。
【0025】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要である。
【0026】
圧電性を有する物質に機械的な衝撃を印加するために,種々の機構を用いることができる。使用状態によっては,人為的に機械的な衝撃を印加する場合と,データキャリアを付加する対象に機械的に衝撃を印加する場合とがある。
【0027】
圧電性を有する物質としては,機械的なエネルギーを高効率に電気的なエネルギーに変換できる圧電性物質が有効である。例えば,チタン酸ジルコン酸鉛に代表されるPZT系や,ニオブ酸リチウム(LiNbO)などのような機械電気結合定数の高い圧電性を有する物質を用いて構成するとよい。
【0028】
また,圧電性を有する物質は,軟質と硬質に分類され,軟質の圧電性を有する物質は,キュリー温度が低く,減極が起こりやすく,衝撃に対する再現性が乏しいのに対して,硬質の圧電性を有する物質は,キュリー温度が高く(300℃以上),減極が起こりにくく,再現性が高いため,硬質の圧電性を有する物質を用いることにより,より長寿命で再現性よく電圧を発生することができ,送信手段を駆動することが可能である。
【0029】
このように,データキャリア100を構成したために,電池を用いることなく,所定の情報を外部に無線送信させることができる。
【0030】
次にデータキャリアの第二の形態について図2に示している。データキャリア200は,所定の情報を記憶する記憶手段201と,該所定の情報を無線送受信するための送受信手段202と,該送受信手段に駆動用の電力を供給するための駆動電源203とを備えて構成されている。
【0031】
この形態は,記憶手段201に記憶する所定の情報を書き込み及び読み込みできるリードライト形のデータキャリアである。
【0032】
記憶手段201に記憶される所定の情報は,前述したように,ISOやIEC等で標準化された,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0033】
記憶手段201は,データの読み出し,書き込みが可能なメモリで構成されており,所定の情報の書き込みについては,データキャリアを使用する前に予め書き込んでおいても,使用途中に書き込みを行ってもよい構造となっている。この構造により,例えば経時的に所定の情報であるIDを書き換えたい場合などに利用できる。書き込み時に使用する電源は,外部から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。
【0034】
駆動電源203には,第一の実施形態と同様,圧電性を有する物質を用いており,機械的な衝撃を印加すると電圧を発生する。この電圧を用いて,送受信手段を駆動させ所定の情報を外部に送信する。
【0035】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要であるが,第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0036】
このように,データキャリア200を構成したために,電池を用いることなく,所定の情報を外部に無線送信させることができる。
【0037】
また,本実施の形態で説明したリードライト形以外にも,記憶手段に用いるメモリを一回のみ書き込み可能なメモリを用いて,ライトワンス形,即ち質問器(リーダ/ライタ)を用いて,記憶手段に一度だけ所定の情報の書き込みができ,以降は所定の情報の読み取りのみが可能なタイプとしての使用が可能である。このほか,記憶手段に用いるメモリをビット単位もしくはバイト単位で分割し,各分割領域に一度だけ書き込みを行うことでメモリの容量に応じて書き込み回数を複数回可能とした追記形としても用いることができる。
【0038】
次にデータキャリアの第三の形態について図3に示している。データキャリア300は,所定の情報を記憶する記憶領域3011と所定の情報を無線にて外部に送信する無線通信回路(変調回路)3012とを設けたICチップ301と,該ICチップ301と接続されICチップに駆動用の電力を供給するための,機械的な衝撃を与えることにより電力を発生する圧電体からなる駆動電源303と,前記ICチップに設けられた無線通信回路(変調回路)と電気的に接続され前記所定の情報を無線にて送信するためのアンテナ302とを備えて構成されている。
【0039】
この形態は,記憶手段201に記憶する所定の情報を読み込みのみできるリードオンリー形のRFIDからなるデータキャリアである。
【0040】
ICチップ301の記憶領域3011に記憶される所定の情報は,前述したように,ISOやIEC等で標準化された,個々のデータキャリアに登録されるユニークな情報(数値や文字からなるID)で,この所定の情報を用いて,データキャリアが付加される物・動物を識別することができるものである。通常,この所定の情報と,関連付けられたデータが存在し,データキャリアから所定の情報を読み出し,関連付けられたデータを参照することにより,その対象を知ることができる。
【0041】
記憶領域3011は,システム領域と,ユーザ領域に分けられており,システム領域はRFIDの管理用に使用されるメモリ領域である。ユーザ領域は,利用者が自由に利用できるメモリ領域であり,所定の情報を書き込んで利用する。
【0042】
所定の情報の書き込みについては,データキャリアを使用する前に質問器(リーダ/ライタ)を用いて,予め書き込んでおく。書き込み時に使用する電源は,質問器(リーダ/ライタ)から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。
【0043】
駆動電源303には,第一の実施形態と同様,圧電性を有する物質,即ち圧電体を用いており,機械的な衝撃を印加すると電圧を発生する。この電圧を用いて,無線通信回路3102を駆動させ所定の情報をアンテナ302を介して外部に送信する。
【0044】
送信手段を駆動させるための適切な電圧を発生させるために,圧電性を有する物質の選定と,物質が破壊しない程度の適度な衝撃の印加が必要であるが,第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0045】
圧電体303は,該圧電体における分極を生ずる方向において,片面303aと,その対向する面303bとがICチップ301に電気的に接続されている。圧電体303に機械的な衝撃が印加された場合には片面303aと対向する面303bとの間には電位差が生じICチップ301に電源を供給する。
【0046】
このように,RFIDからなるデータキャリア300を構成したために,電池を用いることなく,所定の情報を外部に無線送信させることができる。
【0047】
また,ICチップ301における記憶領域3011を読み込み及び書き込み可能なメモリを用い,無線通信回路3012に変調回路及び復調回路を設けることにより,第三の実施形態で説明したリードオンリー形のRFIDのみならず,リードライト形のRFIDを構成することができる。前述したように,書き込みに用いる電源は,質問器(リーダ/ライタ)から送られてくる所定の情報を含んだ搬送波によるエネルギーを利用する。
【0048】
このほか,記憶手段に用いるメモリを一回のみ書き込み可能なメモリを用いて,ライトワンス形,即ち質問器(リーダ/ライタ)を用いて,記憶手段に一度だけ所定の情報の書き込みができ,以降は所定の情報の読み取りのみが可能なタイプとしての使用が可能である。さらに記憶手段に用いるメモリをビット単位もしくはバイト単位で分割し,各分割領域に一度だけ書き込みを行うことでメモリの容量に応じて書き込み回数を複数回可能とした追記形としても用いることができる。
【実施例1】
【0049】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0050】
図4に本発明を用いたRFIDからなるデータキャリア400を示した。駆動電源となる圧電体403として高い機械電気結合定数を有する単結晶やセラミックスを用いることができる。例えばチタン酸ジルコン酸鉛に代表されるPZT系や,ニオブ酸リチウム(LiNbO)からなる圧電体403を用いる。
【0051】
この圧電体403の分極を生ずる方向において,片面とその対向する面にAg等の一対の電極404a,404bを作成し,該電極404aと隣り合うように,記憶領域並びに無線通信回路を設けたICチップ401を配設し,さらに電極404bとICチップ401とを電気的に接続405する。
【0052】
そして,アルミ,銅,銀などで構成されたアンテナ402をICチップ401と接続してRFIDからなるデータキャリア400を構成する。
【0053】
このように構成したデータキャリア400に外部から機械的な衝撃を印加すると,圧電体403において発生した電圧はICチップ401に供給され,該ICチップ401の記憶領域に記憶された所定の情報が無線通信回路によりアンテナ402を介して送信される。
尚,印加する衝撃は,圧電体が破壊しないよう適切に与える必要がある。
【実施例2】
【0054】
図5に本発明を用いた第二の実施例のRFIDからなるデータキャリア500を示した。
駆動電源となる圧電体503は第一の実施例と同様,高い機械電気結合定数を有する単結晶やセラミックスを用いることができる。
【0055】
この圧電体503の分極を生ずる方向において,片面とその対向する面にAg等の一対の電極504a,504bを作成する。該電極504a,504bと記憶領域並びに無線通信回路を設けたICチップ501を電気的に接続505し,アルミ,銅,銀などで構成されたアンテナ502をICチップ501と接続してRFIDからなるデータキャリア500を構成する。
【0056】
第二の実施例は,圧電体503とICチップ501との間に距離を設けるように構成してある。このように構成することで,衝撃を印加する部分と,ICチップ501及びアンテナ502とを分離することができ,衝撃が直接ICチップ501及びアンテナ502に加わらないようにできる。尚この場合においても,印加する衝撃は,圧電体が破壊しない程度に適切に与える必要がある。
【0057】
また,圧電体に印加する力は衝撃力を用いたが,圧電体の特性に基づき,電圧を発生させるような応力を圧電体に印加してデータキャリア,RFIDに駆動電圧を供給するように設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明におけるRFIDからなるデータキャリアは,電池が不要で,衝撃が印加された場合に駆動電力を能動的に発生させ,長寿命に使用できるため,産業上機械的な衝撃が加わる状況で用いることができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一の実施形態を示すブロック図。
【図2】第二の実施形態を示すブロック図。
【図3】第三の実施形態を示すブロック図。
【図4】本発明の実施例を示す説明図。
【図5】本発明の実施例を示す説明図。
【符号の説明】
【0060】
100 データキャリア
101 記憶手段
102 送信手段
103 駆動電源
200 データキャリア
201 記憶手段
202 送受信手段
203 駆動電源
300 データキャリア
301 ICチップ
3011 記憶領域
3012 無線通信回路
302 アンテナ
303 圧電体
303a 片面
303b 対向する面
400 データキャリア
401 ICチップ
402 アンテナ
403 圧電体
404a 電極
404b 電極
405 電気的接続
500 データキャリア
501 ICチップ
502 アンテナ
503 圧電体
504a 電極
504b 電極



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りが可能な情報媒体であるデータキャリアであって,少なくとも,
所定の情報を記憶する記憶手段と,
該情報を無線にて送信する送信手段と,
該記憶手段及び該送信手段に電力を供給する駆動電源とを備え,
前記駆動電源は機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成されていることを特徴とするデータキャリア。
【請求項2】
所定の情報を物・動物などに付加し,該所定の情報を非接触で読み取りもしくは書き込みが可能な情報媒体であるデータキャリアであって,少なくとも,
所定の情報を記憶する記憶手段と,
該情報を無線にて送受信する送受信手段と,
該記憶手段及び該送受信手段に電力を供給する駆動電源とを備え,
前記駆動電源は機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する圧電性を有する物質を含んで構成されていることを特徴とするデータキャリア。
【請求項3】
前記データキャリアは,電磁界あるいは電波を利用して質問器(リーダ/ライタ)との間で非接触で記憶手段に記憶された情報を送信または送受信するRFIDであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のデータキャリア。
【請求項4】
所定の情報を記憶する記憶領域と該所定の情報を無線にて外部に送信する無線通信回路とを設けたICチップと,
前記ICチップと接続され,該ICチップに駆動用の電力を供給するための,機械的な衝撃を与えることにより電力を発生する圧電体からなる駆動電源と,
前記ICチップに設けられた無線通信回路と接続され前記所定の情報を無線にて送信するためのアンテナと,
を備えたRFIDからなることを特徴とするデータキャリア。
【請求項5】
所定の情報を記憶する記憶領域と該所定の情報を無線にて外部に送信もしくは外部からの無線信号を受信する無線通信回路とを設けたICチップと,
前記ICチップと接続され,該ICチップに駆動用の電力を供給するための,機械的な衝撃を与えることにより電力を発生する圧電体からなる駆動電源と,
前記ICチップに設けられた無線通信回路と接続され前記所定の情報を無線にて送受信するためのアンテナと,
を備えたRFIDからなることを特徴とするデータキャリア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−24101(P2006−24101A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203275(P2004−203275)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000109598)テンパール工業株式会社 (217)
【Fターム(参考)】