説明

データ再配置方法及びストレージ管理装置

【課題】ボリュームが業務グループ単位で管理されている場合に、ストレージ資源を有効に利用できるようにデータを再配置する技術を提供する。
【解決手段】ストレージ装置によって提供され、業務サーバに読み書きされるデータを格納するボリュームに格納されたデータを再配置する方法であって、当該ボリュームは、業務サーバで処理される業務ごとにグループ化された業務グループ単位で管理され、ストレージ装置は、業務サーバによるボリュームに対するアクセス量を計測し、管理サーバは、計測されたアクセス量、ボリュームの転送性能及び容量をストレージ装置から取得し、再配置先ボリュームの性能に対応し、業務グループ単位で指定されるコストの入力を受け付け、業務グループに複数のボリュームが含まれている場合には、入力されたコスト、並びに、各ボリュームのアクセス量、転送性能及び容量に基づいて、再配置先ボリュームを個別に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ装置の資源を効率的に利用するための技術に関し、特に、ストレージ装置に格納されたデータを再配置する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
業務システムを長期間継続して利用すると、利用頻度が少なくなった業務データによって多くの記憶領域が占有され、ストレージ装置の資源(ボリューム)が有効活用されなくなってしまう。そこで、特許文献1には、データの利用価値(利用量)が長期にわたって一定ではなく、時間経過とともに低下する点(データライフサイクル)に着目し、ストレージ装置の資源の有効活用を目的とした技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、ストレージ運用管理者がデータの保存期間を予め定義しておき、定義された保存期間が経過すると、アクセス性能の高いボリュームから低いボリュームにデータを再配置(マイグレーション)する。こうすることによって、高速なボリュームを他の用途に利用することができ、ストレージ装置の資源(ボリューム)を有効利用することができる。
【0004】
さらに、特許文献2には、同じ業務で使用される複数のデータはデータライフサイクルが同じになる傾向に着目した技術が開示されている。具体的には、データを使用する業務の属性を基づいて業務で使用されているボリュームをグループ化(業務グループ)し、業務グループ毎にデータ保存期間を定義可能に構成し、マイグレーションに関わる煩雑な定義作業を軽減するための技術が開示されている。
【0005】
また、業務システムで利用されるデータを格納するストレージ装置では、障害の発生などに備えて冗長化してデータを保持するRAID構成となっている場合が多い。特許文献3には、RAID構成となっているストレージ装置において、パリティグループへのアクセス量を考慮して性能を判定し、業務データを再配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−139552号公報
【特許文献2】特開平05−173873号公報
【特許文献3】特開2005−234834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された技術は、データのライフサイクルに応じたマイグレーションを実施するものであり、業務単位、すなわち、業務グループ(同一業務で使用しているボリュームの集合)のデータライフサイクルが考慮されていない。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、同一業務で使用される業務データのライフサイクルがすべて同じものとして処理しているため、以下のような課題を解決することが困難である。
【0009】
第1に、ある業務で使用されるデータのデータライフサイクルが同じであっても、データに対するアクセス量が同じであるとは限らない。すなわち、一つの業務でも、日々使用するデータ、週1回使用されるデータ、月1回使用されるデータなどが混在する場合がある。このような場合、業務データを業務グループ単位で再配置すると、アクセス量が少ないデータもアクセス性能が高速なボリュームに配置してしまい、ストレージ装置の資源を有効に利用できないおそれがある。このような業務データ毎のアクセス量のばらつきは、業務データのグループ化単位を細分化すれば回避することはできるが、そのためには煩雑な作業が増えてしまう。
【0010】
第2に、業務データは時間が経過するにつれて利用価値は低下する傾向にあるが、データ量は時間が経過するに連れて増加する傾向にある。そのため、業務データの再配置を計画するときに、ストレージ運用管理者は業務データの容量とアクセス量がどの程度になるかを想定して、再配置を計画しなければならない。しかし、業務データ毎に必要なボリュームの容量も要求されるボリュームの性能もばらつきがあるため、業務グループ単位に再配置タスクを定義することが困難である。
【0011】
本発明の目的は、アクセス量に基づいて業務データを再配置することによって、ストレージ資源を有効に利用可能なシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的な一形態によれば、業務サーバに読み書きされるデータを格納するボリュームを提供するストレージ装置と、前記ストレージ装置を管理する管理サーバと、を備える計算機システムにおいて、前記ボリュームに格納されたデータを他のボリュームに再配置する方法であって、前記ストレージ装置は、前記管理サーバに接続する第1インターフェースと、前記管理サーバによって要求された処理を行うコントローラとを備え、前記管理サーバは、前記ストレージ装置に接続する第2インターフェースと、前記第2インターフェースに接続されるプロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶部とを備え、前記ボリュームは、前記業務サーバで処理される業務ごとにグループ化された業務グループ単位で管理され、前記ストレージ装置は、前記業務サーバによる前記ボリュームに対するアクセス量を計測し、前記管理サーバは、前記ストレージ装置から前記計測されたアクセス量を取得し、前記ボリュームの転送性能及び容量を前記ストレージ装置から取得し、前記ボリュームに格納されたデータを格納する再配置先ボリュームの性能を示し、前記業務グループ単位で指定されるコストの入力を受け付け、前記業務グループに複数のボリュームが含まれている場合には、前記入力されたコスト、前記業務グループに含まれる各ボリュームのアクセス量、転送性能及び容量に基づいて、前記各ボリュームの再配置先ボリュームを個別に選択する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一形態によれば、アクセス量に基づいてボリューム毎にデータを再配置することによって、ストレージ装置の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における業務システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の業務サーバの構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態のボリューム管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態のアクセス量テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の再配置タスクテーブルの一例を示す図である。
【図6A】本発明の実施の形態の業務グループ毎のコストを表示するコスト確認画面の一例を示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態の業務グループに含まれるボリュームに格納されたデータを再配置するタスクを登録する再配置タスク登録画面の一例を示す図である。
【図7A】従来技術による業務グループごとにデータを再配置する場合について説明する図である。
【図7B】本発明の実施の形態による業務グループに属するボリュームごとにデータを再配置する場合について説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態の再配置実施処理部による処理の全体の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の再配置実施処理部における容量要件算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態の再配置実施処理部における性能要件算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態の再配置実施処理部における再配置先ボリューム選択処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態における業務システムの構成を示す図である。
【0017】
本発明の実施の形態における業務システムは、業務サーバ300、ストレージ装置200及び管理サーバ100を含む。業務サーバ300、ストレージ装置200及び管理サーバ100は、LAN900を介して相互に接続される。業務サーバ300及びストレージ装置200は、SAN800を介して接続される。SAN800は、ファイバチャネルプロトコルが用いられているが、IPを利用したIP−SANであってもよい。
【0018】
また、図1に示す業務システムでは、業務サーバA300A及び業務サーバB300Bの2台の業務サーバが含まれているが、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。なお、業務サーバA300A及び業務サーバB300Bに共通する事項については、業務サーバ300として説明する。また、ストレージ装置200も複数台であってもよい。
【0019】
ストレージ装置200は、ディスクアレイコントローラ201及び複数の物理ディスクを備える。ディスクアレイコントローラ201は、ストレージ装置200に含まれる複数の物理ディスクによって構成されるパリティグループとして、RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)を構成する。RAIDを構成することによってデータを冗長化して保持するため、パリティグループに含まれる一台又は複数台の物理ディスクに障害が発生しても、残りの物理ディスクに格納された情報によって障害が発生した物理ディスクに格納されたデータを復元させることができる。パリティグループは、業務データを格納する1又は複数のボリューム202を提供する。ボリューム202は、各業務サーバ300に割り当てられる。
【0020】
業務サーバ300は、ストレージ装置200によって提供されるボリューム202に格納された業務データをSAN800を介して読み書きする。
【0021】
業務サーバ300では、1又は複数の業務処理が実行される。業務サーバ300は、業務データ312を格納するボリューム202が業務毎に割り当てられる。例えば、業務に割り当てられたボリューム202が業務サーバ300にマウントされる。1つのボリューム202には1つの業務が対応し、1つの業務には1又は複数のボリューム202が割り当てられる。1つの業務に割り当てられたボリューム202を業務グループとする。したがって、業務グループには、1又は複数のボリューム202が含まれる。
【0022】
例えば、図1に示すように、業務サーバA300Aで処理される「業務A」では、2つのボリューム202に業務データ312Aを格納する。業務データ312Aを格納する2つのボリューム202によって業務グループ310Aが構成される。
【0023】
また、業務サーバB300Bは、「業務B」及び「業務C」を処理する。「業務B」で使用される業務データ312Bは、業務グループ310Bに属するボリューム202に格納される。さらに、「業務C」で使用される業務データ312Cは、業務グループ310Cに属するボリューム202に格納される。
【0024】
業務には、業務サーバ300が複数の業務アプリケーションを提供し、契約者が利用するような形態(例えば、ASP)も含まれる。このような場合には、契約者及び業務アプリケーションごとにボリューム202を割り当て、割り当てられたボリューム202で業務グループ310が構成されるようにしてもよいし、契約者単位で業務グループ310を構成させるようにしてもよい。
【0025】
さらに、業務サーバ300がホスティングサービスなどの仮想サーバを提供する場合についても同様に考えることができる。この場合には、提供される仮想サーバで利用されるボリューム202によって業務グループ310が構成されるとして扱えばよい。
【0026】
ここで、業務サーバ300の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態の業務サーバ300の構成の一例を示す図である。
【0028】
業務サーバ300は、CPU301、一次記憶装置302、二次記憶装置303、ホストバスアダプタ306、表示装置307、入力装置308及びネットワークアダプタ309を備える。
【0029】
CPU301は、一次記憶装置302に記憶されたプログラムを実行することによって、業務を処理する。一次記憶装置302は、CPU301によって実行されるプログラムを記憶する。一次記憶装置302は、高速にアクセス可能な揮発性記憶媒体であるが、不揮発性の記億媒体であってもよい。
【0030】
二次記憶装置303は、業務サーバ300が稼動するために必要なプログラム及びデータが格納される。また、業務に必要なデータを格納してもよい。二次記憶装置303に格納されたプログラムは、実行時には一次記憶装置302にロードされ、CPU301によって実行される。
【0031】
表示装置307は、業務処理の結果などが表示され、例えば、ディスプレイなどである。入力装置308は、業務処理に必要なデータを入力するための装置であり、例えば、キーボードなどである。
【0032】
ホストバスアダプタ306は、SAN800に接続するためのインターフェースである。業務サーバ300は、ホストバスアダプタ306を介してSAN800に接続し、ストレージ装置200に格納されたデータを読み書きする。
【0033】
ネットワークアダプタ309は、LAN900に接続するためのインターフェースである。業務サーバ300は、ネットワークアダプタ309を介してLAN900に接続し、管理サーバ100若しくは他の業務サーバ300などに接続する。
【0034】
以上が業務サーバ300の構成である。ここで、図1の説明に戻る。
【0035】
管理サーバ100は、LAN900を介してストレージ装置200に接続し、業務サーバ300に提供されるボリューム202などを管理する。管理サーバ100は、CPU101、一次記憶装置102、二次記憶装置103、表示装置107、入力装置108及びネットワークアダプタ109を備える。CPU101、一次記憶装置102、二次記憶装置103、表示装置107、入力装置108及びネットワークアダプタ109は、内部バスによって相互に接続される。
【0036】
表示装置107は、ストレージ装置200の管理情報などを表示する装置であり、例えば、ディスプレイなどである。入力装置108は、ストレージ装置200を管理するために必要な情報を入力するための装置であり、例えば、キーボード若しくはマウスなどである。ネットワークアダプタ109は、LAN900に接続するインターフェースである。
【0037】
CPU101は、一次記憶装置102に記憶されたプログラムを実行することによって、ストレージ装置200を管理するための処理を実行する。一次記憶装置102は、CPU101によって実行される各種プログラムを記憶する。一次記憶装置102は、高速にアクセス可能な揮発性記憶媒体が利用されるが、不揮発性の記憶媒体であってもよい。
【0038】
また、管理サーバ100の一次記憶装置102は、再配置プログラム10000を記憶する。再配置プログラム10000は、ストレージ装置200によって提供されたボリューム202に格納された業務データを再配置するためのプログラムである。再配置プログラム10000は、ボリューム情報取得処理部11000、アクセス量取得処理部12000、再配置タスク登録処理部13000及び再配置実施処理部14000を含む。
【0039】
ボリューム情報取得処理部11000は、ストレージ装置200によって提供される各ボリューム202の転送性能及び容量などの構成情報を定期的に取得する。ボリューム202の構成が変更になった場合などには構成情報を別途取得するようにしてもよい。アクセス量取得処理部12000は、各ボリューム202のアクセス量を取得する。対応する業務サーバ300によるアクセス量を取得するようにしてもよい。
【0040】
再配置タスク登録処理部13000は、後述する再配置タスクテーブル23000に再配置タスクを登録する。再配置実施処理部14000は、再配置タスクテーブル23000に登録されたボリューム202の再配置タスクを実行する。再配置タスクとは、ボリュームに格納されていたデータを他のボリュームに移動又は複製する処理を実行するために必要な情報が定義されたものである。再配置タスクには、移動元及び移動先のボリュームの識別情報、再配置を実行する日時などの情報が含まれている。
【0041】
ボリューム202に格納されたデータの再配置を実行する場合、再配置プログラム10000が一次記憶装置102に読み出され、CPU101によって各機能が実行される。また、管理サーバ100の外部(具体的には、ストレージ装置200)との通信は、ネットワークアダプタ109を介して処理される。なお、再配置プログラム10000の各処理部の説明については後述する。
【0042】
二次記憶装置103は、ストレージ装置200の管理情報を格納するデータ格納領域20000が割り当てられる。また、本発明の実施の形態では、データ格納領域20000に格納される情報には、ボリュームの再配置に必要な情報が含まれる。具体的には、ボリューム管理テーブル21000、アクセス量テーブル22000及び再配置タスクテーブル23000が格納される。
【0043】
ボリューム管理テーブル21000は、ストレージ装置200上のそれぞれのボリュームの属性情報を管理するテーブルである。ボリューム管理テーブル21000の詳細については、図3を参照しながら説明する。
【0044】
図3は、本発明の実施の形態のボリューム管理テーブル21000の一例を示す図である。
【0045】
ボリューム管理テーブル21000は、前述のように、ストレージ装置200によって提供される各ボリューム202の属性情報を管理するテーブルである。ボリューム管理テーブル21000は、ボリューム識別子21001、業務グループ識別子21002、転送性能21003、容量21004、使用フラグ21005、優先度21006、及びパリティグループ識別子21007を含む。
【0046】
ボリューム識別子21001は、ボリューム202を一意に特定する識別子である。業務グループ識別子21002は、同一業務に使用されているボリュームをグループ化した業務グループ310を一意に特定する識別子である。ボリューム管理テーブル21000内で同じ業務グループ識別子のボリュームは、同じ業務グループに属する。
【0047】
転送性能21003は、ボリューム識別子21001によって特定されるボリューム202の転送性能(転送速度)である。容量21004は、ボリューム識別子21001によって特定されるボリューム202の容量である。
【0048】
使用フラグ21005は、ボリューム識別子21001によって特定されるボリューム202が業務サーバ300に割り当てられ、使用されているか否かを示すフラグである。優先度21006は、格納されている業務データの重要度などを示す指標であり、例えば、単位容量当たりのアクセス量に基づいて設定される。優先度が大きいボリュームに格納されたデータを再配置時に優先的に性能の高いボリュームに再配置される。
【0049】
パリティグループ識別子21007は、ボリューム識別子21001によって特定されるボリューム202が属するパリティグループの識別子である。
【0050】
以上がボリューム管理テーブル21000の構成である。続いて、アクセス量テーブル22000について説明する。
【0051】
アクセス量テーブル22000は、ボリューム毎のアクセス統計情報を管理するテーブルである。アクセス量テーブル22000の詳細については、図4を参照しながら説明する。
【0052】
図4は、本発明の実施の形態のアクセス量テーブル22000の一例を示す図である。
【0053】
アクセス量テーブル22000は、前述のように、ボリューム202ごとのアクセス統計情報を管理するテーブルである。アクセス量テーブル22000は、日付22001、ボリューム識別子22002及びデータアクセス量22003を含む。
【0054】
日付22001は、アクセス情報を採取した日付である。ボリューム識別子22002は、ボリュームの識別子である。データアクセス量22003は、ボリューム識別子22002によって特定されるボリューム202の時間帯毎のアクセス量である。単位は、ギガバイト(GB)となっている。
【0055】
なお、図4に示すアクセス量テーブル22000では、1時間毎(1時間当たり)のデータアクセス量を採取するように構成しているが、1日毎であってもよく、30分毎としてもよい。また、業務の内容によって定常的に特定の時間帯にのみデータアクセス量が増大する場合には、ピーク時のデータアクセス量を当該ボリューム202のデータアクセス量として再配置ボリュームを決定してもよい。さらに、夜間バッチ処理のように、通常業務が行われていない時間帯に処理される業務など、他の業務に影響を与えない時間帯でデータアクセス量が増大する場合には、このような時間帯のデータアクセス量を除外して再配置ボリュームを決定してもよい。
【0056】
以上がアクセス量テーブル22000の構成である。続いて、再配置タスクテーブル23000について説明する。
【0057】
再配置タスクテーブル23000は、ストレージ運用管理者が設定したボリューム202に格納された業務データを再配置するタスクを管理するテーブルである。再配置タスクテーブル23000の詳細については、図5を参照しながら説明する。
【0058】
図5は、本発明の実施の形態の再配置タスクテーブル23000の一例を示す図である。
【0059】
再配置タスクテーブル23000は、前述のように、ストレージ運用管理者によって設定されたボリューム202の再配置タスクを管理するテーブルである。再配置タスクテーブル23000は、業務グループ識別子23001、再配置実施予定日時23002、及び再配置先コスト23003を含む。
【0060】
業務グループ識別子23001は、業務グループ310の識別子である。再配置実施予定日時23002は、業務データの再配置を実施する日時である。
【0061】
再配置先コスト23003は、再配置後の業務グループ310のコストである。コストは、ボリューム202の転送性能及び容量などに基づいて決定される値であり、ボリューム202の性能を示すものである。ストレージ運用管理者は、ボリューム202のコストを参照して再割り当てを行うか否かを判断したり、再割り当てを行うボリュームの性能を指定したりする。コストを算出するための具体的な数式等については後述する。
【0062】
なお、再配置タスクテーブル23000に設定される情報は、図6Bにて後述する再配置タスク登録画面3200によって登録される。
【0063】
以上が再配置タスクテーブル23000の構成である。本発明の実施の形態においてボリュームに格納された業務データを再配置するために必要な情報について説明した。
【0064】
続いて、再配置プログラム10000の各処理部について説明する。再配置プログラム10000の各処理部は、CPU101によって実行されるプログラムであるが、以下の説明では各処理部を主体として説明する。
【0065】
ボリューム情報取得処理部11000は、ストレージ装置200によって提供されるボリューム202の情報を定期的に取得するための機能である。取得されたボリューム202の情報は、ボリューム管理テーブル21000(図4)に格納され、再配置タスク登録処理部13000及び再配置実施処理部14000の実行時に参照される。
【0066】
ボリューム情報取得処理部11000は、LAN900を介して、ボリューム202の構成情報を定期的にストレージ装置200から取得し、ボリューム管理テーブル21000に格納する。具体的には、ストレージ装置200によって提供されるボリューム202毎に、ボリューム識別子、転送性能、ボリューム容量を取得し、ボリューム管理テーブル21000のボリューム識別子21001、転送性能21003、容量21004に格納する。
【0067】
さらに、ボリューム情報取得処理部11000は、ストレージ装置200によって提供されたボリューム202が業務サーバ300に割り当てられているか否かを示す使用状況(使用中又は未使用)を取得し、ボリューム管理テーブル21000の使用フラグ21005に格納する。
【0068】
アクセス量取得処理部12000は、各ボリュームのアクセス量とパリティグループ毎のアクセス量をストレージ装置200から定期的に取得する機能である。取得されたアクセス量は、アクセス量テーブル22000に格納され、再配置実施処理部14000の実行時に参照される。パリティグループ毎のアクセス量については、パリティグループに属する各ボリュームのアクセス量を合計することによって算出するようにしてもよい。
【0069】
アクセス量取得処理部12000は、LAN900を介して、ボリューム202及びパリティグループのアクセス統計情報を定期的にストレージ装置200から取得し、アクセス量テーブル22000(図10)に格納する。具体的には、ストレージ装置200によって提供されるボリューム202毎に、アクセス情報採取日付、ボリューム識別子、時間毎のアクセス量を、日付22001、ボリューム識別子22002、データアクセス量22003に格納する。
【0070】
また、1日分の容量当たりのアクセス量を取得し、取得されたアクセス量に基づいて優先度を算出する。さらに、算出された優先度をボリューム管理テーブル21000の該当するボリュームの優先度21006に格納する。優先度とは、前述のように、ボリュームに格納されている業務データの重要度を示し、再配置先のボリュームを選択するための基準となる。例えば、ボリューム毎の1日分の容量当たりのアクセス量の比率を算出し、標準化することによって得られるものであってもよい。また、優先度は要求された条件を満たすボリュームの中から再配置先ボリュームを選択するために用いられるため、各ボリューム間で相対的なものであってもよく、システム内における各ボリュームのアクセス量の順位をボリューム数で割った値としてもよい。優先度を利用する具体的な処理については後述する(図11)。
【0071】
再配置タスク登録処理部13000は、ストレージ運用管理者が業務のデータライフサイクルに合わせてデータを再配置するタスクを生成及び登録するための機能である。再配置タスク登録処理部13000は、ストレージ運用管理者が業務グループ毎の現在のボリュームの利用コストを確認するためのコスト確認画面3100を表示する機能を含む。コスト確認画面3100の詳細については、図6Aを参照しながら説明する。
【0072】
図6Aは、本発明の実施の形態の業務グループ毎のコストを表示するコスト確認画面3100の一例を示す図である。
【0073】
業務システムでは、ストレージ資源を有効に利用するためには、どの業務グループでどのくらいの利用コストがかかっているかを把握し、重要な業務グループにコストの高いボリュームを割り当て、あまり重要でない業務グループにはコストの低いボリュームに割り当てる必要がある。コスト確認画面3100は、各ボリューム(ストレージ資源)のコストを一覧で参照することが可能に構成されている。
【0074】
コスト確認画面3100には、業務グループ一覧表3110が含まれる。業務グループ一覧表3110には、業務グループ毎の情報が含まれる。具体的には、グループID3111、現在のコスト3112、総容量3113及びボリューム数3114が含まれる。
【0075】
グループID3111は、業務グループ310を識別する識別子である。識別子をそのまま表示するのではなく、業務名などに変換して表示するようにしてもよい。
【0076】
現在のコスト3112は、現在、業務グループに割り当てられている各ボリューム202のコストの合計である。各ボリューム202のコストは、ボリューム管理テーブル21000から取得可能なボリューム202毎の転送性能及び容量に基づいて算出することが可能である。ストレージ運用管理者は、現在のコスト3112を参照することによって、特定のボリューム202のコストがかかりすぎていると判断したり、今後の運用を考えて業務グループ310のデータの再配置を計画したりすることができる。
【0077】
なお、本発明の実施の形態のコストは、ストレージ資源(業務グループに含まれる各ボリューム202)の利用コストであり、ボリューム202の転送性能値と容量値との積となっている。したがって、業務グループ毎のコストは、当該業務グループに含まれている各ボリューム202の転送性能と容量の積の総和になる。
【0078】
総容量3113は、業務グループ310に含まれる各ボリューム202の容量の総和である。また、ボリューム数3114は、業務グループ310に含まれるボリューム202の数である。
【0079】
業務グループ一覧表3110は、マウスなどの入力装置108によって業務グループを選択できるように構成されている。ストレージ運用管理者がいずれかの業務グループを選択した状態で、詳細表示ボタン3121を操作すると、業務グループに関する詳細な情報を含む詳細情報表示画面が表示される。
【0080】
詳細情報表示画面には、例えば、特定の業務グループ310の利用コストが全体に占める割合、業務グループ310内のボリューム202毎の性能及びコストといった情報が表示される。ストレージ運用管理者は、詳細情報表示画面を表示して、業務グループ310の再配置を計画するために必要な情報を参照することができる。また、ボリューム単位、業務グループ単位、若しくは、全体における割合などの形式で情報を参照することも可能である。
【0081】
再配置タスク登録処理部13000は、業務グループ310に含まれるボリューム202に格納された業務データを再配置するためのタスクを登録するインターフェースを提供する。具体的には、ストレージ運用管理者がいずれかの業務グループを選択した状態で、再配置タスク登録ボタン3122を操作すると、業務グループ310に含まれる各ボリューム202に格納された業務データを再配置するタスクを登録するための再配置タスク登録画面3200が表示される。再配置タスク登録画面3200では、タスクを登録するために必要な情報の入力を受け付ける。再配置タスク登録画面3200の詳細については、図6Bを参照しながら説明する。
【0082】
図6Bは、本発明の実施の形態の業務グループ310に含まれるボリューム202に格納された業務データを再配置するタスクを登録する再配置タスク登録画面3200の一例を示す図である。
【0083】
再配置タスク登録画面3200では、再配置を実施する予定日時と業務グループの再配置後のコストが指定され、再配置タスク登録処理部13000が業務グループの再配置タスクを生成する。再配置後のコストは、現在の業務グループのコストとの相対値(例えば、現在のコストの50%など)を指定してもよい。
【0084】
再配置タスク登録画面3200を介して登録された情報は、再配置タスクテーブル23000に格納される。具体的には、再配置タスク登録画面3200で設定された、業務グループの識別子、再配置実施予定日時入力欄3201、再配置後コスト表示欄3204は、再配置タスクテーブル23000の業務グループ識別子23001、再配置実施予定日時23002、再配置先コスト23003に格納される。
【0085】
また、現在の業務グループコスト表示欄3202には、再配置後のコストを設定する際に参考にしたりするために現在のコストが表示される。再配置後コスト指定入力欄3203には、前述のように、コストそのものが指定される場合と、相対値が指定される場合があり、相対値が設定された場合にはコストの算出結果が再配置後コスト表示欄3204に表示される。
【0086】
以上のように、ストレージ運用管理者は、再配置対象のボリュームを選択するためにコストを指定するだけでよく、再配置先のボリュームの性能を意識する必要がない。そして、後述する再配置実施処理部14000によって、指定されたコストに基づいて、再配置先のボリュームの性能条件を満たすボリュームが、業務グループ毎に選択される。このとき、業務グループに属するボリュームが複数あれば、各ボリュームのアクセス量に基づいて個別に再配置先のボリュームが選択される。
【0087】
再配置実施処理部14000は、再配置タスク登録処理部13000によって再配置タスクテーブル23000に格納された再配置タスクを管理し、再配置実施予定日時23002になったタスクを検出すると、業務グループ内の各ボリュームの使用率及びアクセス量を考慮して再配置先を選択し、データの再配置を実施する。
【0088】
まず、図7A及び図7Bを参照しながら、再配置タスクが実行された結果、再配置対象のボリュームに格納されたデータが再配置された状態を説明する。図7Aには業務グループ毎にデータを再配置した結果を示し、図7Bには、業務グループ310に属するボリューム202ごとにデータを再配置した結果を示している。
【0089】
図7A及び図7Bには、転送性能毎にボリューム202が示されている。左から順に、転送性能、再配置計画時(再配置実行前)の状態、再配置後の状態が示されている。図7Aでは業務グループ毎の再配置方法(従来の一般的な再配置方法)による再配置結果を示し、図7Bでは本発明の実施の形態の再配置方法による再配置結果を示している。なお、再配置前の状態は、図7A及び図7Bのいずれの場合も共通である。
【0090】
ここで、再配置計画時の状態についてさらに説明すると、再配置の対象となる業務グループには、転送性能が300Mbpsかつ容量が1GBのボリュームが2つ(ボリュームA,ボリュームB)含まれている。再配置前のコストは、(300Mbps×1GB)+(300Mbps×1GB)=600となる。また、ボリュームAとボリュームBのアクセス量の比は、1:2となっている。このとき、ストレージ運用管理者は、再配置後のコストに50%(=300)を指定している。
【0091】
従来技術による業務グループの再配置では、アクセス量にかかわらず、ボリュームA及びボリュームBが同じ転送性能を有するボリュームに再配置される。図7Aに示すように、容量を同じにした場合には、転送性能300Mbpsのボリュームから転送性能150Mbpsのボリュームに再配置されることによって50%のコストとすることができる。このように、従来技術では、業務グループ内のボリュームのアクセス量が異なる場合であっても、業務グループ内のすべてのボリュームが同じ性能のボリュームに再配置されるため、リソースの利用効率が悪化するおそれがある。
【0092】
一方、本発明の実施の形態では、図7Bに示すように、ボリューム間のアクセス量の比(1:2)に基づいて、一方を転送性能200Mbps、他方を転送性能100Mbpsのボリュームに割り当てる。すなわち、アクセス量の多いボリュームのデータは性能の高いボリュームに、アクセス量の少ないボリュームのデータは性能の低いボリュームに、アクセス量の比率に基づいて再配置される。このように、本発明の実施の形態では、ストレージ運用管理者が指定したコストを満たす範囲内でアクセス量の割合によって再配置先が選択されるため、リソースを有効に活用できる。
【0093】
続いて、本発明の実施の形態のボリュームに格納された業務データを再配置する手順の詳細について、図8から図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
図8は、本発明の実施の形態の再配置実施処理部14000による処理の全体の手順を示すフローチャートである。
【0095】
再配置実施処理部14000は、前述のように、管理サーバ100のCPU101によって実行されるプログラムである。再配置実施処理部14000は周期的に実行され、実施時刻になったタスクが存在すると、指定された条件に基づいてタスクが実行される。
【0096】
管理サーバ100のCPU101は、まず、再配置タスクテーブル23000を検索し、再配置実施予定日時23002と現在の時刻を比較することによって、実施時刻となった再配置タスクが存在するか否かを判定する(ステップ14100)。再配置タスクが存在しない場合には(ステップ14100の結果が「No」)、再配置実施処理部14000による処理を終了する。
【0097】
CPU101は、実施時刻となった再配置タスクが存在する場合には(ステップ14200の結果が「Yes」)、まず、再配置の対象となるボリュームの容量に基づいて再配置先の容量を算出する容量要件算出処理を実行する(ステップ14200)。容量要件算出処理の詳細については、図9にて説明する。
【0098】
CPU101は、再配置先のボリューム202の容量要件を算出すると、再配置先のボリューム202の転送性能を算出する性能要件算出処理を実行する(ステップ14300)。性能要件算出処理の詳細については、図10にて説明する。
【0099】
続いて、CPU101は、ステップ14200で算出された容量要件と、ステップ14300で算出された性能要件とに基づいて、再配置先のボリューム202を選択する再配置先ボリューム選択処理を実行する(ステップ14400)。再配置先ボリューム選択処理の詳細については、図11にて説明する。
【0100】
CPU101は、再配置先のボリューム202が選択されると、再配置元のボリューム202に格納されたデータを、選択された再配置先のボリューム202に移動又は複製することによって再配置するようにストレージ装置200に要求する(ステップ14500)。CPU101は、ストレージ装置200に対して、定期的にボリュームの再配置が完了したか否かを確認する。再配置元のボリューム202については、再配置の完了後に初期化する。初期化のタイミングは、再配置直後でもよいし、別のタイミングであってもよい。
【0101】
CPU101は、ボリューム202の再配置が完了すると、再配置後の状態にあわせてボリューム管理テーブル21000などを更新する(ステップ14600)。例えば、再配置先のボリューム202では、再配置元のボリューム202に対応する業務グループ識別子21002を、再配置先のボリューム202に対応する業務グループ識別子21002に設定し、さらに、再配置先のボリューム202に対応する使用フラグ21005を「使用中」に設定する。また、再配置元のボリューム202については、業務グループ識別子21002をクリア(グループなし(−)に設定)し、使用フラグ21005を「未使用」に更新する。
【0102】
以上が再配置実施処理部14000による処理の概要である。以下、各処理の詳細について説明する。図9にステップ14200の容量要件算出処理、図10にステップ14300の性能要件算出処理、図11にステップ14400の再配置先ボリューム選択処理の手順を示す。
【0103】
図9は、本発明の実施の形態の再配置実施処理部14000における容量要件算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0104】
容量要件算出処理は、前述のように、各業務データの再配置先のボリュームの容量要件を算出する処理である。
【0105】
CPU101は、まず、再配置元のボリューム202の使用率が所定の割合(例えば、90%)を超えているか否かを判定する(ステップ14210)。すなわち、現在使用中のボリューム202において所定の割合以上の容量が使用されている場合には、同じ容量のボリュームを割り当てると、再配置後に容量が不足する可能性がある。そこで、ボリューム管理テーブル21000などに基づいて、再配置対象の業務グループ内に使用率が所定の割合を超えるボリューム202が存在するか否かを判定する。
【0106】
CPU101は、再配置元のボリューム202の使用率が所定の割合を超えている場合には(ステップ14210の結果が「Yes」)、現在のボリューム使用量に基づいて新たな容量要件を算出し、再配置先ボリュームの容量要件とする(ステップ14221)。
【0107】
新たな容量要件は、現在の容量要件よりも大きくなるように設定されるが、例えば、現在の使用量が80%になるように、すなわち、現在の使用量を0.8で割った容量としてもよい。また、容量の増加率などに基づいてさらに容量が多くなるように設定してもよいし、警告メッセージを表示し、ストレージ運用管理者に容量要件を手動で入力させるようにしてもよい。
【0108】
一方、CPU101は、再配置元のボリューム202の使用率が所定の割合を超えていない場合には(ステップ14210の結果が「No」)、現在のボリューム使用量をそのまま容量要件とする(ステップ14222)。このとき、所定の割合よりもボリューム使用量が少ない場合には、必要容量を少なくするように容量要件を緩和してもよい。
【0109】
図10は、本発明の実施の形態の再配置実施処理部14000における性能要件算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0110】
性能要件算出処理は、前述のように、再配置先のボリュームの転送性能要件を算出する処理である。データを再配置する場合、ボリューム202に格納されたデータのアクセス量が大きいほど高い転送性能が必要となることから、本発明の実施の形態では、指定された再配置後のコスト内で、各再配置先ボリュームの転送性能が業務グループ内の各業務データのアクセス量の相対比を満たすように、各再配置先ボリュームの転送性能要件を算出する。
【0111】
CPU101は、まず、アクセス量テーブル22000から業務グループ内のすべての業務データに対するアクセス量を取得する(ステップ14310)。本発明の実施の形態では、このとき取得されるアクセス量は、データアクセス量22003の各時間帯のアクセス量を合計した1日当たりの総アクセス量(転送量)である。そして、取得されたアクセス量の比を計算し、それぞれの業務データの再配置先ボリュームの性能係数R(n)とする。
【0112】
図7Bに示した業務グループでは、ボリュームA及びボリュームBを含む業務グループにおいて、アクセス量の比率が1:2となっている。したがって、ボリュームAの性能係数は1、ボリュームBの性能係数は2とすることができる。なお、各ボリュームの性能係数は、アクセス量の比率に基づいていればよく、例えば、ボリュームAの性能係数を0.5、ボリュームBの性能係数は1としてもよい。
【0113】
CPU101は、次に、ステップ14310の処理で算出された性能係数に基づいて、再配置先ボリュームの転送性能要件を算出する(ステップ14320)。
【0114】
ここで、ボリュームnの転送性能をT(n)、容量をCa(n)とすると、業務グループ310のコストCoは、以下の数式(1)で表すことができる。
【0115】
Co=Σ{T(n)×Ca(n)}・・・(1)
すなわち、業務グループのコストCoは、各業務グループ内のボリュームの転送性能T(n)と再配置後の各業務グループ内のボリュームの容量Ca(n)の積の和である。
【0116】
例えば、図7Bの再配置前の業務グループのコストは、Co=300×1(ボリュームAのコスト)+300×1(ボリュームBのコスト)=600となる。
【0117】
また、基準となる転送性能をT(0)とすると、再配置先のボリュームnの転送性能は、以下の数式(2)で表すことができる。
【0118】
T(n)=R(n)×T(0)・・・(2)
さらに、数式(1)に数式(2)を代入すると、再配置後のコストCo’は、以下の数式(3)のように表すことができる。
【0119】
Co’=Σ{R(n)×T(0)×Ca(n)}・・・(3)
ここで、図6A、図6B及び図7Bを参照しながら再配置先のボリュームの要件(容量要件、特に転送性能要件)を算出する手順について具体的に説明する。
【0120】
まず、図6AにおいてグループID3111が“G001”の業務グループを選択する。このとき、再配置前のコスト(現在のコスト3112)は600である。なお、選択された業務グループにはボリュームA及びボリュームBが含まれ、それぞれ1GBの容量が割り当てられている。
【0121】
図6Bを参照すると、再配置前のコスト(3202)は600であり、再配置後コスト指定入力欄3203には50%が指定されているため、再配置後コスト表示欄3204には300と表示されている。すなわち、再配置後のコストCo’は300である。
【0122】
以上の条件で登録された再配置タスクの実行が開始されると、まず、図9に示した容量要件算出処理が実行される。ここでは、ボリュームA及びボリュームBの容量を算出する。ここでは、容量要件を変更しないものとし、それぞれ1GBのままとする。
【0123】
性能要件算出処理において、CPU101は、まず、アクセス量の比率を求める。このとき、図7Bに示すように、ボリュームAとボリュームBのアクセス量の比は1:2となる。ここで、ボリュームAの性能係数R(1)を1、ボリュームBの性能係数R(2)を2として、数式(3)に代入すると、300(Co’)=1×T(0)×1+2×T(0)×1となり、T(0)=100となる。さらに、数式(2)にR(n)及びT(0)を代入すると、ボリュームAの転送性能T(1)は100Mbps、ボリュームBの転送性能T(2)は200Mbpsとなる。
【0124】
以上のようにして、ストレージ運用管理者が指定したコストと業務グループ内の業務データのアクセス量の相対関係を考慮した再配置先ボリュームの容量要件と転送性能要件を特定することができる。続いて、算出された容量要件及び転送性能要件に基づいて、ボリューム202に格納された業務データを再配置する手順について説明する。
【0125】
図11は、本発明の実施の形態の再配置実施処理部14000における再配置先ボリューム選択処理の手順を示すフローチャートである。
【0126】
再配置先ボリューム選択処理では、容量要件及び転送性能要件が算出されると(ステップ14200、ステップ14300)、ストレージ装置200によって提供されているボリューム202を検索し、再配置先ボリュームを選択する。
【0127】
また、再配置先ボリューム選択処理では、業務グループに含まれるボリュームの数だけ、ステップ14420からステップ14480までの処理が実行される(ステップ14410)。以下、具体的な手順について説明する。
【0128】
CPU101は、まず、再配置実施処理部14000によって、ボリューム管理テーブル21000から、「使用フラグ21006が“未使用”」、かつ、「容量21004が要求ボリューム容量と等しい」、かつ、「転送性能21003が要求転送性能と等しい」という条件を満たすボリューム202を検索し、検索結果を再配置候補ボリュームとする(ステップ14420)。
【0129】
続いて、CPU101は、ステップ14420によって検索された再配置候補ボリュームが1以上存在するか否かを判定する(ステップ14430)。条件を満たす再配置候補ボリュームが存在しない場合には(ステップ14430の結果が「No」)、転送性能要件を緩和して再検索する(ステップ14440〜14453)。
【0130】
転送性能要件の緩和は、例えば、各ボリュームの性能係数の平均が1になるように変換し、変換後の性能係数に基づいて抽出する転送性能要件の範囲を広くする。具体的には、性能係数が1より大きい場合は、+10%内の転送性能のボリュームを検索する(ステップ14453)。また、転送係数が1より小さい場合には、−10%内の転送性能のボリュームを検索する(ステップ14451)。転送係数が1の場合は、±10%の転送性能のボリュームを検索する(ステップ14452)。
【0131】
図7Bの例では、ボリュームAの転送係数が0.7(2/3)、ボリュームBの転送係数が1.3(4/3)となるので、ボリュームAについては、−10%の範囲内(すなわち、90Mbps〜100Mbps)、ボリュームBについては、+10%の範囲内(すなわち、200Mbps〜220Mbps)でボリュームを検索すればよい。なお、転送性能要件を緩和しても未使用ボリュームを抽出できなかった場合には、さらに転送性能要件を緩和することによって検索を継続する。
【0132】
なお、性能要件を緩和する範囲は必ずしも10%とする必要はなく、10%よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、性能要件を緩和してもよく、例えば、所定の範囲で容量の多いボリュームの選択を許可するようにしてもよい。
【0133】
CPU101は、条件を満たす再配置候補ボリュームが存在する場合には(ステップ14430の結果が「Yes」)、再配置先候補ボリュームの中から再配置先ボリュームを選択する(ステップ14460〜14480)。
【0134】
再配置先候補ボリュームの中から再配置先ボリュームを選択する場合、再配置先の候補となるボリュームが属するパリティグループにアクセス量の多い業務データが格納されていると、アクセス量の多い業務データのために転送性能が悪化する可能性がある。前述のように、特許文献3にはパリティグループ全体に対するアクセス量を考慮した再配置方法が開示されている。しかし、すべての業務データを転送性能の高いボリュームに再配置してしまうと、再配置実施予定日時が早いボリュームに格納された業務データが転送性能の高いボリュームに再配置されてしまい、より転送性能の高いボリュームが要求された場合に転送性能の高いボリュームに再配置されない可能性がある。
【0135】
ここで、データ量とアクセス量との組み合わせを考慮すると、アクセス量の多い業務データは転送性能が高いボリュームへ配置したいが、データ容量が大きい場合には高性能なパリティグループの容量を多く消費することになり、ストレージ資源の利用効率が悪化する。一方、データ容量が少ない場合には、アクセス量の多いデータを転送性能の高いボリュームに多く配置できるため、ストレージ資源の利用効率を向上させることができる。
【0136】
そこで、アクセス量が少ない業務データは、転送性能の低いボリュームに配置する方がストレージ資源の利用効率が良く、また、容量が大きいほどストレージ資源を消費するため、さらに転送性能の低いボリュームへ格納した方がストレージ資源の利用効率は向上する。したがって、容量当たりのアクセス量が多いほど転送性能が高いボリュームに格納すればストレージ資源の利用効率が向上することになる。言い換えると、容量当たりのアクセス量が少ないほど転送性能の低いボリュームに再配置すればストレージ資源の利用効率が向上することになる。
【0137】
以上より、本発明の実施の形態では、単位容量当たりのアクセス量によって算出された優先度に基づいて再配置先を決定する。以下に手順を示す。
【0138】
CPU101は、まず、各再配置先候補ボリュームが属するパリティグループのアクセス量を算出する(ステップ14460)。具体的には、ボリューム管理テーブル21000から、再配置先候補の各ボリュームが属するパリティグループのパリティグループ識別子21007を特定し、当該パリティグループに属するボリュームを取得する。そして、取得されたボリュームのアクセス量の総和を計算し、パリティグループごとのアクセス量を算出する。
【0139】
CPU101は、各パリティグループのアクセス量を、一番アクセス量の大きいパリティグループのアクセス量で割った値をアクセス量係数として算出する(ステップ14470)。アクセス量係数は、再配置先候補ボリュームが属するパリティグループのアクセス量の比である。また、1からアクセス量係数を引いたものをパリティグループの空係数とする。パリティグループの空係数は、再配置先候補ボリュームが属するパリティグループの未使用帯域の比に対応する。未使用帯域の大きいボリュームほど、同じパリティグループに属する他のボリュームによる転送性能の劣化を抑えることができる。
【0140】
そして、CPU101は、ボリューム管理テーブル21000から再配置対象のボリュームの優先度21006を取得し、パリティグループの空係数の中で一番値が近い(差が少ない)パリティグループに属するボリュームを再配置先ボリュームとして選択する(ステップ14480)。なお、同じパリティグループに属する複数のボリュームが再配置先ボリュームとなっていた場合には、ボリューム識別子21001の値が小さいボリュームを再配置先とする。
【0141】
以上の手順を業務グループ内のすべてのボリュームに対して実行することによって、単位容量当たりのアクセス量を考慮して再配置先のボリュームを選択することができる。
【0142】
その後、再配置対象のボリュームに格納されたデータを、選択された再配置先ボリュームに移動又は複製することによってデータの再配置を実行する。このとき、複数のボリュームに格納されたデータを再配置する場合には、アクセス量に応じて格納するデータを分配するようにしてもよい。
【0143】
本発明の実施の形態によれば、ストレージ運用管理者はデータのアクセス量若しくはボリュームの性能を意識せず、業務グループのコストを指定することによって、指定された業務グループに属するボリュームの再配置先ボリュームを選択し、再配置を実施することができる。
【0144】
また、本発明の実施の形態によれば、業務グループの単位を必要以上に詳細化することなく、アクセス量に合わせてボリュームに格納された業務データを再配置することができる。したがって、業務グループ単位でストレージ資源の利用コストを把握することが容易になる。
【0145】
さらに、本発明の実施の形態によれば、単位容量当たりのアクセス量に基づいて再配置先ボリュームを選択するため、再配置の実行順に性能の高いボリュームが優先して割り当てられることがない。したがって、要求されたコストだけでなく、運用中の業務データの利用状況を加味した再配置を実行することが可能になる。
【0146】
ここで、本発明の実施の形態の変形例として、ストレージ装置200が複数台存在し、異なるストレージ装置間で業務データを再配置する場合について説明する。
【0147】
ストレージ装置200が複数台存在し、ストレージ装置間で業務データを再配置するためには、業務サーバ300とストレージ装置200間の経路情報を変更する必要がある。この場合、業務サーバ300にボリュームが同一であることを認識させる必要があるが、ストレージ装置に実装された「シン・プロビジョニング」などの仮想化技術を利用することによって対応することができる。
【0148】
また、再配置前後で経路情報が変更となるため、業務サーバ300とストレージ装置200間の経路の転送性能を考慮してストレージ装置200を選択する必要がある。例えば、業務サーバ300と再配置先ストレージ装置間の転送性能と、再配置先候補ボリュームのコストを掛け合わせて経路全体のコストとすればよい。再配置先候補ボリュームを選択する場合には、例えば、パリティグループの代わりにストレージ装置に対して空係数を算出し、優先度と比較して再配置先ボリュームを選択すればよい。
【0149】
本発明の実施の形態の変形例によれば、システム内にストレージ装置が複数台存在する場合に、異なるストレージ装置間で業務データを再配置する場合でも、コストを利用して同様に業務データを再配置することができる。
【符号の説明】
【0150】
100…管理サーバ
101…CPU
102…一次記憶装置
103…二次記憶装置
107…表示装置
109…ネットワークアダプタ
200…ストレージ装置
201…ディスクアレイコントローラ
202…ボリューム
300…業務サーバ
301…CPU
302…一次記憶装置
303…二次記憶装置
306…ホストバスアダプタ
307…表示装置
309…ネットワークアダプタ
310…業務グループ
312…業務データ
800…SAN
900…LAN
3100…業務グループ毎のコスト確認画面
3200…再配置タスク登録画面
3201…再配置実施予定日時入力欄
3202…現在の業務グループコスト表示欄
3203…再配置後コスト指定入力欄
3204…再配置後コスト表示欄
10000…再配置プログラム(再配置処理部)
11000…ボリューム情報取得処理部
12000…アクセス量取得処理部
13000…再配置タスク登録処理部
14000…再配置実施処理部
20000…データ格納領域
21000…ボリューム管理テーブル
22000…アクセス量テーブル
23000…再配置タスクテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務サーバに読み書きされるデータを格納するボリュームを提供するストレージ装置と、前記ストレージ装置を管理する管理サーバと、を備える計算機システムにおいて、前記ボリュームに格納されたデータを他のボリュームに再配置する方法であって、
前記ストレージ装置は、前記管理サーバに接続する第1インターフェースと、前記管理サーバによって要求された処理を行うコントローラと、前記ボリュームを提供する記憶装置とを備え、
前記管理サーバは、前記ストレージ装置に接続する第2インターフェースと、前記第2インターフェースに接続されるプロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶部とを備え、
前記ボリュームは、前記業務サーバで処理される業務ごとにグループ化された業務グループ単位で管理され、
前記ストレージ装置は、前記業務サーバによる前記ボリュームに対するアクセス量を計測し、
前記管理サーバは、
前記ストレージ装置から前記計測されたアクセス量を取得し、
前記ボリュームの転送性能及び容量を前記ストレージ装置から取得し、
前記ボリュームに格納されたデータを格納する再配置先ボリュームの性能を示し、前記業務グループ単位で指定されるコストの入力を受け付け、
前記業務グループに複数のボリュームが含まれている場合には、前記入力されたコスト、並びに、前記業務グループに含まれる各ボリュームのアクセス量、転送性能及び容量に基づいて、前記各ボリュームの再配置先ボリュームをそれぞれ選択することを特徴とするデータ再配置方法。
【請求項2】
前記再配置先ボリュームを選択する手順は、
前記業務グループに含まれる各ボリュームの容量の使用量に基づいて、前記各再配置先ボリュームに必要な容量を算出し、
前記業務グループに含まれる各ボリュームのアクセス量の比に基づいて、前記各再配置先ボリュームの転送性能の比を算出し、
前記入力されたコスト、前記算出された各再配置先ボリュームの容量、及び前記算出された各再配置先ボリュームの転送性能の比に基づいて、基準となる転送性能を算出し、
前記算出された基準となる転送性能及び前記各再配置先ボリュームの転送性能の比に基づいて、前記各再配置先ボリュームの転送性能を算出し、
前記算出された各再配置先ボリュームの転送性能、及び前記算出された各再配置先ボリュームの容量に基づいて、前記各再配置先ボリュームを選択することを特徴とする請求項1に記載のデータ再配置方法。
【請求項3】
前記管理サーバは、
前記計測されたアクセス量及び前記ボリュームの容量に基づいて単位容量当たりのアクセス量を算出し、
前記算出された単位容量当たりのアクセス量に基づいて、前記各ボリュームの優先度を算出し、
前記算出された優先度に基づいて、前記各再配置先ボリュームを選択することを特徴とする請求項2に記載のデータ再配置方法。
【請求項4】
前記ストレージ装置は、複数の前記記憶装置で構成されたパリティグループから1又は複数の前記ボリュームを前記業務サーバに提供し、
前記管理サーバは、
前記各ボリュームに対するアクセス量に基づいて、前記パリティグループごとのアクセス量を算出し、
前記再配置先ボリュームが属する前記パリティグループのアクセス量、及び前記算出された優先度に基づいて、前記各再配置先ボリュームを選択することを特徴とする請求項3に記載のデータ再配置方法。
【請求項5】
業務サーバに読み書きされるデータを格納するボリュームを提供するストレージ装置を管理するストレージ管理装置であって、
前記管理サーバは、前記ストレージ装置に接続するインターフェースと、前記インターフェースに接続されるプロセッサと、前記プロセッサに接続される記憶部とを備え、
前記ボリュームは、前記業務サーバで処理される業務ごとにグループ化された業務グループ単位で管理され、
前記プロセッサは、
前記業務サーバによる前記ボリュームのアクセス量を前記ストレージ装置から取得し、
前記ボリュームの転送性能及び容量を前記ストレージ装置から取得し、
前記ボリュームに格納されたデータを格納する再配置先ボリュームの性能を示し、前記業務グループ単位で指定されるコストの入力を受け付け、
前記業務グループに複数のボリュームが含まれている場合には、前記入力されたコスト、並びに、前記業務グループに含まれる各ボリュームのアクセス量、転送性能及び容量に基づいて、前記各ボリュームの再配置先ボリュームをそれぞれ選択することを特徴とするストレージ管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7A】
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【図7B】
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