データ収集装置、粒子線治療装置及びデータ収集方法
【課題】多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することを目的とする。
【解決手段】多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備える。チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力する。
【解決手段】多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備える。チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や研究用に用いられる粒子線治療装置に関し、特にスポットスキャニングやラスタースキャニングといった走査型の粒子線治療装置における粒子線ビームのデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粒子線治療装置は、荷電粒子ビームを発生するビーム発生装置と、ビーム発生装置につながれ、発生した荷電粒子ビームを加速する加速器と、加速器で設定されたエネルギーまで加速された後に出射される荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、ビーム輸送系の下流に設置され、荷電粒子ビームを照射対象に照射するための粒子線照射装置とを備える。粒子線照射装置には大きく、荷電粒子ビームを散乱体で散乱拡大し、拡大した荷電粒子ビームを照射対象の形状にあわせて照射野を形成するブロード照射方式と、照射対象の形状に合わせるように、細いペンシル状のビームを走査して照射野形成するスキャニング照射方式(スポットスキャニング、ラスタースキャニング等)とがある。
【0003】
ブロード照射方式は、コリメータやボーラスを用いて患部形状に合う照射野を形成する。患部形状に合う照射野を形成し、正常組織への不要な照射を防いでおり、最も汎用的に用いられている、優れた照射方式である。しかし、患者ごとにボーラスを製作したり、患部に合わせてコリメータを変形させたりする必要がある。
【0004】
一方、スキャニング照射方式は、コリメータやボーラスが不要といった自由度の高い照射方式である。しかし、患部以外の正常組織への照射を防ぐこれら部品を用いないため、ブロード照射方式以上に高いビーム照射位置精度が要求される。
【0005】
特許文献1には、照射中の走査電磁石の設定電流値及びビーム位置モニタで検出したビーム位置データと記憶装置に記憶された変換テーブルの設定電流値及びビーム位置データとを比較し、照射中のビーム位置が正常か異常かを判定する異常判定装置を備え、異常判定装置が異常と判定した場合には、加速器制御装置が荷電粒子ビームの出射を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−296162号公報(0046段から0049段)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明においては、荷電粒子ビームの照射中にビーム位置モニタで検出したビーム位置データを用いて、異常判定装置が照射中のビーム位置が正常か異常かを判定し、異常と判定した場合には、加速器制御装置が荷電粒子ビームの出射を停止することが記載されているものの、ビーム位置モニタで検出したビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くかかる場合には、このビーム位置データの収集やデータ処理の時間に応じてビームの照射位置の移動を制御しなければならない。ビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くなれば、それに応じて照射時間が長くなる問題が生じる。
【0008】
ブロード照射方式においては、荷電粒子ビームの平坦度を測定するために平坦度モニタが使われるが、この平坦度モニタは例えば30チャンネル程度のデータを収集する。ブロード照射方式は、スキャニング照射方式のように荷電粒子ビームを患部形状に合わせて走査することはなく、1回の照射で照射野の形性を行うので、データの収集やデータ処理の速度はゆっくりとしたものだった。しかし、スキャニング照射方式はおいては、細いペンシル状のビームを走査して照射野を形成するので、多チャンネル型のモニタが使用される。ブロード照射方式で用いられる従来の平坦度モニタと同様のデータ収集装置、すなわち従来のビームデータの収集及び演算処理方法をスキャニング照射方式に適用すると、上述したようにビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くなり、それに応じて照射時間が長くなる問題が生じる。したがって、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することが要求される。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサと、マルチプレクサで選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器と、マルチプレクサ及びAD変換器を制御するチャンネル選択回路と、チャンネル選択回路を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビームの状態を演算するデータ収集演算回路を備える。チャンネル選択回路は、多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタを有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路に出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るデータ収集装置は、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御したので、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の粒子線治療装置の概略構成図である。
【図2】図1の粒子線照射装置を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図4】図3のチャンネル設定レジスタの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図6】図5のスキャン制御レジスタの構成を示す図である。
【図7】図5のスキャン制御レジスタによるスキャンパターンを示す図である。
【図8】図5のスキャン制御レジスタの他の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図10】図9のTB設定回路によるマルチプレクサのスイッチ開閉動作を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態4におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図13】図12のデュアルポートメモリにおけるADCデータ構成を示す図である。
【図14】図12のデュアルポートメモリにおけるポインタ構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態6におけるセンサ端子とセンサ入力端子の接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の粒子線治療装置の概略構成図である。粒子線治療装置51は、ビーム発生装置52と、ビーム輸送系59と、粒子線照射装置58a、58bとを備える。ビーム発生装置52は、イオン源(図示せず)と、前段加速器53と、シンクロトロン54とを有する。粒子線照射装置58bは回転ガントリ(図示せず)に設置される。粒子線照射装置58aは回転ガントリを有しない治療室に設置される。ビーム輸送系59の役割はシンクロトロン54と粒子線照射装置58a、58bの連絡にある。ビーム輸送系59の一部は回転ガントリ(図示せず)に設置され、その部分には複数の偏向電磁石55a、55b、55cを有する。
【0014】
イオン源で発生した陽子線等の粒子線である荷電粒子ビームは、前段加速器53で加速され、シンクロトロン54に入射される。荷電粒子ビームは、所定のエネルギーまで加速される。シンクロトロン54から出射された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系59を経て粒子線照射装置58a、58bに輸送される。粒子線照射装置58a、58bは荷電粒子ビームを被検体の照射対象9(図2参照)に照射する。
【0015】
図2は本発明の粒子線照射装置を示す構成図である。ビーム発生装置52で発生され、所定のエネルギーまで加速された荷電粒子ビーム1は、ビーム輸送系59を経由し、粒子線照射装置58へと導かれる。粒子線照射装置58は、荷電粒子ビーム1に垂直な方向であるX方向及びY方向に荷電粒子ビーム1を走査するX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3と、線量モニタ5と、線量データ変換器6と、多チャンネル型センサ装置22と、データ収集装置24と、走査電磁石電源7と、粒子線照射装置58の照射系を制御する照射制御装置8とを備える。なお、荷電粒子ビーム1の進行方向はZ方向である。
【0016】
X方向走査電磁石2は荷電粒子ビーム1をX方向に走査する走査電磁石であり、Y方向走査電磁石3は荷電粒子ビーム1をY方向に走査する走査電磁石である。多チャンネル型センサ装置22はX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3で走査された荷電粒子ビーム1が通過するビームにおけるビームピーク位置(通過位置)、ビーム強度、ビーム平坦度等を検出する。線量モニタ5は荷電粒子ビーム1の線量を検出する。照射制御装置8は、図示しない治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて、照射対象9における荷電粒子ビーム1の照射位置を制御し、線量モニタ5で測定され、線量データ変換器6でデジタルデータに変換された線量が目標線量に達すると荷電粒子ビーム1を停止する。走査電磁石電源7は照射制御装置8から出力されたX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3への制御入力(指令)に基づいてX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3の設定電流を変化させる。
【0017】
図3は本発明の実施の形態1におけるデータ収集装置の構成を示す図である。データ収集装置24には、多チャンネル型センサ装置22が有する全チャンネルを接続できるセンサ入力端子11と、このセンサ入力端子11と同数配置され、センサ入力端子11から得られる電流信号を電圧信号に変換する電流電圧変換器(IV変換器)12と、この電流電圧変換器12から出力される電圧信号を時分割多重化するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13により時分割多重化された電圧信号を順次デジタル信号に変換するためのAD変換処理を行うAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、AD変換器14でデジタル信号化したデータをセンサ検出レベルのセンサ原データとして収集し、センサ原データから荷電粒子ビーム1の状態すなわち、ビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等を演算するデータ収集演算回路17と、データメモリ25を有する。
【0018】
多チャンネル型センサ装置22は、メッシュ状にセンサ部が張り巡らされており、多数
の検出チャンネル(X方向、Y方向の各チャンネル)を有している。これら多数のチャンネルはアナログ信号として電流信号を出力する。多チャンネル型センサ装置22のXch(Xチャンネル)のアナログ信号はデータ収集装置24のセンサ入力端子11xaから11xmに接続され、Ych(Yチャンネル)のアナログ信号はデータ収集装置24のセンサ入力端子11yaから11ynに接続される。データ収集装置24のセンサ入力端子11ら入力された電流信号は、微小電流レベルにも対応した電流電圧変換器12により電流信号レベルに比例した電圧信号に変換される。
【0019】
チャンネル選択回路16は、AD変換されたデジタル信号を取り出すためのタイミング制御用のインターフェース回路15と、電圧信号を時分割多重化する際にデータ収集および演算に必要となるデジタル信号を予め選択するチャンネル設定レジスタ18を有する。データ収集演算回路17は、DSP(演算器)20とCPU(制御器)21を有し、荷電粒子ビーム1のビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等を演算した結果を照射制御装置8に送信する。
【0020】
センサ入力端子11と電流電圧変換器12の間は損失とノイズ障害を最小限に抑えるため、極力近接させた配置となっている。電流電圧変換器12により電圧信号に変換されたセンサ装置の多チャンネル信号は、マルチプレクサ13により時分割多重化される。この時分割多重化とは、マルチプレクサ13に内蔵されたアナログスイッチの開閉を制御し、並列接続された入力電圧信号を順次切り替えていくことでマルチプレクサ13の出力には電圧信号が直列に並んだ状態にすることである。この電圧信号をAD変換器14により、デジタル信号にAD変換処理を行う。そして、チャンネル選択回路16のインターフェース回路15は順次タイミング制御を行い、AD変換されたデジタル信号をAD変換器14から読み出す。これら一連の時分割多重化からAD変換されたデジタル信号を読み出す動作は、チャンネル選択回路16により制御される。
【0021】
図4はチャンネル設定レジスタの構成を示す図である。図4の例は、ビームピーク位置を演算するために、Xch、Ychはそれぞれ32chのデータを使用する例である。図4にはアドレスとその内容を記載した。アドレス1にはチャンネル選択回路16がデータ送信したチャンネル番号(CH番号)が記憶され、アドレス2にはAD変換中のチャンネル番号が記憶される。アドレス3から34にはデータ収集装置24のXchのうち選択された32チャンネルのチャンネル番号が記憶され、アドレス35から66にはデータ収集装置24のYchのうち選択された32チャンネルのチャンネル番号が記憶される。
【0022】
次にデータ収集装置24の動作を、スポットスキャニング照射方式を例にして説明する。スポットスキャニング照射方式の照射装置においては、照射対象9を照射するスポットが100万にも及ぶ。患者毎に作成されて治療計画における各スポットに対応した多チャンネル型センサ装置22における目標位置(目標通過位置)、ビームの大きさ等の計画データは、照射制御装置8からデータ収集演算回路17のCPU21によりデータメモリ25に記憶される(全計画スポットデータ記憶手順)。CPU21は、データメモリ25の1番目のスポットに対する計画データを参照し、1番目のスポットに対する多チャンネル型センサ装置22における目標位置をほぼ中央になるような多チャンネル型センサ装置22のチャンネル番号をXch及びYchのそれぞれ32chのチャンネル番号(選抜チャンネル設定データ)をチャンネル設定レジスタ18に書き込み(レジスタ選定手順)。
【0023】
荷電粒子ビーム1が照射され、多チャンネル型センサ装置22で検出した電流データが電流電圧変換器12に入力される。チャンネル選択回路16は、チャンネル設定レジスタ18のアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)にて指定されたチャンネル(選抜チャンネル)に対応するマルチプレクサ13のアナログスイッチを開く信号sigbをマルチプレクサ13に出力する(マルチプレクサ制御手順)。次にチャンネル選択回路16の内
部タイマまたは、コンデンサの電圧で所定の時間を待ち、AD変換器14へ変換開始指令sigaを送る(AD変換開始手順)。AD変換開始は、変換器により様々であるが、チャンネル選択回路16は採用するAD変換器の特徴に合わせて出力する。例えば、変換開始指令sigaは、変換開始信号を出力する(ある端子のレベルを変える等)、クロック信号を与える(クロック信号の立ち上がりで変換開始)、レジスタの変換ビットをセットするなどである。なお、所定の時間はAD変換器14のサンプルホールドのための時間経過である。AD変換データを生成するAD変換データ生成手順は、マルチプレクサ制御手順とAD変換開始手順を含んでいる。
【0024】
チャンネル選択回路16は、AD変換完了を検出する(完了タイミングを検出する方法は後述する)と、インターフェース回路15により直ちにAD変換器14からAD変換されたデジタル信号を読み出す。そしてAD変換器14の出力(パラレル出力、シリアル出力)形式からデータ収集演算回路17のデータ形式に応じた処理を行い、形式変換したセンサ原データをデータ収集演算回路17に送信する(データ送信手順)。AD変換器14がパラレル出力の場合はAD変換器14へ出力トリガとなる信号を出力し、AD変換器14からADCデータ(AD変換データ)を取り出す。AD変換器14がシリアル出力の場合は、出力トリガとなる信号とデータ出力のためのクロックを出力し、AD変換器14からADCデータを取り出す。
【0025】
データ収集演算回路17は、1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達するまで、DSP20によりチャンネル選択回路16から送られてくるADCデータをチャンネル毎に平均化する平均化演算を行う。1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達して、次のスポットに対する制御が開始されるまで、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18に記憶されたアドレス3から66の各チャンネルに対して、マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す。
【0026】
ここで、チャンネル設定レジスタ18を用いたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順の説明を詳述する。マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順にて、最初に指定されるチャンネルはアドレス3に記憶されたチャンネルである。レジスタ選定手順が実行された際に、アドレス3に記憶されたX0のチャンネル番号(図4参照)をアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)に転送する。チャンネル選択回路16は、アドレス2(AD変換中のチャンネル番号)にて指定されたチャンネルに対応した信号sigbを出力し(マルチプレクサ制御手順)、AD変換器14へ変換開始指令sigaを送る(AD変換開始手順)。チャンネル選択回路16は、AD変換完了を検出すると、データ収集演算回路17へセンサ原データを送信する(データ送信手順)と共に、アドレス2のAD変換中のチャンネル番号をアドレス1(データ送信チャンネル番号)に転送する。そしてアドレス4に記憶されたX1のチャンネル番号をアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)に転送する。この変更されたチャンネルのADCデータを得るようにマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順を実行する。以上の動作を次のスポットに対する制御が開始されるまで、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18に記憶されたアドレス3から66の各チャンネルに対して、マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す。
【0027】
1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達すると、線量データ変換器6から線量満了信号sigdが出力される。データ収集演算回路17は、線量満了信号sigdを受けて、DSP20においてチャンネル毎の平均化演算をやめ、Xch、Ychの電流強度のプロファイルデータからビームピーク位置(通過位置)、ビーム強度、ビーム径、ビーム平坦度等をDSP20にて演算し(演算手順)、演算した結果データを照射制御装置8に送信する(演算結果送信手順)。
【0028】
照射制御装置8は、データ収集演算回路17から結果データを受信すると、データ収集演算回路17のCPU21に次の(2番の)スポットのデータ処理を行うための次スポット指令(次データ収集指令)を送信する(次スポット移行手順(次データ移行手順))。CPU21は次スポット指令を受けると、データメモリ25の次の(2番目の)スポットに対する計画データを参照し、次の(2番の)スポットに対する多チャンネル型センサ装置22における目標位置をほぼ中央になるような多チャンネル型センサ装置22のチャンネル番号をXch及びYchのそれぞれ32chのチャンネル番号をチャンネル設定レジスタ18に書き込み。すなわち、次の(2番の)スポットに対するレジスタ選定手順を実行する。その後、この次の(2番の)スポットに対するマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順、演算手順、演算結果送信手順を実行し、最後のスポットまでの処理を繰り返す。マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順の動作は、チャンネル選択回路16を構成する同期式の回路(H/W、ハードウエア)で実行されるため、それぞれの処理間に待ち時間や割込みが生じない。なお、CPU21がチャンネル設定レジスタ18に新たな選抜チャンネル設定データを書き込んでいる最中は、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18にアクセスできないので、チャンネル選択回路16は次のチャンネルに対するマルチプレクサ制御手順の処理を行うことができず、中断する。
【0029】
AD変換の完了タイミングを検出する方法を説明する。AD変換が完了したタイミングは例えばタイマで時間を計測したり、AD変換器14内のステータスを監視(例えば、変換完了したらあるフラグが立つ)したりする。また、AD変換器14からチャンネル選択回路16に知らせる(ある端子の状態が変化する)、あるいはADCデータを読み出すためのクロックをAD変換器14に供給し、その何発目から有効データであると決めておくなどで、AD変換の完了タイミングを検出する。
【0030】
以上のように実施の形態1のデータ収集装置24は、チャンネル選択回路16とデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、マルチプレクサ13及びAD変換器14の制御を各チャンネルの処理時間に待ち時間や割込みが生じないように効率的に行うので、従来のブロード照射方式で用いられる従来の平坦度モニタと同様のデータ収集装置をスキャニング照射方式に適用した場合に比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0031】
一般的に、従来のブロード照射方式で用いられるデータ収集装置は、データ収集と演算に必要とすべきチャンネルを選択するにあたり、1つのCPUでマルチプレクサ13とAD変換器14の制御を都度各チャンネルの切り替え毎に実施していた。多チャンネル型センサ装置のチャンネル数が増加すると、CPUの制御負荷が増加することで、データ収集装置の処理速度を十分に上げることができないという問題が生じる。しかしながら、実施の形態1のデータ収集装置24は、チャンネル選択回路16とデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16はマルチプレクサ13及びAD変換器14の制御を行うので、多チャンネル型センサ装置22のチャンネル数が増加しても、データ収集演算回路17の制御負荷が増加することを抑えることができ、データ収集装置24の処理速度を十分に上げることができる。
【0032】
スキャニング照射方式においては、荷電粒子線ビーム1の状態は照射対象(患部)9の状態や大きさなどで異なり、各スポットの目標線量、すなわち各スポット間の変化時間を変化させる必要がある。例えば、変化時間が数百ms程度の場合もあれば、100μs程度
の場合もある。実施の形態1のデータ収集装置24は、各スポットに対応して多チャンネル型センサ装置22のデータを少ない使用チャンネル、例えばXch、Ychそれぞれ3
2チャンネル(合計64チャンネル)分のADCデータをデータ収集演算回路17にて演算するので、スポット毎の荷電粒子線ビーム1の状態を高速に演算することができる。また、各チャンネルのADCデータが複数個になったと場合でも、データ収集演算回路17はAD変換データが送られてくる度に各チャンネルのADCデータを平均化する演算をDSP20にて行い、線量が目標線量になった際に荷電粒子線ビーム1の状態を、その時点における使用チャンネル(64チャンネル)毎の平均化されたデータを用いて演算するので、荷電粒子線ビーム1の状態を高速に演算することができる。
【0033】
なお、次スポット移行手順は、データ収集演算回路17から結果データを受信すると照射制御装置8がデータ収集演算回路17のCPU20に次スポット指令を送信する例で説明したが、照射制御装置8は、線量データ変換器6からの線量満了信号sigdを受けたると、データ収集演算回路17からの結果データを受信する前であってもCPU20に次スポット指令を送信してもよい。この場合は、データ収集演算回路17のDSP20が演算中であっても、CPU21が次のスポット対応のチャンネル番号データをチャンネル設定レジスタ18に書き込む(レジスタ選定手順)ので、チャンネル選択回路16はデータ収集演算回路17の演算終了を待たずに、すなわち遅延無く、次のスポット対応のADCデータをデータ収集演算回路17に入力(図示しないメモリにADCデータを貯める)する。したがって、さらにビームデータの演算結果を得る時間を短縮することができる。
収集や演算処理を高速化することができる。
【0034】
以上のように実施の形態1のデータ収集装置24によれば、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、チャンネル選択回路16を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力するので、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0035】
実施の形態1のデータ収集方法は、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータをAD変換器14によりデジタル信号に変換しAD変換データを生成するAD変換データ生成手順と、AD変換データ生成手順で生成されたAD変換データをデータ収集演算回路17に送信するデータ送信手順と、データ送信手順により送信された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態をデータ収集演算回路17により演算する演算手順とを含み、AD変換データ生成手順において、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルから選抜された選抜チャンネルの情報に基づいて、選抜チャンネルのAD変換データを生成するので、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0036】
実施の形態1の粒子線治療装置は、荷電粒子ビーム1を発生させ、この荷電粒子ビーム1を加速器54で加速させるビーム発生装置52と、加速器54により加速された荷電粒
子ビーム1を輸送するビーム輸送系59と、ビーム輸送系59で輸送された荷電粒子ビーム1を照射対象9に照射する粒子線照射装置58とを備え、粒子線照射装置58は、照射対象9に照射する荷電粒子ビーム1を走査する走査電磁石2、3と、走査電磁石2、3で走査された荷電粒子ビーム1の状態を演算し収集するデータ収集装置24を有する。データ収集装置24は、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、チャンネル選択回路16を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力するので、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができ、治療時間を短くすることができる。
【0037】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態1のデータ収集装置24(24a)とは、チャンネル選択回路16(16b)がスキャン制御レジスタ19を有する点で異なる。スキャン制御レジスタ19に設定された始点と終点の間をマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す(スキャンする)ことができる。以下に説明する。
【0038】
図6はスキャン制御レジスタの構成を示す図であり、図7はスキャン制御レジスタによるスキャンパターンを示す図である。スキャン制御レジスタ19は、Xch及びYchのそれぞれ始点と終点のチャンネル情報(始点チャンネル、終点チャンネルの情報)が設定される。具体的にはチャンネル設定レジスタ18に記憶されたチャンネル番号に対応したアドレスが、スキャン制御レジスタ19に記憶される。図5に示した例では、Xchの始点(スキャン始点X)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス3が記憶され、すなわちX0のチャンネル番号(図4参照)である。同様に、Xchの終点(スキャン終点X)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス34が記憶され、すなわちX31のチャンネル番号ある。Ychの始点(スキャン始点Y)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス35が記憶され、すなわちY0のチャンネル番号ある。Ychの終点(スキャン終点Y)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス66が記憶され、すなわちY31のチャンネル番号ある。図6の例ではチャンネル設定レジスタ18に記憶された全チャンネルをスキャンする例となっている。
【0039】
図7の横軸はスキャン順序であり、縦軸はチャンネルである。スキャン制御レジスタ19で設定されたチャンネル区間41が矢印(スキャンパターン)42に示すように、チャンネル区間41a、41b、41c、41dと繰り返し実施することを示している。4つのチャンネル区間41a、41b、41c、41dがスキャンされた時には、スキャン区間の各チャンネルは4回データの収集が行われたことになる。
【0040】
動作を説明する。全計画スポットデータ記憶手順において、各スポットに対応したデータ収集するチャンネル数(例えばXch、Ychそれぞれ16チャンネルなど)もデータメモリ25に記憶される。レジスタ選定手順において、CPU21は、データメモリ25を参照し、1番目のスポットに対するデータ収集するチャンネル数と目標位置に基づいて、スキャン始点X、スキャン終点X、スキャン始点Y、スキャン終点Yの情報をスキャン制御レジスタ19に書き込む。チャンネル選択回路16(16b)は、データ収集演算回路17からスキャンスタートの指示を受けることで、チャンネル設定レジスタ18に設定されたチャンネル番号が全て時分割多重化されるまで自動的にマルチプレクサ13内蔵のアナログスイッチを順次開閉制御するスキャン動作を行う。チャンネル選択回路16(16b)は、スキャンスタートの指示を受け、スキャン制御レジスタ19のスキャン始点Xにしてされた情報を読み出し、該当するチャンネル設定レジスタ18のチャンネルに対応させたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を行う。この動作をスキャン終点Xに示された情報に基づくチャンネル設定レジスタ18のチャンネルに対応させたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を行い、スキャン始点Yからスキャン終点Yまでの動作も同様に行う。
【0041】
実施の形態2のデータ収集装置24bは、チャンネル選択回路16bのチャンネル設定レジスタ18に設定されたチャンネル数から限定したチャンネル数にて多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を行うので、必要最小限の数だけビームデータの処理を行い、実施の形態1のチャンネル選択回路16aよりもビームデータの収集や演算処理の時間を短縮することができる。
【0042】
また、チャンネル選択回路16bは、データ収集演算回路17からのスキャン停止指示があるまでスキャン動作を繰り返し続けるようにしてもよい。この場合は、保守作業の場合に繰り返しデータ収集を行うことができ、データ収集演算回路17におけるデータの平均化するデータ数を容易に変更できる。したがって、保守作業を効率的に行うことができる。
【0043】
また、スキャン制御レジスタ19にスキャンする方向を追加してもよい。図8はスキャン制御レジスタの他の構成を示す図である。図6に示したスキャン制御レジスタにスキャン制御X及びスキャン制御Yが追加される。スキャン制御X及びスキャン制御Yには、それぞれスキャン方向を示す情報が設定される。00は始点から終点へ順番にスキャンすることを示し、01は終点から始点へ順番にスキャンすることを示し、10は始点から終点の間を始点側と終点側で交互に行うことを示す。スキャンする方向を追加することで、保守作業におけるスキャン方向の違いによる調整の必要性の判断を容易に行うことができ、保守作業を効率的に行うことができる。また多チャンネル型センサ装置22の隣接チャンネル漏洩や測定結果の再現性検証等を行うことができる。なお、スキャンする方向はスポット毎に変更しても構わない。
【0044】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態2のデータ収集装置24(24b)とは、チャンネル選択回路16(16c)がTB設定回路(タイムベース設定回路)31を有し、マルチプレクサ13(13b)が放電機能を備えたアナログスイッチ26を有する点で異なる。実施の形態1のデータ収集装置24(24a)や実施の形態2のデータ収集装置24(24b)に比べて、チャンネル毎にAD変換器14へ入力する電圧信号の安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間を最適化することができる。以下に説明する。
【0045】
マルチプレクサ13bは、センサ入力端子11と同数のアナログスイッチを有する。図9では、アナログスイッチ26は、Xchに対応してアナログスイッチ26xaから26xmまであり、Ychに対応してアナログスイッチ26yaから26xnまである場合を示している。アナログスイッチ26は、電流電圧変換器12に接続された端子とGND(グランドレベル)に接続された端子を有する。図10を用いてTB設定回路31とマルチプレクサ13bの動作を説明する。
【0046】
図10はTB設定回路によるマルチプレクサのスイッチ開閉動作を説明する図である。
マルチプレクサ13に内蔵されたアナログスイッチSW(1)、SW(2)〜SW(N)におけるTB設定回路31による開閉動作の遷移を示した。アナログスイッチSW(1)はアナログスイッチ26xaであり、アナログスイッチSW(2)は次のアナログスイッチ26xb(図示せず)であり、アナログスイッチSW(N)は最後のアナログスイッチ26ynである。図10に示したS1からS5は複数のアナログスイッチSWのタイミングである。図10では、状態S1からS5の繰り返し期間(27a、27b)が2つある範囲を示している。
【0047】
TB設定回路31は6つの状態を遷移するステートマシンと、その状態毎に制御信号を出力する回路である。TB設定回路31のステートマシンは、例えば、タイマで時間をカウントし、所定に時間になったら状態を遷移させる。TB設定回路31は、次の状態に遷移した際に、制御信号を出力する。ここでは、SW(1)(適宜アナログスイッチを省略して表記する)、SW(2)を例として電流電圧変換器12からの電圧信号の内、チャンネル1からチャンネル3を順次時分割多重する動作を説明するが、それ以降のSW(N)までの動作は同じ繰り返しである。
【0048】
タイミングS1(繰り返し期間27a):SW(1)を電圧信号入力側にスイッチする。それ以外のSW(2)とSW(3)はスイッチ開放状態を保つ。
【0049】
タイミングS2(繰り返し期間27a):チャンネル選択回路16のインターフェース回路15によりAD変換器14にAD変換指示が出るタイミングを示す。SW(1)は電圧信号が立ち上がり、電圧が十分安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間が経過するまで電圧信号入力側にスイッチされる。
【0050】
タイミングS3(繰り返し期間27a):インターフェース回路15によりAD変換器14からAD変換されたデジタル信号が取り出される。
【0051】
タイミングS4(繰り返し期間27a):タイミングS3の動作が完了するまで、少しガード時間を設けて、SW(1)はGND側にスイッチされる。これにより、マルチプレクサ13とAD変換器14の間の容量成分により滞留している電圧を放電する。そして、次のSW(2)が電圧信号入力側にスイッチされた際に、電圧信号が不安定となる事象を除去する。
【0052】
タイミングS5(繰り返し期間27a):SW(1)をスイッチ開放する。
【0053】
タイミングS1(繰り返し期間27b):SW(1)をスイッチ開放してから、SW(2)を電圧信号入力側にスイッチする。この時、SW(2)の出力側がSW(1)のGNDに短絡することを回避するため、少しの保護時間を設ける。
【0054】
タイミングS2(繰り返し期間27b):インターフェース回路15によりAD変換器14にAD変換指示が出るタイミングを示す。SW(2)は電圧信号が立ち上がり、電圧が十分安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間が経過するまで電圧信号入力側にスイッチされる。
【0055】
以降、同様にタイミングS3〜S5はTB設定回路31によってアナログスイッチSW(2)が制御される。
【0056】
実施の形態3のデータ収集装置24cは、チャンネル毎にAD変換器14へ入力する電圧信号の安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間を最適化することができる。各チャンネルの入力レンジが予め大きく違うと分かってい
た場合には、各チャンネルの安定時間が異なるので、早く安定するチャンネルに対しては各タイミングを時間が短くなるように設定し、少し遅く安定するチャンネルに対しては各タイミングを精度が確保できるタイミングに設定することで、対象のチャンネルを全て測定する時間を短かくすることができる。したがって、実施の形態1のデータ収集装置24(24a)や実施の形態2のデータ収集装置24(24b)に比べて、アナログスイッチのタイミングを個別に調整でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0057】
早く安定するチャンネルに対しては各タイミングを時間が短くなるように設定し、少し遅く安定するチャンネルに対しては各タイミングを精度が確保できるタイミングに設定するには、例えばチャンネル設定レジスタ18のデータにタイミング変更用の情報を付加する。TB設定回路31は、このタイミング変更用の情報に基づいて各タイミングを変更する。
【0058】
また、マルチプレクサ13(13b)は、放電機能を備えたアナログスイッチ26を有するので、AD変換器14とマルチプレクサ13(13b)間の残存電圧を放電するので、残存電圧が残ることで生じる電流電圧変換器12に影響を排除することがでる。
【0059】
TB設定回路31と放電機能を備えたアナログスイッチ26を有するマルチプレクサ13(13b)を用いることで、AD変換器14の入力安定度を高め(安定時間を短縮)、チャンネル間を移動するときに、電流電圧変換器12の保護を両立させることができる。
【0060】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4におけるデータ収集装置の構成を示す図である。本実施の形態は、実施の形態2で示す多チャンネル型センサ装置22のチャンネル毎のアナログ信号を、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成するようにして全チャンネルが複数のグループG(1)〜G(n)に分割されたものである。実施の形態4におけるデータ収集装置24dは、実施の形態2のデータ収集装置24bとは、グループ毎にAD変換ユニット29(29aから29n)を有し、選択統括回路32が追加され、AD変換ユニット29に制御設定レジスタ36を内蔵したチャンネル選択回路16(16d)を有し、データ収集演算回路17(17b)に入力バッファメモリ28が有る点で異なる。
【0061】
グループ毎に独立したAD変換ユニット29(29aから29n)は、それぞれ電流電圧変換器12と、マルチプレクサ13と、AD変換器14と、チャンネル選択回路16dとを有する。各グループのAD変換ユニット29(29aから29n)によるAD変換処理が同時並行的に進行するように構成されている。選択統括回路32は、各グループに独立しているチャンネル選択回路16dを束ねて管理する。具体的には、チャンネル選択回路16dは、保守作業の際に各グループのAD変換ユニット29のデータ収集方法を設定する。分割された全チャンネルのグループにおいて各グループによるAD変換処理が同時並行的に進行しながら、グループ間毎に異なるパターンの時分割多重化を設定できる。また、データ収集演算回路17(17b)は各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14の出力するデジタル信号を入力バッファメモリ28に並行して取り込む。以下に動作を説明する。
【0062】
図11に示す選択統括回路32は、複数個のグループG(1)〜G(n)に分割された個々のグループに独立して具備されるチャンネル選択回路16の全てを個別に制御する。制御設定レジスタ36は、チャンネル設定レジスタ18、スキャン制御レジスタ19に設定されるデータを変更する情報を設定する。制御設定レジスタ36に設定されるデータは、通常の治療時の設定と保守作業に使用する設定を含んでいる。例えば、制御設定レジスタ36は、偶数チャンネルのみ収集、奇数チャンネルのみ収集、単一チャンネルの繰り返しループを実施、全チャンネルスキャンの繰り返しループを実施する等を設定するように多ビットで構成される。
【0063】
通常の治療の場合には、制御設定レジスタ36には、通常の治療時の設定がされる。スポットに応じて、複数のグループに跨ったデータを収集する場合がある。複数のグループに跨った場合には、該当する複数のグループにおいて、チャンネル設定レジスタ18、スキャン制御レジスタ19がそれぞれ設定される。通常の治療の場合の動作は実施の形態1や実施の形態2と同様である。実施の形態4のデータ収集装置24dはグループ分割数のデータ信号を同時に得ることができるので、実施の形態1や実施の形態2に比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0064】
次に保守作業の場合について説明する。選択統括回路32は、例えば、各グループによるAD変換処理が同時並行的に進行しながら、グループG(1)は偶数チャンネルのみ、グループG(2)は奇数チャンネルのみ、グループG(3)は単一チャンネルの繰り返しループ、そしてグループG(4)は全チャンネルスキャンの動作を行うという設定や、全グループG(1)〜G(n)が同一のスキャン動作、ループ動作をするように制御する。具体的には、選択統括回路32は、グループ毎のデータ収集の仕方を指示したグループ設定指令をデータ収集演算回路17bのCPU21をより取得する。選択統括回路32は、データ収集演算回路17bからトリガ信号を受けると、グループ設定指令の内容に基づいて、各グル―プの制御設定レジスタ36に該当する設定を行う。各グル―プのチャンネル選択回路16dは制御設定レジスタ36に設定された情報に基づいて、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御する。
【0065】
実施の形態4のデータ収集装置24dは、グループ毎にデータ収集の仕方を変えられるので、グループ毎に多チャンネル型センサ装置22の隣接チャンネル漏洩や測定結果の再現性検証等を行うことができる。したがって、保守作業を効率的に行うことができる。
【0066】
実施の形態5.
図12は本発明の実施の形態5におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態4のデータ収集装置24(24d)とは、データ収集演算回路17bをデータ収集演算回路17aに変更し、入力バッファ回路33を有する点で異なる。入力バッファ回路33は、入力メモリ37、制御回路34、デュアルポートメモリ35を有する。データ収集演算回路17aは各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14の出力するデジタル信号を入力バッファ回路33から取得する。
【0067】
図13はデュアルポートメモリにおけるADCデータ構成を示す図であり、図14はデュアルポートメモリにおけるポインタ構成を示す図である。デュアルポートメモリ35は、グリープ番号(G番号)と出力チャンネル番号(出力CH番号)毎に決められたアドレスが指定され、そのアドレスにADC出力データが記憶される。またデュアルポートメモリ35は、図14に示しようにADC出力データが記憶される領域以外のアドレスにポインタ情報を記憶するポインタ領域を有する。ポインタ情報は、各グループ(1からN)の最後に更新された(最新の)出力チャンネル番号である。
【0068】
次に動作を説明する。入力バッファ回路33は、各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14が出力するデジタル信号を各グループG(1)〜G(n)のインターフェース回路15を介して、入力メモリ37に並行入力される。入力バッファ回路33の入力メモリ37はどのグループの信号と接続するかを予め個々に決められており、各グループG(1)〜G(n)のデジタル信号を取り間違えることがないように配慮されている。入力メモリ37は、グループ毎にデュアルポートメモリ35にデータを転送したことを示すフラグ情報(フラグビット)を有する。例えば、16ビット構成のメモリであれば、1アドレスの16ビットの各ビットにグループを割り当てて、16グループのフラグ情報を記憶することができる。また、各AD変換ユニット29が送信してくるADC出力データにはチャンネル番号を示すヘッダが付加される。デュアルポートメモリ35は、入力側、出力側がそれぞれ1ポートである。
【0069】
制御回路34は、入力メモリ37に記憶されたデータを読み出し、そのヘッダに示されたチャンネル番号に対応したデュアルポートメモリ35の該当するグループのアドレスにADC出力データ(ヘッダは含まないデータ)を転送する。制御回路34は、転送が終了したグループに対応したフラグ情報を書き込み。制御回路34は、AD変換ユニット29から送信されたADC出力データを入力メモリ37に記憶した際にフラグ情報を1にし、転送が終了した際にフラグ情報を0にする。また、フラグ情報に1が記憶された対応するアドレスには上書きを防止するために、禁止回路を設ける。例えば、各ビットにANDゲートを介して入力するようにし、さらに上書きが禁止されたアドレスにADCデータが送られてきた場合に、ビジーを示しビジー信号を制御回路34に送るようにする。制御回路34は、ビジー信号を受けて、選択統括回路32に該当するグループのAD変換ユニット29のデータ処理を停止させる処理停止信号を送る。選択統括回路32は、処理停止信号を受けて、該当するグループのAD変換ユニット29のチャンネル選択回路16dに処理を停止する停止指令を送る。停止指令を受けた当該チャンネル選択回路16dは、再回指令を受けるまで処理を停止する。
【0070】
制御回路34は、停止指令を出したグループのADCデータをデュアルポートメモリ35に転送した後に、フラグ情報を0にすると、禁止回路からビジー信号が解除される。制御回路34は、ビジー信号の解除を受けて、選択統括回路32に該当するグループのAD変換ユニット29のデータ処理を再開させる再回指令信号を送る。選択統括回路32は、再回指令信号を受けて、該当するグループのAD変換ユニット29のチャンネル選択回路16dに処理を再開する再回指令を送る。再回指令を受けた当該チャンネル選択回路16dは、処理を再開する。
【0071】
次にデータ収集演算回路17の動作を説明する。データ収集演算回路17は、デュアルポートメモリ35からADCデータを読み出す際に、読み出すアドレス毎にグループ番号(G番号)と出力チャンネル番号(出力CH番号)が決められているので、グループ番号とチャンネル番号の組み合わせを把握することが可能となる。データ収集演算回路17は、デュアルポートメモリ35の予め決められたアドレス(メモリマップ)を参照することで、多チャンネル型センサ装置22のチャンネル毎のアナログ信号情報を得ることができるようになる。入力バッファ回路33が順次デュアルポートメモリ35を更新していくので、データ収集演算回路17は自身の決まったタイミングでデュアルポートメモリ35にアクセスすればよい。
【0072】
したがって、実施の形態5のデータ収集装置24eは、入力メモリ37とアクセス衝突がないデュアルポートメモリ35を設けた入力バッファ回路33により、データ収集の効率化を図ることができる。実施の形態4のデータ収集装置24dに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0073】
また、入力バッファ回路33は、デュアルポートメモリ35を更新する際に、ポインタ領域に各グループ番号においてどのチャンネル番号が最後に更新されたかを示すポインタ情報を書き込み。データ収集演算回路17はポインタ情報を参照することで、ある時点での最新データがどのチャンネル番号であるかの情報を得ることができるようになる。
【0074】
実施の形態6.
粒子線照射装置58が照射する荷電粒子ビーム1のビーム位置やビーム重心等を演算しようとする場合、多チャンネル型センサ装置22の出力するチャンネル毎のアナログ信号において、連続したチャンネルの情報が同時に必要となる。実施の形態4及び5では、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成するようにして全チャンネルを複数のグループG(1)〜G(n)に分割した場合であったが、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成すると、連続したチャンネルの情報が複数のグループに跨り、一部のデータが遅くなる場合がある。このようになると演算処理を止めなければならなくなり(データ待ちに時間が生じ)、処理時間が長くなってしまう。この問題を解決するために、隣り合うチャンネルは必ず異なるグループに配分して全チャンネルが複数のグループG(1)〜G(n)に分割されるようにする。こうすることで、演算処理を止めることなく、グループ総数と同じ数だけの隣接チャンネル数を同時並行的にAD変換処理ができる。
【0075】
図15は、本発明の実施の形態6におけるセンサ端子とセンサ入力端子の接続を示す図である。図15は、多チャンネル型センサ装置22の出力するセンサ端子40のチャンネル数が9つあり、ビーム位置やビーム重心等を演算するために隣り合うチャンネルが同時に3つ必要な場合の接続例である。図15に示すように、1次元(XchまたはYch)の隣り合うチャンネルを必ず異なるグループに配分することで、必要とする隣り合うチャンネルを全て同時並行的にAD変換処理ができるので、ビーム位置やビーム重心等の演算結果を短時間で得ることができる。
【0076】
例えば、荷電粒子ビーム1のスポットの状態(ビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等)を演算するのにXch、Ychはそれぞれ32chのデータを使用する場合で説明する。実施の形態4または実施の形態5のデータ収集装置24はXch用、Ych用に2つを使用する。Xch、Ychはそれぞれ32chのデータを収集するので、32グループに分けて、図15に示したようにセンサ端子40とセンサ入力端子11を接続する。このようにすることで、Xch及びYchのそれぞれについて、32chの全てを同時並行的にAD変換処理ができる。したがって、1回のAD変換処理時間と演算処理時間でスポットの状態を得ることができる。
【0077】
実施の形態6のデータ収集装置24(24f)は、実施の形態4のデータ収集装置24dに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。また、実施の形態6のデータ収集装置24(24f)は、実施の形態5のデータ収集装置24eに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0078】
なお、実施の形態1から実施の形態6の内容は、矛盾がない範囲でそれぞれ組み合わせて適用することができる。また、スポットスキャンニング照射方式で説明したが、荷電粒子ビームを停止させずに一筆書きのように走査するラスタースキャニング照射方式にも適用できる。スポットスキャニング照射方式とラスタースキャニング照射方式の両方のメリットを取り入れようとした中間の照射方式(ビームを停止させずにスポット毎に移動させる方式、ハイブリッドスキャニング照射方式と呼ぶことにする)にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1…荷電粒子ビーム、2…X方向走査電磁石、3…Y方向走査電磁石、8…照射制御装置、9…照射対象、13、13a、13b…マルチプレクサ、14…AD変換器、16、16a、16b、16c、16d…チャンネル選択回路、17、17a、17b…データ収集演算回路、18…チャンネル設定レジスタ、19…スキャン制御レジスタ、21…CPU、22…多チャンネル型センサ装置、24、24a、24b、24c、24d、24e、24f…データ収集装置、25…データメモリ、26、26xa、26xm、26ya、26yn…アナログスイッチ、28…入力バッファメモリ、29、29a、29b、29c、29n…AD変換ユニット、31…TB設定回路、32…選択統括回路、33…入力バッファ回路、34…制御回路、35…デュアルポートメモリ、36…制御設定レジスタ、37…入力メモリ、51…粒子線治療装置、52…ビーム発生装置、54…シンクロトロン、58、58a、58b…粒子線照射装置、59…ビーム輸送系。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や研究用に用いられる粒子線治療装置に関し、特にスポットスキャニングやラスタースキャニングといった走査型の粒子線治療装置における粒子線ビームのデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粒子線治療装置は、荷電粒子ビームを発生するビーム発生装置と、ビーム発生装置につながれ、発生した荷電粒子ビームを加速する加速器と、加速器で設定されたエネルギーまで加速された後に出射される荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、ビーム輸送系の下流に設置され、荷電粒子ビームを照射対象に照射するための粒子線照射装置とを備える。粒子線照射装置には大きく、荷電粒子ビームを散乱体で散乱拡大し、拡大した荷電粒子ビームを照射対象の形状にあわせて照射野を形成するブロード照射方式と、照射対象の形状に合わせるように、細いペンシル状のビームを走査して照射野形成するスキャニング照射方式(スポットスキャニング、ラスタースキャニング等)とがある。
【0003】
ブロード照射方式は、コリメータやボーラスを用いて患部形状に合う照射野を形成する。患部形状に合う照射野を形成し、正常組織への不要な照射を防いでおり、最も汎用的に用いられている、優れた照射方式である。しかし、患者ごとにボーラスを製作したり、患部に合わせてコリメータを変形させたりする必要がある。
【0004】
一方、スキャニング照射方式は、コリメータやボーラスが不要といった自由度の高い照射方式である。しかし、患部以外の正常組織への照射を防ぐこれら部品を用いないため、ブロード照射方式以上に高いビーム照射位置精度が要求される。
【0005】
特許文献1には、照射中の走査電磁石の設定電流値及びビーム位置モニタで検出したビーム位置データと記憶装置に記憶された変換テーブルの設定電流値及びビーム位置データとを比較し、照射中のビーム位置が正常か異常かを判定する異常判定装置を備え、異常判定装置が異常と判定した場合には、加速器制御装置が荷電粒子ビームの出射を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−296162号公報(0046段から0049段)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明においては、荷電粒子ビームの照射中にビーム位置モニタで検出したビーム位置データを用いて、異常判定装置が照射中のビーム位置が正常か異常かを判定し、異常と判定した場合には、加速器制御装置が荷電粒子ビームの出射を停止することが記載されているものの、ビーム位置モニタで検出したビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くかかる場合には、このビーム位置データの収集やデータ処理の時間に応じてビームの照射位置の移動を制御しなければならない。ビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くなれば、それに応じて照射時間が長くなる問題が生じる。
【0008】
ブロード照射方式においては、荷電粒子ビームの平坦度を測定するために平坦度モニタが使われるが、この平坦度モニタは例えば30チャンネル程度のデータを収集する。ブロード照射方式は、スキャニング照射方式のように荷電粒子ビームを患部形状に合わせて走査することはなく、1回の照射で照射野の形性を行うので、データの収集やデータ処理の速度はゆっくりとしたものだった。しかし、スキャニング照射方式はおいては、細いペンシル状のビームを走査して照射野を形成するので、多チャンネル型のモニタが使用される。ブロード照射方式で用いられる従来の平坦度モニタと同様のデータ収集装置、すなわち従来のビームデータの収集及び演算処理方法をスキャニング照射方式に適用すると、上述したようにビーム位置データの収集やデータ処理の時間が長くなり、それに応じて照射時間が長くなる問題が生じる。したがって、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することが要求される。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサと、マルチプレクサで選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器と、マルチプレクサ及びAD変換器を制御するチャンネル選択回路と、チャンネル選択回路を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビームの状態を演算するデータ収集演算回路を備える。チャンネル選択回路は、多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタを有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路に出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るデータ収集装置は、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御したので、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の粒子線治療装置の概略構成図である。
【図2】図1の粒子線照射装置を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図4】図3のチャンネル設定レジスタの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図6】図5のスキャン制御レジスタの構成を示す図である。
【図7】図5のスキャン制御レジスタによるスキャンパターンを示す図である。
【図8】図5のスキャン制御レジスタの他の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図10】図9のTB設定回路によるマルチプレクサのスイッチ開閉動作を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態4におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5におけるデータ収集装置の構成を示す図である。
【図13】図12のデュアルポートメモリにおけるADCデータ構成を示す図である。
【図14】図12のデュアルポートメモリにおけるポインタ構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態6におけるセンサ端子とセンサ入力端子の接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の粒子線治療装置の概略構成図である。粒子線治療装置51は、ビーム発生装置52と、ビーム輸送系59と、粒子線照射装置58a、58bとを備える。ビーム発生装置52は、イオン源(図示せず)と、前段加速器53と、シンクロトロン54とを有する。粒子線照射装置58bは回転ガントリ(図示せず)に設置される。粒子線照射装置58aは回転ガントリを有しない治療室に設置される。ビーム輸送系59の役割はシンクロトロン54と粒子線照射装置58a、58bの連絡にある。ビーム輸送系59の一部は回転ガントリ(図示せず)に設置され、その部分には複数の偏向電磁石55a、55b、55cを有する。
【0014】
イオン源で発生した陽子線等の粒子線である荷電粒子ビームは、前段加速器53で加速され、シンクロトロン54に入射される。荷電粒子ビームは、所定のエネルギーまで加速される。シンクロトロン54から出射された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系59を経て粒子線照射装置58a、58bに輸送される。粒子線照射装置58a、58bは荷電粒子ビームを被検体の照射対象9(図2参照)に照射する。
【0015】
図2は本発明の粒子線照射装置を示す構成図である。ビーム発生装置52で発生され、所定のエネルギーまで加速された荷電粒子ビーム1は、ビーム輸送系59を経由し、粒子線照射装置58へと導かれる。粒子線照射装置58は、荷電粒子ビーム1に垂直な方向であるX方向及びY方向に荷電粒子ビーム1を走査するX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3と、線量モニタ5と、線量データ変換器6と、多チャンネル型センサ装置22と、データ収集装置24と、走査電磁石電源7と、粒子線照射装置58の照射系を制御する照射制御装置8とを備える。なお、荷電粒子ビーム1の進行方向はZ方向である。
【0016】
X方向走査電磁石2は荷電粒子ビーム1をX方向に走査する走査電磁石であり、Y方向走査電磁石3は荷電粒子ビーム1をY方向に走査する走査電磁石である。多チャンネル型センサ装置22はX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3で走査された荷電粒子ビーム1が通過するビームにおけるビームピーク位置(通過位置)、ビーム強度、ビーム平坦度等を検出する。線量モニタ5は荷電粒子ビーム1の線量を検出する。照射制御装置8は、図示しない治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて、照射対象9における荷電粒子ビーム1の照射位置を制御し、線量モニタ5で測定され、線量データ変換器6でデジタルデータに変換された線量が目標線量に達すると荷電粒子ビーム1を停止する。走査電磁石電源7は照射制御装置8から出力されたX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3への制御入力(指令)に基づいてX方向走査電磁石2及びY方向走査電磁石3の設定電流を変化させる。
【0017】
図3は本発明の実施の形態1におけるデータ収集装置の構成を示す図である。データ収集装置24には、多チャンネル型センサ装置22が有する全チャンネルを接続できるセンサ入力端子11と、このセンサ入力端子11と同数配置され、センサ入力端子11から得られる電流信号を電圧信号に変換する電流電圧変換器(IV変換器)12と、この電流電圧変換器12から出力される電圧信号を時分割多重化するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13により時分割多重化された電圧信号を順次デジタル信号に変換するためのAD変換処理を行うAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、AD変換器14でデジタル信号化したデータをセンサ検出レベルのセンサ原データとして収集し、センサ原データから荷電粒子ビーム1の状態すなわち、ビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等を演算するデータ収集演算回路17と、データメモリ25を有する。
【0018】
多チャンネル型センサ装置22は、メッシュ状にセンサ部が張り巡らされており、多数
の検出チャンネル(X方向、Y方向の各チャンネル)を有している。これら多数のチャンネルはアナログ信号として電流信号を出力する。多チャンネル型センサ装置22のXch(Xチャンネル)のアナログ信号はデータ収集装置24のセンサ入力端子11xaから11xmに接続され、Ych(Yチャンネル)のアナログ信号はデータ収集装置24のセンサ入力端子11yaから11ynに接続される。データ収集装置24のセンサ入力端子11ら入力された電流信号は、微小電流レベルにも対応した電流電圧変換器12により電流信号レベルに比例した電圧信号に変換される。
【0019】
チャンネル選択回路16は、AD変換されたデジタル信号を取り出すためのタイミング制御用のインターフェース回路15と、電圧信号を時分割多重化する際にデータ収集および演算に必要となるデジタル信号を予め選択するチャンネル設定レジスタ18を有する。データ収集演算回路17は、DSP(演算器)20とCPU(制御器)21を有し、荷電粒子ビーム1のビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等を演算した結果を照射制御装置8に送信する。
【0020】
センサ入力端子11と電流電圧変換器12の間は損失とノイズ障害を最小限に抑えるため、極力近接させた配置となっている。電流電圧変換器12により電圧信号に変換されたセンサ装置の多チャンネル信号は、マルチプレクサ13により時分割多重化される。この時分割多重化とは、マルチプレクサ13に内蔵されたアナログスイッチの開閉を制御し、並列接続された入力電圧信号を順次切り替えていくことでマルチプレクサ13の出力には電圧信号が直列に並んだ状態にすることである。この電圧信号をAD変換器14により、デジタル信号にAD変換処理を行う。そして、チャンネル選択回路16のインターフェース回路15は順次タイミング制御を行い、AD変換されたデジタル信号をAD変換器14から読み出す。これら一連の時分割多重化からAD変換されたデジタル信号を読み出す動作は、チャンネル選択回路16により制御される。
【0021】
図4はチャンネル設定レジスタの構成を示す図である。図4の例は、ビームピーク位置を演算するために、Xch、Ychはそれぞれ32chのデータを使用する例である。図4にはアドレスとその内容を記載した。アドレス1にはチャンネル選択回路16がデータ送信したチャンネル番号(CH番号)が記憶され、アドレス2にはAD変換中のチャンネル番号が記憶される。アドレス3から34にはデータ収集装置24のXchのうち選択された32チャンネルのチャンネル番号が記憶され、アドレス35から66にはデータ収集装置24のYchのうち選択された32チャンネルのチャンネル番号が記憶される。
【0022】
次にデータ収集装置24の動作を、スポットスキャニング照射方式を例にして説明する。スポットスキャニング照射方式の照射装置においては、照射対象9を照射するスポットが100万にも及ぶ。患者毎に作成されて治療計画における各スポットに対応した多チャンネル型センサ装置22における目標位置(目標通過位置)、ビームの大きさ等の計画データは、照射制御装置8からデータ収集演算回路17のCPU21によりデータメモリ25に記憶される(全計画スポットデータ記憶手順)。CPU21は、データメモリ25の1番目のスポットに対する計画データを参照し、1番目のスポットに対する多チャンネル型センサ装置22における目標位置をほぼ中央になるような多チャンネル型センサ装置22のチャンネル番号をXch及びYchのそれぞれ32chのチャンネル番号(選抜チャンネル設定データ)をチャンネル設定レジスタ18に書き込み(レジスタ選定手順)。
【0023】
荷電粒子ビーム1が照射され、多チャンネル型センサ装置22で検出した電流データが電流電圧変換器12に入力される。チャンネル選択回路16は、チャンネル設定レジスタ18のアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)にて指定されたチャンネル(選抜チャンネル)に対応するマルチプレクサ13のアナログスイッチを開く信号sigbをマルチプレクサ13に出力する(マルチプレクサ制御手順)。次にチャンネル選択回路16の内
部タイマまたは、コンデンサの電圧で所定の時間を待ち、AD変換器14へ変換開始指令sigaを送る(AD変換開始手順)。AD変換開始は、変換器により様々であるが、チャンネル選択回路16は採用するAD変換器の特徴に合わせて出力する。例えば、変換開始指令sigaは、変換開始信号を出力する(ある端子のレベルを変える等)、クロック信号を与える(クロック信号の立ち上がりで変換開始)、レジスタの変換ビットをセットするなどである。なお、所定の時間はAD変換器14のサンプルホールドのための時間経過である。AD変換データを生成するAD変換データ生成手順は、マルチプレクサ制御手順とAD変換開始手順を含んでいる。
【0024】
チャンネル選択回路16は、AD変換完了を検出する(完了タイミングを検出する方法は後述する)と、インターフェース回路15により直ちにAD変換器14からAD変換されたデジタル信号を読み出す。そしてAD変換器14の出力(パラレル出力、シリアル出力)形式からデータ収集演算回路17のデータ形式に応じた処理を行い、形式変換したセンサ原データをデータ収集演算回路17に送信する(データ送信手順)。AD変換器14がパラレル出力の場合はAD変換器14へ出力トリガとなる信号を出力し、AD変換器14からADCデータ(AD変換データ)を取り出す。AD変換器14がシリアル出力の場合は、出力トリガとなる信号とデータ出力のためのクロックを出力し、AD変換器14からADCデータを取り出す。
【0025】
データ収集演算回路17は、1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達するまで、DSP20によりチャンネル選択回路16から送られてくるADCデータをチャンネル毎に平均化する平均化演算を行う。1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達して、次のスポットに対する制御が開始されるまで、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18に記憶されたアドレス3から66の各チャンネルに対して、マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す。
【0026】
ここで、チャンネル設定レジスタ18を用いたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順の説明を詳述する。マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順にて、最初に指定されるチャンネルはアドレス3に記憶されたチャンネルである。レジスタ選定手順が実行された際に、アドレス3に記憶されたX0のチャンネル番号(図4参照)をアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)に転送する。チャンネル選択回路16は、アドレス2(AD変換中のチャンネル番号)にて指定されたチャンネルに対応した信号sigbを出力し(マルチプレクサ制御手順)、AD変換器14へ変換開始指令sigaを送る(AD変換開始手順)。チャンネル選択回路16は、AD変換完了を検出すると、データ収集演算回路17へセンサ原データを送信する(データ送信手順)と共に、アドレス2のAD変換中のチャンネル番号をアドレス1(データ送信チャンネル番号)に転送する。そしてアドレス4に記憶されたX1のチャンネル番号をアドレス2(AD変換中のチャンネル番号)に転送する。この変更されたチャンネルのADCデータを得るようにマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順を実行する。以上の動作を次のスポットに対する制御が開始されるまで、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18に記憶されたアドレス3から66の各チャンネルに対して、マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す。
【0027】
1番目のスポットに対する荷電粒子ビーム1の線量が目標線量に達すると、線量データ変換器6から線量満了信号sigdが出力される。データ収集演算回路17は、線量満了信号sigdを受けて、DSP20においてチャンネル毎の平均化演算をやめ、Xch、Ychの電流強度のプロファイルデータからビームピーク位置(通過位置)、ビーム強度、ビーム径、ビーム平坦度等をDSP20にて演算し(演算手順)、演算した結果データを照射制御装置8に送信する(演算結果送信手順)。
【0028】
照射制御装置8は、データ収集演算回路17から結果データを受信すると、データ収集演算回路17のCPU21に次の(2番の)スポットのデータ処理を行うための次スポット指令(次データ収集指令)を送信する(次スポット移行手順(次データ移行手順))。CPU21は次スポット指令を受けると、データメモリ25の次の(2番目の)スポットに対する計画データを参照し、次の(2番の)スポットに対する多チャンネル型センサ装置22における目標位置をほぼ中央になるような多チャンネル型センサ装置22のチャンネル番号をXch及びYchのそれぞれ32chのチャンネル番号をチャンネル設定レジスタ18に書き込み。すなわち、次の(2番の)スポットに対するレジスタ選定手順を実行する。その後、この次の(2番の)スポットに対するマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順、演算手順、演算結果送信手順を実行し、最後のスポットまでの処理を繰り返す。マルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順の動作は、チャンネル選択回路16を構成する同期式の回路(H/W、ハードウエア)で実行されるため、それぞれの処理間に待ち時間や割込みが生じない。なお、CPU21がチャンネル設定レジスタ18に新たな選抜チャンネル設定データを書き込んでいる最中は、チャンネル選択回路16はチャンネル設定レジスタ18にアクセスできないので、チャンネル選択回路16は次のチャンネルに対するマルチプレクサ制御手順の処理を行うことができず、中断する。
【0029】
AD変換の完了タイミングを検出する方法を説明する。AD変換が完了したタイミングは例えばタイマで時間を計測したり、AD変換器14内のステータスを監視(例えば、変換完了したらあるフラグが立つ)したりする。また、AD変換器14からチャンネル選択回路16に知らせる(ある端子の状態が変化する)、あるいはADCデータを読み出すためのクロックをAD変換器14に供給し、その何発目から有効データであると決めておくなどで、AD変換の完了タイミングを検出する。
【0030】
以上のように実施の形態1のデータ収集装置24は、チャンネル選択回路16とデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、マルチプレクサ13及びAD変換器14の制御を各チャンネルの処理時間に待ち時間や割込みが生じないように効率的に行うので、従来のブロード照射方式で用いられる従来の平坦度モニタと同様のデータ収集装置をスキャニング照射方式に適用した場合に比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0031】
一般的に、従来のブロード照射方式で用いられるデータ収集装置は、データ収集と演算に必要とすべきチャンネルを選択するにあたり、1つのCPUでマルチプレクサ13とAD変換器14の制御を都度各チャンネルの切り替え毎に実施していた。多チャンネル型センサ装置のチャンネル数が増加すると、CPUの制御負荷が増加することで、データ収集装置の処理速度を十分に上げることができないという問題が生じる。しかしながら、実施の形態1のデータ収集装置24は、チャンネル選択回路16とデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16はマルチプレクサ13及びAD変換器14の制御を行うので、多チャンネル型センサ装置22のチャンネル数が増加しても、データ収集演算回路17の制御負荷が増加することを抑えることができ、データ収集装置24の処理速度を十分に上げることができる。
【0032】
スキャニング照射方式においては、荷電粒子線ビーム1の状態は照射対象(患部)9の状態や大きさなどで異なり、各スポットの目標線量、すなわち各スポット間の変化時間を変化させる必要がある。例えば、変化時間が数百ms程度の場合もあれば、100μs程度
の場合もある。実施の形態1のデータ収集装置24は、各スポットに対応して多チャンネル型センサ装置22のデータを少ない使用チャンネル、例えばXch、Ychそれぞれ3
2チャンネル(合計64チャンネル)分のADCデータをデータ収集演算回路17にて演算するので、スポット毎の荷電粒子線ビーム1の状態を高速に演算することができる。また、各チャンネルのADCデータが複数個になったと場合でも、データ収集演算回路17はAD変換データが送られてくる度に各チャンネルのADCデータを平均化する演算をDSP20にて行い、線量が目標線量になった際に荷電粒子線ビーム1の状態を、その時点における使用チャンネル(64チャンネル)毎の平均化されたデータを用いて演算するので、荷電粒子線ビーム1の状態を高速に演算することができる。
【0033】
なお、次スポット移行手順は、データ収集演算回路17から結果データを受信すると照射制御装置8がデータ収集演算回路17のCPU20に次スポット指令を送信する例で説明したが、照射制御装置8は、線量データ変換器6からの線量満了信号sigdを受けたると、データ収集演算回路17からの結果データを受信する前であってもCPU20に次スポット指令を送信してもよい。この場合は、データ収集演算回路17のDSP20が演算中であっても、CPU21が次のスポット対応のチャンネル番号データをチャンネル設定レジスタ18に書き込む(レジスタ選定手順)ので、チャンネル選択回路16はデータ収集演算回路17の演算終了を待たずに、すなわち遅延無く、次のスポット対応のADCデータをデータ収集演算回路17に入力(図示しないメモリにADCデータを貯める)する。したがって、さらにビームデータの演算結果を得る時間を短縮することができる。
収集や演算処理を高速化することができる。
【0034】
以上のように実施の形態1のデータ収集装置24によれば、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、チャンネル選択回路16を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力するので、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0035】
実施の形態1のデータ収集方法は、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータをAD変換器14によりデジタル信号に変換しAD変換データを生成するAD変換データ生成手順と、AD変換データ生成手順で生成されたAD変換データをデータ収集演算回路17に送信するデータ送信手順と、データ送信手順により送信された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態をデータ収集演算回路17により演算する演算手順とを含み、AD変換データ生成手順において、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルから選抜された選抜チャンネルの情報に基づいて、選抜チャンネルのAD変換データを生成するので、チャンネル選択回路により多チャンネル型センサ装置の複数の検出チャンネルのうちから選抜した選抜チャンネルのAD変換データを生成するように制御でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0036】
実施の形態1の粒子線治療装置は、荷電粒子ビーム1を発生させ、この荷電粒子ビーム1を加速器54で加速させるビーム発生装置52と、加速器54により加速された荷電粒
子ビーム1を輸送するビーム輸送系59と、ビーム輸送系59で輸送された荷電粒子ビーム1を照射対象9に照射する粒子線照射装置58とを備え、粒子線照射装置58は、照射対象9に照射する荷電粒子ビーム1を走査する走査電磁石2、3と、走査電磁石2、3で走査された荷電粒子ビーム1の状態を演算し収集するデータ収集装置24を有する。データ収集装置24は、荷電粒子ビーム1の通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置22からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサ13と、マルチプレクサ13で選択されたチャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器14と、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御するチャンネル選択回路16と、チャンネル選択回路16を介して入力された複数のAD変換データに基づいて荷電粒子ビーム1の状態を演算するデータ収集演算回路17を備え、チャンネル選択回路16は、多チャンネル型センサ装置22の複数の検出チャンネルのうちデータ収集演算回路17に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタ18を有し、選抜チャンネルの情報に基づいて選抜チャンネルのAD変換データを順次データ収集演算回路17に出力するので、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができ、治療時間を短くすることができる。
【0037】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態1のデータ収集装置24(24a)とは、チャンネル選択回路16(16b)がスキャン制御レジスタ19を有する点で異なる。スキャン制御レジスタ19に設定された始点と終点の間をマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を繰り返す(スキャンする)ことができる。以下に説明する。
【0038】
図6はスキャン制御レジスタの構成を示す図であり、図7はスキャン制御レジスタによるスキャンパターンを示す図である。スキャン制御レジスタ19は、Xch及びYchのそれぞれ始点と終点のチャンネル情報(始点チャンネル、終点チャンネルの情報)が設定される。具体的にはチャンネル設定レジスタ18に記憶されたチャンネル番号に対応したアドレスが、スキャン制御レジスタ19に記憶される。図5に示した例では、Xchの始点(スキャン始点X)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス3が記憶され、すなわちX0のチャンネル番号(図4参照)である。同様に、Xchの終点(スキャン終点X)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス34が記憶され、すなわちX31のチャンネル番号ある。Ychの始点(スキャン始点Y)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス35が記憶され、すなわちY0のチャンネル番号ある。Ychの終点(スキャン終点Y)はチャンネル設定レジスタ18のアドレス66が記憶され、すなわちY31のチャンネル番号ある。図6の例ではチャンネル設定レジスタ18に記憶された全チャンネルをスキャンする例となっている。
【0039】
図7の横軸はスキャン順序であり、縦軸はチャンネルである。スキャン制御レジスタ19で設定されたチャンネル区間41が矢印(スキャンパターン)42に示すように、チャンネル区間41a、41b、41c、41dと繰り返し実施することを示している。4つのチャンネル区間41a、41b、41c、41dがスキャンされた時には、スキャン区間の各チャンネルは4回データの収集が行われたことになる。
【0040】
動作を説明する。全計画スポットデータ記憶手順において、各スポットに対応したデータ収集するチャンネル数(例えばXch、Ychそれぞれ16チャンネルなど)もデータメモリ25に記憶される。レジスタ選定手順において、CPU21は、データメモリ25を参照し、1番目のスポットに対するデータ収集するチャンネル数と目標位置に基づいて、スキャン始点X、スキャン終点X、スキャン始点Y、スキャン終点Yの情報をスキャン制御レジスタ19に書き込む。チャンネル選択回路16(16b)は、データ収集演算回路17からスキャンスタートの指示を受けることで、チャンネル設定レジスタ18に設定されたチャンネル番号が全て時分割多重化されるまで自動的にマルチプレクサ13内蔵のアナログスイッチを順次開閉制御するスキャン動作を行う。チャンネル選択回路16(16b)は、スキャンスタートの指示を受け、スキャン制御レジスタ19のスキャン始点Xにしてされた情報を読み出し、該当するチャンネル設定レジスタ18のチャンネルに対応させたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を行う。この動作をスキャン終点Xに示された情報に基づくチャンネル設定レジスタ18のチャンネルに対応させたマルチプレクサ制御手順、AD変換開始手順、データ送信手順を行い、スキャン始点Yからスキャン終点Yまでの動作も同様に行う。
【0041】
実施の形態2のデータ収集装置24bは、チャンネル選択回路16bのチャンネル設定レジスタ18に設定されたチャンネル数から限定したチャンネル数にて多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を行うので、必要最小限の数だけビームデータの処理を行い、実施の形態1のチャンネル選択回路16aよりもビームデータの収集や演算処理の時間を短縮することができる。
【0042】
また、チャンネル選択回路16bは、データ収集演算回路17からのスキャン停止指示があるまでスキャン動作を繰り返し続けるようにしてもよい。この場合は、保守作業の場合に繰り返しデータ収集を行うことができ、データ収集演算回路17におけるデータの平均化するデータ数を容易に変更できる。したがって、保守作業を効率的に行うことができる。
【0043】
また、スキャン制御レジスタ19にスキャンする方向を追加してもよい。図8はスキャン制御レジスタの他の構成を示す図である。図6に示したスキャン制御レジスタにスキャン制御X及びスキャン制御Yが追加される。スキャン制御X及びスキャン制御Yには、それぞれスキャン方向を示す情報が設定される。00は始点から終点へ順番にスキャンすることを示し、01は終点から始点へ順番にスキャンすることを示し、10は始点から終点の間を始点側と終点側で交互に行うことを示す。スキャンする方向を追加することで、保守作業におけるスキャン方向の違いによる調整の必要性の判断を容易に行うことができ、保守作業を効率的に行うことができる。また多チャンネル型センサ装置22の隣接チャンネル漏洩や測定結果の再現性検証等を行うことができる。なお、スキャンする方向はスポット毎に変更しても構わない。
【0044】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態2のデータ収集装置24(24b)とは、チャンネル選択回路16(16c)がTB設定回路(タイムベース設定回路)31を有し、マルチプレクサ13(13b)が放電機能を備えたアナログスイッチ26を有する点で異なる。実施の形態1のデータ収集装置24(24a)や実施の形態2のデータ収集装置24(24b)に比べて、チャンネル毎にAD変換器14へ入力する電圧信号の安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間を最適化することができる。以下に説明する。
【0045】
マルチプレクサ13bは、センサ入力端子11と同数のアナログスイッチを有する。図9では、アナログスイッチ26は、Xchに対応してアナログスイッチ26xaから26xmまであり、Ychに対応してアナログスイッチ26yaから26xnまである場合を示している。アナログスイッチ26は、電流電圧変換器12に接続された端子とGND(グランドレベル)に接続された端子を有する。図10を用いてTB設定回路31とマルチプレクサ13bの動作を説明する。
【0046】
図10はTB設定回路によるマルチプレクサのスイッチ開閉動作を説明する図である。
マルチプレクサ13に内蔵されたアナログスイッチSW(1)、SW(2)〜SW(N)におけるTB設定回路31による開閉動作の遷移を示した。アナログスイッチSW(1)はアナログスイッチ26xaであり、アナログスイッチSW(2)は次のアナログスイッチ26xb(図示せず)であり、アナログスイッチSW(N)は最後のアナログスイッチ26ynである。図10に示したS1からS5は複数のアナログスイッチSWのタイミングである。図10では、状態S1からS5の繰り返し期間(27a、27b)が2つある範囲を示している。
【0047】
TB設定回路31は6つの状態を遷移するステートマシンと、その状態毎に制御信号を出力する回路である。TB設定回路31のステートマシンは、例えば、タイマで時間をカウントし、所定に時間になったら状態を遷移させる。TB設定回路31は、次の状態に遷移した際に、制御信号を出力する。ここでは、SW(1)(適宜アナログスイッチを省略して表記する)、SW(2)を例として電流電圧変換器12からの電圧信号の内、チャンネル1からチャンネル3を順次時分割多重する動作を説明するが、それ以降のSW(N)までの動作は同じ繰り返しである。
【0048】
タイミングS1(繰り返し期間27a):SW(1)を電圧信号入力側にスイッチする。それ以外のSW(2)とSW(3)はスイッチ開放状態を保つ。
【0049】
タイミングS2(繰り返し期間27a):チャンネル選択回路16のインターフェース回路15によりAD変換器14にAD変換指示が出るタイミングを示す。SW(1)は電圧信号が立ち上がり、電圧が十分安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間が経過するまで電圧信号入力側にスイッチされる。
【0050】
タイミングS3(繰り返し期間27a):インターフェース回路15によりAD変換器14からAD変換されたデジタル信号が取り出される。
【0051】
タイミングS4(繰り返し期間27a):タイミングS3の動作が完了するまで、少しガード時間を設けて、SW(1)はGND側にスイッチされる。これにより、マルチプレクサ13とAD変換器14の間の容量成分により滞留している電圧を放電する。そして、次のSW(2)が電圧信号入力側にスイッチされた際に、電圧信号が不安定となる事象を除去する。
【0052】
タイミングS5(繰り返し期間27a):SW(1)をスイッチ開放する。
【0053】
タイミングS1(繰り返し期間27b):SW(1)をスイッチ開放してから、SW(2)を電圧信号入力側にスイッチする。この時、SW(2)の出力側がSW(1)のGNDに短絡することを回避するため、少しの保護時間を設ける。
【0054】
タイミングS2(繰り返し期間27b):インターフェース回路15によりAD変換器14にAD変換指示が出るタイミングを示す。SW(2)は電圧信号が立ち上がり、電圧が十分安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間が経過するまで電圧信号入力側にスイッチされる。
【0055】
以降、同様にタイミングS3〜S5はTB設定回路31によってアナログスイッチSW(2)が制御される。
【0056】
実施の形態3のデータ収集装置24cは、チャンネル毎にAD変換器14へ入力する電圧信号の安定性を得るまでの時間と、AD変換器14のAD変換処理が完了するまでの時間を最適化することができる。各チャンネルの入力レンジが予め大きく違うと分かってい
た場合には、各チャンネルの安定時間が異なるので、早く安定するチャンネルに対しては各タイミングを時間が短くなるように設定し、少し遅く安定するチャンネルに対しては各タイミングを精度が確保できるタイミングに設定することで、対象のチャンネルを全て測定する時間を短かくすることができる。したがって、実施の形態1のデータ収集装置24(24a)や実施の形態2のデータ収集装置24(24b)に比べて、アナログスイッチのタイミングを個別に調整でき、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0057】
早く安定するチャンネルに対しては各タイミングを時間が短くなるように設定し、少し遅く安定するチャンネルに対しては各タイミングを精度が確保できるタイミングに設定するには、例えばチャンネル設定レジスタ18のデータにタイミング変更用の情報を付加する。TB設定回路31は、このタイミング変更用の情報に基づいて各タイミングを変更する。
【0058】
また、マルチプレクサ13(13b)は、放電機能を備えたアナログスイッチ26を有するので、AD変換器14とマルチプレクサ13(13b)間の残存電圧を放電するので、残存電圧が残ることで生じる電流電圧変換器12に影響を排除することがでる。
【0059】
TB設定回路31と放電機能を備えたアナログスイッチ26を有するマルチプレクサ13(13b)を用いることで、AD変換器14の入力安定度を高め(安定時間を短縮)、チャンネル間を移動するときに、電流電圧変換器12の保護を両立させることができる。
【0060】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4におけるデータ収集装置の構成を示す図である。本実施の形態は、実施の形態2で示す多チャンネル型センサ装置22のチャンネル毎のアナログ信号を、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成するようにして全チャンネルが複数のグループG(1)〜G(n)に分割されたものである。実施の形態4におけるデータ収集装置24dは、実施の形態2のデータ収集装置24bとは、グループ毎にAD変換ユニット29(29aから29n)を有し、選択統括回路32が追加され、AD変換ユニット29に制御設定レジスタ36を内蔵したチャンネル選択回路16(16d)を有し、データ収集演算回路17(17b)に入力バッファメモリ28が有る点で異なる。
【0061】
グループ毎に独立したAD変換ユニット29(29aから29n)は、それぞれ電流電圧変換器12と、マルチプレクサ13と、AD変換器14と、チャンネル選択回路16dとを有する。各グループのAD変換ユニット29(29aから29n)によるAD変換処理が同時並行的に進行するように構成されている。選択統括回路32は、各グループに独立しているチャンネル選択回路16dを束ねて管理する。具体的には、チャンネル選択回路16dは、保守作業の際に各グループのAD変換ユニット29のデータ収集方法を設定する。分割された全チャンネルのグループにおいて各グループによるAD変換処理が同時並行的に進行しながら、グループ間毎に異なるパターンの時分割多重化を設定できる。また、データ収集演算回路17(17b)は各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14の出力するデジタル信号を入力バッファメモリ28に並行して取り込む。以下に動作を説明する。
【0062】
図11に示す選択統括回路32は、複数個のグループG(1)〜G(n)に分割された個々のグループに独立して具備されるチャンネル選択回路16の全てを個別に制御する。制御設定レジスタ36は、チャンネル設定レジスタ18、スキャン制御レジスタ19に設定されるデータを変更する情報を設定する。制御設定レジスタ36に設定されるデータは、通常の治療時の設定と保守作業に使用する設定を含んでいる。例えば、制御設定レジスタ36は、偶数チャンネルのみ収集、奇数チャンネルのみ収集、単一チャンネルの繰り返しループを実施、全チャンネルスキャンの繰り返しループを実施する等を設定するように多ビットで構成される。
【0063】
通常の治療の場合には、制御設定レジスタ36には、通常の治療時の設定がされる。スポットに応じて、複数のグループに跨ったデータを収集する場合がある。複数のグループに跨った場合には、該当する複数のグループにおいて、チャンネル設定レジスタ18、スキャン制御レジスタ19がそれぞれ設定される。通常の治療の場合の動作は実施の形態1や実施の形態2と同様である。実施の形態4のデータ収集装置24dはグループ分割数のデータ信号を同時に得ることができるので、実施の形態1や実施の形態2に比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0064】
次に保守作業の場合について説明する。選択統括回路32は、例えば、各グループによるAD変換処理が同時並行的に進行しながら、グループG(1)は偶数チャンネルのみ、グループG(2)は奇数チャンネルのみ、グループG(3)は単一チャンネルの繰り返しループ、そしてグループG(4)は全チャンネルスキャンの動作を行うという設定や、全グループG(1)〜G(n)が同一のスキャン動作、ループ動作をするように制御する。具体的には、選択統括回路32は、グループ毎のデータ収集の仕方を指示したグループ設定指令をデータ収集演算回路17bのCPU21をより取得する。選択統括回路32は、データ収集演算回路17bからトリガ信号を受けると、グループ設定指令の内容に基づいて、各グル―プの制御設定レジスタ36に該当する設定を行う。各グル―プのチャンネル選択回路16dは制御設定レジスタ36に設定された情報に基づいて、マルチプレクサ13及びAD変換器14を制御する。
【0065】
実施の形態4のデータ収集装置24dは、グループ毎にデータ収集の仕方を変えられるので、グループ毎に多チャンネル型センサ装置22の隣接チャンネル漏洩や測定結果の再現性検証等を行うことができる。したがって、保守作業を効率的に行うことができる。
【0066】
実施の形態5.
図12は本発明の実施の形態5におけるデータ収集装置の構成を示す図である。実施の形態4のデータ収集装置24(24d)とは、データ収集演算回路17bをデータ収集演算回路17aに変更し、入力バッファ回路33を有する点で異なる。入力バッファ回路33は、入力メモリ37、制御回路34、デュアルポートメモリ35を有する。データ収集演算回路17aは各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14の出力するデジタル信号を入力バッファ回路33から取得する。
【0067】
図13はデュアルポートメモリにおけるADCデータ構成を示す図であり、図14はデュアルポートメモリにおけるポインタ構成を示す図である。デュアルポートメモリ35は、グリープ番号(G番号)と出力チャンネル番号(出力CH番号)毎に決められたアドレスが指定され、そのアドレスにADC出力データが記憶される。またデュアルポートメモリ35は、図14に示しようにADC出力データが記憶される領域以外のアドレスにポインタ情報を記憶するポインタ領域を有する。ポインタ情報は、各グループ(1からN)の最後に更新された(最新の)出力チャンネル番号である。
【0068】
次に動作を説明する。入力バッファ回路33は、各グループG(1)〜G(n)から同時並行処理されたAD変換器14が出力するデジタル信号を各グループG(1)〜G(n)のインターフェース回路15を介して、入力メモリ37に並行入力される。入力バッファ回路33の入力メモリ37はどのグループの信号と接続するかを予め個々に決められており、各グループG(1)〜G(n)のデジタル信号を取り間違えることがないように配慮されている。入力メモリ37は、グループ毎にデュアルポートメモリ35にデータを転送したことを示すフラグ情報(フラグビット)を有する。例えば、16ビット構成のメモリであれば、1アドレスの16ビットの各ビットにグループを割り当てて、16グループのフラグ情報を記憶することができる。また、各AD変換ユニット29が送信してくるADC出力データにはチャンネル番号を示すヘッダが付加される。デュアルポートメモリ35は、入力側、出力側がそれぞれ1ポートである。
【0069】
制御回路34は、入力メモリ37に記憶されたデータを読み出し、そのヘッダに示されたチャンネル番号に対応したデュアルポートメモリ35の該当するグループのアドレスにADC出力データ(ヘッダは含まないデータ)を転送する。制御回路34は、転送が終了したグループに対応したフラグ情報を書き込み。制御回路34は、AD変換ユニット29から送信されたADC出力データを入力メモリ37に記憶した際にフラグ情報を1にし、転送が終了した際にフラグ情報を0にする。また、フラグ情報に1が記憶された対応するアドレスには上書きを防止するために、禁止回路を設ける。例えば、各ビットにANDゲートを介して入力するようにし、さらに上書きが禁止されたアドレスにADCデータが送られてきた場合に、ビジーを示しビジー信号を制御回路34に送るようにする。制御回路34は、ビジー信号を受けて、選択統括回路32に該当するグループのAD変換ユニット29のデータ処理を停止させる処理停止信号を送る。選択統括回路32は、処理停止信号を受けて、該当するグループのAD変換ユニット29のチャンネル選択回路16dに処理を停止する停止指令を送る。停止指令を受けた当該チャンネル選択回路16dは、再回指令を受けるまで処理を停止する。
【0070】
制御回路34は、停止指令を出したグループのADCデータをデュアルポートメモリ35に転送した後に、フラグ情報を0にすると、禁止回路からビジー信号が解除される。制御回路34は、ビジー信号の解除を受けて、選択統括回路32に該当するグループのAD変換ユニット29のデータ処理を再開させる再回指令信号を送る。選択統括回路32は、再回指令信号を受けて、該当するグループのAD変換ユニット29のチャンネル選択回路16dに処理を再開する再回指令を送る。再回指令を受けた当該チャンネル選択回路16dは、処理を再開する。
【0071】
次にデータ収集演算回路17の動作を説明する。データ収集演算回路17は、デュアルポートメモリ35からADCデータを読み出す際に、読み出すアドレス毎にグループ番号(G番号)と出力チャンネル番号(出力CH番号)が決められているので、グループ番号とチャンネル番号の組み合わせを把握することが可能となる。データ収集演算回路17は、デュアルポートメモリ35の予め決められたアドレス(メモリマップ)を参照することで、多チャンネル型センサ装置22のチャンネル毎のアナログ信号情報を得ることができるようになる。入力バッファ回路33が順次デュアルポートメモリ35を更新していくので、データ収集演算回路17は自身の決まったタイミングでデュアルポートメモリ35にアクセスすればよい。
【0072】
したがって、実施の形態5のデータ収集装置24eは、入力メモリ37とアクセス衝突がないデュアルポートメモリ35を設けた入力バッファ回路33により、データ収集の効率化を図ることができる。実施の形態4のデータ収集装置24dに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0073】
また、入力バッファ回路33は、デュアルポートメモリ35を更新する際に、ポインタ領域に各グループ番号においてどのチャンネル番号が最後に更新されたかを示すポインタ情報を書き込み。データ収集演算回路17はポインタ情報を参照することで、ある時点での最新データがどのチャンネル番号であるかの情報を得ることができるようになる。
【0074】
実施の形態6.
粒子線照射装置58が照射する荷電粒子ビーム1のビーム位置やビーム重心等を演算しようとする場合、多チャンネル型センサ装置22の出力するチャンネル毎のアナログ信号において、連続したチャンネルの情報が同時に必要となる。実施の形態4及び5では、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成するようにして全チャンネルを複数のグループG(1)〜G(n)に分割した場合であったが、隣接する複数個のチャンネルで一つのグループを構成すると、連続したチャンネルの情報が複数のグループに跨り、一部のデータが遅くなる場合がある。このようになると演算処理を止めなければならなくなり(データ待ちに時間が生じ)、処理時間が長くなってしまう。この問題を解決するために、隣り合うチャンネルは必ず異なるグループに配分して全チャンネルが複数のグループG(1)〜G(n)に分割されるようにする。こうすることで、演算処理を止めることなく、グループ総数と同じ数だけの隣接チャンネル数を同時並行的にAD変換処理ができる。
【0075】
図15は、本発明の実施の形態6におけるセンサ端子とセンサ入力端子の接続を示す図である。図15は、多チャンネル型センサ装置22の出力するセンサ端子40のチャンネル数が9つあり、ビーム位置やビーム重心等を演算するために隣り合うチャンネルが同時に3つ必要な場合の接続例である。図15に示すように、1次元(XchまたはYch)の隣り合うチャンネルを必ず異なるグループに配分することで、必要とする隣り合うチャンネルを全て同時並行的にAD変換処理ができるので、ビーム位置やビーム重心等の演算結果を短時間で得ることができる。
【0076】
例えば、荷電粒子ビーム1のスポットの状態(ビーム強度、ビーム平坦度、ビーム径、およびビームピーク位置等)を演算するのにXch、Ychはそれぞれ32chのデータを使用する場合で説明する。実施の形態4または実施の形態5のデータ収集装置24はXch用、Ych用に2つを使用する。Xch、Ychはそれぞれ32chのデータを収集するので、32グループに分けて、図15に示したようにセンサ端子40とセンサ入力端子11を接続する。このようにすることで、Xch及びYchのそれぞれについて、32chの全てを同時並行的にAD変換処理ができる。したがって、1回のAD変換処理時間と演算処理時間でスポットの状態を得ることができる。
【0077】
実施の形態6のデータ収集装置24(24f)は、実施の形態4のデータ収集装置24dに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。また、実施の形態6のデータ収集装置24(24f)は、実施の形態5のデータ収集装置24eに比べて、スキャニング照射方式に用いられる多チャンネル型のモニタからのビームデータの収集や演算処理を高速化することができる。
【0078】
なお、実施の形態1から実施の形態6の内容は、矛盾がない範囲でそれぞれ組み合わせて適用することができる。また、スポットスキャンニング照射方式で説明したが、荷電粒子ビームを停止させずに一筆書きのように走査するラスタースキャニング照射方式にも適用できる。スポットスキャニング照射方式とラスタースキャニング照射方式の両方のメリットを取り入れようとした中間の照射方式(ビームを停止させずにスポット毎に移動させる方式、ハイブリッドスキャニング照射方式と呼ぶことにする)にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1…荷電粒子ビーム、2…X方向走査電磁石、3…Y方向走査電磁石、8…照射制御装置、9…照射対象、13、13a、13b…マルチプレクサ、14…AD変換器、16、16a、16b、16c、16d…チャンネル選択回路、17、17a、17b…データ収集演算回路、18…チャンネル設定レジスタ、19…スキャン制御レジスタ、21…CPU、22…多チャンネル型センサ装置、24、24a、24b、24c、24d、24e、24f…データ収集装置、25…データメモリ、26、26xa、26xm、26ya、26yn…アナログスイッチ、28…入力バッファメモリ、29、29a、29b、29c、29n…AD変換ユニット、31…TB設定回路、32…選択統括回路、33…入力バッファ回路、34…制御回路、35…デュアルポートメモリ、36…制御設定レジスタ、37…入力メモリ、51…粒子線治療装置、52…ビーム発生装置、54…シンクロトロン、58、58a、58b…粒子線照射装置、59…ビーム輸送系。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速器により加速され、走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集装置であって、
前記荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサと、前記マルチプレクサで選択された前記チャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器と、前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御するチャンネル選択回路と、前記チャンネル選択回路を介して入力された複数の前記AD変換データに基づいて前記荷電粒子ビームの状態を演算するデータ収集演算回路を備え、
前記チャンネル選択回路は、前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルのうち前記データ収集演算回路に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタを有し、前記選抜チャンネルの情報に基づいて前記選抜チャンネルの前記AD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
前記荷電粒子ビームの目標通過位置を複数有する計画データを記憶するデータメモリを有し、
前記荷電粒子ビームの照射を制御する照射制御装置から次データ収集指令を受けて、前記計画データにおける次の前記目標通過位置に基づいて次の前記選抜チャンネルを決定し、前記チャンネル設定レジスタに設定する制御器を有ることを特徴とする請求項1記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記チャンネル選択回路は、前記チャンネル設定レジスタの前記選抜チャンネルの情報が新たに書き換えられるまで、前記選抜チャンネルに対応して、前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御し、前記選抜チャンネルのAD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記チャンネル選択回路は、前記選抜チャンネルに対して、前記AD変換データを収集する始点チャンネル及び終点チャンネルを設定するスキャン制御レジスタを有し、前記始点チャンネルから前記終点チャンネルに対応するチャンネルの前記AD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
前記マルチプレクサは複数のアナログスイッチを有し、前記アナログスイッチを切替えて前記チャンネルデータの一つを選択し、
前記チャンネル選択回路は、前記アナログスイッチを開閉するタイミングを制御するタイムベース設定回路を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項6】
前記アナログスイッチは、前記前記チャンネルデータが入力される入力端子と、前記AD変換器に接続された出力端子と、グランドレベルに接続されたGND端子を有し、
前記タイムベース設定回路は、前記AD変換器が前記AD変換データの生成を終了した際に、前記出力端子を前記GND端子に接続することを特徴とする請求項5記載のデータ収集装置。
【請求項7】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルを複数のグループに分割し、
前記グループにおける前記アナログ信号が入力されるAD変換ユニットを複数有し、
前記AD変換ユニットは、前記マルチプレクサと、前記チャンネル選択回路を有し、
前記データ収集演算回路は、前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶する入力バッファメモリを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項8】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルを複数のグループに分割し、
前記グループにおける前記アナログ信号が入力されるAD変換ユニットを複数有し、
前記AD変換ユニットは、前記マルチプレクサと、前記チャンネル選択回路を有し、
前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶し、前記データ収集演算回路に前記AD変換データを出力する入力バッファ回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項9】
前記入力バッファ回路は、前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶する入力メモリと、前記AD変換データを前記データ収集演算回路に出力するデュアルポートメモリと、前記入力メモリから前記デュアルポートメモリに前記AD変換データを転送する制御回路とを有することを特徴とする請求項8に記載のデータ収集装置。
【請求項10】
前記入力メモリは、前記グループ毎に前記デュアルポートメモリに当該グループの前記AD変換データを前記デュアルポートメモリに転送したことを示すフラグ情報が記憶されるメモリ領域を有し、
前記入力バッファ回路は、前記フラグ情報に基づいて前記入力メモリに記憶した前記AD変換データが前記デュアルポートメモリに転送されていない場合に、当該AD変換データが記憶されたメモリ領域にデータを書き込むことを禁止する禁止回路を有することを特徴とする請求項9に記載のデータ収集装置。
【請求項11】
前記デュアルポートメモリは、前記グループ毎に前記AD変換データが記憶された最新のチャンネル情報を記憶するメモリ領域を有することを特徴とする請求項9または10に記載のデータ収集装置。
【請求項12】
前記チャンネル選択回路は、当該AD変換ユニットの前記チャンネル設定レジスタに設定されたデータを変更する制御設定レジスタを有し、
前記制御設定レジスタに前記データを設定する選択統括回路を備え、
前記チャンネル選択回路は、前記制御設定レジスタに設定された情報に基づいて前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項13】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルは、X方向を検出するXチャンネルとY方向を検出するYチャンネルに分割され、
前記Xチャンネルにおいて隣接する前記検出チャンネルは異なる前記AD変換ユニットに接続され、前記Yチャンネルにおいて隣接する前記検出チャンネルは異なる前記AD変換ユニットに接続されることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項14】
荷電粒子ビームを発生させ、この荷電粒子ビームを加速器で加速させるビーム発生装置と、前記加速器により加速された荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、前記ビーム輸送系で輸送された荷電粒子ビームを照射対象に照射する粒子線照射装置とを備え、
前記粒子線照射装置は、前記照射対象に照射する荷電粒子ビームを走査する走査電磁石と、前記走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集装置を有し、
前記データ収集装置は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のデータ収集装置であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項15】
加速器により加速され、走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集方法であって、
前記荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータをAD変換器によりデジタル信号に変換しAD変換データを生成するAD変換データ生成手順と、
前記AD変換データ生成手順で生成されたAD変換データをデータ収集演算回路に送信するデータ送信手順と、
前記データ送信手順により送信された複数の前記AD変換データに基づいて前記荷電粒子ビームの状態をデータ収集演算回路により演算する演算手順とを含み、
前記AD変換データ生成手順において、前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルから選抜された選抜チャンネルの情報に基づいて、前記選抜チャンネルの前記AD変換データを生成することを特徴とするデータ収集方法。
【請求項1】
加速器により加速され、走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集装置であって、
前記荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータの複数から一つを選択するマルチプレクサと、前記マルチプレクサで選択された前記チャンネルデータをデジタル信号であるAD変換データに変換するAD変換器と、前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御するチャンネル選択回路と、前記チャンネル選択回路を介して入力された複数の前記AD変換データに基づいて前記荷電粒子ビームの状態を演算するデータ収集演算回路を備え、
前記チャンネル選択回路は、前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルのうち前記データ収集演算回路に出力する選抜チャンネルの情報を記憶するチャンネル設定レジスタを有し、前記選抜チャンネルの情報に基づいて前記選抜チャンネルの前記AD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
前記荷電粒子ビームの目標通過位置を複数有する計画データを記憶するデータメモリを有し、
前記荷電粒子ビームの照射を制御する照射制御装置から次データ収集指令を受けて、前記計画データにおける次の前記目標通過位置に基づいて次の前記選抜チャンネルを決定し、前記チャンネル設定レジスタに設定する制御器を有ることを特徴とする請求項1記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記チャンネル選択回路は、前記チャンネル設定レジスタの前記選抜チャンネルの情報が新たに書き換えられるまで、前記選抜チャンネルに対応して、前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御し、前記選抜チャンネルのAD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記チャンネル選択回路は、前記選抜チャンネルに対して、前記AD変換データを収集する始点チャンネル及び終点チャンネルを設定するスキャン制御レジスタを有し、前記始点チャンネルから前記終点チャンネルに対応するチャンネルの前記AD変換データを順次前記データ収集演算回路に出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
前記マルチプレクサは複数のアナログスイッチを有し、前記アナログスイッチを切替えて前記チャンネルデータの一つを選択し、
前記チャンネル選択回路は、前記アナログスイッチを開閉するタイミングを制御するタイムベース設定回路を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項6】
前記アナログスイッチは、前記前記チャンネルデータが入力される入力端子と、前記AD変換器に接続された出力端子と、グランドレベルに接続されたGND端子を有し、
前記タイムベース設定回路は、前記AD変換器が前記AD変換データの生成を終了した際に、前記出力端子を前記GND端子に接続することを特徴とする請求項5記載のデータ収集装置。
【請求項7】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルを複数のグループに分割し、
前記グループにおける前記アナログ信号が入力されるAD変換ユニットを複数有し、
前記AD変換ユニットは、前記マルチプレクサと、前記チャンネル選択回路を有し、
前記データ収集演算回路は、前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶する入力バッファメモリを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項8】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルを複数のグループに分割し、
前記グループにおける前記アナログ信号が入力されるAD変換ユニットを複数有し、
前記AD変換ユニットは、前記マルチプレクサと、前記チャンネル選択回路を有し、
前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶し、前記データ収集演算回路に前記AD変換データを出力する入力バッファ回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項9】
前記入力バッファ回路は、前記AD変換ユニットのそれぞれが出力する前記AD変換データを独立して記憶する入力メモリと、前記AD変換データを前記データ収集演算回路に出力するデュアルポートメモリと、前記入力メモリから前記デュアルポートメモリに前記AD変換データを転送する制御回路とを有することを特徴とする請求項8に記載のデータ収集装置。
【請求項10】
前記入力メモリは、前記グループ毎に前記デュアルポートメモリに当該グループの前記AD変換データを前記デュアルポートメモリに転送したことを示すフラグ情報が記憶されるメモリ領域を有し、
前記入力バッファ回路は、前記フラグ情報に基づいて前記入力メモリに記憶した前記AD変換データが前記デュアルポートメモリに転送されていない場合に、当該AD変換データが記憶されたメモリ領域にデータを書き込むことを禁止する禁止回路を有することを特徴とする請求項9に記載のデータ収集装置。
【請求項11】
前記デュアルポートメモリは、前記グループ毎に前記AD変換データが記憶された最新のチャンネル情報を記憶するメモリ領域を有することを特徴とする請求項9または10に記載のデータ収集装置。
【請求項12】
前記チャンネル選択回路は、当該AD変換ユニットの前記チャンネル設定レジスタに設定されたデータを変更する制御設定レジスタを有し、
前記制御設定レジスタに前記データを設定する選択統括回路を備え、
前記チャンネル選択回路は、前記制御設定レジスタに設定された情報に基づいて前記マルチプレクサ及び前記AD変換器を制御することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項13】
前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルは、X方向を検出するXチャンネルとY方向を検出するYチャンネルに分割され、
前記Xチャンネルにおいて隣接する前記検出チャンネルは異なる前記AD変換ユニットに接続され、前記Yチャンネルにおいて隣接する前記検出チャンネルは異なる前記AD変換ユニットに接続されることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載のデータ収集装置。
【請求項14】
荷電粒子ビームを発生させ、この荷電粒子ビームを加速器で加速させるビーム発生装置と、前記加速器により加速された荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、前記ビーム輸送系で輸送された荷電粒子ビームを照射対象に照射する粒子線照射装置とを備え、
前記粒子線照射装置は、前記照射対象に照射する荷電粒子ビームを走査する走査電磁石と、前記走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集装置を有し、
前記データ収集装置は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のデータ収集装置であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項15】
加速器により加速され、走査電磁石で走査された荷電粒子ビームの状態を演算し収集するデータ収集方法であって、
前記荷電粒子ビームの通過位置を複数の検出チャンネルにより検出する多チャンネル型センサ装置からのアナログ信号に基づいたチャンネルデータをAD変換器によりデジタル信号に変換しAD変換データを生成するAD変換データ生成手順と、
前記AD変換データ生成手順で生成されたAD変換データをデータ収集演算回路に送信するデータ送信手順と、
前記データ送信手順により送信された複数の前記AD変換データに基づいて前記荷電粒子ビームの状態をデータ収集演算回路により演算する演算手順とを含み、
前記AD変換データ生成手順において、前記多チャンネル型センサ装置の前記複数の検出チャンネルから選抜された選抜チャンネルの情報に基づいて、前記選抜チャンネルの前記AD変換データを生成することを特徴とするデータ収集方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−131(P2012−131A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134945(P2010−134945)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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