説明

データ更新装置及びその方法、データ更新用記録媒体並びにナビゲーション装置

【課題】読み込みエラーの発生を確実に防ぎ、且つデータ更新作業時の使用感の改善を図った、信頼性及び操作性に優れたデータ更新装置及びその方法、データ更新用記録媒体並びにナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】DVD1には、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データLに加えて、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データHが記録されている。また、ナビゲーション装置10側には、温度センサ15が設置されており、温度センサ15の検出した温度が動作保証温度の範囲内であるとき、DVD1から通常圧縮データLを読み込み、温度センサ15の検出した温度が動作保証温度の範囲外であるとき、DVD1から高圧縮データHを読み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置にて地図データを更新するためのデータ更新技術に係り、特に、地図データの読み込みエラーによる更新の失敗を確実に防止するデータ更新装置及びその方法、データ更新用記録媒体並びにナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用を初め、ナビゲーション装置には地図データが不可欠であり、その更新を定期的に行う必要がある。最近では、ナビゲーション装置の普及に伴ってユーザーニーズも多様化しており、更新頻度や更新データ量は増える傾向にある。
【0003】
地図データの更新に際しては、更新対象である地図データの保存先がCDやDVDなどの記録媒体であれば、古い地図データを記録した記録媒体をナビゲーション装置から抜き、新たな地図データを記録した記録媒体を挿入するだけで、地図データの更新作業が完了する。このような記録媒体の交換で済む地図データの更新作業は、非常に簡便である。
【0004】
しかし近年では、地図データの保存先は、CDやDVDなどのように、ナビゲーション装置に対し挿脱自在な記録媒体ではなく、ナビゲーション装置に内蔵された大容量のハードディスクドライブ(以下、HDD)が主流となっている。
【0005】
HDDはCDやDVDに比べて高価であり、地図データを更新するたびに、HDDごと交換するといったことは、コスト面からも作業面からも現実的ではない。したがって、販売店などにナビゲーション装置を数日間預けて、HDDに記録された地図データを新たな地図データに書き換えるといった方法が採られていた。
【0006】
しかし、地図データの更新を販売店に委託する方法では、ユーザーがナビゲーション装置を販売店まで持って行くことを前提としているので、これを面倒がるユーザーが多数存在する。そこで、ユーザー自身が自ら操作することでデータ更新を行う方法が高い需要を得ている。
【0007】
ここで、図6を参照して従来の地図データ更新技術について具体的に説明する。すなわち、図6に示すように、更新用地図データの圧縮データを記録したDVD1を準備し、これをナビゲーション装置10に取り込む。そして、ナビゲーション装置10側のデータ読み込み部11によって、DVD1側の圧縮データを作業領域であるDRAMなどに読み込み、データ伸張部12により圧縮データを伸張した上で、データ書き込み部13にてHDD14へ伸張データを書き込むようになっている。
【0008】
なお、データ読み込み部11による圧縮データの読み込み処理や、データ書き込み部13によるHDD14へのデータの書き込み処理はCPUを介さないDMA転送で行っている。また、データ伸張部12による圧縮データの伸張処理はCPUが実行している。
【0009】
以上のようにして行う地図データの更新作業は、データ量やナビゲーション装置10の性能にも左右されるが、データの読み込み開始から書き込みの完了まで、更新作業全体で数十分〜数時間程度の時間を要する。そのため、更新作業時間の短縮化が強く要請されており、種々のデータ更新技術が提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1の技術では、記録媒体に記録される地図データに関して、ユーザーの住所付近など使用頻度の高い地図データについてはこれを低い圧縮率で圧縮し、それ以外の使用頻度の低い地図データについてはこれを高い圧縮率で圧縮している。
【0011】
このような特許文献1の技術では、ユーザーの使用頻度に応じて圧縮データの圧縮率を変えることにより、使用頻度の高いデータに関しては解凍時間を短くして、更新作業の迅速化を図っている。上記のような従来技術によってデータ更新作業の短縮化は着実に進められているが、更新用データ量が増大していることもあって、やはり現状では、地図データの更新作業には少なからず時間がかかることに変わりはない。
【0012】
そのため、車載用のナビゲーション装置においてユーザーが地図データの更新作業を実施する場合、車両を走行させながら(当然ながらナビゲーション機能は有効ではないが)、データ更新作業を行うのが、一般的である。このため、ユーザーが地図データの更新作業を開始した後、更新座興が完全に終わる前に車両の走行を止めるようなケースも出てくる。
【0013】
そこで、地図データ更新作業中に車両のACC電源がオフとなることを想定したデータ更新装置も提案されている。この装置では、更新作業の途中でACC電源をオフにして更新作業が停止した場合、次回、ACC電源をオンとした時に、前回の更新作業にて停止した時点から新たな更新作業が始まるようになっている。
【0014】
また、車載用に限らず電子機器には、機器が安定して動作可能な動作保証温度が設定されており、全ての電子機器に関して、動作保証温度を外れる可能性が皆無であるということはない。ただし、車載用電子機器は、野外の気温や直射日光の影響を直接的に蒙るなど、使用環境が過酷であり、家庭用やオフィス用の電子機器と比べて、動作保証温度を外れる可能性が高いことは否めない。
【0015】
このため、ユーザーが車両に乗り込んで、車載用のナビゲーション装置にて地図データの更新作業を行おうとした際、その車両が長時間、直射日光に曝されていた場合や非常に寒い場所に駐車していた場合、ナビゲーション装置の周辺温度が動作保証温度を外れている、あるいは動作保証温度を外れないまでも動作保証温度の限界に近づいていることが起こり得る。
【0016】
仮に動作保証温度を外れた状況でナビゲーション装置を使用するとなると、装置は動作が不安定になり、特に、データの更新作業を行う場合、DMA転送を行うデータの読み込み処理に関して読み込みエラーの発生率が高くなった。この地図データの読み込みエラーは、地図データの更新作業の失敗に直結し、最悪の場合、地図データそのものが不正となってしまう。
【0017】
地図データが不正になると、ACC電源をオンにした後で、ナビゲーション装置が起動できなくなるほどの重大な問題に発展しかねない。そこで地図データの不正を解消するために、更新作業のリセット処理を行わざるを得なくなる。しかし、リセット処理は非常に時間がかかり、地図データの更新作業時間を大幅に長期化させることになる。
【0018】
このように、データ更新時に発生する読み込みエラーは、ナビゲーション装置の起動停止やリセット処理といった深刻な事態を招くことがある。したがって、通常のナビゲーション時の記録媒体からの読み込みエラーに増して、十分な注意が払われており、地図データ更新時の読み込みエラーの発生を確実に阻止することが重要となっている。
【0019】
これを実現するためのデータ更新方法としては、データ更新作業時にナビゲーション装置周辺の温度を常に測定、監視して、ナビゲーション装置周辺の温度が動作保証温度の範囲を外れた時、更新作業を停止させてしまうことが考えられる。
【0020】
このようなデータ更新方法によれば、測定された温度が動作保証温度を外れた場合に、データの読み込みエラーが起きるよりも前に、データ更新作業そのものを停止させることによって、前記エラーの発生を防ぐことが可能である。
【特許文献1】特開2008−241573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、読み込みエラーの発生を抑えるための従来のデータ更新方法には、次のような課題が指摘されていた。すなわち、データ更新作業を停止することでデータの読み込みエラーを回避するデータ更新方法では、作業の中断時間が加わる分だけ、更新作業時間が長引くことになる。
【0022】
しかも、動作保証温度をいったん外れた装置の温度が、即座に動作保証温度の範囲内まで戻るといったことは少なく、更新作業の中断時間は、ユーザーが期待する時間よりも長くなるケースの方が多い。また、更新作業の再開時期は予測し難く、この点もユーザーにとって大きなストレスとなっている。したがって、記録媒体からのデータの読み込みエラーを防ぐと共に、更新作業を行うユーザーの使用感に対する配慮を加味して、高品位のデータ更新作業を実現することが望まれていた。
【0023】
本発明は、上記の状況を鑑みて提案されたものであり、その目的は、外部要因により読み込みエラーの発生率が高まった場合に、記録媒体からのデータの読み込み量を抑制することにより、更新作業を停止させることなく、読み込みエラーの発生を確実に防ぐことができ、且つデータ更新作業時の使用感の改善を図った、信頼性及び操作性に優れたデータ更新装置及びその方法、データ更新用記録媒体並びにナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、圧縮されたデータを記録した記録媒体から前記データを読み込むデータ読み込み手段と、圧縮状態にある前記データを伸張するデータ伸張手段と、伸張された前記データを所定の記憶手段に書き込むデータ書き込み手段、が設けられたデータ更新装置において、前記記録媒体には同一内容のデータが、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録されており、前記データ読み込み手段の近傍には温度検出手段が設置され、前記データ読み込み手段は、所定の範囲を持つ動作保証温度が予め設定されており、前記温度検出手段の検出した温度が前記動作保証温度の範囲内であるとき、前記記録媒体から前記通常圧縮データを読み込み、前記温度検出手段の検出した温度が前記動作保証温度の範囲外であるとき、前記記録媒体から前記高圧縮データを読み込むように構成されたことを特徴とするものである。
【0025】
請求項4の発明は、請求項1の発明を方法の観点から捉えた発明であって、圧縮されたデータを記録した記録媒体から前記データを読み込むデータ読み込み処理と、圧縮状態にある前記データを伸張するデータ伸張処理と、伸張された前記データを所定の記憶手段に書き込むデータ書き込み処理を行うデータ更新方法において、前記記録媒体に、同一内容のデータに関して、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録するデータ圧縮処理と、前記データ読み込み処理を行う際の温度検出を行う温度検出処理と、を含み、前記データ読み込み処理では、動作保証温度を予め設定しておき、前記温度検出処理にて検出した温度が前記動作保証温度の範囲内であるとき、前記記録媒体から前記通常圧縮データを読み込み、前記温度検出処理にて検出した温度が前記動作保証温度の範囲外であるとき、前記記録媒体から前記高圧縮データを読み込むようにしたことを特徴としている。
【0026】
以上のような発明では、温度検出手段がデータ読み込み手段近傍の温度を検出し、検出された温度が動作保証温度の範囲内であれば、データ読み込み手段は、記録媒体から通常圧縮データを読み込む。また、温度検出手段の検出した温度が動作保証温度を逸脱している場合には、記録媒体から高圧縮データを読み込むようにする。すなわち、動作保証温度を外れてデータ読み込み手段の動作が不安定となる可能性があるときには、高圧縮データを読み込むことで読み込みデータ量を少なくし、これによって、読み込みエラーの発生率を低下させている。
【0027】
なお、高圧縮データを読み込んだ場合、データ量に比例して読み込み時間は短縮できるが、高圧縮データの伸張処理に関しては、通常圧縮データの伸張時間よりも長くなり、その増大分は、高圧縮データの読み込みによる読み込み時間の短縮分を上回る。そのため、トータルとしては、高圧縮データを読み込んだ場合の方が、通常圧縮データを読み込む場合よりも、更新作業時間は長くなる。
【0028】
しかし、更新作業の停止が起きた場合のタイムロスに比べれば、更新作業時間の長期化を最小限に抑えることが可能である。しかも、動作保証温度を逸脱するような過酷な環境下にあって、更新作業を継続しているため、更新作業の遅さがユーザーにストレスを与えることが少ない。
【0029】
請求項5の発明は、請求項4に記載のデータ更新方法において、前記ディスク読み込み処理と、前記データ伸張処理と、前記データ書き込み処理を、並列に処理していくパイプライン方式によって行うことを特徴としており、パイプライン方式を採用することで、データ更新作業の効率を高めることができる。
【0030】
請求項2のナビゲーション装置は、前記記録媒体に記録した前記データは地図データであり、請求項1に記載のデータ更新装置を組み込んだことを特徴とすることを特徴とするものである。この発明では、ナビゲーション装置の地図データの更新作業に際して、読み込みエラーの発生率を抑えると共に、良好な使用感を獲得することが可能である。
【0031】
請求項3の発明は、請求項1に記載のデータ更新装置または請求項2に記載のナビゲーション装置に用いられるデータ更新用記録媒体である。この記録媒体は、同一内容のデータを、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録したことを特徴としたものである。
【0032】
このようなデータ更新用記録媒体では、同一内容のデータを圧縮率を変えて記録しているので、外気温の影響を受けてデータ読み込み手段によってデータが読み取られ難い時、読み込みデータ量の小さい高圧縮データをデータ読み込み手段に読ませることができる。そのため、読み込み処理の停止を確実に回避することが可能となる。したがって、作業の中断時間が無い分、データ更新作業の迅速化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、外部要因により読み込みエラーの発生率が高まった場合に、記録媒体からのデータの読み込み量を抑制することにより、更新作業を停止させることなく、読み込みエラーの発生を確実に防ぐことができ、且つデータ更新作業時の使用感の改善を図った、信頼性及び操作性に優れたデータ更新装置及びその方法、データ更新用記録媒体並びにナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る代表的な実施形態の一例について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態の概要を示す構成図、図2は地図データのファイルフォーマットの一例を示す説明図、図3、図4はパイプライン方式を説明するための説明図、図5は本実施形態におけるデータ読み込み処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態は、図6にて示した従来例と同じく、車載用ナビゲーション装置の地図データ更新技術に適用したものであり、図6と同一の部材に関しては同一符号を付して説明は省略する。
【0035】
(1)本実施形態の構成
図1に本実施形態の概要を示す。本実施形態は、地図データを圧縮保存しているDVD1側と、これを取り込むナビゲーション装置10側の両方に特徴がある。DVD1側の特徴は、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データLに加えて、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データHが記録されている点にある。
【0036】
通常圧縮データLと高圧縮データHは、内容的には同一の地図データが圧縮されたものであり、圧縮率の違いは圧縮方式の違いなどにより実現される。図2に、地図データのファイルフォーマットの一例を示す。図2に示すように、圧縮データはブロック数Nとなる書き込みブロックインデックス部と書き込みブロック実データ部とを持つ。
【0037】
ブロックインデックス部には1つの書き込みブロックごとに、通常圧縮データL及び高圧縮データHに関するブロックオフセットとブロックサイズが格納されている。また、書き込みブロック実データ部には前記インデックス部での通常圧縮ブロックオフセット及び高圧縮ブロックオフセットに対応して、通常圧縮ブロック及び高圧縮ブロックが格納されている。なお、圧縮率の具体的な数値としては、通常圧縮率データLの圧縮率を70%、高圧縮率データHの圧縮率をその半分の35%などと設定している。
【0038】
ナビゲーション装置10側の特徴としては、温度センサ15が設置されている点と、データ読み込み部11自体の構成にある。温度センサ15は、データ読み込み部11の近傍温度、もしくはナビゲーション装置10の内部温度を測定するためのものである。
【0039】
データ読み込み部11の構成上の特徴は次の点にある。すなわち、データ読み込み部11を含むナビゲーション装置10には、所定の範囲を持つ動作保証温度の範囲(例えば、−10℃〜80℃など)が予め設定されており、温度センサ15の測定した温度が、この動作保証温度の範囲内であるとき、DVD1から通常圧縮データLを読み込み、温度センサ15の測定した温度が、動作保証温度の範囲外であるとき、DVD1から高圧縮データHを読み込むように構成されている。
【0040】
また、本実施形態におけるデータ処理は、データ読み込み部11によるデータ読み込み処理と、データ伸張部12によるデータ伸張処理と、データ書き込み部13によるデータ書き込み処理を、並列に処理していくパイプライン方式を採用している(図3、図4参照)。
【0041】
パイプライン方式における並列処理では、図3に示すように、1ブロック目のデータ読み込み処理が終わり、2ブロック目のデータ読み込み処理が始まると同時に、1ブロック目のデータ伸張処理が始まる。そして、2ブロック目のデータ読み込み処理が終わり、3ブロック目のデータ読み込み処理が始まると同時に、2ブロック目のデータ伸張処理と、1ブロック目のデータ書き込み処理が始まる。このようにして、3つの処理が同時に並行して処理されていく。
【0042】
なお、図3では、1ブロック目から3ブロック目まで全て通常圧縮データLを読み込んだ場合を示している。ここでは、理解の容易化を図る上で、各処理における処理時間を同じ長さとしている。この図3を元にして、2ブロック目にて高圧縮データHで読み込んだ場合を図4にて説明する。
【0043】
図4にて示すように、温度センサ15の測定温度が動作保証温度の範囲外となり、2ブロック目で高圧縮データHを読み込むと、高圧縮データHの読み込みデータ量は少ないので、読み込み時間は短くて済む。ただし、高圧縮データHの伸張処理に関しては、通常圧縮データLの伸張時間よりも長くなる(図4の斜線部)。そのため、2ブロック目のデータ書き込み処理の開始タイミングも、図3のケースと比べて遅くなる。
【0044】
(2)本実施形態の動作
続いて、本実施形態におけるデータ読み込み処理の流れについて、図4のフローチャートを用いて説明する。データ読み込み部11は、まず、DVD1から書き込みブロックインデックス部を読み込む(S101)。続いて、この読み込み処理が失敗したかどうかを確認し(S102)、失敗した場合には地図データ更新エラー処理へ移行する。
【0045】
一方、インデックス部を読み込んだ場合には(S102のNo)、インデックス部における書き込みブロック数をNに設定する(S103)。続いて、不揮発性メモリSRAMから開始ブロック番号を読み込み、Iに設定する(S104)。仮にブロック番号が無ければ、Iを開始0とする。
【0046】
さらに、S105にて、温度センサ15が検出したデータ読み込み部11近傍の温度を取得し、この温度が、ナビゲーション装置10の動作保証温度の範囲内であれば(S106のYes)、DVD1から通常圧縮データLを読み込む(S107)。また、ナビゲーション装置10の動作保証温度の範囲から外れていれば(S106のNo)、DVD1から高圧縮データHを読み込む(S108)。
【0047】
次いで、通常圧縮データL又は高圧縮データHの読み込み処理が失敗したかどうかを確認し(S102)、失敗した場合には地図データ更新エラー処理へ移行する。また、圧縮データの読み込みが失敗でなければ、伸張処理を要求する(S110)。
【0048】
さらに、I番目のブロックをHDD14へ書き込み(S111)、開始ブロック番号IをHDD14の不揮発性メモリSRAMに格納する(S112)。このように、開始ブロック番号IをSRAMに格納することで、エラーが起きるたびに、開始ブロック番号Iを「開始0」から地図更新を始めなくてはならなくないといった不具合を回避することができる。なお、開始ブロック番号Iの格納場所は、不揮発性メモリSRAMに限らず、書き込みの進捗状況を記録しておける場所であるならば、HDD14の別の場所であっても構わない。
【0049】
次に、S111では、開始ブロック番号Iが、書き込みブロック数Nになったかどうかを確認し(S113)。ここで、開始ブロック番号Iが書き込みブロック数Nに満たない場合には(S113のYes)、開始ブロック番号Iを1だけ増加させて次のブロック番号に移行し(S114)、ナビゲーション装置10の動作保証温度を確認するS106まで戻る。また、開始ブロック番号Iが書き込みブロック数Nになった場合には(S113のNo)、地図データ更新処理を終了させる。
【0050】
(3)本実施形態の作用効果
以上のような本実施形態の作用効果は次の通りである。すなわち、温度センサ15にてデータ読み込み部11の近傍温度あるいはナビゲーション装置10の内部温度を測定し、測定温度がナビゲーション装置10の動作保証温度の範囲内であれば、データ読み込み部11は、DVD1から通常圧縮率データLを読み込み、測定温度が動作保証温度を外れた場合には、DVD1から高圧縮データHを読み込む。
【0051】
つまり、動作保証温度を外れてデータ読み込み部11の動作が不安定になる可能性があるとき、高圧縮データHを読み込むことで読み込みデータ量を低減し、読み込みエラーの発生率を下げることができる。
【0052】
なお、高圧縮データHを読み込むことのデメリットとしては、既に述べたように更新作業時間が長引く点にある。図4の例に従って説明すれば、2ブロック目で高圧縮データHを読み込むことで読み込み時間が短くなったとしても、高圧縮データHの伸張時間が長くなり、その上、2ブロック目のデータ書き込み処理の開始タイミングも遅くなるので、トータルな更新作業時間は長くなる。
【0053】
しかし、このような更新作業のスピードが落ちたにせよ、更新作業がいったん停止してしまった場合の中断時間の長さに比べれば、更新作業時間は短くて済む。また、本実施形態においては、パイプライン方式の採用により、作業効率の向上を図っているため、一定水準の作業効率を確保可能である。
【0054】
さらに、本実施形態では、更新作業時間が多少かかったにせよ、動作保証温度を逸脱するような過酷な環境下にあって、更新作業を中断することなく、作業を継続している。このため、更新作業を中断したまま、作業の再開タイミングが分からないといった従来のケースと比較して、その使用感には格段の差があり、ユーザーが更新作業の遅さをストレスと感じることは少ない。
【0055】
(4)他の実施形態
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、例えば、温度センサの配置箇所や具体的な構成などは適宜変更可能であり、また、動作保証温度の範囲なども選択自由である。さらに、記録媒体としてはDVDに限らずCDやSDなどでも良く、ナビゲーション装置に内蔵される記憶手段としてはハードディスクドライブに限らず、ソリッドステートドライブであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る代表的な実施形態の概要を示す構成図。
【図2】本実施形態における地図データのファイルフォーマットの一例を示す説明図外部接続機器との接続例を説明する説明図。
【図3】本実施形態におけるパイプライン方式を説明するための説明図。
【図4】本実施形態におけるパイプライン方式を説明するための説明図。
【図5】本実施形態におけるデータ読み込み処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図6】一般的なデータ更新装置の概要を示す説明図。
【符号の説明】
【0057】
1…DVD
10…ナビゲーション装置
11…データ読み込み部
12…データ伸張部
13…データ書き込み部
14…HDD
15…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮されたデータを記録した記録媒体から前記データを読み込むデータ読み込み手段と、圧縮状態にある前記データを伸張するデータ伸張手段と、伸張された前記データを所定の記憶手段に書き込むデータ書き込み手段、が設けられたデータ更新装置において、
前記記録媒体には同一内容のデータが、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録されており、
前記データ読み込み手段の近傍には温度検出手段が設置され、
前記データ読み込み手段は、所定の範囲を持つ動作保証温度が予め設定されており、前記温度検出手段の検出した温度が前記動作保証温度の範囲内であるとき、前記記録媒体から前記通常圧縮データを読み込み、前記温度検出手段の検出した温度が前記動作保証温度の範囲外であるとき、前記記録媒体から前記高圧縮データを読み込むように構成されたことを特徴とするデータ更新装置。
【請求項2】
前記記録媒体に記録した前記データは地図データであり、請求項1に記載のデータ更新装置を組み込んだことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ更新装置または請求項2に記載のナビゲーション装置に用いられるデータ更新用記録媒体であって、同一内容のデータを、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録したことを特徴とするデータ更新用記録媒体。
【請求項4】
圧縮されたデータを記録した記録媒体から前記データを読み込むデータ読み込み処理と、圧縮状態にある前記データを伸張するデータ伸張処理と、伸張された前記データを所定の記憶手段に書き込むデータ書き込み処理を行うデータ更新方法において、
前記記録媒体に、同一内容のデータに関して、通常の圧縮率で圧縮した通常圧縮データと、通常の圧縮率よりも高い圧縮率で圧縮した高圧縮データとして記録するデータ圧縮処理と、
前記データ読み込み処理を行う際の温度検出を行う温度検出処理と、を含み、
前記データ読み込み処理では、所定の範囲を持つ動作保証温度を予め設定しておき、前記温度検出処理にて検出した温度が前記動作保証温度の範囲内であるとき、前記記録媒体から前記通常圧縮データを読み込み、前記温度検出処理にて検出した温度が前記動作保証温度の範囲外であるとき、前記記録媒体から前記高圧縮データを読み込むようにしたことを特徴とするデータ更新方法。
【請求項5】
前記データ読み込み処理と、前記データ伸張処理と、前記データ書き込み処理を、並列に処理していくパイプライン方式によって行うことを特徴とする請求項4に記載のデータ更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139943(P2010−139943A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318183(P2008−318183)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】