説明

データ処理装置、プログラムおよび記録媒体

【課題】 所定の条件に従ってプリントジョブを画像形成装置に振り分けるデータ処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供すること。
【解決手段】 印刷処理を複数の画像形成装置で振り分けるためのデータ処理装置110であって、印刷要求に応答して、描画データを生成する描画手段224と、印刷要求にかかる印刷データの発送先を決定するための情報を抽出する抽出手段222と、発送先を決定するための情報に応じて、複数の画像形成装置122〜128の中から発送先を決定する発送先決定手段244と、決定された発送先に応じた改変を、描画データ234および印刷設定情報の一方または両方に施す改変手段260と、発送先の画像形成装置に対し、描画データおよび印刷設定情報を含む、改変された印刷データを発送して、印刷処理を指令する発送手段242とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷出力のためのデータ処理技術に関する。本発明は、より詳細には、所定の条件に従ってプリントジョブを画像形成装置に振り分けるデータ処理装置、該データ処理装置を実現するためのプログラム、および該プログラムを格納する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオフィス環境においては、MFP(Multi-Function Peripheral)、レーザプリンタ、プリントサーバなどがネットワークに接続され、複数の画像形成装置が利用可能とされていることが多い。しかしながら、このような複数のロケーションから複数の画像形成装置が利用可能な環境においては、複数の画像形成装置の中から所望のものを選択する際に、指定ミスにより、問題を発生させる可能性がある。
【0003】
近年、上述した不具合に対応するための技術として、印刷が実行されたコンピュータ固有の情報等に従って出力先を決定し、決定された出力先の画像形成装置で印刷を実行する、出力先振り分けシステムが知られている。
【0004】
例えば、特開2010−157208号公報(特許文献1)は、ネットワークを介して複数のクライアントコンピュータの印刷出力を管理するデータ処理装置を開示する。このデータ処理装置は、ネットワークを介して印刷要求を受領し、印刷要求に対応する印刷データからページイメージとして中間ファイルを作成して、出力先プリンタ情報に対応するリモートドライバを選択して呼び出すことにより、リモートプリンタのための出力データを作成し、対応するリモートプリンタに出力させる仮想プリンタドライバを備える。
【0005】
さらに、特開2011−2881号公報(特許文献2)は、仮想プリンタドライバを備え、出力先の選択および出力内容の変更を条件付ける規則に従って、仮想プリンタドライバにより生成されたデータを書き換えるとともに、決定された出力先に対応するプリンタドライバを選択して印刷指令する構成を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の振り分けシステムにおいては、印刷データの発送先となる画像形成装置が設置される場所の如何にかかわらず、一律に文書が印刷されてしまうため、情報セキュリティ上の観点から充分なものではなかった。例えば、発送先として指定可能な画像形成装置が複数存在し、そのうちのいくつかが誰でも入室可能な場所に設置されている場合に、そこに社外秘の文書が印刷されてしまう可能性がある。社外秘の機密情報などを含む文書を誰でも目にすることが可能な場所に出力してしまうことは望ましくなく、セキュリティの観点から改良が望まれる。また、従来技術の振り分けシステムでは、画像形成装置の設置場所を踏まえて発送先を決定するルールを定めることも考えられるが、ルール設定が煩雑化してしまう。
【0007】
本発明は、上記従来技術における不具合に鑑みてなされたものであり、本発明は、印刷データの発送先を振り分ける振り分けシステムにおいて、設置場所等の属性が異なる画像形成装置に応じて、印刷データを改変することによって、画像形成装置の属性にかかわらず一律に文書が印刷されてしまうことによる情報セキュリティ上の不具合を解消することが可能なデータ処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決するために、以下の特徴を有するデータ処理装置を提供する。本データ処理装置は、印刷要求に応答して、描画データを生成する描画手段と、上記印刷要求にかかる印刷データの発送先を決定するための情報を抽出する抽出手段と、発送先を決定するための情報に応じて、複数の画像形成装置の中から発送先を決定する発送先決定手段とを備え、印刷処理を複数の画像形成装置で振り分ける。本データ処理装置は、さらに、決定された発送先に応じた改変を、上記描画データおよび印刷設定情報の一方または両方に施す改変手段と、上記発送先となる画像形成装置に対し、上記描画データおよび印刷設定情報を含む、改変された印刷データを発送して、印刷処理を指令する発送手段とを含む。
【0009】
本発明では、さらに、コンピュータを上記各手段として機能させる、印刷処理を複数の画像形成装置に振り分けるためのデータ処理装置を実現するためのコンピュータ実行可能なプログラムを提供することができる。さらに、本発明では、上記プログラムをコンピュータ可読に格納する記録媒体を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、印刷データの発送先を振り分ける際に、発送先に対応した印刷データの改変が施された上で発送される。これにより、印刷データの発送先となる画像形成装置の属性如何にかかわらず、一律に文書が印刷されてしまうことによる不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態によるデータ処理装置を含むプリンタネットワークのネットワーク環境を示す図。
【図2】本実施形態によるデータ処理装置のハードウェア構成図。
【図3】本実施形態によるデータ処理装置の機能ブロックを示す図。
【図4】本実施形態による文書改変部の詳細な機能ブロック図。
【図5】本実施形態によるタイプ別改変部の詳細な機能ブロック図。
【図6】本実施形態による文書改変を行った後の描画データを表す模式図。
【図7】(A)本実施形態による発送処理部が参照する対応付けテーブルおよび(B)発送先タイプ決定部が参照する分類テーブルのデータ構造を例示する図。
【図8】本実施形態による機密文書判定部が参照するテーブルのデータ構造を例示する図。
【図9】本実施形態によるデータ処理装置が実行する振り分け処理を示すシーケンス図。
【図10】本実施形態による機密文書判定部が参照する他の機密キーワード登録テーブルのデータ構造を例示する図。
【図11】本実施形態によるデータ処理装置が実行する他の振り分け処理を示すシーケンス図。
【図12】本実施形態による分類テーブルの編集支援機能に関連する機能ブロック図。
【図13】本実施形態の分類テーブルを編集するための管理画面を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態によるデータ処理装置110を含むプリンタネットワーク100のネットワーク環境を示す図である。プリンタネットワーク100は、オフィスなどに配置される複数のクライアント112,114,116,118がネットワーク130に接続されて構成されている。図1に示す例示的なプリンタネットワーク100では、さらに、MFP122、レーザプリンタ124,126、インクジェットプリンタ128などがリモートプリンタとしてネットワーク130に接続されている。以下、上記MFP122およびプリンタ124〜128を、以下、リモートプリンタとして総称する。
【0014】
上記ネットワーク130は、1000Base−TXのイーサネット(登録商標)などの有線ネットワーク、IEEE802.11などの規格の無線ネットワークを含んで構成することができる。上記データ処理装置110、クライアント112〜118およびリモートプリンタ122〜128は、ネットワーク130を介して、TCP/IPプロトコルに基づくパケット通信により相互通信を行う。ネットワーク130は、LAN(Local Area Network)の他、VPN(Virtual Private Network)等によるセキュア環境下で構築されたインターネットなどの広域ネットワークを含んで構成されていてもよい。
【0015】
本実施形態によるデータ処理装置110は、クライアント112〜118からの印刷要求に応答して、各種条件に従って、印刷データの適切な発送先のリモートプリンタを決定する。本データ処理装置110は、決定された発送先のリモートプリンタに対応して、印刷データを改変する処理を実施する。本データ処理装置110は、リモートプリンタに対応するプリンタドライバを呼び出し、該リモートプリンタに宛てて、改変された内容の印刷データを発送する。
【0016】
発送先として決定されるリモートプリンタは、クライアント112〜118に対応付けて決定することができる。図1中、点線で囲まれた領域140,150,160は、同一のロケーションと見なされる拠点を表す。本プリンタネットワーク100では、例えば、ユーザは、使用するクライアントが設置された同一のロケーション、または近隣のロケーションに配置されたリモートプリンタにて、印刷出力を行わせることができる。
【0017】
図1の例示によれば、クライアント112およびリモートプリンタ122がロケーション140を構成し、他のクライアントおよびプリンタも同様に対応付けられ、ロケーション150,160を構成している。ただし、図1に示すネットワーク環境は例示であって、クライアントはロケーション140〜160各々に1または複数存在してもよい。リモートプリンタもロケーション140〜160各々に1または複数存在していてもよい。さらに、ロケーションには、クライアントのみまたはリモートプリンタのみを配置してもよい。
【0018】
リモートプリンタ122〜128は、それぞれのロケーションに設置される。しかしながら、設置場所などの画像形成装置の属性如何によっては、誰でも入室可能な部屋に設置されるなど、セキュリティ上懸念されるものも存在する。したがって、セキュリティが確保されていないリモートプリンタから、機密情報を内容として含む文書がそのまま印刷出力されてしまうことを回避することが望ましい。そこで、本実施形態によるデータ処理装置110は、決定された発送先のリモートプリンタに対応して印刷データを改変する処理を施した上で、決定された発送先のリモートプリンタに発送し、印刷出力を行わせる。なお、上述した仮想プリンタドライバおよび印刷データを改変する処理については、詳細を後述する。
【0019】
図2は、本実施形態によるデータ処理装置110のハードウェア構成を示す図である。データ処理装置110は、マイクロプロセッサ・ユニット(MPU)12と、BIOS(Basic Input Output System)を格納する不揮発性メモリ14と、MPU12によるプログラム処理を可能とする実行記憶空間を提供するメモリ16とを含む。MPU12は、起動時に、不揮発性メモリ14からBIOSを読み出し、システム診断を行うとともに入出力装置26の管理を行う。
【0020】
MPU12は、内部バス22を介して記憶制御用インタフェース18に接続され、ハードディスク20が、MPU12からの入出力要求に応答してデータの書き込みまたは読み出しを実行する。記憶制御用インタフェース18としては、IDE(Integrated Device Electronics)、ATA(AT Attachment)、SATA、eSATAなどの規格により、ハードディスク20の入出力を管理するインタフェースを使用することができる。MPU12は、内部バス22を介してUSB、IEEE1164などのシリアルまたはパラレル・インタフェース24を制御して、キーボード、マウス、プリンタなどの入出力装置26と通信し、ユーザからの入力を受け取る。
【0021】
データ処理装置110は、さらにVRAM28とグラフィック・チップ30とを含む。グラフィック・チップ30は、MPU12からの指令に応答してビデオ信号を処理し、ディスプレイ装置32へと表示させている。MPU12は、また、内部バス22を介してネットワークI/F(NIC;Network Interface Card)34と接続する。これにより、データ処理装置110を、ネットワーク130を通して、クライアント112〜118およびリモートプリンタ122〜128などの外部装置と通信させている。
【0022】
データ処理装置110は、不揮発性メモリ14やハードディスク20、その他NV−RAM(図示せず)やSDカード(図示せず)などの記憶装置に格納されたプログラム(図示せず)を読み出し、メモリ16のメモリ領域に展開する。これにより、データ処理装置110は、適切なオペレーティング・システム(OS)のもとで、後述する各機能手段および各処理を実現する。上記OSとしては、Windows(登録商標)、UNIX(登録商標)またはLINUX(登録商標)など、如何なるアーキテクチャを有するOSを採用することができる。
【0023】
なお、詳細な説明は割愛するが、本実施形態のクライアント112〜118についても、図2に示すハードウェア構成と同様の構成とすることができる。クライアント112〜118は、パーソナル・コンピュータやワークステーションなどの情報処理装置、またはPDA(Personal Digital Assistance)やスマートフォンなどの携帯情報端末として構成することができる。
【0024】
以下、図3〜図9を参照しながら、本実施形態の振り分け処理について説明する。図3は、本実施形態によるデータ処理装置110の機能ブロックを示す図である。図3に示すように、データ処理装置110は、複数の機能手段を含んで構成される。これらの機能手段は、MPU12が、ハードディスク20に格納されるプログラムをメモリ16に読み込んで、該プログラムを実行することにより、コンピュータ上に実現される。
【0025】
データ処理装置110は、データ処理部210と、アプリケーション実行部212とを含む。アプリケーション実行部212は、ネットワーク130を介してクライアント112〜118からの指示を受領して各種処理を実行する。説明する実施形態では、クライアント112〜118は、いわゆるシンクライアントとして構成される。データ処理装置110と、クライアント112〜118との間は、RDP(Remote Desktop Protocol)などの適切な遠隔接続プロトコルを使用して、トランザクションが可能とされている。
【0026】
遠隔操作により、アプリケーション214で作成された文書の印刷指令が行われると、印刷要求元通知部216によるプリント指令イベントの発生に応答して、GDIなどのAPIコールを経て、プリントジョブ(以下、単にジョブとして参照する。)が生成され、該ジョブデータがデータ処理部210に渡される。
【0027】
データ処理部210は、仮想プリンタドライバ218と、ジョブ格納部226と、発送処理部240とを含んで構成される。仮想プリンタドライバ218は、アプリケーション実行部212からの呼び出しに対応して、ジョブデータを受領して、当該ジョブにかかる処理を開始させる。ジョブ格納部226は、仮想プリンタドライバ218が呼び出された段階でアプリケーション214から送付されたジョブデータを一旦格納する。発送処理部240は、所定のルールに従って発送先を制御し、発送先に対応してセキュリティに基づく印刷データの改変を適宜行うとともに、決定されたリモートプリンタ122〜128いずれかのプリンタドライバ300に印刷データを渡す。プリンタドライバ300は、印刷データを受領して、対応するリモートプリンタ122〜128に印刷出力させる。
【0028】
仮想プリンタドライバ218は、より詳細には、仮想プリント管理部220と、ジョブ情報データ抽出部222と、仮想描画部224とを含む。仮想プリンタドライバ218は、ジョブデータを受領すると、仮想プリント管理部220を呼び出し、ジョブデータをジョブ格納部226に格納する。仮想プリント管理部220は、仮想描画部224を呼び出し、仮想描画部224は、ジョブ格納部226に現在格納されているジョブデータから、ページ毎の描画データ234をジョブ毎の作業領域230a〜230cに格納する。
【0029】
上記描画データ234は、システムで再利用可能な形式にて生成される。描画データ234のデータ形式としては、特に限定されるものではないが、EMF(Enhanced Meta File)、ビットマップ、PDF(Portable Document Format)またはXPS(EXL Paper Specification)などを挙げることができる。例えば特定の実施形態であるWindows(登録商標)システムであれば、描画データ234は、スプーラが生成するEMFファイルを、プリントプロセッサがページ単位などの所定のユニット単位毎に分割して、作業領域230にコピーすることにより生成される。あるいは、描画データ234は、グラフィックモジュールがEMFをページ毎に作業領域230に生成することにより生成される。
【0030】
仮想プリント管理部220は、さらに、ジョブ情報データ抽出部222を呼び出す。ジョブ情報データ抽出部222は、ジョブ格納部226に格納されたジョブデータから、発送先を決定するための情報を抽出し、該情報を記述するジョブ情報データ232をジョブ毎の作業領域230a〜230cに格納する。ジョブ情報データには、また、印刷設定情報が含まれる。
【0031】
発送先を決定するための情報としては、印刷要求元クライアントのMACアドレス(Media Access Control Address)、IPアドレス(Internet Protocol Address)などの端末識別情報、印刷要求を行ったユーザのログインユーザ名やユーザ権限などのユーザ識別情報、ジョブの印刷設定情報や文書名、ページ数など印刷内容情報など種々の条件付け情報を挙げることができる。さらに、印刷要求の要求元とは異なるユーザまたは端末に関連付けて印刷出力させる実施形態では、発送先を決定するための情報として、印刷出力の宛先クライアントの端末識別情報や宛先ユーザのユーザ識別情報を用いてもよい。
【0032】
さらに、特定の実施形態においてデータ処理部210は、作業領域230の描画データ234およびジョブ情報データ232を取得してページ割り当て、面付けなどの処理を実行する、イメージ処理部236を含むことができる。
【0033】
発送処理部240は、ジョブ毎にインスタンスとして起動されて、仮想プリンタドライバ218が出力したデータを、所定のルールに従って発送先を決定し、発送先に対応して、上記描画データおよび印刷設定情報の一方または両方に改変を施した上で、決定された発送先のリモートプリンタに出力する。ジョブ毎に起動された発送処理部240のインスタンスは、印刷出力が完了すると終了する。発送処理部240は、より詳細には、データ発送部242と、発送先決定部244と、文書改変部260とを含んで構成される。
【0034】
データ発送部242は、発送先決定部244に対し、発送先の決定を依頼し、決定された発送先を受領する。データ発送部242は、発送先決定部244から決定された発送先の通知を受領すると、通知された発送先を設定するとともに、さらに文書改変部260に対し、該発送先に対応した改変を依頼する。データ発送部242は、改変が完了すると、発送先に対応するリモートプリンタのプリンタドライバ300を呼び出し、その改変が施された内容で印刷データを発送先リモートプリンタに発送して、印刷処理を指令する。
【0035】
発送先決定部244は、クライアント112〜118とリモートプリンタ122〜128との対応付けを規定する対応付けテーブル246を参照して、種々の条件付け情報に従って発送先を決定する。発送先決定部244は、発送先を決定すると、決定した発送先をデータ発送部242に通知する。
【0036】
対応付けテーブル246は、発送先のリモートプリンタの選択を条件付けており、好適には、特定の用途に応じてユーザ定義可能なファイルとして提供される。図7(A)は、本実施形態の発送処理部240が参照する対応付けテーブルのデータ構造を例示する。図7(A)に示す対応付けテーブル246は、発送先を決定する条件付けの対象となる条件付け情報が指定されるフィールド246aと、条件付け情報に対する値が指定されるフィールド246bとを含む。対応付けテーブル246は、さらに、フィールド246aに指定される条件付け情報がフィールド246bに指定する値であった場合に、対応付けられるリモートプリンタを識別する識別子(以下、画像形成装置識別子という。)が入力されるフィールド246cを含む。
【0037】
文書改変部260は、データ発送部242からの依頼を受けて、描画データおよび印刷設定情報の一方または両方に対し、決定された発送先のリモートプリンタに対応した改変処理を施すことによって、印刷データの内容を改変する。なお、文書改変部260については、詳細を後述する。
【0038】
図3に示す実施形態では、発送処理部240は、さらに、印刷要求を行ったユーザ以外に印刷物を受け取らせるために、UI表示部248およびログイン判定部250を含むことができる。ログイン判定部250は、宛先となるユーザがネットワーク内のいずれかのクライアントにログインしているか否かを判定する。発送先決定部244は、ログイン判定部250がログインしていると判定した場合には、宛先ユーザまたは該宛先ユーザがログイン中のクライアントに対応付けられたリモートプリンタを発送先として決定する。
【0039】
UI表示部248は、発送先決定部244が発送先として決定したリモートプリンタのプリンタ名を指定可能に表示する印刷ダイアログを生成して、宛先ユーザに対応付けられたクライアント上に表示させる。これにより、印刷指示を行うユーザとその印刷物を受け取るユーザが異なる場合であっても、効率的に、当該印刷物を相手に受領させることができる。
【0040】
なお、説明する実施形態では、データ処理装置110がデータ処理部210とアプリケーション実行部212とを一体に備えるものとして説明する。しかしながら、図3に示す各機能部を図3の通りに実装する必要はなく、他の実施形態では、図3に示す破線をネットワーク境界として分離して実装することができる。より具体的には、左手側のアプリケーション実行部212および右手側のデータ処理部210を分離して、それぞれ別個のコンピュータ装置上に実装することができる。
【0041】
また説明する実施形態では、クライアント112〜118から、RDPなどの遠隔接続プロトコルにより、データ処理装置110へリモートアクセスして、アプリケーション214による文書作成や文書の印刷要求などを行うもとして説明する。しかしながら、他の実施形態では、データ処理装置110の機能をクライアント上に実装してもよい。
【0042】
例えば、クライアント112〜118が、それぞれ、アプリケーション実行部212およびデータ処理部210の機能を保有するよう構成したり、アプリケーション実行部212のみを保有するよう構成したりすることで、いわゆるファットクライアントとして実装することもできる。これらの特定の実装形式は、プリンタネットワーク100が設置される環境やユーザの特定の用途に応じて適宜変更することができる。
【0043】
さらに、説明する実施形態では、仮想プリンタドライバ218、作業領域230および発送処理部240が同一のコンピュータ上に実装されるものとして説明するが、これらの機能手段を別々のコンピュータ上に分離し、ネットワークを介して通信を行う複数のコンピュータから構成される装置として実装することもできる。
【0044】
以下、本実施形態の振り分けシステムにおいて行われる改変処理について、詳細を説明する。図4は、上述した文書改変部260の詳細な機能ブロックを示す図である。図4に示す文書改変部260は、データ発送部242から、決定された発送先のリモートプリンタを識別する画像形成装置識別子とともに、文書改変の依頼を受けて、改変処理を開始する。文書改変部260は、より詳細には、発送先タイプ決定部262と、文書改変処理部264とを含んで構成される。
【0045】
発送先タイプ決定部262は、リモートプリンタを分類するルールを記述する分類テーブル270を参照して、発送先として決定されたリモートプリンタに対応付けられるタイプを判定する。図7(B)は、本実施形態の発送先タイプ決定部262が参照する分類テーブルのデータ構造を例示する。図7(B)に例示する分類テーブル270は、リモートプリンタに確保されるセキュリティの観点から分類されたタイプを例示しており、好適には、特定の用途に応じて、ユーザ定義可能なファイルとして提供される。図7(B)に示す分類テーブル270は、リモートプリンタを識別する画像形成装置識別子が指定されるフィールド270aと、該リモートプリンタに対応付けられるタイプが指定されるフィールド270bとを含む。
【0046】
上記タイプとしては、リモートプリンタが設置される環境において確保されているセキュリティの高低の他、設置されるフロアや設置される部屋によって分類してもよく、特に限定されるものではない。その他、上記タイプとしては、パブリック用またはプライベート用などのリモートプリンタの用途で分類してもよい。つまり、上記タイプは、リモートプリンタ122〜128が設置された場所や環境など、広く画像形成装置の属性に応じて分類することが可能である。また、リモートプリンタとタイプとは、直接対応付けられてもよく、リモートプリンタの設置場所等の属性値を介在させて、間接的対応付けられていてもよい。
【0047】
また、分類テーブル270は、文書改変部260から適切にアクセス可能である限り、必ずしもデータ処理装置110が保持せずともよい。例えば、管理者がアクセス可能な共有ファイルサーバ上に配置するなど、分類テーブル270を利用し易い形態で配置することができる。複数のデータ処理装置110が動作する環境では、分類テーブル270を共通のファイルとすることによって、メンテナンス性を向上させることが可能となる。さらに、当該分類テーブル270のファイルについて管理者のみに変更権限を設定することで、セキュリティも好適に確保することが可能となる。なお、以下、当該システムの管理者により、分類テーブル270の内容が予め定義されているものとして説明する。
【0048】
文書改変処理部264は、発送先タイプ決定部262が決定した発送先が分類されるタイプに応じて、描画データおよび印刷設定情報の内容を改変する文書改変処理を実行する。文書改変処理部264は、より詳細には、各タイプ毎の処理を担当する1以上のタイプ別改変部266を備えており、図4には、タイプA改変部266aおよびタイプB改変部266bの2種類のタイプ別改変部266が例示されている。
【0049】
なお、図4は例示であり、発送先のタイプの数は、特に限定されるものではなく、1または複数の任意の数とすることができる。また、発送先のタイプに1対1で対応してタイプ別改変部266を備えることは必ずしも要するものではない。例えば、文書改変が施さないタイプが存在する場合は、対応するタイプ別改変部266を省略することができる。
【0050】
タイプ別改変部266は、それぞれ、担当するタイプ毎に異なる機能を備え、発送先が分類されるタイプに応じた内容で文書改変を実施する。タイプ別改変部266は、呼び出されると、発送先のタイプが自身の担当タイプであることを確認した上で、改変前の描画データ234Aに対し改変を施し、改変後の描画データ234Bを生成する。また、タイプ別改変部266は、描画データの改変に代えて、または描画データの改変と共に印刷設定情報に対し改変を施すことができる。
【0051】
図5は、上述したタイプ別改変部266の詳細な機能ブロックを示す図である。図5に示すタイプX改変部266xは、機密文書判定部272と、テキスト付加部274と、ウォータマーク付加部276と、地紋付加部278と、ユーザ名付加部280と、印刷日時付加部282と、文書破壊部284と、印刷方法変更部285とを含む。なお、図5に示す各詳細な機能部は、例示であり、振り分けシステムの用途や目的等に応じて、適切な1または複数の機能部を備えるように構成される。
【0052】
機密文書判定部272は、機密キーワード登録テーブル286を参照し、描画データ234を解析し、描画データ234中に予め登録された機密キーワードが含まれ、当該ジョブにかかる文書が機密文書に該当するか否かを判定する。図8(A)は、機密文書判定部272が参照する機密キーワード登録テーブル286のデータ構造を例示する図である。図8(A)に示す機密キーワード登録テーブル286は、登録番号が入力されるフィールド286aと、機密キーワードとして登録される文字列が登録されるフィールド286bとを含む。
【0053】
機密キーワード登録テーブル286は、特定のキーワードのみを登録するテーブル等に限定されるものではなく、上記フィールド286bには、ワイルドカードを用いた文字列や正規表現が登録されてもよい。さらに他の実施形態では、機密キーワードをパターンとして登録することもできる。また、機密文書判定部272は、当該ジョブにかかる文書の機密度を多段階で評価してもよい。この場合は、機密キーワードに関連付けて機密度のレベルないしカテゴリなど、詳細な分類情報を付することができる。
【0054】
図8(B)は、機密キーワードをパターンとして登録するテーブルのデータ構造を表す図である。図8(B)に示す機密キーワード登録テーブル288は、パターンの種類が入力されるフィールド288aと、対応するパターンによる機密文書の判定が有効であるか否かが指定されるフィールド288bと、パターンにおける例外を規定するフィールド288cとを含む。上記パターンとしては、電話番号、クレジットカード番号、社会保障番号、メールアドレスなどを挙げることができる。
【0055】
例えば、電話番号のパターンが有効とされる場合、描画データ234中の電話番号を表す文字列パターンが見付かった場合であって、その電話番号が例外に規定する電話番号以外のものであった場合に、当該文書を機密文書として判定することができる。このようなパターンとして特定できる情報としては、上述した電話番号、クレジットカード番号、社会保障番号、メールアドレスなどの他、住所、銀行口座番号、生年月日、住民票コードなど個人情報に密接に関連する情報を対象とすることができる。
【0056】
テキスト付加部274、ウォータマーク付加部276、地紋付加部278、ユーザ名付加部280、印刷日時付加部282、文書破壊部284および印刷方法変更部285は、それぞれ、機密文書判定部272による判定結果に従って、ジョブにかかる文書が機密文書に該当した場合に、改変処理を施すことができる。改変処理としては、描画データ234にマーキングまたは追跡情報を付加する処理、または文書内容を破壊する処理、印刷方法を変更する処理を挙げることができる。
【0057】
より具体的には、テキスト付加部274は、当該印刷出力にかかる文書が機密文書である旨の表示、ないしセキュリティ上の注意を喚起する表示を表す文字列を、マーキングとして付加することができる。このような文字列としては、「Confidential」、「マル秘」、「社外秘」、「部外秘」、「個人情報」、「取扱注意」などを挙げることができる。
【0058】
ウォータマーク付加部276および地紋付加部278も同様に、当該印刷出力にかかる文書が機密文書である旨の表示、またはセキュリティ上の注意を喚起する表示を表すウォータマーク、スタンプ、または地紋をマーキングとして付加することができる。このようなウォータマーク、スタンプ、地紋としては、上述した「Confidential」、「マル秘」、「社外秘」、「部外秘」、「個人情報」、「取扱注意」などを図案化したもの、または文字列地紋としたものを挙げることができる。
【0059】
ユーザ名付加部280は、当該印刷要求を行ったユーザのユーザ名を追跡情報として表示する文字列を付加することができる。印刷日時付加部282は、要求が行われた日時を追跡情報として表示する文字列を付加することができる。このような追跡情報の付加は、後日、情報漏洩が判明した際に、漏洩経路をトラックすることができるようにし、また、情報漏洩に一定の抑止をかけるものである。
【0060】
追跡情報としては、印刷要求の要求元のユーザ名など要求元ユーザを識別するユーザ識別情報の他、印刷出力の宛先ユーザを識別するユーザ識別情報、要求元または宛先の要求元の端末を識別する端末識別情報、発送先のリモートプリンタを識別する画像形成装置識別情報を挙げることができる。これらの追跡情報は、文字列の他、スタンプ、ウォータマーク、上述した地紋、透かし、またはバーコードの形で描画データ中に付加することができる。
【0061】
文書破壊部284は、描画データの内容が出力されないようにする改変を行う手段である。上記改変は、描画データ234を黒塗りしたり、描画データ234を空ページやエラー通知ページなどの定型ページにより置換したり、または描画データを所定の値で埋め尽くしたりすることで破棄したりすることにより行うことができる。
【0062】
なお、説明する実施形態では、機密文書に該当する場合、すべての描画データについて、内容が出力されないよう改変されるものとして説明する。しかしながら、特に限定されるものではなく、他の実施形態では、機密情報が含まれるページのみを出力しない態様、または描画データ中の機密キーワードに該当する文字列若しくは所定のパターンに該当する文字列だけを墨消しして出力する態様としてもよい。
【0063】
印刷方法変更部285は、当該印刷出力にかかる印刷方法を変更する改変を行う手段である。上記改変は、当該印刷出力にかかる印刷方法を、蓄積印刷ではない印刷方法から、蓄積印刷に移行させる変更を行うことができる。
【0064】
上記蓄積印刷は、保留印刷とも参照され、印刷データをリモートプリンタ側で一旦蓄積し、ユーザからの操作に応答して印刷出力を実行する印刷方法である。蓄積印刷は、通常の印刷では、ユーザがクライアント上で印刷指示を行うと印刷データがリモートプリンタへ送信され、引き続いて印刷出力が行われるのに対して、ユーザからリモートプリンタへの何らかの操作を待った上で印刷出力するという点で、セキュリティが向上された印刷方法である。ユーザがリモートプリンタに対して行う必要がある操作としては、例えば、印刷データの選択や、ICカードをかざす操作、パスワード入力操作などを挙げることができる。
【0065】
なお、図5に示すタイプX改変部266xが備える各機能部は、例示であり、タイプX改変部266xは、描画データに予め登録された機密情報が含まれている場合に、描画データ234に種々のマーキングを付加する改変、描画データに種々の追跡情報を付加する改変、描画データの内容が出力されないようにする改変、または印刷方法を変更する改変を行う如何なる手段を備えることができ、ユーザの環境や特定用途、目的に応じたものを準備すればよい。
【0066】
上述した1以上のタイプ別改変部266を備える構成により、以下説明するようなセキュリティ対策を行うことが可能となる。すなわち、セキュリティレベルが高い(つまりセキュリティが確保されている)タイプに分類されたリモートプリンタに出力を行わせる場合には、機密情報が含まれる文書に、「Confidential」の文字列をヘッダ等に付す程度の改変で印刷出力を行う。一方で、セキュリティレベルが低い(つまりセキュリティが充分に確保されていない)タイプに分類されたリモートプリンタに出力を行わせる場合には、機密情報が含まれる文書をすべて黒塗りして印刷出力を行う、というようなセキュリティ対策を行うことができる。
【0067】
図6は、文書改変を行った後の描画データを模式的に示す図である。図6(A)は、「Confidential」の文字列がヘッダに付された描画データを例示する。図6(B)は、ユーザ名の文字列がヘッダに付された描画データを例示する。図6(C)は、「Confidential」の文字列の地紋が付加された描画データを例示する。図6(D)は、黒塗りされた描画データを例示する。
【0068】
図9は、本実施形態によるデータ処理装置110が実行する振り分け処理を示すシーケンス図である。図9に示す処理は、仮想プリンタドライバ218がジョブデータを受領したことに応答して開始する。ステップS100では、仮想プリンタドライバ218は、仮想描画部224を呼び出し、描画データ生成を行わせる。ステップS101では、仮想描画部224は、ジョブデータを読み出し、描画データ234を生成し、作業領域230に格納する。
【0069】
ステップS102では、仮想プリンタドライバ218は、ジョブ情報データ抽出部222を呼び出し、ジョブ情報データを抽出させる。ステップS103では、ジョブ情報データ抽出部222は、ジョブデータから発送先を決定するための情報を抽出し、該情報を記述するジョブ情報データを作業領域230に格納する。
【0070】
ステップS104では、仮想プリンタドライバ218は、発送処理部240に対し、印刷要求にかかる印刷出力処理を振り分ける発送処理を依頼する。ステップS105では、発送処理部240は、データ発送部242を呼び出し、印刷実行を指令する。ステップS106では、データ発送部242は、発送先決定部244に対し、発送先の決定を依頼する。ステップS107では、発送先決定部244は、ジョブ情報データを読み出し、ジョブ情報データに含まれる条件付け情報に対応して発送先を決定する。
【0071】
ステップS108では、データ発送部242は、文書改変部260に対し、文書改変を依頼する。ステップS109では、文書改変部260は、発送先タイプ決定部262を呼び出し、発送先のリモートプリンタが分類されるタイプの決定を依頼し、決定された発送先のタイプを取得する。以下、ここでタイプはBであると判定されたものとして、説明する。
【0072】
ステップS110では、文書改変部260は、改変対象となる発送先を渡して、タイプA改変部266aを呼び出し、文書改変を指令する。ステップS111では、タイプA改変部266aは、渡されたタイプから改変対象の発送先が、自身が担当するタイプに分類されるものであるか否かを確認し、ここでは、担当する発送先のタイプではないと判定する。
【0073】
ステップS112では、文書改変部260は、改変対象となる発送先を渡して、タイプB改変部266bを呼び出し、文書改変を指令する。ステップS113では、タイプB改変部266bは、渡されたタイプから改変対象の発送先が、自身が担当するタイプに分類されるものであるか否かを確認し、ここでは、担当する発送先のタイプであると判定する。ステップS114では、タイプB改変部266bは、描画データ234を読み出し、自身が備える改変処理を施して、描画データ234を上書きする。
【0074】
描画データ234に対する文書改変が完了すると、ステップS115では、データ発送部242は、改変された描画データ234を作業領域230からロードする。ステップS116では、データ発送部242は、決定された発送先のリモートプリンタに対応するプリンタドライバ300を呼び出し、該リモートプリンタに描画データを出力する。
【0075】
上記実施形態では、文書改変部260自身が発送先のタイプを考慮せず、各タイプ別改変部266a,266bに改変を依頼し、各タイプ別改変部266a,266bが、自身が担当するタイプである場合にのみ文書改変処理を施すよう構成とされている。このため、文書改変部260がタイプに分けてタイプ別改変部266を呼び出す必要がなく、文書改変部260の処理を簡略化することができる。
【0076】
また、上述した構成により、以下に説明するセキュリティ対策を行うことも可能となる。例えば、セキュリティレベルが高いタイプに分類されたリモートプリンタに出力を行わせる場合には、特に改変を施さずに印刷出力を行う。一方で、セキュリティレベルが高くないタイプ(例えば「セキュリティレベル中」や「セキュリティレベル低」など)に分類されたリモートプリンタに出力を行わせる場合には、例えば未発表の製品名称や開発名称などの機密キーワードが含まれる文書を、蓄積印刷に変更して印刷出力を行う、というセキュリティ対策を行うことができる。
【0077】
図10は、機密文書判定部272が参照する他の機密キーワード登録テーブル286Bのデータ構造を例示する図である。図10に示す機密キーワード登録テーブル286Bは、登録番号が入力されるフィールド286aと、機密キーワードとして登録される文字列が登録されるフィールド286bと、機密キーワードのカテゴリが登録されるフィールド286cとを含む。ここで、機密キーワードのカテゴリとは、機密キーワードをさらに細分化して分類するものである。例えば、図10に示すように、カテゴリを用いて、未発表製品名称として登録される機密キーワードと、製品の開発名称として登録される機密キーワードとを区別することができる。
【0078】
機密文書判定部272は、機密キーワード登録テーブル286Bを参照し、描画データ234を解析し、描画データ234中に予め登録された機密キーワードが含まれ、当該ジョブにかかる文書が機密文書に該当するか否かを判定とともに、機密キーワードの分類を判定する。
【0079】
図11は、本実施形態によるデータ処理装置110が実行する他の振り分け処理を示すシーケンス図である。図11では、文書改変処理部264は、タイプC改変部およびタイプD改変部の2種類のタイプ別改変部が例示されている。図11に示す処理は、仮想プリンタドライバ218がジョブデータを受領したことに応答して開始する。なお、ステップS200〜ステップS208の処理は、図9に示した処理と類似するので、詳細な説明は割愛する。
【0080】
文書改変部260は、ステップS208で文書改変の依頼を受けると、ステップS209では、発送先タイプ決定部262を呼び出し、発送先のリモートプリンタが分類されるタイプの決定を依頼し、決定された発送先のタイプを取得する。ここでは、タイプが、セキュリティ中であり、タイプDであると判定されたものとして説明する。
【0081】
ステップS210では、文書改変部260は、改変対象となる発送先を渡して、タイプC改変部を呼び出し、文書改変を指令する。ステップS211では、タイプC改変部は、渡されたタイプから改変対象の発送先が、自身が担当するタイプに分類されるものであるか否かを確認し、ここでは、担当する発送先のタイプであると判定される。ステップS212では、タイプC改変部は、さらに、描画データを読み出し、未発表製品名称のカテゴリに分類される機密キーワードを含んでいるかを確認し、ここでは、未発表製品名称の機密キーワードを含んでいないと判定される。タイプC改変部は、未発表製品名称の機密キーワードが含まれないと判定されたので、処理を終了させる。
【0082】
一方で、ステップS213では、文書改変部260は、改変対象となる発送先を渡して、タイプD改変部を呼び出し、文書改変を指令する。ステップS214では、タイプD改変部は、渡されたタイプから改変対象の発送先が、自身が担当するタイプに分類されるものであるか否かを確認し、ここでは、担当する発送先のタイプであると判定する。ステップS215では、タイプD改変部は、描画データ234を読み出し、製品の開発名称のカテゴリに分類される機密キーワードを含んでいるかを確認し、ここでは、開発名称の機密キーワードを含んでいると判定される。ステップS216では、タイプD改変部は、印刷設定情報を参照し、印刷データに蓄積印刷を指令するコマンドが既に存在するか否かを確認し、ここでは、存在しないと判定する。これは、他のタイプ別改変部により既に蓄積印刷へ変更されている場合があることに対処するものである。
【0083】
ステップS217では、タイプD改変部は、蓄積印刷の引き取り時にユーザに求めるパスワードの入力を依頼するダイアログを生成して、要求元ユーザに対応付けられたクライアント上に表示させて、ユーザから入力されるパスワードを取得する。ステップS218は、タイプD改変部は、自身が備える改変処理を施し、ここでは印刷データに蓄積印刷のコマンドを追加する。ここで追加されるコマンドを例示すると、以下のようになる。
【0084】
@PJL SET NAME=”タイトル”
@PJL SET PASSWORD=”1234”
@PJL SECUREJOB
【0085】
上記コマンドにおいて、NAME属性は、文書の名称を表すものである。PASSWORD属性は、引き取り時に入力を求めるパスワードを指定するものであり、これ自体は暗号化される場合もある。SECUREJOBは、蓄積印刷を行うことを通知するコマンドである。蓄積印刷に変更する場合は、上述したコマンドが印刷データに付加される。
【0086】
印刷データに対する文書改変が完了すると、ステップS219では、データ発送部242は、描画データ234を作業領域230からロードする。ステップS220では、データ発送部242は、決定された発送先のリモートプリンタに対応するプリンタドライバ300を呼び出し、該リモートプリンタに描画データを出力する。この場合、リモートプリンタ側では、ユーザからの文書の選択、正しいパスワードの入力を受けた上で、印刷処理を実行する。
【0087】
上述したように、本実施形態による分類テーブル270は、ファイルとしてユーザ側で適宜変更可能な形式で提供される。したがって、分類テーブル270は、汎用エディタを用いて直接編集してもよい。以下、図12および図13を参照しながら、分類テーブル270の編集を支援する機能について説明する。
【0088】
図12は、本実施形態による分類テーブルの編集支援機能に関連する機能ブロック図である。図12に示すように、データ処理装置110は、分類テーブル270を編集するための分類ルール編集部290と、プリンタ情報収集部292と、管理インタフェース部294とを含む。図12には、さらに、文書改変部260が備える機能部として、タイプ記述部268が示されている。
【0089】
管理インタフェース部294は、データ処理装置110のローカルから、または外部の端末からのリモート接続により、分類ルール編集部290にアクセスするためのインタフェースである。分類ルール編集部290は、分類ルールを編集するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を提供する機能部である。分類ルール編集部290は、特定の実施形態では、管理画面をウェブページとして公開するウェブサーバとして構成することができる。
【0090】
プリンタ情報収集部292は、データ処理装置110に登録される発送先候補となるリモートプリンタ122〜128に関する情報を収集する。プリンタ情報収集部292は、例えば、ネットワーク130上のリモートプリンタ122〜128を探索し、SNMP(Simple Network Management Protocol)などの適切なプロトコルにより、リモートプリンタ122〜128が備えるMIB(Management Information Base)が保持する情報を収集することができる。収集される情報としては、リモートプリンタのシリアル番号、名前、設置場所等の情報を挙げることができる。プリンタ情報収集部292が収集した情報を管理画面上で提示することによって、管理者がリモートプリンタを認識し易いように支援することができる。
【0091】
タイプ記述部268は、文書改変部260が備えるに対応する文書改変内容の概略を記述する。タイプ記述部268が保持する情報を管理画面上で提示することによって、管理者がタイプに対応した処理を理解し易いよう支援することができる。
【0092】
図13は、本実施形態による分類テーブルを編集するための管理画面を例示する図である。図13に示す管理画面310は、リモートプリンタを一覧表示するテーブル320と、リモートプリンタを分類するタイプを一覧表示するテーブル340とを含む。テーブル320には、検索されたネットワーク130上のリモートプリンタ122〜128がリストアップされ、分類されるタイプが対応付けられている。また、各リモートプリンタの表示には、例えば、取得された設置場所等の情報が付されている。各リモートプリンタに対応付けるタイプは、例えば、テーブル内の矢印324で切り替えることができるように構成されている。
【0093】
図13に示す管理画面310は、さらに、再検索ボタン330を含み構成される。管理画面310上で再検索ボタン330がクリックされると、それに応答して、プリンタ情報収集部292が、再度ネットワーク130上のリモートプリンタに関する情報を収集する。そして、分類ルール編集部290は、該更新された情報に従ってテーブル320を更新する。
【0094】
図13に示す管理画面310を介し、リモートプリンタに対し予めタイプを対応付けて置くことにより、分類テーブル270の編集を効率的に行うことが可能となる。なお、説明の便宜上、リモートプリンタを直接タイプに対応付けるものとして説明したが、他の実施形態では、設置される場所等、収集される情報に基づいて自動的に分類するよう構成してもよい。
【0095】
以上説明した実施形態によれば、印刷データの発送先を振り分ける振り分けシステムにおいて、発送先に対応した改変が施された上で発送処理される。したがって、セキュリティが充分に確保できないリモートプリンタに対応してセキュリティ上の改変を施すよう設定することにより、印刷データの発送先となるリモートプリンタが設置される場所の如何にかかわらず、一律に文書が印刷されてしまうことによる不具合を回避することができる。例えば、社外秘の機密情報などを含む文書を、誰でも目にすることが可能な場所にそのまま出力してしまうことを防止することができる。また、リモートプリンタをセキュリティ上のタイプで分類して、タイプに対応して改変の内容を規定しているため、改変ルールの策定も簡略化される。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、印刷データの発送先を振り分ける振り分けシステムにおいて、設置場所等の属性が異なるリモートプリンタ(画像形成装置)に応じて、印刷データを改変することによって、画像形成装置の属性にかかわらず一律に文書が印刷されてしまうことによる情報セキュリティ上の不具合を解消することが可能なデータ処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【0097】
上記機能部は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)、などのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述されたコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、ブルーレイディスク、SDカード、MOなど装置可読な記録媒体に格納して、あるいは電気通信回線を通じて頒布することができる。
【0098】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
12…MPU、14…不揮発性メモリ、16…メモリ、18…記憶制御用インタフェース、20…ハードディスク、22…内部バス、24…インタフェース、26…入出力装置、28…VRAM、30…グラフィック・チップ、32…ディスプレイ装置、34…NIC、100…プリンタネットワーク、110…データ処理装置、112〜118…クライアント、122〜128…リモートプリンタ、130…ネットワーク、140,150,160…ロケーション、210…データ処理部、212…アプリケーション実行部、214…アプリケーション、216…印刷要求元通知部、218…仮想プリンタドライバ、220…仮想プリント管理部、222…ジョブ情報データ抽出部、224…仮想描画部、226…ジョブ格納部、230…作業領域、232…ジョブ情報データ、234…描画データ、236…イメージ処理部、240…発送処理部、242…データ発送部、244…発送先決定部、246…対応付けテーブル、248…UI表示部、250…ログイン判定部、260…文書改変部、262…発送先タイプ決定部、264…文書改変処理部、266…タイプ別改変部、268…タイプ記述部、270…分類テーブル、272…機密文書判定部、274…テキスト付加部、276…ウォータマーク付加部、278…地紋付加部、280…ユーザ名付加部、282…印刷日時付加部、284…文書破壊部、285…印刷方法変更部、286,288…機密キーワード登録テーブル、290…分類ルール編集部、292…プリンタ情報収集部、294…管理インタフェース部、300…プリンタドライバ、310…管理画面、320,340…テーブル、330…ボタン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2010−157208号公報
【特許文献2】特開2011− 2881号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理を複数の画像形成装置で振り分けるためのデータ処理装置であって、
印刷要求に応答して、描画データを生成する描画手段と、
前記印刷要求にかかる印刷データの発送先を決定するための情報を抽出する抽出手段と、
前記発送先を決定するための情報に応じて、前記複数の画像形成装置の中から発送先を決定する発送先決定手段と、
決定された前記発送先に応じた改変を、前記描画データおよび印刷設定情報の一方または両方に施す改変手段と、
前記発送先の画像形成装置に対し、前記描画データおよび前記印刷設定情報を含む、改変された印刷データを発送して、印刷処理を指令する発送手段と
を含む、データ処理装置。
【請求項2】
前記改変手段は、発送先を分類してタイプを決定するタイプ決定手段と、それぞれが前記タイプに応じた内容の改変を前記描画データおよび前記印刷設定情報の一方または両方に施す複数のタイプ別改変手段を備える、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記タイプ別改変手段は、それぞれ、
前記描画データを解析し、予め登録された情報が含まれていることを検知する手段と、
予め登録された情報が含まれている場合に、前記描画データにマーキングを付加する改変、前記描画データに追跡情報を付加する改変、前記描画データの内容が出力されないようにする改変、または印刷方法を変更する改変を行う手段を備える、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記マーキングは、文字列、スタンプ、ウォータマークまたは地紋であり、
前記追跡情報は、前記印刷要求の要求元のユーザを識別するユーザ識別情報、前記印刷要求の要求元の端末を識別する端末識別情報、前記印刷要求が発行された日時または前記発送先の画像形成装置を識別する画像形成装置識別情報を示す文字列、スタンプ、ウォータマーク、地紋、透かしまたはバーコードであり、
前記出力されないようにする改変は、描画データを黒塗りすること、描画データを定型ページにより置換すること、または描画データを破棄することであり、
前記印刷方法を変更する改変は、印刷データを画像形成装置側で一旦蓄積し、ユーザ操作に応答して出力する蓄積印刷に変更することである、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記発送先のタイプを分類する条件を記述したファイルを変更可能な形式で記憶する記憶手段をさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記発送先を決定するための情報は、前記印刷要求の要求元のホスト名、前記印刷要求の要求元のIPアドレス、前記印刷要求の要求元のMACアドレス、前記印刷要求の要求元のユーザを識別する識別情報、印刷出力の宛先のホスト名、印刷出力の宛先のIPアドレス、印刷出力の宛先のMACアドレス、および印刷出力の宛先のユーザを識別する識別情報の少なくとも1つの情報を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記発送先のタイプは、前記画像形成装置が設置されている場所または環境に応じて分類される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
印刷処理を複数の画像形成装置に振り分けるためのデータ処理装置を実現するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、コンピュータを、
印刷要求に応答して、描画データを生成する描画手段、
前記印刷要求にかかる印刷データの発送先を決定するための情報を抽出する抽出手段、
前記発送先を決定するための情報に応じて、前記複数の画像形成装置の中から発送先を決定する発送先決定手段、
決定された前記発送先に応じた改変を、前記描画データおよび印刷設定情報の一方または両方に施す改変手段、および
前記発送先の画像形成装置に対し、前記描画データおよび前記印刷設定情報を含む、改変された印刷データを発送して、印刷処理を指令する発送手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータ実行可能なプログラムをコンピュータ可読に格納する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−8353(P2013−8353A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112998(P2012−112998)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】