説明

データ伝送システム

【課題】車載機に搭載する記憶装置の容量を削減することのできるデータ伝送システムを得る。
【解決手段】車載機A(300−1)、車載機B(300−2)は、アクセス可能エリアが示された地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、この緊急度をアクセスポイント200に通知する。アクセスポイント200は、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機のコンテンツデータを無線装置を利用して送受信するデータ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載機(カーナビ等)の普及と共に、地図や音楽、動画などで必要なデータ量が増加している。データを保存するためにHDDやメモリなどの記憶媒体が存在するが、保存すべきデータ量が増えると容量の大きな記憶媒体が必要となる。一方、車載の無線装置を利用することで、記憶媒体に大きく依存することなく情報を得ることができる。このような無線装置を利用しての情報配信方法としては、例えば、特許文献1,2に示すものがあった。
【0003】
特許文献1では、情報の緊急度に応じ、情報を配信する情報配信装置が開示されている。この装置では、まず、ダウンロードしたいコンテンツの配信希望終了時刻と無線装置の平均通信速度とコンテンツのデータ量から優先度を決定する。次に、決定された優先度から割り当てる帯域幅やチャネルを決定し、コンテンツを送信する。
【0004】
また、特許文献2では、各種要求コンテンツのダウンロードする順序をスケジューリングする情報通信装置が開示されている。この装置では、まず、車両の走行経路の電波環境と要求コンテンツのデータサイズと車速情報から複数のコンテンツのデータサイズを計算し、そのデータサイズとダウンロード要求開始地点意向の通信可能帯域でのダウンロード可能なデータサイズを計算して比較する。その比較結果から、最適なスケジューリングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−348630号公報
【特許文献2】特開2004−282456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、車載機にこれから必要なコンテンツデータを、無線装置を利用してネットワーク経由でデータを送受信する技術は、上述したように、要求コンテンツデータについて、(1)複数のコンテンツデータに対し優先度をつけ、決定された優先度から割り当てる帯域幅を決定する、(2)通信可能帯域でのダウンロードの最適なスケジューリングを行う、という方法であった。
【0007】
しかしながら、従来では、車載機が既に保持しているデータ量や保持すべきデータ量については考慮されておらず、車載機に蓄積するデータ量の抑制という観点からは解決すべき点があった。即ち、従来では、車載機に既に保持されているデータ量や保持すべきデータ量の如何にかかわらず一律にダウンロードするデータ量を決定していたが、車載機が既に保持しているデータ量や保持すべきデータ量について考慮すれば、車載機に搭載する記憶装置の容量を従来よりもさらに削減できることになる。このように、車載機に蓄積するデータ量を削減できる余地があるが、その解決策は実現されていなかった。
【0008】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、車載機に搭載する記憶装置の容量を削減することのできるデータ伝送システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るデータ伝送システムは、アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングするサーバと、車載機から受信した緊急度に応じて、車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、アクセスポイントに緊急度を通知する車載機とを備え、アクセスポイントは、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくするようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のデータ伝送システムは、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、緊急度が高いほど配信するデータの帯域幅を大きくするようにしたので、車載機に蓄積するデータ量を削減し、搭載する記憶装置の容量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるデータ伝送システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2によるデータ伝送システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるデータ伝送システムを示す構成図である。
図1のデータ伝送システムは、サーバ100とアクセスポイント200と車載機A(300−1)、車載機B(300−2)を備えている。
【0013】
サーバ100は、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングする機能を有し、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)から送信されたデータ(自車位置、アクセス不可能エリア)を地図にマッピングし、最新のアクセス可能状況地図を作成する地図作成処理部101を備えている。アクセスポイント200は、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)に対してデータ配信を行う装置であり、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)から受信した緊急度に基づいて、各車載機A(300−1)、車載機B(300−2)へ配分する帯域幅を決定する帯域配分決定処理部201と、帯域配分決定処理部201で決定された帯域幅で各車載機A(300−1)、車載機B(300−2)にデータ送信を行う情報伝送部202を備えている。
【0014】
車載機A(300−1)、車載機B(300−2)は、地図や音楽、動画等を再生する機能を有し、情報送信部301と、アクセス可能状況地図更新部302と、緊急度計算部303とを備えている。情報送信部301は、アクセスポイント200経由でサーバ100に対して自車の各種情報を送出する機能を有し、アクセス可能状況地図更新部302はサーバ100から送信される最新のアクセス可能状況地図を受信して、自車が持つ地図を更新する機能を有している。緊急度計算部303は最新のアクセス可能状況地図と自車位置や速度といった車両情報から緊急度を計算する機能を有している。
尚、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)の構成や動作については同様であるため、内部構成の図示や動作の説明は車載機A(300−1)で代表して行うこととする。
【0015】
次に、実施の形態1のデータ伝送システムの動作について説明する。
[ステップ1]
車に設置された車載機A(300−1)が以下の情報を取得し、情報送信部301はサーバ100に送信する(図1中、矢印401で示す)。
・GPSでの測定による自車の位置(自車位置情報)
・自車位置においてアクセスポイント200へアクセス可能か不可能かの情報(アクセス可能不可能情報)
・受信電力
・ビットレート
【0016】
ここで、アクセス可能不可能情報とは、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)からサーバ100に送信され、サーバ100でマッピングされる情報であり、アクセスポイント200と車載機A(300−1)、車載機B(300−2)との間の通信状態を表す情報である。このアクセス可能不可能情報は、アクセス不可能のときは、データとして保持しておき、アクセス可能になった時点でサーバ100へ送信する。
【0017】
また、受信電力については、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)で受信した電力の強度は道路上の地点毎に異なると考えられるため、強度の差を表すためにその情報を用いる(受信電力の強度が大きいほど、車載機では情報を受信し易くなる)。ビットレートについては、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)で、アクセスポイント200からデータを受信したときのビットレートである。尚、これら受信電力やビットレートは、アクセス可能不可能情報として用いることができるが、必須ではない。
【0018】
[ステップ2]
サーバ100で受信したステップ1の情報を地図作成処理部101でマッピングする。即ち、地図作成処理部101は、ステップ1で送信された情報を受け取り、自車位置の情報・アクセス可能不可能情報を地図へマッピングする。アクセス可能不可能情報から、アクセス不可能エリアの明確な地図ができる。マッピングする際には、アクセス可能エリアと不可能エリアの境界と、境界の一方の側がアクセス可能エリアで、他方が不可能エリアであることを示すため、それぞれ1,0を記す。例えばアクセス可能エリアという判定は1と1では挟まれている道路であり、アクセス不可能エリアは0と0で挟まれている。また、受信電力やビットレートの情報を用いた場合は、強度の差を記すために、例えば、強度を(1)大、(2)中、(3)小、(4)無と4段階に分け、境界を0〜3で記載することも可能である。
【0019】
本発明のデータ伝送システムでは、サーバ100は過去に作成したアクセス可能状況地図によりアクセス不可能エリアの情報を有しているが、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)から送信されるアクセス可能不可能情報により、サーバ100が持っているアクセス不可能エリアの情報を更新し、サーバ100が持っているアクセス不可能エリアの情報が常に最新となるよう構成されている。尚、最初のアクセス可能状況地図は、サーバ100に与える必要がある。
【0020】
即ち、アクセス不可能エリアは次のように求める。
(1)アクセス不可能エリアに車載機が存在する間、車載機ではアクセスポイント200とアクセスができなかったという情報(アクセス可能不可能情報)を自車位置と共に記憶しておく。
(2)車載機は、アクセス可能エリアに入ったときに、アクセス可能不可能情報として記憶していたアクセスができなかったという情報をサーバ100に送信する。
(3)サーバ100は、(2)で受信した情報をアクセス可能状況地図にマッピングし、地図上でアクセス不可能エリアが求まる。
【0021】
[ステップ3]
サーバ100から最新のアクセス可能状況地図を車載機A(300−1)へ送信する(図1中、矢印402で示す)。
地図作成処理部101は、作成したアクセス可能・不可能エリアがマッピングされている地図(最新のアクセス可能状況地図)を車載機A(300−1)に送信する。ここで送信する地図は、世界全体の道路に関する地図ではなく、車載機A(300−1)で必要とされている最小限の地図である。ここで、最小限の地図とは、経路を設定している場合には、経路上にあるアクセス不可能エリアがある箇所を越えたアクセス可能エリアまでの地図である。もし、この地図が図示しないナビゲーションシステムにおけるナビ機能で表示されている地図より詳細地図(ズームインされている地図)となる場合は、ナビ画面に表示している地図の大きさの地図を送信する。
【0022】
また、経路が設定されていない場合の最小限の地図とは、自車の周辺でアクセス不可能エリアがある箇所を越えたアクセス可能エリアがあるとき、自車位置から最長のアクセス可能エリアを含む地図である。もし、この地図がナビ機能により表示されている地図より詳細地図(ズームインされている地図)となる場合は、ナビ画面に表示されている地図と同じ大きさの地図を送信する。
【0023】
[ステップ4]
受信した地図に関する情報を車載機A(300−1)の地図に反映するため、アクセス可能状況地図更新部302によって、最新のアクセス可能状況地図で地図を更新する。車載機A(300−1)では今まで持っていた地図を削除し、これ以降、ステップ3で受信した新しい地図を利用する。また、最新地図を緊急度計算部303に出力する(図1中、矢印403で示す)。
【0024】
[ステップ5]
緊急度計算部303で以下の処理を行い、緊急度を作成する。
緊急度計算部303では、車両情報収集と緊急度の計算を行う。車両情報収集は、車のメータから車速を、ナビゲーションシステムから各コンテンツのデータが消費されるまでの時間を収集する。緊急度の計算は以下のように行う。音楽再生といった各コンテンツのデータで、現在、車載機A(300−1)で保持しているデータが消費されるまでの時間をデータ消費時間と呼ぶ。また、地図からアクセス可能・不可能エリアが分かり、車の位置からアクセス不可能エリアまでの距離とアクセス不可能エリアが続く距離が計算で求められる。求まった距離と、車の速度との関係により、以下に記すアクセス不可能エリア時間が分かる。これら二つの時間の差から緊急度を求める。
【0025】
・データ消費時間=現在車載機A(300−1)で保持しているデータが消費されるまでの時間
・アクセス不可能エリア時間=現在の位置からアクセス不可能エリアに残り短い時間で入る場合において、次のアクセス可能エリアに入るまでの時間。地図上で、アクセス不可能エリアまでと次のアクセス可能エリアまでのそれぞれの距離が分かるため、それらを平均の車速で割ることで時間が分かる。
【0026】
緊急度=アクセス不可能エリア時間とデータ消費時間の差(緊急度=アクセス不可能エリア時間−データ消費時間)により、緊急度を求める。緊急度が高いほど車載機へデータを送らなければならない。また、受信電力やビットレートを用いて、多段階のアクセス可能エリアとアクセス不可能エリアの境界を表した場合は、多段階の境界を考慮してアクセス不可能エリア時間を求めてもよい。
【0027】
[ステップ6]
緊急度計算部303は、計算した緊急度を車載機A(300−1)から送信し、アクセスポイント200の帯域配分決定処理部201が受信する(図1中、矢印404で示す)。
【0028】
[ステップ7]
アクセスポイント200は車載機A(300−1)への割り当てる帯域を決定する。即ち、アクセスポイント200の帯域配分決定処理部201は、車載機A(300−1)からの緊急度の値に基づいて、各車載機A(300−1)、車載機B(300−2)の緊急度の大きさに応じて各車載機への割り当てる帯域幅を決定する。緊急度の高い車載機ほど、大きな帯域を与える。帯域幅の情報は帯域配分決定処理部201より情報伝送部202に通知される(図1中、矢印405で示す)。尚、帯域幅の値は、送信するデータがアクセス不可能エリアに入る迄に完了するように設定される。
【0029】
[ステップ8]
アクセスポイント200の情報伝送部202は、帯域配分決定処理部201によって決定された帯域幅で、各車載機A(300−1)、車載機B(300−2)に対して必要なデータを送信する(図1中、矢印406で示す)。尚、配信するデータに関してはサーバ100から受信するが、この流れについては公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0030】
以上説明したように、実施の形態1のデータ伝送システムによれば、アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングするサーバと、車載機から受信した緊急度に応じて、車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、アクセスポイントに緊急度を通知する車載機とを備え、アクセスポイントは、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくするようにしたので、緊急度が高いデータが必要な車載機に対して優先的にデータ送信することで、アクセス不可能エリアの間に必要なデータは事前にデータ送信されるため、アクセス不可能エリアでのデータ不足が解消される。その結果、最初から蓄積しておくべきデータ量が減り、搭載するHDD等の記憶媒体の大きさを削減することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、緊急度を求めるためのアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を車載機側で求めていたが、アクセスポイント側で求める例を実施の形態2として説明する。
【0032】
図2は、実施の形態2におけるデータ伝送システムを示す構成図である。実施の形態1の構成に加えて、アクセスポイント200aにおいて、アクセス不可能エリア通過時間計算部203が追加されている。アクセス不可能エリア通過時間計算部203は、アクセスポイント200から見て各方角のアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を計算するよう構成されている。また、アクセスポイント200aもそのアクセスポイント200a周辺の最新のアクセス可能状況地図を保持するよう構成されている。
【0033】
また、車載機A(300a−1)、車載機B(300a−2)においては、情報送信部301aは、実施の形態1の情報送信部301の構成に加えて自車の速度を車両情報として送信するよう構成されている。さらに、アクセス可能状況地図更新部302aは、最新のアクセス可能状況地図と共に、アクセス不可能エリア通過時間計算部203で計算されたアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間をアクセスポイント200aから受信するよう構成されている。また、緊急度計算部303aは、アクセス可能状況地図更新部302aが受信したアクセス不可能エリアの通過時間と、車載機A(300a−1)、車載機B(300a−2)で保持しているデータが消費される時間との差を緊急度とし、これをアクセスポイント200aの帯域配分決定処理部201に対して通知するよう構成されている。
【0034】
次に、実施の形態2の動作について説明するが、実施の形態1の動作とは異なる点についてのみ説明する。
先ず、車載機A(300a−1)、車載機B(300a−2)の情報送信部301aは、自車の速度も含めてサーバ100に通知する。アクセスポイント200aは、最新のアクセス可能状況地図をサーバ100から受信して保持しているため、これを元に、近隣のアクセス不可能エリアの状況を知ることができる。アクセスポイント200aからの各方角に対して、アクセス不可能エリア通過時間計算部203で、近隣に存在するアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を、「最新のアクセス可能状況地図から求まる距離」と「サーバ100にアップロードされて計算された車の平均車速」から算出する。車載機A(300a−1)は、アクセス不可能エリア通過時間計算部203で計算されたアクセス不可能エリア通過時間を元に、自車が進む方角に対応する近隣に存在するアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を基準として、各車載機A(300a−1)、車載機B(300a−2)で保持しているデータが消費される時間との差を取り、その差を緊急度とする。即ち、緊急度は次のように表される。
緊急度=自車が進む方角に対応する近隣に存在するアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間−各車載機A(300a−1)、車載機B(300a−2)におけるデータ消費時間
【0035】
緊急度に基づいて帯域配分決定処理部201が配分する帯域配分処理や情報伝送部202のデータ伝送については実施の形態1と同様である。また、アクセス不可能エリア通過時間計算部203を介して車載機A(300−1)に対して最新のアクセス可能状況地図が送信されるが、アクセス不可能エリア通過時間計算部203で計算されたアクセス不可能エリア通過時間を送信さえすれば、必ずしも毎回送る必要はない。また、受信電力やビットレートを用いて、多段階のアクセス可能エリアとアクセス不可能エリアの境界を表した場合は、アクセス不可能エリア通過時間計算部203が、多段階の境界を考慮してアクセス不可能エリア時間を求めてもよい。
【0036】
以上説明したように、実施の形態2のデータ伝送システムによれば、アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングするサーバと、地図と車載機が搭載された車両の速度に基づいて、車載機の位置の近隣のアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を算出し、算出した通過時間を車載機に送信すると共に、車載機から受信した緊急度に応じて、車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、アクセスポイントから送信されたアクセス不可能エリアの通過時間に基づき、自車が進む方角のアクセス不可能エリアの通過時間を求め、この通過時間と、車載機がこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、アクセスポイントに緊急度を通知する車載機とを備え、アクセスポイントは、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくするようにしたので、自車が進む方角に対応して「近隣に存在するアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間」が算出されていれば、各車載機での計算量が減る効果が期待できる。道路状況については変動するものの、アクセス不可能エリアの位置はほとんど変更されないと考えられるため、各車載機で計算するよりも、距離を計算しない分だけ計算量が減る。さらなる効果としては、アクセスポイントから車載機に対して常に地図に関するデータを送信する必要がなくなるため、送信するデータ量が削減できるという効果が期待できる。
【0037】
実施の形態3.
以上の実施の形態1、2では、アクセス不可能エリアを通過する時間とデータ消費時間との差により緊急度を求めた。それに加え、実施の形態3では、最新のアクセス可能状況地図にアクセスポイント200内の地点に対して実際に受信できているビットレートを追加する。
【0038】
実施の形態3のデータ伝送システムにおける図面上の構成は図1と同様であるため、図1の構成を用いて説明する。実施の形態3では、各車載機A(300−1)、車載機B(300−2)の情報送信部301は、データを受信したときのビットレートをサーバ100に送信し、サーバ100の地図作成処理部101では、地図上の各位置におけるビットレートも対応させる。また、車載機A(300−1)、車載機B(300−2)のアクセス可能状況地図更新部302はビットレートも含めてマッピングされた最新のアクセス可能状況地図を受信し、緊急度計算部303は、このアクセス可能状況地図に基づいて緊急度を計算するよう構成されている。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0039】
動作としては、以下の処理を実施の形態1に加える、もしくは処理を入れ替える。
[ステップ1への追加処理]
各車載機300の情報送信部301は、自車位置のデータに加え各地点でデータを受信したときのビットレートをサーバ100に送信する。
【0040】
[ステップ2への追加処理]
サーバ100の地図作成処理部101は、ビットレートも地図にマッピングする。ビットレートは、地図上で5m置きの地点にマッピングする。5m置きは普通車の全長を参考にした例であり、それ以外の距離でもよい。
【0041】
[ステップ5(処理を入れ替え)]
緊急度計算部303では、車両情報収集と緊急度の計算を行う。車両情報収集は、車のメータから車速を、ナビゲーションシステムから各コンテンツのデータが消費されるまでの時間を収集する。緊急度の計算は以下のように行う。音楽再生といった各コンテンツのデータで、現在、車載機A300−1で保持しているデータが消費されるまでの時間をデータ消費時間と呼ぶ。また、地図からアクセス可能・不可能エリアが分かり、車の位置からアクセス不可能エリアまでの距離とアクセス不可能エリアが続く距離が計算で求められる。求まった距離と、車の速度との関係により、以下に記すアクセス不可能エリア時間が分かる。さらに、緊急度計算部303は、自車が通るアクセスポイント内の各地点でのビットレートからアクセスポイント200を抜けるまでに取得できるデータ量を算出し、アクセスポイント200内でデータを受け取ることが可能な量を含めて緊急度を算出する。以下に、緊急度算出式を示す。
緊急度=(アクセス不可能エリア時間−データ消費時間)/ビットレート
アクセスポイント200では、この算出方法から出した緊急度を利用し、緊急度が高い車載機ほど、優先的にデータを送信する。即ち、緊急度が高いほど、その車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくする。
【0042】
尚、上記例では実施の形態1の構成に対して緊急度の算出方法を適用したが、同様に、実施の形態2に対しても適用することができる。この場合、緊急度計算部303aは、アクセス不可能エリア通過時間計算部203で計算されたアクセス不可能エリア通過時間に基づいて、
緊急度=(自車が進む方角に対応する近隣に存在するアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間−データ消費時間)/ビットレート
の算出式に基づいて緊急度を算出する。これ以外は実施の形態2と同様である。
【0043】
以上説明したように、実施の形態3のデータ伝送システムによれば、アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングすると共に、車載機が各地点でデータを受信したときのビットレートを地図にマッピングするサーバと、車載機から受信した緊急度に応じて、車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を、アクセス不可能エリアに到達するまでのアクセスポイントにおけるアクセス可能エリアのビットレートで除算した値を緊急度とし、アクセスポイントに緊急度を通知する車載機とを備え、アクセスポイントは、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくするようにしたので、アクセスポイント内の各地点でのビットレートの差による優劣が解消され、各車載機間で最も緊急度の高い車載機を確実に抽出することができる。
【0044】
また、実施の形態3のデータ伝送システムによれば、アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングすると共に、車載機が各地点でデータを受信したときのビットレートを地図にマッピングするサーバと、地図と車載機が搭載された車両の速度に基づいて、車載機の位置の近隣のアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を算出し、算出した通過時間を車載機に送信すると共に、車載機から受信した緊急度に応じて、車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、アクセスポイントから送信されたアクセス不可能エリアの通過時間に基づき、自車が進む方角のアクセス不可能エリアの通過時間を求め、この通過時間と、車載機がこれまで受信したデータを消費する時間との差を、アクセス不可能エリアに到達するまでのアクセスポイントにおけるアクセス可能エリアのビットレートで除算した値を緊急度とし、アクセスポイントに緊急度を通知する車載機とを備え、アクセスポイントは、緊急度が高いほど、車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくするようにしたので、アクセスポイント内の各地点でのビットレートの差による優劣が解消され、実施の形態2の効果に加えて、各車載機間で最も緊急度の高い車載機を確実に抽出することができるという効果が得られる。
【0045】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 サーバ、101 地図作成処理部、200,200a アクセスポイント、201 帯域配分決定処理部、202 情報伝送部、203 アクセス不可能エリア通過時間計算部、300−1,300a−1 車載機A、300−2,300a−2 車載機B、301,301a 情報送信部、302,302a アクセス可能状況地図更新部、303,303a 緊急度計算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、
前記車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングするサーバと、
前記車載機から受信した緊急度に応じて、当該車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、
前記地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、前記アクセスポイントに当該緊急度を通知する車載機とを備え、
前記アクセスポイントは、前記緊急度が高いほど、前記車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくすることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項2】
アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、
前記車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングするサーバと、
前記地図と前記車載機が搭載された車両の速度に基づいて、前記車載機の位置の近隣のアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を算出し、当該算出した通過時間を前記車載機に送信すると共に、前記車載機から受信した緊急度に応じて、当該車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントから送信されたアクセス不可能エリアの通過時間に基づき、自車が進む方角のアクセス不可能エリアの通過時間を求め、当該通過時間と、前記車載機がこれまで受信したデータを消費する時間との差を緊急度とし、前記アクセスポイントに当該緊急度を通知する車載機とを備え、
前記アクセスポイントは、前記緊急度が高いほど、前記車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくすることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項3】
アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、
前記車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングすると共に、当該車載機が各地点でデータを受信したときのビットレートを前記地図にマッピングするサーバと、
前記車載機から受信した緊急度に応じて、当該車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、
前記地図と自車の速度から、自車がアクセス不可能エリアを通過するまでの時間とこれまで受信したデータを消費する時間との差を、当該アクセス不可能エリアに到達するまでの前記アクセスポイントにおけるアクセス可能エリアのビットレートで除算した値を緊急度とし、前記アクセスポイントに当該緊急度を通知する車載機とを備え、
前記アクセスポイントは、前記緊急度が高いほど、前記車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくすることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項4】
アクセスポイントを介して車載機にデータ配信を行うデータ伝送システムにおいて、
前記車載機の位置に応じたデータ伝送可能なエリアをアクセス可能エリアとして地図にマッピングすると共に、当該車載機が各地点でデータを受信したときのビットレートを前記地図にマッピングするサーバと、
前記地図と前記車載機が搭載された車両の速度に基づいて、前記車載機の位置の近隣のアクセス不可能エリアを通過するのに必要な時間を算出し、当該算出した通過時間を前記車載機に送信すると共に、前記車載機から受信した緊急度に応じて、当該車載機に配信するデータの帯域幅を決定するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントから送信されたアクセス不可能エリアの通過時間に基づき、自車が進む方角のアクセス不可能エリアの通過時間を求め、当該通過時間と、前記車載機がこれまで受信したデータを消費する時間との差を、当該アクセス不可能エリアに到達するまでの前記アクセスポイントにおけるアクセス可能エリアのビットレートで除算した値を緊急度とし、前記アクセスポイントに当該緊急度を通知する車載機とを備え、
前記アクセスポイントは、前記緊急度が高いほど、前記車載機へのデータ配信の帯域幅を大きくすることを特徴とするデータ伝送システム。

【図1】
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【図2】
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