説明

データ処理装置

【課題】本発明は、異なる検出器からの映像信号の画像データを遅滞なく表示部に転送することのできるデータ処理装置を提供することことを目的としている。
【解決手段】複数チャネルの信号を検出する検出器1と、これら検出器1のそれぞれの出力を信号処理する信号処理部3と、これら信号処理部3の出力を受けて有効データのみを抽出する有効データ抽出部10と、該有効データ抽出部10の出力を受けて多重化する多重部11と、該多重部11の出力を受けてメモリへの書き込み制御を行なうメモリ制御部16と、該メモリ制御部16の出力を受けて検出データを記憶するメモリ4と、該メモリ4に記憶されている検出データを読み出して出力するデータ出力部5と、該データ出力部5の出力を受けて所定のデータ処理を行なう処理装置17と、該処理装置17の出力を受けて検出データを出力するモニタ8とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば電子顕微鏡等の複数チャネルの検出データを同期して同時に得ることができるデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来システムの構成例を示すブロック図である。図において、1は装置(例えば電子顕微鏡)の各部に設置された複数(N個)の検出器である。該検出器1を検出器1〜検出器Nとして表す。2はこれら検出器1の出力を入力し、その内の1チャネルを選択するスイッチ、3はスイッチ2の出力を受けて所定の信号処理を行なう信号処理部である。該信号処理部3としては、例えば検出器1で検出した信号を増幅しフィルタリング等の処理を行なった後、アナログ信号をディジタルデータに変換するA/D変換器等から構成される。
【0003】
4は信号処理部3の出力を記憶するメモリ、5は該メモリ4の内容を読み出してデータ出力を行なうデータ出力部、6は該データ出力部5の出力を伝送する伝送路、7は該伝送路6を介して送られてきた検出データを受けて所定の画像処理を行なう処理装置である。該処理装置7の機能としては、階調処理、ノイズ除去、エッジ強調処理等が考えられる。8は該処理装置7で処理した検出データを受けて表示するモニタである。例えば、検出データが2次電子検出器の出力であった場合、モニタ8には2次電子画像が表示される。ここで、スイッチ2を切り換えることにより、2次電子画像、反射電子画像、温度分布等が表示される。つまり、従来の装置としては、1画面毎にスイッチ2で必要なチャネルに切り替えて連続的に表示している。
【0004】
従来のこの種の装置としては、1/Nに圧縮した画像を転送し、転送先で受信した圧縮画像データを復号化処理し、受像装置上に分割合成画像を表示するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。また、画像データをMPEGによって符号化すると共に、MPEGによる符号化データを復号する機能を有する符号化復号部を、符号化時と復号化時とで同一の動作をする部分を共有するように構成した装置が知られている(例えば特許文献2参照)。また、透過電子顕微鏡に2つの異なる信号を同時に検出できる検出器と、その両電子顕微鏡像を記憶する手段と、記憶した両電子顕微鏡像を高速に読み出す手段とを有し、2つのCRTモニタとを備え、両電子顕微鏡像を同時に静止画像として表示する装置が知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平4−54089号公報(第3頁左上欄第11行〜第4頁左上欄第10行目、第1図〜第4図)
【特許文献2】特開2000−278684号公報(段落0017〜0055、図1〜図5)
【特許文献3】特開平8−227681号公報(段落0029〜0030、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の技術では、表示するチャネルの画像毎にスキャンを実施していた。即ち、同一スキャンで発生した各検出器の信号を表示部に伝送して表示するのではなく、表示されている各チャネルの画像はそれぞれ異なる時間に採取されたものであった。表示部において、異なる検出器の映像を加算等の処理を施した時、画像の時間的な違いによる映像の差異があり、科学的分析等の際に支障になっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、異なる検出器からの映像信号の画像データを画素毎に時分割多重し、全ての検出器の映像信号を遅滞なく表示部に転送することのできるデータ処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1記載の発明は、特定の物理量を検出する複数チャネルの検出器と、これら検出器のそれぞれの出力を信号処理する信号処理部と、これら信号処理部の出力を受けて有効データのみを抽出する有効データ抽出部と、該有効データ抽出部の出力を受けて多重化する多重部と、該多重部の出力を受けてメモリへの書き込み制御を行なうメモリ制御部と、該メモリ制御部の出力を受けて検出データを記憶するメモリと、該メモリに記憶されている検出データを読み出して出力するデータ出力部と、該データ出力部の出力を受けて所定のデータ処理を行なう処理装置と、該処理装置の出力を受けて検出データを出力するモニタと、から構成されてなることを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、前記検出器の出力を信号処理部で信号処理した複数チャネルの信号を多重部で多重化する際、データ毎に各検出器に対応した識別符号を付加することを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記検出器の出力が画像データである場合に、この画像データを多重化する際に、各チャネルのデータを画素毎に多重化し、その状態で前記メモリに記憶させることを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、任意のチャネルの画像を停止する時、当該チャネルのデータのみをメモリに記憶しないようにしたことを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、前記複数のチャネルの検出器は、電子顕微鏡の反射電子検出器、2次電子検出器、X線検出器、オージェ電子検出器、TED検出器、温度検出器、真空度検出器の少なくとも一つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(1)請求項1記載の発明によれば、装置の各部分に取り付けられた検出器の出力を多重化して処理することにより、モニタに各検出器からの出力を同時に転送して表示することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、データ毎に各検出器に対応した識別符号を付加することにより、データを同時処理する時でもどのデータであるのかを認識することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、各チャネルのデータを画素毎に多重化し、その状態でメモリに記憶させることができるので、後でメモリに記憶されているデータを読み出して処理することができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、特定のチャネルのデータのみをメモリに記憶しないようにすることで、当該チャネルの画像を停止することができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、複数のチャネルの検出器として、電子顕微鏡の反射電子検出器、2次電子検出器、X線検出器、オージェ電子検出器、TED検出器、温度検出器、真空度検出器の少なくとも一つを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態を示すブロック図である。図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。ここでは、装置として電子顕微鏡を用いた場合について説明する。図において、1は装置の所定の場所に設置された複数(N)個の検出器である。これら、検出器1を検出器1〜検出器Nとして示す。検出器1としては、例えば2次電子検出器、反射電子検出器、X線検出器、オージェ電子検出器、TED検出器、温度検出器、真空度(圧力)検出器等が用いられる。3は各検出器1の出力を受けて信号処理を行なう信号処理部である。該信号処理部3は、検出器1の出力を増幅してフィルタリング等の処理を行なった後、A/D変換器によりディジタルデータに変換する処理を行なう。これら信号処理部3を信号処理部1〜信号処理部Nとして示す。
【0010】
10は各信号処理部3の出力を受けて有効データのみを抽出する有効データ抽出部である。12はビームスキャンに応じて、任意のタイミングが設定可能な同期信号を発生する同期信号発生部、13はビームスキャンの同期信号で、水平同期信号、垂直同期信号、水平ブランキング信号、垂直ブランキング信号等である。11は有効データ抽出部10の出力を受けて多重化を行なう多重部(マルチプレクサ)である。14は多重化するチャネル数に応じて、タイミングを任意に設定可能な多重化クロック源、15は該多重化クロック源14から出力される多重化クロックである。
【0011】
16は多重部11からの出力を受けてメモリに記憶するデータの制御を行なうメモリ制御部、4は多重化データを記憶するメモリ、5は該メモリ4に記憶されているデータを読み出すデータ出力部、6は該データ出力部5の出力データを伝送する伝送路、17は該伝送路6を介して送られてくるデータをデータ処理する処理装置である。送られてくるデータが画像データの場合、各種のデータ処理(階調処理、エッジ強調処理等)を行なう。8は該処理装置17の出力を表示するモニタである。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0012】
装置の各部に設置された検出器1は検出された信号をアナログ出力する。ここで、アナログ信号としては、例えば2次電子、反射電子、オージェ電子、YAG、TED等が用いられる。信号処理部3は、検出器1の出力を受けて増幅し、所定の信号処理、例えばフィルタリング、信号加算、ブライトネス調整、コントラスト調整等を行なう。そして、信号処理を施した信号に対してA/D変換器でディジタルデータに変換する。そして、各検出器に対応した識別符号(ヘッダ)をデータに付加する。
【0013】
図2はデータのフォーマット例を示す図である。図において、Aは各検出器に対応したヘッダ(識別符号)、Bは画素データである。画素データBは、1画素当たりのデータである。ヘッダAは、検出器の種類を示す識別子である。検出器1の数に応じて数ビットのビット長が必要となる。有効データ抽出部10は、同期信号発生部12から出力されるスキャン同期信号13を基に有効期間のデータのみを抽出する(有効データ抽出のタイミングについては後述する)。有効期間のデータは、信号処理部3からの出力をそのまま、無効期間のデータは、ヘッダ情報及びデータ部又は何れか一方の情報を予め定めておいたコードに変換し、多重部11に出力する。この場合の無効期間はビームスキャンの振り戻し期間等である。本実施の形態では、ヘッダ情報はそのままで、データをオール0に変換し、無効期間のデータであることを示すようにした。このように、本発明によれば、データ毎に各検出器に対応した識別符号を付加することにより、データを同時処理する時でもどのデータであるのかを認識することができる。
【0014】
続く多重部11では、信号処理された各検出器1の映像信号を画素データに付加した識別符号を基に、予め決められた順番で多重化クロック源14からの多重化クロック15に同期して時分割多重する。図3は本発明の多重部の構成説明図である。図では、チャネル(以下chと略す)1〜ch4までの4チャネルのデータを多重化する場合を示している。ch1では、11,12,13,14,…1Nの順にデータが入ってくる。ここで、11は1画素目、12は2画素目、13は3画素目、14は4画素目、1NはN画素目を示している。
【0015】
他のチャネルについても同様である。最後の4chについては、41,42,43,44,…,4Nの順にデータが入ってくる。ここで、41は1画素目、42は2画素目、43は3画素目、44は4画素目、4NはN画素目である。タイムスイッチ11bは入力された各チャネルのデータを受けて、時分割多重し、11cに示すようなデータの並びに変換して出力する。即ち、最初は11,21,31,41の順に各チャネルの1画素目のデータが出力され、次に2画素目の各チャネルのデータ12,22,32,42が出力され、最後にN画素目の各チャネルのデータ1N,2N,3N,4Nが出力される。このタイムスイッチ11bは、FPGA等の汎用プログラマブルLSIを用いることで実現可能である。
【0016】
図4は本発明の多重化の説明図である。Cはch1〜ch4までの有効データ、Dは有効データCを多重化したものを示している。時間Tの間隔で各チャネルのデータが入ってくる。タイムスイッチ11bはこのデータをDに示すように多重化する。この場合において、多重化クロックを多重化するチャネル数に応じて変化させることにより、任意のチャネル数を多重化させることができる。実施の形態の場合、4チャネルを多重化するので、この際のクロック周波数fmxは、ビームスキャンのクロック周波数をfsc、多重チャネル数をMとすると、
mx=fsc×M
となる。例えば、6MHzのビームスキャンで4チャネルのデータを多重化する場合には、多重化クロック源14の多重化クロック15のクロック周波数は、上式より
mx=6(MHz)×4=24(MHz)
となる。
【0017】
多重部11の次段のメモリ制御部16は、図4に示すフォーマットで送られてくる多重化データをメモリ4に書き込み、停止している検出器1の映像信号はメモリ4に書き込まない(更新しない)といったメモリ書き込み制御を実施する。かつ、モニタ表示している検出器1の映像信号(複数又は単一)の、特定の検出器の出力信号を強制的にメモリ4への書き込みを停止することで、任意の検出器の映像のみを停止する機能を実現することができる。また、多重化されたデータをメモリ4に書き込むようにすることで、後でメモリ4に記憶されているデータを読み出して処理することができる。
【0018】
ここで、メモリ4は画像データを記憶するだけなので、汎用のDRAM、SDRAM等を使用することができる。データ出力部5は、メモリ4から画像データを読み出し、伝送路6に出力する。ここで、伝送するインタフェースとしては、例えばシリアル、パラレルの形態が考えられ、電気レベル的には通信速度の高速化、長距離伝送等を考慮すれば、平衡伝送、そうでない時には不平衡伝送する。また、伝送路6としては、有線の場合、USB、SCSI、IEEE1394、イーサネット(ゼロックス社の登録商標)等が考えられ、無線の場合には、無線LAN等を用いることができる。
【0019】
処理装置17は、多重化された信号を受信し、分離し、モニタインタフェースの機能を有しており、専用機器又は汎用PCで代用が可能である。即ち、処理装置17は、受信した多重化データを分離(デマルチプレックス)し、モニタ8に表示する。ここで、分離の方法としては、データ毎に付加されているヘッダ情報から各チャネルを識別する方法と、多重化している順番に従って、各チャネルを振り分ける方法が考えられる。このように、本発明によれば、装置の各部分に取り付けられた検出器の出力を多重化して処理することにより、モニタ8に各検出器1からの出力を同時に転送して表示することができる。
【0020】
図5は有効データ抽出のタイミングを示す図である。(a)は垂直ブランキング信号、(b)は水平ブランキング信号、(c)はch1入力データ、(d)はch2入力データ、(e)はch3入力データ、(f)はch4入力データ、(g)はch1出力データ、(h)はch2出力データ、(i)はch3出力データ、(j)はch4出力データである。30は各チャネルの入力データ、31は各チャネルの有効データである。
【0021】
垂直ブランキング信号(a)、水平ブランキング信号(b)共に、信号レベルが“0”の時無効状態、“1”の時有効状態を表している。入力データは、ビームスキャンに連動して発生する。ビームが観測領域以外をスキャンしている期間が無効状態で信号レベル“0”、有効領域をスキャンしている時が信号レベル“1”となる。一般的に、有効領域のデータのみを観察、分析に使用するので、連続的に発生するデータから有効データのみを抽出する。実施例では、無効領域(図中ハッチングで示す領域)のデータはオール0としている。有効データ抽出部10は、垂直ブランキング信号(a)と水平ブランキング信号(b)とが共に、“1”の時のデータを有効データとして抽出している。
【0022】
上述の実施の形態では、装置として電子顕微鏡を用いた場合を例にとったが、本発明はこれに限るものではない。装置の複数箇所に設置された検出器の出力を同時に出力して観察、分析する必要がある場合等に適用することができる。
【0023】
このように、本発明によれば、異なる検出器からの映像信号の画像データを画素毎に時分割多重し、全ての検出器の映像信号を遅滞なく表示部に転送することのできるデータ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】データのフォーマット例を示す図である。
【図3】本発明の多重部の構成説明図である。
【図4】本発明の多重化の説明図である。
【図5】有効データ抽出のタイミングを示す図である。
【図6】従来システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 検出器
3 信号処理部
4 メモリ
5 データ出力部
6 伝送路
8 モニタ
10 有効データ抽出部
11 多重部
12 同期信号発生部
13 ビームスキャンの同期信号
14 多重化クロック源
15 多重化クロック
16 メモリ制御部
17 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の物理量を検出する複数チャネルの検出器と、
これら検出器のそれぞれの出力を信号処理する信号処理部と、
これら信号処理部の出力を受けて有効データのみを抽出する有効データ抽出部と、
該有効データ抽出部の出力を受けて多重化する多重部と、
該多重部の出力を受けてメモリへの書き込み制御を行なうメモリ制御部と、
該メモリ制御部の出力を受けて検出データを記憶するメモリと、
該メモリに記憶されている検出データを読み出して出力するデータ出力部と、
該データ出力部の出力を受けて所定のデータ処理を行なう処理装置と、
該処理装置の出力を受けて検出データを出力するモニタと、
から構成されてなるデータ処理装置。
【請求項2】
前記検出器の出力を信号処理部で信号処理した複数チャネルの信号を多重部で多重化する際、データ毎に各検出器に対応した識別符号を付加することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記検出器の出力が画像データである場合に、この画像データを多重化する際に、各チャネルのデータを画素毎に多重化し、その状態で前記メモリに記憶させることを特徴とする請求項1又は2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
任意のチャネルの画像を停止する時、当該チャネルのデータのみをメモリに記憶しないようにしたことを特徴とする請求項3記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記複数のチャネルの検出器は、電子顕微鏡の反射電子検出器、2次電子検出器、X線検出器、オージェ電子検出器、TED検出器、温度検出器、真空度検出器の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のデータ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−128808(P2008−128808A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313989(P2006−313989)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】