データベース統合装置
【解決手段】データベース統合装置10はコンピュータ12を含み、コンピュータ12は、第1データベース22、第2データベース24および地図データベース26に連係し、第1データベースから選択した項目に対応する第2データベース内の項目を特定する(突合する)。その際、第1データベースの項目に含まれる経緯度が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定し、その範囲に入る対象点(第2データベースの項目に含まれる経緯度が示す場所)を基準点とともに、GUIの地図表示領域に表示する。オペレータまたは当事者はその地図を参照することによって、そのとき第1データベースから選択している項目と関連付けるべき第2データベースの項目を特定する。
【効果】データベースを効率よく統合することができる。
【効果】データベースを効率よく統合することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はデータベース統合装置に関し、たとえば住民基本台帳と家屋課税台帳のように異なる体系で作成したデータベースの項目どうしを統合する、新規なデータベース結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基礎自治体で使用する住民基本台帳と家屋課税台帳のような各々の台帳は個々に管理されていて、横断的な利用を前提としていないため、「リンクキー」のような両台帳の個々の項目を統合するための仕組みはない。
【0003】
一方、たとえば自治体が災害による被害状況を把握して、被災者支援業務を長期的に実践するためには、災害が発生して初めて業務遂行上必要となる情報を包括するための被災者に関する被災者台帳(被災した「家屋(所在地)」、その「被害程度」、そこに住む「住人」に関する情報を1つのテーブルに集約したもの。)を新たに作り上げる必要がある。このような被災者台帳は迅速に作成する必要があり、そのためには、既存の台帳を利用するのが効率的である。しかしながら、たとえば住民基本台帳および家屋課税台帳はそれぞれ異なる体系で作成されているので、元々それらの横断的利用を前提としていない。
【特許文献1】特開2008‐129777号公報[G06Q 50/00]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ともにGISデータを含む2つのデータベースを連係させるだけであり、横断的利用の仕組みを持たない台帳やデータベースの統合には適用できない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、データベース統合装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースを結合ないし統合できる、データベース統合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベース、複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベース、第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを第1データベースから選択した1の項目と統合する統合手段を備える、データベース統合装置である。
【0009】
第1の発明では、第1データベース(22:実施例において対応または相当する参照符号。以下、同様。)には、少なくとも1つの項目が、その項目番号と、住所、名前、地図データ(経緯度)などを含んで格納されている。第2データベース(24)には、複数の項目が、各項目番号と、住所、名前、地図データ(経緯度)などを含んで格納されている。範囲画定手段(12:S9,S17,S19;S41,S45,S49)は、第1データベースから選択した1つの項目の経緯度が示す地図上の場所を基準点とし、その基準点を包含する所定の大きさの対象点探索範囲を画定する。実施例においては、コンピュータ12が実行するたとえばステップS9(S33)で、基準点を中心とする対象点探索範囲の初期値を設定し、その後必要に応じて、コンピュータ12が実行するたとえばステップS17、S19(S41、S45、S49)において対象点探索範囲を拡張または縮小(つまりバッファ距離を増減)する。つまり、これらのステップが対象点探索範囲画定手段を構成することになる。そして、この対象点探索範囲に1つ以上の対象点が存在する場合、統合手段(12:S25,S29,S39,S55,S29)は、そのうちの1つの対象点を示す第2データベースの項目を第1データベースから選択している項目と統合する。実施例においては、コンピュータ12が実行するステップS25(S39またはS55)で、基準点と結合されるべき対象点が特定され、たとえばステップS29(図7)において、特定された対象点と基準点が紐付けされて統合データベースに登録される。つまり、これらのステップが統合手段を構成することになる。
【0010】
第1の発明によれば、空間情報、たとえば地図(経緯度)データを用いることによって、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、範囲画定手段は対象点探索範囲を可変的に画定する、データベース統合装置である。
【0012】
第2の発明では、対象点探索範囲を可変的に、つまり大きくしたり小さくしたりして設定できるので、対象点探索範囲に入る対象点の数を適宜数に調整することができる。つまり、対象点とは、第2データベースの各項目の経緯度が示す地図上の場所のことを意味し、対象点探索範囲に2つ以上の対象点が入っているときには、どれか1つの対象点を特定しなければならない。どれか1つの対象点を特定する必要があるので、あまり多くの対象点が当該範囲に入っていると、特定する際に誤認する可能性がある。対象点探索範囲を可変的に画定するようにすれば、対象点探索範囲に入る対象点の数を調整でき、上記のような誤認を可及的抑制することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、基準点および対象点探索範囲に含まれる対象点を地図上で表示する地図表示手段をさらに備える、データベース統合装置である。
【0014】
第3の発明では、地図表示手段(12,26:S21;S35,S51)によって、基準点および対象点を地図上で表示するようにしているので、特定の1つの対象点を容易に特定できる。つまり、上述のように、対象点探索範囲に2つ以上の対象点が入っているときには、どれか1つの対象点を特定しなければならないが、基準点や対象点を地図上に表示すると、個々の対象点を目視によって確認できるので、容易に特定できるとともに、誤認の可能性を減じることができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明に従属し、GUIを表示するGUI表示手段をさらに備え、地図表示手段は、GUIの一部に地図を表示する、データベース統合装置である。
【0016】
第4の発明では、GUI表示手段(12,444:S1)がGUIを表示し、それの一部、たとえば地図表示領域(36)に地図表示手段によって地図を表示する。つまり、GUIに地図が表示されるので、オペレータや当事者は、データベースの項目と併せて基準点や対象点でき、個々の対象点を確認し易い。
【0017】
第5の発明は、第4の発明に従属し、GUIは、第1データベースから選択した項目を表示する項目選択パネルおよび対象点を基準点から近い順に一覧表示するリスト表示パネルを含む、データベース統合装置である。
【0018】
第5の発明では、統合しようとしている項目を項目選択パネル(32)に表示することによって明確に確認できる。また、リスト表示パネル(34)に基準点から近い順に対象点を表示すれば、対象点が2以上対象点探索範囲に含まれるときに、1の対象点を特定する目安となる。
【0019】
第6の発明は、少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベースおよび複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベースを統合するデータベース統合装置のコンピュータによって実行され、コンピュータを、第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを第1データベースから選択した1の項目と統合する統合手段として機能させる、データベース統合プログラムである。
【0020】
第6発明では、データベース結合装置(10)のコンピュータ(12)が、第1データベース(22)および第2データベース(24)を統合するために、統合プログラム(422)を実行する。統合プログラムは、そのコンピュータを対象点探索範囲画定手段(S9,S17,S19;S41,S45,S49)として機能させ、この範囲画定出願は、第1データベースから選択した1つの項目の経緯度が示す地図上の場所を基準点とし、その基準点を包含する所定の大きさの対象点探索範囲を画定する。統合プログラムはさらに、コンピュータを統合手段(S25,S29,S39,S55,S29)として機能させ、その統合手段は、そのうちの1つの対象点を示す第2データベースの項目を第1データベースから選択している項目と統合する。
【0021】
第6の発明によっても、第1の発明と同様に、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【0023】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明のデータベース統合装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図2は図1実施例の第1データベースの一例を示す図解図である。
【図3】図3は図1実施例における第2データベースの一例を示す図解図である。
【図4】図4は図1実施例のデータベース統合装置での統合動作の概要を示す図解図である。
【図5】図5は図1実施例におけるGUIの一例を示す図解図である。
【図6】図6は図1実施例の内部メモリ(RAM)のメモリマップの一例を示す図解図である。
【図7】図7は図1実施例における動作の一部を詳細に示すフロー図である。
【図8】図8は図7実施例における対象点探索動作を詳細に示すフロー図である。
【図9】図9は図5に示すGUIを用いて統合操作を実行するときの検索画面の構成の一例を示す図解図である。
【図10】図10は図8実施例において基準点および対象点を地図上に表示した地図表示領域の一表示例を示す図解図である。
【図11】図11は図1実施例において統合した結果の統合データベースの一例を示す図解図である。
【図12】図12はこの発明に従ったデータベース統合装置での他の統合動作の概要を示す図解図である。
【図13】図13は図7実施例における対象点探索動作の他の例を詳細に示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に示すこの発明の一実施例のデータベース統合装置10は、コンピュータ12を含み、このコンピュータ12は、デスクトップ型、ノート型などのパソコンやワークステーションなど任意のコンピュータであってよく、マウスやキーボード(ともに図示せず)を含む操作装置14および画像表示のためのモニタ16を付属的に備える。コンピュータ12はさらに、ROMやRAMを含む内部メモリ18を有する。コンピュータ12にはさらに、必要に応じて作成した統合データベースなどを印刷発行するプリンタ20が設けられる。
【0026】
内部メモリ18には、図示しないプログラム媒体(たとえばDVDやCDあるいは半導体メモリ)から読み出したプログラムを展開して設定しておくプログラム領域42およびデータを一時的に記憶するデータ記憶領域44(ともに図6)が設けられる。
【0027】
コンピュータ12には、第1データベース22、第2データベース24および地図データベース26が連係される。これらのデータベース22‐26は、コンピュータ12に直接接続されてもよいが、ネットワーク(図示せず)を通してコンピュータ12に接続されるようにしてもよい。
【0028】
第1データベース22は、たとえば図2に示すようなデータベースであり、一例として、図2の例では住民基本台帳(以下、「住基台帳」と略称する。)が想定されている。ただし、この具体例に限定されるものではない。第1データベース22にはたとえば、複数の項目番号1-id1,1-id2,1-id3,1-id4,1-id5,…の各々に、住所1-address1,1-address2,1-address3,1-address4,1-address5,…、氏名1-name1,1-name2,1-name3,1-name4,1-name5,…および空間情報または地図データとしての経緯度1-x1y1,1-x2y2,1-x3y3,1-x4y4,1-x5y5,…などが設定されている。
【0029】
第2データベース24は、たとえば図3に示すようなデータベースであり、一例として図3の例では家屋課税台帳(以下、「課税台帳」と略称する。)が想定されている。ただし、この具体例に限定されるものではない。第2データベース24にはたとえば、複数の項目番号2-id1,2-id2,2-id3,2-id4,2-id5,…の各々に、住所2-address1,2-address2,2-address3,2-address4,2-address5,…、氏名2-name1,2-name2,2-name3,2-name4,2-name5,…および空間情報または地図データとしての経緯度2-x1y1,2-x2y2,2-x3y3,2-x4y4,2-x5y5,…などが設定されている。
【0030】
よく知られているように、住基台帳と課税台帳とは個別の必要性から個別の思想、体系で作成されているものである。住基台帳は、いわば住民票の集合ともいえるもので、個人を管理するためのデータベースである。住所は、街区符号、基礎番号、居住番号からなる住居表示で表される。そして、個人番号(図2の1‐IDに相当する。)、世帯番号、家屋番号、現住所(図2の住所1-addressに相当する。)、世帯主名(図2の氏名1-nameに相当する。)などの所要の項目を含む世帯情報のデータベースである。
【0031】
このような住基台帳には通常、住所地を示す地図データ、つまり、図2の経緯度が個人番号(項目)ごとに設定されている。
【0032】
もし、第1データベース22に項目番号に対応する地図データが含まれていない場合には、たとえばジオコーディング(geocoding)ないしアドレスマッチング(address matching)と呼ばれる手法を利用して、各項目の地図データすなわち経緯度を求めて第1データベース22に格納しておくようにする。ジオコーディングやアドレスマッチングは、いずれも、住所辞書(住所文字列と座標情報(経緯度など)を対応させたテーブル)を用いて、地名、住所が示す場所に対して、地理座標(典型的には経緯度)を与える手法であり、適宜のソフトウェアを利用して自動的に実行することもできる。この実施例では、後述するように、アドレスマッチングプログラムを内部メモリ18に展開できるようにしている。
【0033】
課税台帳は、家屋を管理するためのものであり、登記簿に登記されている家屋について、家屋番号(図2の1‐IDに相当する。)毎に、所有権の登記名義人の住所(図3の住所2-addressに相当する。)および氏名又は名称(図3の氏名2-nameに相当する。)ならびにその家屋の基準年度の価格または比準価格等の家屋情報のデータベースである。なお、課税台帳においては、住所は建物の場所を示すものであり、上述の住居表示とは全く異なる、地番表記を採用している。したがって、例示した住基台帳と課税台帳とは体系が異なるといえる。
【0034】
この発明が統合または結合しようとする2つまたはそれ以上のデータベースの関係は、上述のように各データベースの体系は違うが、両方のデータベースは、互いに関連付けられるまたは互いに結合することができる、もしくは少なくとも互いに関連あると推定できる項目を含んでいる必要がある。たとえば第1データベース22が住基台帳で第2データベース24が課税台帳の場合、個人である住民とその住民が居住または使用している家屋とは互いに関連付けられ得ることは明白である。
【0035】
なお、課税台帳には地図データは含まれていない場合が多く、その場合には、上述のようにたとえばジオコーディングまたはアドレスマッチングによって各家屋番号の地図データすなわち経緯度を求めて第2データベース24に格納しておくようにする。ただし、建物範囲は基本的には面積のあるポリゴンで表されるので、アドレスマッチングで特定する経緯度は、当該建物範囲の内心点の経緯度とする。重心だとすると、建物範囲をはみ出た位置になってしまうことがあるからである。
【0036】
この実施例の地図データベース26は、道路、鉄道、建物、建物の戸別名称、行政界などの項目を含み、これらの情報は階層(レイヤ)毎にベクトル形式で、たとえば日本測地系での経緯度データ、基本属性情報(戸別建物名称に付加した個別キー情報や住所情報)とともに、データ化されている。そのため必要なレイヤを選択することにより、用途に応じた地図表現が可能である。
【0037】
なお、この実施例では、アドレスマッチングプログラムの実行に必要な上述の住所辞書もこの地図データベース26に設定している。
【0038】
図4を参照して概略的に説明すると、図1実施例のデータベース統合装置10では、まず、第1データベース22から1つの項目、たとえば1-id2を選択し、それに付属的に設定されている経緯度1-x2y2が示す点を基準点として設定する。この基準点を中心として半径Rの円を対象点探索範囲として設定する。一方、統合対象である第2データベース24から全部または適宜数の項目を選択し、それらに付属的に設定されている経緯度たとえば2-x2y2および2-x3y3が示す2つの対象点が半径Rの円内に入るとき、これらの対象点を結合対象候補とする。そして、各対象点を基準点から近い順にリスト表示し、同時に地図上で、基準点と併せて対象点を表示する。
【0039】
その後、オペレータまたは当事者がその地図上の基準点および対象点の位置を確認して、図4の実施例でいえば、どちらの対象点が正しく第1データベース22の項目1-id2に対応付けられるべきかを決定する。決定された対象点を示す第2データベースの項目が、第1データベースでそのとき選択されている項目に結合または統合される。
【0040】
なお、実施例では、基準点を中心とする半径Rの円形の対象点探索範囲内に入る点を対象点としているので、対象点探索範囲の大きさを容易に変更できるという利点がある。しかしながら、対象点探索範囲の形状は円形に限るものではなく、たとえば基準点を中心とする矩形その他の形状であってよい。つまり、対象点探索範囲は基準点を包含する任意の形状の地図上の範囲である。
【0041】
図1実施例のデータベース統合装置10を用いて図4で示す要領で第1および第2データベース22および24を統合するためのGUIの一例が図5に図解される。図5に示すGUI(Graphical User Interface)28は、モニタ16に表示される。
【0042】
GUI28は、左側の検索画面30と右側の地図表示領域36を含み、検索画面30には、項目選択パネル32およびリスト表示パネル34が上から順に形成される。項目選択パネル32には基準となるデータベース、この実施例では第1データベース22を一覧表示し、その第1データベース22の任意の項目1-idiをたとえばダブルクリックで選択または指定できるようにされている。
【0043】
なお、基準となるデータベースとしては、統合すべき2以上のデータベースのうち、最も精度の高い空間情報または地図データつまり経緯度を有するものを用いる。実施例のように、第1データベース22が住基台帳であり、第2データベース24が課税台帳だとすると、住基台帳の方が格段に精度の高い空間情報を持っているので、この場合には、基準となるデータベースとして第1データベース22を用いる。この発明は任意のデータベースどうしの統合装置として利用できるが、原則的には、統合しようとするデータベースのうち空間情報ないし地図データすなわち経緯度の精度が最も高いと目されるものを基準データベースとして利用する。
【0044】
リスト表示パネル34には、図4を参照して概説したように、基準点を中心とする半径Rの対象点探索範囲内に存在する1または複数の対象点を示す第2データベース24内の項目を、基準点からの距離が近い順にリスト形式で表示するための表示領域である。図4の実施例でいえば、2つの対象点がこのリスト表示パネル34に表示される。
【0045】
地図表示領域36は、地図データベース26から読み出した地図データに従って上述の基準点および対象点を地図とともに表示するための領域である。この地図表示領域36に表示された場所や建物の平面形状などを参照して、オペレータまたは当事者が最終的に基準点に対応する対象点を特定することができる。
【0046】
なお、GUI28の検索領域30の下部には、決定ボタン38がソフトボタンとして表示される。この決定ボタン38は、基準点に対応する対象点を決定する際にたとえばマウス(図示せず)によって操作される。
【0047】
図6に示す内部メモリ18のメモリマップに従えば、内部メモリ18はプログラム領域42とデータ記憶領域44を含み、プログラム領域42には、OSなどのシステムプログラムの他、上で述べたアドレスマッチングプログラム421および統合プログラム422を含む。統合プログラム422は図1実施例において統合処理を実行するためのプログラムであり、たとえば図7および図8さらには図13のフローチャートに示すような動作手順を規定する。
【0048】
データ記憶領域44は、地図データベース26から読み出した地図データを一時的に記憶しておくための地図データ領域441を含む。ただし、地図データ領域441には、アドレスマッチングプログラム421で利用する住所辞書も併せて記憶しておく。データ記憶領域44はさらに、図2および図3に示すような第1データベース22および第2データベース24の各々の全部のまたは必要な一部のデータを読み出して一時的に記憶しておくための第1データベース記憶領域442および第2データベース記憶領域443を含む。データ記憶領域44のGUI表示データ領域444は、先に説明したGUI28を表示するための画像データなどを記憶しておくための領域である。バッファ445は、後述のように対象点を基準点からの距離に従ってバッファリングするためのバッファである。ここで、バッファリングとは、GISにおいて、対象物から一定距離内にある部分を抽出すること、つまり、実施例でいえば、対象点探索範囲に含まれる対象点を抽出することをいう。
【0049】
データ記憶領域44にはさらに、統合データベース446が形成される。この統合データベース446は、第1データベース22の項目と第2データベース24の対応する項目を統合または結合した結果を記憶するための記憶領域である。
【0050】
図7は図1実施例の動作を説明するためのフローチャートであり、その最初のステップS1では、コンピュータ12(図1)は、GUI表示データ領域442から読み出したGUI画像データに基づいて、図5に示すようなGUI28をモニタ16上に表示する。このときのGUI28の検索画面30の一例が拡大されて図9に示される。
【0051】
ついで、ステップS3において、コンピュータ12は、検索領域30の項目選択パネル32に、第1データベース記憶領域442(図7)に記憶している第1データベース22のデータの全てのまたは必要な一部のデータを図9に示すように一覧表示する。
【0052】
ステップS5において、この項目選択パネル32に表示した第1データベース22内のどれかの項目の選択を確定することによって、基準点を決定する。オペレータは、たとえば項目選択パネル32の右端に付属するスクロールバーを操作して統合しようとしている項目を探し出し、たとえばその項目の行をダブルクリックすることによって、当該項目の選択を確定させることができる。項目が確定されると、その項目に含まれる経緯度が示す場所を基準点として決定する。
【0053】
続くステップS7において、コンピュータ12は、ステップS5で決定した基準点を含む対象点探索範囲を画定して、この対象点探索範囲に包含される第2データベース24の項目が示す対象点を探索する。このステップS7は具体的には、図8のような処理手順を含む。
【0054】
図8の最初のステップS9において、コンピュータ12は、図7のステップS5で決定した基準点を中心にして所定半径R(図4)のバッファ445(図6)を作成する。このときの半径Rは予めデフォルトで設定している地図上での距離、たとえば40mとする。つまり、このステップS9で、コンピュータ12は、最初の対象点探索範囲を作成する。
【0055】
次のステップS11で、コンピュータ12は、第2データベース記憶領域443に記憶している第2データベース24の各項目の経緯度が示す点の、基準点からの距離を計算し、上記半径Rの対象点探索範囲内に入る点、つまりバッファ内の対象点を特定する。たとえば、第2データベース24の各項目に付属する地図データ(経緯度)に基づいて基準点からの地図上の各距離を計算し、その地図上の各距離がたとえば40m、すなわち半径Rより長いか短いか判断し、半径Rより短い距離を示す点が対象点として特定される。
【0056】
そして、次のステップS13において、その対象点探索範囲に入る対象点が1つ以上存在するかどうか判断する。
【0057】
ステップS13で“YES”と判断すると次のステップS15に進み、“NO”と判断すると、ステップS17に進んで、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を拡大すべく基準点からの半径Rを大きくする。そのときの半径Rをたとえば、10m大きくする。上記の初期値がたとえば40mであるとすると、このステップS17ではその半径Rをたとえば50mに変更して、先のステップS9に戻る。そして、ステップS9‐S13を繰り返し実行する。
【0058】
一方、ステップS13で“YES”を判断したとき、コンピュータ12は次のステップS15で、半径Rの範囲つまり対象点探索範囲内に対象点がN個以上存在するかどうか判断する。対象点がN個以上と余りに多すぎる場合には、後述のステップS23での対象点の決定の際にオペレータもしくは当事者に迷いを生じさせる可能性がある。そこで、この実施例では、対象点が余りに多数であるときには、つまりステップS15で“YES”を判断したとき、続くステップS19で、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を縮小すべく基準点からの半径Rを小さくする。そのときの半径Rより所定距離、たとえば5mずつ小さくする。実施例では上述のように、対象点が1つもないときにはステップS17で半径Rを10mずつ大きくする。したがって、もしステップS19で10mずつ小さくするように設定したとすると、ステップS17とステップS19とで半径Rの増減が相殺されてしまい、効果的な半径Rの設定ができなくなる。そこで、実施例では、ステップS19では、たとえば5mずつ小さくするようにしている。
【0059】
ただし、ステップS17で5mずつ大きくし、ステップS19で10mずつ小さくすることも考えられる。つまり、ステップS15およびS19での半径Rの増減値(の絶対値)は同じでないことが条件で、どちらが大きくても構わない。また、「N個」は任意に定め得る数であるが、たとえば5個と決めることができる。
【0060】
このようにして、基準点から半径Rの対象点探索範囲内に1つ以上かつたとえば5つ以下の対象点があるとき、ステップS15で“NO”が判断され、次のステップS21に進む。
【0061】
ステップS21では、先のステップS11で計算した各対象点の基準点からの距離に基づいて各対象点を順序化して、図9に示すようにリスト表示パネル34にリスト表示する。図4で概説した例示であれば半径Rの対象点探索範囲内に2つの対象点が存在するので、このリスト表示パネル34には図9で例示するようなリスト表示がなされる。つまり、図9の実施例では、項目選択パネル32で選択した項目1-id2について、この項目1-id2が示す基準点に最も近い対象点を示す項目は2-id3であり、その次に近い対象点を示す項目は2-id2であることがわかる。もし、このリスト表示パネル34に多くの対象点が表示される場合、リスト表示パネル34の右端に付属するスクロールバーを操作して対象点を探し、その行をクリックすることで、対象点を選択することができる。
【0062】
ステップS21ではさらに、図10に示すように、リスト表示パネル34に一覧表示した対象点を、基準点とともに、地図表示領域36に地図データベース26の地図データを利用して表示した地図上に、プロットして表示する。これは、オペレータまたは当事者が基準点や対象点の場所を地図上で目視によって確認できるようにするためである。
【0063】
その後、ステップS23で、コンピュータ12は検索領域30下部に設定されている決定ボタン38が操作されたかどうか判断する。つまり、このステップS23で、基準点に対応する対象点が選択されかつ確定されたかどうか判断する。ただし、項目選択パネル32で項目を選択する場合と同様に、リスト表示パネル34において該当する対象点の行をダブルクリックすることによって、対象点を確定させるようにしてもよい。この場合には、当然、決定ボタン38を省略できる。
【0064】
オペレータまたは当事者が最終的に対象点を確定させる際、図10のような地図表示が大いに役立つ。図10の実施例では、地図上には道路などとともに建物形状が併せて表示されるので、図10に示すように基準点(たとえば住基台帳が示す住所が示す)に接近した2つの対象点(たとえば課税台帳が示す住所が示す)のどちらが、当事者の建物形状を正しく示しているかは容易に判別できるので、オペレータまたは当事者が最終的に対象点を確定させるときの誤認を可及的防止できる。特に、図10で示すように1つの土地区画に2つの建物が存在する場合、たとえば親の家と子供の家が同じ敷地内に建っている場合などに有効である。ただし、これは対象点探索範囲に1つだけしか対象点が含まれないときにでも有効である。この場合には、当然、その対象点を示す第2データベース24の項目がそのとき項目選択パネル32で選択している第1データベース22の項目と紐付けされるべきであるが、地図表示領域36において建物形状や道路などとの関係で基準点と対象点とを目視確認できれば、そのような項目の結合が一層正しく行なわれ得る。
【0065】
なお、図10において、基準点や対象点を目立つ色で表示したりハイライト表示すると、基準点や対象点を探し易い。
【0066】
そして、ステップS23で“YES”が判断されたときには、コンピュータ12は、ステップS25で基準点に対応する対象点を特定するが、“NO”を判断したときには、ステップS27において、たとえば地図表示領域36に表示している地図に重畳するような態様で、対象点を特定できないことをオペレータや当事者に通知する。その後、図7のメインルーチンにリターンする。
【0067】
図7のステップS29では、図8のステップS25で対象点を特定することによって互いに関連付けられた第1データベース24の項目と第2データベース24の項目とを、たとえば図11に示すように、統合データベース446に登録する。
【0068】
このようにして、第2データベース24が含む項目の空間情報(経緯度)が示す対象点が、第1データベース22から選択した項目が示す経緯度(空間情報)が示す基準点を含む地図上の一定範囲つまり対象点探索範囲内に存在するかどうかに応じて、第1データベース22および第2データベース24の項目どうしを結合または統合するのである。ただし、実施例では、その前提として、オペレータまたは当事者が、第1データベース22から選択した基準点を包含する地図上の所定の対象点探索範囲内に存在する当該対象点が、基準点を示す第1データベース22の項目に対応することを地図上で確認するようにしている。
【0069】
図11の例では、第1データベース22の項目1-IDと第2データベース24の項目2-IDとの対応関係が統合データベース446に格納される。したがって、この統合データベース446が第1データベース22および第2データベース24を互いに結びつけるための手段の役目を果たす。つまり、図11を参照すれば、第1データベース22の項目1-id1は第2データベース24の項目2-id1と対応するが、第1データベース22の項目1-id2は第2データベース24の項目2-id2ではなく項目2-id3と対応することなどがわかる。
【0070】
上述の実施例では2つのデータベースを統合する場合について説明したが、この発明を利用すれば、3つ以上のデータベースを同時に統合することも可能である。
【0071】
図12に示す例では、第1データベースおよび第2データベースに加えて第3データベースを用い、たとえば第1データベースで選択した項目が示す基準点を含む対象点探索範囲内に第2データベースの項目が示す第1の対象点と第3データベースの項目が示す第2の対象点とが入る場合、第2および第3データベースの該当の項目が第1データベースからそのとき選択した項目と結合されるべきであることが分かる。
【0072】
なお、図12の例に図8のフロー図を適用する場合、ステップS13では、第2データベースおよび第3データベースのそれぞれの対象点が少なくとも1つ含まれているかどうか判断することになる。ただし、ステップS15では第2データベースの対象点か第3データベースの対象点のどちらかがN以上あれば“YES”を判断するようにしてもよいし、その両方の対象点がともにN個以上あるとき“YES”を判断するようにしてもよい。
【0073】
さらに、上の説明では、第1データベースが住基台帳で第2データベースが課税台帳の場合を例に挙げて説明したが、具体的なデータベースはこれに限ることはない。
【0074】
また、実施例では第1データベース22も第2データベース24も複数の項目を含むものとして説明したが、基準とすべきデータベース、たとえば第1データベースには1つの項目しか含まれていなくてもよい。この場合には、第1データベースのその1つの項目が第2データベースに含まれている複数の項目のどれかに対応するかを探索することができる。その意味で、この発明のデータベース統合装置は、たとえば年金台帳のどれが特定の個人のものかを探索するシステムや、金融機関における所謂「名寄せ」を行なうシステムとして利用できる。
【0075】
前者の場合、個人の住所またはその個人が所属していた企業の住所に基づいて基準点を定め、年金台帳の住所が示す対象点がその基準点を包含する対象点探索範囲に入るかどうか判断し、最終的には個人または企業が地図上で確認することによって、年金台帳の突合を行なえる。
【0076】
後者の場合、預金者の住所と銀行の預金者データベースが示す住所から、同様にして両者を結合することができる。
【0077】
なお、「名寄せ」の場合、2以上の金融機関の預貯金者データベースを用いて、実施例のような手順で1つの金融機関の預貯金者データベースから選択した1人の預貯金者と他の金融機関の預貯金者データベースに含まれる預貯金者との同一性を判断することができる。
【0078】
上で説明した図8の実施例では、基準点を決定した後にバッファリングする際に、半径Rをまずデフォルト値に設定し、その後対象点があるかどうか、多すぎないかどうかなどでその半径Rを調整するようにした。これについては、図13に示すように変更することも可能である。
【0079】
図13は図7のステップS7の図8実施例に代わる実施例であるが、まず、ステップS31においてコンピュータ12は、図7のステップS5で決定した基準点を用いて、その基準点から各対象点までの距離を計算する。
【0080】
そして、ステップS33において、コンピュータ12は、この計算した距離に基づいて、基準点に最も接近した対象点、つまり最近隣の対象点までの距離を半径とするバッファリングを行なう。したがって、このときにはその距離Rのバッファリング領域内には1つの対象点が包含される。コンピュータ12はついで、この1つの対象点を、たとえば図10に示す地図表示領域36上に重畳的に表示する(ステップS35)。
【0081】
次のステップS37で、先の図8のステップS23と同様にして、コンピュータ12は検索領域30の下部に設定されている決定ボタン38が操作されたかどうか判断する。つまり、このステップS37で、基準点に対応する1つの対象点が選択されかつ確定されたかどうか判断する。“YES”の場合、先のステップS25と同様にして対象点を特定した後、図7のステップS29にリターンする。
【0082】
ステップS37で対象点が決定できなかった場合、つまり、一定時間経っても決定ボタン38が操作されなかったようなときには、コンピュータ12は、図8のステップS17と同様にして、次のステップS41において、バッファリング距離、つまり半径Rを大きくする。その後、ステップS43において、その対象点探索範囲に入る対象点が、先のステップS33での最近隣のもの以外に、少なくとも1つ存在するかどうか判断する。つまり、新たな探索範囲に新たな対象点が1つ以上存在するかどうか判断する。このステップS43で“NO”のときには、ステップS45において、先のステップS17と同様にして、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を拡大すべく基準点からの半径Rを大きくする。
【0083】
一方、ステップS43で“YES”を判断したとき、コンピュータ12は次のステップS47で、先のステップS15と同様に、半径Rの範囲つまり対象点探索範囲内に対象点がN個以上存在するかどうか判断する。ステップS47で“YES”を判断したとき、続くステップS49で、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を縮小すべく基準点からの半径Rを小さくする。なお、ステップS45およびS49での半径の具体的な増減値についての考え方は、ステップS17、S19に関連して説明したとおりである。同様に、ステップS47での「N個」は任意に定め得る数である。
【0084】
このようにして、基準点から半径Rの対象点探索範囲内にステップS33での対象点以外に1つ以上かつたとえば5つ以下の対象点があるとき、ステップS47で“NO”が判断され、次のステップS51に進む。その後、ステップS53、S55およびS57が実行されるが、これらのステップS53‐S57は先に図8で説明したステップS23‐S27と同様であるので、ここでは、重複する説明は省略する。
【符号の説明】
【0085】
10 …データベース合装置
12 …コンピュータ
14 …操作装置
16 …モニタ
18 …内部メモリ
22 …第1データベース
24 …第2データベース
26 …地図データベース
28 …GUI
32 …項目選択パネル
34 …リスト表示パネル
【技術分野】
【0001】
この発明はデータベース統合装置に関し、たとえば住民基本台帳と家屋課税台帳のように異なる体系で作成したデータベースの項目どうしを統合する、新規なデータベース結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基礎自治体で使用する住民基本台帳と家屋課税台帳のような各々の台帳は個々に管理されていて、横断的な利用を前提としていないため、「リンクキー」のような両台帳の個々の項目を統合するための仕組みはない。
【0003】
一方、たとえば自治体が災害による被害状況を把握して、被災者支援業務を長期的に実践するためには、災害が発生して初めて業務遂行上必要となる情報を包括するための被災者に関する被災者台帳(被災した「家屋(所在地)」、その「被害程度」、そこに住む「住人」に関する情報を1つのテーブルに集約したもの。)を新たに作り上げる必要がある。このような被災者台帳は迅速に作成する必要があり、そのためには、既存の台帳を利用するのが効率的である。しかしながら、たとえば住民基本台帳および家屋課税台帳はそれぞれ異なる体系で作成されているので、元々それらの横断的利用を前提としていない。
【特許文献1】特開2008‐129777号公報[G06Q 50/00]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ともにGISデータを含む2つのデータベースを連係させるだけであり、横断的利用の仕組みを持たない台帳やデータベースの統合には適用できない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、データベース統合装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースを結合ないし統合できる、データベース統合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベース、複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベース、第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを第1データベースから選択した1の項目と統合する統合手段を備える、データベース統合装置である。
【0009】
第1の発明では、第1データベース(22:実施例において対応または相当する参照符号。以下、同様。)には、少なくとも1つの項目が、その項目番号と、住所、名前、地図データ(経緯度)などを含んで格納されている。第2データベース(24)には、複数の項目が、各項目番号と、住所、名前、地図データ(経緯度)などを含んで格納されている。範囲画定手段(12:S9,S17,S19;S41,S45,S49)は、第1データベースから選択した1つの項目の経緯度が示す地図上の場所を基準点とし、その基準点を包含する所定の大きさの対象点探索範囲を画定する。実施例においては、コンピュータ12が実行するたとえばステップS9(S33)で、基準点を中心とする対象点探索範囲の初期値を設定し、その後必要に応じて、コンピュータ12が実行するたとえばステップS17、S19(S41、S45、S49)において対象点探索範囲を拡張または縮小(つまりバッファ距離を増減)する。つまり、これらのステップが対象点探索範囲画定手段を構成することになる。そして、この対象点探索範囲に1つ以上の対象点が存在する場合、統合手段(12:S25,S29,S39,S55,S29)は、そのうちの1つの対象点を示す第2データベースの項目を第1データベースから選択している項目と統合する。実施例においては、コンピュータ12が実行するステップS25(S39またはS55)で、基準点と結合されるべき対象点が特定され、たとえばステップS29(図7)において、特定された対象点と基準点が紐付けされて統合データベースに登録される。つまり、これらのステップが統合手段を構成することになる。
【0010】
第1の発明によれば、空間情報、たとえば地図(経緯度)データを用いることによって、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、範囲画定手段は対象点探索範囲を可変的に画定する、データベース統合装置である。
【0012】
第2の発明では、対象点探索範囲を可変的に、つまり大きくしたり小さくしたりして設定できるので、対象点探索範囲に入る対象点の数を適宜数に調整することができる。つまり、対象点とは、第2データベースの各項目の経緯度が示す地図上の場所のことを意味し、対象点探索範囲に2つ以上の対象点が入っているときには、どれか1つの対象点を特定しなければならない。どれか1つの対象点を特定する必要があるので、あまり多くの対象点が当該範囲に入っていると、特定する際に誤認する可能性がある。対象点探索範囲を可変的に画定するようにすれば、対象点探索範囲に入る対象点の数を調整でき、上記のような誤認を可及的抑制することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、基準点および対象点探索範囲に含まれる対象点を地図上で表示する地図表示手段をさらに備える、データベース統合装置である。
【0014】
第3の発明では、地図表示手段(12,26:S21;S35,S51)によって、基準点および対象点を地図上で表示するようにしているので、特定の1つの対象点を容易に特定できる。つまり、上述のように、対象点探索範囲に2つ以上の対象点が入っているときには、どれか1つの対象点を特定しなければならないが、基準点や対象点を地図上に表示すると、個々の対象点を目視によって確認できるので、容易に特定できるとともに、誤認の可能性を減じることができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明に従属し、GUIを表示するGUI表示手段をさらに備え、地図表示手段は、GUIの一部に地図を表示する、データベース統合装置である。
【0016】
第4の発明では、GUI表示手段(12,444:S1)がGUIを表示し、それの一部、たとえば地図表示領域(36)に地図表示手段によって地図を表示する。つまり、GUIに地図が表示されるので、オペレータや当事者は、データベースの項目と併せて基準点や対象点でき、個々の対象点を確認し易い。
【0017】
第5の発明は、第4の発明に従属し、GUIは、第1データベースから選択した項目を表示する項目選択パネルおよび対象点を基準点から近い順に一覧表示するリスト表示パネルを含む、データベース統合装置である。
【0018】
第5の発明では、統合しようとしている項目を項目選択パネル(32)に表示することによって明確に確認できる。また、リスト表示パネル(34)に基準点から近い順に対象点を表示すれば、対象点が2以上対象点探索範囲に含まれるときに、1の対象点を特定する目安となる。
【0019】
第6の発明は、少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベースおよび複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベースを統合するデータベース統合装置のコンピュータによって実行され、コンピュータを、第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを第1データベースから選択した1の項目と統合する統合手段として機能させる、データベース統合プログラムである。
【0020】
第6発明では、データベース結合装置(10)のコンピュータ(12)が、第1データベース(22)および第2データベース(24)を統合するために、統合プログラム(422)を実行する。統合プログラムは、そのコンピュータを対象点探索範囲画定手段(S9,S17,S19;S41,S45,S49)として機能させ、この範囲画定出願は、第1データベースから選択した1つの項目の経緯度が示す地図上の場所を基準点とし、その基準点を包含する所定の大きさの対象点探索範囲を画定する。統合プログラムはさらに、コンピュータを統合手段(S25,S29,S39,S55,S29)として機能させ、その統合手段は、そのうちの1つの対象点を示す第2データベースの項目を第1データベースから選択している項目と統合する。
【0021】
第6の発明によっても、第1の発明と同様に、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、異なる体系で作成された2またはそれ以上のデータベースの各項目を効果的に統合することができる。
【0023】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明のデータベース統合装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図2は図1実施例の第1データベースの一例を示す図解図である。
【図3】図3は図1実施例における第2データベースの一例を示す図解図である。
【図4】図4は図1実施例のデータベース統合装置での統合動作の概要を示す図解図である。
【図5】図5は図1実施例におけるGUIの一例を示す図解図である。
【図6】図6は図1実施例の内部メモリ(RAM)のメモリマップの一例を示す図解図である。
【図7】図7は図1実施例における動作の一部を詳細に示すフロー図である。
【図8】図8は図7実施例における対象点探索動作を詳細に示すフロー図である。
【図9】図9は図5に示すGUIを用いて統合操作を実行するときの検索画面の構成の一例を示す図解図である。
【図10】図10は図8実施例において基準点および対象点を地図上に表示した地図表示領域の一表示例を示す図解図である。
【図11】図11は図1実施例において統合した結果の統合データベースの一例を示す図解図である。
【図12】図12はこの発明に従ったデータベース統合装置での他の統合動作の概要を示す図解図である。
【図13】図13は図7実施例における対象点探索動作の他の例を詳細に示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に示すこの発明の一実施例のデータベース統合装置10は、コンピュータ12を含み、このコンピュータ12は、デスクトップ型、ノート型などのパソコンやワークステーションなど任意のコンピュータであってよく、マウスやキーボード(ともに図示せず)を含む操作装置14および画像表示のためのモニタ16を付属的に備える。コンピュータ12はさらに、ROMやRAMを含む内部メモリ18を有する。コンピュータ12にはさらに、必要に応じて作成した統合データベースなどを印刷発行するプリンタ20が設けられる。
【0026】
内部メモリ18には、図示しないプログラム媒体(たとえばDVDやCDあるいは半導体メモリ)から読み出したプログラムを展開して設定しておくプログラム領域42およびデータを一時的に記憶するデータ記憶領域44(ともに図6)が設けられる。
【0027】
コンピュータ12には、第1データベース22、第2データベース24および地図データベース26が連係される。これらのデータベース22‐26は、コンピュータ12に直接接続されてもよいが、ネットワーク(図示せず)を通してコンピュータ12に接続されるようにしてもよい。
【0028】
第1データベース22は、たとえば図2に示すようなデータベースであり、一例として、図2の例では住民基本台帳(以下、「住基台帳」と略称する。)が想定されている。ただし、この具体例に限定されるものではない。第1データベース22にはたとえば、複数の項目番号1-id1,1-id2,1-id3,1-id4,1-id5,…の各々に、住所1-address1,1-address2,1-address3,1-address4,1-address5,…、氏名1-name1,1-name2,1-name3,1-name4,1-name5,…および空間情報または地図データとしての経緯度1-x1y1,1-x2y2,1-x3y3,1-x4y4,1-x5y5,…などが設定されている。
【0029】
第2データベース24は、たとえば図3に示すようなデータベースであり、一例として図3の例では家屋課税台帳(以下、「課税台帳」と略称する。)が想定されている。ただし、この具体例に限定されるものではない。第2データベース24にはたとえば、複数の項目番号2-id1,2-id2,2-id3,2-id4,2-id5,…の各々に、住所2-address1,2-address2,2-address3,2-address4,2-address5,…、氏名2-name1,2-name2,2-name3,2-name4,2-name5,…および空間情報または地図データとしての経緯度2-x1y1,2-x2y2,2-x3y3,2-x4y4,2-x5y5,…などが設定されている。
【0030】
よく知られているように、住基台帳と課税台帳とは個別の必要性から個別の思想、体系で作成されているものである。住基台帳は、いわば住民票の集合ともいえるもので、個人を管理するためのデータベースである。住所は、街区符号、基礎番号、居住番号からなる住居表示で表される。そして、個人番号(図2の1‐IDに相当する。)、世帯番号、家屋番号、現住所(図2の住所1-addressに相当する。)、世帯主名(図2の氏名1-nameに相当する。)などの所要の項目を含む世帯情報のデータベースである。
【0031】
このような住基台帳には通常、住所地を示す地図データ、つまり、図2の経緯度が個人番号(項目)ごとに設定されている。
【0032】
もし、第1データベース22に項目番号に対応する地図データが含まれていない場合には、たとえばジオコーディング(geocoding)ないしアドレスマッチング(address matching)と呼ばれる手法を利用して、各項目の地図データすなわち経緯度を求めて第1データベース22に格納しておくようにする。ジオコーディングやアドレスマッチングは、いずれも、住所辞書(住所文字列と座標情報(経緯度など)を対応させたテーブル)を用いて、地名、住所が示す場所に対して、地理座標(典型的には経緯度)を与える手法であり、適宜のソフトウェアを利用して自動的に実行することもできる。この実施例では、後述するように、アドレスマッチングプログラムを内部メモリ18に展開できるようにしている。
【0033】
課税台帳は、家屋を管理するためのものであり、登記簿に登記されている家屋について、家屋番号(図2の1‐IDに相当する。)毎に、所有権の登記名義人の住所(図3の住所2-addressに相当する。)および氏名又は名称(図3の氏名2-nameに相当する。)ならびにその家屋の基準年度の価格または比準価格等の家屋情報のデータベースである。なお、課税台帳においては、住所は建物の場所を示すものであり、上述の住居表示とは全く異なる、地番表記を採用している。したがって、例示した住基台帳と課税台帳とは体系が異なるといえる。
【0034】
この発明が統合または結合しようとする2つまたはそれ以上のデータベースの関係は、上述のように各データベースの体系は違うが、両方のデータベースは、互いに関連付けられるまたは互いに結合することができる、もしくは少なくとも互いに関連あると推定できる項目を含んでいる必要がある。たとえば第1データベース22が住基台帳で第2データベース24が課税台帳の場合、個人である住民とその住民が居住または使用している家屋とは互いに関連付けられ得ることは明白である。
【0035】
なお、課税台帳には地図データは含まれていない場合が多く、その場合には、上述のようにたとえばジオコーディングまたはアドレスマッチングによって各家屋番号の地図データすなわち経緯度を求めて第2データベース24に格納しておくようにする。ただし、建物範囲は基本的には面積のあるポリゴンで表されるので、アドレスマッチングで特定する経緯度は、当該建物範囲の内心点の経緯度とする。重心だとすると、建物範囲をはみ出た位置になってしまうことがあるからである。
【0036】
この実施例の地図データベース26は、道路、鉄道、建物、建物の戸別名称、行政界などの項目を含み、これらの情報は階層(レイヤ)毎にベクトル形式で、たとえば日本測地系での経緯度データ、基本属性情報(戸別建物名称に付加した個別キー情報や住所情報)とともに、データ化されている。そのため必要なレイヤを選択することにより、用途に応じた地図表現が可能である。
【0037】
なお、この実施例では、アドレスマッチングプログラムの実行に必要な上述の住所辞書もこの地図データベース26に設定している。
【0038】
図4を参照して概略的に説明すると、図1実施例のデータベース統合装置10では、まず、第1データベース22から1つの項目、たとえば1-id2を選択し、それに付属的に設定されている経緯度1-x2y2が示す点を基準点として設定する。この基準点を中心として半径Rの円を対象点探索範囲として設定する。一方、統合対象である第2データベース24から全部または適宜数の項目を選択し、それらに付属的に設定されている経緯度たとえば2-x2y2および2-x3y3が示す2つの対象点が半径Rの円内に入るとき、これらの対象点を結合対象候補とする。そして、各対象点を基準点から近い順にリスト表示し、同時に地図上で、基準点と併せて対象点を表示する。
【0039】
その後、オペレータまたは当事者がその地図上の基準点および対象点の位置を確認して、図4の実施例でいえば、どちらの対象点が正しく第1データベース22の項目1-id2に対応付けられるべきかを決定する。決定された対象点を示す第2データベースの項目が、第1データベースでそのとき選択されている項目に結合または統合される。
【0040】
なお、実施例では、基準点を中心とする半径Rの円形の対象点探索範囲内に入る点を対象点としているので、対象点探索範囲の大きさを容易に変更できるという利点がある。しかしながら、対象点探索範囲の形状は円形に限るものではなく、たとえば基準点を中心とする矩形その他の形状であってよい。つまり、対象点探索範囲は基準点を包含する任意の形状の地図上の範囲である。
【0041】
図1実施例のデータベース統合装置10を用いて図4で示す要領で第1および第2データベース22および24を統合するためのGUIの一例が図5に図解される。図5に示すGUI(Graphical User Interface)28は、モニタ16に表示される。
【0042】
GUI28は、左側の検索画面30と右側の地図表示領域36を含み、検索画面30には、項目選択パネル32およびリスト表示パネル34が上から順に形成される。項目選択パネル32には基準となるデータベース、この実施例では第1データベース22を一覧表示し、その第1データベース22の任意の項目1-idiをたとえばダブルクリックで選択または指定できるようにされている。
【0043】
なお、基準となるデータベースとしては、統合すべき2以上のデータベースのうち、最も精度の高い空間情報または地図データつまり経緯度を有するものを用いる。実施例のように、第1データベース22が住基台帳であり、第2データベース24が課税台帳だとすると、住基台帳の方が格段に精度の高い空間情報を持っているので、この場合には、基準となるデータベースとして第1データベース22を用いる。この発明は任意のデータベースどうしの統合装置として利用できるが、原則的には、統合しようとするデータベースのうち空間情報ないし地図データすなわち経緯度の精度が最も高いと目されるものを基準データベースとして利用する。
【0044】
リスト表示パネル34には、図4を参照して概説したように、基準点を中心とする半径Rの対象点探索範囲内に存在する1または複数の対象点を示す第2データベース24内の項目を、基準点からの距離が近い順にリスト形式で表示するための表示領域である。図4の実施例でいえば、2つの対象点がこのリスト表示パネル34に表示される。
【0045】
地図表示領域36は、地図データベース26から読み出した地図データに従って上述の基準点および対象点を地図とともに表示するための領域である。この地図表示領域36に表示された場所や建物の平面形状などを参照して、オペレータまたは当事者が最終的に基準点に対応する対象点を特定することができる。
【0046】
なお、GUI28の検索領域30の下部には、決定ボタン38がソフトボタンとして表示される。この決定ボタン38は、基準点に対応する対象点を決定する際にたとえばマウス(図示せず)によって操作される。
【0047】
図6に示す内部メモリ18のメモリマップに従えば、内部メモリ18はプログラム領域42とデータ記憶領域44を含み、プログラム領域42には、OSなどのシステムプログラムの他、上で述べたアドレスマッチングプログラム421および統合プログラム422を含む。統合プログラム422は図1実施例において統合処理を実行するためのプログラムであり、たとえば図7および図8さらには図13のフローチャートに示すような動作手順を規定する。
【0048】
データ記憶領域44は、地図データベース26から読み出した地図データを一時的に記憶しておくための地図データ領域441を含む。ただし、地図データ領域441には、アドレスマッチングプログラム421で利用する住所辞書も併せて記憶しておく。データ記憶領域44はさらに、図2および図3に示すような第1データベース22および第2データベース24の各々の全部のまたは必要な一部のデータを読み出して一時的に記憶しておくための第1データベース記憶領域442および第2データベース記憶領域443を含む。データ記憶領域44のGUI表示データ領域444は、先に説明したGUI28を表示するための画像データなどを記憶しておくための領域である。バッファ445は、後述のように対象点を基準点からの距離に従ってバッファリングするためのバッファである。ここで、バッファリングとは、GISにおいて、対象物から一定距離内にある部分を抽出すること、つまり、実施例でいえば、対象点探索範囲に含まれる対象点を抽出することをいう。
【0049】
データ記憶領域44にはさらに、統合データベース446が形成される。この統合データベース446は、第1データベース22の項目と第2データベース24の対応する項目を統合または結合した結果を記憶するための記憶領域である。
【0050】
図7は図1実施例の動作を説明するためのフローチャートであり、その最初のステップS1では、コンピュータ12(図1)は、GUI表示データ領域442から読み出したGUI画像データに基づいて、図5に示すようなGUI28をモニタ16上に表示する。このときのGUI28の検索画面30の一例が拡大されて図9に示される。
【0051】
ついで、ステップS3において、コンピュータ12は、検索領域30の項目選択パネル32に、第1データベース記憶領域442(図7)に記憶している第1データベース22のデータの全てのまたは必要な一部のデータを図9に示すように一覧表示する。
【0052】
ステップS5において、この項目選択パネル32に表示した第1データベース22内のどれかの項目の選択を確定することによって、基準点を決定する。オペレータは、たとえば項目選択パネル32の右端に付属するスクロールバーを操作して統合しようとしている項目を探し出し、たとえばその項目の行をダブルクリックすることによって、当該項目の選択を確定させることができる。項目が確定されると、その項目に含まれる経緯度が示す場所を基準点として決定する。
【0053】
続くステップS7において、コンピュータ12は、ステップS5で決定した基準点を含む対象点探索範囲を画定して、この対象点探索範囲に包含される第2データベース24の項目が示す対象点を探索する。このステップS7は具体的には、図8のような処理手順を含む。
【0054】
図8の最初のステップS9において、コンピュータ12は、図7のステップS5で決定した基準点を中心にして所定半径R(図4)のバッファ445(図6)を作成する。このときの半径Rは予めデフォルトで設定している地図上での距離、たとえば40mとする。つまり、このステップS9で、コンピュータ12は、最初の対象点探索範囲を作成する。
【0055】
次のステップS11で、コンピュータ12は、第2データベース記憶領域443に記憶している第2データベース24の各項目の経緯度が示す点の、基準点からの距離を計算し、上記半径Rの対象点探索範囲内に入る点、つまりバッファ内の対象点を特定する。たとえば、第2データベース24の各項目に付属する地図データ(経緯度)に基づいて基準点からの地図上の各距離を計算し、その地図上の各距離がたとえば40m、すなわち半径Rより長いか短いか判断し、半径Rより短い距離を示す点が対象点として特定される。
【0056】
そして、次のステップS13において、その対象点探索範囲に入る対象点が1つ以上存在するかどうか判断する。
【0057】
ステップS13で“YES”と判断すると次のステップS15に進み、“NO”と判断すると、ステップS17に進んで、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を拡大すべく基準点からの半径Rを大きくする。そのときの半径Rをたとえば、10m大きくする。上記の初期値がたとえば40mであるとすると、このステップS17ではその半径Rをたとえば50mに変更して、先のステップS9に戻る。そして、ステップS9‐S13を繰り返し実行する。
【0058】
一方、ステップS13で“YES”を判断したとき、コンピュータ12は次のステップS15で、半径Rの範囲つまり対象点探索範囲内に対象点がN個以上存在するかどうか判断する。対象点がN個以上と余りに多すぎる場合には、後述のステップS23での対象点の決定の際にオペレータもしくは当事者に迷いを生じさせる可能性がある。そこで、この実施例では、対象点が余りに多数であるときには、つまりステップS15で“YES”を判断したとき、続くステップS19で、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を縮小すべく基準点からの半径Rを小さくする。そのときの半径Rより所定距離、たとえば5mずつ小さくする。実施例では上述のように、対象点が1つもないときにはステップS17で半径Rを10mずつ大きくする。したがって、もしステップS19で10mずつ小さくするように設定したとすると、ステップS17とステップS19とで半径Rの増減が相殺されてしまい、効果的な半径Rの設定ができなくなる。そこで、実施例では、ステップS19では、たとえば5mずつ小さくするようにしている。
【0059】
ただし、ステップS17で5mずつ大きくし、ステップS19で10mずつ小さくすることも考えられる。つまり、ステップS15およびS19での半径Rの増減値(の絶対値)は同じでないことが条件で、どちらが大きくても構わない。また、「N個」は任意に定め得る数であるが、たとえば5個と決めることができる。
【0060】
このようにして、基準点から半径Rの対象点探索範囲内に1つ以上かつたとえば5つ以下の対象点があるとき、ステップS15で“NO”が判断され、次のステップS21に進む。
【0061】
ステップS21では、先のステップS11で計算した各対象点の基準点からの距離に基づいて各対象点を順序化して、図9に示すようにリスト表示パネル34にリスト表示する。図4で概説した例示であれば半径Rの対象点探索範囲内に2つの対象点が存在するので、このリスト表示パネル34には図9で例示するようなリスト表示がなされる。つまり、図9の実施例では、項目選択パネル32で選択した項目1-id2について、この項目1-id2が示す基準点に最も近い対象点を示す項目は2-id3であり、その次に近い対象点を示す項目は2-id2であることがわかる。もし、このリスト表示パネル34に多くの対象点が表示される場合、リスト表示パネル34の右端に付属するスクロールバーを操作して対象点を探し、その行をクリックすることで、対象点を選択することができる。
【0062】
ステップS21ではさらに、図10に示すように、リスト表示パネル34に一覧表示した対象点を、基準点とともに、地図表示領域36に地図データベース26の地図データを利用して表示した地図上に、プロットして表示する。これは、オペレータまたは当事者が基準点や対象点の場所を地図上で目視によって確認できるようにするためである。
【0063】
その後、ステップS23で、コンピュータ12は検索領域30下部に設定されている決定ボタン38が操作されたかどうか判断する。つまり、このステップS23で、基準点に対応する対象点が選択されかつ確定されたかどうか判断する。ただし、項目選択パネル32で項目を選択する場合と同様に、リスト表示パネル34において該当する対象点の行をダブルクリックすることによって、対象点を確定させるようにしてもよい。この場合には、当然、決定ボタン38を省略できる。
【0064】
オペレータまたは当事者が最終的に対象点を確定させる際、図10のような地図表示が大いに役立つ。図10の実施例では、地図上には道路などとともに建物形状が併せて表示されるので、図10に示すように基準点(たとえば住基台帳が示す住所が示す)に接近した2つの対象点(たとえば課税台帳が示す住所が示す)のどちらが、当事者の建物形状を正しく示しているかは容易に判別できるので、オペレータまたは当事者が最終的に対象点を確定させるときの誤認を可及的防止できる。特に、図10で示すように1つの土地区画に2つの建物が存在する場合、たとえば親の家と子供の家が同じ敷地内に建っている場合などに有効である。ただし、これは対象点探索範囲に1つだけしか対象点が含まれないときにでも有効である。この場合には、当然、その対象点を示す第2データベース24の項目がそのとき項目選択パネル32で選択している第1データベース22の項目と紐付けされるべきであるが、地図表示領域36において建物形状や道路などとの関係で基準点と対象点とを目視確認できれば、そのような項目の結合が一層正しく行なわれ得る。
【0065】
なお、図10において、基準点や対象点を目立つ色で表示したりハイライト表示すると、基準点や対象点を探し易い。
【0066】
そして、ステップS23で“YES”が判断されたときには、コンピュータ12は、ステップS25で基準点に対応する対象点を特定するが、“NO”を判断したときには、ステップS27において、たとえば地図表示領域36に表示している地図に重畳するような態様で、対象点を特定できないことをオペレータや当事者に通知する。その後、図7のメインルーチンにリターンする。
【0067】
図7のステップS29では、図8のステップS25で対象点を特定することによって互いに関連付けられた第1データベース24の項目と第2データベース24の項目とを、たとえば図11に示すように、統合データベース446に登録する。
【0068】
このようにして、第2データベース24が含む項目の空間情報(経緯度)が示す対象点が、第1データベース22から選択した項目が示す経緯度(空間情報)が示す基準点を含む地図上の一定範囲つまり対象点探索範囲内に存在するかどうかに応じて、第1データベース22および第2データベース24の項目どうしを結合または統合するのである。ただし、実施例では、その前提として、オペレータまたは当事者が、第1データベース22から選択した基準点を包含する地図上の所定の対象点探索範囲内に存在する当該対象点が、基準点を示す第1データベース22の項目に対応することを地図上で確認するようにしている。
【0069】
図11の例では、第1データベース22の項目1-IDと第2データベース24の項目2-IDとの対応関係が統合データベース446に格納される。したがって、この統合データベース446が第1データベース22および第2データベース24を互いに結びつけるための手段の役目を果たす。つまり、図11を参照すれば、第1データベース22の項目1-id1は第2データベース24の項目2-id1と対応するが、第1データベース22の項目1-id2は第2データベース24の項目2-id2ではなく項目2-id3と対応することなどがわかる。
【0070】
上述の実施例では2つのデータベースを統合する場合について説明したが、この発明を利用すれば、3つ以上のデータベースを同時に統合することも可能である。
【0071】
図12に示す例では、第1データベースおよび第2データベースに加えて第3データベースを用い、たとえば第1データベースで選択した項目が示す基準点を含む対象点探索範囲内に第2データベースの項目が示す第1の対象点と第3データベースの項目が示す第2の対象点とが入る場合、第2および第3データベースの該当の項目が第1データベースからそのとき選択した項目と結合されるべきであることが分かる。
【0072】
なお、図12の例に図8のフロー図を適用する場合、ステップS13では、第2データベースおよび第3データベースのそれぞれの対象点が少なくとも1つ含まれているかどうか判断することになる。ただし、ステップS15では第2データベースの対象点か第3データベースの対象点のどちらかがN以上あれば“YES”を判断するようにしてもよいし、その両方の対象点がともにN個以上あるとき“YES”を判断するようにしてもよい。
【0073】
さらに、上の説明では、第1データベースが住基台帳で第2データベースが課税台帳の場合を例に挙げて説明したが、具体的なデータベースはこれに限ることはない。
【0074】
また、実施例では第1データベース22も第2データベース24も複数の項目を含むものとして説明したが、基準とすべきデータベース、たとえば第1データベースには1つの項目しか含まれていなくてもよい。この場合には、第1データベースのその1つの項目が第2データベースに含まれている複数の項目のどれかに対応するかを探索することができる。その意味で、この発明のデータベース統合装置は、たとえば年金台帳のどれが特定の個人のものかを探索するシステムや、金融機関における所謂「名寄せ」を行なうシステムとして利用できる。
【0075】
前者の場合、個人の住所またはその個人が所属していた企業の住所に基づいて基準点を定め、年金台帳の住所が示す対象点がその基準点を包含する対象点探索範囲に入るかどうか判断し、最終的には個人または企業が地図上で確認することによって、年金台帳の突合を行なえる。
【0076】
後者の場合、預金者の住所と銀行の預金者データベースが示す住所から、同様にして両者を結合することができる。
【0077】
なお、「名寄せ」の場合、2以上の金融機関の預貯金者データベースを用いて、実施例のような手順で1つの金融機関の預貯金者データベースから選択した1人の預貯金者と他の金融機関の預貯金者データベースに含まれる預貯金者との同一性を判断することができる。
【0078】
上で説明した図8の実施例では、基準点を決定した後にバッファリングする際に、半径Rをまずデフォルト値に設定し、その後対象点があるかどうか、多すぎないかどうかなどでその半径Rを調整するようにした。これについては、図13に示すように変更することも可能である。
【0079】
図13は図7のステップS7の図8実施例に代わる実施例であるが、まず、ステップS31においてコンピュータ12は、図7のステップS5で決定した基準点を用いて、その基準点から各対象点までの距離を計算する。
【0080】
そして、ステップS33において、コンピュータ12は、この計算した距離に基づいて、基準点に最も接近した対象点、つまり最近隣の対象点までの距離を半径とするバッファリングを行なう。したがって、このときにはその距離Rのバッファリング領域内には1つの対象点が包含される。コンピュータ12はついで、この1つの対象点を、たとえば図10に示す地図表示領域36上に重畳的に表示する(ステップS35)。
【0081】
次のステップS37で、先の図8のステップS23と同様にして、コンピュータ12は検索領域30の下部に設定されている決定ボタン38が操作されたかどうか判断する。つまり、このステップS37で、基準点に対応する1つの対象点が選択されかつ確定されたかどうか判断する。“YES”の場合、先のステップS25と同様にして対象点を特定した後、図7のステップS29にリターンする。
【0082】
ステップS37で対象点が決定できなかった場合、つまり、一定時間経っても決定ボタン38が操作されなかったようなときには、コンピュータ12は、図8のステップS17と同様にして、次のステップS41において、バッファリング距離、つまり半径Rを大きくする。その後、ステップS43において、その対象点探索範囲に入る対象点が、先のステップS33での最近隣のもの以外に、少なくとも1つ存在するかどうか判断する。つまり、新たな探索範囲に新たな対象点が1つ以上存在するかどうか判断する。このステップS43で“NO”のときには、ステップS45において、先のステップS17と同様にして、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を拡大すべく基準点からの半径Rを大きくする。
【0083】
一方、ステップS43で“YES”を判断したとき、コンピュータ12は次のステップS47で、先のステップS15と同様に、半径Rの範囲つまり対象点探索範囲内に対象点がN個以上存在するかどうか判断する。ステップS47で“YES”を判断したとき、続くステップS49で、コンピュータ12は、バッファリング距離すなわち対象点探索範囲を縮小すべく基準点からの半径Rを小さくする。なお、ステップS45およびS49での半径の具体的な増減値についての考え方は、ステップS17、S19に関連して説明したとおりである。同様に、ステップS47での「N個」は任意に定め得る数である。
【0084】
このようにして、基準点から半径Rの対象点探索範囲内にステップS33での対象点以外に1つ以上かつたとえば5つ以下の対象点があるとき、ステップS47で“NO”が判断され、次のステップS51に進む。その後、ステップS53、S55およびS57が実行されるが、これらのステップS53‐S57は先に図8で説明したステップS23‐S27と同様であるので、ここでは、重複する説明は省略する。
【符号の説明】
【0085】
10 …データベース合装置
12 …コンピュータ
14 …操作装置
16 …モニタ
18 …内部メモリ
22 …第1データベース
24 …第2データベース
26 …地図データベース
28 …GUI
32 …項目選択パネル
34 …リスト表示パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベース、
複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベース、
前記第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および
前記第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が前記対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを前記第1データベースから選択した前記1の項目と統合する統合手段を備える、データベース統合装置。
【請求項2】
前記範囲画定手段は前記対象点探索範囲を可変的に画定する、請求項1記載のデータベース統合装置。
【請求項3】
前記基準点および前記対象点探索範囲に含まれる対象点を地図上で表示する地図表示手段をさらに備える、請求項1または2記載のデータベース統合装置。
【請求項4】
GUIを表示するGUI表示手段をさらに備え、
前記地図表示手段は、前記GUIの一部に前記地図を表示する、請求項3記載のデータベース統合装置。
【請求項5】
前記GUIは、前記第1データベースから選択した項目を表示する項目選択パネルおよび前記対象点を前記基準点から近い順に一覧表示するリスト表示パネルを含む、請求項4記載のデータベース統合装置。
【請求項6】
少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベースおよび複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベースを統合するデータベース統合装置のコンピュータによって実行され、前記コンピュータを、
前記第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および
前記第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が前記対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを前記第1データベースから選択した前記1の項目と統合する統合手段
として機能させる、データベース統合プログラム。
【請求項1】
少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベース、
複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベース、
前記第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および
前記第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が前記対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを前記第1データベースから選択した前記1の項目と統合する統合手段を備える、データベース統合装置。
【請求項2】
前記範囲画定手段は前記対象点探索範囲を可変的に画定する、請求項1記載のデータベース統合装置。
【請求項3】
前記基準点および前記対象点探索範囲に含まれる対象点を地図上で表示する地図表示手段をさらに備える、請求項1または2記載のデータベース統合装置。
【請求項4】
GUIを表示するGUI表示手段をさらに備え、
前記地図表示手段は、前記GUIの一部に前記地図を表示する、請求項3記載のデータベース統合装置。
【請求項5】
前記GUIは、前記第1データベースから選択した項目を表示する項目選択パネルおよび前記対象点を前記基準点から近い順に一覧表示するリスト表示パネルを含む、請求項4記載のデータベース統合装置。
【請求項6】
少なくとも1つの項目とそれの空間情報を有する第1データベースおよび複数の項目とそれらの空間情報を有する第2データベースを統合するデータベース統合装置のコンピュータによって実行され、前記コンピュータを、
前記第1データベースから選択した1の項目の空間情報が示す基準点を包含する対象点探索範囲を画定する範囲画定手段、および
前記第2データベースの1または2以上の項目の空間情報が示す対象点が前記対象点探索範囲に包含されるとき、当該1または2以上の項目の1つを前記第1データベースから選択した前記1の項目と統合する統合手段
として機能させる、データベース統合プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−174074(P2012−174074A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36592(P2011−36592)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(511048177)ESRIジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(511048177)ESRIジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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