説明

データ収集システム

【課題】複数の計量器端末がマルチホップで通信を行い、検針データをホスト装置へ送信するようにした自動検針システムにおいて、時刻情報のネットワーク占有期間を抑える。
【解決手段】各端末A,B,C,Dが、時刻t0の時点で、NTPサーバでの発報(生成)時刻が図のような時刻情報をそれぞれ保持しているとき、所定の周期で自機の持つ時刻情報をマルチキャスト送信し、それを受信した周囲端末は、自機が持っているよりも新しい時刻情報であるときはその時刻情報で時計部の時刻を修正し、古い時刻情報である場合は更新を行わない。たとえば、時刻t6では端末Dの発報に対して、端末Cは修正するものの、端末Eは修正しない。このように構成することで、ホスト装置から通常のマルチホップの経路での時刻情報の送信回数を増やす訳ではないので、時刻情報のネットワーク占有期間を抑え、検針データのスループットや応答性の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各需要家に設置される積算電力量計などが無線通信機能を備えて多数の無線通信端末となり、その無線通信端末がネットワークを構成して、たとえば検針データを予め定める時間毎(定時検針)や予め定める事象(停電等)の発生時点などにマルチホップ無線通信によってホスト装置へ送信し、収集することで、自動検針などを実現するようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気、ガス、水道の検針データ等を前記計量器端末からマルチホップ無線通信によってホスト装置に定期的に吸い上げるようにした典型的な従来技術が、特許文献1に示されている。このようなデータ収集システムでは、各端末が所定の検針時刻になると検針を行い、その結果を自機に設定された発報時刻に前記ホスト装置へ送信する必要がある。このため、各端末の時計を合わせておく必要がある。そこで、特許文献2では、各端末が自機に予め設定された時計合わせ時刻になると、ホスト装置と通信を行うことで、エリア内に多くの端末が存在しても、混信をしないようにして、前記のような定時発報の基準となる時計を合わせるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−187793号公報
【特許文献2】特許第3288162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2は、PHS(Personal Handyphone System)のトランシーバモードを使用して、図8で示すように、各端末A,B,C,・・・が、直接サーバ装置(ホスト装置)Sと1対1で通信を行っている。具体的には、各端末A,B,C,・・・が予め定められたタイミングで時刻同期要求を送信し、これに応答してサーバ装置Sが時刻情報を送信することで、順次時計合せが行われる。したがって、末端側の端末(図6ではC)は、多くの端末A,Bを経由するので、途中の通信障害などで時計合せを行えず、時計の精度が低下する可能性がある。
【0005】
また、各端末A,B,C,・・・が順次サーバ装置Sと通信を行うので、このような同期通信のネットワーク占有時間が長くなり、ネットワークのスループットが低下するという問題もある(本来の検針データの収集に影響を生じる)。一方、前記スループットの低下を抑えるために時計合せの周期を長くすると、時計の精度が低下する。ところで、このような端末A,B,C,・・・それぞれに、GPS受信機などの正確な時刻情報を取得可能な機器を搭載することで、そのような時刻情報の送受信は不要にできるが、コストが嵩むとともに、金属扉等で遮蔽された特に集合住宅に設置される端末では、1つの衛星のGPS信号も受信できない可能性もある。
【0006】
本発明の目的は、多くの無線通信端末の制御情報をマルチホップ無線通信によって収集するようにしたデータ収集システムにおいて、各無線通信端末の時計の精度を高めることができるデータ収集システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータ収集システムは、ホスト装置と、前記ホスト装置との間でマルチホップ方式の無線通信によって制御情報を送受信する複数の無線通信端末とを備えて構成され、前記ホスト装置は、予め定めるタイミングで時刻情報を発報する時刻発生部を有し、前記各無線通信端末は、前記時刻情報を保有する時計部と、前記制御情報の無線通信を行う無線通信部と、前記時計部の時刻情報に基づいて動作を行い、前記無線通信部に自機で発生した前記制御情報を送信させるとともに、受信した制御情報を転送させる通信制御部と、予め定めるタイミングで前記時計部の時刻情報を前記無線通信部から、電波到達範囲を配信対象とするマルチキャスト送信させるとともに、前記無線通信部で受信された情報が時刻情報であるとき、自機が保有する時刻情報と比較し、受信した時刻情報の方が前記ホスト装置における発報時刻が遅い場合には、その時刻情報で前記時計部の時刻を修正する時刻修正部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、複数の無線通信端末がネットワークを構成し、各無線通信端末は、その制御情報を、予め定める時間毎や、予め定める事象の発生時点などにマルチホップ無線通信によってホスト装置へ送信し、収集することで、自動検針などを実現するようにしたシステムにおいて、前記ホスト装置は、時刻発生部から、予め定めるタイミングで時刻情報を発報し、前記各無線通信端末に受信させて、その時計部の時刻情報を修正させる。
【0009】
このため、前記各無線通信端末は、1:1のマルチホップ無線通信で前記制御情報を送信する無線通信部と、時計部と、前記時計部の時刻情報に基づいて前記無線通信部に無線通信を行わせる通信制御部とを備えるとともに、前記無線通信部で受信された時刻情報に応答して前記時計部の時刻情報を修正する時刻修正部を備える。注目すべきは、この時刻修正部は、自機が保有している時刻情報を前記無線通信部に、電波到達範囲を配信対象として、周囲端末へマルチキャスト送信させることである。そして、前記無線通信部で周囲端末からの時刻情報を受信すると、前記時刻修正部は、自機が保有する時刻情報と比較し、受信した時刻情報の方が前記ホスト装置における発報(生成)時刻が遅い場合には、その時刻情報で前記時計部の時刻を修正する。また、前記時刻修正部は、前記時計部に時刻情報の受信履歴がある状態で前記無線通信部で前記マルチキャスト送信された時刻情報を受信したとき、その時刻情報については、際限なく拡がらないように、受信しても周囲端末への転送は行わない。つまり、前記マルチキャストは、同一ネットワークに属する全端末へ配信を行うブロードキャストとは異なり、送信した電波が受信できる端末への配信に限られる。
【0010】
したがって、前記ネットワークを構成する多くの無線通信端末は、通常、ホスト装置への経路の上位側の端末からの時刻情報で自機の時計を修正するようになるところ、その経路から外れた端末が周囲に存在し、その端末が保有する時刻情報の方が新しく、当該時刻情報を受信できた場合、自機の時計をそちらに合わせる。すなわち、各無線通信端末は、ホストへの通信経路に依らず、周囲に位置するいずれの端末から送信された時刻情報であっても、それを伝送する電波を受信できれば、時刻同期することができる。
【0011】
これによって、各無線通信端末は、より新しい時刻情報に同期していることになり、時計の精度を高めることができるとともに、たとえば車両の通過等による通常のホスト装置への経路の通信障害などに対する耐性を高めることができる。また、ホスト装置から通常のマルチホップの経路での時刻情報の送信回数を増やす訳ではないので、時刻情報の配信によるネットワーク占有期間を抑え、制御情報のスループットや応答性の低下に対する影響も小さく抑えることができる。
【0012】
また、本発明のデータ収集システムでは、前記時刻修正部は、前記時計部に時刻情報の受信履歴が無い状態で前記無線通信部で前記マルチキャスト送信された時刻情報を受信したとき、その時刻情報を前記無線通信部に再送信させることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、各無線通信端末の時刻修正部は、上述のように、隣接端末からマルチキャスト送信された時刻情報は、受信しても再送信しないことで、この再送信が際限なく拡がり、トラヒックが無闇に増加しないようにしているけれども、前記時計部に時刻情報の受信履歴が無い状態で時刻情報を受信した場合、電源投入(起動)当初か、停電後の再投入で、周囲端末の多くも時刻情報は保有していない(受信履歴が無い)可能性が高い。そこで、このような場合には、前記再送信を行う。
【0014】
したがって、前記電源投入(起動)当初や、長時間停電の後の再投入時に、素早く各無線通信端末の時計合せを行うことができる。
【0015】
さらにまた、本発明のデータ収集システムでは、前記時刻修正部は、前記無線通信部で受信された情報が時刻情報であるとき、前記ホスト装置からのホップ数が予め定める基準値以上である場合には無視することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、前述のように無線通信部が周囲端末から受信した時刻情報の方が自機が保有する時刻情報よりもホスト装置における発報(生成)時刻が遅い場合には、時刻修正部がその時刻情報で時計部の時刻を修正するにあたって、ホスト装置からのホップ数が予め定める基準値以上である場合には、その修正は行わず、受信した時刻情報を無視する。
【0017】
したがって、ホスト装置における発報(生成)時刻が遅いだけで、多くの経路を経由した信頼の置けない時刻情報での時計部の修正を禁止することができる。
【0018】
また、本発明のデータ収集システムでは、前記無線通信部は、無線LANの規格で前記マルチホップ無線通信およびマルチキャストの通信を行うことを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、無線LANは、チャネル間隔が開いたチャネル間であっても、周波数遷移幅内に他のチャネルの信号が入り込んで干渉を生じる可能性があり、したがって使用できるチャネル数があまり多くない。
【0020】
したがって、上記のように時刻情報の配信によるネットワーク占有期間を抑えることは、特に効果的である。
【0021】
さらにまた、本発明のデータ収集システムでは、前記無線通信端末は、各需要家に設置される計量器端末であり、前記制御情報は、検針データであることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、各需要家に設置される計量器端末、たとえば積算電力量計などは、設置数が膨大であり、本発明のようなデータ収集および時刻同期手法が特に有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のデータ収集システムは、以上のように、複数の無線通信端末がネットワークを構成し、各無線通信端末は、その制御情報を予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などにマルチホップ無線通信によってホスト装置へ送信し、収集することで、自動検針などを実現するようにしたシステムにおいて、前記ホスト装置がその時刻発生部から予め定めるタイミングで時刻情報を発報し、各無線通信端末の時刻修正部は、通常、そのホスト装置への経路の上位側の端末からの時刻情報で自機の時計を修正するようになるところ、その経路から外れた端末が周囲に存在し、その端末が保有する時刻情報の方が新しく、当該時刻情報を受信できた場合、自機の時計をそちらに合わせるようにする。
【0024】
それゆえ、各無線通信端末は、より新しい時刻情報に同期していることになり、時計の精度を高めることができるとともに、たとえば車両の通過等による通常のホスト装置への経路の通信障害などに対する耐性を高めることができる。また、ホスト装置から通常のマルチホップの経路での時刻情報の送信回数を増やす訳ではないので、時刻情報の配信によるネットワーク占有期間を抑え、制御情報のスループットや応答性の低下に対する影響も小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の一形態に係る検針データ収集システムの概略的構成を示すブロック図である。
【図2】前記検針データ収集システムにおける計量器端末の一構成例を示す正面図である。
【図3】無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【図4】前記検針データ収集システムにおける通常状態での各計量器端末の時刻設定動作を説明するための図である。
【図5】前記検針データ収集システムにおける各計量器端末の時刻設定のための時刻同期フレームの受信動作を説明するための図である。
【図6】前記検針データ収集システムにおける各計量器端末の時刻設定のための時刻同期フレームの送信動作を説明するための図である。
【図7】前記検針データ収集システムにおける初期状態での各計量器端末の時刻設定動作を説明するための図である。
【図8】典型的な従来技術の検針データ収集システムにおける各計量器端末の時刻設定動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態に係るデータ収集システムの概略的構成を示すブロック図である。このデータ収集システムは、各需要家H1,H2,・・・(総称するときは、以下参照符号Hで示す)にそれぞれ設置された無線通信端末である計量器端末U1,U2,・・・(総称するときは、以下参照符号Uで示す)が、動的に、すなわち常時周囲を見渡し、伝送状態が最も良好なルートへ自律的に切替えてマルチホップ無線通信ネットワークを構成して、その検針データを予め定める時間毎や予め定める事象の発生時点などに、ホスト装置であるサーバ装置1へ送信し、収集することで、自動検針を実現するようにしたシステムである。
【0027】
前記計量器端末Uは、本実施の形態では積算電力量計として実現され、無線LAN規格での通信を行う。そのため、各計量器端末Uは、無線LANの端末間通信用のアドホックモードによって、参照符号A1,A2,A3,A4で示すように1:1の無線通信を行う。また、各計量器端末Uは、起動(電源投入)すると、前述のように周囲の電波状況を監視し、最も通信品質の良好な計量器端末(ぶら下がり先:図1の例では計量器端末U1に対してU2、U3に対してU4)を判定して接続、すなわちネットワークに参加するとともに、無線通信ネットワークの終端であるゲートウェイ3に至る経路を自律的に選択して、前記アドホックモードによって通信を開始する。
【0028】
前記ゲートウェイ3は、無線通信ネットワークと、電力会社などのネットワーク運営会社専用の有線ネットワーク4とを接続するもので、前記有線ネットワーク4には前記サーバ装置1が接続されている。このゲートウェイ3は、たとえば主要な電柱に設けられ、収容端末数は数百程度である。また、各計量器端末Uのホップ数は、最大で数十、好ましくは十ホップ以下である。
【0029】
前記有線ネットワーク4には、もう1つのホスト装置であり、その時刻発生部から時刻情報を発生するNTP(Network Time Protocol)サーバ1aが接続されている。このNTPサーバ1aは、社内光ファイバ網などの前記有線ネットワーク4によって接続されるゲートウェイ3に対して、たとえば10分に1回等の所定の周期タイミングで時刻情報である時刻同期フレームを生成し、発報する。これを受信したゲートウェイ3は、後に詳述するような時刻同期処理、すなわち内部時計の修正を行う。その処理の完了後、ゲートウェイ3は、後に詳述するような時刻同期フレームを生成し、各計量器端末Uへ送信する。それを受信した各計量器端末Uも、時刻同期処理を行い、定時検針のタイミングや、その検針結果の送信タイミングを、所定の精度で維持する。
【0030】
図2は、前記計量器端末Uの一構成例を示す正面図である。この計量器端末Uは、宅内の各配電線が接続される端子台6側から、負荷開閉器7、電力量計8および無線通信装置5が配列されて構成されている。前記電力量計8は、積算電力量を予め定める周期、たとえば30分毎に検針し、その検針データを、無線通信装置5が、後述するように計量器端末Uに予め設定されたタイミングに、自機の属するゲートウェイ3へ向けて送信し、サーバ装置1に転送される。一方、サーバ装置1からは、負荷開閉器7の開閉や、不達検針データを再送するバックアップ検針などを行わせるための制御データが、必要に応じて、ゲートウェイ3を介して各無線通信装置5へ向けて送信される。これらの検針データおよび制御データは、制御情報を構成する。
【0031】
図3は、前記無線通信装置5の一構成例を示すブロック図である。この無線通信装置5は、前記無線LANの無線通信部11と、その通信を制御する無線通信制御部12と、時計部13と、電力量計8から検針データを受信するインタフェイス14と、前記負荷開閉器7へ制御情報を送信するインタフェイス15と、それらの電力量計8および負荷開閉器7との通信を制御する機内通信制御部16と、前記検針データをバックアップ記憶しておくメモリ17と、後述するようにして前記時計部13の時刻情報(内部時計)を修正する(前記時刻同期処理を行う)時刻修正部18とを備えて構成される。
【0032】
前記機内通信制御部16は、前記時計部13の内部時計に応答して、予め定められた検針時刻、たとえば1分毎に、前記インタフェイス14を介して電力量計8から検針データを受信し、参照符号17aで示すようにメモリ17に格納してゆく。その検針データを、無線通信制御部12は、前記内部時計に応答して、予め定められた送信時刻となると読出し、無線通信部11から送信する。無線通信部11は、前記内部時計に応答して、所定時間毎に、前述のように周囲を見渡してホップ先を判定しており、前記検針データをそのホップ先へ送信するとともに、受信した他の計量器端末Uからの検針データも転送する。
【0033】
図4は、上述のように構成される検針データ収集システムにおける通常状態での各計量器端末Uの時刻設定動作を説明するための図である。先ず、ゲートウェイ3は、たとえば前記10分に1回等の所定の周期タイミングで、NTP/SNTPクライアント機能によって、上位の前記NTPサーバ1aと同期し、時刻同期が実施されている。そして、たとえば1時間に1回等の所定の周期タイミングで前記時刻同期フレームを生成し、NTP/SNTP機能によって、電波到達範囲を配信対象として、マルチキャスト送信を行う。
【0034】
これを受信した各計量器端末Uの時刻修正部18は、自機の時計部13の内部時計の基になっている時刻同期フレームの前記NTPサーバ1aにおける発報(生成)時刻(NTP完了時刻)T1と比較し、受信した時刻同期フレームの方が発報時刻T1が遅い場合には、その時刻同期フレームで前記時計部13の内部時計を修正する。この際、受信した時刻同期フレームのゲートウェイ3からのホップ数が規定のホップ数以上である場合には、多くの経路を経由して、前記時刻同期フレームの信頼性が低下している可能性があるとして、そのような修正は行わず、受信した時刻同期フレームを無視するようにしてもよい。
【0035】
また、前記時刻修正部18は、たとえば1時間に1回、ランダムなタイミングに設定される発報タイミングとなると、自機の時計部13を参照し、前回の発報タイミングの後に時刻同期が実施されていない場合には、トラヒックを抑えるために、前記時刻同期フレームの送信を行わず、時刻同期が実施されている場合は、現在の内部時計に対応した時刻同期フレームを作成し、無線通信制御部12からマルチキャスト送信させる。なお、前回の発報タイミングの後に時刻同期が実施されているか否かに拘わらず、時刻同期フレームの送信を行い、周囲で受信できなかった端末に再受信の機会を与えるようにしてもよい。
【0036】
具体的に、図4の例では、ゲートウェイ3を基準として、上流側から端末A,B,C,D,Eの順に直列に並んでおり、この図4の範囲では、隣の端末としか通信を行えないものとする。すなわち各ゲートウェイ3および端末A,B,C,D,Eは、この図4には示していない他の端末(他のゲートウェイの配下の端末も含む)とは通信可能であり、その他の端末を経由して適宜時刻同期が行われているものとして、この図4の範囲では、配列順を飛び越しての通信は行えず、前後の端末としか通信を行えないものとする。
【0037】
この図4では、時刻t0の初期状態で、端末A,B,C,D,Eが保有する時刻同期フレームの作成時刻T1は、それぞれ10:10:00、10:00:00、10:00:00、9:00:00、8:00:00であり、その時刻同期フレームに同期した後の内部時計(現在時刻)をUTとするとき、それぞれ10:20:00、10:20:00、10:20:00、10:20:05、10:20:10となっている。すなわち、比較的新しい時刻同期フレームで時計部13の同期処理を行った端末A,B,Cの内部時計UTが一致しており、同期処理の時刻が1時間古い端末Dでは前記内部時計UTに5秒の進み、2時間古い端末Eでは前記内部時計UTに10秒の進みが生じている。また、ホップ数をHopとするとき、ゲートウェイ3側から順に、端末A,B,C,D,Eは、それぞれ1,2,3,4,5である。
【0038】
この状態で、先ず時刻t1では端末Cが1時間に1回の前記ランダムな時刻同期フレームの発報タイミングとなったものとする。したがって、端末Cの時刻修正部18は、T1=10:00:00にゲートウェイ3で作成された時刻同期フレームで修正された時計部13の内部時計UTに基づき、その時刻T2=10:21:00に送信すべき時刻同期フレームを作成し、前記マルチキャストの送信を行う。これを受信することができる端末は、上流側のBおよび下流側のDであるが、この場合、上流側の端末Bの時刻修正部18では、受信した時刻同期フレームの作成時刻が、T1=10:00:00と、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=10:00:00と同一であり、作成時刻がより新しく(遅く)ないので、これを無視する。一方、図4では、下流側の端末Dでは、電波障害によって前記時刻同期フレームは受信されておらず、時刻修正部18は、時計部13の時刻同期処理を行わない。
【0039】
次に、時刻t2では、端末Aが前記発報タイミングとなったものとする。したがって、端末Aの時刻修正部18は、T1=10:10:00にゲートウェイ3で作成された時刻同期フレームで修正された時計部13の内部時計UTに基づき、その時刻T2=10:30:00に送信すべき時刻同期フレームを作成し、前記マルチキャストの送信を行う。これを受信することができる端末は、下流側のBであり、この場合、その端末Bの時刻修正部18は、受信した時刻同期フレームの作成時刻のT1=10:10:00が、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=10:00:00より遅いので、この新たに受信した時刻同期フレームで前記時計部13の同期処理を行う。その時刻同期処理は、前段の端末Aでの時刻同期フレームの送受信や、時計部13の同期(修正)処理に要した時間等を補正して行われる。また、この時刻同期フレームを受信できた端末Bは、前述のようにその時刻同期フレームの転送(再送信)は行わない。一方、この時刻t2では、ゲートウェイ3も端末Aからの時刻同期フレームを受信することができるけれども、該ゲートウェイ3は、有線側のNTPサーバ1aに対してしか同期を行わず、受信した時刻同期フレームを無視する。
【0040】
その後、時刻t3で、前記10分に1回の同期タイミングとなり、前記ゲートウェイ3がNTPサーバ1aに同期を行うと、直ちに、その時刻T2=10:50:00に、T1=10:50:00の時刻同期フレームを作成し、前記マルチキャストの送信を行う。これを受信した端末Aは、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=10:10:00より遅いので、この新たに受信した時刻同期フレームで前記時計部13のこの時刻同期フレームへの同期処理を行う。
【0041】
これに対して、最下流の端末Eでは、時刻t4に、周囲端末(前記のように異なるゲートウェイの配下の端末も含む)から、時刻T2=10:25:00に作成された時刻同期フレームを受信すると、時刻修正部18は、その時刻同期フレームが時刻T1=10:20:00に基づくものであり、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=8:00:00より遅いので、この新たに受信した時刻同期フレームに前記時計部13を同期させる。
【0042】
その後、時刻t5で、その端末Eが発報タイミングとなると、前記T1=10:20:00の時刻同期フレームに基づき作成されたT2=10:40:00の時刻同期フレームを送信する。これを受信することができる端末は、上流側のDであり、その端末Dの時刻修正部18は、受信した時刻同期フレームの作成時刻T1=10:20:00が、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=9:00:00より遅いので、この新たに受信した時刻同期フレームに前記時計部13を同期させる。
【0043】
さらに、時刻t6で、その端末Dが発報タイミングとなると、前記T1=10:20:00の時刻同期フレームに基づき作成されたT2=10:55:00の時刻同期フレームを送信する。これを受信することができる端末は、上流側のCおよび下流側のEであるが、上流側の端末Cは、受信した時刻同期フレームの作成時刻T1=10:20:00が、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=10:00:00より遅いので、この新たに受信した時刻同期フレームに前記時計部13を同期させる。しかしながら、下流側の端末Eは、受信した時刻同期フレームの作成時刻T1=10:20:00が、自機が保持している時刻同期フレームの作成時刻T1=10:20:00と同一であり、作成時刻がより新しく(遅く)ないので、この時刻同期フレームを無視する。
【0044】
その後、時刻t7で、端末Bが最後に発報タイミングとなると、前記時刻t2で受信されたT1=10:10:00の時刻同期フレームに基づき作成されたT2=11:00:00の時刻同期フレームを送信する。しかしながら、これを受信した下流側の端末Cは、既に前記時刻t6で、下流側の端末DからT1=10:20:00の時刻同期フレームを受信しており、新たに受信した時刻同期フレームを無視する。同様に、上流側の端末Aも、既に前記時刻t3で、上流側のゲートウェイ3からT1=10:50:00の時刻同期フレームを受信しており、新たに受信した時刻同期フレームを無視する。
【0045】
図5は、各計量器端末Uにおける時刻修正部18の上述のような時刻同期フレームの受信動作を説明するためのフローチャートである。時刻同期フレームを受信するとステップS1に移り、先ずその時刻同期フレームがゲートウェイ3から自機まで到達するのに要したホップ数Hopが判定され、40以上である場合には、そのままこの時刻同期フレームを無視して処理を終了する。一方、ホップ数Hopが前記40未満であれば、ステップS2に移る。なお、このステップS1は、前述のように特に設けられなくてもよい。
【0046】
ステップS2では、受信した時刻同期フレームの作成時刻T1と、自機が保有している時刻同期フレームの作成時刻T1とが比較され、保持している時刻同期フレームの方が新しい場合は、この受信した時刻同期フレームを無視して処理を終了する。一方、受信した時刻同期フレームの方が新しい場合は、ステップS3に移り、その受信した時刻同期フレームの送信時刻T2を自機の内部時計UTに設定(更新)するとともに、その時刻同期フレームの作成時刻T1を更新して保持し、さらにホップ数Hopも1を加算して保持する。
【0047】
また、図6は、各計量器端末Uにおける時刻修正部18の上述のような時刻同期フレームの送信動作を説明するためのフローチャートである。前記ランダムな発報時刻となるとステップS11に移り、前回の自機の時刻同期フレームの送信時点から、新たに時刻同期フレームを受信し、それに同期したか否かが判断され、同期していない、すなわち自機の時計を更新していない場合には処理を終了し、更新している場合にはステップS12に移る。なお、このステップS11も、前述のように特に設けられなくてもよい。ステップS12では、自機が保持している時刻同期フレームに基づいて、自機からの時刻同期フレームを作成し、ステップS13で送信を行う。
【0048】
これに対して、図7は、前記検針データ収集システムにおける初期状態での各計量器端末Uの時刻設定動作を説明するための図である。このような動作は、計量器端末Uの新増設や移設などによる運用開始時、或いは停電からの復旧時などのレアケースで行われる。したがって、各端末A,B,C,D,Eの時計部13は、時刻同期フレームに内部時計UTを持っておらず(図7では不定の*で示す)、時刻t11で、ゲートウェイ3がNTPサーバ1aからの時刻同期フレームを受信して時刻同期を行い、時刻t12で、ゲートウェイ3が更新した時刻同期フレームを送信し、先ず端末Aが受信すると、時刻修正部18は、その時刻同期フレームで時計部13の内部時計UTを修正するとともに、その時刻同期フレームを、時刻t13で、直ちに転送(再送信)する。これによって、後段の端末Bとゲートウェイ3とで同じ時刻同期フレームを受信するけれど、ゲートウェイ3は前記NTPサーバ1aにしか同期を行わず、これを無視し、端末Bが時計部13を修正する。その後、時刻t14で、端末Bの時刻修正部18は、受信した時刻同期フレームを直ちに転送(再送信)し、前段の端末Aはそれを無視し、後段の端末Cが時計部13の内部時計UTを修正する。以降、同様の動作を繰返し、結果的にブロードキャスト送信の形態で、瞬時に時刻同期が行われる。
【0049】
このようにして、本実施の形態では、通常は、無線通信制御部12は、無線通信部11に1:1のマルチホップ無線通信で検針データや制御データを送受信させるところ、時刻修正部18が所定の発報タイミングで時刻同期フレームを送信する際には、該時刻修正部18は無線通信部11にマルチキャスト送信させ、前記無線通信部11で受信された情報が時刻同期フレームであるときは、前記時刻修正部18は、自機の時計部13が保有する時刻同期フレームと比較し、受信した時刻同期フレームの方が前記NTPサーバ1aにおける発報(生成)時刻T1が遅い場合には、その時刻同期フレームで前記時計部13の内部時計UTを修正する。また、前記時刻修正部18は、前記時計部13に時刻同期フレームの受信履歴がある状態で前記無線通信部11で前記マルチキャスト送信された時刻同期フレームを受信したとき、その時刻同期フレームについては、際限なく拡がらないように、受信しても周囲端末への転送は行わない。つまり、前記マルチキャストは、同一ネットワークに属する全端末へ配信を行うブロードキャストとは異なり、送信した電波が受信できる端末への配信に限られる。すなわち、ネットワークを構成する多くの計量器端末Uは、通常、たとえば図1では、参照符号A2→A1やA4→A3で示すように、NTPサーバ1aへの経路の上位側の端末からの時刻同期フレームで自機の時計を修正するようになるところ、その経路から外れた端末が周囲に存在し、その端末が保有する時刻同期フレームの方が新しく、当該時刻同期フレームを受信した場合、参照符号A10で示すように、自機の時計をそちらに合わせる。
【0050】
これによって、各計量器端末Uは、より新しい時刻同期フレームに同期していることになり、時計部13の精度を高めることができるとともに、たとえば車両の通過等による通常のNTPサーバ1aへの経路の通信障害などに対する耐性を高めることができる。また、NTPサーバ1aから通常のマルチホップの経路での時刻同期フレームの送信回数を増やす訳ではないので、時刻同期フレームによるネットワーク占有期間を抑え、検針データのスループットや応答性の低下に対する影響も小さく抑えることができる。
【0051】
また、このように時刻同期フレームによるネットワーク占有期間を抑えることは、前記無線通信部11が使用する無線LANでは、チャネル間隔が開いたチャネル間であっても、周波数遷移幅内に他のチャネルの信号が入り込んで干渉を生じる可能性があり、使用できるチャネル数があまり多くないので、特に効果的である。
【0052】
さらにまた、各計量器端末Uの時刻修正部18は、隣接端末からマルチキャスト送信された時刻同期フレームは、受信しても再送信しないことで、この再送信が際限なく拡がり、トラヒックが無闇に増加しないようにしているけれども、前記時刻同期フレームの受信履歴が無い状態で時刻同期フレームを受信した場合は、電源投入(起動)当初か、停電の後の再投入で、周囲端末の多くも時刻同期フレームは保有していない可能性が高いと判断して、このような場合には、前記時刻同期フレームを直ちに再送信するので、素早く各計量器端末Uの時計合せを行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態では、無線通信端末が、各需要家Hに設置される計量器端末Uであり、検針データを送信するので、積算電力量計などの前記計量器端末Uは、設置数が膨大であり、本実施の形態のようなデータ収集および時刻同期手法が特に有効である。
【符号の説明】
【0054】
1 サーバ装置
1a NTPサーバ
3 ゲートウェイ
4 有線ネットワーク
5 無線通信装置
6 端子台
7 負荷開閉器
8 電力量計
11 無線通信部
12 無線通信制御部
13 時計部
14,15 インタフェイス
16 機内通信制御部
17 メモリ
18 時刻修正部
H1,H2,・・・ 需要家
U1,U2,・・・ 計量器端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と、前記ホスト装置との間でマルチホップ方式の無線通信によって制御情報を送受信する複数の無線通信端末とを備えて構成され、
前記ホスト装置は、予め定めるタイミングで時刻情報を発報する時刻発生部を有し、
前記各無線通信端末は、
前記時刻情報を保有する時計部と、
前記制御情報の無線通信を行う無線通信部と、
前記時計部の時刻情報に基づいて動作を行い、前記無線通信部に自機で発生した前記制御情報を送信させるとともに、受信した制御情報を転送させる通信制御部と、
予め定めるタイミングで前記時計部の時刻情報を前記無線通信部から、電波到達範囲を配信対象とするマルチキャスト送信させるとともに、前記無線通信部で受信された情報が時刻情報であるとき、自機が保有する時刻情報と比較し、受信した時刻情報の方が前記ホスト装置における発報時刻が遅い場合には、その時刻情報で前記時計部の時刻を修正する時刻修正部とを備えることを特徴とするデータ収集システム。
【請求項2】
前記時刻修正部は、前記時計部に時刻情報の受信履歴が無い状態で前記無線通信部で前記マルチキャスト送信された時刻情報を受信したとき、その時刻情報を前記無線通信部に再送信させることを特徴とする請求項1記載のデータ収集システム。
【請求項3】
前記時刻修正部は、前記無線通信部で受信された情報が時刻情報であるとき、前記ホスト装置からのホップ数が予め定める基準値以上である場合には無視することを特徴とする請求項1または2記載のデータ収集システム。
【請求項4】
前記無線通信部は、無線LANの規格で前記マルチホップ無線通信およびマルチキャストの通信を行うことを特徴とする請求項1または2記載のデータ収集システム。
【請求項5】
前記無線通信端末は、各需要家に設置される計量器端末であり、前記制御情報は、検針データであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデータ収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−35699(P2011−35699A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180506(P2009−180506)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】