説明

データ伝送システム

【課題】移動している車両に大量のデータを効率よく伝送できる安価なデータ伝送システムを提供する。
【解決手段】データを保持するセンタ300と、道路脇に設置された路側機400、410、420と、センタに車両情報を送信するとともに、路側機との間で通信を行う車両200とを備え、センタは、車両から受信した車両情報に基づき該車両が走行する経路を予測し、該予測した経路に設置された路側機に自己が保持しているデータを送信して保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に大量のデータを伝送するデータ伝送システムに関し、特にデータ伝送を効率よく行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(Hard Disk Drive)レコーダに代表されるようなテレビジョン放送を長時間録画するための機器、または、テレビジョン放送の録画に限らず映像および音声といったマルチメディアデータを汎用的に蓄積するための機器が普及してきている。これらの機器の記憶媒体として、多くの場合、HDDが使用されているが、HDDの低価格化および大容量化に伴って、HDDに蓄積される、マルチメディアデータが格納されたファイルのサイズも大きくなってきている。
【0003】
また、このような機器の多くはネットワークへ接続できるようになっており、家庭内のネットワークに接続されたホームサーバに蓄積されているマルチメディアデータを他の機器に伝送して再生できるようになっている。
【0004】
このような現状において、家庭内に限らず、車両内においてもマルチメディアデータを再生して閲覧したいという要求が増えてきている。ところで、車両は移動するものであるため、車両内でマルチメディアデータを再生して閲覧するためには、無線通信によりマルチメディアデータを車両に伝送する必要がある。現時点で無線通信のインフラストラクチャとして最も普及している携帯電話は、通信可能な範囲は広いものの回線のデータ伝送速度が遅く、上述したホームサーバに蓄積された大きなファイルサイズのマルチメディアデータを伝送するためには長時間を必要とする。
【0005】
また、高速な無線通信を可能とするインフラストラクチャとして、数Mbpsの速度で無線通信を行うことができるDSRC(Dedicated Short Range Communication)を代表とする専用狭域通信が存在するが、DSRCの通信エリアは数メートルから数百メートル程度の範囲であり狭い。このため、上述したマルチメディアデータを車両に伝送しようとしても、通信エリアが狭く、しかも車両は移動するために、データ伝送中に車両が通信エリア外に出てしまい、全てのマルチメディアデータを伝送できない場合が発生するという問題がある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、道路脇に設置された複数の路側機の各々に、車両に伝送すべきデータを分割して一時的に記憶しておき、車両が路側機と通信できる領域に入った場合に、路側機は、一時的に記憶している分割されたデータを車両に伝送し、この伝送を車両が路側機を通過する毎に繰り返すことによって大きなファイルサイズのデータを車両へ伝送する技術が存在する。
【0007】
例えば、特許文献1は、スポットアクセスを前提としながらネットワークトラフィックの問題の解決に有効な無線通信システムを開示している。この無線通信システムにおいては、検知局と局地基地局との間隔は、車載端末が検知局にて検知されてから局地基地局の通信エリアに到達する間に、局地基地局から車載端末への情報伝送が可能なように設定されている。また、各局地基地局は、通信エリアの所定距離手前において車載端末の端末局IDを第1のトリガとして検知し、また、通信エリアの境界において車載端末が通信エリアへ到来したことを第2のトリガとして検知する。これら両トリガの検知位置間隔は、複数の車載端末が存在する場合であっても、検知する車載端末の順番の入れ替わりが発生しないような近接状態にされている。そのため、第1のトリガで供給された情報の伝送準備をした後、第2のトリガで単位その情報を伝送するだけでよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−229801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の技術は、例えば高速道路などのように道路が分岐せず一直線であるような環境で路側機が配置されている場合に適用されることを想定したものであり、例えば市街地などのように様々な経路を車両が走行する可能性がある環境では、何れの路側機に予めデータを伝送しておけばよいのか分からないという問題がある。
【0010】
また、路側機の通信エリア内に車両が入ったことを認識してから該車両に伝送すべきデータを外部から取得しようとしても、路側機の通信エリアが狭いために車両が短時間で通信エリア外に出てしまい、データを伝送できないという問題がある。さらに、予め全ての路側機に全てのデータを保持させておくことはコストの面で不利になる。
【0011】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、移動している車両に大量のデータを効率よく伝送できる安価なデータ伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記課題を解決するために、データを保持するセンタと、道路脇に設置された路側機と、センタに車両情報を送信するとともに、路側機との間で通信を行う車両とを備え、センタは、車両から受信した車両情報に基づき該車両が走行する経路を予測し、該予測した経路に設置された路側機に自己が保持しているデータを送信して保持させるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、予め車両が走行する経路を予測し、予測された経路上に存在する路側機に、車両に伝送すべきデータを送信して保持させるように構成したので、車両が路側機に保持されているデータを順次に受信するように構成すれば、大きなファイルサイズのデータを効率よく車両に伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムで使用されるセンタの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムで使用される路側機の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムで使用される車両の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムにおいて想定する車両および路側機の配置ならびに路側機周辺の詳細を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るデータ伝送システムで使用されるセンタの詳細な構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。
【図10】この発明の実施の形態3に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係るデータ伝送システムで使用されるセンタの詳細な構成を示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムは、車両から得た車両情報を用いて、車両が走行するであろう経路を予測し、その予測した経路上に存在する路側機に対して、車両に伝送したい大きなファイルサイズの全データを予め伝送しておき、車両は、路側機の傍を通過する毎に、路側機からデータを順次に取得していくことにより、最終的に大きなファイルサイズのデータを得ることができるようにしたものである。
【0016】
図1は、実施の形態1に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。このデータ伝送システムは、ホームサーバ100、車両200、センタ300、路側機400、410および420、ネットワーク500、510および520、ならびに、通信経路501、502、511、512、521、522、523、524、525、526および527を備えている。なお、このデータ伝送システムでは、説明を簡単にするために、路側機の数を「3」としているが、路側機の数は任意に決定することができる。ネットワークおよび通信経路の数についても同様である。
【0017】
ホームサーバ100は、車両200に伝送すべきデータを保存している。車両200は、ホームサーバ100に保存されているデータの取得を要求するデータ要求を通信経路512、ネットワーク510および通信経路511を介してセンタ300に送信する。また、車両200は、自己の車両情報を通信経路512、ネットワーク510および通信経路511を介してセンタ300に逐次送信する。この車両200の詳細は後述する。
【0018】
センタ300は、車両200からのデータ要求に応答して、ホームサーバ100から、通信経路502、ネットワーク500および通信経路501を介してデータを取得する。また、センタ300は、車両200から受信した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機400、410および420に対して、ホームサーバ100から取得したデータを、通信経路521、ネットワーク520および通信経路522、523または524をそれぞれ介して送信する。このセンタ300の詳細は後述する。
【0019】
路側機400、410および420は、道路脇に設置される。これら路側機400、410および420の各々は、センタ300から受信したデータを保持しておき、車両200が自己の通信エリア内に入った場合に、車両200に対して通信経路525、526または527を介してデータを送信する。これら路側機400、410および420の詳細は後述する。
【0020】
次に、センタ300の詳細を説明する。図2は、センタ300の詳細な構成を示すブロック図である。センタ300は、ネットワークインタフェース301、302および303、予測部304、記憶部305ならびに制御部306を備えている。ネットワークインタフェース301は、通信経路501を経由しネットワーク500に接続されている。ネットワークインタフェース302は通信経路511を経由しネットワーク510に接続されている。ネットワークインタフェース303は通信経路521を経由しネットワーク520に接続されている。
【0021】
予測部304は、車両200からネットワークインタフェース302を経由して送られてくる車両情報を取得し、この取得した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測する。記憶部305は、ホームサーバ100からネットワークインタフェース301を経由して取得したデータを保持する。制御部306は、予測部304の予測結果に基づいて、データを送信すべき路側機を決定し、この決定した路側機に、記憶部305に記憶されているデータを、ネットワークインタフェース303を経由して送信する制御を行う。
【0022】
次に、路側機400、410および420の詳細を説明する。なお、路側機400、410および420の各々の構成は同じであるので、以下では、路側機400についてのみ説明する。図3は、路側機400の詳細な構成を示すブロック図である。路側機400は、ネットワークインタフェース401および402、車両優先度判定部403、記憶部404ならびに制御部405を備えている。
【0023】
ネットワークインタフェース401は、通信経路522を経由しネットワーク520に接続されている。ネットワークインタフェース402は、通信経路525を経由して車両200に接続される。なお、路側機400と車両200と間の接続は、車両200が路側機400の通信エリア内に入っている時にのみ確立される。
【0024】
車両優先度判定部403は、車両200からネットワークインタフェース402を経由して得られる情報に従って、複数の車両が路側機400の通信エリア内に入っている場合に、どの車両と優先的に通信を行うべきかを判定する。この判定は、車両に伝送したい全データのうちのどこまでの伝送が完了しているか、つまり車両200が既に受信したデータ量の全データ量に対する比率に基づいて行われる。例えば、残り1回の伝送で全データの受信が完了する車両と、未だ全データのうち半分程度しか受信できていない車両とを比較した場合、前者の優先度が高いと判断する。なお、車両200が受信したデータを逐次読み込んでいる場合に、該読み込み位置が、車両200が受信しているデータの最終の位置からどれくらい離れているかによって優先度を決定するように構成することもできる。
【0025】
記憶部404は、センタ300からネットワークインタフェース401を経由して受信したデータを保持する。制御部405は、車両200からネットワークインタフェース402を経由して伝送位置情報(伝送が完了したデータ位置を示す情報)を取得し、この取得した伝送位置情報に基づき、どのデータから送信を開始すればよいか、つまり開始位置を判断し、記憶部404に記憶されているデータを開始位置から順次に読み出してネットワークインタフェース402を経由して車両200に送信する。このデータ伝送は、上述したように、通信経路525が確立されている間にのみ行われる。このため、例えば車両200が路側機の通信エリア内で停止している場合は、データの伝送は、車両200が停止している間は継続して行われる。
【0026】
また、制御部405は、路側機400の限られたリソースを有効に使用するために、記憶部404に保持されているデータであって、一定時間内に車両200に伝送されなかったデータを消去し、その旨をセンタ300に通知する。センタ300は、データが消去された旨の通知を受け取ると、経路の予測が失敗したことを認識し、車両の経路の予測から一連の動作をやり直すように制御する。
【0027】
次に、車両200の詳細を説明する。図4は、車両200の詳細な構成を示すブロック図である。車両200は、ネットワークインタフェース201および202、ナビゲーションシステム203、車両情報管理部204、走行履歴管理部205、方向指示器206、車速センサ207、GPS(Global Positioning System)208、結合部209、記憶部210ならびに制御部211を備えている。
【0028】
ネットワークインタフェース201は通信経路512を経由してネットワーク510に接続される。ネットワークインタフェース202は通信経路525、526または527を経由して路側機400、410または420へそれぞれ接続される。なお、これらの接続は、車両200が路側機400、410または420の通信エリア内に入っている時にのみ確立される。
【0029】
ナビゲーションシステム203は、運転者に対して走行経路のナビゲーションを行っている場合は、運転者に提示した案内経路を表す経路情報を車両情報管理部204に送る。走行履歴管理部205は、過去の車両200の走行履歴を管理する。この走行履歴管理部205で管理されている走行履歴情報は、履歴情報として車両情報管理部204に送られる。
【0030】
方向指示器206は、運転手によって方向を指示する操作がなされた場合に、その指示内容を表す状態情報を車両情報管理部204に送る。車速センサ207は、現在の車両の進行速度を検出し、進行速度情報として車両情報管理部204に送る。GPS208は、車両200の現在の位置(緯度および経度)および進行方位を算出し、現在位置情報および進行方位情報として車両情報管理部204に送る。
【0031】
車両情報管理部204は、ナビゲーションシステム203からの経路情報、走行履歴管理部205からの走行履歴情報、方向指示器206からの状態情報、車速センサ207からの進行速度情報、ならびに、GPS208からの現在位置情報および進行方位情報を管理し、車両情報としてネットワークインタフェース201を経由してセンタ300へ送信する。この車両情報の送信は、一定時間間隔または車両情報に変化があった際に逐次行われる。
【0032】
制御部211は、ユーザからの指示に応答して、ホームサーバ100に蓄積されているデータの取得を、ネットワークインタフェース201を経由してセンタ300に要求する。車両200が道路を走行し、ネットワークインタフェース202を介して路側機との間の通信経路が確立されると、制御部211は、路側機に対してデータ要求を送信する。また、このデータ要求に応答して路側機から送られてくるデータを受信して記憶部210へ保存する。
【0033】
なお、車両200が別の路側機から既にデータの一部を受信している場合は、データ要求を送信する際に、記憶部210に既に格納されているデータを確認し、そのデータの続きから受信するための伝送位置情報を付加する。制御部211は、全てのデータを受信できたことを認識すると、結合部209に対して記憶部210に格納されているデータの結合を指示する。結合部209は、この指示に応答して、記憶部210に記憶されているデータを結合する。
【0034】
次に、上記のように構成される実施の形態1に係るデータ伝送システムの動作を説明する。図5は、実施の形態1に係るデータ伝送システムにおいて想定する車両および路側機の配置ならびに路側機周辺の詳細を示す図である。路側機400を例に取ると、路側機400にはアンテナ441が接続されており、そのアンテナ441によって通信できる通信エリア442が存在している。通信エリア442は、直径が数メートルから数百メートル程度の領域であり、複数の路側機は、各々の通信エリアが重ならないように設置されている。図5は、車両200が路側機400に向かって進行している状態を示しており、この状態において、センタ300は、車両200が走行するであろう経路を予測する。以下においては、センタ300は、路側機410および420が存在する道路を走行すると予測したものとして説明する。
【0035】
図6は、実施の形態1に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。まず、車両200は、ホームサーバ100から伝送を希望するデータの取得を要求するデータ要求をセンタ300に送信する(600)。センタ300は、車両200からのデータ要求に応答して、データ要求をホームサーバ100に送信する(601)。ホームサーバ100は、センタ300からのデータ要求に応答して、全データをセンタ300に送信する(602)。
【0036】
一方、車両200は、車両情報をセンタ300に逐次送信する(603)。センタ300は、車両200から受け取った車両情報に基づき、以後に車両200が走行するであろう経路を予測する(604)。そして、予測した経路とセンタ300が予め保持している路側機400、410および420の位置情報とを用いて、車両200が傍を通過する可能性がある路側機、つまりデータを伝送すべき路側機を決定する(605)。ここで、データの伝送先として、路側機400、410および420に決定されたものとする。
【0037】
センタ300は、路側機400に対して全データを送信する(606)。また、センタ300は、路側機410に対して全データを送信する(607)。さらに、センタ300は、路側機420に対して全データを送信する(608)。その後、車両200は、路側機400の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機400に送信する(609)。路側機400は、このデータ伝送要求に応答して、車両200にデータを送信する(610)。路側機400は、データの送信が完了すると、センタ300にデータ伝送通知を送信する(611)。なお、上述したように、通信エリアが限られた広さであるため、伝送すべきデータのサイズが大きい場合は全てのデータを伝送することができない場合がある。この場合、車両200は、全データのうちどこまでを受信できたかを表す伝送位置情報を保持しておく。
【0038】
次に、車両200は、路側機410の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機410に送信する(612)。このデータ伝送要求には、上述した伝送位置情報が含まれる。路側機410は、このデータ伝送要求に応答して、全データのうち、伝送位置情報によって示される車両200が未だ受信していないデータから送信を開始する(613)。路側機410は、送信が完了すると、センタ300にデータ伝送通知を送信する(614)。
【0039】
次に、車両200は、路側機420の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機420に送信する(615)。このデータ伝送要求には、上述した伝送位置情報が含まれる。路側機420は、このデータ伝送要求に応答して、全データのうち、伝送位置情報によって示される車両200が未だ受信していないデータから送信を開始する(616)。路側機410は、送信が完了すると、センタ300にデータ伝送通知を送信する(617)。この例では、この時点で、車両200に対する全てのデータの伝送が完了する。車両200は、得られたデータを結合する(618)。これにより、元のデータが得られる。
【0040】
その後、車両200は、センタ300に対して全データの受信を完了した旨を通知する(619)。センタ300は、車両200からの通知に応答して、ホームサーバ100に全データの伝送が完了した旨を通知し、一連のデータ伝送を完了する(620)。
【0041】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るデータ伝送システムによれば、大きなファイルサイズのデータを車両に伝送する場合、予め車両が走行する経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機に対して伝送すべきデータを送信しておくように構成したので、データ伝送を効率的かつ確実に行うことができる。
【0042】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るデータ伝送システムでは、車両から得た車両情報を用いて、車両が走行するであろう経路を予測し、その予測した経路上に存在する路側機に対して、車両に伝送したい大きなファイルサイズのデータを分割して予め伝送しておき、車両は、路側機の傍を通過する毎に、路側機から分割されたデータを順次取得していくことにより、最終的に大きなファイルサイズのデータを得ることができるようにしたものである。
【0043】
図7は、実施の形態2に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。このデータ伝送システムは、実施の形態1に係るデータ伝送システムのセンタ300が、センタ310に変更されている点を除けば、図1に示した実施の形態1に係るデータ伝送システムの構成と同じである。以下では、実施の形態1に係るデータ伝送システムの構成要素と同じ部分には実施の形態1の説明で使用した符号と同一の符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0044】
センタ310は、車両200からのデータ要求に応答して、ホームサーバ100から、通信経路502、ネットワーク500および通信経路501を介してデータを取得する。また、センタ310は、車両200から受信した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機400、410および420に対して、通信経路521、ネットワーク520および通信経路522、523または524をそれぞれ介して伝送すべきデータを分割して送信する。路側機400、410および420は、センタ310から得たデータを保持しておき、車両200が自己の通信エリア内を走行した際に、車両200に分割されたデータを送信する。
【0045】
図8は、センタ310の詳細な構成を示すブロック図である。このセンタ310は、ネットワークインタフェース311、312および313、予測部314、分割部315、記憶部316ならびに制御部317を備えている。ネットワークインタフェース311は、通信経路501を経由しネットワーク500に接続されている。ネットワークインタフェース312は通信経路511を経由しネットワーク510に接続されている。ネットワークインタフェース313は通信経路521を経由しネットワーク520に接続されている。
【0046】
予測部314は、車両200からネットワークインタフェース312を経由して送られてくる車両情報を取得し、この取得した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測する。記憶部316は、ホームサーバ100からネットワークインタフェース311を経由して取得したデータを保持する。
【0047】
分割部315は、予測部314による予測結果に基づいて、記憶部316に保持されているデータを、各路側機に送信するデータに分割する。この分割部315で分割されたデータの各々を「分割データ」という。分割データのサイズは、各路側機において車両200が路側機の通信エリア内を走行した場合に伝送可能なデータの最大サイズよりも小さい値に決定されている。なお、この分割の際には、セキュリティのために、分割データの全てが揃わないと元のデータに復元できないような処理、例えば暗号化を施すように構成することもできる。
【0048】
制御部317は、予測部314の予測結果に基づいて、データを送信すべき路側機を決定し、この決定した路側機に、記憶部316に記憶されている分割データをネットワークインタフェース313を経由して送信する制御を行う。
【0049】
次に、上記のように構成される実施の形態2に係るデータ伝送システムの動作を説明する。この実施の形態2に係るデータ伝送システムにおいて想定する車両および路側機の配置ならびに路側機周辺の詳細については、図5に示した実施の形態1の場合と同様である。すなわち、図5に示すように、車両200が路側機400に向かって進行している状態において、センタ310は、車両200が走行するであろう経路を予測する。以下においては、センタ310は、路側機410および420が存在する道路を走行すると予測したものとして説明する。
【0050】
図9は、実施の形態2に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。まず、車両200は、ホームサーバ100から伝送を希望するデータの取得を要求するデータ要求をセンタ310に送信する(700)。センタ310は、車両200からのデータ要求に応答して、データ要求をホームサーバ100に送信する(701)。ホームサーバ100は、センタ310からのデータ要求に応答して、全データをセンタ310に送信する(702)。
【0051】
一方、車両200は、車両情報をセンタ310に逐次送信する(703)。センタ310は、車両200から受け取った車両情報に基づき、以後に車両200が走行するであろう経路を予測する(704)。そして、予測した経路とセンタ310が予め保持している路側機400、410および420の位置情報とを用いて、車両200が傍を通過する可能性がある路側機、つまりデータを伝送すべき路側機を決定する(705)。ここで、データの伝送先として、路側機400、410および420が決定されたものとする。
【0052】
次いで、センタ310は、データの伝送先として決定された路側機400、410および420にデータを送信するために、データの分割を行う(706)。その後、センタ310は、路側機400に対して分割データを送信する(707)。また、センタ310は、路側機410に対して分割データを送信する(708)。さらに、センタ310は、路側機420に対して分割データを送信する(709)。その後、車両200は、路側機400の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機400に送信する(710)。路側機400は、そのデータ伝送要求に応答して、車両200に分割データを送信する(711)。路側機400は、分割データの送信が完了すると、センタ310にデータ伝送通知を送信する(712)。
【0053】
次に、車両200は、路側機410の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機410に送信する(713)。路側機410は、このデータ伝送要求に応答して、車両200に分割データを送信する(714)。路側機410は、送信が完了すると、センタ310にデータ伝送通知を送信する(715)。
【0054】
次に、車両200は、路側機420の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機420に送信する(716)。路側機420は、このデータ伝送要求に応答して、車両200に分割データを送信する(717)。路側機420は、送信が完了すると、センタ310にデータ伝送通知を送信する(718)。この例では、この時点で、車両200に対する全てのデータの伝送が完了する。車両200は、得られたデータを結合する(719)。これにより、元のデータが得られる。
【0055】
その後、車両200は、センタ310に対して全データの受信を完了した旨を通知する(720)。センタ310は、車両200からの通知に応答して、ホームサーバ100に全データの伝送が完了した旨を通知し、一連のデータ伝送を完了する(721)。
【0056】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るデータ伝送システムによれば、大きなファイルサイズのデータを車両に伝送する場合、予め車両が走行する経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機に対して伝送すべきデータを分割した分割データを送信しておくように構成したので、路側機で保持すべきデータの量を減らすことができ、データ伝送を効率的かつ確実に行うことができる。
【0057】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るデータ伝送システムでは、車両から得た車両情報を用いて、車両が走行するであろう経路を予測し、その予測した経路上に存在する路側機に対して、車両に伝送したい大きなファイルサイズのデータを分割し、かつそのビットレートを適切に選択したものを予め伝送しておき、車両は、路側機の傍を通過する毎に、路側機から分割されたデータを順次取得していくことにより、最終的には恰も大きなファイルサイズのデータが手元にあるように、途切れの無いデータの再生を行うことができるようにしたものである。
【0058】
図10は、実施の形態3に係るデータ伝送システムの構成を示す図である。このデータ伝送システムは、実施の形態2に係るデータ伝送システムのセンタ310が、センタ320に変更されている点を除けば、図7に示した実施の形態2に係るデータ伝送システムの構成と同じである。以下では、実施の形態2に係るデータ伝送システムの構成要素と同じ部分には実施の形態2の説明で使用した符号と同一の符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0059】
センタ320は、車両200からのデータ要求に応答して、ホームサーバ100から、通信経路502、ネットワーク500および通信経路501を介してデータを取得する。また、センタ320は、車両200から受信した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機400、410および420に対して、通信経路521、ネットワーク520および通信経路522、523または524をそれぞれ介して伝送すべきデータを分割して送信する。
【0060】
また、センタ320は、車両200から受信した車両情報から、現在、車両で再生されているデータの再生完了時刻を推測し、その再生が路側機からデータを受信する前に完了することが予測された場合は、データを分割する際にサイズあたりの再生時間を伸ばす加工を行ったデータを路側機400、410および420に送信する。路側機400、410および420は、センタ320から得たデータを保持しておき、車両200が自己の通信エリア内を走行した際に、車両200に分割されたデータを送信する。
【0061】
図11は、センタ320の詳細な構成を示したブロック図である。センタ320は、ネットワークインタフェース321、322および323、予測部324、分割加工部325、記憶部326および制御部327を備えている。ネットワークインタフェース321は、通信経路501を経由しネットワーク500に接続されている。ネットワークインタフェース322は、通信経路511を経由しネットワーク510に接続されている。ネットワークインタフェース323は、通信経路521を経由しネットワーク520に接続されている。
【0062】
予測部324は、車両200からネットワークインタフェース322を経由して送られてくる車両情報を取得し、この取得した車両情報に基づき、車両200が走行するであろう経路を予測する。記憶部326は、ホームサーバ100からネットワークインタフェース321を経由して取得したデータを保持する。
【0063】
分割加工部325は、予測部324による予測結果に基づいて、記憶部326に保持されているデータを、各路側機に送信する分割データに分割するとともに加工する。分割データのサイズは、各路側機において車両200が路側機の通信エリア内を走行した場合に伝送可能なデータの最大サイズよりも小さい値に決定されている。なお、この分割の際には、セキュリティのために、分割データの全てが揃わないと元のデータに復元できないような処理、例えば暗号化を施すように構成することもできる。
【0064】
また、分割加工部325は、分割データを加工する場合は、例えばトランスコードを行ってビットレートを下げたり、そのデータが階層符号化のような複数のビットレートに対応している場合は、低いビットレートのデータを取り出すといった処理を行う。
【0065】
制御部327は、予測部324の予測結果に基づいて、データを送信すべき路側機を決定し、この決定した路側機に、記憶部326に記憶されている分割データを、ネットワークインタフェース323を経由して送信する制御を行う。
【0066】
次に、上記のように構成される実施の形態3に係るデータ伝送システムの動作を説明する。この実施の形態3に係るデータ伝送システムにおいて想定する車両および路側機の配置ならびに路側機周辺の詳細については、図5に示した実施の形態1の場合と同様である。すなわち、図5に示すように、車両200が路側機400に向かって進行している状態において、センタ320は、車両200が走行するであろう経路を予測する。以下においては、センタ320は、路側機410および420が存在する道路を走行すると予測したものとして説明する。
【0067】
図12は、実施の形態3に係るデータ伝送システムで行われる処理の概略を示すシーケンスチャートである。まず、車両200は、ホームサーバ100から伝送を希望するデータの取得を要求するデータ要求をセンタ320に送信する(800)。センタ320は、車両200からのデータ要求に応答して、データ要求をホームサーバ100に送信する(801)。ホームサーバ100は、センタ320からのデータ要求に応答して、全データをセンタ320に送信する(802)。
【0068】
一方、車両200は、車両情報をセンタ320に逐次送信する(803)。センタ320は、車両200から受け取った車両情報に基づき、以後に車両200が走行するであろう経路を予測する(804)。そして、予測した経路とセンタ320が予め保持している路側機400、410および420の位置情報とを用いて、車両200が傍を通過する可能性がある路側機、つまりデータを伝送すべき路側機を決定する(805)。ここで、データの伝送先として、路側機は400、410および420が決定されたものとする。
【0069】
また、センタ320は、車両200が路側機400から路側機410へ移動する時間を予測し、路側機400から伝送したデータが車両200で再生される場合は、その再生が路側機410から次のデータを受信するまでに完了しないように、つまり、データの再生状況に応じて、データの分割および加工を行う(806)。例えば、センタ320は、トランスコードを行ってビットレートを下げたり、そのデータが階層符号化のような複数のビットレートに対応している場合は、低いビットレートのデータを取り出す処理を行う。
【0070】
次いで、センタ320は、路側機400に対して分割データを送信する(807)。また、センタ320は、路側機410に対して分割データを送信する(808)。さらに、センタ320は、路側機420に対して分割データを送信する(809)。その後、車両200は、路側機400の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機400に送信する(810)。路側機400は、そのデータ伝送要求に応答して、車両200に分割データを送信する(811)。路側機400は、分割データの送信が完了すると、センタ320にデータ伝送通知を送信する(812)。一方、車両200では、受信した分割データの再生が開始される(813)。
【0071】
センタ320は、車両200から逐次送られてくる車両情報に基づき、次に車両200が通信を行うと予測された路側機410に送信するデータの分割および加工を行う(814)。そして、センタ320は、その分割および加工が施された分割データを路側機410に送信する(815)。
【0072】
次に、車両200は、路側機410の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機410に送信する(816)。路側機410は、このデータ伝送要求に応答して、車両200に分割データを送信する(817)。路側機410は、送信が完了すると、センタ320にデータ伝送通知を送信する(818)。
【0073】
センタ320は、車両200から逐次送られてくる車両情報に基づき、次に車両200が通信を行うと予測された路側機420に送信するデータの分割および加工を行う(819)。そして、センタ320は、その分割および加工が施された分割データを路側機420に送信する(820)。
【0074】
次に、車両200は、路側機420の通信エリア内に入ると、データ伝送要求を路側機420に送信する(821)。路側機420は、このデータ伝送要求に応答して、車両に分割データを送信する(822)。路側機420は、送信が完了すると、センタ320にデータ伝送通知を送信する(823)。この例では、この時点で、車両200に対する全てのデータの伝送が完了する。
【0075】
その後、車両200は、センタ320に対して全データの受信を完了した旨を通知する(824)。センタ320は、車両200からの通知に応答して、ホームサーバ100に全データの伝送が完了した旨を通知し、一連のデータ伝送を完了する(825)。
【0076】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係るデータ伝送システムによれば、大きなファイルサイズのデータを車両に伝送する場合、予め車両が走行する経路を予測し、予測した経路上に存在する路側機に対して伝送すべきデータを分割し、かつ、そのビットレートを適切に選択したものを送信するように構成したので、車両では恰も大きなファイルサイズのデータが手元にあるように、途切れの無いデータの再生を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
100 ホームサーバ、200 車両、201,202 ネットワークインタフェース、203 ナビゲーションシステム、204 車両情報管理部、205 走行履歴管理部、206 方向指示器、207 車速センサ、208 GPS、209 結合部、210 記憶部、211 制御部、300,310,320 センタ、301,302,303,311,312,313,321,322,323 ネットワークインタフェース、304,314,324 予測部、305,316,326 記憶部、306,317,327 制御部、315 分割部、325 分割加工部、400,410,420,430,330,350 路側機、401,402 ネットワークインタフェース、403 車両優先度判定部、404 記憶部、405 制御部、441 アンテナ、442 通信エリア、500,510,520 ネットワーク、501,502,511,512,521,522,523,524,525,526,527 通信経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを保持するセンタと、
道路脇に設置された路側機と、
前記センタに車両情報を送信するとともに、前記路側機との間で通信を行う車両とを備え、
前記センタは、前記車両から受信した車両情報に基づき該車両が走行する経路を予測し、該予測した経路に設置された路側機に自己が保持しているデータを送信して保持させる
データ伝送システム。
【請求項2】
車両は、路側機に保持されているデータを、該路側機との間の通信によって受信する
ことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送システム。
【請求項3】
車両は、該車両に搭載されたナビゲーションシステムで提示された案内経路、車両の位置、速度、進行方位、方向指示器の指示内容および車両の走行履歴の少なくとも1つを表す情報を車両情報としてセンタに送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のデータ伝送システム。
【請求項4】
センタは、経路の予測が失敗した旨を認識した場合は、車両が走行する経路の予測をやり直す
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のデータ伝送システム。
【請求項5】
路側機は、車両に伝送する全てのデータを保持する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のデータ伝送システム。
【請求項6】
路側機は、車両に伝送する全データを分割した一部のデータを保持する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のデータ伝送システム。
【請求項7】
路側機は、一定時間が経過すると保持しているデータを消去する
ことを特徴とする請求項5または請求項6記載のデータ伝送システム。
【請求項8】
路側機に保持される一部のデータは、分割されたデータの全てが揃わないと元のデータに復元できないように処理されている
ことを特徴とする請求項6記載のデータ伝送システム。
【請求項9】
路側機に保持される一部のデータは、車両におけるデータの再生状況に応じてビットレートが異なるように加工されている
ことを特徴とする請求項6記載のデータ伝送システム。
【請求項10】
路側機は、複数の車両から通信を要求された場合は、優先度の高い車両と通信を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載のデータ伝送システム。
【請求項11】
路側機は、車両が既に受信したデータ量の全データ量に対する比率によって優先度を決定する
ことを特徴とする請求項10記載のデータ伝送システム。
【請求項12】
路側機は、車両が受信したデータを逐次読み込んでいる場合に、該読み込み位置が、車両が受信しているデータの最終の位置からどれくらい離れているかによって優先度を決定する
ことを特徴とする請求項10記載のデータ伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−204949(P2010−204949A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49598(P2009−49598)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】