説明

データセンタ

【課題】ラック内の電子機器で発生する熱を効率よく除去して、空調機での消費エネルギーの低減を図ることが可能なデータセンタを提供する。
【解決手段】ラック列15の背面R同士を間隔をおいて向かい合わせて床面14上に配置し、ラック列15の左右方向の端部側にパネルを設けると共に、両ラック列15の前縁上部にパーティション23を設けて、空調室13内にホットゾーン24を区画し、ホットゾーン24内の天井20に、ホットゾーン24内の空気を排気する排気口26を少なくとも1つ形成する。そして、空調機51のファン54には、各温度センサ69a、69bが計測する温度差に基づいて、空調室13とホットゾーン24間の温度差を目標とする値に一致させるように、ファン54の回転数を制御する回転数制御装置63cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック内に収容されたサーバなどの電子機器で発生する熱を効率よく除去するデータセンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーバなどの電子機器は、一般的に、ラック内に高密度に多段に収容されて空調室内に配置される。電子機器では電力消費に伴い熱が発生するので、この熱による悪影響を排除するために、空調機などの冷却システムによりラック内に収容された電子機器に空調空気(冷風)を供給し、電子機器で発生した熱を除去するのが一般的である。
【0003】
従来のデータセンタとして、図7に示すように、空調室内に、サーバなどの電子機器を収容したラック71を複数台左右方向に並べてラック列72を形成すると共に、このラック列72の背面同士を間隔をおいて向かい合わせて床面上に配置し、その向かい合わせたラック列72の左右方向、即ち、長手方向の端部側に、ラック列72の間を塞ぐように扉75及び屋根パネル74を設けることで、背面同士が向き合ったラック列72の背面側の間に空調室内と仕切ってホットゾーンを区画した、所謂、モジュラー型データセンタ70を空調室内に単数若しくは複数設置し、全体としてデータセンタを構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、この扉75は、ホットゾーンの中に入るためのものである。
【0004】
また、空調室内にモジュラー型データセンタ70を設置するタイプのデータセンタである特許文献1では、ラック71のうち1つが冷却機器(空調機)を内蔵しており、ホットゾーン内の空気を冷却してラック71の前面側に排気するようにしている。つまり、モジュラー型データセンタ70では、ラック71の前面から空調空気(冷風)を導入して、ラック71内の電子機器で発生した熱を除去すると共に、熱を吸収した空気をラック71の背面からホットゾーンに排気し、このホットゾーン内の空気を冷却機器で冷却してラック71の前面側に排気している。
【0005】
ラック71内に収容された冷却機器には、水やフロンガスなどの冷媒を供給するための冷媒供給・戻りパイプ76が接続される。ラック71内の各電子機器には、電力供給ライン77を介して電力が供給される。
【0006】
このように、特定の場所(ホットゾーン)に電子機器で発生した熱を集中させることにより、冷却機器を効率良く作動させることが可能となる。すなわち、冷却機器には一般的な空調設備同等に低温な冷媒を供給する必要がなくなるため、安価に、かつ、除湿をすることなく空調空気(冷風)を効率よく作り出すことが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特表2006−526205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のデータセンタでは、ラック71(ラック列72)の上面や屋根パネル74の上面から空調室内に電子機器で発生した熱が放出されてしまい、該熱と、冷却機器によって生成したラック71の前面側から送風する空調空気(冷風)とが混合することがあり、該混合の結果、ラック71の前面から導入する空調空気(冷風)の温度が十分に冷やせなくなる場合には、これをモジュラー型データセンタ70に組み込まれた冷却機器とは別の空調機(室内エアコン)で更に事前冷却する必要があった。これでは、空調機(室内エアコン)での消費エネルギーが無駄であり、省エネの観点から問題があった。
【0009】
なお、サーバには上方に排気を行うタイプのものもあるため、このようなサーバをラック71内に収容する場合には、ラック71上面から空調室内に放出される熱が多く前記の問題が顕著に現れる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ラック内の電子機器で発生する熱を効率よく除去して、空調機での消費エネルギーの低減を図ることが可能なデータセンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、少なくとも、空調室と、該空調室の床面上にサーバなどの電子機器を多段に収容するラックを複数台左右方向に並べ形成されたラック列と、前記ラック内に収容された電子機器で発生する熱を除去すべく前記空調室内を空調する空調機とを備えたデータセンタにおいて、前記ラック列の背面同士を間隔をおいて向かい合わせて前記空調室内の床面上に配置し、その向かい合わせたラック列の左右方向の端部側に、ラック列の下縁から前記空調室の天井に延びるパネルを設けると共に、両ラック列の前縁上部に天井に延びるパーティションを設けて、前記空調室内にホットゾーンを区画し、そのホットゾーン内の天井に、ホットゾーン内の空気を排気する排気口を少なくとも1つ形成すると共に、前記空調室内の空調空気を前記ラック列の前面から背面に通して前記ホットゾーンに導入するようにし、前記空調機と前記排気口とを接続する排気ダクトを設けると共に、前記空調機と前記ホットゾーン以外の前記空調室に設けられた吹出口とを接続する吹出ダクトを設け、これら前記排気ダクトと前記吹出ダクトにそれぞれ温度センサを設けて構成され、前記空調機のファンには、前記各温度センサが計測する温度差に基づいて、前記空調室と前記ホットゾーン間の温度差を目標とする値に一致させるように、前記ファンの回転数を制御する回転数制御装置が設けられることを特徴とするデータセンタである。
【0012】
前記吹出口は、前記ホットゾーン以外の前記空調室の天井に少なくとも1つ形成され、前記空調空気を鉛直下方に吹き出すようにされてもよい。
【0013】
前記排気口から排気された空気から熱を回収する熱回収コイルを備え、該熱回収コイルには、熱媒体の温度が最も高くなるように前記熱媒体の流量を制御する熱回収用制御装置が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラック内の電子機器で発生する熱を効率よく除去して、空調機での消費エネルギーの低減を図ることができる。
さらに、本発明によれば、電子機器を冷却しつつも、最も効率のよい温度で熱回収を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のデータセンタの概略断面図である。
【図2】本発明のデータセンタの平面図である。
【図3】本発明のデータセンタの側面図である。
【図4】本発明のデータセンタの正面図である。
【図5】本発明のデータセンタにおいて、空調機、熱回収手段を示す概略断面図である。
【図6】本発明のデータセンタの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】従来のデータセンタの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るデータセンタの概略断面図であり、図2はその平面図、図3はその側面図、図4はその正面図である。
【0018】
図1〜4に示すように、データセンタ10は、少なくとも、天井、床面、及び4つの側壁で形成された箱状の空調室13と、サーバなどの電子機器11を多段に収容する複数台のラック12を左右方向に並べ形成されたラック列15と、ラック12内に収容された電子機器11で発生する熱を除去すべく空調室13内を空調する空調機(図示せず)とを備える。
【0019】
ラック12内には、サーバや、CPU、ネットワーク機器、ストレージデバイスのような情報通信技術の設備機器である電子機器11が多段に収容される。
【0020】
データセンタ10では、空調室13の床面14上にラック12を複数台(本実施形態では12台)左右方向に並べてラック列15を形成すると共に、そのラック列15の背面R同士を間隔をおいて向かい合わせて配置している。ラック列15を間隔をおいて配置することで、ラック列15間には作業通路16が形成される。
【0021】
これらラック列15は、床面14上に免震装置17を介して配置される。本実施形態では、免震装置17として、架台18上にベアリングを介して免震台19を設けたものを用いたが、これに限定されるものではない。
【0022】
ラック列15の左右には、ラック列15の下縁から天井20に延びるパネル21が設けられる。このパネル21には、作業通路16に出入するための扉22が設けられる。パネル21は、免震装置17上に設けられる。
【0023】
各ラック列15の前縁上部には、天井20に延びるパーティション23が設けられる。パーティション23およびパネル21の上端は、天井20に対して移動可能に設けられる。
【0024】
パネル21とパーティション23の上端には、ホットゾーン24と空調室13とをシールするための天井シール部材25が設けられる。本実施形態では、天井シール部材25としてゴムシートを用い、そのゴムシートをパーティション23のホットゾーン24側の上端に、その上端部がホットゾーン24側に湾曲するようにボルトなどで固定した。
【0025】
これにより、両ラック列15、パーティション23、およびパネル21で空調室13と仕切られたホットゾーン24が区画形成される。
【0026】
ホットゾーン24内の天井20には、ホットゾーン24内の熱を排気する排気口26が少なくとも1つ(図2では3つ)形成される。この排気口26は排気ダクト53(図2参照)を介して空調機の吸込口に接続される。排気ダクト53には、ホットゾーン24から吸引する空気の温度を測定するための排気側温度センサ69b(図5参照)が設けられる。
【0027】
ホットゾーン24以外の空調室13の天井20(図1ではラック列15の前方の天井20)には、空調機からの空調空気(冷風)を鉛直下方に吹き出す吹出口27が少なくとも1つ(図2では3つ)形成される。この吹出口27は、吹出ダクト52(図2参照)を介して空調機の吹出口と接続される。吹出ダクト52には、吹出口27から吹き出す空調空気の温度を測定するための吹出側温度センサ69a(図5参照)が設けられる。
【0028】
図5に示すように、空調機51は、ホットゾーン24内の空気を吸引するファン54と、ファン54の下流側に設けられ、ファン54からの空気を冷却して空調空気を吹き出す冷却コイル(DC;DryCoil)55とを備える。
【0029】
また、本実施形態に係るデータセンタ10は、排気口26から排気された空気の熱を空調機51の冷却コイル55で冷却する前に回収する熱回収手段56を備える。
【0030】
熱回収手段56は、排気口26から排気された空気から熱を回収する熱回収コイル(HC;Heat Capture Coil)57と、熱回収コイル57に熱媒体を供給する熱媒体供給管58と、熱回収コイル57で熱回収した熱媒体をボイラなど他の設備に排出する熱媒体排出管59と、熱媒体供給管58に設けられた熱媒体用ポンプ60と、熱媒体用ポンプ60の下流側の熱媒体供給管58に設けられたレギュレータ61と、熱媒体排出管59中の熱媒体の温度を測定する熱媒体用温度センサ62と、熱媒体用温度センサ62の測定温度(熱媒体の温度)が最も高くなるように、レギュレータ61の開度を調整して熱媒体の流量を制御する熱回収用制御装置63aとを備える。熱回収用制御装置63aはPLC(Programmable Logic Controller)からなる。
【0031】
本実施形態では、熱媒体として水を用いた。熱回収コイル57に供給する水の温度は、例えば、20℃程度であり、熱回収コイル57通過後の温水の温度は、例えば、35〜40℃程度である。
【0032】
熱回収コイル57は、空調機51と一体に設けられ、ファン54の下流側かつ冷却コイル55の上流側に設けられる。これにより、排気口26から排気された空気の熱のみならず、ファン54で発生した熱も熱回収コイル57で回収することが可能となる。熱回収コイル57で熱回収された空気は、冷却コイル55で冷却されて所定温度(例えば、23℃程度)の空調空気となる。
【0033】
冷却コイル55には、冷媒を供給するための冷媒供給管64、および冷媒を戻すための冷媒戻り管65が接続される。冷媒供給管64には冷媒用ポンプ66が設けられる。冷媒は、例えば水である。
【0034】
冷媒供給管64および冷媒戻り管65には、冷媒を冷却コイル55に通さずにバイパスするためのバイパス管67が接続され、バイパス管67と冷媒戻り管65の接続箇所には、冷媒のバイパス/非バイパスの混合比率を調節できる三方弁68が設けられる。この三方弁68は(一般にモーター付きの)電磁弁であり、冷却コイル55を通過した後の空調空気の温度が所定温度(設定温度)となるように、冷却コイル55を通過する冷媒流量の制御がなされる。
【0035】
冷却用制御装置63bは、吹出ダクト52に設けられた吹出側温度センサ69aで測定した空調空気の温度が所定温度よりも高い場合には、三方弁68で冷媒を冷却コイル55により多く流すようにし、吹出側温度センサ69aで測定した空調空気の温度が所定温度よりも低い場合には、三方弁68で冷媒をバイパス側により多く流し冷却コイル55を通過させないようにする。
【0036】
あるいは、このバイパス管67がない場合、すなわち二方弁によって冷媒の流量の制御を行うことも可能であり、その方式でも吹出側温度センサ69aで測定した空調空気の温度を所定温度に合わせるように冷却コイル55への冷媒の通過流量を決めるべく、バルブの開度が自動で制御される。
【0037】
このように、冷却用制御装置63bで冷却コイル55に流れる冷媒の流量を制御することにより、所望の温度の空調空気が得られる。冷却用制御装置63bはPLCからなる。
【0038】
ファン54には、出力周波数可変の動力INV(inverter)盤63dが接続される。ファン54は、動力INV盤63dの出力周波数に応じた回転数で回転する。この動力INV盤63dには、排気口26から排気された空気の温度を所定温度範囲、または所定温度(例えば、40〜42℃)に保つように、動力INV盤63dに出力周波数を出力してファン54の回転数を制御する回転数制御装置63cが接続される。
【0039】
回転数制御装置63cは、予め設定された最高閾値とする温度Thigh(例えば、42℃)と最低閾値とする温度Tlow(例えば、40℃)に基づき、排気ダクト53に設けられた排気側温度センサ69bで測定した温度(排気口26から排気された空気の温度)tが最高閾値とする温度Thighよりも高い場合には、ファン54の回転数を一定値ずつ上げる(例えば、動力INV盤63dの出力周波数を1分間に2Hzずつ上げる。また、その上げる動作は、時間間隔をとりつつ行う場合もある)。また、排気側温度センサ69bで測定した温度tが最低閾値とする温度Tlowよりも低い場合には、ファン54の回転数を一定値ずつ下げる(例えば、動力INV盤63dの出力周波数を1分間に1Hzずつ下げる。また、その下げる動作は、時間間隔をとりつつ行う場合もある)。あるいはこの周波数を変更する動作は、通常のPID制御によって行う場合、またはその組み合わせで行う場合も考えられ、この制御方法を限定するものではない。
【0040】
このように、回転数制御装置63cでファン54の回転数を制御することにより、排気口26から排出される空気の温度t、すなわち、ホットゾーン24内の空気の温度tを所望の温度範囲(Thigh〜Tlowの温度範囲)とすることができる。Thigh=Tlowとすれば、排気口26から排出される空気の温度(ホットゾーン24内の空気の温度)tを所望の温度Thigh(=Tlow)とすることができる。回転数制御装置63cは、PLCからなる。
【0041】
空調機51は、ラック12が配置される空調室13とは別空間、例えば、データセンタ10が設けられる建物の別の部屋、あるいは屋外などに設けられる。これにより、特許文献1のように、ラック12(ラック列15)に冷媒などの配管が接続されることがなくなり、空調機51とラック12(ラック列15)とが完全に切り離される。図5では、空調機51が、あたかも天井の上に設置されているように描かれているが、これは便宜上である。
【0042】
また、例えば、空調機51が空調室13に隣接した別空間に設置された場合において、該別空間の床面は、空調室13の床面より低いレベルであることが望ましく、本方式によっては容易にその形態をとることができる。これは、例えば、空調機51に係る冷媒供給管64、冷媒戻り管65、熱媒体供給管58、あるいは熱媒体排出管59が損傷し、冷媒や熱媒体が流れ出しても、該冷媒や熱媒体が空調室13内に侵入し難くなる工夫である。
【0043】
本実施形態の作用を説明する。
【0044】
図6に示すように、まず、空調機51の空調空気吹出口から吹き出された空調空気(冷風)を、吹出ダクト52を介して吹出口27から吹き降ろし、空調室13内に導入する(ステップS1)。このとき、回転数制御装置63cは、ファン54が適正と予想される初期の風速が得られる回転数となるように、動力INV盤63dの出力周波数を制御する。吹き出される空調空気の温度は、例えば、23℃程度である。
【0045】
空調室13内に吹き出された空調空気は、サーバなどの電子機器11のファンによりラック列15の前面Fからラック12内に導入され、ラック12内の電子機器11で発生した熱を回収する(ステップS2)。
【0046】
電子機器11で発生した熱を回収した空気は、ラック列15の背面Rからホットゾーン24内に導入される(ステップS3)。ラック12(ラック列15)の上面から放出される熱も、ホットゾーン24内に放出されるため、電子機器11で発生する熱は全てホットゾーン24内に集められる。
【0047】
ホットゾーン24内の空気は、ホットゾーン24内の天井20に設けられた排気口26から排気され(ステップS4)、排気ダクト53に設けられた排気側温度センサ69bでその温度が常時連続して測定される(ステップS5)。排気側温度センサ69bを通過した空気は、排気ダクト53を介して空調機51の吸込口に導入される。
【0048】
回転数制御装置63cは、予め設定された最高閾値とする温度Thighと排気側温度センサ69bで測定した温度tとを比較し(ステップS6)、t>Thighである場合は、ファン54の回転数を上げるべく、動力INV盤63dの出力周波数を一定値ずつ(例えば、1分間に2Hzずつ)上げる制御を行う(ステップS7)。これにより、空調機51からの空調空気の吹出量が徐々に増加し、ラック12(ラック列15)に導入される空調空気の量が多くなるため、ホットゾーン24内の空気の温度を下げることができる。
【0049】
また、回転数制御装置63cは、予め設定された最低閾値とする温度Tlowと排気側温度センサ69bで測定した温度tとを比較し(ステップS8)、t<Tlowである場合は、ファン54の回転数を下げるべく、動力INV盤63dの出力周波数を一定値ずつ(例えば、1分間に1Hzずつ)下げる制御を行う(ステップS9)。これにより、空調機51からの空調空気の吹出量が徐々に減少し、ラック12(ラック列15)に導入される空調空気の量が少なくなるため、ホットゾーン24内の空気の温度を上げることができる。
【0050】
空調機51の吸込口に導入された空気は、ファン54を通過して、ファン54で発生する熱を回収した後、熱回収コイル57に導入される。熱回収コイル57は、ファン54より導入された空気の熱を回収し、この空気の温度に最も近い高温度の熱媒体(温水)を回収する(ステップS10)。熱回収コイル57を通過した高温度の熱媒体は、ボイラなど他の設備に排出される。
【0051】
熱回収コイル57を通過した空気は、冷却コイル55に導入され、冷却コイル55で所定温度(例えば、23℃)に冷却され、空調空気(冷風)として空調機51の空調空気吹出口から吹き出される(ステップS11)。
【0052】
以上のステップS1〜S11を繰り返すことにより、排気口26より排気される空気の温度t、すなわちホットゾーン24内の空気の温度tを、Thigh〜Tlowの温度範囲(例えば、40〜42℃の温度範囲)とすることができ、熱回収コイル57で効率よく熱回収を行うことが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係るデータセンタ10では、ラック列15の背面R同士を向かい合わせて配置し、各ラック列15の前縁上部にパーティション23を設けているため、ラック12の上面から放出される熱もホットゾーン24内に導入される。よって、ラック12の上面から放出される熱が空調室13内に放出されず、電子機器11で発生する熱を全てホットゾーン24に集中させることができる。
【0054】
また、パーティション23と天井シール部材25により、吹出口27から出る冷気とホットゾーン24内の熱の混合がなくなる。この為、空調空気の温度も従来型空調機同等の低温度(例えば、11〜15℃程度)にする必要がなくなる。
【0055】
この効果として、空調機51に従来標準とされている低温の冷媒(例えば、6℃から13℃)を供給する必要がなくなり、冷媒の供給温度を高く(例えば、16℃から20℃)しても電子機器11の冷却が可能となる。その結果、冷却コイル55では不必要な除湿がなくなり、除湿の結果必要とされていた加湿をする必要がなくなるため、効率よく安価に、空調空気(冷風)を作り出すことが可能となる。
【0056】
また、冷媒を冷やす元となる冷熱源(例えば冷凍機、冷却塔など)の選択において、冷凍機を使わなくても寒冷な外気の冷熱などで冷却できるといった方法の選択幅やその有効期間も広がり、更に省エネ性を高めることができる。
【0057】
この方式では、空気が熱せられて比重が小さくなり上昇しやすい性質、および冷却後に比重が大きくなる性質を利用するため、空調空気の流動性(対流)を高めることができ、空調機51で送風動力として消費するエネルギーを低減することが可能となる。
【0058】
さらにまた、ホットゾーン24内の温度を意図的に高い温度に保つことで、前記の効果を高めて、空調機51をより効率良く作動させることが可能となる。
【0059】
よって、全体として空調機51で大量のエネルギーを消費することがなくなり、熱源側とその消費側である空調機本体で大きな省エネを実現できる。
【0060】
さらに、本実施形態では、排気口26から排気された空気の熱を冷却コイル55で冷却する前に熱回収手段56で回収しており、ホットゾーン24に集められた熱を拡散させず有効利用することができる。
【0061】
本実施形態では、熱回収コイル57を空調機51と一体に設けているため、全体としてコンパクト化することができる。さらに、熱回収コイル57をファン54の下流側かつ冷却コイル55の上流側に設けているため、ファン54で発生する熱も熱回収コイル57で回収することが可能となり、より効果的な熱回収を実現することができる。また、熱回収コイル57で熱回収した後に冷却コイル55で冷却することになるので、冷却コイル55での冷却エネルギー費を削減することが可能となる。
【0062】
本実施形態では、ホットゾーン24以外の空調室13の天井に少なくとも1つの吹出口27を形成し、吹出口27から空調空気を「鉛直下方」に吹き出すようにしたことが特徴となっている。これにより、空調空気を供給する際に遅い風速(例えば、微風:1m/s以下)で吹き出しても、周囲との比重の差による落下が空気循環エネルギーとなって、ラック12内に高所から低所まで分散して配置された電子機器11(通常、本体前面に冷却空気吸い込みファンを個別に有する)の前面に均等に空調空気を供給することができるようになる。その結果、ファン54の回転数(空調室13内の循環風量)が小さくても電子機器11を十分に冷却することが可能となるため、ホットゾーン24内の空気の温度tを所定温度範囲、または所定温度とすることを優先してファン54の回転数を決めることが可能となる。ファン54の回転数を小さくすることが可能となるため、結果的に、ファン54で消費するエネルギー(循環送風に要する動力)を低減することができる。
【0063】
本実施形態では、ラック列15を免震装置17上に設け、かつ、ラック列15と空調機51とを完全に切り離している(配管などで接続していない)ため、地震が発生しても、冷媒などの配管が破損して電子機器11に損害を与えるおそれがなくなる。さらに、パネル21およびパーティション23を天井20に対して移動可能とすることにより、地震発生時にラック12(ラック列15)と建物との間に変位差が生じても、ラック12が転倒するおそれがなくなる。
【0064】
上記実施形態では、ホットゾーン24内の空気の温度tを所定温度範囲、あるいは所定温度になるようにファン54の回転数を制御する場合を説明したが、排気側温度センサ69bおよび吹出側温度センサ69aが計測する温度差に基づいて、ホットゾーン24内の空気と空調室13(空調空気)の温度差を目標とする値に一致させるように、ファン54の回転数を制御するようにしてもよい。これにより、電子機器11を冷却しつつも、最も効率のよい温度で熱回収を行うことが可能となる。
【0065】
上記実施形態では、ラック列15を2列に配置した場合を説明したが、これに限定されず、他の幾何学的な配列としてもよい。また、パネル21の代わりに複数のラック12を配置し、その前縁上部にパーティション23を設けるようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態では、ラック列15の左右方向の両端部側に、ラック列15の間を塞ぐように、ラック列15の下縁から空調室13の天井20に延びるパネル21をそれぞれ設けたが、これを一端部側は、上記実施形態と同様のパネル21、他端部側は、空調室13の側壁をパネル21の変わりに代用しても良く、この場合、空調室13の側壁をパネル21とみなす。
【0067】
本発明は、上記実施形態には限定されず、当業者にとって想到し得る本明細書に説明された基本的教示の範囲に含まれる全ての変更、および代替的構成を具体化するものとして解釈されるべきである。
【0068】
本発明において、「パネル」と「パーティション」と使い分けているが、例えば、材質が違うという具合に、構成材料が相違するといった意味で使い分けているのではなく、ラック上であって空調室を仕切る仕切り部材を「パーティション」、ラック列の左右方向の端部側であってラック列(パーティションの部分も含む)の間を閉塞するように連結する連結部材を「パネル」としている。なお、この「パネル」と「パーティション」だが、一枚構成でも、分割構成でも、どちらでも良い。
【0069】
最後に、特許文献1に示すデータセンタは、空調室内にモジュラー型データセンタ70を設置するタイプ、つまり、完全なモジュラー化タイプであったが、一方、本発明では、該完全なモジュラー化タイプとは一線を画しており、上述したように、地震に強く、そして、省エネである空調室と一部融合している一部モジュラー化タイプである。
【符号の説明】
【0070】
10 データセンタ
11 電子機器
12 ラック
13 空調室
14 床面
15 ラック列
20 天井
21 パネル
23 パーティション
24 ホットゾーン
26 排気口
27 吹出口
51 空調機
54 ファン
55 冷却コイル
56 熱回収手段
57 熱回収コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、空調室と、該空調室の床面上にサーバなどの電子機器を多段に収容するラックを複数台左右方向に並べ形成されたラック列と、前記ラック内に収容された電子機器で発生する熱を除去すべく前記空調室内を空調する空調機とを備えたデータセンタにおいて、
前記ラック列の背面同士を間隔をおいて向かい合わせて前記空調室内の床面上に配置し、その向かい合わせたラック列の左右方向の端部側に、ラック列の下縁から前記空調室の天井に延びるパネルを設けると共に、両ラック列の前縁上部に天井に延びるパーティションを設けて、前記空調室内にホットゾーンを区画し、そのホットゾーン内の天井に、ホットゾーン内の空気を排気する排気口を少なくとも1つ形成すると共に、前記空調室内の空調空気を前記ラック列の前面から背面に通して前記ホットゾーンに導入するようにし、
前記空調機と前記排気口とを接続する排気ダクトを設けると共に、前記空調機と前記ホットゾーン以外の前記空調室に設けられた吹出口とを接続する吹出ダクトを設け、これら前記排気ダクトと前記吹出ダクトにそれぞれ温度センサを設けて構成され、前記空調機のファンには、前記各温度センサが計測する温度差に基づいて、前記空調室と前記ホットゾーン間の温度差を目標とする値に一致させるように、前記ファンの回転数を制御する回転数制御装置が設けられる
ことを特徴とするデータセンタ。
【請求項2】
前記吹出口は、前記ホットゾーン以外の前記空調室の天井に少なくとも1つ形成され、前記空調空気を鉛直下方に吹き出すようにされる請求項1記載のデータセンタ。
【請求項3】
前記排気口から排気された空気から熱を回収する熱回収コイルを備え、
該熱回収コイルには、熱媒体の温度が最も高くなるように前記熱媒体の流量を制御する熱回収用制御装置が設けられる請求項1または2記載のデータセンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−129149(P2011−129149A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26634(P2011−26634)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2008−236437(P2008−236437)の分割
【原出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】