説明

データ保存媒体

データ点のトラックの形式で記録情報を含むデータ保存媒体であって、各データ点の色が、少なくとも異なる3色から選択され、該記録情報が、発色性組成物を含む基材上に配置され、該発色性組成物は、レーザー照射を受けると、少なくとも異なる3色に変化しやすい発色剤を含み、該発色剤が、ロイコ染料、ジアセチレンまたはカルバゾールであるデータ保存媒体。前記データ保存媒体を形成する方法、および前記媒体を読み取る方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ保存媒体、およびそれを形成し読み取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、保存されたデータは、2進数の1と0によって表される。コンパクトディスク(CD)上のデータは、例えば、ピット(2進コードの1に対応)とバンプ(2進コードの0に対応)の形で保存される。より多くのデータを保存するためのこれまでの努力は、ピットを小さくすることによって、ディスク上のピット数を増加させることに焦点が置かれてきた。
【0003】
(特許文献1)は、光学ディスクの1シート上で2種類のピットを使用する3値記録媒体を提供している。記録層は、アズレニウム塩、ピリリウム染料、ジエン化合物、クロコンメタン(croconic methane)染料またはポリメチン化合物から選択される化合物と、ジアセチレン誘導体との組み合わせよって形成される。記録層が透明から青色に変化する層に光を当てる。次いで、熱を加えると、この層の部分が変化して赤色になり、または溶融してピットが形成される。
【0004】
(特許文献2)は、基材と、少なくとも2個の色素J−凝集体の記録層とを有する光学式記録媒体について記載している。好適な調光(photocromic)染料には、スピロピラン、アゾベンゼン、フルギト、インディゴ、チオインディゴおよびトリアリールメタンが含まれる。異なる吸収スペクトルを有する様々なタイプの色素凝集体を使用して、確実に良好な光学読取りと書込み操作を行う。
【0005】
(特許文献3)は、光学式データの保存と回収に関する。従来のディスクのランドとピットは、異なる波長で吸収するドットに置き換えられている。情報を記録するために、ハロゲン化銀粒子を含む様々な化学物質を使用することができる。
【0006】
(非特許文献1)でSteckylらは、高容量のデータ保存デバイスについて記載している。800nm厚の二酸化ケイ素フィルムがシリコンウェーハに付加されている。そのフィルム上に情報を書き込むには、集束イオンビーム法を使用し、16の異なる深度の孔を加える。孔の深度によって、反射される光の量が決定される。(色が検出された)各孔は4ビット数を表し、それにより、研究者は1平方インチのフィルム上に5GBを超える情報を書き込めるようになる。しかし、それらの孔は、1秒間に310μmの速度でしか製造できないことを研究者は知っており、それは保存デバイス上への情報の記録が非常に遅いことを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,863,832号
【特許文献2】米国特許第4,737,427号
【特許文献3】米国特許第6,479,214号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Applied Physics Letters,2001,78(2),255−257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高速で書込みができるより大容量のデータ保存媒体を提供することが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、データ点のトラックの形式で記録情報を含むデータ保存媒体であって、各データ点の色が、少なくとも異なる3色から選択され、該記録情報が、発色性組成物を含む基材上に配置され、該発色性組成物が、レーザー照射を受けると、少なくとも異なる3色に変化しやすい発色剤を含み、該発色剤が、ロイコ染料、ジアセチレンまたはカルバゾールであるデータ保存媒体である。
【0011】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様によるデータ保存媒体を形成する方法であって、発色性基材上に、記録情報に対応してレーザー光照射を指し向けるステップを含み、各点の色が、少なくとも異なる3色から選択されているデータ点のトラックが生成されるように、該レーザー光に対する該基材の位置が変わる方法である。
【0012】
本発明はまた、本発明の第1態様によるデータ保存媒体を読み取る方法であって、前記媒体上にスキャニングレーザーを照射するステップ、および色検出器アレイを使用して反射された照射を検出するステップを含む方法である。
【0013】
Steckylらが記載する技法よりもはるかに高速で、本発明によるデータ保存媒体上に記録情報を載せるができる。さらに、少なくとも異なる3色の使用により、ピットとバンプだけに頼る従来のデータ保存器具よりも多くのデータを保存できるようになる。有利な点として、それらのデータは、保存媒体から極めて高速に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複数色もしくは明暗を含むデータ点を示す図である。
【図2】レーザーおよび色検出器と共にデータ点のトラックを示す図である。
【図3】ピットによるデータ点のトラックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
データ点のトラックには、少なくとも異なる3色から選択された色の点が含まれる。本明細書では「カラー(色)」という用語内には「色の明暗」が含まれる。
【0016】
典型的には、データ点のトラックには、異なる4色もしくは色の明暗点が含まれる。コンピューター用語では、これにより、4個の状態、またはヌル状態を含む5個の状態が与えらる。一般的に、異なる4色の使用によって、2ビットの情報が保存できるようになる。異なる8色の使用によって、3ビット、16色では4ビットの情報の保存が可能になり、以下同様である。好ましくは、2(式中、Xは2〜10の範囲)の色が使用される。
【0017】
例示的なデータ点トラックを図2に示す。これは、線状トラックであるが、もちろん他の構成も想定される。トラックは、種々の色のデータ点の経路である。
【0018】
本記録媒体は、2進コードで書かれるとは限らない。従って、10進数でコードを記録し、後に2進コードに翻訳してもよい。
【0019】
一般的に、データ点は、直径約1μmのドット形状である。通常、点はデータ保存媒体表面にトラックを形成する。データ点のトラックは、データ保存媒体表面でらせんもしくは円状トラックの形であってよい。スペーシングと各データ点の色とにより、記録情報に対応するコードが生成される。
【0020】
データ保存密度は、データ点の使用によりさらに高めることができ、その際、各データ点は複数色または色の明暗を含む(図1)。そうした点は、特定のレーザー/光線プロファイル、例えば、ガウス型、スーパーガウス型、例えば、「トップハット」型プロファイル、マルチトラバースモード、例えば、「ドーナツ」型プロファイル、およびそれらの組合せを使用し生成することができる。あるいは、ビームプロファイルは、回折性要素などのビーム改変成分もしくは混合成分を使用し、生成することもできる。レーザー/光線に、複数のビームプロファイルを呈示させることも可能である。本発明は、レーザーの使用に限定されない。本発明のデータ点を形成するのに、LEDなどの非干渉光源を使用することもできる。
【0021】
本発明の範囲内の記録媒体には、ディスク、テープ、カード、紙、フィルムなどが含まれ、特に好ましいものは、CDおよびDVDなどのディスクである。これらの媒体の形成に好適な基材は、当技術分野で公知である。これらには、ポリカーボネートプラスチック基材などのプラスチックが含まれる。本発明による記録媒体には、照射を受けると、少なくとも異なる3色を形成しやすい組成物が含まれる。この組成物は、その基材表面上にコートすることができ、または別法として、基材を形成する材料中に組み込むこともできる。その組成物も、基材材料を有するラミネート構築体の一部でありうる。
【0022】
照射を受けると、少なくとも異なる3色に変化しやすい組成物は知られている。例えば、国際公開公報第06/018640号、同第06/051309号、同第06/114594号、同第07/039715号および同第07/063332号を参照されたい(そのそれぞれの内容を参照により組み込む)。これらには、レーザー画像化、およびその目的に使用できる材料も記載されている。国際公開公報第02/074548号には、八モリブデン酸アンモニウムを含むレーザーマーキング可能組成物が記載している。一般的に、そうした組成物は、1色の変化しか受けられない。しかし、発色性組成物が層状をなす本発明の実施形態(以下参照)では、それらは、他の発色剤と組み合わせて使用することができる。本発明で使用するのに適している組成物を、以後「画像形成組成物」と呼ぶ。画像形成組成物から色を形成する工程を、以後「マーキング」と呼ぶ。
【0023】
UV、N、可視またはCOレーザーにより画像形成できる組成物を使用してよい。
【0024】
典型的には、本発明で使用されるレーザー画像形成組成物には、発色剤および結合剤が含まれる。それ以上の添加物には、NIR吸収体、分散剤、酸発生剤、UV吸収体/安定剤、加工助剤、共溶媒、漂白剤、消泡剤などが含まれうる。
【0025】
当業者は、希望する最終的な色に従って好適な染料、または染料の組合せを選択することができる。マーキングレーザーの強度、波長および/または曝露時間は全て、適切な色を確実に生成するために変えることができる。国際公開公報第2006/114594号には、レーザーダイオードと検流計を備え、本発明の発色性組成物にレーザー光を直射するのに適した装置が記載されている。国際公開公報第2007/039715号には、さらにインク不要印刷方法が記載されている。これらの刊行物と同じように、本発明の発色性組成物の色は、所望な点での照射フルエンスのレベルに従って選択することができる。
【0026】
レーザー画像形成組成物は、COレーザー、NIRレーザー、可視レーザー、またはUVレーザーでマーキングできる無機もしくは有機発色剤をベースにすることができる。無機発色剤は、多価金属塩のオキシアニオンであってよく、好ましい例はモリブデン酸塩、タングステン酸塩およびバナジン酸塩である。これら塩は、第1族または第2族の金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩であってよい。本発明で使用するのに適している無機発色剤の別の例は、国際公開公報第02/074548号に見出すことができる。好ましい例は、八モリブデン酸塩、例えば、八モリブデン酸アンモニウムである。他の例には、七モリブデン酸アンモニウム、およびモリブデン酸アミン、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)モリブデン酸アミンが含まれる。別の例は、メタタングステン酸アンモニウムなどのメタタングステン酸塩を含むタングステン酸塩、およびメタバナジン酸アンモニウムなどのメタバナジン酸塩を含むバナジン酸塩である。これらが、単色を形成するためだけに反応できる場合、さらに以下の説明するように、それらは、1種もしくは複数の他の発色剤と組み合せて使用される。
【0027】
好適な有機発色剤には、ロイコ染料として当業者に知られている材料が含まれる。好適なロイコ染料は、ノースカロライナ州在Ciba−Geigy社染料および化学薬品部門により、コーティング会議(1983,カリフォルニア州サンフランシスコ,pp157−165)で提供された「Dyestuffs and Chemicals for Carbonless Copy Paper」に記載されている。ロイコ染料は、中性もしくはアルカリ性媒体では無色であるが、酸性もしくは電子求引性物質と反応させると着色することが分っている。好適な例には、トリフェニルメタネフタリド化合物、アザフタリド化合物、イソインドリドフタリド化合物、ビニルフタリド化合物、スピロピラン化合物、ローダミンラクタム化合物、ラクトンおよびジラクトン化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー(BLMB)、ビス−(p−ジ−アルキルアミノアリール)メタン誘導体、キサンテン、インドリル、アウラミン、クロメノインドール化合物、ピロロ−ピロール化合物、フルオレン化合物、およびフルオランおよびビスフルオラン化合物などの化合物が含まれ、フルオラン化合物が好ましい。特に好ましい市販のロイコ染料製品には、スイスBasel在Ciba Speciality Chemicals社製Pergascript範囲、および日本国京都府、山田化学工業株式会社製のものが含まれる。
【0028】
本発明で使用できる代替の有機発色剤は、国際公開公報第2006/018640号および同第2006/051309号に開示されているカルバゾールおよびジアセチレンであり、その内容を参照により組み込む。
【0029】
本発明では、任意のジアセチレン、またはジアセチレンと、光に曝露すると色変化反応を起こすことが可能な他の物質との組合せを使用してよい。
【0030】
ジアセチレン化合物は、少なくとも1個のジアセチレン基、すなわち−C≡C−C≡C−を含む物質である。特に好ましいものは、多色色変化反応を示すジアセチレン化合物である。これらの化合物は、初めは無色であるが、紫外光などの好適な光に曝露されると、色変化反応を経て青色を生成する。次いで、ある種の青形態のジアセチレンは、近赤外光などのさらなる光に曝露することができ、それによって青形態は深紅、赤、黄、および緑色体に転換される。
【0031】
本発明で使用しうるジアセチレン化合物の具体例は、公開特許出願番号、国際公開公報第2006/018640号に示されている。
【0032】
別の例には、以下の一般構造式によって表される化合物が含まれる。
【0033】
【化1】


または、
【0034】
【化2】


または、
【0035】
【化3】


または、
【0036】
【化4】

【0037】
[式中、
XおよびYは、二価の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン型基(−CH−)(式中、n=0〜24)、または二価のフェニレン型基(−C−)(式中、n=0〜1)または両型の組合せであり、
QおよびVが存在する場合、QおよびVは、二価の架橋基、例えば、−S−、−O−、−NHR’−(式中、R’は水素またはアルキルである)、アミド、エステルまたはチオエステル基、カルボニルまたはカルバメートであり、
R1およびR2は、Hまたはアルキルであり、
AおよびTは、XもしくはYなどのアルキレン型もしくはフェニレン型でありうる二価の基、またはQもしくはVなどの架橋型、または両型の組合せ、Q基もしくはV基をさらに含むXもしくはYであり、
Zは、XもしくはQなどの二価の基、または両者の組合せ、Q基をさらに含むXであり、またはZは存在しなくてもよく、かつnは2〜20,000,000である。
【0038】
X基およびY基は、ジアセチレン基に関して、好ましくは[α]、[β]または[γ]位で選択的に置換される。例えば、下式に示すように、[α]−水酸基があってもよい。
【0039】
【化5】

【0040】
ジアセチレンは、対称的であっても、または非対称的であってもよい。
【0041】
QおよびVは、アミン、アルコール、チオールまたはカルボン酸などの基によって任意に置換される。両QおよびVが存在してもよいし、または別法としてQだけが存在してもよい。
【0042】
上記化合物のR1およびR2がアルキルである場合、それらは直鎖もしくは分枝鎖であってよく、有機化学で既知の他の官能基、例えば、アルコール、アミン、カルボン酸、芳香環系、およびアルケンおよびアルキンなどの不飽和基をさらに含んでよい。
【0043】
基R1、R2、Q、V、XおよびYはイオン基を含んでよく、そのイオン基はアニオン性であっても、またはカチオン性であってもよい。例には硫酸基(−SO−)およびアンモニウム基が含まれる。イオン基には、任意の好適な対イオンが含まれうる。
【0044】
さらなるジアセチレン化合物の例は、ジアセチレンカルボン酸およびその誘導体である。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ペンタコサジイン酸および10,12−ドコサジイン二酸およびそれらのその誘導体である。別の例には、5,7−ドデカジイン二酸、4,6−ドデカジイン酸、5,7−エイコサジイン酸、6,8−ヘンエイコサジイン酸、8,10−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘプタコサジイン酸、12,14−ヘプタコサジイン酸、2,4−ヘプタデカジイン酸、4,6−ヘプタデカジイン酸、5,7−ヘキサデカジイン酸、6,8−ノナデカジイン酸、5,7−オクタデカジイン酸、10,12−オクタデカジイン酸、12,14−ペンタコサジイン酸、2,4−ペンタデカジイン酸、5,7−テトラデカジイン酸、10,12−トリコサジイン酸2,4−トリコサジイン酸、およびその誘導体が含まれる。ジアセチレンアルコールおよびジオール化合物およびその誘導体も好ましく、例には5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール、5,7−エイコサジイン−1−オール、2,4−ヘプタデカジイン−1−オール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3,5−オクタジイン−1,8−ジオール、4,6−デカジイン−1,10−ジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2,7−ジオール、14−ヒドロキシ−10,12−テトラデカジイン酸が含まれる。他には、1,6−ジフェノキシ−2,4−ヘキサジイン、1,4−ジフェニルブタジイン、1,3−ヘプタジイン、1,3−ヘキサジインおよび2,4−ヘキサジインが含まれる。
【0045】
異なるジアセチレンの組合せを使用することもできる。特に好ましい組合せは、10,12−ペンタコサジイン酸もしくは10,12−ドコサジインジオイアク酸(docosadiyndioiac acid)およびその誘導体と、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールとの組合せである。10,12−ペンタコサジイン酸は、青、赤および黄を生成することができる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールは、シアン色を生成することができる。同時に、10,12−ペンタコサジイン酸を黄に、そして2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールをシアンに活性化すると緑が生じる。
【0046】
「活性化可能」なジアセチレン化合物、すなわち、光に対して比較的非反応性な第1の固体形態を有するが、「活性化」すると、光に対して比較的反応性な第2の形態に転換され、それによって可視画像を形成するための色変化反応を起こすことが可能なジアセチレン化合物は、本発明では特定の有用性を持つ。理論により制限されることなく、その活性化とは、再結晶化、結晶形改変、共結晶組合せまたは溶融/再固化過程であろう。
【0047】
刺激または刺激除去に応答して不活性形態および活性化形態に切り替えることができる、可逆的に活性化可能なジアセチレンも本発明の一部をなす。
【0048】
特に好ましいジアセチレンは、初期溶融および再固化活性化後は無色であるが、光、特にUV光に曝露すると青くなるジアセチレンである。最も好ましいジアセチレン化合物は、カルボン酸およびその誘導体である。
【0049】
R−C≡C−C≡C−R’
[式中、Rおよび/またはR’はCOX基を含み、その際、Xは、−NHY、−OY、−SYであり、その場合、YはHか、または少なくとも1個の炭素原子を含む任意の基である]
さらに特に好ましいものは、カルボン酸基がアミド、エステルまたはチオエステル中に機能付与されている誘導体である。これらは、ジアセチレンカルボン酸と、塩化オキサリルなどの塩素化剤とを反応させ、次いで、そのジアセチレン酸塩化物を、アミン、アルコールまたはチオールなどの求核性化合物と反応させることによって容易に製造することができる。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ドコサジイン二酸、およびアミド、エステル、チオエステルなど、その誘導体である。より特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸誘導体はアミドである。さらに特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸アミド誘導体は、少なくとも1個の、好ましくは両方のカルボン酸基が、以下に示すようなプロパルギルアミドに転換されているプロパルギルアミドである。
【0050】
【化6】

【0051】
プロパルギルアミドは、カルボン酸とプロパルギルアミンとの反応によって生成する。好適なアミドの作製に使用できる他の好ましいアミンには、ジプロパルギルアミンおよび1,1−ジメチルプロパルギルアミンが含まれる。
【0052】
活性化可能なジアセチレンは、一般的にNIR光吸収剤と一緒に使用されるが、この吸収剤は、700〜2500nmの波長範囲の光を吸収する化合物である。
【0053】
NIRファイバーレーザーなどのNIR光源を使用して、画像が必要な領域中にのみ発色性組成物を熱する。次いで、殺菌灯などのUV光源を使用して、UV光を組成物に照射する。しかし、ジアセチレン化合物のみが色変化反応を受けて、最初にNIR光を曝露した領域に画像が形成される。NIR光が曝露されない組成物領域は、無視しうる色変化反応を経て、本質的に無色のままであり、バックグラウンド照射に対して安定している。熱プリントヘッドを用いて、熱をベースとする事前活性化ステップを開始してよい。
【0054】
NIR光吸収剤の具体例には次のものが含まれる。
i.有機NIR吸収剤
ii.NIR吸収性「導電」ポリマー
iii.無機NIR吸収剤
iv.非化学量論的無機吸収剤。
【0055】
特に好ましいNIR吸収剤は、スペクトル(400〜700nm)の可視領域では基本的に吸光度がゼロのものであり、従って視覚的に無色に見えるコーティングをもたらす。
【0056】
有機NIR吸収剤は、NIR染料/色素として知られている。例としては、それだけには限らないが、メタロ−ポルフィリン、メタロ−チオレンおよびポリチオレンのファミリー、メタロ−フタロシアニン、これらのアザ変異体、これらのアニール化(annellated)変異体、ピリリウム塩、スクアリリウム、クロコニウム、アンミニウム、ジイモニウム、シアニンおよびインドレニンシアニンが含まれる。
【0057】
本発明で使用できる有機化合物の例は、米国特許第6911262号に教示されており、そしてDevelopments in the Chemistry and Technology of Organic dyes,J Griffiths(編),Oxford:Blackwell Scientific,1984、およびInfrared Absorbing Dyes,M Matsuoka(編),New York:Plenum Press,1990に示されている。本発明のNIR染料または色素の別の例は、米国ニュージャージー州Newark在Epolin社製Epolight(商標)シリーズ、カナダ、ケベック州American Dye Source社製ADSシリーズ、米国フロリダ州Jupiter在HW Sands社製SDAおよびSDBシリーズ、ドイツBASF社製Lumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765およびIR788、および英国マンチェスター、Blackley在FujiFilm Imaging Colorants社製Pro−Jet(商標)染料シリーズ、特にPro−Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDIに見出すことができる。別の例は、国際公開公報第08/050153号に教示されている。
【0058】
NIR吸収性「導電」ポリマーの例には、HC Starck社製の製品Baytron(登録商標)PなどのPEDOTが含まれる。別の例は、国際公開公報第05/12442号に教示されている。
【0059】
無機NIR吸収剤の例には、銅(II)塩が含まれる。リン酸ヒドロキシ銅(II)(Copper(II)hydroxyl phosphate)(CHP)が特に好ましい。別の例は、国際公開公報第05/068207号に教示されている。
【0060】
非化学量論的無機吸収剤の例には、還元酸スズインジウム、還元酸スズアンチモン、還元硝酸チタンおよび還元酸亜鉛が含まれる。別の例は、国際公開公報第05/095516号に教示されている。還元酸スズインジウムは、1550nm〜2500nmレーザーと組み合せるのが特に好ましい。
【0061】
NIR吸収剤の吸収プロファイルが、使用するNIR光源の発光波長とほぼ適合する場合が特に好ましい。
【0062】
NIR吸収剤の代わりに使用できる他の光吸収剤には、UV(120〜400nm)、可視(400〜700nm)および中赤外(約10.6μm)光吸収剤が含まれる。例には、染料/色素、UV吸収体およびイリオジン型の剤が含まれる。
【0063】
本発明では、電荷移動剤は、ジアセチレンと一緒に使用されうる。これらは、初めは無色であるが、プロトン(H)と反応させると、着色形態を生成する物質である。本発明の一部をなす電荷移動剤には、カルバゾールとして知られる化合物が含まれ、好適な例は、国際公開公報第2006/051309号に記載されている。ロイコ染料など、当業者には公知のさらなる電荷移動剤も使用することができる。通常、電荷移動剤は、他の物質、例えば、波長特異的でありうる光吸収剤、熱発生剤、酸発生剤などと組み合せて使用される。
【0064】
本発明での使用に特に好ましい組合せは、青および赤を得るための10,12−ペンタコサジイン酸または10,12−ドコサジイン二酸(またはその誘導体)などのジアセチレンと、緑を発生させる電荷移動剤である。
【0065】
有機発色剤が存在する場合、さらに酸発生成分を使用することも望ましいであろう。これは、光酸発生剤または熱酸発生剤であってよい。光酸発生剤の例には、スルホニウムおよびヨードニウム化合物などの「オニウム」型が含まれる。熱酸発生剤の例には、トリクロロメタンへテロ環が含まれる。
【0066】
本発明のレーザー画像形成組成物には、金属塩ヒドロキシル化合物などの発色系を含めることもでき、例には、アルギン酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム;ヒドロキシル化合物と組み合せた金属塩が含まれ、その例には、グルコースおよびスクロースなどの炭水化物や、セルロース化合物、ガムおよび澱粉などの多糖と組み合わせた炭酸ナトリウムなどが含まれる。レーザー画像形成金属塩の別の例には、ナトリウムマロン酸塩、グルコン酸塩およびヘプトン酸塩が含まれる。別の例は、国際公開公報第2007/045912号、同第2006/129078号および米国特許第6888095号に示されており、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0067】
任意の好適なエネルギー源、例えば、レーザーをマーキングに使用してよい。レーザーの波長は、200nm〜20μm領域であってよい。
【0068】
好適なレーザーには、典型的には9〜11.5μmの波長域の光を発するCOレーザーが含まれる。典型的には、可視帯域レーザーは、400〜780nmの波長域の光を発する。そのようなレーザーを使用した場合、この領域で吸収する材料を含む組成物を使用するのが好ましい。典型的には、UVレーザーは、190〜400nmの波長域の光を発する。そのようなレーザーを使用する場合、この領域で吸収する材料を含む組成物を使用するのが好ましい。近赤外線照射は、780〜2500nmの範囲の波長である。好適な近赤外レーザーは、固体、ダイオード、繊維またはダイオードアレイ系であってよい。近赤外レーザーを使用する場合は常に、レーザー画像形成組成物に近赤外吸収成分を加えるのが望ましい。好ましい近赤外吸収性化合物は、使用する近赤外照射の波長に類似する最大吸光度を有し、そしてほとんど、またはまったく可視色を有しない。好適な例には、リン酸ヒドロキシ銅(II)(Copper(II)hydroxyl phosphate)(CHP)などの銅化合物、混合金属酸化物化合物、特に還元非化学量論的バージョン、例えば、還元酸スズインジウムまたは還元酸スズアンチモン;およびMerck社製イリオジンおよびLazerflair製品などにより被膜した雲母;HC Starck社製導電性ポリマー製品Baytron(登録商標)Pなどの有機ポリマー;およびNIR染料/色素として当業者には公知の近赤外吸収性有機分子が含まれる。使用可能なNIR染料/色素には、メタロ−ポルフィリン、メタロ−チオレンおよびポリチオレン、メタロ−フタロシアニン、これらのアザ変異体、これらのアニール化(annellated)変異体、ピリリウム塩、スクアリリウム、クロコニウム、アンミニウム、ジイモニウム、シアニンおよびインドレニンシアニンが含まれる。
【0069】
本発明で使用可能な有機化合物の例は、米国特許第6911262号に教示され、そしてDevelopments in the Chemistry and Technology of Organic dyes,J Griffiths(編),Oxford:Blackwell Scientific,1984、およびInfrared Absorbing Dyes,M Matsuoka(編),New York:Plenum Press,1990に示されている。本発明のNIR染料または色素の別の例は、米国ニュージャージー州Newark在Epolin社製Epolight(商標)シリーズ、カナダ、ケベック州American Dye Source社製ADSシリーズ、米国フロリダ州Jupiter在HW Sands社製SDAおよびSDBシリーズ、ドイツBASF社製Lumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765およびIR788、および英国マンチェスター、Blackley在FujiFilm Imaging Colorants社製Pro−Jet(商標)染料シリーズ、特にPro−Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDIに見出すことができる。
【0070】
結合剤は、当業者には公知のいずれのものでもよい。好適な例には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン;ニトロセルロースなどのセルロース化合物;ビニルポリヤー(polyers)例えば、アセテートおよびブチラール、スチレン、ポリエーテルおよびポリエステルなどが含まれる。結合剤系水性溶媒または有機溶媒をベースにしてもよい。使用できる結合剤系の例には、Scott−Bader社製Texicryl範囲、ParaChem社製Paranol範囲、Wacker−Chemie社製Pioloform範囲、Lucite International社製Elvacite範囲、Johnson Polymers社製Joncryl範囲、およびBaxenden Chemicals社製WitcoBond範囲が含まれる。
【0071】
本発明の実施形態では、データ保存媒体は、レーザー照射を受けると、少なくとも異なる3色を形成しやすい発色性組成物であって、2層またはそれ以上の層を含む発色性組成物を含み、その際、各層には、レーザー照射を受けると色が変化しやすい組成物が含まれる。層状のデータ保存媒体は、DVDで一般的であり、より多くの量のデータを保存できるようになる。
【0072】
さらに、本発明の着色コードは、従来技術の一般的な「ピットおよびバンプ」コードと組み合わせてよい。例えば、データ点のトラックには、図3に図示したようなピット(またはへこみ)を含めてよい。これにより、記録媒体のデータ保存容量が増大する。
【0073】
コードは、1個もしくは複数のカラーレーザー検出器を使用し読み取る。好適なレーザー照射は、記録媒体上でスキャンされ、検出器アレイもしくはヘッド読み取りが反射した照射を受け取る。読み取る情報量は、記録媒体のビット数により増幅させた読み取り器具の転送速度に等しい。
【0074】
色コードとピットとバンプを組み合わせる場合、入射レーザー光は、読み取るピットまたはバンプに応じて、一般的に2個の検出器の1個に偏向される。これにより、4色が8個の状態をコードできるようになる。追加の検出器が各色の新たな状態をもたらすからである。
【0075】
以下の実施例により本発明を説明する。
実施例
(a).ジアセチレンインク
10,12−ペンタコサジイン酸(1g)、Durotak 180−1197(19g)および酢酸エチル(4g)を一緒に混合して、インク溶液を生成した。
【0076】
30 micron K−bar and RK Prooferプリンターを使用し、透明な50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に、そのインクをコートした。
【0077】
(b).ロイコ染料インク
以下を含むインクを調合した。Pergascript Blue SRB−P (例えば、Ciba、1.7g)、Yamada Yellow Y−726 (例えば、Yamada、2.8g)、Tinuvin 770DF(0.6g)、Sericol Polyplast PY−383(例えば、Sericol、56g)、Sericol、Thinner ZV−557(例えば、Sericol、35.5g)およびCyracure UVI Photoinitiator UVI−6992(例えば、Dow、3.4g)。
【0078】
30 micron K−bar and RK Prooferプリンターを使用し、透明な50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に、そのインクをコートした。
【0079】
(a)および(b)でコートした2枚のBOPPフィルムを合わせてラミネートを形成した。次いで、ラミネートを使用して、ディスクの形の光学式記録媒体を構築した。
【0080】
ジアセチレン層は、基本的に、透明から青に変化し、次いでCoherent Aviaの266nmのUVレーザー、またはJenten Acticure 4000によって提供されたものなど、266nm照射を含む好適な広帯域光源からを発せられたUV光に曝露すると赤くなった。
【0081】
ロイコ染料層は、Coherent Aviaの355nm UVレーザーから発せられたUV光などのUV光に曝露すると、無色から緑に変化した。
【0082】
次いで、可視光検出器を使用して、ディスクから情報を読み出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ点のトラックの形式で記録情報を含むデータ保存媒体であって、各データ点の色が、少なくとも異なる3色から選択され、該記録情報が、発色性組成物を含む基材上に配置され、該発色性組成物が、光源による照射を受けると、少なくとも異なる3色に変化しやすい発色剤を含み、該発色剤が、ロイコ染料、ジアセチレンまたはカルバゾールであるデータ保存媒体。
【請求項2】
前記データ点が、複数色および/または色の明暗を含む、請求項1に記載のデータ保存媒体。
【請求項3】
前記発色性組成物が、NIR吸収成分をさらに含む、請求項1または2に記載のデータ保存媒体。
【請求項4】
前記NIR吸収成分が、銅(II)塩、還元金属または混合金属酸化物、導電性ポリマーまたはNIR染料/色素である、請求項3に記載のデータ保存媒体。
【請求項5】
前記発色剤が、ジアセチレンである、前記請求項1〜4のいずれかに記載のデータ保存媒体。
【請求項6】
前記ジアセチレンが、10,12−ペンタコサジイン酸または10,12−ドコサジイン酸(docosadiynoic acid)またはその誘導体である、請求項5に記載のデータ保存媒体。
【請求項7】
前記誘導体が、アミド誘導体であり、好ましくはプロパルギルアミド誘導体である、請求項6に記載のデータ保存媒体。
【請求項8】
前記発色性組成物が、結合剤を含む基材表面上にコートされ、または該基材を形成する材料中に組み込まれ、または該基材を含むラミネート構築体の一部である、前記請求項1〜7のいずれかに記載のデータ保存媒体。
【請求項9】
CDまたはDVDである、前記請求項1〜8のいずれかに記載のデータ保存媒体。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれかに記載のデータ保存媒体を形成する方法であって、発色性基材上に、記録情報に対応する光源を指し向けるステップを含み、各点の色が、少なくとも異なる3色から選択されているデータ点のトラックが生成されるように、該レーザー光に対する該基材の位置が変わる方法。
【請求項11】
前記光源が、120nm〜20μm領域の波長を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光源が可変ビームプロファイルを有し、かつ複数色および/または色の明暗を含むそれぞれのデータ点を生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のデータ保存媒体を読み取る方法であって、該媒体上にスキャニングレーザーを照射するステップ、および色検出器アレイを使用して反射された照射を検出するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−502404(P2012−502404A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526562(P2011−526562)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051059
【国際公開番号】WO2010/029327
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(507055925)データレース リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
【Fターム(参考)】