データ処理装置及びプログラム
【課題】通電状態が通常通電状態から省電力状態へ移行する前に、ユーザが文書データに対する出力指示を行えるようにすることで復帰動作の回数を低減し、従来よりも大きな省電力効果を得ることを可能にする。
【解決手段】データ処理装置2は、文書データを記憶する記憶装置15を備える。またデータ処理装置2は、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定すると共に、この移行タイミングよりも所定時間前となる通知タイミングを決定する。そしてデータ処理装置2は、記憶装置15に文書データが記憶されている状態で通知タイミングが経過すると、その文書データを利用する予定のあるユーザを特定して、そのユーザに対して出力指示の要求を通知する。
【解決手段】データ処理装置2は、文書データを記憶する記憶装置15を備える。またデータ処理装置2は、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定すると共に、この移行タイミングよりも所定時間前となる通知タイミングを決定する。そしてデータ処理装置2は、記憶装置15に文書データが記憶されている状態で通知タイミングが経過すると、その文書データを利用する予定のあるユーザを特定して、そのユーザに対して出力指示の要求を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書データを記憶し、ユーザによる出力指示に基づいて該文書データの出力処理を行うためのデータ処理装置及びプログラムに関し、特に、データ処理装置の通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MFP(Multi-Function Peripherals)などと呼ばれるデータ処理装置は、ネットワークを介して受信する文書データを記憶しておき、ユーザによる出力指示を検知した場合に当該文書データを読み出して印刷出力などの出力処理を行うことが可能である。従来、この種のデータ処理装置における消費電力を節約するため、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する技術がある。例えば特許文献1には、記憶装置に蓄積されている全てのファイルが、送信時刻が設定されていないファイルであるときに通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるFAX装置が開示されている。また特許文献2には、印刷出力が終了することに伴って通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する印刷システムが開示されている。このように従来においては、予め設定される条件を満たすことによりデータ処理装置の通電状態を省電力状態に移行することが一般的に行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−177673号公報
【特許文献2】特開2005−346178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術においては以下のような問題がある。すなわち上記特許文献1及び2に開示された技術は、何れも予め設定された所定条件を満たしたタイミングでデータ処理装置の通電状態を省電力状態へ移行させるので、ユーザにとっては、データ処理装置が省電力状態に移行するタイミングが分からない。そのため、ユーザは、データ処理装置に対して文書データを送信した後、暫くの時間が経過してからデータ処理装置に対して印刷出力などの出力指示を行うケースが起こり得る。ところが、ユーザが出力指示を行うタイミングで既にデータ処理装置が通常通電状態から省電力状態へと移行している場合、データ処理装置は、それに対応する出力処理を行うために省電力状態から通常通電状態へと復帰する。
【0005】
この復帰動作は、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させる定着部を一定温度まで加熱昇温させる動作を含むため、定着部を一定温度に保持し続ける通常通電状態と比較すると、消費される電力が大きくなる。そのため、この種のデータ処理装置において省電力状態から通常通電状態への復帰動作が頻繁に行われるようになると、却って消費電力が大きくなってしまい、省電力状態へ移行させることによる意図した省電力効果が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、通常通電状態から省電力状態へ移行する前に、ユーザが文書データに対する出力指示を行えるようにして復帰動作の回数を低減し、従来よりも大きな省電力効果を得ることができるようにしたデータ処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、データ処理装置であって、文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置と、前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段と、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定する決定手段と、前記記憶装置に記憶されている文書データに関連づけられたユーザを特定する判断手段と、前記決定手段によって決定される移行タイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段と、前記決定手段によって決定される移行タイミングに基づき通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0008】
このような構成によれば、データ通信装置は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示を受ける可能性を低減させることができる。これによりデータ処理装置は、復帰動作の回数を低減させることができるので、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【0009】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のデータ処理装置において、前記決定手段は、前記通知手段によって要求が行われた後に実行される処理が、その要求に対応する出力指示に基づいて実行される出力処理である場合、その出力処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングを繰り延べしないことを特徴とする構成である。
【0010】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングを繰り延べしないので、比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させることができる。これにより消費電力を節約することができる。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のデータ処理装置において、前記通電制御手段は、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングが経過した時点で、前記通知手段によって要求された出力指示に対応する出力処理が行われている場合、その出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないことを特徴とする構成である。
【0012】
このような構成によれば、出力指示に対応する出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないので、その出力処理が行なわれている最中に通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行してしまうことを防止することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通電制御手段は、前記通知手段によって要求された出力指示がユーザから入力されることによって通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合、その出力指示に対応する出力処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させることを特徴とする構成である。
【0014】
このような構成によれば、最も早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行することができるので消費電力を節約することができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段によって出力指示の要求が行われるタイミングから、前記決定手段によって決定される移行タイミングまでの時間には、前記記憶装置に記憶されている文書データの出力処理を開始してから完了するまでに要する処理所要時間が少なくとも含まれることを特徴とする構成である。
【0016】
このような構成によれば、通電状態を通常通電状態から省電力状態へ移行させる前に、出力処理を完了させることが可能である。すなわちデータ処理装置は、予定される通電状態から省電力状態への移行タイミングを例えば繰り延べすることなく、出力処理を終わらせるができるので、比較的早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求することを特徴とする構成である。
【0018】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求するので、出力指示の要求が頻繁に行われてしまうことを防止することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段によって出力指示を行うことが要求されるタイミングを、操作者の操作に基づき設定する設定手段を更に備えることを特徴とする構成である。
【0020】
このような構成によれば、出力指示が要求されるタイミングが任意で設定できるので利便性が高まる。
【0021】
請求項8に係る発明は、文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置を備えるデータ処理装置において実行されるプログラムであって、前記データ処理装置を、前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるタイミングを決定する決定手段、前記記憶装置に文書データが記憶されている状態で、その文書データに関連づけられているユーザを特定する判断手段、前記決定手段によって決定されるタイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段、および、前記決定手段によって決定されるタイミングに基づいて通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段、として機能させることを特徴とする構成である。
【0022】
このような構成によれば、データ通信装置は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示を受ける可能性を低減させることができる。これによりデータ処理装置は、復帰動作の回数を低減させることができるので、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通常通電状態から省電力状態へ移行するよりも前に、ユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通常通電状態から省電力状態へ移行する前にユーザに文書データに対する出力指示を行わせることが可能である。これによりデータ通信装置は、復帰動作の回数を低減し、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】データ処理システムの全体構成例を示す図である。
【図2】データ処理システムによって行なわれるタッチアンドプリント処理の概念を示す図である。
【図3】データ処理システムによって行なわれる回覧情報を閲覧させるための処理の概念を示す図である。
【図4】データ処理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図5】データ処理装置における制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】データ処理装置によって実行される処理を時系列で示す図である。
【図7】データ処理装置に記憶される通知時間テーブルの一例を示す図である。
【図8】データ処理装置の記憶される管理テーブルの一例を示す図である。
【図9】データ処理装置において実行される処理を模式的に示す図である。
【図10】データ処理装置から情報処理装置に対して送信される出力指示の要求通知の通知内容の一例を示す図である。
【図11】データ処理装置において実行される処理を模式的に示す図である。
【図12】データ処理装置によって実行される処理を時系列で示す図である。
【図13】データ処理装置の制御部において実行される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】データ処理装置の制御部において実行される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0026】
図1は、本実施形態におけるデータ処理システム1の一構成例を示す図である。データ処理システム1は、文書データを処理するためのデータ処理装置2が実装される画像処理装置3と、複数の情報処理装置4a〜4cとがネットワーク7を介して相互にデータ通信が可能な構成である。ネットワーク7は、例えば、一般的なオフィス内に構築されるLAN(Local Area Network)である。但し、これに限定されずネットワーク7は、WAN(Wide Area Network)などの広域的な通信網を含む複合的な通信ネットワークであってもよい。また画像処理装置3及び情報処理装置4は、例示されている数に限られない。
【0027】
情報処理装置4a〜4cは、例えば一般的なパーソナルコンピュータである。情報処理装置4a〜4cは、ユーザA,B及びCのそれぞれが使用するために個別に割り当てられている。すなわち情報処理装置4aはユーザAに対応しており、同様に情報処理装置4b,4cは、ユーザB,Cのそれぞれに対応して割当てられている。情報処理装置4aは、ユーザによる操作を入力する操作入力部5aと、各種情報を表示する表示部6aとを備えている。情報処理装置4b,4cも上述した情報処理装置4aと同様に、操作入力部5b,5c及び表示部6b,6cのそれぞれを備えている。以下、説明の便宜上、情報処理装置4a〜4cを区別する必要がない場合には、単に「情報処理装置4」と称する。また情報処理装置4が備える操作入力部5及び表示部6についても同様とする。
【0028】
データ処理装置2は、ネットワーク7を介して受信する文書データを記憶し、ユーザによって指定される出力態様で出力する構成である。このデータ処理装置2は、本実施形態では上述したように画像処理装置3に実装されている。画像処理装置3は、例えば印刷機能、スキャン機能、FAX機能及びコピー機能などを備えるMFP(Multi-Function Peripherals)などで構成される装置である。また画像処理装置3は、ユーザによる操作を入力する操作パネル2aと、情報処理装置4から受信する文書データを記憶する記憶装置15とを備えている。画像処理装置3は、情報処理装置4によって出力される文書データを受信したとき、その文書データにデータ保存の指示が含まれている場合は、その文書データを記憶装置15に記憶する。
【0029】
情報処理装置4は、印刷ジョブとして文書データを送信することもあるし、また複数のユーザで回覧を行うための回覧データとして文書データを送信することもある。情報処理装置4は、文書データを印刷ジョブとして送信する場合、印刷対象となる文書データを含む印刷ジョブを生成し、その印刷ジョブを画像処理装置3に送信する。このとき、送信される印刷ジョブには、送信元であるユーザを特定するための情報が付加される。また、回覧データとして文書データを送信する場合、情報処理装置4は、その文書データに回覧対象となるユーザを記録した回覧情報を付加して送信する。
【0030】
画像処理装置3は、データ保存の指示が含まれている印刷ジョブを受信した場合、その印刷ジョブに含まれる文書データを記憶装置15へ保存する。そして印刷ジョブを送信したユーザが画像処理装置3の操作パネル2aを操作することによって画像処理装置3にログインし、記憶装置15に保存されている文書データを選択して印刷出力を指示すると、画像処理装置3は、その選択された文書データを読み出して印刷出力を行う。このような出力態様は一般にタッチアンドプリントと呼ばれ、例えば文書データに秘密情報が含まれている場合に第三者に秘密情報の内容が見られないようにするための印刷出力の一態様となっている。
【0031】
図2は、タッチアンドプリント処理の概念図である。例えば、ユーザAは、情報処理装置4aに対する指示操作を行うことにより、記憶装置15に文書データを保存することを指定して印刷ジョブを画像処理装置3に送信する。画像処理装置3は、その印刷ジョブを受信した場合、その印刷ジョブを記憶装置15に記憶する。その印刷ジョブが記憶装置15に記憶されている状態で、ユーザAは、画像処理装置3まで移動して操作パネル2aを操作することにより画像処理装置3にログインし、記憶装置15に記憶されている印刷ジョブの印刷出力を指示する。画像処理装置3は、その指示に従って記憶装置15から印刷ジョブを読み出して印刷出力を行う。このような出力形態によれば、ユーザAの画像処理装置3への直接操作に基づいて印刷出力が行われるので、ユーザAは、第三者に印刷物を読まれてしまうことなく安全にその印刷物を回収することができる。
【0032】
また画像処理装置3は、回覧情報の付加された文書データを受信した場合、その文書データを記憶装置15へ保存する。そして回覧情報に登録されたユーザから閲覧要求があった場合、画像処理装置3は、記憶装置15に保存されている文書データの内容を、そのユーザが閲覧できるように出力する。
【0033】
図3は、画像処理装置3が回覧情報の付加された文書データを受信した場合に実行する回覧処理の概念を示す図である。回覧処理は、回覧情報に登録されているユーザに対して文書データを閲覧させるための処理である。例えばユーザAは、情報処理装置4aを操作することにより、ユーザB及びCを回覧者として登録した回覧情報を文書データに付加して画像処理装置3に送信する。画像処理装置3は、そのような文書データを受信すると、文書データに付加されている回覧情報を文書データと共に記憶装置15に記憶する。
【0034】
また画像処理装置3は、回覧先となるユーザB及びCに文書データを閲覧させるために以下のように処理を行う。例えば画像処理装置3には、予め各ユーザの例えば電子メールアドレスなど所定の送信宛先が登録されている。そして画像処理装置3は、回覧者として登録されているユーザB及びCの電子メールアドレスを読み出し、ユーザB及びCに対して回覧文書である文書データが保存されたことを通知するための電子メールを送信する。この電子メールの本文には、例えば、回覧対象となる文書データにアクセスするための情報などが自動で記録される。これによりユーザB及びCは、受信した電子メールを確認することにより、自身が閲覧すべき文書データが画像処理装置3に保存されたことを把握することができると共に、その文書データにアクセスするために必要な情報を取得することができる。
【0035】
その後、電子メールを送信したユーザB及びCのそれぞれから文書データの閲覧要求(出力指示)があった場合、画像処理装置3は、各ユーザが文書データの内容の閲覧を許可する。すなわちこの場合、画像処理装置3は、記憶装置15に記憶されている回覧対象である文書データへのユーザB及びCによるアクセスを許可し、文書データの内容を例えば閲覧可能な表示態様で出力する。但し文書データの出力態様はこれに限られず、情報処理装置4において閲覧可能な状態であればどのような手法を用いても構わない。これによりユーザB,Cは、情報処理装置4b又は4cに表示される閲覧画面により、文書データの内容を閲覧することが可能になる。このような出力態様は、印刷出力を伴わないので紙資源を節約することができる。但し、ユーザB又はCが、回覧対象である文書データの印刷出力を指示した場合には、その文書データに基づいて印刷出力を行うことも可能である。
【0036】
このような画像処理装置3は、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態が所定時間以上継続すると、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる機能を備えている。通常通電状態は、画像処理装置3において各種動作を行なうことができるように各部に対して電力供給を行なう動作モードである。例えば通常通電状態では、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させるための定着部の温度が一定温度に保持される。また省電力状態は、一部の回路への電力供給を残して他の回路への電力供給を制限する動作モードである。例えば省電力状態では、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させるための定着部への電力供給が遮断される。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行することにより無駄な待機電力を節約することができる。
【0037】
また画像処理装置3は、省電力状態にあるときに、ネットワーク7を介してデータを受信した場合、或いは、操作パネル2aに対する操作を検知した場合、通電状態を省電力状態から通常通電状態へと復帰させる。この復帰動作では、通常通電状態においていつでも印刷出力を行うことができるように、定着部の温度を一定温度まで加熱昇温させる動作が行われる。
【0038】
そして本実施形態の画像処理装置3は、ユーザによって出力指示が行われる可能性のある文書データを記憶装置15に記憶している状態のとき、通常通電状態から省電力状態へと移行する前に、ユーザに出力指示を行わせる構成である。一例を挙げて説明すると、例えば図1に示す記憶装置15に文書データとして例えばユーザAが発行した印刷ジョブが記憶されている場合、その後、ユーザAによってタッチアンドプリントの出力指示が行われる可能性がある。しかし、ユーザAがタッチアンドプリントの操作を行うために画像処理装置3に移動してきたとき、画像処理装置3が既に省電力状態に移行している場合がある。
【0039】
この場合、画像処理装置3は、ユーザAによってタッチアンドプリントの出力指示が行われることに伴い、通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させた後、記憶装置15に記憶していた文書データに基づく印刷出力を実行することになる。画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させた後に、ユーザによる出力指示を受けると、上述した復帰動作において定着部の温度を一定温度まで加熱昇温させる処理を行うため、通常通電状態において出力指示を受ける場合に比べて、復帰動作に要する電力を余分に消費してしまうことになる。そのため、画像処理装置3における省電力効果を向上させるためには、そのような復帰動作が行われる回数を低減することが好ましい。
【0040】
そこで本実施形態の画像処理装置3は、ユーザによる出力指示を待機する状態となっている文書データを記憶装置15に記憶している場合、通電状態が通常通電状態にあり、且つ、通常通電状態から省電力状態へ移行する前に、そのようなユーザに出力指示を行わせる構成である。
【0041】
より具体的に説明すると、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する所定時間前に、文書データの出力指示を行う予定のユーザに対して出力指示の要求を行う構成になっている。これにより、画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行する前に、文書データを利用するユーザに対して出力指示を行わせることが可能である。つまり画像処理装置3は、通電状態が一旦省電力状態に移行した後に通常通電状態に復帰してしまう可能性を低減させることが出来るので、結果として、復帰動作回数を低減させ、省電力状態に移行している時間を従来よりも長く確保することが可能である。以下、上記のように動作するデータ処理装置2について詳しく説明する。
【0042】
図4は、データ処理装置2のハードウエア構成の一例を示す図である。画像処理装置3は、そのデータ処理装置2に関するハードウエア構成として、図4において破線領域の内側に示す構成を備えている。データ処理装置2は、このデータ処理装置2の動作を制御する制御部10と、ネットワーク7を介して情報処理装置4と通信を行うためのネットワークインタフェース11と、各部への電力供給を制御する電力供給部12と、上述した操作パネル2a及び記憶装置15と、を備え、それらがバス20を介して接続されることにより相互に通信可能に構成される。これら各部は、必ずしも画像処理装置3がデータ処理装置2として機能する場合にのみ動作するものではなく、一般的なMFPとして機能する場合にも動作する。また画像処理装置3は、一般的なMFPと同様に、印刷出力に関する構成として更に印刷処理部13を備えている。また図示しないが画像処理装置3は、原稿画像の読み取り動作を行うスキャン部やFAXの送受信に関する動作を行うFAX部などを備えてもよい。
【0043】
制御部10は、CPU10aとメモリ10bとを備えており、各部の動作を制御するものである。CPU10aは、記憶装置15に記憶されているプログラム16などを読み出して実行する。プログラム16は、制御部10を後述する各種処理部として機能させるためのプログラムである。メモリ10bは、CPU10aがプログラムを実行することに伴う一時的なデータなどを記憶するものである。
【0044】
ネットワークインタフェース11は、制御部10をネットワーク7に接続するためのものである。これにより制御部10は、このネットワークインタフェース11を介して、情報処理装置4に通信可能に接続される。尚、ネットワークインタフェース11は、ネットワーク7に対して有線接続されるものであっても良いし、無線接続されるものであっても良い。
【0045】
電力供給部12は、制御部10からの指示に基づいて画像処理装置3の通電状態を、通常通電状態から省電力状態に移行させたり、それとは逆に省電力状態から通常通電状態に復帰させたりするように各部の電源回路を制御する処理部である。
【0046】
操作パネル2aは、いわゆるタッチ式パネルで構成され、ユーザが画像処理装置3を操作する際のユーザインタフェースとなるものである。すなわち操作パネル2aは、液晶パネルなどで構成され各種情報を表示する表示部と、その表示部に対する接触操作を検知することによりユーザによる指示操作を入力する操作入力部とが一体的に構成されている。
【0047】
記憶装置15は、例えばハードディスク装置などで構成される。また記憶装置15は、上述した文書データを記憶する文書データ記憶部17を備えている。また本実施形態では、画像処理装置3の通電状態が省電力状態へと移行すると、この記憶装置15に対する電力供給が遮断される構成となっている。そのため、省電力状態では、記憶装置15に対する各種情報の書き込みや読み出し動作を行うことができなくなる。それ故、省電力状態であるときに、記憶装置15に対する書き込み動作や読み出し動作を行う処理が発生すると、制御部10は、まず通電状態を省電力状態から通常通電状態へと復帰させる処理を行う。
【0048】
印刷処理部13は、文書データの印刷出力を行う処理部である。例えば印刷処理部13は、給紙カセットから用紙を1枚ずつ給紙する給紙部、給紙部から給紙された用紙に対して、印刷ジョブに含まれる画像データに基づき画像形成を行う画像形成部、画像形成部によって形成されるトナー像(画像)を用紙に転写させる転写部、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部、印刷された印刷物を排出口まで搬送する印刷物搬送部、画像形成部にトナーを補充するトナーボトルなどを備えている。
【0049】
図5は、本実施形態における制御部10の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部10は、上述したCPU10aがプログラム16を実行することにより、文書データを管理する管理部31、文書データの印刷出力を制御する出力制御部33、所定の送信宛先に対して文書データの出力指示を行うように要求する通知部34、画像処理装置3の通電状態を制御する通電制御部36として機能する。管理部31は、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングなどを決定する決定部32を備えている。また通知部34は、出力指示の要求を行う際にその要求の送信先となるユーザを特定する判断部35を備えている。制御部10において、少なくとも管理部31及び通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態であっても動作することが可能に構成される。
【0050】
また記憶装置15には、上述した文書データ記憶部17として、印刷ジョブを記憶する印刷ジョブ記憶部17aと、回覧情報の付加された文書データを記憶する回覧BOX17bとが設けられている。更に、記憶装置15には、参照情報18として、電子メールアドレスなどのユーザに関する情報がユーザごとに登録された管理テーブル18aと、ユーザに対して出力指示の要求を行うタイミングが文書データの種類ごとに登録された通知時間テーブル18bとが記憶されている。
【0051】
管理部31は、上述したようにネットワーク7を介して受信する文書データの管理を行なう処理部である。この管理部31は、例えばネットワーク7を介して文書データを受信すると、文書データ記憶部17及び出力制御部33の何れかに振分けて出力する処理を行う。例えば、受信した文書データが、記憶装置15に保存することが指定された印刷ジョブに含まれる場合、管理部31は、その印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させる。尚、印刷ジョブ記憶部17aに記憶される印刷ジョブには、その印刷ジョブを送信したユーザに関する情報が付加される。また、回覧情報の付加された文書データを受信した場合、管理部31は、その回覧情報の付加された文書データを回覧BOX17bに記憶させる。更に管理部31は、直ちに印刷出力を指定する印刷ジョブを受信する場合には、その印刷ジョブを出力制御部33に対して出力する。
【0052】
ここで出力制御部33は、管理部31から印刷ジョブを受信すると印刷処理部13に対してその印刷ジョブを実行させる処理部である。この場合、印刷ジョブの受信に伴い、印刷処理部13において直ちに印刷出力が開始され、印刷物が出力されることになる。また出力制御部33は、文書データ記憶部17に記憶されている文書データに対して操作パネル2a又は情報処理装置4から印刷出力の指示を受付けると、その指示に従って文書データ記憶部17から文書データを読出して印刷処理部13に実行させる処理も行う。
【0053】
決定部32は、画像処理装置3の通電状態を通常通電状態から省電力状態へ移行させる移行タイミングと、ユーザに対して出力指示に関する要求を通知する通知タイミングとを決定する処理部である。
【0054】
この決定部32は、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態になったことを検知すると、その検知タイミングから所定時間経過したタイミングを、通常通電状態から省電力状態へと移行させる移行タイミングとして決定する。
【0055】
例えば、画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰した場合、その復帰タイミングから所定時間経過するタイミングを移行タイミングとして決定する。その後、ネットワーク7からデータを受信したり、或いは、操作パネル2aに対する操作を検知したりすると、決定部32は、移行タイミングを一旦リセットする。そして更にその後、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態になったことを再び検知すると、その検知タイミングから所定時間経過したタイミングを、通常通電状態から省電力状態へと移行させる移行タイミングとして再決定する。従って、画像処理装置3が継続的に使用される場合には、その都度、新たな移行タイミングが再決定されていくので、通電状態が省電力状態へ移行するタイミングは、最初に決定される移行タイミングよりも後のタイミングへと段階的に繰り延べされていく。また移行タイミングを決定する場合の所定時間については任意であるが、例えば「現在時刻から10分後」として決定される。
【0056】
決定部32は、上記のようにして移行タイミングを決定すると、次に、ユーザに対して出力指示の要求を通知すべき通知タイミングを決定する処理を行う。
【0057】
図6は、決定部32が通知タイミングを決定する場合の処理を模式的に示す図である。図例において、画像処理装置3の通電状態が通常通電状態に復帰するタイミングを復帰タイミングTaとする。決定部32は、復帰タイミングTaにおいて通電状態が通常通電状態に復帰すると、その復帰タイミングTaから所定時間が経過するタイミングを、省電力状態へと移行させる移行タイミングTcとして決定する。次に決定部32は、記憶装置15に、ユーザによる出力指示を待機する状態となっている文書データが記憶されているか否かを検知する。記憶装置15にそのような文書データが記憶されていない場合には、出力指示の要求を通知すべきユーザが存在しないので、決定部32は、通知タイミングを決定する処理を行わない。一方、記憶装置15にそのような文書データが記憶されている場合、決定部32は、以下のようにして通知タイミングを決定する処理を行う。
【0058】
すなわち決定部32は、記憶装置15から通知時間テーブル18b(詳しくは後述する)を読み出し、その通知時間テーブル18bに基づいて、移行タイミングTcから所定時間遡ったタイミングを通知タイミングTbとして決定する。この通知タイミングTbは、復帰タイミングTaよりも前のタイミングにはならないように決定される。移行タイミングTcから通知タイミングTbをどの程度遡ったタイミングに設定するかは任意であるが、少なくともユーザが電子メールによる通知を受けた後、画像処理装置3に対して文書データの出力指示を行うことができる時間(以下「処理所要時間」と称する)だけ遡ったタイミングに設定することが好ましい。これにより、ユーザは画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に文書データの出力指示を行うことができるようになる。そして画像処理装置3は、通電状態を省電力状態へ移行させる前に、記憶装置15に保存している文書データを読み出し、ユーザによって指定された出力処理を行うことができるようになる。
【0059】
尚、移行タイミングTcよりも前であって、画像処理装置3において行われる出力処理に要する時間よりも前に、ユーザが出力指示を行った場合には、移行タイミングTcを後に繰り延べることなく、移行タイミングTcが経過する時点で通電状態を省電力状態に移行することができる。この場合、画像処理装置3は、予定されている移行タイミングTcを延長することなく通電状態を省電力状態に移行させることができるので、省電力状態を比較的長時間継続させることができるようになる。以下、通知タイミングを決定するための処理について更に詳しく説明する。
【0060】
図7は、通知タイミングを決定するための通知時間テーブル18bの一例を示す図である。通知時間テーブル18bは、決定部32によって参照される情報であり、移行タイミングから遡るべき時間、つまり図6に示す移行タイミングTcから通知タイミングTbまでの時間が記録されている。図7に示す通知時間テーブル18bには、文書データの種類ごとに通知時間が登録されている。すなわち、通知時間テーブル18bには、印刷ジョブに文書データが含まれている場合の通知時間と、文書データに回覧情報が付加されている場合の通知時間とが記録されている。これにより、文書データが印刷ジョブである場合と、回覧データである場合とで通知タイミングを異ならせることが可能である。但し、必ずしも印刷ジョブと回覧データとで通知タイミングを異ならせる必要はなく、文書データとして1つの通知タイミングを決定するように構成しても良い。
【0061】
決定部32は、通知タイミングを決定する際、通知時間テーブル18bを参照して、この通知時間テーブル18bに記録されている通知時間だけ移行タイミングから遡った時間を通知タイミングとして決定する。例えば移行タイミングTcが「現在時刻から10分後」として決定されている状態において、図7の通知時間テーブル18bを参照して印刷ジョブに対応する通知タイミングを決定する場合、決定部32は、移行タイミングTcの2分前である「現在時刻から8分後」を通知タイミングTbとして決定する。また決定部32は、回覧データに対応する通知タイミングTbについては、例えば移行タイミングTcの5分前である「現在時刻から5分後」として決定する。
【0062】
決定部32は、記憶装置15に印刷ジョブと回覧データとが記憶されている場合、上記のようにして印刷ジョブと回覧データとのそれぞれについて通知タイミングTbを決定する。また決定部32は、記憶装置15に印刷ジョブと回覧データの何れか一方のみが記憶装置15に記憶されている場合には、その一方に対応する通知タイミングTbのみを決定する。
【0063】
通知時間テーブル18bに記録される通知時間は、例えば、画像処理装置3の管理者などによって変更可能に構成されても良い。例えばユーザの席から画像処理装置3までの距離が比較的離れている場合、そのユーザが画像処理装置3から送信される電子メールを確認してから画像処理装置3まで移動する間に、移行タイミングTcが経過してしまうと通電状態が省電力状態に移行してしまう可能性がある。そこでユーザが電子メールを確認してからある程度の余裕をもって画像処理装置3に対して出力指示を行うことが出来るように、通知タイミングを変更可能に構成することで上記のような不具合を防止することができる。
【0064】
この場合、管理部31は、例えば管理者などの操作指示に基づき通知タイミングを任意に設定する設定部として機能する。すなわち管理部31は、操作パネル2a又は情報処理装置4を介して通知タイミングを変更する操作指示を受付けると、その操作指示に基づき通知時間テーブル18bに記録されている通知時間を上書きすることにより更新する。これにより決定部32は、更新後の通知時間に基づき移行タイミングを決定することができる。
【0065】
また決定部32は、通知タイミングTbを決定する際、通知時間テーブル18bに記録されている通知時間を、文書データのデータ量などに応じて自動で変動させるようにしても良い。すなわち、上述したように、移行タイミングTcが経過する前であって、画像処理装置3において行われる出力処理に要する時間よりも前に、ユーザによる出力指示が行われるのであれば、移行タイミングTcが経過する時点でユーザによって指定された出力処理が完了しており、速やかに通電状態を省電力状態に移行させることができる。ところが、出力処理に要する時間は、通常、文書データのデータ量に比例して変化し、文書データのデータ量が大きくなると、それに伴って処理時間が長くなる。そのため、管理部31は、移行タイミングTcが経過する時点でその出力処理が未だ実行中である状態を回避すべく、記憶装置15に記憶されている文書データのデータ量や画像処理装置3の処理速度などに基づき、通知時間テーブル18bに設定されている通知タイミングを自動で早めるようにしても良い。
【0066】
また管理部31は、記憶装置15に文書データを保存することに伴い、その文書データに関する情報を、管理テーブル18aに追加記録する。
【0067】
図8は、管理テーブル18aの一例を示す図である。管理テーブル18aには、予めユーザ名と、送信宛先とが登録されている。管理部31は、記憶装置15への保存対象となる文書データを受信すると、その文書データの種類を判別する。文書データが印刷ジョブに含まれる場合、管理部31は、その印刷ジョブに付加されたユーザに関する情報に基づき、印刷ジョブを送信したユーザを特定する。そして管理部31は、その特定したユーザに対応する文書データの欄に、文書データを特定する情報を記録すると共に、印刷出力要求の欄に、未だ印刷出力の指示が行われていないことを示す値(図8の例では「有」)を記録する。これにより、未だ印刷出力が行われていない印刷ジョブと、ユーザとが互いに関連付けられる。
【0068】
また回覧データである文書データを受信した場合、管理部31は、その文書データに付加された回覧情報に基づき、文書データを閲覧するユーザを特定する。そして管理部31は、その特定したユーザに対応する文書データの欄に、回覧対象となる文書データを特定する情報を記録すると共に、回覧要求の欄に、未だ閲覧出力の指示が行われていないことを示す値(図8の例では「有」)を記録する。これにより、未だ閲覧が行われていない文書データと、ユーザとが互いに関連付けられる。
【0069】
上記のような管理テーブル18aを参照することで、記憶装置15に記憶されている文書データを利用するユーザを特定することが可能になる。そして画像処理装置3は、文書データに関連付けられたユーザに対し、通電状態が省電力状態に移行する前に、出力指示を要求する電子メールを送信することができるようになる。
【0070】
再び図5に戻って、通知部34は、通知タイミングTbになると、文書データに関連付けられたユーザに対し、文書データの出力指示を行うことを要求する通知を行う処理部である。例えば、通知部34は、文書データに関連付けられたユーザの電子メールアドレスを読み出し、その電子メールアドレスに対して文書データの出力指示を行うことを要求する電子メールを送信する。但し、通知部34による通知方法は必ずしも電子メールに限られない。例えば、通知部34は、情報処理装置4に常駐するプリンタドライバなどに対して通知を行うようにしても良い。この場合、情報処理装置4は、通知部34からの通知を受信すると、直ちにその通知内容をポップアップ表示することができる。そのため、ユーザが情報処理装置4を操作している状態であれば、電子メールで通知を行う場合よりも、速やかにユーザに対する通知を行うことができる。
【0071】
このように通知部34が省電力状態へ移行する前の通知タイミングTbでユーザに対する通知を行うことにより、ユーザは、画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に出力指示を行わなければならない文書データが保存されていることを把握することができる。またそのような出力指示を速やかに行わなければならないことも把握する。従って、ユーザは、画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に、画像処理装置3に対して文書データの出力指示を行うことができるようになる。
【0072】
このような通知部34は、決定部32によって通知タイミングTbが決定されることに伴って計時動作を開始し、通知タイミングTbが経過するか否かを常時監視する。そして通知タイミングTbが経過したことを検知すると、通知部34は、文書データに関連付けられたユーザに対して出力指示の要求を送信する。出力指示の要求を送信するユーザを判別する処理は、以下に説明するように通知部34が出力指示の要求を送信するのに先だって、判断部35によって行われる。
【0073】
判断部35は、通知タイミングTbが経過することに伴って機能し、出力指示の要求を通知すべきユーザを特定する処理部である。判断部35は、記憶装置15に文書データが記憶されている状態で通知タイミングTbが経過すると、印刷ジョブと回覧データのいずれについての通知を行うかを特定する。これにより、まず通知対象となる文書データが特定される。続いて判断部35は、管理テーブル18aを参照することにより、その特定した文書データに関連付けられているユーザを特定する。これにより、出力指示を行うことを要求するユーザが特定される。そして通知部34は、判断部35によって特定されるユーザに対して、上述したように出力指示の要求を送信する。
【0074】
通電制御部36は、電力供給部12(図4)に対して各種指示を行なう処理部である。この通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が通常通電状態である場合において移行タイミングTcが経過したことを検知すると、印刷処理や上述した回覧処理などが行われていないことを条件として、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるように電力供給部12に指示する。例えば、通電制御部36は、決定部32によって移行タイミングTcが決定されると、計時動作を開始して、その移行タイミングTcが経過するか否かを常時監視する。この通電制御部36は、決定部32によって移行タイミングTcが決定される度に、それまでの計測時間を一旦リセットし、その後はじめから計時動作を再開する。但し、移行タイミングTcが省電力状態へ移行させる時刻で設定される場合、通電制御部36は必ずしも計時動作を行う必要はなく、現在時刻が移行タイミングTcとなったか否かを判断するようにすれば良い。
【0075】
また通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態である状態において、ユーザが操作パネル2aを操作したことが検知された場合、或いは、ネットワーク7を介して受信データが検知された場合、通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させるように電力供給部12に指示する。
【0076】
以下、各処理部が連携して機能する場合の処理について詳しく説明する。但し、以下においては、文書データが印刷ジョブに含まれる場合を例示する。
【0077】
図9(a),図9(b)は、文書データが印刷ジョブに含まれる場合における処理を模式的に示す図である。図9(a)に示すように、ユーザAが情報処理装置4aに対して所定の操作を行うと、情報処理装置4aから画像処理装置3に対して印刷ジョブが送信される。このとき、画像処理装置3が省電力状態であった場合、画像処理装置3は、情報処理装置4aから印刷ジョブを受信することに伴い、省電力状態から通常通電状態へと復帰する。すなわち、通電制御部36は、情報処理装置4aからの印刷ジョブを受信したことを検知して、通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させる。
【0078】
管理部31は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰すると、上述したように、受信した印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させる。このようにして図例に示すように印刷ジョブ記憶部17aには印刷ジョブが記憶される。次に決定部32は、通電状態を省電力状態に移行する移行タイミングTcを上記のようにして決定する。また、このとき印刷ジョブ記憶部17aに印刷ジョブが記憶されている状態であるので、決定部32は、出力指示の要求を通知する通知タイミングTbを決定する。決定部32によって移行タイミングTc及び通知タイミングTbが決定されると、通電制御部36は、計時動作を開始し移行タイミングTcが経過するか否を監視する。同様に通知部34は、通知タイミングTbが経過するか否かを監視する。
【0079】
管理部31は、印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させると、その印刷ジョブの送信元となるユーザAを特定して、例えば図8に示すように、そのユーザAに対応するように管理テーブル18aの印刷出力要求の欄に「有」と記録する。これにより印刷ジョブと、その印刷ジョブを利用する予定のあるユーザAとが関連づけられることになる。仮に異なるユーザが送信元となる複数の印刷ジョブが印刷ジョブ記憶部17aに記憶される場合、管理部31は、各ユーザに対応して上記のように記録処理を行う。また管理部31は、例えばユーザによる文書データの印刷指示が行われることによって印刷ジョブ記憶部17aから印刷ジョブを削除した場合、管理テーブル18aにおいて、その印刷指示を行ったユーザに関連付けられている文書データの欄と、印刷出力要求の欄とを例えばブランクに書き換えることにより更新する。これにより文書データとユーザとの関連づけが解除されることになる。
【0080】
図9(a)に戻って、次に通知部34は、通知タイミングTbが経過したことを検知すると、管理テーブル18aを参照して、印刷ジョブ記憶部17aに記憶されている印刷ジョブを利用する予定のあるユーザとして、印刷出力要求の欄に「有」と記録されているユーザAを特定する。次に通知部34は、そのユーザAに対して出力指示を行うことを要求する通知を送信する。以下、通知部34による通知内容について説明する。
【0081】
図10は、通知部34による出力指示の要求に関する通知内容の一例を示す図である。出力指示の要求が電子メールによって通知される場合、図10に示す通知内容は例えばメール本文に記載される。但し添付ファイルによって通知内容が通知されるように構成しても良い。通知内容には、図例に示すように、例えば画像処理装置3の通電状態が省電力状態に移行する前に出力指示を行うように促すメッセージや、画像処理装置3の通電状態が省電力状態に移行する具体的な時刻が含まれる。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行するまでに、ユーザに対して文書データの出力指示を行わせることが可能になる。
【0082】
図9(b)に示すように、その後、ユーザAは、例えば画像処理装置3まで移動して、操作パネル2aを操作することにより、印刷ジョブ記憶部17aに記憶されている文書データの印刷出力を指示する。このとき例えば、ユーザAが関連づけられている複数の印刷ジョブが印刷ジョブ記憶部a17に記憶されている場合には、管理部31は、文書データを一覧表示して実行すべき印刷ジョブをユーザAに選択させても良い。
【0083】
管理部31は、ユーザAによって選択された印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aから読出して出力制御部33を介して印刷処理部13に送信する。そして印刷処理部13は、印刷ジョブを実行することにより印刷出力を行う。また管理部31は、印刷ジョブが実行されることに伴ってユーザAに対応する管理テーブル18aの印刷出力要求の欄をブランクに更新する。またこのとき管理部31は、記憶装置15に記憶されている印刷ジョブを自動で削除しても良い。
【0084】
そして通電制御部36は、移行タイミングTcが経過することに伴って通電状態をそれまでの通常通電状態から省電力状態に移行させる。これにより通電状態が省電力状態に移行するまでにユーザAに印刷出力の指示を行わせることが可能となり、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させてから後に、少なくともユーザAから印刷出力の指示が行われることを回避することができる。その結果、画像処理装置3は、省電力状態に移行してから後に、ユーザAの操作によって復帰動作を行うことを回避することができるようになり、復帰動作を行う回数を低減することができる。そして省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することが可能になる。
【0085】
ところで、既に出力指示の要求を通知したユーザから、その出力指示の要求とは無関係の操作指示を受付けることがある。例えば、上記のようにしてユーザにAに対して出力指示の要求を通知した後に、そのユーザAの操作パネル2aに対する指示操作により例えばスキャンやFAXなど印刷出力とは関係のない処理を要求される場合である。この場合、画像処理装置3は、ユーザAに対して印刷出力に関する処理を速やかに行わせるために、それらスキャンやFAXなどに関する処理に優先させて印刷出力を行っても良い。
【0086】
すなわち出力制御部33は、既に出力指示の要求を通知したユーザAが関連づけられている印刷ジョブが記憶装置15に記憶されている状態で、操作パネル2aに対する指示操作によりそのユーザAによるログインが許可されたことを検知した場合には、印刷ジョブの実行を促す操作画面を操作パネル2aに表示する。この操作画面は、例えばスキャンやFAXなどの処理を実行するための操作画面よりも優先的に表示される。そして出力制御部33は、ユーザによる出力指示に基づき印刷ジョブの印刷処理を実行する。或いは、この場合、そのユーザAによるログイン操作を出力指示と見なして自動で印刷ジョブを実行しても構わない。これにより通電状態が通常通電状態であるときに印刷ジョブを実行させることができるので、通電状態が省電力状態に移行してからユーザAによる出力指示を受けなくて済む。
【0087】
次に、文書データが回覧情報の付加された回覧データである場合における処理について説明する。尚、以下においては、上述した文書データが印刷ジョブである場合における処理と重複する処理については説明を省略する。
【0088】
図11は、回覧処理が行われる場合における処理を模式的に示す図である。例えば、ユーザAが情報処理装置4aに対して所定の操作を行うと、情報処理装置4aから画像処理装置3に対して回覧用の文書データが送信される。この文書データには、例えばユーザB及びCを回覧者として指定する回覧情報が付加されている。
【0089】
画像処理装置3は、そのような文書データを受信すると、記憶装置15における回覧文書専用の記憶領域である回覧BOX17bにその文書データを保存する。すなわち、管理部31は、回覧用の文書データを受信すると、その文書データを回覧BOX17bに記憶させる。また管理部31は、文書データを回覧BOX17bに記憶させると、その文書データに付加されている回覧情報に基づき、管理テーブル18aの回覧者として指定されているユーザに対応する文書データの欄および閲覧要求の欄に必要な情報を記録する。この段階では、その回覧用の文書データはユーザB及びCのいずれにも閲覧されていない状態であるので、管理部31は、管理テーブル18aのユーザB及びCに対応する閲覧要求の欄を、「有」と記録する。これにより回覧対象となる文書データと、その文書データを利用する予定のあるユーザB及びCとが関連づけられることになる。
【0090】
また管理部31は、上記と同様にして通電状態を省電力状態に移行させる移行タイミングTcと、出力指示を要求する通知タイミングTbとを決定する。これに伴って通電制御部36は、移行タイミングTcが経過する否かを監視し、また通知部34は、通知タイミングTbが経過するか否かを監視する。
【0091】
また通知部34は、管理テーブル18aを参照して回覧者となるユーザB及びCの送信宛先を特定する。そして通知部34は、例えば回覧対象となる文書データを参照すべきメッセージと、その文書データが保存された回覧BOX17bへアクセスするための情報とを示す通知内容の電子メールを作成して、ユーザB及びCの電子メールアドレスに対して一斉に送信する。これによりユーザB及びCは、受信する電子メールを確認することで回覧BOX17bに文書データが記憶されていることを把握できる。その後、例えば、ユーザBのみが画像処理装置3に対して文書データの閲覧要求を行うとする。
【0092】
管理部31は、ユーザBから閲覧要求を受付けると、例えばログインが許可されることを条件として、文書データへのアクセスを許可する。これによりユーザBは、文書データの内容を閲覧することが可能になる。管理部31は、文書データへのアクセスを許可したユーザBに対応して管理テーブル18aの閲覧要求の欄をブランクに更新する。これにより文書データとユーザBとの関連づけが解除されることになる。またこの場合、図8に示すように、ユーザCに対応する管理テーブル18aの閲覧要求の欄は「有」となったままの状態である。
【0093】
そのような状態において、通知タイミングTbが経過すると、判断部35が機能する。判断部35は、管理テーブル18aを参照して閲覧要求の欄が「有」となっているユーザCを、出力指示の要求を行うべきユーザとして特定する。通知部34は、判断部35によって出力指示の要求を行うべきユーザとしてユーザCが特定されると、管理テーブル18aを参照してユーザCの電子メールアドレスを特定する。そして上記と同様に、通知部34は、その電子メールアドレスに対して出力指示の要求を行う電子メールを送信する。
【0094】
図11に戻って管理部31は、ユーザCから閲覧要求を受けると上記と同様にして文書データへのアクセスを許可する。これにより回覧者となる全てのユーザB及びCが文書データを閲覧したことになる。また管理部31は、回覧者となるユーザが関連づけられている文書データが回覧BOX17bに複数記憶されている状態で、そのユーザからの閲覧要求を受付けた場合には、それら文書データを一覧表示して、閲覧させる文書データをユーザに選択させることで、その文書データを閲覧させても良い。
【0095】
管理部31は、ユーザCによる文書データの閲覧が終了することに伴ってユーザCに対応する管理テーブル18aの閲覧要求の欄をブランクに更新する。また管理部31は、全てのユーザが文書データを閲覧したことを検知すると、回覧BOX17bに記憶されている文書データを自動で削除しても良い。
【0096】
その後、通電制御部36は、移行タイミングTcが経過することに伴って画像処理装置3の通電状態を省電力状態に移行させる。つまり、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態へ移行させる前に、ユーザCに文書データを閲覧させることができる。そのため、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させてから後に、少なくともユーザCから閲覧要求の指示が行われることを回避することができる。これにより画像処理装置3は、省電力状態に移行してから後に、ユーザCの閲覧要求によって復帰動作を行うことを回避することができるようになり、復帰動作を行う回数を低減することができる。その結果、画像処理装置3は、省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することが可能になる。
【0097】
また、上記のようにして行う回覧処理においても、上述したタッチアンドプリントを行う場合と同様に既に出力指示の要求を通知したユーザから、その出力指示の要求とは無関係の操作指示を受付ける場合がある。例えば、既に出力指示の要求を通知したユーザCが関連づけられている文書データが、回覧BOX17bに記憶されている状態で、そのユーザCの報処理装置4に対する所定操作により例えばスキャンなどのリモート操作を画像処理装置3に対して行う場合がある。
【0098】
この場合、管理部31は、ユーザCに対して回覧対象となる文書データを速やかに回覧させるため、それらスキャンなどに関する処理に優先させて回覧対象となる文書データを情報処理装置4に表示させても良い。すなわち管理部31は、既に出力指示の要求を通知したユーザCが関連づけられている文書データが、回覧BOX17bに記憶されている状態で、そのユーザCによる何らかの操作指示を受信した場合には、その操作指示に文書データに対する閲覧要求が含まれると見なす。そして、管理部31は、ユーザCが回覧対象となる文書データを回覧BOX17bから自動で読出して情報処理装置4に表示させる。これにより通電状態が通常通電状態であるときにユーザに対して文書データを閲覧させることができる。
【0099】
次に、通電状態を省電力状態へと移行させる移行タイミングTcが繰り延べされながら段階的に再決定されていく場合の処理を例示する。
【0100】
図12(a),図12(b)は、移行タイミングが再決定される場合における各処理の実行タイミングを時系列で示す図である。尚、図12(a),図12(b)の例では、タイミングT1よりも前に、既に記憶装置15に文書データが記憶されているものとする。また図12(a)に示すように画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰するタイミングを復帰タイミングT1とする。復帰タイミングT1において決定部32は、所定時間経過後に省電力状態へ移行させる移行タイミングT4を決定すると共に、その移行タイミングT4よりも所定時間前に通知タイミングT3を決定する。
【0101】
そのような状態において、画像処理装置3が、通知タイミングT3よりも前のタイミングT2で、印刷機能、スキャン機能、FAX機能又はコピー機能などに関する何らかの指示を受付けたとする。このとき決定部32は、それまで決定されていた移行タイミングT4及び通知タイミングT3をリセットする。そしてタイミングT2から所定時間経過後に省電力状態へ移行させる移行タイミングT7を決定すると共に、その移行タイミングT7よりも所定時間前に通知タイミングT5を決定する。このようにして通知タイミングT5及び移行タイミングT7が段階的に繰り延べされる。
【0102】
その後、何ら処理が行われない状態のまま通知タイミングT5が経過したとする。このとき通知部34は、上記のようにして所定の送信宛先に、文書データの出力指示を行うことを要求する通知を行う。そして通知タイミングT5が経過した後に、例えばタイミングT6において新たにユーザによる指示を受付けると制御部10は以下のように処理を行う。
【0103】
まず制御部10において決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に応答するものであるか、又は既に通知した出力指示の要求とは無関係であるかを判断する。決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に応答するものである場合、移行タイミングT7の変更を行わない。つまりユーザに対して行われる出力指示の要求は、移行タイミングT7が経過するまでにユーザによる出力指示が行われることが見込まれた通知タイミングT5で通知されるものである。従って、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われた場合には、それ以上、省電力状態へ移行させるタイミングT7を遅らせる必要はない。そのため決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合には、既に決定されている移行タイミングT7を繰り延べるような再決定を行わない。このように構成することで、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われた場合には、移行タイミングT7が延長されないので比較的早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができる。
【0104】
一方、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求とは無関係な指示である場合、決定部32は、新たな移行タイミングを再決定する。つまり既に通知した出力指示の要求とは無関係な指示である場合、その指示操作に引き続いて様々な操作が行われる可能性がある。例えば、スキャン機能を使用するユーザが、スキャン機能を選択した後、スキャン機能に関する様々な設定操作を行っていくことが考えられる。このような場合、省電力状体へ移行させる移行タイミングT7を繰り延べることなく、移行タイミングT7で省電力状態へ移行させてしまうと、ユーザが設定操作を行っている途中で画像処理装置3が省電力状態へ移行してしまうという不具合が発生する。そのような不具合を解消するため、決定部32は、既に通知した出力指示の要求とは無関係の指示である場合には、移行タイミングT7を一度リセットし、移行タイミングT7を繰り延べた新たな移行タイミングを再決定するように構成されている。またこの場合、新たな移行タイミングが再決定されることに伴って、決定部32は、新たな通知タイミングを再決定する。
【0105】
タイミングT6において受付けた指示が、例えば既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合、上述したように新たな移行タイミングは再決定されないので、通電制御部36は、その後、他の指示を受け付けることなく、移行タイミングT7が経過したことを検知すると、その移行タイミングT7において通電状態をそれまでの通常通電状態から省電力状態に移行させる。但し、タイミングT6において受け付けた出力指示に基づく文書データの出力処理が移行タイミングT7において完了していない場合には、少なくともその出力処理が完了するまで、省電力状態へ移行させるタイミングが繰り延べされる。この場合、通電制御部36は、出力処理の完了に伴って画像処理装置3を省電力状態へと移行させる。これにより比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態に移行させることができるので、消費電力を節約することができる。
【0106】
また、通知タイミングで出力指示の要求を通知した後に再び通知タイミングとなることがある。例えば、図12(b)において、通知タイミングT8において1回目の出力指示の要求が通知されたとする。その後、例えばタイミングT9において、既に通知した1回目の出力指示の要求とは無関係の指示を受付けたとする。このとき決定部32は、それまでの移行タイミングT10をリセットして、例えば新たな移行タイミングT12を決定する。これに伴い、新たな移行タイミングT12の前に、新たな通知タイミングT11が設定される。すなわちこの場合、通知タイミングT11は、2回目となる通知タイミングである。仮に2回目以降となる出力指示の要求が繰り返し通知されてしまうと、ユーザにとっては同様の内容の通知を複数回受けることとなり、煩わしく感じられる。そこで、通知部34は、通知タイミングが経過するとき、過去にそのユーザに対して同様の内容となる出力指示の要求を既に通知しているか否かを判断し、既に出力指示の要求を通知している場合には、2回目以降となる出力指示の要求を通知しない。これによりユーザに対して複数回の出力指示の要求が通知されなくなるので画像処理装置3の使い勝手が向上する。
【0107】
但し、長期に及んで出力指示の要求が通知されないと、ユーザは、どのタイミングで画像処理装置3に対して出力指示の要求を行うべきかが把握できなくなってしまう。そのためユーザは、通電状態が省電力状態に移行しているときに画像処理装置3に対して出力指示を行ってしまう可能性がある。そこで通知部34は、通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰してから再び省電力状態に移行するまでを1サイクルとして、その1サイクル内において最初に通知タイミングが経過するときに、1度だけユーザに対して出力指示の要求を通知することが好ましい。すなわち、通知部34は、2度目以降となるサイクルにおいても最初に通知タイミングが経過するときに、1度だけユーザに対して出力指示の要求を送信する。このような構成によれば、ユーザが定期的に画像処理装置3に対して出力指示を行うチャンスを得られるようになる。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態へ移行する前に、ユーザによる出力指示を受けることができるようになり、省電力状態へ移行する前にそのユーザによる出力指示に基づいて文書データの出力処理を完了させることができるようになる。
【0108】
更に、通電状態が省電力状態に移行している状態で、過去に通知した出力指示の要求に対応する出力指示を受付ける場合がある。図12(b)に示すように、移行タイミングT12において通電状態が省電力状態に移行している状態で、例えばタイミングT13において、過去に通知した出力指示の要求に対応する出力指示を受付けた場合、まず通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させる。そして画像処理装置3は、ユーザによる出力指示に基づいて文書データの出力指示を行う。
【0109】
決定部32は、このような出力指示に基づいて通電状態を通常通電状態に復帰させた場合には、移行タイミング及び通知タイミングを決定しない。この場合、管理部31は、通電制御部36に対してユーザによって指定された出力処理が完了することに伴って、通電状態を省電力状態に移行するように指示する。そして通電制御部36は、実行中の処理が完了するか否かを監視し、その処理が完了することに伴って例えばタイミングT14において通電状態を省電力状態に移行させる。これにより文書データに関する出力処理が完了するタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることが可能になる。
【0110】
図13は、制御部10において実行される全体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図13を参照しつつ、制御部10において実行される処理の処理手順について詳しく説明する。
【0111】
画像処理装置3に電源が投入されるか、又は通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰すると(ステップS1)、制御部10は処理を開始する。まず制御部10は、通電状態が通常通電状態に復帰したことの要因が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われたことに起因する場合には(ステップS2のYES)、その出力指示に対応する出力処理を実行し(ステップS3)、その処理が完了すると(ステップS4のYES)、速やかに省電力状態に移行させる(ステップS5)。尚、ここまでの処理は、図12で示したタイミングT12〜T14に関する処理である。
【0112】
一方、制御部10は、通電状態が通常通電状態に復帰したことの要因が、既に通知した出力指示の要求には対応しない指示が行われたことことに起因する場合(ステップS2のNO)、その指示に対応する処理を実行する(ステップS6)。例えば制御部10は、受信する文書データを記憶装置15に記憶させたり、印刷出力させたりする。次に制御部10は、ステップS6の処理が完了すると、移行タイミングを決定する(ステップS7)。そして制御部10は、記憶装置15に文書データが記憶されているか否かを検知する(ステップS8)。ここでいう記憶装置15に文書データが記憶されている状態とは、ステップS2において受信した指示に関する処理を実行することに伴って文書データが記憶装置15に記憶された場合と、受信した指示とは関係なく通電状態が通常通電状態に復帰した段階で既に記憶装置15に文書データが記憶されている場合とを含む。制御部10は、文書データが記憶装置15に記憶されている場合には(ステップS8のYES)、通知タイミングを決定する(ステップS9)。尚、この段階で決定される移行タイミング及び通知タイミングは、上述した1サイクル内において最初となるものである。また制御部10は、ステップS8において文書データが記憶装置15に記憶されていない場合には(ステップS8のNO)、ステップS9をスキップする。
【0113】
次に制御部10は、後述する出力指示要求通知処理を実行する(ステップS10)。そして、制御部10は、移行タイミングが経過するまで出力指示要求通知処理を繰り返して実行し(ステップS11のNO)、最終的に省電力状態への移行タイミングが経過することに伴って(ステップS11のYES)、通電状態を省電力状態に移行させる(ステップS5)。以上のようにして全体的な処理は全て終了する。
【0114】
図14は、出力指示要求通知処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理が開始されると、まず制御部10は、ユーザから指示を受け付けている状態であるか否かを検知する(ステップS21)。ユーザから指示を受け付けている状態である場合(ステップS21のYES)、制御部10は、その指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示であるか否かを判断する(ステップS22)。
【0115】
制御部10は、受け付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示でない場合(ステップS22のNO)、その指示に対応する処理の実行を開始する(ステップS23)。そして制御部10は、移行タイミングを再決定すると共に(ステップS24)、通知タイミングを再決定する(ステップS25)。
【0116】
一方、ステップS21において、ユーザからの指示を受け付けていない場合(ステップS21のNO)、制御部10は、ステップS22〜S26をスキップする。すなわちこの場合、制御部10は、既に決定された移行タイミング又は通知タイミングが経過するのを単に監視する状態となる。制御部10は、受け付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合(ステップS22のYES)、その出力指示に基づいて文書データに関する出力処理の実行を開始する(ステップS26)。このとき、文書データに基づく印刷出力や、回覧データの閲覧出力などが行われる。そしてステップS26の出力処理が行われると、ステップS23〜S25をスキップする。すなわちこの場合、制御部10は、新たな移行タイミング及び通知タイミングを再決定しない。
【0117】
次に制御部10は、通知タイミングが経過した場合には(ステップS27のYES)、未だ出力指示の要求を通知していないことを条件として(ステップS28のYES)、出力指示の要求を通知する(ステップS29)。一方、制御部10は、ステップS27において、未だ通知タイミングが経過していない状態である場合には(ステップS27のNO)、ステップS28,29をスキップする。また制御部10は、ステップS28において既に出力指示の要求を通知している場合には(ステップS28のNO)、ステップS29をスキップする。これにより1サイクル内で2度目以降となる出力指示の要求が通知されないことになる。そして制御部10は、再び図13に示すステップS11に戻って移行タイミングが経過するまで(ステップS11のNO)、出力指示要求通知処理を繰り返し行う。以上のようにして出力指示要求通知処理は全て終了する。
【0118】
以上のように、本実施形態においては、画像処理装置3は、図6に示すように通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングTcを決定すると共に、ユーザに対して出力指示の要求を通知する通知タイミングTbを決定する構成である。また、画像処理装置3は、ユーザが関連づけられた文書データが記憶装置15に記憶されている状態で通知タイミングTbが経過すると、その文書データを利用する予定のあるユーザを特定して、そのユーザに対して出力指示の要求を通知する。
【0119】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示の要求を通知するので、画像処理装置3は、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示の要求を受ける可能性を低減させることができる。これにより画像処理装置3は、復帰回数を低減させることができるので省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することができる。また画像処理装置3は、文書データに関する処理を行う予定のあるユーザに対してのみ出力指示の要求を通知して、文書データに関する処理を行う予定のないユーザに対しては、出力指示の要求を通知しない構成である。このような構成によれば、文書データに関する処理を行う予定のないユーザが自己とは無関係の通知を受けずに済む。更に、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態のときにユーザに出力指示の要求を行わせる構成である。これによりユーザは、省電力状態から通常通電状態への復帰に要する時間を待たずに済むので、その分、印刷物を速やかに回収できるという利点も得られる。
【0120】
また本実施形態においては、画像処理装置3は、出力指示の要求が通知された後に実行される処理が、その通知された出力指示の要求に関する処理のみである場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングTcを繰り延べしない構成である。このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングTcを繰り延べしないので、比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させることができる。これにより消費電力を節約することができる。
【0121】
更に本実施形態においては、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングTcが経過した時点で、既に通知した出力指示の要求に関する処理が実行中である場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させない構成である。このような構成によれば、出力指示の要求に関する処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないので、出力指示の要求に関する処理が行なわれている最中に通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行してしまうことを防止することができる。
【0122】
更に本実施形態においては、画像処理装置3は、通知した出力指示の要求に関する処理を開始することに伴って通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させる構成である。このような構成によれば、出力指示の要求に関する処理を終わらせることのできる最も早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行することができるので消費電力を節約することができる。
【0123】
また本実施形態においては、通知タイミングTbから移行タイミングTcまでの時間には、記憶装置15に記憶されている文書データの処理所要時間が少なくとも含まれる構成である。このような構成によれば、移行タイミングTcを変動させること無く、記憶装置15に記憶されている文書データの処理を終わらせることが可能になる。これにより画像処理装置3は、文書データに関する処理を終わらせることの出来る最も早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができるので消費電力を節約することができる。
【0124】
更に本実施形態においては、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの1サイクル内において、2度目以降となる出力指示の要求を通知しない構成である。このような構成によれば、出力指示の要求が頻繁に通知されてしまうことを防止することができるので、画像処理装置3の使い勝手を向上させることができる。
【0125】
また本実施形態においては、画像処理装置3は、通知タイミングTbを例えば管理者などの操作者の操作指示に基づき任意のタイミングに変更可能に構成される。このような構成によれば、通知タイミングTbが任意で変更できるので利便性が高まる。
【0126】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0127】
例えば、上述した実施形態では、データ処理装置2は、画像処理装置3としてMFPに実装される場合を例示したがこれに限られない。例えばデータ処理装置2は、印刷機能のみを備える一般的な印刷機や、一般的なFAX電話機などに実装することが可能である。また本実施形態においては、データ処理システム1に含まれる情報処理装置4が一般的なパーソナルコンピュータである場合を例示したが、これに限られない。例えば、情報処理装置4は携帯電話機などのモバイル端末であっても良い。
【符号の説明】
【0128】
1 データ処理システム
2 データ処理装置
3 画像処理装置
4 情報処理装置
31 管理部(設定手段)
32 決定部(決定手段)
33 出力制御部(出力制御手段)
34 通知部(通知手段)
35 判断部(判断手段)
36 通電制御部(通電制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書データを記憶し、ユーザによる出力指示に基づいて該文書データの出力処理を行うためのデータ処理装置及びプログラムに関し、特に、データ処理装置の通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MFP(Multi-Function Peripherals)などと呼ばれるデータ処理装置は、ネットワークを介して受信する文書データを記憶しておき、ユーザによる出力指示を検知した場合に当該文書データを読み出して印刷出力などの出力処理を行うことが可能である。従来、この種のデータ処理装置における消費電力を節約するため、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する技術がある。例えば特許文献1には、記憶装置に蓄積されている全てのファイルが、送信時刻が設定されていないファイルであるときに通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるFAX装置が開示されている。また特許文献2には、印刷出力が終了することに伴って通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する印刷システムが開示されている。このように従来においては、予め設定される条件を満たすことによりデータ処理装置の通電状態を省電力状態に移行することが一般的に行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−177673号公報
【特許文献2】特開2005−346178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術においては以下のような問題がある。すなわち上記特許文献1及び2に開示された技術は、何れも予め設定された所定条件を満たしたタイミングでデータ処理装置の通電状態を省電力状態へ移行させるので、ユーザにとっては、データ処理装置が省電力状態に移行するタイミングが分からない。そのため、ユーザは、データ処理装置に対して文書データを送信した後、暫くの時間が経過してからデータ処理装置に対して印刷出力などの出力指示を行うケースが起こり得る。ところが、ユーザが出力指示を行うタイミングで既にデータ処理装置が通常通電状態から省電力状態へと移行している場合、データ処理装置は、それに対応する出力処理を行うために省電力状態から通常通電状態へと復帰する。
【0005】
この復帰動作は、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させる定着部を一定温度まで加熱昇温させる動作を含むため、定着部を一定温度に保持し続ける通常通電状態と比較すると、消費される電力が大きくなる。そのため、この種のデータ処理装置において省電力状態から通常通電状態への復帰動作が頻繁に行われるようになると、却って消費電力が大きくなってしまい、省電力状態へ移行させることによる意図した省電力効果が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、通常通電状態から省電力状態へ移行する前に、ユーザが文書データに対する出力指示を行えるようにして復帰動作の回数を低減し、従来よりも大きな省電力効果を得ることができるようにしたデータ処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、データ処理装置であって、文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置と、前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段と、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定する決定手段と、前記記憶装置に記憶されている文書データに関連づけられたユーザを特定する判断手段と、前記決定手段によって決定される移行タイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段と、前記決定手段によって決定される移行タイミングに基づき通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0008】
このような構成によれば、データ通信装置は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示を受ける可能性を低減させることができる。これによりデータ処理装置は、復帰動作の回数を低減させることができるので、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【0009】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のデータ処理装置において、前記決定手段は、前記通知手段によって要求が行われた後に実行される処理が、その要求に対応する出力指示に基づいて実行される出力処理である場合、その出力処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングを繰り延べしないことを特徴とする構成である。
【0010】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングを繰り延べしないので、比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させることができる。これにより消費電力を節約することができる。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載のデータ処理装置において、前記通電制御手段は、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングが経過した時点で、前記通知手段によって要求された出力指示に対応する出力処理が行われている場合、その出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないことを特徴とする構成である。
【0012】
このような構成によれば、出力指示に対応する出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないので、その出力処理が行なわれている最中に通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行してしまうことを防止することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通電制御手段は、前記通知手段によって要求された出力指示がユーザから入力されることによって通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合、その出力指示に対応する出力処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させることを特徴とする構成である。
【0014】
このような構成によれば、最も早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行することができるので消費電力を節約することができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段によって出力指示の要求が行われるタイミングから、前記決定手段によって決定される移行タイミングまでの時間には、前記記憶装置に記憶されている文書データの出力処理を開始してから完了するまでに要する処理所要時間が少なくとも含まれることを特徴とする構成である。
【0016】
このような構成によれば、通電状態を通常通電状態から省電力状態へ移行させる前に、出力処理を完了させることが可能である。すなわちデータ処理装置は、予定される通電状態から省電力状態への移行タイミングを例えば繰り延べすることなく、出力処理を終わらせるができるので、比較的早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求することを特徴とする構成である。
【0018】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求するので、出力指示の要求が頻繁に行われてしまうことを防止することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れかに記載のデータ処理装置において、前記通知手段によって出力指示を行うことが要求されるタイミングを、操作者の操作に基づき設定する設定手段を更に備えることを特徴とする構成である。
【0020】
このような構成によれば、出力指示が要求されるタイミングが任意で設定できるので利便性が高まる。
【0021】
請求項8に係る発明は、文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置を備えるデータ処理装置において実行されるプログラムであって、前記データ処理装置を、前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるタイミングを決定する決定手段、前記記憶装置に文書データが記憶されている状態で、その文書データに関連づけられているユーザを特定する判断手段、前記決定手段によって決定されるタイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段、および、前記決定手段によって決定されるタイミングに基づいて通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段、として機能させることを特徴とする構成である。
【0022】
このような構成によれば、データ通信装置は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示を受ける可能性を低減させることができる。これによりデータ処理装置は、復帰動作の回数を低減させることができるので、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、通常通電状態から省電力状態へ移行するよりも前に、ユーザに対して出力指示を行うことを要求するので、通常通電状態から省電力状態へ移行する前にユーザに文書データに対する出力指示を行わせることが可能である。これによりデータ通信装置は、復帰動作の回数を低減し、従来よりも大きな省電力効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】データ処理システムの全体構成例を示す図である。
【図2】データ処理システムによって行なわれるタッチアンドプリント処理の概念を示す図である。
【図3】データ処理システムによって行なわれる回覧情報を閲覧させるための処理の概念を示す図である。
【図4】データ処理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図5】データ処理装置における制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】データ処理装置によって実行される処理を時系列で示す図である。
【図7】データ処理装置に記憶される通知時間テーブルの一例を示す図である。
【図8】データ処理装置の記憶される管理テーブルの一例を示す図である。
【図9】データ処理装置において実行される処理を模式的に示す図である。
【図10】データ処理装置から情報処理装置に対して送信される出力指示の要求通知の通知内容の一例を示す図である。
【図11】データ処理装置において実行される処理を模式的に示す図である。
【図12】データ処理装置によって実行される処理を時系列で示す図である。
【図13】データ処理装置の制御部において実行される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】データ処理装置の制御部において実行される処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0026】
図1は、本実施形態におけるデータ処理システム1の一構成例を示す図である。データ処理システム1は、文書データを処理するためのデータ処理装置2が実装される画像処理装置3と、複数の情報処理装置4a〜4cとがネットワーク7を介して相互にデータ通信が可能な構成である。ネットワーク7は、例えば、一般的なオフィス内に構築されるLAN(Local Area Network)である。但し、これに限定されずネットワーク7は、WAN(Wide Area Network)などの広域的な通信網を含む複合的な通信ネットワークであってもよい。また画像処理装置3及び情報処理装置4は、例示されている数に限られない。
【0027】
情報処理装置4a〜4cは、例えば一般的なパーソナルコンピュータである。情報処理装置4a〜4cは、ユーザA,B及びCのそれぞれが使用するために個別に割り当てられている。すなわち情報処理装置4aはユーザAに対応しており、同様に情報処理装置4b,4cは、ユーザB,Cのそれぞれに対応して割当てられている。情報処理装置4aは、ユーザによる操作を入力する操作入力部5aと、各種情報を表示する表示部6aとを備えている。情報処理装置4b,4cも上述した情報処理装置4aと同様に、操作入力部5b,5c及び表示部6b,6cのそれぞれを備えている。以下、説明の便宜上、情報処理装置4a〜4cを区別する必要がない場合には、単に「情報処理装置4」と称する。また情報処理装置4が備える操作入力部5及び表示部6についても同様とする。
【0028】
データ処理装置2は、ネットワーク7を介して受信する文書データを記憶し、ユーザによって指定される出力態様で出力する構成である。このデータ処理装置2は、本実施形態では上述したように画像処理装置3に実装されている。画像処理装置3は、例えば印刷機能、スキャン機能、FAX機能及びコピー機能などを備えるMFP(Multi-Function Peripherals)などで構成される装置である。また画像処理装置3は、ユーザによる操作を入力する操作パネル2aと、情報処理装置4から受信する文書データを記憶する記憶装置15とを備えている。画像処理装置3は、情報処理装置4によって出力される文書データを受信したとき、その文書データにデータ保存の指示が含まれている場合は、その文書データを記憶装置15に記憶する。
【0029】
情報処理装置4は、印刷ジョブとして文書データを送信することもあるし、また複数のユーザで回覧を行うための回覧データとして文書データを送信することもある。情報処理装置4は、文書データを印刷ジョブとして送信する場合、印刷対象となる文書データを含む印刷ジョブを生成し、その印刷ジョブを画像処理装置3に送信する。このとき、送信される印刷ジョブには、送信元であるユーザを特定するための情報が付加される。また、回覧データとして文書データを送信する場合、情報処理装置4は、その文書データに回覧対象となるユーザを記録した回覧情報を付加して送信する。
【0030】
画像処理装置3は、データ保存の指示が含まれている印刷ジョブを受信した場合、その印刷ジョブに含まれる文書データを記憶装置15へ保存する。そして印刷ジョブを送信したユーザが画像処理装置3の操作パネル2aを操作することによって画像処理装置3にログインし、記憶装置15に保存されている文書データを選択して印刷出力を指示すると、画像処理装置3は、その選択された文書データを読み出して印刷出力を行う。このような出力態様は一般にタッチアンドプリントと呼ばれ、例えば文書データに秘密情報が含まれている場合に第三者に秘密情報の内容が見られないようにするための印刷出力の一態様となっている。
【0031】
図2は、タッチアンドプリント処理の概念図である。例えば、ユーザAは、情報処理装置4aに対する指示操作を行うことにより、記憶装置15に文書データを保存することを指定して印刷ジョブを画像処理装置3に送信する。画像処理装置3は、その印刷ジョブを受信した場合、その印刷ジョブを記憶装置15に記憶する。その印刷ジョブが記憶装置15に記憶されている状態で、ユーザAは、画像処理装置3まで移動して操作パネル2aを操作することにより画像処理装置3にログインし、記憶装置15に記憶されている印刷ジョブの印刷出力を指示する。画像処理装置3は、その指示に従って記憶装置15から印刷ジョブを読み出して印刷出力を行う。このような出力形態によれば、ユーザAの画像処理装置3への直接操作に基づいて印刷出力が行われるので、ユーザAは、第三者に印刷物を読まれてしまうことなく安全にその印刷物を回収することができる。
【0032】
また画像処理装置3は、回覧情報の付加された文書データを受信した場合、その文書データを記憶装置15へ保存する。そして回覧情報に登録されたユーザから閲覧要求があった場合、画像処理装置3は、記憶装置15に保存されている文書データの内容を、そのユーザが閲覧できるように出力する。
【0033】
図3は、画像処理装置3が回覧情報の付加された文書データを受信した場合に実行する回覧処理の概念を示す図である。回覧処理は、回覧情報に登録されているユーザに対して文書データを閲覧させるための処理である。例えばユーザAは、情報処理装置4aを操作することにより、ユーザB及びCを回覧者として登録した回覧情報を文書データに付加して画像処理装置3に送信する。画像処理装置3は、そのような文書データを受信すると、文書データに付加されている回覧情報を文書データと共に記憶装置15に記憶する。
【0034】
また画像処理装置3は、回覧先となるユーザB及びCに文書データを閲覧させるために以下のように処理を行う。例えば画像処理装置3には、予め各ユーザの例えば電子メールアドレスなど所定の送信宛先が登録されている。そして画像処理装置3は、回覧者として登録されているユーザB及びCの電子メールアドレスを読み出し、ユーザB及びCに対して回覧文書である文書データが保存されたことを通知するための電子メールを送信する。この電子メールの本文には、例えば、回覧対象となる文書データにアクセスするための情報などが自動で記録される。これによりユーザB及びCは、受信した電子メールを確認することにより、自身が閲覧すべき文書データが画像処理装置3に保存されたことを把握することができると共に、その文書データにアクセスするために必要な情報を取得することができる。
【0035】
その後、電子メールを送信したユーザB及びCのそれぞれから文書データの閲覧要求(出力指示)があった場合、画像処理装置3は、各ユーザが文書データの内容の閲覧を許可する。すなわちこの場合、画像処理装置3は、記憶装置15に記憶されている回覧対象である文書データへのユーザB及びCによるアクセスを許可し、文書データの内容を例えば閲覧可能な表示態様で出力する。但し文書データの出力態様はこれに限られず、情報処理装置4において閲覧可能な状態であればどのような手法を用いても構わない。これによりユーザB,Cは、情報処理装置4b又は4cに表示される閲覧画面により、文書データの内容を閲覧することが可能になる。このような出力態様は、印刷出力を伴わないので紙資源を節約することができる。但し、ユーザB又はCが、回覧対象である文書データの印刷出力を指示した場合には、その文書データに基づいて印刷出力を行うことも可能である。
【0036】
このような画像処理装置3は、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態が所定時間以上継続すると、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる機能を備えている。通常通電状態は、画像処理装置3において各種動作を行なうことができるように各部に対して電力供給を行なう動作モードである。例えば通常通電状態では、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させるための定着部の温度が一定温度に保持される。また省電力状態は、一部の回路への電力供給を残して他の回路への電力供給を制限する動作モードである。例えば省電力状態では、印刷出力時にトナー像を用紙に定着させるための定着部への電力供給が遮断される。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行することにより無駄な待機電力を節約することができる。
【0037】
また画像処理装置3は、省電力状態にあるときに、ネットワーク7を介してデータを受信した場合、或いは、操作パネル2aに対する操作を検知した場合、通電状態を省電力状態から通常通電状態へと復帰させる。この復帰動作では、通常通電状態においていつでも印刷出力を行うことができるように、定着部の温度を一定温度まで加熱昇温させる動作が行われる。
【0038】
そして本実施形態の画像処理装置3は、ユーザによって出力指示が行われる可能性のある文書データを記憶装置15に記憶している状態のとき、通常通電状態から省電力状態へと移行する前に、ユーザに出力指示を行わせる構成である。一例を挙げて説明すると、例えば図1に示す記憶装置15に文書データとして例えばユーザAが発行した印刷ジョブが記憶されている場合、その後、ユーザAによってタッチアンドプリントの出力指示が行われる可能性がある。しかし、ユーザAがタッチアンドプリントの操作を行うために画像処理装置3に移動してきたとき、画像処理装置3が既に省電力状態に移行している場合がある。
【0039】
この場合、画像処理装置3は、ユーザAによってタッチアンドプリントの出力指示が行われることに伴い、通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させた後、記憶装置15に記憶していた文書データに基づく印刷出力を実行することになる。画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させた後に、ユーザによる出力指示を受けると、上述した復帰動作において定着部の温度を一定温度まで加熱昇温させる処理を行うため、通常通電状態において出力指示を受ける場合に比べて、復帰動作に要する電力を余分に消費してしまうことになる。そのため、画像処理装置3における省電力効果を向上させるためには、そのような復帰動作が行われる回数を低減することが好ましい。
【0040】
そこで本実施形態の画像処理装置3は、ユーザによる出力指示を待機する状態となっている文書データを記憶装置15に記憶している場合、通電状態が通常通電状態にあり、且つ、通常通電状態から省電力状態へ移行する前に、そのようなユーザに出力指示を行わせる構成である。
【0041】
より具体的に説明すると、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する所定時間前に、文書データの出力指示を行う予定のユーザに対して出力指示の要求を行う構成になっている。これにより、画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行する前に、文書データを利用するユーザに対して出力指示を行わせることが可能である。つまり画像処理装置3は、通電状態が一旦省電力状態に移行した後に通常通電状態に復帰してしまう可能性を低減させることが出来るので、結果として、復帰動作回数を低減させ、省電力状態に移行している時間を従来よりも長く確保することが可能である。以下、上記のように動作するデータ処理装置2について詳しく説明する。
【0042】
図4は、データ処理装置2のハードウエア構成の一例を示す図である。画像処理装置3は、そのデータ処理装置2に関するハードウエア構成として、図4において破線領域の内側に示す構成を備えている。データ処理装置2は、このデータ処理装置2の動作を制御する制御部10と、ネットワーク7を介して情報処理装置4と通信を行うためのネットワークインタフェース11と、各部への電力供給を制御する電力供給部12と、上述した操作パネル2a及び記憶装置15と、を備え、それらがバス20を介して接続されることにより相互に通信可能に構成される。これら各部は、必ずしも画像処理装置3がデータ処理装置2として機能する場合にのみ動作するものではなく、一般的なMFPとして機能する場合にも動作する。また画像処理装置3は、一般的なMFPと同様に、印刷出力に関する構成として更に印刷処理部13を備えている。また図示しないが画像処理装置3は、原稿画像の読み取り動作を行うスキャン部やFAXの送受信に関する動作を行うFAX部などを備えてもよい。
【0043】
制御部10は、CPU10aとメモリ10bとを備えており、各部の動作を制御するものである。CPU10aは、記憶装置15に記憶されているプログラム16などを読み出して実行する。プログラム16は、制御部10を後述する各種処理部として機能させるためのプログラムである。メモリ10bは、CPU10aがプログラムを実行することに伴う一時的なデータなどを記憶するものである。
【0044】
ネットワークインタフェース11は、制御部10をネットワーク7に接続するためのものである。これにより制御部10は、このネットワークインタフェース11を介して、情報処理装置4に通信可能に接続される。尚、ネットワークインタフェース11は、ネットワーク7に対して有線接続されるものであっても良いし、無線接続されるものであっても良い。
【0045】
電力供給部12は、制御部10からの指示に基づいて画像処理装置3の通電状態を、通常通電状態から省電力状態に移行させたり、それとは逆に省電力状態から通常通電状態に復帰させたりするように各部の電源回路を制御する処理部である。
【0046】
操作パネル2aは、いわゆるタッチ式パネルで構成され、ユーザが画像処理装置3を操作する際のユーザインタフェースとなるものである。すなわち操作パネル2aは、液晶パネルなどで構成され各種情報を表示する表示部と、その表示部に対する接触操作を検知することによりユーザによる指示操作を入力する操作入力部とが一体的に構成されている。
【0047】
記憶装置15は、例えばハードディスク装置などで構成される。また記憶装置15は、上述した文書データを記憶する文書データ記憶部17を備えている。また本実施形態では、画像処理装置3の通電状態が省電力状態へと移行すると、この記憶装置15に対する電力供給が遮断される構成となっている。そのため、省電力状態では、記憶装置15に対する各種情報の書き込みや読み出し動作を行うことができなくなる。それ故、省電力状態であるときに、記憶装置15に対する書き込み動作や読み出し動作を行う処理が発生すると、制御部10は、まず通電状態を省電力状態から通常通電状態へと復帰させる処理を行う。
【0048】
印刷処理部13は、文書データの印刷出力を行う処理部である。例えば印刷処理部13は、給紙カセットから用紙を1枚ずつ給紙する給紙部、給紙部から給紙された用紙に対して、印刷ジョブに含まれる画像データに基づき画像形成を行う画像形成部、画像形成部によって形成されるトナー像(画像)を用紙に転写させる転写部、用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部、印刷された印刷物を排出口まで搬送する印刷物搬送部、画像形成部にトナーを補充するトナーボトルなどを備えている。
【0049】
図5は、本実施形態における制御部10の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部10は、上述したCPU10aがプログラム16を実行することにより、文書データを管理する管理部31、文書データの印刷出力を制御する出力制御部33、所定の送信宛先に対して文書データの出力指示を行うように要求する通知部34、画像処理装置3の通電状態を制御する通電制御部36として機能する。管理部31は、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングなどを決定する決定部32を備えている。また通知部34は、出力指示の要求を行う際にその要求の送信先となるユーザを特定する判断部35を備えている。制御部10において、少なくとも管理部31及び通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態であっても動作することが可能に構成される。
【0050】
また記憶装置15には、上述した文書データ記憶部17として、印刷ジョブを記憶する印刷ジョブ記憶部17aと、回覧情報の付加された文書データを記憶する回覧BOX17bとが設けられている。更に、記憶装置15には、参照情報18として、電子メールアドレスなどのユーザに関する情報がユーザごとに登録された管理テーブル18aと、ユーザに対して出力指示の要求を行うタイミングが文書データの種類ごとに登録された通知時間テーブル18bとが記憶されている。
【0051】
管理部31は、上述したようにネットワーク7を介して受信する文書データの管理を行なう処理部である。この管理部31は、例えばネットワーク7を介して文書データを受信すると、文書データ記憶部17及び出力制御部33の何れかに振分けて出力する処理を行う。例えば、受信した文書データが、記憶装置15に保存することが指定された印刷ジョブに含まれる場合、管理部31は、その印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させる。尚、印刷ジョブ記憶部17aに記憶される印刷ジョブには、その印刷ジョブを送信したユーザに関する情報が付加される。また、回覧情報の付加された文書データを受信した場合、管理部31は、その回覧情報の付加された文書データを回覧BOX17bに記憶させる。更に管理部31は、直ちに印刷出力を指定する印刷ジョブを受信する場合には、その印刷ジョブを出力制御部33に対して出力する。
【0052】
ここで出力制御部33は、管理部31から印刷ジョブを受信すると印刷処理部13に対してその印刷ジョブを実行させる処理部である。この場合、印刷ジョブの受信に伴い、印刷処理部13において直ちに印刷出力が開始され、印刷物が出力されることになる。また出力制御部33は、文書データ記憶部17に記憶されている文書データに対して操作パネル2a又は情報処理装置4から印刷出力の指示を受付けると、その指示に従って文書データ記憶部17から文書データを読出して印刷処理部13に実行させる処理も行う。
【0053】
決定部32は、画像処理装置3の通電状態を通常通電状態から省電力状態へ移行させる移行タイミングと、ユーザに対して出力指示に関する要求を通知する通知タイミングとを決定する処理部である。
【0054】
この決定部32は、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態になったことを検知すると、その検知タイミングから所定時間経過したタイミングを、通常通電状態から省電力状態へと移行させる移行タイミングとして決定する。
【0055】
例えば、画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰した場合、その復帰タイミングから所定時間経過するタイミングを移行タイミングとして決定する。その後、ネットワーク7からデータを受信したり、或いは、操作パネル2aに対する操作を検知したりすると、決定部32は、移行タイミングを一旦リセットする。そして更にその後、ネットワーク7からデータを受信しない状態で、且つ、操作パネル2aに対する操作を検知しない状態になったことを再び検知すると、その検知タイミングから所定時間経過したタイミングを、通常通電状態から省電力状態へと移行させる移行タイミングとして再決定する。従って、画像処理装置3が継続的に使用される場合には、その都度、新たな移行タイミングが再決定されていくので、通電状態が省電力状態へ移行するタイミングは、最初に決定される移行タイミングよりも後のタイミングへと段階的に繰り延べされていく。また移行タイミングを決定する場合の所定時間については任意であるが、例えば「現在時刻から10分後」として決定される。
【0056】
決定部32は、上記のようにして移行タイミングを決定すると、次に、ユーザに対して出力指示の要求を通知すべき通知タイミングを決定する処理を行う。
【0057】
図6は、決定部32が通知タイミングを決定する場合の処理を模式的に示す図である。図例において、画像処理装置3の通電状態が通常通電状態に復帰するタイミングを復帰タイミングTaとする。決定部32は、復帰タイミングTaにおいて通電状態が通常通電状態に復帰すると、その復帰タイミングTaから所定時間が経過するタイミングを、省電力状態へと移行させる移行タイミングTcとして決定する。次に決定部32は、記憶装置15に、ユーザによる出力指示を待機する状態となっている文書データが記憶されているか否かを検知する。記憶装置15にそのような文書データが記憶されていない場合には、出力指示の要求を通知すべきユーザが存在しないので、決定部32は、通知タイミングを決定する処理を行わない。一方、記憶装置15にそのような文書データが記憶されている場合、決定部32は、以下のようにして通知タイミングを決定する処理を行う。
【0058】
すなわち決定部32は、記憶装置15から通知時間テーブル18b(詳しくは後述する)を読み出し、その通知時間テーブル18bに基づいて、移行タイミングTcから所定時間遡ったタイミングを通知タイミングTbとして決定する。この通知タイミングTbは、復帰タイミングTaよりも前のタイミングにはならないように決定される。移行タイミングTcから通知タイミングTbをどの程度遡ったタイミングに設定するかは任意であるが、少なくともユーザが電子メールによる通知を受けた後、画像処理装置3に対して文書データの出力指示を行うことができる時間(以下「処理所要時間」と称する)だけ遡ったタイミングに設定することが好ましい。これにより、ユーザは画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に文書データの出力指示を行うことができるようになる。そして画像処理装置3は、通電状態を省電力状態へ移行させる前に、記憶装置15に保存している文書データを読み出し、ユーザによって指定された出力処理を行うことができるようになる。
【0059】
尚、移行タイミングTcよりも前であって、画像処理装置3において行われる出力処理に要する時間よりも前に、ユーザが出力指示を行った場合には、移行タイミングTcを後に繰り延べることなく、移行タイミングTcが経過する時点で通電状態を省電力状態に移行することができる。この場合、画像処理装置3は、予定されている移行タイミングTcを延長することなく通電状態を省電力状態に移行させることができるので、省電力状態を比較的長時間継続させることができるようになる。以下、通知タイミングを決定するための処理について更に詳しく説明する。
【0060】
図7は、通知タイミングを決定するための通知時間テーブル18bの一例を示す図である。通知時間テーブル18bは、決定部32によって参照される情報であり、移行タイミングから遡るべき時間、つまり図6に示す移行タイミングTcから通知タイミングTbまでの時間が記録されている。図7に示す通知時間テーブル18bには、文書データの種類ごとに通知時間が登録されている。すなわち、通知時間テーブル18bには、印刷ジョブに文書データが含まれている場合の通知時間と、文書データに回覧情報が付加されている場合の通知時間とが記録されている。これにより、文書データが印刷ジョブである場合と、回覧データである場合とで通知タイミングを異ならせることが可能である。但し、必ずしも印刷ジョブと回覧データとで通知タイミングを異ならせる必要はなく、文書データとして1つの通知タイミングを決定するように構成しても良い。
【0061】
決定部32は、通知タイミングを決定する際、通知時間テーブル18bを参照して、この通知時間テーブル18bに記録されている通知時間だけ移行タイミングから遡った時間を通知タイミングとして決定する。例えば移行タイミングTcが「現在時刻から10分後」として決定されている状態において、図7の通知時間テーブル18bを参照して印刷ジョブに対応する通知タイミングを決定する場合、決定部32は、移行タイミングTcの2分前である「現在時刻から8分後」を通知タイミングTbとして決定する。また決定部32は、回覧データに対応する通知タイミングTbについては、例えば移行タイミングTcの5分前である「現在時刻から5分後」として決定する。
【0062】
決定部32は、記憶装置15に印刷ジョブと回覧データとが記憶されている場合、上記のようにして印刷ジョブと回覧データとのそれぞれについて通知タイミングTbを決定する。また決定部32は、記憶装置15に印刷ジョブと回覧データの何れか一方のみが記憶装置15に記憶されている場合には、その一方に対応する通知タイミングTbのみを決定する。
【0063】
通知時間テーブル18bに記録される通知時間は、例えば、画像処理装置3の管理者などによって変更可能に構成されても良い。例えばユーザの席から画像処理装置3までの距離が比較的離れている場合、そのユーザが画像処理装置3から送信される電子メールを確認してから画像処理装置3まで移動する間に、移行タイミングTcが経過してしまうと通電状態が省電力状態に移行してしまう可能性がある。そこでユーザが電子メールを確認してからある程度の余裕をもって画像処理装置3に対して出力指示を行うことが出来るように、通知タイミングを変更可能に構成することで上記のような不具合を防止することができる。
【0064】
この場合、管理部31は、例えば管理者などの操作指示に基づき通知タイミングを任意に設定する設定部として機能する。すなわち管理部31は、操作パネル2a又は情報処理装置4を介して通知タイミングを変更する操作指示を受付けると、その操作指示に基づき通知時間テーブル18bに記録されている通知時間を上書きすることにより更新する。これにより決定部32は、更新後の通知時間に基づき移行タイミングを決定することができる。
【0065】
また決定部32は、通知タイミングTbを決定する際、通知時間テーブル18bに記録されている通知時間を、文書データのデータ量などに応じて自動で変動させるようにしても良い。すなわち、上述したように、移行タイミングTcが経過する前であって、画像処理装置3において行われる出力処理に要する時間よりも前に、ユーザによる出力指示が行われるのであれば、移行タイミングTcが経過する時点でユーザによって指定された出力処理が完了しており、速やかに通電状態を省電力状態に移行させることができる。ところが、出力処理に要する時間は、通常、文書データのデータ量に比例して変化し、文書データのデータ量が大きくなると、それに伴って処理時間が長くなる。そのため、管理部31は、移行タイミングTcが経過する時点でその出力処理が未だ実行中である状態を回避すべく、記憶装置15に記憶されている文書データのデータ量や画像処理装置3の処理速度などに基づき、通知時間テーブル18bに設定されている通知タイミングを自動で早めるようにしても良い。
【0066】
また管理部31は、記憶装置15に文書データを保存することに伴い、その文書データに関する情報を、管理テーブル18aに追加記録する。
【0067】
図8は、管理テーブル18aの一例を示す図である。管理テーブル18aには、予めユーザ名と、送信宛先とが登録されている。管理部31は、記憶装置15への保存対象となる文書データを受信すると、その文書データの種類を判別する。文書データが印刷ジョブに含まれる場合、管理部31は、その印刷ジョブに付加されたユーザに関する情報に基づき、印刷ジョブを送信したユーザを特定する。そして管理部31は、その特定したユーザに対応する文書データの欄に、文書データを特定する情報を記録すると共に、印刷出力要求の欄に、未だ印刷出力の指示が行われていないことを示す値(図8の例では「有」)を記録する。これにより、未だ印刷出力が行われていない印刷ジョブと、ユーザとが互いに関連付けられる。
【0068】
また回覧データである文書データを受信した場合、管理部31は、その文書データに付加された回覧情報に基づき、文書データを閲覧するユーザを特定する。そして管理部31は、その特定したユーザに対応する文書データの欄に、回覧対象となる文書データを特定する情報を記録すると共に、回覧要求の欄に、未だ閲覧出力の指示が行われていないことを示す値(図8の例では「有」)を記録する。これにより、未だ閲覧が行われていない文書データと、ユーザとが互いに関連付けられる。
【0069】
上記のような管理テーブル18aを参照することで、記憶装置15に記憶されている文書データを利用するユーザを特定することが可能になる。そして画像処理装置3は、文書データに関連付けられたユーザに対し、通電状態が省電力状態に移行する前に、出力指示を要求する電子メールを送信することができるようになる。
【0070】
再び図5に戻って、通知部34は、通知タイミングTbになると、文書データに関連付けられたユーザに対し、文書データの出力指示を行うことを要求する通知を行う処理部である。例えば、通知部34は、文書データに関連付けられたユーザの電子メールアドレスを読み出し、その電子メールアドレスに対して文書データの出力指示を行うことを要求する電子メールを送信する。但し、通知部34による通知方法は必ずしも電子メールに限られない。例えば、通知部34は、情報処理装置4に常駐するプリンタドライバなどに対して通知を行うようにしても良い。この場合、情報処理装置4は、通知部34からの通知を受信すると、直ちにその通知内容をポップアップ表示することができる。そのため、ユーザが情報処理装置4を操作している状態であれば、電子メールで通知を行う場合よりも、速やかにユーザに対する通知を行うことができる。
【0071】
このように通知部34が省電力状態へ移行する前の通知タイミングTbでユーザに対する通知を行うことにより、ユーザは、画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に出力指示を行わなければならない文書データが保存されていることを把握することができる。またそのような出力指示を速やかに行わなければならないことも把握する。従って、ユーザは、画像処理装置3が省電力状態へ移行する前に、画像処理装置3に対して文書データの出力指示を行うことができるようになる。
【0072】
このような通知部34は、決定部32によって通知タイミングTbが決定されることに伴って計時動作を開始し、通知タイミングTbが経過するか否かを常時監視する。そして通知タイミングTbが経過したことを検知すると、通知部34は、文書データに関連付けられたユーザに対して出力指示の要求を送信する。出力指示の要求を送信するユーザを判別する処理は、以下に説明するように通知部34が出力指示の要求を送信するのに先だって、判断部35によって行われる。
【0073】
判断部35は、通知タイミングTbが経過することに伴って機能し、出力指示の要求を通知すべきユーザを特定する処理部である。判断部35は、記憶装置15に文書データが記憶されている状態で通知タイミングTbが経過すると、印刷ジョブと回覧データのいずれについての通知を行うかを特定する。これにより、まず通知対象となる文書データが特定される。続いて判断部35は、管理テーブル18aを参照することにより、その特定した文書データに関連付けられているユーザを特定する。これにより、出力指示を行うことを要求するユーザが特定される。そして通知部34は、判断部35によって特定されるユーザに対して、上述したように出力指示の要求を送信する。
【0074】
通電制御部36は、電力供給部12(図4)に対して各種指示を行なう処理部である。この通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が通常通電状態である場合において移行タイミングTcが経過したことを検知すると、印刷処理や上述した回覧処理などが行われていないことを条件として、通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるように電力供給部12に指示する。例えば、通電制御部36は、決定部32によって移行タイミングTcが決定されると、計時動作を開始して、その移行タイミングTcが経過するか否かを常時監視する。この通電制御部36は、決定部32によって移行タイミングTcが決定される度に、それまでの計測時間を一旦リセットし、その後はじめから計時動作を再開する。但し、移行タイミングTcが省電力状態へ移行させる時刻で設定される場合、通電制御部36は必ずしも計時動作を行う必要はなく、現在時刻が移行タイミングTcとなったか否かを判断するようにすれば良い。
【0075】
また通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態である状態において、ユーザが操作パネル2aを操作したことが検知された場合、或いは、ネットワーク7を介して受信データが検知された場合、通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させるように電力供給部12に指示する。
【0076】
以下、各処理部が連携して機能する場合の処理について詳しく説明する。但し、以下においては、文書データが印刷ジョブに含まれる場合を例示する。
【0077】
図9(a),図9(b)は、文書データが印刷ジョブに含まれる場合における処理を模式的に示す図である。図9(a)に示すように、ユーザAが情報処理装置4aに対して所定の操作を行うと、情報処理装置4aから画像処理装置3に対して印刷ジョブが送信される。このとき、画像処理装置3が省電力状態であった場合、画像処理装置3は、情報処理装置4aから印刷ジョブを受信することに伴い、省電力状態から通常通電状態へと復帰する。すなわち、通電制御部36は、情報処理装置4aからの印刷ジョブを受信したことを検知して、通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させる。
【0078】
管理部31は、画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰すると、上述したように、受信した印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させる。このようにして図例に示すように印刷ジョブ記憶部17aには印刷ジョブが記憶される。次に決定部32は、通電状態を省電力状態に移行する移行タイミングTcを上記のようにして決定する。また、このとき印刷ジョブ記憶部17aに印刷ジョブが記憶されている状態であるので、決定部32は、出力指示の要求を通知する通知タイミングTbを決定する。決定部32によって移行タイミングTc及び通知タイミングTbが決定されると、通電制御部36は、計時動作を開始し移行タイミングTcが経過するか否を監視する。同様に通知部34は、通知タイミングTbが経過するか否かを監視する。
【0079】
管理部31は、印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aに記憶させると、その印刷ジョブの送信元となるユーザAを特定して、例えば図8に示すように、そのユーザAに対応するように管理テーブル18aの印刷出力要求の欄に「有」と記録する。これにより印刷ジョブと、その印刷ジョブを利用する予定のあるユーザAとが関連づけられることになる。仮に異なるユーザが送信元となる複数の印刷ジョブが印刷ジョブ記憶部17aに記憶される場合、管理部31は、各ユーザに対応して上記のように記録処理を行う。また管理部31は、例えばユーザによる文書データの印刷指示が行われることによって印刷ジョブ記憶部17aから印刷ジョブを削除した場合、管理テーブル18aにおいて、その印刷指示を行ったユーザに関連付けられている文書データの欄と、印刷出力要求の欄とを例えばブランクに書き換えることにより更新する。これにより文書データとユーザとの関連づけが解除されることになる。
【0080】
図9(a)に戻って、次に通知部34は、通知タイミングTbが経過したことを検知すると、管理テーブル18aを参照して、印刷ジョブ記憶部17aに記憶されている印刷ジョブを利用する予定のあるユーザとして、印刷出力要求の欄に「有」と記録されているユーザAを特定する。次に通知部34は、そのユーザAに対して出力指示を行うことを要求する通知を送信する。以下、通知部34による通知内容について説明する。
【0081】
図10は、通知部34による出力指示の要求に関する通知内容の一例を示す図である。出力指示の要求が電子メールによって通知される場合、図10に示す通知内容は例えばメール本文に記載される。但し添付ファイルによって通知内容が通知されるように構成しても良い。通知内容には、図例に示すように、例えば画像処理装置3の通電状態が省電力状態に移行する前に出力指示を行うように促すメッセージや、画像処理装置3の通電状態が省電力状態に移行する具体的な時刻が含まれる。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態に移行するまでに、ユーザに対して文書データの出力指示を行わせることが可能になる。
【0082】
図9(b)に示すように、その後、ユーザAは、例えば画像処理装置3まで移動して、操作パネル2aを操作することにより、印刷ジョブ記憶部17aに記憶されている文書データの印刷出力を指示する。このとき例えば、ユーザAが関連づけられている複数の印刷ジョブが印刷ジョブ記憶部a17に記憶されている場合には、管理部31は、文書データを一覧表示して実行すべき印刷ジョブをユーザAに選択させても良い。
【0083】
管理部31は、ユーザAによって選択された印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部17aから読出して出力制御部33を介して印刷処理部13に送信する。そして印刷処理部13は、印刷ジョブを実行することにより印刷出力を行う。また管理部31は、印刷ジョブが実行されることに伴ってユーザAに対応する管理テーブル18aの印刷出力要求の欄をブランクに更新する。またこのとき管理部31は、記憶装置15に記憶されている印刷ジョブを自動で削除しても良い。
【0084】
そして通電制御部36は、移行タイミングTcが経過することに伴って通電状態をそれまでの通常通電状態から省電力状態に移行させる。これにより通電状態が省電力状態に移行するまでにユーザAに印刷出力の指示を行わせることが可能となり、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させてから後に、少なくともユーザAから印刷出力の指示が行われることを回避することができる。その結果、画像処理装置3は、省電力状態に移行してから後に、ユーザAの操作によって復帰動作を行うことを回避することができるようになり、復帰動作を行う回数を低減することができる。そして省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することが可能になる。
【0085】
ところで、既に出力指示の要求を通知したユーザから、その出力指示の要求とは無関係の操作指示を受付けることがある。例えば、上記のようにしてユーザにAに対して出力指示の要求を通知した後に、そのユーザAの操作パネル2aに対する指示操作により例えばスキャンやFAXなど印刷出力とは関係のない処理を要求される場合である。この場合、画像処理装置3は、ユーザAに対して印刷出力に関する処理を速やかに行わせるために、それらスキャンやFAXなどに関する処理に優先させて印刷出力を行っても良い。
【0086】
すなわち出力制御部33は、既に出力指示の要求を通知したユーザAが関連づけられている印刷ジョブが記憶装置15に記憶されている状態で、操作パネル2aに対する指示操作によりそのユーザAによるログインが許可されたことを検知した場合には、印刷ジョブの実行を促す操作画面を操作パネル2aに表示する。この操作画面は、例えばスキャンやFAXなどの処理を実行するための操作画面よりも優先的に表示される。そして出力制御部33は、ユーザによる出力指示に基づき印刷ジョブの印刷処理を実行する。或いは、この場合、そのユーザAによるログイン操作を出力指示と見なして自動で印刷ジョブを実行しても構わない。これにより通電状態が通常通電状態であるときに印刷ジョブを実行させることができるので、通電状態が省電力状態に移行してからユーザAによる出力指示を受けなくて済む。
【0087】
次に、文書データが回覧情報の付加された回覧データである場合における処理について説明する。尚、以下においては、上述した文書データが印刷ジョブである場合における処理と重複する処理については説明を省略する。
【0088】
図11は、回覧処理が行われる場合における処理を模式的に示す図である。例えば、ユーザAが情報処理装置4aに対して所定の操作を行うと、情報処理装置4aから画像処理装置3に対して回覧用の文書データが送信される。この文書データには、例えばユーザB及びCを回覧者として指定する回覧情報が付加されている。
【0089】
画像処理装置3は、そのような文書データを受信すると、記憶装置15における回覧文書専用の記憶領域である回覧BOX17bにその文書データを保存する。すなわち、管理部31は、回覧用の文書データを受信すると、その文書データを回覧BOX17bに記憶させる。また管理部31は、文書データを回覧BOX17bに記憶させると、その文書データに付加されている回覧情報に基づき、管理テーブル18aの回覧者として指定されているユーザに対応する文書データの欄および閲覧要求の欄に必要な情報を記録する。この段階では、その回覧用の文書データはユーザB及びCのいずれにも閲覧されていない状態であるので、管理部31は、管理テーブル18aのユーザB及びCに対応する閲覧要求の欄を、「有」と記録する。これにより回覧対象となる文書データと、その文書データを利用する予定のあるユーザB及びCとが関連づけられることになる。
【0090】
また管理部31は、上記と同様にして通電状態を省電力状態に移行させる移行タイミングTcと、出力指示を要求する通知タイミングTbとを決定する。これに伴って通電制御部36は、移行タイミングTcが経過する否かを監視し、また通知部34は、通知タイミングTbが経過するか否かを監視する。
【0091】
また通知部34は、管理テーブル18aを参照して回覧者となるユーザB及びCの送信宛先を特定する。そして通知部34は、例えば回覧対象となる文書データを参照すべきメッセージと、その文書データが保存された回覧BOX17bへアクセスするための情報とを示す通知内容の電子メールを作成して、ユーザB及びCの電子メールアドレスに対して一斉に送信する。これによりユーザB及びCは、受信する電子メールを確認することで回覧BOX17bに文書データが記憶されていることを把握できる。その後、例えば、ユーザBのみが画像処理装置3に対して文書データの閲覧要求を行うとする。
【0092】
管理部31は、ユーザBから閲覧要求を受付けると、例えばログインが許可されることを条件として、文書データへのアクセスを許可する。これによりユーザBは、文書データの内容を閲覧することが可能になる。管理部31は、文書データへのアクセスを許可したユーザBに対応して管理テーブル18aの閲覧要求の欄をブランクに更新する。これにより文書データとユーザBとの関連づけが解除されることになる。またこの場合、図8に示すように、ユーザCに対応する管理テーブル18aの閲覧要求の欄は「有」となったままの状態である。
【0093】
そのような状態において、通知タイミングTbが経過すると、判断部35が機能する。判断部35は、管理テーブル18aを参照して閲覧要求の欄が「有」となっているユーザCを、出力指示の要求を行うべきユーザとして特定する。通知部34は、判断部35によって出力指示の要求を行うべきユーザとしてユーザCが特定されると、管理テーブル18aを参照してユーザCの電子メールアドレスを特定する。そして上記と同様に、通知部34は、その電子メールアドレスに対して出力指示の要求を行う電子メールを送信する。
【0094】
図11に戻って管理部31は、ユーザCから閲覧要求を受けると上記と同様にして文書データへのアクセスを許可する。これにより回覧者となる全てのユーザB及びCが文書データを閲覧したことになる。また管理部31は、回覧者となるユーザが関連づけられている文書データが回覧BOX17bに複数記憶されている状態で、そのユーザからの閲覧要求を受付けた場合には、それら文書データを一覧表示して、閲覧させる文書データをユーザに選択させることで、その文書データを閲覧させても良い。
【0095】
管理部31は、ユーザCによる文書データの閲覧が終了することに伴ってユーザCに対応する管理テーブル18aの閲覧要求の欄をブランクに更新する。また管理部31は、全てのユーザが文書データを閲覧したことを検知すると、回覧BOX17bに記憶されている文書データを自動で削除しても良い。
【0096】
その後、通電制御部36は、移行タイミングTcが経過することに伴って画像処理装置3の通電状態を省電力状態に移行させる。つまり、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態へ移行させる前に、ユーザCに文書データを閲覧させることができる。そのため、画像処理装置3は、通電状態を省電力状態に移行させてから後に、少なくともユーザCから閲覧要求の指示が行われることを回避することができる。これにより画像処理装置3は、省電力状態に移行してから後に、ユーザCの閲覧要求によって復帰動作を行うことを回避することができるようになり、復帰動作を行う回数を低減することができる。その結果、画像処理装置3は、省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することが可能になる。
【0097】
また、上記のようにして行う回覧処理においても、上述したタッチアンドプリントを行う場合と同様に既に出力指示の要求を通知したユーザから、その出力指示の要求とは無関係の操作指示を受付ける場合がある。例えば、既に出力指示の要求を通知したユーザCが関連づけられている文書データが、回覧BOX17bに記憶されている状態で、そのユーザCの報処理装置4に対する所定操作により例えばスキャンなどのリモート操作を画像処理装置3に対して行う場合がある。
【0098】
この場合、管理部31は、ユーザCに対して回覧対象となる文書データを速やかに回覧させるため、それらスキャンなどに関する処理に優先させて回覧対象となる文書データを情報処理装置4に表示させても良い。すなわち管理部31は、既に出力指示の要求を通知したユーザCが関連づけられている文書データが、回覧BOX17bに記憶されている状態で、そのユーザCによる何らかの操作指示を受信した場合には、その操作指示に文書データに対する閲覧要求が含まれると見なす。そして、管理部31は、ユーザCが回覧対象となる文書データを回覧BOX17bから自動で読出して情報処理装置4に表示させる。これにより通電状態が通常通電状態であるときにユーザに対して文書データを閲覧させることができる。
【0099】
次に、通電状態を省電力状態へと移行させる移行タイミングTcが繰り延べされながら段階的に再決定されていく場合の処理を例示する。
【0100】
図12(a),図12(b)は、移行タイミングが再決定される場合における各処理の実行タイミングを時系列で示す図である。尚、図12(a),図12(b)の例では、タイミングT1よりも前に、既に記憶装置15に文書データが記憶されているものとする。また図12(a)に示すように画像処理装置3の通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰するタイミングを復帰タイミングT1とする。復帰タイミングT1において決定部32は、所定時間経過後に省電力状態へ移行させる移行タイミングT4を決定すると共に、その移行タイミングT4よりも所定時間前に通知タイミングT3を決定する。
【0101】
そのような状態において、画像処理装置3が、通知タイミングT3よりも前のタイミングT2で、印刷機能、スキャン機能、FAX機能又はコピー機能などに関する何らかの指示を受付けたとする。このとき決定部32は、それまで決定されていた移行タイミングT4及び通知タイミングT3をリセットする。そしてタイミングT2から所定時間経過後に省電力状態へ移行させる移行タイミングT7を決定すると共に、その移行タイミングT7よりも所定時間前に通知タイミングT5を決定する。このようにして通知タイミングT5及び移行タイミングT7が段階的に繰り延べされる。
【0102】
その後、何ら処理が行われない状態のまま通知タイミングT5が経過したとする。このとき通知部34は、上記のようにして所定の送信宛先に、文書データの出力指示を行うことを要求する通知を行う。そして通知タイミングT5が経過した後に、例えばタイミングT6において新たにユーザによる指示を受付けると制御部10は以下のように処理を行う。
【0103】
まず制御部10において決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に応答するものであるか、又は既に通知した出力指示の要求とは無関係であるかを判断する。決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に応答するものである場合、移行タイミングT7の変更を行わない。つまりユーザに対して行われる出力指示の要求は、移行タイミングT7が経過するまでにユーザによる出力指示が行われることが見込まれた通知タイミングT5で通知されるものである。従って、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われた場合には、それ以上、省電力状態へ移行させるタイミングT7を遅らせる必要はない。そのため決定部32は、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合には、既に決定されている移行タイミングT7を繰り延べるような再決定を行わない。このように構成することで、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われた場合には、移行タイミングT7が延長されないので比較的早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができる。
【0104】
一方、受付けた指示が、既に通知した出力指示の要求とは無関係な指示である場合、決定部32は、新たな移行タイミングを再決定する。つまり既に通知した出力指示の要求とは無関係な指示である場合、その指示操作に引き続いて様々な操作が行われる可能性がある。例えば、スキャン機能を使用するユーザが、スキャン機能を選択した後、スキャン機能に関する様々な設定操作を行っていくことが考えられる。このような場合、省電力状体へ移行させる移行タイミングT7を繰り延べることなく、移行タイミングT7で省電力状態へ移行させてしまうと、ユーザが設定操作を行っている途中で画像処理装置3が省電力状態へ移行してしまうという不具合が発生する。そのような不具合を解消するため、決定部32は、既に通知した出力指示の要求とは無関係の指示である場合には、移行タイミングT7を一度リセットし、移行タイミングT7を繰り延べた新たな移行タイミングを再決定するように構成されている。またこの場合、新たな移行タイミングが再決定されることに伴って、決定部32は、新たな通知タイミングを再決定する。
【0105】
タイミングT6において受付けた指示が、例えば既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合、上述したように新たな移行タイミングは再決定されないので、通電制御部36は、その後、他の指示を受け付けることなく、移行タイミングT7が経過したことを検知すると、その移行タイミングT7において通電状態をそれまでの通常通電状態から省電力状態に移行させる。但し、タイミングT6において受け付けた出力指示に基づく文書データの出力処理が移行タイミングT7において完了していない場合には、少なくともその出力処理が完了するまで、省電力状態へ移行させるタイミングが繰り延べされる。この場合、通電制御部36は、出力処理の完了に伴って画像処理装置3を省電力状態へと移行させる。これにより比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態に移行させることができるので、消費電力を節約することができる。
【0106】
また、通知タイミングで出力指示の要求を通知した後に再び通知タイミングとなることがある。例えば、図12(b)において、通知タイミングT8において1回目の出力指示の要求が通知されたとする。その後、例えばタイミングT9において、既に通知した1回目の出力指示の要求とは無関係の指示を受付けたとする。このとき決定部32は、それまでの移行タイミングT10をリセットして、例えば新たな移行タイミングT12を決定する。これに伴い、新たな移行タイミングT12の前に、新たな通知タイミングT11が設定される。すなわちこの場合、通知タイミングT11は、2回目となる通知タイミングである。仮に2回目以降となる出力指示の要求が繰り返し通知されてしまうと、ユーザにとっては同様の内容の通知を複数回受けることとなり、煩わしく感じられる。そこで、通知部34は、通知タイミングが経過するとき、過去にそのユーザに対して同様の内容となる出力指示の要求を既に通知しているか否かを判断し、既に出力指示の要求を通知している場合には、2回目以降となる出力指示の要求を通知しない。これによりユーザに対して複数回の出力指示の要求が通知されなくなるので画像処理装置3の使い勝手が向上する。
【0107】
但し、長期に及んで出力指示の要求が通知されないと、ユーザは、どのタイミングで画像処理装置3に対して出力指示の要求を行うべきかが把握できなくなってしまう。そのためユーザは、通電状態が省電力状態に移行しているときに画像処理装置3に対して出力指示を行ってしまう可能性がある。そこで通知部34は、通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰してから再び省電力状態に移行するまでを1サイクルとして、その1サイクル内において最初に通知タイミングが経過するときに、1度だけユーザに対して出力指示の要求を通知することが好ましい。すなわち、通知部34は、2度目以降となるサイクルにおいても最初に通知タイミングが経過するときに、1度だけユーザに対して出力指示の要求を送信する。このような構成によれば、ユーザが定期的に画像処理装置3に対して出力指示を行うチャンスを得られるようになる。これにより画像処理装置3は、通電状態が省電力状態へ移行する前に、ユーザによる出力指示を受けることができるようになり、省電力状態へ移行する前にそのユーザによる出力指示に基づいて文書データの出力処理を完了させることができるようになる。
【0108】
更に、通電状態が省電力状態に移行している状態で、過去に通知した出力指示の要求に対応する出力指示を受付ける場合がある。図12(b)に示すように、移行タイミングT12において通電状態が省電力状態に移行している状態で、例えばタイミングT13において、過去に通知した出力指示の要求に対応する出力指示を受付けた場合、まず通電制御部36は、画像処理装置3の通電状態をそれまでの省電力状態から通常通電状態に復帰させる。そして画像処理装置3は、ユーザによる出力指示に基づいて文書データの出力指示を行う。
【0109】
決定部32は、このような出力指示に基づいて通電状態を通常通電状態に復帰させた場合には、移行タイミング及び通知タイミングを決定しない。この場合、管理部31は、通電制御部36に対してユーザによって指定された出力処理が完了することに伴って、通電状態を省電力状態に移行するように指示する。そして通電制御部36は、実行中の処理が完了するか否かを監視し、その処理が完了することに伴って例えばタイミングT14において通電状態を省電力状態に移行させる。これにより文書データに関する出力処理が完了するタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることが可能になる。
【0110】
図13は、制御部10において実行される全体的な処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図13を参照しつつ、制御部10において実行される処理の処理手順について詳しく説明する。
【0111】
画像処理装置3に電源が投入されるか、又は通電状態が省電力状態から通常通電状態に復帰すると(ステップS1)、制御部10は処理を開始する。まず制御部10は、通電状態が通常通電状態に復帰したことの要因が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示が行われたことに起因する場合には(ステップS2のYES)、その出力指示に対応する出力処理を実行し(ステップS3)、その処理が完了すると(ステップS4のYES)、速やかに省電力状態に移行させる(ステップS5)。尚、ここまでの処理は、図12で示したタイミングT12〜T14に関する処理である。
【0112】
一方、制御部10は、通電状態が通常通電状態に復帰したことの要因が、既に通知した出力指示の要求には対応しない指示が行われたことことに起因する場合(ステップS2のNO)、その指示に対応する処理を実行する(ステップS6)。例えば制御部10は、受信する文書データを記憶装置15に記憶させたり、印刷出力させたりする。次に制御部10は、ステップS6の処理が完了すると、移行タイミングを決定する(ステップS7)。そして制御部10は、記憶装置15に文書データが記憶されているか否かを検知する(ステップS8)。ここでいう記憶装置15に文書データが記憶されている状態とは、ステップS2において受信した指示に関する処理を実行することに伴って文書データが記憶装置15に記憶された場合と、受信した指示とは関係なく通電状態が通常通電状態に復帰した段階で既に記憶装置15に文書データが記憶されている場合とを含む。制御部10は、文書データが記憶装置15に記憶されている場合には(ステップS8のYES)、通知タイミングを決定する(ステップS9)。尚、この段階で決定される移行タイミング及び通知タイミングは、上述した1サイクル内において最初となるものである。また制御部10は、ステップS8において文書データが記憶装置15に記憶されていない場合には(ステップS8のNO)、ステップS9をスキップする。
【0113】
次に制御部10は、後述する出力指示要求通知処理を実行する(ステップS10)。そして、制御部10は、移行タイミングが経過するまで出力指示要求通知処理を繰り返して実行し(ステップS11のNO)、最終的に省電力状態への移行タイミングが経過することに伴って(ステップS11のYES)、通電状態を省電力状態に移行させる(ステップS5)。以上のようにして全体的な処理は全て終了する。
【0114】
図14は、出力指示要求通知処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理が開始されると、まず制御部10は、ユーザから指示を受け付けている状態であるか否かを検知する(ステップS21)。ユーザから指示を受け付けている状態である場合(ステップS21のYES)、制御部10は、その指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示であるか否かを判断する(ステップS22)。
【0115】
制御部10は、受け付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示でない場合(ステップS22のNO)、その指示に対応する処理の実行を開始する(ステップS23)。そして制御部10は、移行タイミングを再決定すると共に(ステップS24)、通知タイミングを再決定する(ステップS25)。
【0116】
一方、ステップS21において、ユーザからの指示を受け付けていない場合(ステップS21のNO)、制御部10は、ステップS22〜S26をスキップする。すなわちこの場合、制御部10は、既に決定された移行タイミング又は通知タイミングが経過するのを単に監視する状態となる。制御部10は、受け付けた指示が、既に通知した出力指示の要求に対応する出力指示である場合(ステップS22のYES)、その出力指示に基づいて文書データに関する出力処理の実行を開始する(ステップS26)。このとき、文書データに基づく印刷出力や、回覧データの閲覧出力などが行われる。そしてステップS26の出力処理が行われると、ステップS23〜S25をスキップする。すなわちこの場合、制御部10は、新たな移行タイミング及び通知タイミングを再決定しない。
【0117】
次に制御部10は、通知タイミングが経過した場合には(ステップS27のYES)、未だ出力指示の要求を通知していないことを条件として(ステップS28のYES)、出力指示の要求を通知する(ステップS29)。一方、制御部10は、ステップS27において、未だ通知タイミングが経過していない状態である場合には(ステップS27のNO)、ステップS28,29をスキップする。また制御部10は、ステップS28において既に出力指示の要求を通知している場合には(ステップS28のNO)、ステップS29をスキップする。これにより1サイクル内で2度目以降となる出力指示の要求が通知されないことになる。そして制御部10は、再び図13に示すステップS11に戻って移行タイミングが経過するまで(ステップS11のNO)、出力指示要求通知処理を繰り返し行う。以上のようにして出力指示要求通知処理は全て終了する。
【0118】
以上のように、本実施形態においては、画像処理装置3は、図6に示すように通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングTcを決定すると共に、ユーザに対して出力指示の要求を通知する通知タイミングTbを決定する構成である。また、画像処理装置3は、ユーザが関連づけられた文書データが記憶装置15に記憶されている状態で通知タイミングTbが経過すると、その文書データを利用する予定のあるユーザを特定して、そのユーザに対して出力指示の要求を通知する。
【0119】
このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する前にユーザに対して出力指示の要求を通知するので、画像処理装置3は、通電状態が一旦省電力状態に移行した後にユーザから出力指示の要求を受ける可能性を低減させることができる。これにより画像処理装置3は、復帰回数を低減させることができるので省電力状態に移行している時間を比較的長く確保することができる。また画像処理装置3は、文書データに関する処理を行う予定のあるユーザに対してのみ出力指示の要求を通知して、文書データに関する処理を行う予定のないユーザに対しては、出力指示の要求を通知しない構成である。このような構成によれば、文書データに関する処理を行う予定のないユーザが自己とは無関係の通知を受けずに済む。更に、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態のときにユーザに出力指示の要求を行わせる構成である。これによりユーザは、省電力状態から通常通電状態への復帰に要する時間を待たずに済むので、その分、印刷物を速やかに回収できるという利点も得られる。
【0120】
また本実施形態においては、画像処理装置3は、出力指示の要求が通知された後に実行される処理が、その通知された出力指示の要求に関する処理のみである場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングTcを繰り延べしない構成である。このような構成によれば、通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行する移行タイミングTcを繰り延べしないので、比較的早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させることができる。これにより消費電力を節約することができる。
【0121】
更に本実施形態においては、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングTcが経過した時点で、既に通知した出力指示の要求に関する処理が実行中である場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させない構成である。このような構成によれば、出力指示の要求に関する処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないので、出力指示の要求に関する処理が行なわれている最中に通電状態が通常通電状態から省電力状態に移行してしまうことを防止することができる。
【0122】
更に本実施形態においては、画像処理装置3は、通知した出力指示の要求に関する処理を開始することに伴って通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合には、その出力指示の要求に関する処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させる構成である。このような構成によれば、出力指示の要求に関する処理を終わらせることのできる最も早いタイミングで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行することができるので消費電力を節約することができる。
【0123】
また本実施形態においては、通知タイミングTbから移行タイミングTcまでの時間には、記憶装置15に記憶されている文書データの処理所要時間が少なくとも含まれる構成である。このような構成によれば、移行タイミングTcを変動させること無く、記憶装置15に記憶されている文書データの処理を終わらせることが可能になる。これにより画像処理装置3は、文書データに関する処理を終わらせることの出来る最も早いタイミングで通電状態を省電力状態に移行させることができるので消費電力を節約することができる。
【0124】
更に本実施形態においては、画像処理装置3は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの1サイクル内において、2度目以降となる出力指示の要求を通知しない構成である。このような構成によれば、出力指示の要求が頻繁に通知されてしまうことを防止することができるので、画像処理装置3の使い勝手を向上させることができる。
【0125】
また本実施形態においては、画像処理装置3は、通知タイミングTbを例えば管理者などの操作者の操作指示に基づき任意のタイミングに変更可能に構成される。このような構成によれば、通知タイミングTbが任意で変更できるので利便性が高まる。
【0126】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0127】
例えば、上述した実施形態では、データ処理装置2は、画像処理装置3としてMFPに実装される場合を例示したがこれに限られない。例えばデータ処理装置2は、印刷機能のみを備える一般的な印刷機や、一般的なFAX電話機などに実装することが可能である。また本実施形態においては、データ処理システム1に含まれる情報処理装置4が一般的なパーソナルコンピュータである場合を例示したが、これに限られない。例えば、情報処理装置4は携帯電話機などのモバイル端末であっても良い。
【符号の説明】
【0128】
1 データ処理システム
2 データ処理装置
3 画像処理装置
4 情報処理装置
31 管理部(設定手段)
32 決定部(決定手段)
33 出力制御部(出力制御手段)
34 通知部(通知手段)
35 判断部(判断手段)
36 通電制御部(通電制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置と、
前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段と、
通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定する決定手段と、
前記記憶装置に記憶されている文書データに関連づけられたユーザを特定する判断手段と、
前記決定手段によって決定される移行タイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段と、
前記決定手段によって決定される移行タイミングに基づき通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記通知手段によって要求が行われた後に実行される処理が、その要求に対応する出力指示に基づいて実行される出力処理である場合、その出力処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングを繰り延べしないことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記通電制御手段は、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングが経過した時点で、前記通知手段によって要求された出力指示に対応する出力処理が行われている場合、その出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記通電制御手段は、前記通知手段によって要求された出力指示がユーザから入力されることによって通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合、その出力指示に対応する出力処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記通知手段によって出力指示の要求が行われるタイミングから、前記決定手段によって決定される移行タイミングまでの時間には、前記記憶装置に記憶されている文書データの出力処理を開始してから完了するまでに要する処理所要時間が少なくとも含まれることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記通知手段は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記通知手段によって出力指示を行うことが要求されるタイミングを、操作者の操作に基づき設定する設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項8】
文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置を備えるデータ処理装置において実行されるプログラムであって、前記データ処理装置を、
前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段、
通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるタイミングを決定する決定手段、
前記記憶装置に文書データが記憶されている状態で、その文書データに関連づけられているユーザを特定する判断手段、
前記決定手段によって決定されるタイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段、および、
前記決定手段によって決定されるタイミングに基づいて通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置と、
前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段と、
通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる移行タイミングを決定する決定手段と、
前記記憶装置に記憶されている文書データに関連づけられたユーザを特定する判断手段と、
前記決定手段によって決定される移行タイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段と、
前記決定手段によって決定される移行タイミングに基づき通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記通知手段によって要求が行われた後に実行される処理が、その要求に対応する出力指示に基づいて実行される出力処理である場合、その出力処理が完了していることを条件として通常通電状態から省電力状態への移行タイミングを繰り延べしないことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記通電制御手段は、通常通電状態から省電力状態への移行タイミングが経過した時点で、前記通知手段によって要求された出力指示に対応する出力処理が行われている場合、その出力処理が完了するまで通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させないことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記通電制御手段は、前記通知手段によって要求された出力指示がユーザから入力されることによって通電状態を省電力状態から通常通電状態に復帰させた場合、その出力指示に対応する出力処理が完了することに伴って通電状態を省電力状態に移行させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記通知手段によって出力指示の要求が行われるタイミングから、前記決定手段によって決定される移行タイミングまでの時間には、前記記憶装置に記憶されている文書データの出力処理を開始してから完了するまでに要する処理所要時間が少なくとも含まれることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記通知手段は、通電状態が通常通電状態に復帰してから省電力状態に移行するまでの時間において、ユーザに対して出力指示を行うことを1回だけ要求することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記通知手段によって出力指示を行うことが要求されるタイミングを、操作者の操作に基づき設定する設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のデータ処理装置。
【請求項8】
文書データとユーザとを関連づけて記憶する記憶装置を備えるデータ処理装置において実行されるプログラムであって、前記データ処理装置を、
前記記憶手段に記憶されている文書データを、該文書データに関連付けられたユーザからの出力指示に基づいて出力する出力制御手段、
通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させるタイミングを決定する決定手段、
前記記憶装置に文書データが記憶されている状態で、その文書データに関連づけられているユーザを特定する判断手段、
前記決定手段によって決定されるタイミングよりも所定時間前に、前記判断手段によって特定されるユーザに対して出力指示を行うことを要求する通知手段、および、
前記決定手段によって決定されるタイミングに基づいて通電状態を通常通電状態から省電力状態に移行させる通電制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−66093(P2013−66093A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204168(P2011−204168)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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