説明

データベースネットワークシステム

【課題】 都市ライフライン(水道,電気,ガス供給)の被災状況等を、都市全般にわたって短時間(数分以内)で把握できるデータベースネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 本発明よるデータベースネットワークシステムは、センタ局1、中継データベース局(RDS)31 〜3p1、端末局511〜5p1p2を備えている。端末局グループは、変化する情報を取得してデータとして蓄積し、要求に応じて送信する複数の端末局を含んでいる。複数の中継データベース局(RDS)は、端末局グループ対応に設けられ、各端末から順次受信した情報を特定データとその他のデータとして蓄積し、要求に応じて送信する。センタ局1は、任意の前記中継データベース局(RDS)の特定データとその他のデータの一部を各中継データベース局から順次受信し、複数回の受信で全データと前記特定情報データの複数回受信を行い、必要に応じて蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広域にわたるガス,水道,電気などのライフラインサービスに関する情報を収集し、特に緊急事態発生に関するデータ(特定データ)を迅速に収集できる都市ライフライン情報の収集装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般家庭のライフライン情報、ガス,水道,電気などの使用状況または好ましくない状態の発生状況を収集する場合、電話回線を用いた収集システムが実用されている。しかし、電話回線による情報収集システムは、災害時の通信が輻輳する状況のもとでは有効ではない。また端末数が20万以上の規模で、ガス,水道,電気を含めた端末当たり100Bの情報を収集する場合、電話回線を用いると、30秒×20万端末=1667時間かかる計算になる。したがって、電話回線を用いて常時監視システムを実現することは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は次のとおりである。
1.大規模地震による災害時に、都市ライフライン(水道,電気,ガス供給)の被災状況を、都市全般にわたって短時間(数分以内)で把握する情報収集・監視システムは、わが国でも外国でも開発されていない。このようなシステムの開発0005災害対策の上から、解決が急がれる問題と考えられる。
2.本発明は、各家庭に設置されている水道メータ,電気メータ,ガスメータなどの情報を、都市ライフライン情報として捉え、それらを都市全般にわたってほぼ実時間で収集・監視するシステムを開発し、上の問題を解決しようとするものである。
5.緊急時における情報収集システムであるので、通信の輻輳による情報収集の遅れ・中断は許されない。既存の通信システムを利用したシステムでは解決できない輻輳問題を、専用情報収集システムを開発することによって解決しようとしている。
6.専用システムなので、要求される機能,性能が規定できる。目的に適合したシステムを開発することが技術的課題となる。
7.都市全体のライフラインを常時監視し、緊急情報を短時間で収集する機能と詳細なライフライン情報も収集する機能を併せもつ情報収集システムを開発することが具体的な技術課題である。
8.多層無線ポーリングシステム内に分散配置した高速データベースを組み合わせた新しいネットワーク構成技術、すなわち、データベースネットワークでこの技術的課題を解決している。災害発生時に、その状況を把握するためには、数分以内に全家庭のライフラインの状態を把握することが要求される。また、災害時、同時に発生する事象により、通信が輻輳をきたす。したがって、このような状況下であっても、通信が確保されることが要求される。
9.災害発生時に、その状況を把握するためには、災害発生時点までのシステムの状態、正常に動作していること、が把握されていなければならない。
【0004】本発明の主目的は、既存の通信方式によらない新規なデータベースネットワークシステムを提供することにある。本発明のさらに詳細な目的は、大規模地震による災害時に、都市ライフライン(水道,電気,ガス供給)の被災状況を、都市全般にわたって短時間(数分以内)で把握する情報収集・監視システムを前記データベースネットワークシステムD用いて構成することである。本発明のさらに詳細な目的は、前記大規模地震による災害発生時の直前の状態を把握しておくことができるデータベースネットワークシステムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明によるデータベースネットワークシステムは、変化する情報を取得してデータとして蓄積し、要求に応じて送信する複数の端末局からなる端末局グループと、端末局グループ対応に設けられ、各端末から順次受信した情報を特定データとその他のデータとして蓄積し、要求に応じて送信する複数の中継データベース局と、任意の前記中継データベース局の特定データとその他のデータの一部を各中継データベース局から順次受信し、複数回の受信で全データと前記特定情報データの複数回受信を行い、必要に応じて蓄積するセンタ局と、から構成されている。
【0006】前記複数の中継データベース局は、少なくとも一つの上層中継データベース局群と前記上層中継データベース局の一つ当てに設けられている複数の下層中継データベース局群とを含み、前記下層中継データベース局群の局が前記複数の端末局からなる端末局グループから情報を収集し、前記センタ局が前記上層中継データベース局から情報を収集するものとすることができる。前記変化する情報は、ガス,電気,水道等の都市ライフライン情報であり、前記端末局は家庭等の生活単位端末とすることができる。変化する家庭端末情報から、緊急度に応じて特定情報を抽出し、元の家庭端末情報を含めてm種類(m≧2)の情報を生成した上で、それらm種類の情報を緊急度に応じた短さの収集時間でセンタ局に収集するように構成することができる。前記データベースネットワークシステムは、連続して動作させられ、常時、前記センタ局の主データベースは前記特定情報データ、または前記特定情報データとその他のデータを一定期間蓄積することにより動作の履歴を保持するように構成することができる。前記変化する情報の組合せは、各メータのライフラインデータに含まれているメータ値の読み取り、各種の保守業務に係わる情報収集・監視のためのデータ、、セキュリティ、老人介護、消火栓水圧、空調機監視等に係わる情報データのいずれかを組み合わせとすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下図面等を参照して本発明による装置の実施の形態を説明する。図1は本発明による。ータベースネットワークシステムの第1の実施形態である非同期2層ポーリングシステムと高速データベースを組合せて構成したライフライン情報収集・監視システム概念図である。
【0008】センタ局1は収拾したデータを整理して必要期間蓄積する主データベース1Aを備えている。センタ局1は中継データベース局群3の中継データベース局31 ・・3p1 を順次ポーリングしてデータを集める。各中継データベース局31 ・・3p1 はそれぞれの端末局群に関連しており、端末局群に属する端末局、例えば生活単位である1世帯に対応する局、を順次ポーリングしてデータを集める。各中継データベース局31 ・・3p1 はそれぞれ、前記主データベース1Aと同様な役割を果たす中継データベース局31 ・・3p1を備えているが煩瑣となるから図示を省略してある。
【0009】端末局群51 ・・5p1は、31 ・・3p1中継データベース局に関連する端末局群である。中継データベース局31 に関連する端末局群51 はP1個の端末局511・・51p2 を含んでいる。中継データベース局31 は端末局511・・151p2 を順次ポーリングしてデータを集める。中継データベース局32 は端末局521・・52p2 を順次ポーリングしてデータを集める。中継データベース局3p1は端末局5p11 ・・5p1p2を順次ポーリングしてデータを集める。各中継データベース局の順次ポーリングは並列または並列的に行われる。点線6の示す上層通信、センタ局1と中継データベース局31 等の通信の実効データ伝送速度をr1 とし、点線8の示す下層通信、中継データベース局31 等と端末局等の通信の実効データ伝送速度をr2 とする。通信媒体とし、特に下層通信では優先通信を含めて各種の媒体が予想されるが、この実施例は無線通信媒体を使用している。
【0010】前記データベースネットワークシステムの第1の実施形態である大規模地震による災害発生時に、都市ライフライン(水道,電気,ガス供給システム)の被災状況を、10分以内に把握するシステムを説明する。
【0011】各家庭に設置されたメータを介して、水道,ガス,電気供給状況を示す信号(ライフライン情報)をセンタ局に収集、常時監視する。ライフライン情報の収集,分析,蓄積・保持は、無線通信装置とコンピュータを組合せて構築した専用ネットワークを用いて行う。各家庭はこの場合、端末局にあたり、前記ライフライン情報は、いわゆる電子メータ(またはマイコンメータ)が用いられる。前記電子メータはライフラインの情報データ(使用量等)の収集, 保持, 発信, 更新等の機能を持っている。
【0012】データベースネットワークシステムシステムの要求条件は次のとおりである。
1.家庭端末数:約26万2.ライフライン情報(1家庭端末当たり)
水道 : 20B (B:byte)
ガス : 20B電気 : 20Bその他: 40B合計 :100B緊急度が高く、常時監視する必要がある情報は、10B/家庭端末3.緊急度が高く、常時監視する必要がある情報(10B/家庭端末)は、数分毎に26万家庭端末から周期的に収集し、更新する。収集・更新時間は10分以内とする。さらに、直近24時間の時間記録を常時保持する。
4.収集した全てのライフライン情報を、必要に応じて(或いは、定期的に)更新し、その最新内容をシステム内のデータベースに保持する。
【0013】上記要求を満たすシステムを実現するシステムは、以下に記す技術(の組合せ)を使い、上記要求を満たすシステムを実現する。
1.無線多層ポーリングシステムを使う。
2.2層ポーリングシステムと高速データベースを組合わせて構成した、ライフライン情報収集システムの構成概念図を図1に示す。
3.ポーリング方式によって収集される家庭端末ライフライン情報は、(1)付与されたアドレスを持ち、(2)指定された項目に分類されている。したがって家庭端末から収集されたライフライン情報は、データベース構造を持つので、これを取得,処理するコンピュータ(PC)をデータベースとみなし、データベースとしての機能と特徴を活用する。
4.センタ局1に主データベース装置1Aを配置することに加えて、中継局3iにもデータベースを分散配置する。
5.主データベース装置1Aおよび中継局データベース装置には、多量のデータを高速度で更新できる能力を有するものを使う。
6.高速データ更新能力をもつデータベースが配置された中継局を、中継・データベース局(Relay-Database Station: 以下RDSと呼ぶ。)
【0014】7.図1において、RDSは主として4つの役割を果たす。
(1)下ポーリング層の通信制御。
(2)家庭端末からのライフライン情報(100B/端末)の取得。
(3)緊急度の高いデータまたは特定データを抽出し、(10B/端末)×p2データセット(事象変化情報または特定データ情報と呼ぶ)を生成。
(4)ライフライン情報(100B/端末)の分割(分割数n)とその一定時間保持。
8.センタ局1はRDS×p1 を順次ポーリングし、情報を収集する。1ポーリングサイクル間に、各RDSから、〔(10+100/n)×p2 〕Bが収集される。
9.上記7の結果、1ポーリングサイクル毎に、センタ局には(10B/端末)×p2 ×p1 の事象変化情報が収集される。ここで、p2 ×p1 は家庭端末の総数である。
10.上記7の結果、nポーリングサイクル毎に、センタ局には(100B/端末)×p2 ×p1 のライフライン情報が収集される。すなわち、nサイクル毎に全家庭端末からのライフライン情報が収集される。
【0015】11.上記9と10をまとめて、次のことがいえる:全家庭端末からセンタ局1へ、(1)短時間で緊急度の高い事象変化情報を送ること、(2)全ライフライン情報を送ることの2つの目的を、1つの情報伝送路を使って達成できる。
12.上層ポーリング周期T1 は次の式で与えられる。
1 =〔8×(10+100/n)p2 ×p1 〕/r1ここで、r1 は上ポーリング層の実効データ伝送速度である。全家庭端末数p2×p1 が与えられた場合、ポーリング周期T1 は主にr1 によって決まる。
13.ネットワークの使用目的からT1 の上限が与えられた場合には、上式にしたがい、r1 の下限がほぼ決まる。
14.下ポーリング層のポーリング周期T2 はT2 =8×100×p2 /r2で与えられる。ここで、r2 は下ポーリング層の実効データ伝送束度である。
15.上ポーリング層の実効データ伝送速度r1 は1/r1 =1/rd1+1/ru1で与えられる。ここでrd1はRDSとセンタ局1を結ぶ通信線路のデータ伝送速度(bps)、ru1はセンタ局内データベースのデータ更新速度である。
16.下ポーリング層の実効データ伝送速度r2 は1/r2 =1/rd2+1/ru2で与えられる。rd2は家庭端末局とRDSを結ぶ通信線路のデータ伝送速度、ru2はRDS内データベースのデータ更新速度である
【0016】17.上ポーリング層と下ポーリング層は非同期で動作する。センタ局に収集されたデータが、RDSに収集された最新データであることを保証するには、T1 ≧T2 でなければならない。
18.
1 =T2のとき、下ポーリング層で収集された全てのデータが、上ポーリング層に送り込まれるので、データ転送効率は100%となる。
19.このとき、下ポーリング層の実効データ伝送速度r2 と上ポーリング層の実効データ伝送速度r1 の間には、r2 =r1 ×(1/p1 )×〔100/(10+100/n)〕
の関係が成り立つ。(1/p1 )は下層ポーリングセルp1 個の並列動作による要求速度低減効果、〔100/(10+100/n)〕は伝送情報量の比による調整効果である。
20.実際には、これよりわずかに高い値にr2 を設定する:r2 =r1 ×(1/p1 )×〔100/(10+100/n)〕×(1+δ)
δ≪121.RDS内データベースに要求されるメモリ容量:(1)100×p2 B:100Bデータをp2 家庭端末から収集・記憶。
(2)10×p2 B:100Bから10Bを抽出、10B×p2 を記憶。
22.センタ局内データベースに要求されるメモリ容量:(1)100×p2 ×p1 :全家庭端末から収集したライフライン情報の記憶・保持。
(2)10×p2 ×p1 ×(24×60×/T1 )B:全家庭端末から収集した事象変化情報の直近24時間分を記憶・保持。
【0017】23.システム各階層のデータ量
【表1】


【0018】24.このシステムは、基本的には、家庭端末で発生したライフライン情報100×p2 ×p1 Bの情報を取込み、中継・データベース局(RDS)層とセンタ局に蓄積するシステムである。システム内におけるデータ処理によって生成されたデータは、生成した層およびその上の層に蓄積される。
25.システムが具備すべきメモリ容量は、基本的には2倍(2=層の数)となる。それに、システム内で生成されたデータ量の2倍(RDSおよびセンタ局)が加わる。
26.メモリ量の倍増という代価を払って、緊急度の高い情報を短時間で収集する機能を手に入れたことになる。
27.高速データベース装置を分散配置することにより限られたデータ伝送速度の通信路を使い、目的に適合したネットワークを実現することが可能となった。
28.高速データベース装置を分散配置し、限られたデータ伝送速度の通信路を有効利用し、目的に適合したネットワークを実現することを可能とするネットワークを、データベースネットワークと呼ぶこととする。
29.データベースネットワーク技術は、高速データベース技術の進歩,大規模メモリの価格低廉化によって、現実的に有為な技術となった。
30.高速データベースの大略の定義:上ポーリング層の実効データ伝送速度r1 は1/r1 =1/rd1+1/ru1で与えられる。ここでrd1はRDSとセンタ局を結ぶ通信線路のデータ伝送速度(bps)、ru1 はセンタ局内データベースのデータ更新速度である。また、下ポーリング層の実効データ伝送速度r2 は1/r2 =1/rd2+1/ru2で与えられる。rd2は家庭端末局とRDSを結ぶ通信線路のデータ伝送速度、ru2はRDS内データベースのデータ更新速度である。rd1<<ru1,rd2<<ru2を満たすデータベースを高速データベースと定義する。
【0019】31.中継・データベース局(RDS)の数p1 の決定法データベースネットワークに対して、次式により、ペナルティ関数を定義する。
f=a11 +a22ここで、a1 ,a2 は、それぞれ上ポーリング層および下ポーリング層における1回線接続当たりの通信エラー発生率である。また、p2 ×p1 は家庭端末の数Cなので、p2 ×p1 =C上の2式を組み合わせて、f=a11 +a2 (C/p1
ペナルティ関数fはδf/δp1 =0のとき極値をとる:δf/δp1 =a1 −a2 (C/p12)=0したがって、p1 =(a2 /a1(1/2) ×(C)(1/2)2 =(a1 /a2(1/2) ×(C)(1/2)を得る。上式にしたがって、p1 およびp2 を選択した場合、ネットワーク全体の通信エラー率の予測値は最小となる。
【0020】
【実施例】データベースネットワークの具体例の1つである2層ポーリング情報収集・監視システム(実施例1)の設計について説明する。
(要求)
全家庭端末数=p2 ×p1 =218=262144ポーリングサイクル時間T1 に対する要求:T1 ≦5分(設計)
100Bデータの分割数n=10必要な上ポーリング層データ伝送速度:r1 ≧139.81kbpsRDSの数:p1 =1024(設計者による選択)
家庭端末数/RDS:p2 =262144/1024=256必要な下ポーリング層データ伝送速度:r2 ≧682.7×(1+δ)=685bps事象変化情報収集時間:1ポーリングサイクル=5分ライフライン詳細情報収集時間:T1 ×n=50分RDS内データベースメモリ :25.6kB+2.56kB=28.2kBセンタ局内データベースメモリ:26.2MB(ライフライン情報1フレーム)
および2.62×24×60/5=755MB(事象変化情報24時間)
【0021】p1 ,p2 選択の妥当性仮定1:上ポーリング層回線接続1回当たりのエラー発生率a1 と下ポーリング層回線接続1回当たりのエラー発生率a2 の比が1:1であると仮定した場合、ネットワーク全体のエラー発生率を最小とするRDSの数は、p1 =p2 =(C)(1/2) =(262144)(1/2) =512となる。
仮定2:a1 とa2 の比が1:4であると仮定した場合、ネットワーク全体のエラー発生率を最小とするRDSの数は、p1 =(a2 /a1(1/2) ×(C)(1/2) =2×512=1024p2 =(a1 /a2(1/2) ×(C)(1/2) =0.5×512=256となる。上層通信回線エラー発生率より下層通信回線エラー発生率が高い場合が多いと考えられる。このような場合には、設計者が選択した数は妥当である。
【0022】次に、データベースネットワーク技術を拡張してネットワークの層数を2層から3層に増すことにより、上述のようなデータベースネットワークが持つ特徴をさらに拡張することができる。
1.図2に第2の実施態様である3層データベースネットワークの構成概念図を示す。この構成は中継データベースが上、下の2層になっている。センタ局101は、主データベース101Aを備えている。センタ局101は、上層中継データベース局群103に含まれる上層中継データベース局1031 ,1032 ・・103p1をポーリングして各上層中継データベース局のデータを収集する。各上層中継データベース局は局単位で、関連下層中継データベース局群の下層中継データベース局をポーリングして各下層中継データベース局のデータを収集する。上層中継データベース局1031 はその局関連下層中継データベース局10411〜1041p1 をポーリングして各下層中継データベース局のデータを収集する。
【0023】下層中継データベース局はその局関連端末局群の端末局をポーリングして各端末局のデータを収集する。例えば下層中継データベース局10411はその局関連端末局群の端末105111 ・・10511p3をポーリングする。また下層中継データベース局104p1p2はその局関連端末局群の端末局105p1p21 ・・105p1p2p3をポーリングする。点線106は上層通信を示し、その実効データ伝送速度をr1 とする。点線107は中層通信を示し、その実効データ伝送速度をr1 とする。点線108は下層通信を示し、その実効データ伝送速度をr3 とする。
【0024】2.すなわち、センタ局101に主データベース101Aを配置することに加えて、下層中継局および上層中継局にもデータベース(図示を省略)を分散配置する。
3.高速データベースが配置された下層および上層中継局を、それぞれ、下層中継・データベース局(下層RDS)および上層中継・データベース局(上層RDS)と呼ぶ。
4.図2において、下層RDSは主として4つの役割を果たす。(1)下ポーリング層の通信制御。(2)家庭端末からのライフライン情報(100B/端末)の取得。(3)緊急度の高いデータを抽出し、(10B/端末)×p3 データセット(事象変化情報)を生成。(4)ライフライン情報(100B/端末)の分割(分割数n3 )とその一定時間保持。
【0025】5.図2において、上層RDSは主として5つの役割を果たす。
(1)中ポーリング層の通信制御。
(2)下層RDSからの事象変化情報(10B×p3 )の取得。
(3)下層RDSから、ライフライン情報((100B/n3 )×p3 )の取得。
(4)p2 局の下層RDSから取得したライフライン情報((100B/n3)×p3 )×p2 を蓄積・保持。
(5)ライフライン情報から、緊急度が中程度のデータを抽出し、(20B/端末)×p3 ×p2 データセット(保守情報と呼ぶ)を生成。
(6)保守情報(20B/端末)×p3 ×p2 の分割(分割数n2 )とその一定時間保持。
【0026】6.センタ局はp1 局の上層RDSを順次ポーリングし、事象変化情報と保守情報あるいは事象変化情報と詳細情報を収集する。1ポーリングサイクル間に、各上層RDSから〔(10+20/n2 )×p3 ×p2 〕Bを収集する。
7.上記6の結果、1ポーリングサイクル毎に、センタ局には(10B/端末)×p3 ×p2 ×p1 の事象変化情報が収集される。ここで、p3 ×p2 ×p1 は家庭端末の総数である。
8.上記6の結果n2 ポーリングサイクル毎に、センタ局には(20B/端末)×p3 ×p2 ×p1 の保守情報が収集される。即ち、n2 サイクル毎に全家庭端末からの保守情報が収集される。
9.ライフライン情報(100B/端末)×p3 ×p2 は、一定時間、各上層RDS内データベースに蓄積・保持される。
10.必要に応じて保守情報に代えて、ライフライン情報をセンタ局へ送る。5×n2 ポーリングサイクルを要する。
11.各上層RDSはp2 局の下層RDSを順次ポーリングし、事象変化情報およびライフライン情報を収集する。1ポーリングサイクル間に、各下層RDSから、〔(10+20/n3 )×p3 〕Bを収集する。
【0027】12.上記7〜11をまとめて、次のことがいえる:全家庭端末からセンタ局へ(1)緊急度の高い事象変化情報を短時間で(1ポーリングサイクルT1毎に)送ること、(2)2番目に緊急度の高い保守情報をn2 ポーリングサイクルで送ること、(3)必要に応じてライフライン情報を5×n2 ポーリングサイクルで送ることの3つの目的を1つの情報伝送路を使って達成できる。
【0028】13.上層ポーリング周期T1 は次の式で与えられる。
1 =〔8×(10+20/n2 )×p3 ×p2 ×p1 〕/r11 は上ポーリング層の実効データ伝送速度である。
14.中層ポーリング周期T2 は次の式で与えられる。
2 =〔8×(10+100/n3 )×p3 ×p2 〕/r22 は中ポーリング層の実効データ伝送速度である。
15.下層ポーリング周期T3 は次の式で与えられる。
3 =(8×100×p3 )/r33 は下ポーリング層の実効データ伝送速度である。
【0029】16.センタ局および上層RDSに収集されるデータが最新データであることを保証するには、T1 ≧ T2 ≧ T3でなければならない。
17.
1 = T2 = T3のとき、データ転送効率が100%となる。この条件のもとでは、r1 ,r2 ,r3 の間に、次の関係が成り立っている。
2 =r1 ×(1/p1 )×(10+100/n3 )/(10+20/n2
3 =r2 ×(1/p2 )×〔100/(10+100/n3 )〕=r1 ×(1/p1 )×(1/p2 )×〔100/(10+20/n2 )〕
18.実際には、これよりわずかに高い値にr2 ,r3 を設定する。
2 =r1 ×(1/p1 )×(10+100/n3 )/(10+20/n2 )×(1+δ)
3 =r1 ×(1/p1 )×(1/p2 )×〔100/(10+20/n2 )〕×(1+δ)
【0030】19.下層RDS内データベースに要求されるメモリ容量:(1)100×p3B:100Bデータを家庭端末から収集・記憶。(2)10×p3 B:100Bから10Bを抽出・記憶。
δ<<120.上層RDS内データベースに要求されるメモリ容量:(1)100×p3×p2 B:家庭端末から100Bデータを収集・記憶・保持。(2)20×p3×p2 :100Bから20Bデータを抽出・保持。(3)10×p3 ×p2 B:p3 ×p2 家庭端末分の事象変化データを収集・記憶。
21.センタ局内データベースに要求されるメモリ容量:(1)100×p3 ×p2 ×p1 B:全家庭端末から収集したライフライン情報の記憶・保持。(2)20×p3 ×p2 ×p1 B:全家庭端末から収集した保守情報の直近Fフレームを記憶・保持。(3)10×p3 ×p2 ×p1 ×(24×60/T1 ):事象変化情報の直近24時間分を記憶・保持。
【0031】22.システム各階層のデータ量
【表2】


【0032】23.3種の情報の収集に必要な時間
【表3】


【0033】24.情報収集の緊急度にしたがって、ライフライン情報を3種に分ける。
25.緊急度が最も高い事象変化情報を短時間(T1 分)で収集する。
26.1つの通進路を使い、3種類の情報を家庭端末からセンタ局へ送る。これを可能とするために、通進路の途中に下層RDSおよび上層RDSを分散配置する。下層RDSでは事象変化情報を生成し、上層RDSでは保守情報を生成する。
27.分散配置された高速データベースに、必要なメモリ量を付加することにより、様々なデータ処理機能を持たせることができる。目的に応じた特性を持つデータベースネットワークを構築できる。
【0034】28.上層中継・データベース局数p1 および下層中継・データベース局数p2の決定法3層構造を持つデータベースネットワークに対して、次式により、ペナルティ関数を定義する。
f=a1 ×p1 +a2 ×p2 +a3 ×p3ここで、p1 ×p2 ×p3 =Cは家庭端末の数Cを与える。p1 ,p2 ,p3 の決定手順を2段に分けて考える。先ず、p1 を定数とみなしp2 とp3 の関係を決める。次に、この条件のもとで、p1 の値を決める。
2 ×p3 =C/p1右辺を定数とみなしているので、p3 =(C/p1 )(1/p2
ここで、p2 とp3 の関係についてのペナルティ関数f2 を定義する。
2 =a22 +a33=a22 +a3 (C/p1 )(1/p2
2 の極値を与えるp2 を求める。
δf2 /δp2 =a22 −a3 (C/p1 )(1/p22)=0上の式から、p2 =(a3 /a2(1/2) ×(C/p1(1/2)を得る。したがって、p3 はp3 =(a2 /a3(1/2) ×(C/p1(1/2)となる。これらの値をfの定義式に入れればf=a11 +a2 (a3 /a2(1/2) ×(C/p1(1/2)+a3 (a2 /a3(1/2) ×(C/p1(1/2)=a11+2(a23(1/2) ×(C/p1(1/2)となる。上の式から、fの極値を与えるp1 を求める。
δf/p1 =a1 −(a23 C)(1/2) ×〔1/(p1 (3/2) )〕=0したがって、p13=a23 C/a12または、p1 =(a23 /a12(1/3) ×(C)(1/3)この結果をp2 とp3 の表現式に代入して、p2 =(a3 /a2(1/2) ×(C/p1(1/2)=(a13 /a32(1/3) ×(C)(1/3)3 =(a2 /a3(1/2) ×(C/p1(1/2)=(a12 /a32(1/3) ×(C)(1/3)これらの値はp1 ×p2 ×p3 =Cを満たす。a1 ,a2 ,a3 をそれぞれ、上層ポーリング、中層ポーリング、下層ポーリングの回線接続1回当たりの通信エラー発生率とすれば、p1 ,p2 ,p3 を上記の値に設定した場合に、ネットワーク全体の通信エラー発生率は最小となる。
【0035】
【実施例】次にデータベースネットワークの具体例(実施例2)を示して、3層ポーリング情報収集・監視システム設計例を説明する。3層ポーリング情報収集・監視システム設計例(要求)
全家庭端末数:p3 ×p2 ×p1 =219=524288ポーリングサイクル時間T1 に対する要求:T1 ≦5分(設計)
20Bデータの分割数:n2 =4(設計者の選択)
必要な上ポーリング層データ伝送速度:r1 ≧209.7kbps上層RDSの数:p1 =512(設計者の選択)
100Bデータの分割数:n3 =5(設計者の選択)
必要な中ポーリング層データ伝送速度:r2 ≧819.1×(1+δ)=820bps下層RDSの数/上層RDS:p2 =32(設計者の選択)
家庭端末数/中層RDS:p3 =524288/512×64=16必要な下ポーリング層データ伝送速度:r3 ≧42.7×(1+δ)=43bps事象変化情報収集時間:1ポーリングサイクル=5分保守情報収集時間:T1 ×(n3 +n2 )=45分ライフライン詳細情報収集時間:T1×(n3 +n2 ×5)=125分下層RDS内データベースメモリ:1.6kB+0.16kB=1.76kB上記を32768台上層RDS内データベースメモリ:102.4kB+10.24kB+20.48kB=133.13kB上記を512台センタ局内データベースメモリ:52.43MB(ライフライン情報1フレーム)
および104.9MB(保守情報10フレーム)
および1.51GB(事象変化情報24時間)
【0036】次にp1 ,p2 ,p3 の選択の妥当性について検証する。
(C)(1/3) =(524288)(1/3) =80.64以下を仮定する。
(a2 /a1 )=8 (a3 /a1 )=16上の仮定のもとに、p1 ,p2 ,p3 を計算すると、p1 =〔a23 /a12(1/3) (C)(1/3)=5.04×80.64=406.4p2 =〔a13 /a22(1/3) (C)(1/3)=0.630×80.64=50.8p3 =〔a21 /a32(1/3) (C)(1/3)=0.315×80.64=25.4設計者の選択:p1 =512p2 =64p3 =16は通信エラーを最小とする設計値に近い。
【0037】本発明によるデータベースネットワークシステムを大規模地震発生時の緊急通報用に用いようとするとき、その目的に照らして、問題の時点にこのデータベースネットワークシステムが正常に動作していたという保証が必要である。すくなくとも、動作状態が的確に把握されていなければならない。そのためこの前記データベースネットワークシステムは、連続して動作させられ、常時、前記センタ局の主データベースは前記特定情報データ、または特定情報データと前記その他のデータを一定期間蓄積することにより動作の履歴を保持するように構成してある。これにより事故等が災害に起因するものであったかなかったかの判断が可能となる。
【0038】本発明によるデータベースネットワークシステムは前述のように絶え間なく情報を収集するものであるから、膨大な情報の収集が可能である。そのために前述のライフラインデータのみならず、より多くの情報を収集対象とすることができる。すなわち、前記変化する情報の組合せは、各メータのライフラインデータに含まれているメータ値の読み取り、各種の保守業務に係わる情報収集・監視のためのデータ、セキュリティ、老人介護、消火栓水圧、空調機監視等に係わる情報データのいずれかを組み合わせとすることができる。
【0039】以上詳しく説明した実施例について本発明の範囲内で種々の変形を施すことができる。RDSが1層の例と2層の例を示したが、これを3層以上に拡張することは可能であり、その場合においても、前述した設計の方法が同様に適用できる。本発明によるデータベースネットワークシステムを都市ライフラインの緊急情報の収集を例にして詳しく説明したが、その他の情報の収集にも利用できることは上述のとおりである。前記実施例は通信媒体として、無線を利用する例を示したが、光ファイバ通信を含む有線通信網を新設して利用することもできる。有線と無線を層別に使い分けたり、地域別(例えば群単位での選択)も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるデータベースネットワークシステムの第1の実施形態である非同期2層ポーリングシステムと高速データベースを組合せて構成したライフライン情報収集・監視システム概念図である。
【図2】本発明によるデータベースネットワークシステムの第2の実施例である非同期3層ポーリングシステムと高速データベースを組合せて構成したライフライン情報収集・監視システム概念図である。
【符号の説明】
1 センタ局
1A 主データベース
3 中継データベース局群
1 ・・3i ・・3p1 中継データベース局
1 ・・5p1・・ 端末局群
11・・51p21 局関連端末局
21・・52p22 局関連端末局
p11 ・・5p1p2p1 局関連端末局
6 上層通信(実効データ伝送速度=r1
8 下層通信(実効データ伝送速度=r2
101 センタ局
101A 主データベース
103 上層中継データベース局群
1031 ,1032 ・・103p1 上層中継データベース局
10411〜1041p1 1031 局関連下層中継データベース局
104p11 〜104p1p2 103p1局関連下層中継データベース局
1041 ・・104p1 下層中継データベース局群
105111 ・・10511p3 下層中継データベース局10411の関連端末局
105p1p21 ・・105p1p2p3 下層中継データベース局104p1p2局の関連端末局
10511・・105p1p2 端末局群
106 上層通信(実効データ伝送速度=r1
107 中層通信(実効データ伝送速度=r2
108 下層通信(実効データ伝送速度=r3

【特許請求の範囲】
【請求項1】 変化する情報を取得してデータとして蓄積し、要求に応じて送信する複数の端末局からなる端末局グループと、端末局グループ対応に設けられ、各端末から順次受信した情報を特定データとその他のデータとして蓄積し、要求に応じて送信する複数の中継データベース局と、任意の前記中継データベース局の特定データとその他のデータの一部を各中継データベース局から順次受信し、複数回の受信で全データと前記特定情報データの複数回受信を行い、必要に応じて蓄積するセンタ局と、から構成した情報を収集するデータベースネットワークシステム。
【請求項2】 前記複数の中継データベース局は、少なくとも一つの上層中継データベース局群と前記上層中継データベース局の一つ当てに設けられている複数の下層中継データベース局群とを含み、前記下層中継データベース局群の局が前記複数の端末局からなる端末局グループから情報を収集し、前記センタ局が前記上層中継データベース局から情報を収集するものである請求項1記載のデータベースネットワークシステム。
【請求項3】 前記変化する情報は、ガス,電気,水道等の都市ライフライン情報であり、前記端末局は家庭等の生活単位端末である請求項1または2記載のデータベースネットワークシステム。
【請求項4】 変化する家庭端末情報から、緊急度に応じて特定情報を抽出し、元の家庭端末情報を含めてm種類(m≧2)の情報を生成した上で、それらm種類の情報を緊急度に応じた短さの収集時間でセンタ局に収集する請求項1または2記載のデータベースネットワークシステム。
【請求項5】 前記データベースネットワークシステムは、連続して動作させられ、常時、前記センタ局の主データベースは前記特定情報データ、または特定情報データと前記その他のデータを一定期間蓄積することにより動作の履歴を保持するように構成した請求項1または2記載のデータベースネットワークシステム。
【請求項6】 前記変化する情報の組合せは、各メータのライフラインデータに含まれているメータ値の読み取り、各種の保守業務に係わる情報収集・監視のためのデータ、セキュリティ、老人介護、消火栓水圧、空調機監視等に係わる情報データのいずれかの組み合わせとすることができる。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−287281(P2000−287281A)
【公開日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−90827
【出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(592256623)通信・放送機構 (2)
【出願人】(599043194)
【出願人】(594088341)株式会社ハマネン (4)
【Fターム(参考)】