説明

データ作成装置及びデータ抽出装置、並びにデータ作成方法

【課題】データを傍受された場合であっても、秘匿情報データを含んだデータとして認識されにくいデータを提供すること。
【解決手段】第1の情報処理装置1は、画像データ選択部151と、高周波成分特定部152と、データ置換部153と、を備える。画像データ選択部151は、マルチメディアデータを取得する。高周波成分特定部152は、画像データ選択部151から取得されたマルチメディアデータから、所定の波長成分に対応する領域を特定する。データ置換部153は、高周波成分特定部152により特定された領域に、秘匿性を有する秘匿情報データを埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
秘匿情報データを含んだデータを作成するデータ作成装置及び当該データから秘匿情報データを抽出するデータ抽出装置、並びにデータ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機密情報等の秘匿性の高いデータ(秘匿情報データ)は、情報の漏洩を考慮して、専用回線やVPN(Virtual Private Network)のような安全性が確保できる回線でのやり取り(送受信)が行われている。しかし、実際には、秘匿情報データは、インターネット等のネットワーク回線を利用して、データのやり取りを行うことがあり、その場合には、データを暗号化して送受信される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−164878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、例えば、PGP(Pretty Good Privacy)等を利用して、暗号化した機密情報データのやり取りを行った場合には、通常であれば拡張子が「.pgp」となるファイルが添付されることになり、秘匿情報データのやり取りをしていることを、トラフィックを監視している攻撃者等の他者に知られてしまう。
【0005】
また、仮に拡張子を変更した場合でも、ファイルの構造により、特定の暗号方式のファイルであることがわかってしまう。その結果、その暗号方式に脆弱性等が存在している場合には、秘匿情報が漏洩してしまう可能性がある。
【0006】
さらに、例えば、ファイルの末尾に秘匿情報データを付加することで画像等のファイルに秘匿情報データを追加する方法もあるが、こちらも、ファイルの構成を利用したものであり、こちらも、ファイルの構成を判定すれば、判別が可能となる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、データを傍受された場合であっても、秘匿情報データを含んだデータとして認識されにくいデータを作成するデータ作成装置及び当該データから秘匿情報データを抽出するデータ抽出装置、並びにデータ作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ作成装置は、上述したような問題に鑑みてなされたものであって、マルチメディアデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部から取得された前記マルチメディアデータから、所定の波長成分に対応する領域を特定するデータ特定部と、前記データ特定部により特定された領域に、秘匿性を有する秘匿情報データを埋め込むデータ埋込部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記データ作成装置は、前記秘匿情報データを暗号化するデータ暗号化部を備えることが好ましい。
【0010】
また、上記データ作成装置は、前記マルチメディアデータを再生することにより、取得可能となる情報に、暗号化されたデータの復号キー情報を埋め込む復号データ埋込部を備え、前記データ暗号化部は、前記復号キー情報を、暗号化を解除する復号キーとなるように暗号化することが好ましい。
【0011】
また、上記データ作成装置は、前記データ暗号化部は、前記復号キー情報をパスワードにより構成し、前記復号データ埋込部は、前記マルチメディアデータの再生により、前記パスワードが再生されるように前記復号キー情報を埋め込むことが好ましい。
【0012】
また、上記データ作成装置は、前記データ取得部は、所定の送信条件に対応して、取得するマルチメディアファイルを変更することが好ましい。
【0013】
また、上記データ作成装置は、前記マルチメディアデータは、音声データ、動画データ又は画像データにより構成されることが好ましい。
【0014】
また、別の本発明のデータ抽出装置は、上記データ作成装置により作成された前記マルチメディアデータに埋め込まれた前記秘匿情報データを取得するデータ取得装置であって、前記データ作成装置から前記マルチメディアデータを取得するマルチメディアデータ取得部と、前記マルチメディアデータ取得部により取得した前記マルチメディアデータのうち、所定の波長成分に対応する領域からデータを抽出するデータ抽出部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、別の本発明のデータ作成方法は、マルチメディアデータを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップの処理により取得された前記マルチメディアデータから、所定の波長成分に対応する領域を特定するデータ特定ステップと、前記データ特定ステップの処理により特定された領域に、秘匿性を有する秘匿情報データを埋め込むデータ埋め込みステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
データを傍受された場合であっても、秘匿情報データを含んだデータとして認識されにくいデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るデータ送受信システムの概要を示す図である。
【図2】データ送受信システムの基本的構成を示すブロック図である。
【図3】データ送受信システムにおけるデータの送受信を示す図である。
【図4】JPEG方式による画像データの圧縮工程の一例を示した模式図である。
【図5】データ送受信システムの第1の情報処理装置及び第2の情報処理装置の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図6】秘匿情報データの復号化の一例を示す模式図である。
【図7】第1の情報処理装置での送信データの生成から第2の情報処理装置2での秘匿情報データの表示までの流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るデータ送受信システムSの好適な実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。
【0019】
まず、データ送受信システムSの概要について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係るデータ送受信システムSの概要を示す図である。
【0020】
データ送受信システムSは、図1に示すように、第1の情報処理装置1(データ作成装置)と、第2の情報処理装置2(データ抽出装置)と、を備える。第1の情報処理装置1及び第2の情報処理装置2は、インターネットINを介して、互いにデータを送受信可能に構成される。なお、本実施形態においては、第1の情報処理装置1から第2の情報処理装置2へデータを送信し、第2の情報処理装置2で受信したデータをユーザが閲覧する例について説明する。
【0021】
本実施形態のデータ送受信システムSでは、送信者の操作により、第1の情報処理装置1から第2の情報処理装置2へ秘匿性の高いデータを送信する。そして、データ送受信システムSでは、第1の情報処理装置1から送信されたデータを受信した第2の情報処理装置2において、データを受信者が閲覧する。
なお、本実施形態においては、例えば、企業の機密情報等の送信先以外の者には閲覧をさせたくないデータである秘匿性の高いデータの一例として、ログインに用いるIDやパスワード等を秘匿情報として送信し、受信者が当該秘匿情報を閲覧する。データ送受信システムSでは、秘匿情報を有するデータ(以下、秘匿情報データという。)の送受信が行われる。
【0022】
次に、データ送受信システムSの第1の情報処理装置1及び第2の情報処理装置2の基本的構成について、図2を用いて説明する。図2は、データ送受信システムSの基本的構成を示すブロック図である。
【0023】
第1の情報処理装置1は、図2に示すように、第1の表示部11と、第1の操作部12と、第1の記憶部13と、第1の送受信部14と、第1のCPU(Central Processing Unit)15と、を備え、パーソナルコンピュータとして構成される。
【0024】
第1の表示部11は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、各種データ等の表示を行う。
第1の操作部12は、例えば、キーボード、マウス等で構成され、ユーザにより操作させることにより各種命令を入力する。
第1の記憶部13は、アプリケーション等の各種データ等を記憶する。
第1の送受信部14は、インターネットINに接続され、外部装置(本実施形態においては、第2の情報処理装置2)とデータの送受信を行う。
第1のCPU15は、例えば、ユーザによる第1の操作部12への操作を受けて、第1の表示部11、第1の記憶部13、第1の送受信部14等の制御を行う。
【0025】
第2の情報処理装置2は、図2に示すように、第1の情報処理装置1と同様に、第2の表示部21と、第2の操作部22と、第2の記憶部23と、第2の送受信部24と、第2のCPU25と、を備え、パーソナルコンピュータとして構成される。
【0026】
第2の表示部21は、例えば、LCD等により構成され、各種データ等の表示を行う。
第2の操作部22は、例えば、キーボード、マウス等で構成され、ユーザにより操作させることにより各種命令を入力する。
第2の記憶部23は、アプリケーション等の各種データ等を記憶する。
第2の送受信部24は、インターネットINに接続され、外部装置(本実施形態においては、第1の情報処理装置1)とデータの送受信を行う。
第2のCPU25は、例えば、ユーザによる第2の操作部22への操作を受けて、第2の記憶部23、第2の送受信部24、第2の表示部21等の制御を行う。
【0027】
以上のように構成されるデータ送受信システムSでは、秘匿情報データの送受信に際して、他者にデータを傍受された場合であっても、傍受されたデータから秘匿情報が含まれていることを察知されないようなデータを送受信することができる機能を有する。
【0028】
次に、上述した機能を発揮するデータ送受信システムSの送受信について、図3を用いて説明する。図3は、データ送受信システムSにおけるデータの送受信を示す図である。
【0029】
本実施形態のデータ送受信システムSにおける秘匿情報データの送受信は、図3に示すように、例えば、画像データ、動画データ、音声データ等のマルチメディアデータを送受信することにより行われる(図中、マルチメディア[画像/動画/音声])。
【0030】
データ送受信システムSにおいては、送信側(第1の情報処理装置1)において、送受信される秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(以下、搬送データともいう。)を生成する(図中、搬送データ[画像/動画/音声]+[秘匿情報])。
秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)の生成は、マルチメディアデータのうち高周波成分の領域に秘匿情報データを置き換えることにより行う。
【0031】
生成した秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)は、送信側(第1の情報処理装置1)により、インターネットINを介して、受信側(第2の情報処理装置2)に送信される。
【0032】
送信側から送信された秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)を受信した受信側は、高周波成分に対応する領域からデータを抽出して、秘匿情報データを取り出す。秘匿情報データを取り出した受信側では、秘匿情報データの閲覧等の利用に供する。
【0033】
このようにデータの送受信が行われるデータ送受信システムSにおいては、インターネットINを介してデータを送受信しているために、データが他の者(傍受側)に傍受される可能性がある。
【0034】
しかし、仮に、秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)が傍受された場合でも、データ送受信システムSにおいて送受信される秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)からは、秘匿情報データが含まれていることを判断されることがない。
【0035】
搬送データの判断に当たっては、傍受側(他の情報処理装置)では、秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ(搬送データ)を再生しても、通常のマルチメディアデータと遜色ない状態で再生されるために、秘匿情報データを含んだデータであるとは判断されず、単なるマルチメディアデータとして判断される。また、傍受側(他の情報処理装置)では、搬送データのデータ構造を解析しても、マルチメディアデータ部分以外のデータの末尾等は、通常のマルチメディアデータと同様のデータ構成であるために、秘匿情報データを含んだデータであるとは判断されず、単なるマルチメディアデータとして判断される。
【0036】
したがって、データ送受信システムSを利用して、秘匿情報データの送受信を行うユーザは、データの傍受を懸念することなく、安心してデータの送受信を行うことができる。
【0037】
次に、データ(秘匿情報データを含んだマルチメディアデータ)の作成について、詳述する。なお、以下の説明は、マルチメディアデータの一例として、画像データを用いた場合の例について説明する。
【0038】
本実施形態のデータ送受信システムSでは、秘匿情報データを含んだ画像データ(搬送データ)の作成に当たっては、マルチメディアを圧縮する技術を利用して行われる。本実施形態においては、JPEG方式により画像データを圧縮する技術を利用する。JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式による画像データの圧縮は、画像データ内の低周波成分の領域のデータ量を削減し、高周波成分の領域を削除することにより行われる。したがって、本実施形態のデータ送受信システムSでは、画像データの圧縮時に削除される高周波成分の領域に、秘匿情報データを置き換えることにより行われる。
【0039】
秘匿情報データの置き換えに係るJPEG方式による画像データの圧縮工程を、図4を用いて説明する。図4は、JPEG方式による画像データの圧縮工程の一例を示した模式図である。なお、以下の非圧縮の画像データをJPEG方式で圧縮する説明においては、説明の便宜上、画像データの一部の領域(8×8画素)について説明する。したがって、画像の圧縮は、領域毎に以下の圧縮の方法が適用されて、全体として1つの圧縮された画像データが作成されることになる。
【0040】
具体的には、データ送受信システムSにおいては、例えば、図4に示すように、非圧縮状態の画像データに、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)を行い、画像の信号である離散信号を周波数信号へ変換する。その結果、画像データは、図4(a)に示すように、その画像の周波的な特徴を表すDCT係数に変換される。このように、画像データは、DCT係数に表されることにより、領域内における周波数成分の度合い(高周波成分、低周波成分等)により表されることになる。
【0041】
次に、図4(b)に示すような各画素の対応する量子化テーブルを用いて、図4(c)に示すような量子化データを生成する。量子化データの生成は、図4(a)に示すDCT係数を、DCT係数に対応する画素の量子化テーブルの値で割ることにより算出される。すなわち、量子化データの値は、各画素が量子化テーブルの値の何倍であるかを四捨五入した整数値で求められる。なお、図4(c)に示す各画素の値は、数値が低いほど、高周波成分寄りであり、数値が高いほど、低周波成分寄りとなる。
【0042】
次に、画像データにおいては、図4(d)に示すように、逆量子化データを生成する。逆量子化データは、図4(c)に示す量子化データと、図4(b)に示す量子化データの画素に対応した量子化テーブルを掛け合わせることにより算出される。算出の結果、画像データにおいては、「0」の値となった画素が削除の対象となり、データ容量が削減されて、データの圧縮が行われる。
【0043】
データ送受信システムSにおいては、画像データにおいて、「0」の値となる各画素に秘匿情報データを置き換える。
【0044】
次に、上述したような機能を発揮するためのデータ送受信システムSの機能的構成について、図5を用いて説明する。図5は、データ送受信システムSに係る第1の情報処理装置1及び第2の情報処理装置2の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0045】
第1の情報処理装置1は、図5に示すように、第1のCPU15に、画像データ選択部151(データ取得部)と、高周波成分特定部152(データ特定部)と、データ置換部153(データ埋込部)と、を有する。
【0046】
第1の記憶部13には、さらに、画像データ(マルチメディアデータ)と、量子化テーブルデータと、秘匿情報データと、を記憶する。
【0047】
画像データ選択部151は、第1の記憶部13に記憶されている画像データを選択する。第1の記憶部13に複数の画像データが記憶されている場合には、画像データ選択部151は、例えば、扱う秘匿情報、送信先、送信時間等に対応付けて、1つの画像データが選択される。
【0048】
高周波成分特定部152は、画像データのうち高周波成分の領域を特定する。この高周波成分特定部152は、DCT部161と、量子化データ生成部162と、逆量子化データ生成部163と、画素特定部164とを有する。
【0049】
DCT部161は、離散コサイン変換を行い、画像データの信号である離散信号をDCT係数に変換する(離散コサイン変換:DCT)。具体的には、DCT部161は、画像データの信号である離散信号を図4(a)に示すようなDCT係数に変換する。
【0050】
量子化データ生成部162は、DCT部161により変換された画像のDCT係数を、第1の記憶部13に記憶される量子化テーブルに基づいて、量子化データを生成する。具体的には、量子化データ生成部162は、図4(a)に示すDCT係数を図4(b)に示す量子化テーブルに基づいて、図4(c)に示すような量子化データを生成する。
【0051】
逆量子化データ生成部163は、量子化データ生成部162により生成された量子化データの各画素に対応する量子テーブルの値を積算することにより、画素毎に逆量子化データを生成する。具体的には、逆量子化データ生成部163は、図4(c)に示す量子化データを、図4(b)に示す量子化テーブルに基づいて、図4(d)に示すような逆量子化データを生成する。
【0052】
画素特定部164は、逆量子化データ生成部163により生成された逆量子化データの値のうち、例えば、所定の値以下の画素を特定する。具体的には、画素特定部164は、図4(d)において、「0」の値の画素を特定する。
【0053】
データ置換部153は、画素特定部164により特定された画素の領域と、秘匿情報データを置換する。具体的には、データ置換部153は、画素特定部164により特定された図4(d)に示す「0」の値の場所に、秘匿情報データを置換する。
【0054】
このように構成される第1の情報処理装置1は、画像圧縮に用いられる手法により高周波成分の領域を特定し、当該高周波成分の領域に、秘匿情報データを埋め込む。
【0055】
したがって、第1の情報処理装置1により生成されるデータは、画像の圧縮により、通常削除される領域に、送受信の目的となるデータが埋め込んであるために、表示される画像上においては、他にデータが埋め込まれていることが認識されることがない。また、データが埋め込まれる領域は、画像の圧縮により、通常削除される領域、つまり、当該領域を削除した場合であっても、目視した場合に表示される画像に影響がない領域であるために、他の者が画像を目視しても、画像データが画像データの目的以外のデータを送信する媒体として使用されていることが認識されることがない。
したがって、データ送受信システムSにおいては、例えば、データの送受信の際に、データが他の装置に取得された場合であっても、単なる画像データとして、認識されるだけで、取得された画像データ内に送受信の目的となるデータが含まれていることが認識されることがない。データ送受信システムSにおいては、安全性の高いデータを送受信することができる。
【0056】
また、第1の情報処理装置1は、第1のCPU15に、データ暗号化部154を備える。
データ暗号化部154は、秘匿情報データを暗号化する。
したがって、画像データに、送受信の目的となるデータが暗号化されているために、安全性が向上する。
【0057】
また、第1の情報処理装置1は、第1のCPU15に、復号データ埋込部155を備える。
復号データ埋込部155は、画像データを表示することにより、暗号化された秘匿情報データの復号キー情報を埋め込む。
データ暗号化部154は、復号データ埋込部155により埋め込まれる復号キー情報を、暗号化を解除する復号キーとなるように秘匿情報データを暗号化する。復号キー情報は、具体的には、例えば、パスワードである。
【0058】
この場合、例えば、ユーザは、秘匿情報の復号化の際には、表示された画像データを確認して、表示された画像に記載されるパスワードを入力して、秘匿情報データを復号化したり、画像を解析して、パスワードの情報を取得して、秘匿情報データを復号化したりする。
このため、秘匿情報の取得においては、データ構造を解析しても復号キー情報を取得できないために、安全性が向上する。
【0059】
上述した具体例について図6を用いて説明する。図6は、秘匿情報データの復号化の一例を示す模式図である。本例においては、秘匿情報データは、テキストデータ「これは秘匿情報です・・・」であり、秘匿情報データの復号キーは、パスワード「492109」となるように、事前に暗号化されている。なお、秘匿情報データの復号キーとなるパスワードは、1回のみ使用可能となる、いわゆるOne Time Padとして構成してもよい。
【0060】
具体的には、例えば、第2の情報処理装置2で秘匿情報の復号化を行う場合には、図6に示すように、データの復号キーとなる「492109」(所定のフォントの全角数字)が画像データに表示される。
【0061】
この際、ユーザが、抽出されたデータの復号化を行う操作を行う。この際、ユーザは、画像を目視して、表示される復号キー「492109」を入力することで、抽出されたデータの復号化を行うことができる。
また、所定のフォントで表示されているために、画像解析により、復号キー情報を取得することができる。この場合、復号化をユーザの入力操作を介さずに自動化することができる。
【0062】
また、本例では、画像解析により抽出可能な所定のフォントによる「492109」を復号キーとして表示したが、これに限られない。データとして抽出できないような難解な表示にすることにより、目視にのみ復号キーを把握可能に構成することにより、データを解析して、復号キーを抽出することが困難になる。その結果、さらに、データの安全性を高めることができる。
【0063】
なお、本例においては、復号キー情報は、復号化に際して、直接的に入力することにより復号化可能なパスワードとして構成したがこれに限られない。復号キー情報は、間接的に復号化可能な情報でもよく、例えば、復号キー情報が記載されたサイトのURL(Uniform Resource Locator)や復号キーを想起させるような連想情報であってもよい。連想情報とは、例えば、復号キーが「10000」である場合には、連想情報「100×100=?」や、復号キー「東京」である場合には「日本の首都は?」等、また、連想情報は、例えば、「送信者の年齢は?」等の送受信するユーザ間でのみ知りうる情報であってもよい。
【0064】
また、第1の情報処理装置1において、第1の記憶部13は、複数の画像データを記憶することが可能である。
この場合、画像データ選択部151においては、所定の送信条件に対応して、取得するマルチメディアファイルを変更する。所定の送信条件とは、例えば、送信先(送信相手)や送信時間等の条件である。
【0065】
したがって、ユーザは、表示された画像を見ることで、送信相手や時間を判断することができる。
【0066】
また、第1の情報処理装置1は、第1のCPU15に、置換情報生成部156を備える。
置換情報生成部156は、データ置換部153により、画像データに埋めこまれた秘匿情報データの場所の情報である置換情報を生成する。
置換情報は、具体的には、実際に埋め込まれた画像の座表値でも、(高周波成分領域が特定されていない画像データの原画像であってもよい。
本実施形態においては、第1の情報処理装置1は、秘匿情報データが埋めこまれた画像データの他に、置換情報も合わせて第2の情報処理装置2に送信するように構成される。なお、本実施形態においては、秘匿情報データが埋めこまれた画像データ及び置換情報を第2の情報処理装置2に送信するように構成したがこれに限られず、秘匿情報データが埋めこまれた画像データのみを送信するように構成してもよい。
【0067】
第2の情報処理装置2は、第2のCPU25に、データ抽出部251と、データ復号化部252とを有する。
データ抽出部251は、例えば、第1の情報処理装置1により、インターネットINを介して送信された秘匿情報データが埋め込まれた画像データを受信した場合には、画像データのうち、高周波成分に対応する領域からデータを抽出する。
データ復号化部252は、例えば、データ抽出部251によって抽出された秘匿情報データが暗号化されていた場合には、復号キーに基づいて、暗号化された秘匿情報データを復号化する。
第2の記憶部23は、復号化された秘匿情報データを記憶する。
【0068】
したがって、データ送受信システムSにおいては、例えば、データの送受信の際に、データが他の装置に取得された場合であっても、単なる画像データとして、認識されるだけで、取得された画像データ内に送受信の目的となるデータが含まれていることが認識されることがない。
【0069】
第1の情報処理装置1での秘匿情報データの作成から、第2の情報処理装置2での秘匿情報の表示までの動作について図7を用いて説明する。図7は、第1の情報処理装置1での送信データの作成から第2の情報処理装置2での秘匿情報データの表示までの流れを示すフロー図である。
【0070】
ステップS1において、第1の情報処理装置1は、画像の高周波成分に秘匿情報を付与する。
画像の高周波成分に秘匿情報を付与するにあたり、第1の情報処理装置1(詳細には、高周波成分特定部152)においては、以下のような処理が行われる。
まず、DCT部161は、図4(a)に示すように、画像データの信号である離散信号をDCT係数に変換する。次に、量子化データ生成部162は、図4(a)に示すDCT係数を図4(b)に示す量子化テーブルに基づいて、図4(c)に示すような量子化データを生成する。次に、逆量子化データ生成部163は、図4(c)に示す量子化データを、図4(b)に示す量子化テーブルに基づいて、図4(d)に示すような逆量子化データを生成する。画素特定部164は、逆量子化データ生成部163により生成された逆量子化データの値のうち、所定の値(本実施形態においては、図4(d)に示す「0」の値)以下の画素を特定する。その結果、画像データにおいては、画素における高周波成分が特定される。
第1の情報処理装置1においては、以上のような処理が行われる。
その後、データ置換部153は、画素特定部164により特定された画素の領域(本実施形態においては、図4(d)に示す「0」の値の場所)と、秘匿情報データを置換する。なお、置換される秘匿情報データは、データ暗号化部154により、所定の復号キーにより復号可能に暗号化される。
【0071】
ステップS2において、第1の情報処理装置1は、画像情報として送信する。詳細には、第1の送受信部14は、ステップS1で生成した画像データを、インターネットINを介して、第2の情報処理装置2に送信する。この際、第1の情報処理装置1においては、置換情報生成部156により生成された秘匿情報データが置換された場所の置換情報データ及び復号キー情報を送信するデータに添付する。
【0072】
この際、例えば、傍受者が送信した画像データを取得して、画像データを解析した場合でも、画像のファイル構造上は、高周波成分を含んだ画像データであるため、単なる画像ファイルとして識別される。また、傍受者が画像を見ても、高周波成分であるために、識別することができない。このため、傍受者は、単なる画像データとして処理することになる。
【0073】
ステップS3において、第2の情報処理装置2は、高周波成分に相当する画素のデータから復号化して秘匿情報を抽出する。
具体的には、第2の送受信部24は、第1の情報処理装置1から送信されたデータ(暗号化された秘匿情報が埋め込まれた画像データ)を受信する。
その後、データ抽出部251は、添付されている置換情報に基づいて、画像データから暗号化された秘匿情報データを抽出する。
次に、データ復号化部252は、添付される復号キー情報に基づいて、データ抽出部251により抽出された暗号化された秘匿情報データを、復号化する。この際、第2の情報処理装置2により、表示される画像データから復号キーを取得して、取得した復号キーに基づいて、自動的にデータの復号化を行うように構成してもよい。このように構成することにより、ユーザの操作の手間を省くことができる。また、図6にしめすように、画像データに復号キーが埋めこまれている場合(画像として復号キー情報が表示される場合)には、ユーザは、第2の操作部22を操作して、復号キーを入力することで、暗号化された秘匿情報を復号化することができる。
【0074】
ステップS4において、第2の表示部21は、秘匿情報を表示する。
したがって、データ送受信システムSにおいては、安全性の高いデータを送受信することができる。
【0075】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0076】
また、上述した各実施形態では、1種類の画像データにより送受信を行うように構成したがこれに限られない。種々異なる画像データを用いることができ、例えば、送信先や送信時間に対応して、決まった画像データを送信するように構成することもできる。このように構成した場合には、ユーザは、データの管理を容易にすることができる。また、埋め込む秘匿情報の内容に合わせて埋め込む画像データを変えるように構成することもできる。
【0077】
また、上述した実施形態においては、秘匿情報を埋め込むデータを画像データとして構成したが、これに限られない。秘匿情報を埋め込むデータは、出力したときに出力に影響を与えない周波成分を有しているマルチメディアデータであればよく、例えば、動画データや音声データとして構成してもよい。
【0078】
また、上述した実施形態においては、秘匿情報データは、画像データの高周波成分領域に埋め込むように構成したが、これに限られない。秘匿情報データは、圧縮によりヒトに知覚に影響を与えず、データとして不要となる領域や冗長となる領域に埋め込むように構成してもよい。
【0079】
また、上述した各実施形態においては、第2の情報処理装置2で閲覧を目的とするデータとして説明したがこれに限られない。送受信の目的となるデータは、受信先側で利用することを目的とするデータであればよい。
【0080】
また、上述した各実施形態においては、データのやり取りをインターネットIN等の通信を介して行なったが、これに限られず、例えば、外部メモリ等を介してデータの搬送を行ってもよい。
【0081】
また、上述した各実施形態においては、第2の情報処理装置2で抽出した秘匿情報を、ユーザの閲覧のために、第2の表示部21において表示するように構成したがこれに限られない。秘匿情報は、第2の情報処理装置2等で利用できればよい。
【符号の説明】
【0082】
1 第1の情報処理装置(データ作成装置)
2 第2の情報処理装置(データ抽出装置)
24 第2の送受信部(マルチメディアデータ取得部)
151 画像データ選択部(データ取得部)
152 高周波成分特定部(データ特定部)
153 データ置換部(データ埋込部)
154 データ暗号化部
155 復号データ埋込部
251 データ抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチメディアデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部から取得された前記マルチメディアデータから、所定の波長成分に対応する領域を特定するデータ特定部と、
前記データ特定部により特定された領域に、秘匿性を有する秘匿情報データを埋め込むデータ埋込部と、を備えることを特徴とするデータ作成装置。
【請求項2】
前記秘匿情報データを暗号化するデータ暗号化部を備えることを特徴とする請求項1に記載のデータ作成装置。
【請求項3】
前記マルチメディアデータを再生することにより、取得可能となる情報に、暗号化されたデータの復号キー情報を埋め込む復号データ埋込部を備え、
前記データ暗号化部は、前記復号キー情報を、暗号化を解除する復号キーとなるように暗号化することを特徴とする請求項2に記載のデータ作成装置。
【請求項4】
前記データ暗号化部は、前記復号キー情報をパスワードにより構成し、
前記復号データ埋込部は、前記マルチメディアデータの再生により、前記パスワードが再生されるように前記復号キー情報を埋め込むことを特徴とする請求項3に記載のデータ作成装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、所定の送信条件に対応して、取得するマルチメディアファイルを変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデータ作成装置。
【請求項6】
前記マルチメディアデータは、音声データ、動画データ又は画像データにより構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のデータ作成装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の前記データ作成装置により作成された前記マルチメディアデータに埋め込まれた前記秘匿情報データを抽出するデータ抽出装置であって、
前記データ作成装置から前記マルチメディアデータを取得するマルチメディアデータ取得部と、
前記マルチメディアデータ取得部により取得した前記マルチメディアデータのうち、所定の波長成分に対応する領域からデータを抽出するデータ抽出部と、を備えることを特徴とするデータ抽出装置。
【請求項8】
マルチメディアデータを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップの処理により取得された前記マルチメディアデータから、所定の波長成分に対応する領域を特定するデータ特定ステップと、
前記データ特定ステップの処理により特定された領域に、秘匿性を有する秘匿情報データを埋め込むデータ埋め込みステップと、を含むことを特徴とするデータ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189869(P2012−189869A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54226(P2011−54226)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】