データ画像記録装置、熱分析装置、データ画像記録方法、画像データの正規化方法、熱物性量の算出方法および記録画像の表示方法
【課題】画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することのできる画像記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置100は、測定対象物Aを動画として撮影する撮影手段1と、測定対象物Aに関する物理量を測定する測定手段2と、撮影手段1からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段31と、測定手段2により測定された測定データを、同期信号に基づいて動画の画像フレーム毎に取得し、画像上の明暗となるように2値化して、映像信号に合成して出力する信号合成手段32と、有し、信号合成手段32が、明暗に2値化された測定データを、測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力することにより、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【解決手段】画像記録装置100は、測定対象物Aを動画として撮影する撮影手段1と、測定対象物Aに関する物理量を測定する測定手段2と、撮影手段1からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段31と、測定手段2により測定された測定データを、同期信号に基づいて動画の画像フレーム毎に取得し、画像上の明暗となるように2値化して、映像信号に合成して出力する信号合成手段32と、有し、信号合成手段32が、明暗に2値化された測定データを、測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力することにより、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の物理的な状態の変化を動画撮影装置により撮影しつつ測定対象物の物性量等の物理量を計測する際に、計測された物理量等のデータをリアルタイムに撮影された画像に書き込むデータ画像記録装置、熱分析装置、データ画像記録方法、画像データの正規化方法、熱物性量の算出方法および記録画像の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の物理的な状態の変化を動画撮影装置により撮影しつつ測定対象物の物性量等の物理量を計測する際に、計測された物理量等のデータをリアルタイムに撮影された画像に書き込むデータ画像記録装置が知られている。
【0003】
このようなデータ画像記録装置としては、例えば、測定対象物の表面温度を温度センサにより測定するとともに、その測定状況を可視カメラにより撮影し、可視カメラによる撮影画像に測定された表面温度が表示されるように、撮影画像と表面温度を示す画像とを合成した合成画像を生成するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−164415号公報
【特許文献2】特開2005−345385号公報
【特許文献3】特開2011−002437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたものでは、撮影画像の各フレームの撮影のタイミングと計測された物理量のデータを取得するタイミングとが同期しておらず、各フレームの撮影のタイミングより遅れて物理量のデータが記録される。
【0006】
このため、後で、記録された画像をフレーム毎に解析した際に、画像上で測定対象物の状態変化があっても、画像上で変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、画像上で測定対象物の状態変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるデータ画像記録装置、熱分析装置、データ画像記録方法、画像データの正規化方法、熱物性量の算出方法および記録画像の表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデータ画像記録装置は、撮影画像の1フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各フレームの撮影のタイミングと測定値の取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0009】
そこで、請求項1に係る発明は、測定対象物を動画として撮影する撮影手段と、前記測定対象物に関する物理量を測定する測定手段と、前記撮影手段からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段と、前記測定手段により測定された測定データを、前記同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化して、前記映像信号に合成して出力する信号合成手段と、有し、前記信号合成手段が、前記明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力するデータ画像記録装置を特徴としている。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、前記2値化された測定データが表示される走査線が前記各画像フレームの最上位の走査線である請求項1に記載のデータ画像記録装置を特徴としている。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記信号合成手段が、前記測定データを、前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段と、前記同期信号に基づいて、前記撮影手段からの映像信号を遮断すると共に、前記信号生成手段により生成された信号を出力するアナログスイッチと、を有する請求項1または請求項2に記載のデータ画像記録装置を特徴としている。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ画像記録装置と、該データ画像記録装置により前記測定データが合成された映像信号を画像データに変換して記録可能、かつ、変換された該画像データと該画像データに含まれる前記測定データを演算処理可能とするコンピュータシステムと、を備えた熱分析装置であって、前記コンピュータシステムが、前記動画として記録された画像を表示する画像再生手段と、前記画像データから前記明暗に2値化された測定データを抽出する2値化データ抽出手段と、前記明暗に2値化された測定データを対応する文字列のデータに変換する2値化データ変換手段と、を有する画像再生ソフトウエアを搭載している熱分析装置を特徴としている。
【0013】
そして、請求項5に係る発明は、測定対象物を動画として撮影した映像信号と前記測定対象物に関する物理量の測定データとを取得し、前記測定データを、前記映像信号から分離した同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化し、前記映像信号に合成して出力する、データ画像記録方法を特徴としている。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、前記撮影手段を、赤外線画像を撮影する赤外線画像撮影手段とし、前記測定手段を、前記測定対象物の温度を測定する温度センサとして、前記赤外線画像の画像データから画像フレーム毎に各画素の赤外線強度データを抽出する赤外線強度抽出手段と、前記画像データから前記測定データとしての前記測定対象物の温度データを抽出する測定データ抽出手段と、前記画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データと該各画像フレームに対応する前記測定対象物の温度データとに基づいて、前記赤外線強度データを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた補正温度データを算出する温度補正手段と、前記補正温度データに基づいて各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データを生成する正規化画像データ生成手段と、を有する画像解析ソフトウエアを搭載している請求項4に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0015】
さらに、請求項7に係る発明は、測定対象物の赤外線画像を動画として撮影する赤外線画像撮影手段によって取得された画像データの画像フレーム毎に請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて合成され記録された前記測定対象物の温度データと、少なくとも1つの前記画像フレームの各画素の赤外線強度データと、に基づいて、前記画像フレームの各画素に対応する実効的な赤外線放射率を算出し、前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを前記実効的な赤外線放射率によって割ることにより該実効的な赤外線放射率に関して前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを正規化した補正赤外線強度データを算出し、該補正赤外線強度データに基づいて、前記画像フレームの各画素について正規化した補正温度データを算出する、画像データの正規化方法を特徴としている。
【0016】
そして、請求項8に係る発明は、前記画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように該少なくとも1つの測定データのデータ順序を並べ替えて参照する請求項6に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0017】
また、請求項9に係る発明は、前記測定対象物の裏面側から交流熱を加えつつ前記温度センサによって該測定対象物の裏面側の温度を計測した温度データとしての測定データと、前記赤外線画像撮影手段によって前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度を計測した赤外線放射強度データとしての測定データと、を解析する熱分析装置であって、前記測定対象物の裏面側の温度の温度データと前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度データを正規化して得られた温度データとが、それぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えて重ね合わせることによりデータ補完を行なうデータ補完手段と、該データ補完手段によりデータ補完された2組の正弦波形が示すデータから正弦波形がピークとなるピーク時間を取得するピーク時間取得手段と、該ピーク時間取得手段により取得された前記2組の正弦波形の各ピーク時間から各正弦波形の位相差を取得する位相差取得手段と、該位相差取得手段により取得された前記2組の正弦波形の位相差に基づいて熱拡散率および/または熱伝導率を算出する熱物性量算出手段と、を有する請求項8に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0018】
さらに、請求項10に係る発明は、請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて、複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示する記録画像の表示方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
このように構成された請求項1に係る発明によれば、信号合成手段が、動画の画像フレーム毎に測定データを画像として画像フレームの走査線上に記録させるため、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【0020】
また、請求項1に係る発明によれば、信号合成手段が、測定データを明暗で2値化した画像として記録させるため、撮影された画像を解析する際にコントラスト等に影響を受けることなく物理量を正確に読み取ることができる。
【0021】
さらに、請求項2に係る発明によれば、信号合成手段は、各フレームの最上位の走査線上に測定データを記録させるため、撮影された映像の妨げとならずに測定値を画像として記録させることができる。
【0022】
また、請求項3に係る発明によれば、アナログスイッチが同期信号に基づいて撮影手段からの映像信号を遮断すると共に生成された信号を出力するシンプルな構成により、各フレームを撮影したタイミングにおける測定値を、画像として高速で記録することができる。
【0023】
そして、請求項4に係る発明によれば、撮影画像の画像フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各画像フレームの撮影のタイミングと測定データの取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0024】
また、請求項5に係る発明によれば、コンピュータシステムに搭載されたソフトウエアが、画像にラインデータとして記録された測定データを、画像を再生しつつ抽出し、解析することにより、赤外線カメラにより撮影された画像の各画素に対して放射率補正を行なった温度画像が生成されるため、相転移等の物性変化をモニタ上で明確に目視することができるとともに、物性変化が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができる。
【0025】
さらに、請求項6に係る発明によれば、各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致しているので、撮影された画像を解析する際に、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0026】
そして、請求項7に係る発明によれば、相転移等の物性変化をモニタ上で明確に目視することができるとともに、物性変化が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、請求項8に係る発明によれば、特定の測定データの値が略連続となるように、この測定データのデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得することができる。
【0028】
さらに、請求項9に係る発明によれば、データ補完手段により正弦波形を正確に再現するので、ピーク時間取得手段により正確なピーク時間を取得でき、位相差取得手段により各正弦波形の正確な位相差を取得できるので、熱物性量算出手段により、この正確な位相差に基づいて測定対象物の正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0029】
これにより、例えば、交流熱の数周期から数十周期分のデータの重ね合わせることによってデータを補完することができるので、フレームレートがさほど大きくない一般的な赤外線画像撮影手段であっても、正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0030】
そして、請求項10に係る発明によれば、撮影された画像の画像フレームの取得のタイミングと、計測されてラインデータとして画像データに記録された物理量の取得のタイミングとが同期しているので、計測されたある測定データが略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することにより、計測された物理用のうち、少なくとも1つの物理量に注目して、この物理量の変化に対して撮影された画像がどのように変化するかが分析可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】データ画像記録装置を含むインポーズシステムXの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデータ画像記録装置本体の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の赤外線カメラからの映像信号(NTSC信号)の垂直同期信号を示すタイミングチャートである。
【図4】図1の赤外線カメラからの映像信号(NTSC信号)の水平同期信号を示すタイミングチャートである。
【図5】図4の水平同期信号の部分拡大図である。
【図6】測定データを映像信号に同期させた信号に変換する処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図2のアナログスイッチのオン・オフが切り替えられて映像信号出力端子に伝送される画像信号を示すタイミングチャートである。
【図8】図1の赤外線カメラからの映像信号(LDVS信号)に測定データを同期させる処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】図1の赤外線カメラからの映像信号(LDVS信号)へのインポーズ領域を説明するための図である。
【図10】(a)は、測定対象物の温度がT1である場合にパソコンに表示される画像を示す図であり、(b)は、測定対象物が凍り始めた瞬間(測定対象物の温度がT2(T1>T2))にパソコンに表示される画像を示す図である。
【図11】実施形態2に係る熱分析システムの全体構成を示す図である。
【図12】パソコン本体のハードディスクに搭載されたソフトウエアの構成を示す図である。
【図13】温度補正処理の詳細な流れを説明するフローチャートである。
【図14】実施形態3のパソコン本体のハードディスクに搭載されたソフトウエアの構成を示す図である。
【図15】測定対象物に加えられる正の勾配を有する交流熱流束の正弦波を示す図である。
【図16】熱物性量算出処理の流れを説明するフローチャートである。
【図17】(a)は、温度データと時間との関係を示すグラフであり、(b)は、(a)に示すグラフに対してオフセット処理して得られた正弦波のグラフを示す図である。
【図18】(a)は、オフセット処理後のセンサ側温度データの正弦波形であり、(b)は、オフセット処理後の表面側温度データの正弦波形である。
【図19】(a)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(1)について抽出した図であり、(b)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(2)について抽出した図であり、(c)は、(a)に示す温度データおよび(b)に示す温度データを重ね合わせた図である。
【図20】画像フレームの取得周期が交流熱流束の周期よりも大きい場合の、オフセット処理後の温度データと時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のデータ画像記録装置の実施の形態を、図1から図10に示す実施形態1に基づいて説明し、このデータ画像記録装置を備えた熱分析装置の実施の形態を、図11から図13に示す実施形態2に基づいて説明する。
【0033】
[実施形態1]
(データ画像記録装置を含むインポーズシステムの全体構成)
図1は、データ画像記録装置を含むインポーズシステムXの全体構成を示すブロック図である。
【0034】
インポーズシステムXは、図1に示すように、データ画像記録装置100と、このデータ画像記録装置100により生成された画像信号をパソコンで表示可能とするために信号の変換を行うキャプチャボード110と、キャプチャボード110により変換された信号に基づいて画像をモニタに表示するパソコンPCと、データ画像記録装置100により生成された画像を解析する解析装置120と、を有している。
【0035】
また、データ画像記録装置100は、測定対象物Aを撮影する赤外線カメラ1(撮影手段)と、測定対象物Aに関する物理量を測定する測定センサ2(測定手段)と、赤外線カメラ1からの映像信号および測定センサ2からの測定データが入力され、映像信号に測定データを画像情報として記録させた画像信号を生成するデータ画像記録装置本体3と、を有している。
【0036】
赤外線カメラ1は、撮影した測定対象物Aの映像信号をNTSC信号(National Television System Committee)またはLVDS信号(Low Voltage Differential Signaling)としてデータ画像記録装置本体3に出力する。
【0037】
なお、赤外線カメラ1に限定されず、可視カメラであってもよく、また、赤外線カメラと可視カメラとの双方が設けられている構成などであってもよい。
【0038】
ここで、解析装置120には温度制御プログラム等が記憶されており、測定対象物Aが載置される台Bの微妙な温度調整を行う。
【0039】
そして、測定センサ2は、台Bの温度を測定することにより、室温などの周囲環境の温度に左右されることなく測定対象物Aのうち台Bとの接触部分の正確な温度を取得することができる。
【0040】
また、この測定センサ2は、取得した温度に関する測定データをアナログ信号またはデジタル信号によりデータ画像記録装置本体3に出力する。
【0041】
なお、この測定データは複数であってもよく、アナログ信号およびデジタル信号の双方の形式でデータ画像記録装置本体3に出力される構成であってもよい。
【0042】
(データ画像記録装置本体の構成)
図2は、図1のデータ画像記録装置本体3の構成を示すブロック図である。
【0043】
データ画像記録装置本体3は、図2に示すように、映像信号(NTSC信号)から同期信号を分離する同期信号分離手段31と、測定センサ2により測定された測定データを、同期信号に基づいて動画の画像フレーム毎に取得し、画像上の明暗となるように2値化して、映像信号に合成して出力する信号合成手段32と、クロック信号を発生するクロック信号発生部33と、映像信号入力端子36と、映像信号出力端子37と、を有している。
【0044】
信号合成手段32は、明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線(デジタル信号の場合には画素列を意味する)上に表示するように出力する。
【0045】
また、この信号合成手段32は、測定データを、同期信号に基づいて映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段34と、同期信号に基づいて、赤外線カメラ1からの映像信号を遮断すると共に、信号生成手段34により生成された信号を出力するアナログスイッチ35と、を有している。
【0046】
さらに、信号生成手段34は、測定データを時系列に並べる(シリアル化処理する)シリアル化手段341と、シリアル化処理された測定データを、映像信号に同期させた信号に変換するようにタイミング調整を行うタイミング調整手段342と、有している。
【0047】
また、データ画像記録装置本体3は、測定データ入力端子38a(アナログ用)、38b(デジタル用)と、測定データ出力端子39a(アナログ用)、39b(デジタル用)と、測定データ入力端子38aと信号合成手段32とに接続されたADC(アナログ・デジタルコンバータ)40と、信号合成手段32と測定データ出力端子39aとに接続されたDAC(デジタル・アナログコンバータ)41と、を有している。
【0048】
さらに、データ画像記録装置本体3は、インターフェースとしてのCPU42と、パソコンPCに接続するためのUSBポート43と、解析装置120に接続するためのRS232Cポート44と、を有している。
【0049】
次に、データ画像記録装置100による画像生成処理について映像信号がNTSC信号である場合とLVDS信号である場合とに分けて説明する。
【0050】
[NTSC信号の場合]
(映像信号の入力)
図3は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(NTSC信号)の垂直同期信号(VSTNC)を示すタイミングチャートであり、図4は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(NTSC信号)の水平同期信号(HSYNC)を示すタイミングチャートであり、図5は、図4の水平同期信号(HSYNC)の部分拡大図である。
【0051】
赤外線カメラ1から伝送された映像信号は、NTSC信号によりデータ画像記録装置本体3の映像信号入力端子36に入力され、同期信号分離手段31およびアナログスイッチ35に出力される。
【0052】
この映像信号の垂直同期信号(VSYNC)は、図3に示すようなタイミングチャートであって垂直同期信号の周期が1Vである。
【0053】
また、映像信号の水平同期信号(HSYNC)は、図4および図5に示すようなタイミングチャートであって水平同期信号の周期が1Hである。
【0054】
(映像信号に同期させた測定データの生成)
また、図6は、測定データを映像信号に同期させた信号に変換する処理を説明するためのタイミングチャートであり、図7は、図2のアナログスイッチ35のオン・オフが切り替えられて映像信号出力端子37に伝送される画像信号を示すタイミングチャートである。
【0055】
測定データが信号生成手段34に入力されると、シリアル化手段341により測定データが時系列化される。
【0056】
さらに、図6に示すように、測定データは、タイミング調整手段342によりタイミング調整が行われ、測定データのビット値「1」部分では電圧Vmax、ビット値「0」部分では電圧Vminの電圧が出力されることにより2値化された信号に変換される。
【0057】
なお、図6の「t1」は、映像信号の水平同期信号の発生が開始されたときからインポーズが開始されるまでの時間を示し、「t2」は、映像信号の水平同期信号の発生が開始されたときからインポーズが終了するまでの時間を示し、「t3」は、インポーズされる測定データの1ビット分の時間を示し、「t4」は、待ち時間を含んだ測定データの1文字(スタートビット+8ビット)分の時間を示し、「t5」は、映像信号の水平同期信号(HSYNC)の水平同期信号の1周期(=1H)を示す。
【0058】
また、「Vp」は、NTSC信号のペデスタルレベル(映像信号において輝度の基準となるレベル)を示す。
【0059】
(アナログスイッチの切替え)
そして、アナログスイッチ35は、各フレームの最上位の走査線(図7に示すN番目の水平同期信号)およびフレームの上から2段目の走査線(図7に示す(N+1)番目の水平同期信号)については、図6に示す変換された測定データが映像信号出力端子37に伝送され、これらの走査線以外の走査線については映像信号がそのまま映像信号出力端子37に伝送されるように、オン・オフの切り替えを行う。
【0060】
このようにして、映像信号出力端子37へ伝送された信号はキャプチャボード110を介してパソコンPCに出力され、パソコンPCのモニタ上に画像が表示される(図10(a)および(b)参照)。
【0061】
[LVDS信号の場合]
図8は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(LVDS信号)に測定データを同期させる処理を説明するためのタイミングチャートであり、図9は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(LVDS信号)へのインポーズ領域を説明するための図である。
【0062】
赤外線カメラ1が撮影した測定対象物Aの映像信号がLVDS信号である場合は、図2に示すように、映像信号(Data Input)、クロック信号(Data Clock)および同期信号(Data Sync)が信号生成手段34に入力される。
【0063】
そして、測定データが信号生成手段34に入力されると、上記と同様にシリアル化手段341により測定データが時系列化され、タイミング調整手段342によりシリアル化処理された測定データが映像信号に同期させた信号に変換される。
【0064】
このように生成された測定データは、例えば図9に示すように、各フレームの構成が324×256画素である場合、各フレームの最上位の画素列(0番目から323番目)およびフレームの上から2段目の画素列(324番目から647番目)については、2値化された画像として変換された測定データが記録され、これらの画素列以外については映像信号のままである画像信号がキャプチャボード110を介してパソコンPCに出力されパソコンPCのモニタ上に画像が表示される(図10(a)および(b)参照)。
【0065】
[解析処理]
図10(a)は、測定対象物Aの温度がT1である場合のパソコンPCに表示される画像を示す図であり、図10(b)は、測定対象物Aが凍り始めた瞬間(測定対象物Aの温度がT2(T1>T2))にパソコンPCに表示される画像を示す図である。
【0066】
実験状況を赤外線カメラ1により撮影し、データ画像記録装置100により生成された画像を解析装置120が解析することにより各フレームが撮影されたタイミングにおける測定対象物Aの物理量(温度)を取得することができる。
【0067】
例えば、図10(a)に示す状況のように、測定対象物Aである植物が載置された台Bの温度を徐々に下げていくと、ある瞬間から測定対象物Aが凍り始める。
【0068】
そして、この凍り始める瞬間に発熱が起こり、測定センサ2が検知する温度はわずかに上昇する。
【0069】
このため、解析装置120が各フレームに画像として記録された温度を解析し、徐々に下がってきた温度がわずかに上昇したタイミングが、測定対象物Aが凍ったタイミングであるとして画像上の変化を認識できる。
【0070】
このように、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することにより、例えば、測定対象物Aの位置情報を逐次取得し、各位置における温度の差異を解析することにより、測定対象物Aの弾性変形や塑性変形に関する解析を行うことができる。
【0071】
さらに、熱に対する刺激関数を予め記憶させておくことにより、これらの解析結果から物性値への換算をすることができる。
【0072】
また、例えば、交流熱流束を測定対象物Aの一部に加えて、その拡散を赤外線カメラ1により撮影する際、刺激変動(周波数や振幅など)が各フレームに画像として記録された測定値とともに取り込まれることにより、正確な可視化熱分析を行うことができる。
【0073】
さらに、映像信号を時間軸において入れ替えることで、繰り返し行われる現象では、熱による刺激と応答の基準点からの位相遅れの順に信号を並び替えることができ、複数の映像信号を組み合わせることで疑似高速化が可能となる。
【0074】
このように構成された実施形態1に係るデータ画像記録装置100によれば、信号合成手段32(信号生成手段34およびアナログスイッチ35)が、動画の画像フレーム毎に測定データを画像として画像フレームの走査線上に記録させるため、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【0075】
また、信号合成手段32が、測定データを明暗で2値化した画像として記録させるため、撮影された画像を解析する際にコントラスト等に影響を受けることなく物理量を正確に読み取ることができる。
【0076】
さらに、信号合成手段32は、各フレームの最上位の走査線上(N番目の水平同期信号)に測定データを記録させるため、撮影された映像の妨げとならずに測定値を画像として記録させることができる。
【0077】
なお、各フレームの最上位の走査線だけでなく、複数段の走査線(最上位および上から2段目の走査線など)についても測定データを記録させるように構成することが可能である。
【0078】
このような構成によれば、パソコンPCのモニタに画像が表示される際に複数段のうちいずれかの段の走査線が切れてしまうことがあっても、他の段の走査線上に記録された測定データを解析することにより物理量を読み取ることができる。
【0079】
また、アナログスイッチ35が同期信号に基づいて赤外線カメラ1からの映像信号を遮断すると共に生成された信号を出力するシンプルな構成により、各フレームを撮影したタイミングにおける測定値を、画像として高速で記録することができる。
【0080】
そして、このようなデータ画像記録方法によれば、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、上述した実施形態では、映像信号はNTSC信号またはLVDS信号として伝送される場合について説明したが、本発明に係るデータ画像記録装置においては、例えばPAL信号(Phase Alternating Line)など、どのような形式であってもよい。
【0082】
[実施形態2]
一般に、物質はその種類や状態等によって赤外線の放射率が異なるため、測定対象物の温度が一様であっても、測定対象物を構成する物質の種類や状態等が異なる部分からは異なる強度の赤外線が放射される。
【0083】
従来の赤外線カメラでは、測定対象物のうち画像上の各ピクセル部分に対応する微小領域の「温度」を計測しているのではなく、これら微小領域から放射される「赤外線強度データ」を計測している。
【0084】
すなわち、物質の種類や状態等が異なる部分から成る測定対象物を撮影すると、この測定対象物の温度が一様であっても赤外線強度データが異なることにより、物質の種類や状態などが異なる部分はそれぞれ異なる温度であるように表示されてしまう。
【0085】
また、従来、「赤外線強度データ」の測定から測定対象物の「温度」を計測するために、予め物質の種類や状態ごとに赤外線の放射率を調べておき、放射率の違いによる赤外線放射強度の違いを補正していた。
【0086】
しかしながら、このような従来の方法は、予め調べておいた平均的な放射率によって補正を行なうもので、実測値によるリアルタイム(動画のフレーム毎)の補正を行なうものではなく、しかも、画像の各画素に対して補正がなされるものではなかった。
【0087】
そこで、実施形態2として、実施形態1のデータ画像記録装置100を用いた熱分析システム200によって、赤外線カメラ56により撮影された画像のフレーム毎に各画素に対して放射率補正を行なった温度画像を生成する方法、および、このような温度画像を生成する熱分析システムについて説明する。
【0088】
[熱分析システムの全体構成]
図11は、実施形態2に係る熱分析システム200(熱分析装置)の全体構成を示す図である。
【0089】
図11に示すように、実施形態2に係る熱分析システム200は、本発明のデータ画像記録装置本体51と、温調用テーブル50に固定され測定対象物を動画として撮影する赤外線カメラ56(赤外線画像撮影手段)と、測定対象物の温度を調節する温度調節装置53と、コンピュータシステム(以下、パソコン)PCとによって構成されている。
【0090】
[温度調節装置]
温度調節装置53は、測定対象物Cの温度を調整する温調ユニット55と、温調ユニット55を制御する温調コントローラ52と、によって構成されている。
【0091】
温調ユニット55は、温調ユニット本体部80の上部に測定対象物Cが載置される載置部81を有しており、載置部81の上部にはサーモパイル等の温度センサ83が設けられている。
【0092】
薄くサンプリングされた測定対象物Cを載置部81に載置すると測定対象物Cは温度センサ83に直接接触するので、温度センサ83によって測定対象物Cの温度を正確に測定することができる。
【0093】
また、温調ユニット本体部80には、ヒーターやペルチェ素子等の温調素子82が内蔵されている。
【0094】
そして、温調コントローラ52は、パソコン本体57からの制御信号により、温調素子82から放出または吸収される熱量をコントロールして、測定対象物Cの温度を精密に制御することができる。
【0095】
[コンピュータシステム(パソコン)の構成]
パソコンPCは、パソコン本体57と、マウス58と、キーボード59と、モニタ60と、を有している。
【0096】
また、パソコン本体57は、CPUやRAMなどが搭載されたマザーボード(図示省略)と、ビデオキャプチャボード84と、ハードディスク85(大容量記憶媒体)と、を有している。
【0097】
[熱分析システムの接続]
赤外線カメラ56は、データ画像記録装置本体51のビデオ入力端子(図示省略)に接続され、データ画像記録装置本体51のビデオ出力端子(図示省略)は、パソコンPCに内蔵されたビデオキャプチャボード84のビデオ入力端子(図示省略)に接続される。
【0098】
また、温調ユニット55の温度センサ83の出力端子(図示省略)は、データ画像記録装置本体51のデータ入力端子(図示省略)に接続され、データ画像記録装置本体51とパソコンPCとはUSBポートを介して接続される。
【0099】
そして、温調ユニット55と温調コントローラ52とが接続され、温調コントローラ52とパソコンPCとはRS232Cポートを介して接続される。
【0100】
[データ画像記録装置本体の構成]
データ画像記録装置本体51の具体的な構成は、図2に示す実施形態1のデータ画像記録装置本体3と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
なお、本実施の形態に係るデータ画像記録装置本体51は、赤外線カメラ56から出力される動画の画像データの各画像フレームの記録開始時点に測定された、温度センサ83によって測定された温度データT(n)を含む測定データを、明暗の画像として2値化して画面最上部の走査線に対応する複数のピクセルに上書きする。以下、この記録された測定データを「ラインデータ」という。
【0102】
そして、この測定データが上書きされた動画の画像を動画ファイルとしてパソコンPCのハードディスク85(大容量記憶媒体)に記録する。
【0103】
なお、動画ファイルがパソコンPCから読み込み可能になっていれば、測定データを上書きした動画ファイルを記録する大容量記憶媒体は、必ずしもハードディスクである必要はなく、例えば、ブルーレイディスクなどであってもよい。
【0104】
[パソコンに搭載されるソフトウエアの構成]
図12は、実施形態2のパソコン本体57のハードディスク85に搭載されたソフトウエアの構成を示す図であり、図12に示す矢印はデータの流れを示している。
【0105】
図12に示すように、ハードディスク85には、温調コントローラ52を制御する温調コントローラ制御用ソフトウエア61と、ビデオキャプチャボード84からパソコンPCに取り込んだ画像信号をTIFFなどの圧縮されないファイル形式の動画ファイルとしてハードディスク85に記録する録画再生ソフトウエア62と、画像解析を行なう画像解析ソフトウエア63とが予めインストールされている。
【0106】
これらのソフトウエアは、ハードディスク85に搭載されたOSプログラムを介して、RAM上のメモリー領域を作業領域としてCPUにより演算処理されて実行される。
【0107】
画像解析ソフトウエア63は、動画ファイルとして記録された画像データの画像フレーム毎に記録されたラインデータを対応する文字列に変換すると共に、パソコンPCのモニタ60に(画像フレーム毎に、または連続して)表示する画像再生プログラム64(画像再生ソフトウエア)と、動画ファイルとして記録された画像に対して放射率補正を行い、放射率の違いによる赤外線強度データの違いを補正する放射率補正プログラム65(画像解析ソフトウエア)とを有している。
【0108】
画像再生プログラム64は、動画ファイルとして記録された画像をパソコンPCのモニタ60に表示されたウインドウ上に表示する画像再生ルーチン66と、データ画像記録装置本体3により画像フレーム毎に明暗の画像として記録されたラインデータを画像データから抽出するラインデータ抽出ルーチン67と、ラインデータ抽出ルーチン67によって抽出されたラインデータを対応する文字列に変換するラインデータ変換ルーチン68と、ラインデータ変換ルーチン68により文字列に変換されたデータを上記のウインドウ上に表示するラインデータ表示ルーチン69と、を有している。
【0109】
放射率補正プログラム65は、赤外線強度抽出ルーチン70(赤外線強度抽出手段)と、温度データ抽出ルーチン71(温度データ抽出手段)と、温度補正ルーチン72(温度補正手段)と、正規化画像データ生成ルーチン73(正規化画像データ生成手段)と、補正動画ファイル記録ルーチン74と、を有している。
【0110】
赤外線強度抽出ルーチン70は、ハードディスク85に記録された動画ファイルに含まれる画像データから画像フレーム毎の各ピクセルの赤外線強度データI(n)i,jを抽出する(ただし、(n)は、フレーム番号であり、(i,j)は、画像上のピクセルの位置を示すインデックスである)。
【0111】
温度データ抽出ルーチン71は、上述のラインデータ変換ルーチン68によって対応する文字列に変換されたデータから各画像フレームに対応する温度データT(n)を抽出する。
【0112】
温度補正ルーチン72は、画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データI(n)i,jと、これらの各画像フレームに対応する測定対象物の温度データT(n)とに基づいて、赤外線強度データI(n)i,jを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた
【0113】
各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データD(n)i,j(温度画像データ)を生成する。
【0114】
また、補正動画ファイル記録ルーチン74は、温度補正ルーチン72により各画像フレームの各ピクセルに正規化された画像データD(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、ハードディスク85に記録する。
【0115】
《温度補正処理の例1》
赤外線強度抽出ルーチン70によって抽出された複数の画像フレームに対応する赤外線強度データのうち、n番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n)i,j、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+1)i,j(ただし、(n),(n+1)は、フレーム番号;i,jは、画像上の画素の位置を示す指標)とし、温度データ抽出ルーチン71によって抽出された複数の画像フレームに対応する測定対象物の温度データのうち、n番目の画像フレームに対応する温度データをT(n)とし、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データI(n+1)i,jを各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られ
【0116】
【0117】
〈式(A)の説明〉
赤外線強度データI(n)i,jと温度データT(n)との間には、シュテファン・ボルツマンの法則により、次式(A1)の関係が成り立つ。
I(n)i,j=ρi,jσ(T(n))4=ki,j(T(n))4 ・・・(A1)
(ただし、T(n)は、ケルビン温度:単位[K];σは、シュテファン・ボルツマン定数;ρi,jは、赤外線放射率)
【0118】
なお、式(A1)におけるki,jを、各ピクセルの実効放射率ki,jとする。
【0119】
第nフレームの赤外線強度データI(n)i,jを第nフレームの温度データT(n)で割ることによって、各ピクセルの実効放射率ki,jを算出する。
【0120】
この実効放射率ki,jによって第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jを割ること
【0121】
る。
【0122】
これらの一連の計算より
【0123】
すなわち、式(A)を得ることができる。
【0124】
したがって、式(A)には、実効放射率ki,jによって第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jを割る計算が含まれており、式(A)によって算出された補正温度データ
【0125】
《温度補正処理の例2》
赤外線強度抽出ルーチン70によって抽出された複数の画像フレームに対応する赤外線強度データのうち、n番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n)i,j、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+1)i,j、n+2番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+2)i,j(ただし、(n),(n+1),(n+2)は、フレーム番号;i,jは、画像上の画素の位置を示す指標)とし、温度データ抽出ルーチン71によって抽出された複数の画像フレームに対応する測定対象物Cの温度データのうち、n番目の画像フレームに対応する温度データをt(n)、n+1番目の画像フレームに対応する温度データをt(n+1)とし、n+2番目の画像フレームに対応する赤外線強度データI(n+2)i,jを各画素に
【0126】
によって算出する。
【0127】
〈式(B)の説明〉
赤外線強度データI(n)i,jと温度データT(n)との間には、シュテファン・ボルツマンの法則により、次式(A1)の関係が成り立つ。
I(n)i,j=ρi,jσ(T(n))4=ki,j(T(n))4 ・・・(B1)
(ただし、T(n)は、ケルビン温度:単位[K];σは、シュテファン・ボルツマン定数;ρi,jは、赤外線放射率)
【0128】
なお、式(B1)におけるki,jを、各ピクセルの実効放射率ki,jとする。
【0129】
式(B1)を、ある温度t0の近傍で展開して1次近似して、第nフレームの赤外線強度データI(n)i,jと第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jとの差分を取ると、次式(B2)が得られる。
I(n+1)i,j−I(n)i,j=τ・ki,j(t(n+1)−t(n) ・・・(B2)
(ただし、T(n)=t0+t(n),τ=4×t03)
【0130】
各ピクセルの実効放射率ki,jを、式(B2)から得た次式(B3)によって算出する。
この実効放射率ki,jによって第n,n+2フレームの赤外線強度データI(n)i,j,I(n+2)i,j
【0131】
することによって、第n+2フレームの放射率補正された温度値である補正温度データ
【0132】
すなわち、式(B)を得ることができる。
【0133】
したがって、式(B)には、実効放射率ki,jによって第n,n+2フレームの赤外線強度データI(n)i,j,I(n+2)i,jを割る計算が含まれており、式(B)によって算出された補正温
【0134】
[熱分析の手順]
次に、熱分析システム200による測定対象物Cの温度変化に対する物性特性の変化に関する熱分析の手順について説明する。
【0135】
〔測定〕
まず、データ画像記録装置本体51、温調コントローラ52、赤外線カメラ56、および、パソコンPCを起動して熱分析処理を開始する。
【0136】
次に、パソコンPC上で温調コントローラ制御用ソフトウエア61を起動して、この温調コントローラ制御用ソフトウエア61のウインドウ上で、例えば、時間に対して測定対象物Cの温度がリニアに上昇するように温調ユニット55の制御を設定する。
【0137】
そして、パソコンPC上で録画再生ソフトウエア62を起動すると、データ画像記録装置本体51のビデオ出力端子から出力される画像信号(図2に示す信号合成手段32により合成された信号)がビデオキャプチャボード84を介してパソコンPCに取り込まれ、赤外線カメラ56によって撮影された画像が録画再生ソフトウエア62のウインドウに映し出される。
【0138】
なお、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号はLVDSなどのデジタル信号であるのが望ましいが、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号がNTSCなどのアナログ信号の場合でも、最終的にはビデオキャプチャボード84によって量子化されたデジタルデータ(画像データ)に変換されるので、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号はNTSCなどのアナログ信号であってもよい。
【0139】
また、この画像データには、各画像フレームの記録開始時点に計測された温度データT(n)を含む測定データがラインデータとして記録されている。
【0140】
そして、この画像を、温調コントローラ制御用ソフトウエア61による温調ユニット55の一連の制御が終了するまで、録画再生ソフトウエア62によってハードディスク85に動画ファイルとして録画(記録)する。
【0141】
なお、温調コントローラ制御用ソフトウエア61による温調ユニット55の制御の開始および終了と、録画再生ソフトウエア62による録画の開始および終了とを連動させてもよい。
【0142】
〔データ解析〕
次に、パソコンPC上で画像解析ソフトウエア63を起動して、ハードディスク85に記録された動画ファイルについて記録データの解析を行う。
【0143】
具体的には、画像再生プログラム64により、動画ファイルとして記録された画像が再生され、この画像から各画像フレームに記録されたラインデータが抽出され、抽出されたラインデータが対応する文字列に変換され、この変換された文字列などがモニタ60のウインドウに表示される。
【0144】
実施形態2に係る熱分析システム200では、放射率補正プログラム65により、次のような温度補正処理が行われる。
(温度補正処理)
【0145】
図13は、温度補正処理の詳細な流れを説明するフローチャートである。
【0146】
図13に示すように、赤外線強度抽出ルーチン70が、ハードディスク85に記録された動画ファイルに含まれる画像データから各ピクセルの赤外線強度データI(n)i,jを抽出する(赤外線強度抽出処理(ステップS1))。
【0147】
そして、温度データ抽出ルーチン71が、ラインデータ変換ルーチン68が変換した画像フレーム毎に対応する温度データT(n)を抽出する(温度データ抽出処理(ステップS2))。
【0148】
次に、温度補正ルーチン72が、画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データ(I(n)i,j)と、これらの各画像フレームに対応する測定対象物の温度データ(T(n))とに基づいて、赤外線強度データ(I(n)i,j)を各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正
を用いて算出する(温度補正処理(ステップS3))。
【0149】
規化画像データ生成処理(ステップS4))。
【0150】
また、補正動画ファイル記録ルーチン74が、正規化画像データ生成処理により各ピクセルに赤外線放射率に関して正規化された画像データD(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、ハードディスク85に記録する(補正動画ファイル記録処理(ステップS5))。
【0151】
〈本実施例の作用効果〉
このようにして記録された補正動画ファイルを再生すると、赤外線放射率に関して正規化され、赤外線放射率に影響されない温度のみの情報である温度画像としてモニタ60に表示することができる。
【0152】
例えば、温調コントローラ制御用ソフトウエア61を制御して温度センサ83の温度を徐々に下げていくと、載置部81に載置された測定対象物Cはある瞬間から凍り始め、この凍り始める瞬間にわずかに発熱が起こる。
【0153】
そして、このような温度制御を行った場合、温度画像がモニタ60に表示されるため、わずかな発熱が例えば明るさや色の違いなどによって画像に表されるため、相転移等の物性変化をモニタ60上で明確に目視することができるとともに、物性変化(画像上の変化)が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができる。
【0154】
また、例えば測定対象物Cに熱を与えていった場合、この測定対象物Cのうち各ピクセルに対応する微小領域毎の温度の違いをモニタ60上で目視できるため、ピクセル単位での熱の流れを把握することができる。
【0155】
さらに、赤外線カメラ56により撮影した後に測定対象物Cが凍り始めたタイミングでの温度のみを取得するなど、後から各画像フレームの一部を任意に抽出して熱分析を行うことができる。
【0156】
上述したように、本発明に係るデータ画像記録装置100は、撮影画像の画像フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各画像フレームの撮影のタイミングと測定データの取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0157】
そして、本実施例では、パソコンPCに搭載された放射率補正プログラム65が、画像にラインデータとして記録された測定データを、画像を再生しつつ抽出し、解析することにより、赤外線カメラ56により撮影された画像の各画素に対して放射率補正を行なった温度画像を生成することが可能になる。
【0158】
このように、本発明に係る熱分析システム200によれば、物理量の測定データを撮影画像の1つの画像フレーム毎に画像情報として記録できるので、記録された画像に書き込まれた測定データを、後から、しかも、撮影時の画像フレーム毎に正確に解析することができる。
【0159】
[実施形態3]
従来から、交流熱流束を利用して測定対象物の熱拡散率や熱伝導率を測定する方法が知られている(特許文献2、特許文献3等参照)。
【0160】
特許文献2に記載の発明では、ヒーター等により測定対象物の裏面側から表面側に交流熱流束を生じさせた状態で測定対象物の裏面側の温度と表面側の温度とを計測して、計測された測定対象物の裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθを取得して、次式に基づいて測定対象物の熱拡散率αを導出している。
【0161】
ただし、πは円周率、fはヒーター等により加えられる交流熱の周波数、dは測定対象物の厚さである。
【0162】
また、熱伝導率λは、測定対象物の熱拡散率α、密度ρ、比熱容量cから、次式
λ=ρ・c・α
によって導出される。
【0163】
ところで、本発明の実施形態2に係る熱分析システム200でも、温調ユニット55を制御することにより測定対象物Cの裏面側(温度センサ83側)から交流熱を加えつつ、温度センサ83によって測定対象物Cの裏面側の温度を計測し、赤外線カメラ56によって測定対象物Cの表面側の赤外線放射強度を計測してデータとして記録し、これらの記録されたデータから測定対象物Cの裏面側の温度変化と表面側の温度変化とを解析することは可能である。
【0164】
一般に、交流熱流束を利用した測定対象物の熱拡散率や熱伝導率の測定では、測定対象物の材質や厚さなどによって加える交流熱の周波数を変えるが、通常は加える交流熱の周波数が数[Hz]〜数百[Hz]程度であるのに対して、一般的な赤外線カメラのフレームレートは毎秒30フレームである。
【0165】
このため、実施形態2に係る熱分析システム200では、測定対象物Cの交流的温度変化1周期当たりの温度データのデータ数が0〜30個程度になるので、1周期分の温度データだけでは、交流的温度変化の正弦波形を正確に再現するには温度データのデータ数が不十分である。
【0166】
測定対象物Cの裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθを正確に得るには、交流的温度変化がピークとなる時間(ピーク時間)を正確に得る必要があるので、実施形態2に係る熱分析システム200では、正確な熱拡散率αや熱伝導率λを算出することができない。
【0167】
そこで、実施形態3では、画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように、この測定データのデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得する。
【0168】
具体的には、温度センサ83によって計測された測定対象物Cの裏面側の温度の温度データと、赤外線カメラ56によって計測された測定対象物Cの表面側の赤外線放射強度を正規化して得られた温度データとがそれぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えることにより、これらの交流的温度変化の位相差Δθを取得し、これに基づいて熱拡散率や熱伝導率を導出する。
【0169】
[熱分析システムの全体構成]
図11に、実施形態3に係る熱分析システム300(熱分析装置)の全体構成が示されている。
【0170】
熱分析システム300の[熱分析システムの全体構成]、[温度調節装置]、[コンピュータシステム(パソコン)の構成]、[熱分析システムの接続]、[データ画像記録装置本体の構成]については、実施形態2に係る熱分析システム200と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0171】
[パソコンに搭載されるソフトウエアの構成]
図14は、実施形態3に係るパソコン本体57のハードディスク85に搭載されたソフトウエアの構成を示す図であり、図14に示す矢印はデータの流れを示している。
【0172】
図14に示すように、ハードディスク85には、温調コントローラ制御用ソフトウエア61と、録画再生ソフトウエア62と、画像解析ソフトウエア63とが予めインストールされており、これらのうち、温調コントローラ制御用ソフトウエア61と録画再生ソフトウエア62とは実施形態2のそれらと同一の構成となっている。
【0173】
また、画像解析ソフトウエア63は、画像再生プログラム64と、放射率補正プログラム65と、熱物性量算出プログラム90(熱物性量算出プログラム)とを有しており、これらのうち、画像再生プログラム64と放射率補正プログラム65とは実施形態2のそれと同一の構成となっている。
【0174】
熱物性量算出プログラム90は、温度センサ83によって測定された測定対象物Cの裏面側の温度の温度データT(n)(以下、これを「センサ側温度データT(n)」とする。)と、赤外線カメラ56により得られた赤外線強度データI(n)i,jに基づいて算出される測定対象
【0175】
熱物性量算出プログラム90は、オフセットルーチン91(オフセット手段)と、データ補完ルーチン92(データ補完手段)と、ピーク時間取得ルーチン93(ピーク時間取得手段)と、位相差取得ルーチン94(位相差取得手段)と、熱物性量算出ルーチン95(熱物性量算出手段)とを有している。
【0176】
オフセットルーチン91は、上記のセンサ側温度データT(n)と上記の表面側温度データ
処理を行う。
【0177】
データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理されたセン
期に等しいサンプリング周期で分割し、それらの複数のサンプリング周期の各周期に含まれる温度データを抽出し、抽出した温度データを並び替えて重ね合わせて、少なくともサンプリング周期の1周期分の温度データを補完することにより、センサ側温度データT(n)
の補完データを生成する。
【0178】
そして、ピーク時間取得ルーチン93は、データ補完ルーチン92により生成された2組の補完データについて、それらの交流的温度変化がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ取得する。
【0179】
また、位相差取得ルーチン94は、ピーク時間取得ルーチン93により取得された2組の補完データの各ピーク時間に基づいて、これら2つの正弦波形の位相差を算出する。
【0180】
さらに、熱物性量算出ルーチン95は、位相差取得ルーチン94により取得された2つの正弦波形の位相差と、温調コントローラ制御用ソフトウエア61等により設定された交流熱の周波数と、予め測定され、予め熱物性量算出プログラム90を操作して入力された測定対象物Cの厚さ、密度、比熱容量とに基づいて測定対象物Cの熱拡散率や熱伝導率を算出する。
【0181】
[熱分析の手順]
次に、熱分析システム300による測定対象物Cの温度上昇に対する熱拡散率や熱伝導率の変化に関する熱分析の手順について説明する。
【0182】
さらに具体的には、この熱分析では、熱分析システム300により、図15に示すような全体として正の勾配を有する交流熱流束を測定対象物Cに加えつつ計測された、測定対象物Cの裏面側の温度と赤外線カメラ56によって取得された赤外線強度に基づいて算出される測定対象物Cの表面側の温度とから、測定対象物Cの融解前後における熱拡散率や熱伝導率の変化を計測する。
【0183】
〔測定〕
まず、データ画像記録装置本体51、温調コントローラ52、赤外線カメラ56、および、パソコンPCを起動して熱分析処理を開始する。
【0184】
次に、パソコンPC上で温調コントローラ制御用ソフトウエア61を起動して温調コントローラ制御用ソフトウエア61のウインドウ上で温調ユニット55の制御を設定する。
【0185】
本実施の形態では、温調素子(ここではペルチェ素子)82によって、測定対象物Cに、図15に示すような正の勾配を有する交流熱流束(周期:Tth)が加わるように温調ユニット55を制御する。
【0186】
そして、パソコンPC上で録画再生ソフトウエア62を起動すると、赤外線カメラ56によって撮影された画像が録画再生ソフトウエア62のウインドウに映し出される。
【0187】
この画像の画像データには、各画像フレームの記録開始時点に計測されたセンサ側温度データT(n)を含む測定データがラインデータとして記録されている。
【0188】
そして、この画像を録画再生ソフトウエア62によってハードディスク85に動画ファイルとして録画(記録)する。
【0189】
〔データ解析〕
次に、パソコンPC上で画像解析ソフトウエア63を起動して、ハードディスク85に記録された動画ファイルについて記録データの解析を行う。
【0190】
まず、放射率補正プログラム65によりハードディスク85に記録された動画ファイルに対して温度補正処理を行なう。
【0191】
放射率補正プログラム65は、赤外線強度データ(I(n)i,j)に基づいて赤外線放射率に
D(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、生成された補正動画ファイルをハードディスク85に記録する。
【0192】
【0193】
するが、例えば、これらの複数の画素のうち特定の画素から抽出した画素データを使用してもよいし、これらの複数の画素の画素データに対して適宜の平均処理を施してから使用してもよい。
【0194】
〔熱物性量算出処理〕
図16は、熱物性量算出プログラムによる熱物性量算出処理の流れを説明するフローチ
と時間tとの関係を示すグラフ、図17(b)は、図17(a)に示すグラフに対してオフセット処理して得られた正弦波のグラフを示している。
【0195】
上述のように、測定対象物Cには、図15に示すような全体として正の勾配を有する交流熱流束が加えられるので、センサ側温度データT(n)と時間tとの関係を示すグラフも、表
して正の勾配を有する正弦波形となる。
【0196】
(オフセット処理)
のそれぞれについて、位相差の抽出に不要な成分である温度上昇成分をオフセットして、図17(b)に示すような正弦波形の温度データを得る(ステップS11)。
【0197】
なお、図18(a)は、オフセット処理後のセンサ側温度データT(n)の正弦波形であり、
【0198】
(データ補完処理)
次に、データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理され
補完処理を行う(ステップS12)。
【0199】
このデータ補完処理を、図17(b)に示すようなTth≧Tfrの場合について、データ補完処理の方法を示した図19(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
【0200】
まず、データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理され
束の周期Tthに等しいサンプリング周期Tsで分割する(図17(b)参照)。
【0201】
このようにして分割された各周期をそれぞれ、サンプリング周期(1),サンプリング周期(2),…とすると、例えば、図17(b)に示すように、サンプリング周期(1)には、温度データT11,T12,T13,…が含まれ、サンプリング周期(2)には、温度データT21,T22,T23,…が含まれる。
【0202】
次に、データ補完ルーチン92は、各サンプリング周期(1),(2),…のサンプリング開始時間と、各サンプリング周期(1),(2),…の最初の温度データT11,T21,…の取得時間との間の各時間偏差(タイムシフト量)t1,t2,…を、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとに基づいて算出する。
【0203】
そして、データ補完ルーチン92は、図19(a)〜(c)に示すように、分割されたサンプリング周期(1)に含まれる温度データT11,T12,T13,…(図19(a)参照)と、サンプリング周期(2)に含まれる温度データT21,T22,T23,…(図19(b)参照)と、をそれぞれ基準時間からタイムシフト量t1,t2,…だけ時間的にシフトさせて重ね合わせる(図19(c)参照)。
【0204】
なお、図19(a)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(1)について抽出した温度データの図であり、図19(b)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(2)について抽出した温度データの図であり、図19(c)は、図19(a)に示す温度データおよび図19(b)に示す温度データを重ね合わせた図である。
【0205】
図19(c)に示すように、上述のデータ補完処理により、交流熱流束の1周期分に含まれる温度データをおよそ2倍に増やすことができる。
【0206】
本実施の形態では、このようなデータの重ね合わせを、例えば、数周期から数十周期分について行なうことによって、緻密な正弦波形を再現する。
【0207】
《時間偏差の算出例》
図17(b)に示すように、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとの大小関係がTth≧Tfrである場合には、サンプリング周期(n)のタイムシフト量tnは、次式(C1)により求められる。
また、図20に示すように、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとの大
(C2)により求められる。
ただし、[ ]はガウス記号であり、[x]は、実数xを超えない最大の整数を表す。
【0208】
なお、図20に示すTth≦Tfrの場合には、各サンプリング周期内に含まれている温度デ
最初の温度データのデータ取得時間になっている。
【0209】
ところで、本実施の形態の熱分析システム300では、温度センサ83側から交流熱を加えており、この交流熱が測定対象物Cの温度センサ83側から表面側まで伝達するのに
波形に対して、図18(a),(b)に示すような時間的遅れが生じる。
【0210】
また、測定対象物Cの表面側の温度の振幅は、温度の減衰により、実際には測定対象物Cのセンサ側の温度の振幅より小さくなっているが、図18(a),(b)に示されたグラフは、それぞれの振幅が一致するように規格化している。
【0211】
これらの正弦波形がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ抽出することにより、これらの正弦波形の位相差Δθ[rad]を算出することができる。
【0212】
(ピーク時間取得処理)
ピーク時間取得ルーチン93は、データ補完ルーチン92により生成された2組の補完
波形がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ取得する(ステップS13)。
【0213】
補完ルーチン92により緻密な正弦波形になっているので、ピーク時間取得ルーチン93によって正確なピーク時間を取得することができる。
【0214】
(位相差取得処理)
位相差取得ルーチン94は、ピーク時間取得ルーチン93により取得された2組の補完
て、これら2つの正弦波形の位相差Δθ[rad]を算出する(ステップS14)。
【0215】
(熱物性量算出処理)
熱物性量算出ルーチン95は、位相差取得ルーチン94により取得された2つの正弦波形の位相差Δθと、温調コントローラ制御用ソフトウエア61等により設定された交流熱の周波数fと、予め測定され、予め熱物性量算出プログラム90を操作して入力された測定対象物Cの厚さd、密度ρ、比熱容量cとから、次の2式に基づいて測定対象物Cの熱拡散率αや熱伝導率λを算出する(ステップS15)。
実施形態3に係る熱分析システム300では、各画素について赤外線強度データI(n)i,j
毎の各画素について熱拡散率や熱伝導率を算出することが可能である。
【0216】
そして、このように算出された各画素の熱拡散率や熱伝導率のデータは、時系列毎(すなわち、画像フレーム毎)に数表として出力してもよいが、データ数が膨大であるため、本実施の形態の熱分析システム200では、各画素の熱拡散率や熱伝導率の大小を表示画像のピクセル色に対応させて表示することにより、熱拡散率や熱伝導率の分布をカラー画像として表示するように構成されている。
【0217】
〈本実施例の作用効果〉
このような構成により、熱拡散率や熱伝導率の分布が視覚化され、熱拡散率や熱伝導率の分布を直感的に把握することができる。
【0218】
また、特定の画素あるいは画像領域について、熱拡散率や熱伝導率のデータを時系列毎(すなわち、画像フレーム毎)にグラフにプロットすることにより、熱入力に対する被測定物の熱拡散率や熱伝導率の変化を調べることもできる。
【0219】
本実施の形態に係る測定では、測定対象物Cに全体として正の勾配を有する交流熱流束を加えるので、測定対象物Cに入力される熱流束の成分のうち、正勾配の線形成分により測定対象物Cの温度は徐々に上昇し、あるとき測定対象物Cの融解が始まる。
【0220】
例えば、赤外線放射率に関して正規化された補正動画ファイルの画像と、上述のカラー画像化された熱拡散率や熱伝導率の分布画像とを同時に参照することにより、測定対象物Cが融解する様子を温度画像で目視しつつ、融解前後での熱拡散率や熱伝導率の変化を確認することできる。
【0221】
このように、実施形態3に係る熱分析システム300では、相転移などの物性状態の変化に伴う熱拡散率や熱伝導率の変化を測定することができ、熱拡散率や熱伝導率の相状態に関する依存性を調べることができる。
【0222】
しかも、データ補完ルーチン92により正弦波形を正確に再現するので、ピーク時間取得ルーチン93により正確なピーク時間を取得でき、位相差取得ルーチン94により各正弦波形の正確な位相差を取得できるので、熱物性量算出ルーチン95により、この正確な位相差に基づいて測定対象物の正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0223】
これにより、例えば、交流熱の数周期から数十周期分のデータの重ね合わせることによってデータを補完することができるので、フレームレートがさほど大きくない一般的な赤外線カメラであっても、正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0224】
なお、実施形態3の熱分析システム300では、放射率補正プログラム65によって、赤外線カメラ56により撮影された測定対象物Cの表面側の赤外線画像データから測定対象物Cの表面側の温度を正確に測定することができることにより、測定対象物Cの正確な熱拡散率や熱伝導率の算出が可能になっている。
【0225】
本実施の形態で示されたように、本発明の熱分析装置では、画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるようにデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得することができる。
【0226】
具体的には、本実施の形態において、上記の「測定データの値が略連続となるようなデータ順序の並べ替え」は「温度データの並べ替え」であり、上記の「必要とされる情報」は「測定対象物Cの裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθ」であり、「目的とする熱物性量」は「熱拡散率や熱伝導率」であるが、本発明の熱分析装置では、データ順序を並べ替える物理量は、必ずしも温度である必要はなく、また、その物理量が時間に対して周期性を有する必要もない。
【0227】
例えば、ある測定データの値が単調に増大または減少する順に、画像フレームの表示順序を並び替えることにより、上記の測定データの増大または減少に伴い測定対象物Cに生じる画像上の変化をモニタ60によって確認することもできる。
【0228】
このように、本発明の熱分析装置では、撮影された画像の画像フレームの取得のタイミングと、計測されてラインデータとして画像データに記録された物理量の取得のタイミングとが同期しているので、計測されたある測定データが略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することにより、計測された物理用のうち、少なくとも1つの物理量に注目して、この物理量の変化に対して撮影された画像がどのように変化するかが分析可能になる。
【符号の説明】
【0229】
1 赤外線カメラ(撮影手段)
2 測定センサ(測定手段)
3 データ画像記録装置本体
31 同期信号分離手段
32 信号合成手段
33 クロック信号発生部
34 信号生成手段
35 アナログスイッチ
100 データ画像記録装置
A 測定対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の物理的な状態の変化を動画撮影装置により撮影しつつ測定対象物の物性量等の物理量を計測する際に、計測された物理量等のデータをリアルタイムに撮影された画像に書き込むデータ画像記録装置、熱分析装置、データ画像記録方法、画像データの正規化方法、熱物性量の算出方法および記録画像の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の物理的な状態の変化を動画撮影装置により撮影しつつ測定対象物の物性量等の物理量を計測する際に、計測された物理量等のデータをリアルタイムに撮影された画像に書き込むデータ画像記録装置が知られている。
【0003】
このようなデータ画像記録装置としては、例えば、測定対象物の表面温度を温度センサにより測定するとともに、その測定状況を可視カメラにより撮影し、可視カメラによる撮影画像に測定された表面温度が表示されるように、撮影画像と表面温度を示す画像とを合成した合成画像を生成するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−164415号公報
【特許文献2】特開2005−345385号公報
【特許文献3】特開2011−002437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたものでは、撮影画像の各フレームの撮影のタイミングと計測された物理量のデータを取得するタイミングとが同期しておらず、各フレームの撮影のタイミングより遅れて物理量のデータが記録される。
【0006】
このため、後で、記録された画像をフレーム毎に解析した際に、画像上で測定対象物の状態変化があっても、画像上で変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、画像上で測定対象物の状態変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるデータ画像記録装置、熱分析装置、データ画像記録方法、画像データの正規化方法、熱物性量の算出方法および記録画像の表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデータ画像記録装置は、撮影画像の1フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各フレームの撮影のタイミングと測定値の取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0009】
そこで、請求項1に係る発明は、測定対象物を動画として撮影する撮影手段と、前記測定対象物に関する物理量を測定する測定手段と、前記撮影手段からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段と、前記測定手段により測定された測定データを、前記同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化して、前記映像信号に合成して出力する信号合成手段と、有し、前記信号合成手段が、前記明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力するデータ画像記録装置を特徴としている。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、前記2値化された測定データが表示される走査線が前記各画像フレームの最上位の走査線である請求項1に記載のデータ画像記録装置を特徴としている。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記信号合成手段が、前記測定データを、前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段と、前記同期信号に基づいて、前記撮影手段からの映像信号を遮断すると共に、前記信号生成手段により生成された信号を出力するアナログスイッチと、を有する請求項1または請求項2に記載のデータ画像記録装置を特徴としている。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ画像記録装置と、該データ画像記録装置により前記測定データが合成された映像信号を画像データに変換して記録可能、かつ、変換された該画像データと該画像データに含まれる前記測定データを演算処理可能とするコンピュータシステムと、を備えた熱分析装置であって、前記コンピュータシステムが、前記動画として記録された画像を表示する画像再生手段と、前記画像データから前記明暗に2値化された測定データを抽出する2値化データ抽出手段と、前記明暗に2値化された測定データを対応する文字列のデータに変換する2値化データ変換手段と、を有する画像再生ソフトウエアを搭載している熱分析装置を特徴としている。
【0013】
そして、請求項5に係る発明は、測定対象物を動画として撮影した映像信号と前記測定対象物に関する物理量の測定データとを取得し、前記測定データを、前記映像信号から分離した同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化し、前記映像信号に合成して出力する、データ画像記録方法を特徴としている。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、前記撮影手段を、赤外線画像を撮影する赤外線画像撮影手段とし、前記測定手段を、前記測定対象物の温度を測定する温度センサとして、前記赤外線画像の画像データから画像フレーム毎に各画素の赤外線強度データを抽出する赤外線強度抽出手段と、前記画像データから前記測定データとしての前記測定対象物の温度データを抽出する測定データ抽出手段と、前記画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データと該各画像フレームに対応する前記測定対象物の温度データとに基づいて、前記赤外線強度データを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた補正温度データを算出する温度補正手段と、前記補正温度データに基づいて各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データを生成する正規化画像データ生成手段と、を有する画像解析ソフトウエアを搭載している請求項4に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0015】
さらに、請求項7に係る発明は、測定対象物の赤外線画像を動画として撮影する赤外線画像撮影手段によって取得された画像データの画像フレーム毎に請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて合成され記録された前記測定対象物の温度データと、少なくとも1つの前記画像フレームの各画素の赤外線強度データと、に基づいて、前記画像フレームの各画素に対応する実効的な赤外線放射率を算出し、前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを前記実効的な赤外線放射率によって割ることにより該実効的な赤外線放射率に関して前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを正規化した補正赤外線強度データを算出し、該補正赤外線強度データに基づいて、前記画像フレームの各画素について正規化した補正温度データを算出する、画像データの正規化方法を特徴としている。
【0016】
そして、請求項8に係る発明は、前記画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように該少なくとも1つの測定データのデータ順序を並べ替えて参照する請求項6に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0017】
また、請求項9に係る発明は、前記測定対象物の裏面側から交流熱を加えつつ前記温度センサによって該測定対象物の裏面側の温度を計測した温度データとしての測定データと、前記赤外線画像撮影手段によって前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度を計測した赤外線放射強度データとしての測定データと、を解析する熱分析装置であって、前記測定対象物の裏面側の温度の温度データと前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度データを正規化して得られた温度データとが、それぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えて重ね合わせることによりデータ補完を行なうデータ補完手段と、該データ補完手段によりデータ補完された2組の正弦波形が示すデータから正弦波形がピークとなるピーク時間を取得するピーク時間取得手段と、該ピーク時間取得手段により取得された前記2組の正弦波形の各ピーク時間から各正弦波形の位相差を取得する位相差取得手段と、該位相差取得手段により取得された前記2組の正弦波形の位相差に基づいて熱拡散率および/または熱伝導率を算出する熱物性量算出手段と、を有する請求項8に記載の熱分析装置を特徴としている。
【0018】
さらに、請求項10に係る発明は、請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて、複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示する記録画像の表示方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
このように構成された請求項1に係る発明によれば、信号合成手段が、動画の画像フレーム毎に測定データを画像として画像フレームの走査線上に記録させるため、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【0020】
また、請求項1に係る発明によれば、信号合成手段が、測定データを明暗で2値化した画像として記録させるため、撮影された画像を解析する際にコントラスト等に影響を受けることなく物理量を正確に読み取ることができる。
【0021】
さらに、請求項2に係る発明によれば、信号合成手段は、各フレームの最上位の走査線上に測定データを記録させるため、撮影された映像の妨げとならずに測定値を画像として記録させることができる。
【0022】
また、請求項3に係る発明によれば、アナログスイッチが同期信号に基づいて撮影手段からの映像信号を遮断すると共に生成された信号を出力するシンプルな構成により、各フレームを撮影したタイミングにおける測定値を、画像として高速で記録することができる。
【0023】
そして、請求項4に係る発明によれば、撮影画像の画像フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各画像フレームの撮影のタイミングと測定データの取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0024】
また、請求項5に係る発明によれば、コンピュータシステムに搭載されたソフトウエアが、画像にラインデータとして記録された測定データを、画像を再生しつつ抽出し、解析することにより、赤外線カメラにより撮影された画像の各画素に対して放射率補正を行なった温度画像が生成されるため、相転移等の物性変化をモニタ上で明確に目視することができるとともに、物性変化が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができる。
【0025】
さらに、請求項6に係る発明によれば、各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致しているので、撮影された画像を解析する際に、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0026】
そして、請求項7に係る発明によれば、相転移等の物性変化をモニタ上で明確に目視することができるとともに、物性変化が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、請求項8に係る発明によれば、特定の測定データの値が略連続となるように、この測定データのデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得することができる。
【0028】
さらに、請求項9に係る発明によれば、データ補完手段により正弦波形を正確に再現するので、ピーク時間取得手段により正確なピーク時間を取得でき、位相差取得手段により各正弦波形の正確な位相差を取得できるので、熱物性量算出手段により、この正確な位相差に基づいて測定対象物の正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0029】
これにより、例えば、交流熱の数周期から数十周期分のデータの重ね合わせることによってデータを補完することができるので、フレームレートがさほど大きくない一般的な赤外線画像撮影手段であっても、正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0030】
そして、請求項10に係る発明によれば、撮影された画像の画像フレームの取得のタイミングと、計測されてラインデータとして画像データに記録された物理量の取得のタイミングとが同期しているので、計測されたある測定データが略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することにより、計測された物理用のうち、少なくとも1つの物理量に注目して、この物理量の変化に対して撮影された画像がどのように変化するかが分析可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】データ画像記録装置を含むインポーズシステムXの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデータ画像記録装置本体の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の赤外線カメラからの映像信号(NTSC信号)の垂直同期信号を示すタイミングチャートである。
【図4】図1の赤外線カメラからの映像信号(NTSC信号)の水平同期信号を示すタイミングチャートである。
【図5】図4の水平同期信号の部分拡大図である。
【図6】測定データを映像信号に同期させた信号に変換する処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図2のアナログスイッチのオン・オフが切り替えられて映像信号出力端子に伝送される画像信号を示すタイミングチャートである。
【図8】図1の赤外線カメラからの映像信号(LDVS信号)に測定データを同期させる処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】図1の赤外線カメラからの映像信号(LDVS信号)へのインポーズ領域を説明するための図である。
【図10】(a)は、測定対象物の温度がT1である場合にパソコンに表示される画像を示す図であり、(b)は、測定対象物が凍り始めた瞬間(測定対象物の温度がT2(T1>T2))にパソコンに表示される画像を示す図である。
【図11】実施形態2に係る熱分析システムの全体構成を示す図である。
【図12】パソコン本体のハードディスクに搭載されたソフトウエアの構成を示す図である。
【図13】温度補正処理の詳細な流れを説明するフローチャートである。
【図14】実施形態3のパソコン本体のハードディスクに搭載されたソフトウエアの構成を示す図である。
【図15】測定対象物に加えられる正の勾配を有する交流熱流束の正弦波を示す図である。
【図16】熱物性量算出処理の流れを説明するフローチャートである。
【図17】(a)は、温度データと時間との関係を示すグラフであり、(b)は、(a)に示すグラフに対してオフセット処理して得られた正弦波のグラフを示す図である。
【図18】(a)は、オフセット処理後のセンサ側温度データの正弦波形であり、(b)は、オフセット処理後の表面側温度データの正弦波形である。
【図19】(a)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(1)について抽出した図であり、(b)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(2)について抽出した図であり、(c)は、(a)に示す温度データおよび(b)に示す温度データを重ね合わせた図である。
【図20】画像フレームの取得周期が交流熱流束の周期よりも大きい場合の、オフセット処理後の温度データと時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のデータ画像記録装置の実施の形態を、図1から図10に示す実施形態1に基づいて説明し、このデータ画像記録装置を備えた熱分析装置の実施の形態を、図11から図13に示す実施形態2に基づいて説明する。
【0033】
[実施形態1]
(データ画像記録装置を含むインポーズシステムの全体構成)
図1は、データ画像記録装置を含むインポーズシステムXの全体構成を示すブロック図である。
【0034】
インポーズシステムXは、図1に示すように、データ画像記録装置100と、このデータ画像記録装置100により生成された画像信号をパソコンで表示可能とするために信号の変換を行うキャプチャボード110と、キャプチャボード110により変換された信号に基づいて画像をモニタに表示するパソコンPCと、データ画像記録装置100により生成された画像を解析する解析装置120と、を有している。
【0035】
また、データ画像記録装置100は、測定対象物Aを撮影する赤外線カメラ1(撮影手段)と、測定対象物Aに関する物理量を測定する測定センサ2(測定手段)と、赤外線カメラ1からの映像信号および測定センサ2からの測定データが入力され、映像信号に測定データを画像情報として記録させた画像信号を生成するデータ画像記録装置本体3と、を有している。
【0036】
赤外線カメラ1は、撮影した測定対象物Aの映像信号をNTSC信号(National Television System Committee)またはLVDS信号(Low Voltage Differential Signaling)としてデータ画像記録装置本体3に出力する。
【0037】
なお、赤外線カメラ1に限定されず、可視カメラであってもよく、また、赤外線カメラと可視カメラとの双方が設けられている構成などであってもよい。
【0038】
ここで、解析装置120には温度制御プログラム等が記憶されており、測定対象物Aが載置される台Bの微妙な温度調整を行う。
【0039】
そして、測定センサ2は、台Bの温度を測定することにより、室温などの周囲環境の温度に左右されることなく測定対象物Aのうち台Bとの接触部分の正確な温度を取得することができる。
【0040】
また、この測定センサ2は、取得した温度に関する測定データをアナログ信号またはデジタル信号によりデータ画像記録装置本体3に出力する。
【0041】
なお、この測定データは複数であってもよく、アナログ信号およびデジタル信号の双方の形式でデータ画像記録装置本体3に出力される構成であってもよい。
【0042】
(データ画像記録装置本体の構成)
図2は、図1のデータ画像記録装置本体3の構成を示すブロック図である。
【0043】
データ画像記録装置本体3は、図2に示すように、映像信号(NTSC信号)から同期信号を分離する同期信号分離手段31と、測定センサ2により測定された測定データを、同期信号に基づいて動画の画像フレーム毎に取得し、画像上の明暗となるように2値化して、映像信号に合成して出力する信号合成手段32と、クロック信号を発生するクロック信号発生部33と、映像信号入力端子36と、映像信号出力端子37と、を有している。
【0044】
信号合成手段32は、明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線(デジタル信号の場合には画素列を意味する)上に表示するように出力する。
【0045】
また、この信号合成手段32は、測定データを、同期信号に基づいて映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段34と、同期信号に基づいて、赤外線カメラ1からの映像信号を遮断すると共に、信号生成手段34により生成された信号を出力するアナログスイッチ35と、を有している。
【0046】
さらに、信号生成手段34は、測定データを時系列に並べる(シリアル化処理する)シリアル化手段341と、シリアル化処理された測定データを、映像信号に同期させた信号に変換するようにタイミング調整を行うタイミング調整手段342と、有している。
【0047】
また、データ画像記録装置本体3は、測定データ入力端子38a(アナログ用)、38b(デジタル用)と、測定データ出力端子39a(アナログ用)、39b(デジタル用)と、測定データ入力端子38aと信号合成手段32とに接続されたADC(アナログ・デジタルコンバータ)40と、信号合成手段32と測定データ出力端子39aとに接続されたDAC(デジタル・アナログコンバータ)41と、を有している。
【0048】
さらに、データ画像記録装置本体3は、インターフェースとしてのCPU42と、パソコンPCに接続するためのUSBポート43と、解析装置120に接続するためのRS232Cポート44と、を有している。
【0049】
次に、データ画像記録装置100による画像生成処理について映像信号がNTSC信号である場合とLVDS信号である場合とに分けて説明する。
【0050】
[NTSC信号の場合]
(映像信号の入力)
図3は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(NTSC信号)の垂直同期信号(VSTNC)を示すタイミングチャートであり、図4は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(NTSC信号)の水平同期信号(HSYNC)を示すタイミングチャートであり、図5は、図4の水平同期信号(HSYNC)の部分拡大図である。
【0051】
赤外線カメラ1から伝送された映像信号は、NTSC信号によりデータ画像記録装置本体3の映像信号入力端子36に入力され、同期信号分離手段31およびアナログスイッチ35に出力される。
【0052】
この映像信号の垂直同期信号(VSYNC)は、図3に示すようなタイミングチャートであって垂直同期信号の周期が1Vである。
【0053】
また、映像信号の水平同期信号(HSYNC)は、図4および図5に示すようなタイミングチャートであって水平同期信号の周期が1Hである。
【0054】
(映像信号に同期させた測定データの生成)
また、図6は、測定データを映像信号に同期させた信号に変換する処理を説明するためのタイミングチャートであり、図7は、図2のアナログスイッチ35のオン・オフが切り替えられて映像信号出力端子37に伝送される画像信号を示すタイミングチャートである。
【0055】
測定データが信号生成手段34に入力されると、シリアル化手段341により測定データが時系列化される。
【0056】
さらに、図6に示すように、測定データは、タイミング調整手段342によりタイミング調整が行われ、測定データのビット値「1」部分では電圧Vmax、ビット値「0」部分では電圧Vminの電圧が出力されることにより2値化された信号に変換される。
【0057】
なお、図6の「t1」は、映像信号の水平同期信号の発生が開始されたときからインポーズが開始されるまでの時間を示し、「t2」は、映像信号の水平同期信号の発生が開始されたときからインポーズが終了するまでの時間を示し、「t3」は、インポーズされる測定データの1ビット分の時間を示し、「t4」は、待ち時間を含んだ測定データの1文字(スタートビット+8ビット)分の時間を示し、「t5」は、映像信号の水平同期信号(HSYNC)の水平同期信号の1周期(=1H)を示す。
【0058】
また、「Vp」は、NTSC信号のペデスタルレベル(映像信号において輝度の基準となるレベル)を示す。
【0059】
(アナログスイッチの切替え)
そして、アナログスイッチ35は、各フレームの最上位の走査線(図7に示すN番目の水平同期信号)およびフレームの上から2段目の走査線(図7に示す(N+1)番目の水平同期信号)については、図6に示す変換された測定データが映像信号出力端子37に伝送され、これらの走査線以外の走査線については映像信号がそのまま映像信号出力端子37に伝送されるように、オン・オフの切り替えを行う。
【0060】
このようにして、映像信号出力端子37へ伝送された信号はキャプチャボード110を介してパソコンPCに出力され、パソコンPCのモニタ上に画像が表示される(図10(a)および(b)参照)。
【0061】
[LVDS信号の場合]
図8は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(LVDS信号)に測定データを同期させる処理を説明するためのタイミングチャートであり、図9は、図1の赤外線カメラ1からの映像信号(LVDS信号)へのインポーズ領域を説明するための図である。
【0062】
赤外線カメラ1が撮影した測定対象物Aの映像信号がLVDS信号である場合は、図2に示すように、映像信号(Data Input)、クロック信号(Data Clock)および同期信号(Data Sync)が信号生成手段34に入力される。
【0063】
そして、測定データが信号生成手段34に入力されると、上記と同様にシリアル化手段341により測定データが時系列化され、タイミング調整手段342によりシリアル化処理された測定データが映像信号に同期させた信号に変換される。
【0064】
このように生成された測定データは、例えば図9に示すように、各フレームの構成が324×256画素である場合、各フレームの最上位の画素列(0番目から323番目)およびフレームの上から2段目の画素列(324番目から647番目)については、2値化された画像として変換された測定データが記録され、これらの画素列以外については映像信号のままである画像信号がキャプチャボード110を介してパソコンPCに出力されパソコンPCのモニタ上に画像が表示される(図10(a)および(b)参照)。
【0065】
[解析処理]
図10(a)は、測定対象物Aの温度がT1である場合のパソコンPCに表示される画像を示す図であり、図10(b)は、測定対象物Aが凍り始めた瞬間(測定対象物Aの温度がT2(T1>T2))にパソコンPCに表示される画像を示す図である。
【0066】
実験状況を赤外線カメラ1により撮影し、データ画像記録装置100により生成された画像を解析装置120が解析することにより各フレームが撮影されたタイミングにおける測定対象物Aの物理量(温度)を取得することができる。
【0067】
例えば、図10(a)に示す状況のように、測定対象物Aである植物が載置された台Bの温度を徐々に下げていくと、ある瞬間から測定対象物Aが凍り始める。
【0068】
そして、この凍り始める瞬間に発熱が起こり、測定センサ2が検知する温度はわずかに上昇する。
【0069】
このため、解析装置120が各フレームに画像として記録された温度を解析し、徐々に下がってきた温度がわずかに上昇したタイミングが、測定対象物Aが凍ったタイミングであるとして画像上の変化を認識できる。
【0070】
このように、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することにより、例えば、測定対象物Aの位置情報を逐次取得し、各位置における温度の差異を解析することにより、測定対象物Aの弾性変形や塑性変形に関する解析を行うことができる。
【0071】
さらに、熱に対する刺激関数を予め記憶させておくことにより、これらの解析結果から物性値への換算をすることができる。
【0072】
また、例えば、交流熱流束を測定対象物Aの一部に加えて、その拡散を赤外線カメラ1により撮影する際、刺激変動(周波数や振幅など)が各フレームに画像として記録された測定値とともに取り込まれることにより、正確な可視化熱分析を行うことができる。
【0073】
さらに、映像信号を時間軸において入れ替えることで、繰り返し行われる現象では、熱による刺激と応答の基準点からの位相遅れの順に信号を並び替えることができ、複数の映像信号を組み合わせることで疑似高速化が可能となる。
【0074】
このように構成された実施形態1に係るデータ画像記録装置100によれば、信号合成手段32(信号生成手段34およびアナログスイッチ35)が、動画の画像フレーム毎に測定データを画像として画像フレームの走査線上に記録させるため、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができる。
【0075】
また、信号合成手段32が、測定データを明暗で2値化した画像として記録させるため、撮影された画像を解析する際にコントラスト等に影響を受けることなく物理量を正確に読み取ることができる。
【0076】
さらに、信号合成手段32は、各フレームの最上位の走査線上(N番目の水平同期信号)に測定データを記録させるため、撮影された映像の妨げとならずに測定値を画像として記録させることができる。
【0077】
なお、各フレームの最上位の走査線だけでなく、複数段の走査線(最上位および上から2段目の走査線など)についても測定データを記録させるように構成することが可能である。
【0078】
このような構成によれば、パソコンPCのモニタに画像が表示される際に複数段のうちいずれかの段の走査線が切れてしまうことがあっても、他の段の走査線上に記録された測定データを解析することにより物理量を読み取ることができる。
【0079】
また、アナログスイッチ35が同期信号に基づいて赤外線カメラ1からの映像信号を遮断すると共に生成された信号を出力するシンプルな構成により、各フレームを撮影したタイミングにおける測定値を、画像として高速で記録することができる。
【0080】
そして、このようなデータ画像記録方法によれば、撮影された画像を解析する際に各フレームが撮影されたタイミングと測定値取得のタイミングとが一致し、画像上の変化が起きたタイミングでの正確な物理量を把握することができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、上述した実施形態では、映像信号はNTSC信号またはLVDS信号として伝送される場合について説明したが、本発明に係るデータ画像記録装置においては、例えばPAL信号(Phase Alternating Line)など、どのような形式であってもよい。
【0082】
[実施形態2]
一般に、物質はその種類や状態等によって赤外線の放射率が異なるため、測定対象物の温度が一様であっても、測定対象物を構成する物質の種類や状態等が異なる部分からは異なる強度の赤外線が放射される。
【0083】
従来の赤外線カメラでは、測定対象物のうち画像上の各ピクセル部分に対応する微小領域の「温度」を計測しているのではなく、これら微小領域から放射される「赤外線強度データ」を計測している。
【0084】
すなわち、物質の種類や状態等が異なる部分から成る測定対象物を撮影すると、この測定対象物の温度が一様であっても赤外線強度データが異なることにより、物質の種類や状態などが異なる部分はそれぞれ異なる温度であるように表示されてしまう。
【0085】
また、従来、「赤外線強度データ」の測定から測定対象物の「温度」を計測するために、予め物質の種類や状態ごとに赤外線の放射率を調べておき、放射率の違いによる赤外線放射強度の違いを補正していた。
【0086】
しかしながら、このような従来の方法は、予め調べておいた平均的な放射率によって補正を行なうもので、実測値によるリアルタイム(動画のフレーム毎)の補正を行なうものではなく、しかも、画像の各画素に対して補正がなされるものではなかった。
【0087】
そこで、実施形態2として、実施形態1のデータ画像記録装置100を用いた熱分析システム200によって、赤外線カメラ56により撮影された画像のフレーム毎に各画素に対して放射率補正を行なった温度画像を生成する方法、および、このような温度画像を生成する熱分析システムについて説明する。
【0088】
[熱分析システムの全体構成]
図11は、実施形態2に係る熱分析システム200(熱分析装置)の全体構成を示す図である。
【0089】
図11に示すように、実施形態2に係る熱分析システム200は、本発明のデータ画像記録装置本体51と、温調用テーブル50に固定され測定対象物を動画として撮影する赤外線カメラ56(赤外線画像撮影手段)と、測定対象物の温度を調節する温度調節装置53と、コンピュータシステム(以下、パソコン)PCとによって構成されている。
【0090】
[温度調節装置]
温度調節装置53は、測定対象物Cの温度を調整する温調ユニット55と、温調ユニット55を制御する温調コントローラ52と、によって構成されている。
【0091】
温調ユニット55は、温調ユニット本体部80の上部に測定対象物Cが載置される載置部81を有しており、載置部81の上部にはサーモパイル等の温度センサ83が設けられている。
【0092】
薄くサンプリングされた測定対象物Cを載置部81に載置すると測定対象物Cは温度センサ83に直接接触するので、温度センサ83によって測定対象物Cの温度を正確に測定することができる。
【0093】
また、温調ユニット本体部80には、ヒーターやペルチェ素子等の温調素子82が内蔵されている。
【0094】
そして、温調コントローラ52は、パソコン本体57からの制御信号により、温調素子82から放出または吸収される熱量をコントロールして、測定対象物Cの温度を精密に制御することができる。
【0095】
[コンピュータシステム(パソコン)の構成]
パソコンPCは、パソコン本体57と、マウス58と、キーボード59と、モニタ60と、を有している。
【0096】
また、パソコン本体57は、CPUやRAMなどが搭載されたマザーボード(図示省略)と、ビデオキャプチャボード84と、ハードディスク85(大容量記憶媒体)と、を有している。
【0097】
[熱分析システムの接続]
赤外線カメラ56は、データ画像記録装置本体51のビデオ入力端子(図示省略)に接続され、データ画像記録装置本体51のビデオ出力端子(図示省略)は、パソコンPCに内蔵されたビデオキャプチャボード84のビデオ入力端子(図示省略)に接続される。
【0098】
また、温調ユニット55の温度センサ83の出力端子(図示省略)は、データ画像記録装置本体51のデータ入力端子(図示省略)に接続され、データ画像記録装置本体51とパソコンPCとはUSBポートを介して接続される。
【0099】
そして、温調ユニット55と温調コントローラ52とが接続され、温調コントローラ52とパソコンPCとはRS232Cポートを介して接続される。
【0100】
[データ画像記録装置本体の構成]
データ画像記録装置本体51の具体的な構成は、図2に示す実施形態1のデータ画像記録装置本体3と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
なお、本実施の形態に係るデータ画像記録装置本体51は、赤外線カメラ56から出力される動画の画像データの各画像フレームの記録開始時点に測定された、温度センサ83によって測定された温度データT(n)を含む測定データを、明暗の画像として2値化して画面最上部の走査線に対応する複数のピクセルに上書きする。以下、この記録された測定データを「ラインデータ」という。
【0102】
そして、この測定データが上書きされた動画の画像を動画ファイルとしてパソコンPCのハードディスク85(大容量記憶媒体)に記録する。
【0103】
なお、動画ファイルがパソコンPCから読み込み可能になっていれば、測定データを上書きした動画ファイルを記録する大容量記憶媒体は、必ずしもハードディスクである必要はなく、例えば、ブルーレイディスクなどであってもよい。
【0104】
[パソコンに搭載されるソフトウエアの構成]
図12は、実施形態2のパソコン本体57のハードディスク85に搭載されたソフトウエアの構成を示す図であり、図12に示す矢印はデータの流れを示している。
【0105】
図12に示すように、ハードディスク85には、温調コントローラ52を制御する温調コントローラ制御用ソフトウエア61と、ビデオキャプチャボード84からパソコンPCに取り込んだ画像信号をTIFFなどの圧縮されないファイル形式の動画ファイルとしてハードディスク85に記録する録画再生ソフトウエア62と、画像解析を行なう画像解析ソフトウエア63とが予めインストールされている。
【0106】
これらのソフトウエアは、ハードディスク85に搭載されたOSプログラムを介して、RAM上のメモリー領域を作業領域としてCPUにより演算処理されて実行される。
【0107】
画像解析ソフトウエア63は、動画ファイルとして記録された画像データの画像フレーム毎に記録されたラインデータを対応する文字列に変換すると共に、パソコンPCのモニタ60に(画像フレーム毎に、または連続して)表示する画像再生プログラム64(画像再生ソフトウエア)と、動画ファイルとして記録された画像に対して放射率補正を行い、放射率の違いによる赤外線強度データの違いを補正する放射率補正プログラム65(画像解析ソフトウエア)とを有している。
【0108】
画像再生プログラム64は、動画ファイルとして記録された画像をパソコンPCのモニタ60に表示されたウインドウ上に表示する画像再生ルーチン66と、データ画像記録装置本体3により画像フレーム毎に明暗の画像として記録されたラインデータを画像データから抽出するラインデータ抽出ルーチン67と、ラインデータ抽出ルーチン67によって抽出されたラインデータを対応する文字列に変換するラインデータ変換ルーチン68と、ラインデータ変換ルーチン68により文字列に変換されたデータを上記のウインドウ上に表示するラインデータ表示ルーチン69と、を有している。
【0109】
放射率補正プログラム65は、赤外線強度抽出ルーチン70(赤外線強度抽出手段)と、温度データ抽出ルーチン71(温度データ抽出手段)と、温度補正ルーチン72(温度補正手段)と、正規化画像データ生成ルーチン73(正規化画像データ生成手段)と、補正動画ファイル記録ルーチン74と、を有している。
【0110】
赤外線強度抽出ルーチン70は、ハードディスク85に記録された動画ファイルに含まれる画像データから画像フレーム毎の各ピクセルの赤外線強度データI(n)i,jを抽出する(ただし、(n)は、フレーム番号であり、(i,j)は、画像上のピクセルの位置を示すインデックスである)。
【0111】
温度データ抽出ルーチン71は、上述のラインデータ変換ルーチン68によって対応する文字列に変換されたデータから各画像フレームに対応する温度データT(n)を抽出する。
【0112】
温度補正ルーチン72は、画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データI(n)i,jと、これらの各画像フレームに対応する測定対象物の温度データT(n)とに基づいて、赤外線強度データI(n)i,jを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた
【0113】
各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データD(n)i,j(温度画像データ)を生成する。
【0114】
また、補正動画ファイル記録ルーチン74は、温度補正ルーチン72により各画像フレームの各ピクセルに正規化された画像データD(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、ハードディスク85に記録する。
【0115】
《温度補正処理の例1》
赤外線強度抽出ルーチン70によって抽出された複数の画像フレームに対応する赤外線強度データのうち、n番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n)i,j、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+1)i,j(ただし、(n),(n+1)は、フレーム番号;i,jは、画像上の画素の位置を示す指標)とし、温度データ抽出ルーチン71によって抽出された複数の画像フレームに対応する測定対象物の温度データのうち、n番目の画像フレームに対応する温度データをT(n)とし、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データI(n+1)i,jを各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られ
【0116】
【0117】
〈式(A)の説明〉
赤外線強度データI(n)i,jと温度データT(n)との間には、シュテファン・ボルツマンの法則により、次式(A1)の関係が成り立つ。
I(n)i,j=ρi,jσ(T(n))4=ki,j(T(n))4 ・・・(A1)
(ただし、T(n)は、ケルビン温度:単位[K];σは、シュテファン・ボルツマン定数;ρi,jは、赤外線放射率)
【0118】
なお、式(A1)におけるki,jを、各ピクセルの実効放射率ki,jとする。
【0119】
第nフレームの赤外線強度データI(n)i,jを第nフレームの温度データT(n)で割ることによって、各ピクセルの実効放射率ki,jを算出する。
【0120】
この実効放射率ki,jによって第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jを割ること
【0121】
る。
【0122】
これらの一連の計算より
【0123】
すなわち、式(A)を得ることができる。
【0124】
したがって、式(A)には、実効放射率ki,jによって第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jを割る計算が含まれており、式(A)によって算出された補正温度データ
【0125】
《温度補正処理の例2》
赤外線強度抽出ルーチン70によって抽出された複数の画像フレームに対応する赤外線強度データのうち、n番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n)i,j、n+1番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+1)i,j、n+2番目の画像フレームに対応する赤外線強度データをI(n+2)i,j(ただし、(n),(n+1),(n+2)は、フレーム番号;i,jは、画像上の画素の位置を示す指標)とし、温度データ抽出ルーチン71によって抽出された複数の画像フレームに対応する測定対象物Cの温度データのうち、n番目の画像フレームに対応する温度データをt(n)、n+1番目の画像フレームに対応する温度データをt(n+1)とし、n+2番目の画像フレームに対応する赤外線強度データI(n+2)i,jを各画素に
【0126】
によって算出する。
【0127】
〈式(B)の説明〉
赤外線強度データI(n)i,jと温度データT(n)との間には、シュテファン・ボルツマンの法則により、次式(A1)の関係が成り立つ。
I(n)i,j=ρi,jσ(T(n))4=ki,j(T(n))4 ・・・(B1)
(ただし、T(n)は、ケルビン温度:単位[K];σは、シュテファン・ボルツマン定数;ρi,jは、赤外線放射率)
【0128】
なお、式(B1)におけるki,jを、各ピクセルの実効放射率ki,jとする。
【0129】
式(B1)を、ある温度t0の近傍で展開して1次近似して、第nフレームの赤外線強度データI(n)i,jと第n+1フレームの赤外線強度データI(n+1)i,jとの差分を取ると、次式(B2)が得られる。
I(n+1)i,j−I(n)i,j=τ・ki,j(t(n+1)−t(n) ・・・(B2)
(ただし、T(n)=t0+t(n),τ=4×t03)
【0130】
各ピクセルの実効放射率ki,jを、式(B2)から得た次式(B3)によって算出する。
この実効放射率ki,jによって第n,n+2フレームの赤外線強度データI(n)i,j,I(n+2)i,j
【0131】
することによって、第n+2フレームの放射率補正された温度値である補正温度データ
【0132】
すなわち、式(B)を得ることができる。
【0133】
したがって、式(B)には、実効放射率ki,jによって第n,n+2フレームの赤外線強度データI(n)i,j,I(n+2)i,jを割る計算が含まれており、式(B)によって算出された補正温
【0134】
[熱分析の手順]
次に、熱分析システム200による測定対象物Cの温度変化に対する物性特性の変化に関する熱分析の手順について説明する。
【0135】
〔測定〕
まず、データ画像記録装置本体51、温調コントローラ52、赤外線カメラ56、および、パソコンPCを起動して熱分析処理を開始する。
【0136】
次に、パソコンPC上で温調コントローラ制御用ソフトウエア61を起動して、この温調コントローラ制御用ソフトウエア61のウインドウ上で、例えば、時間に対して測定対象物Cの温度がリニアに上昇するように温調ユニット55の制御を設定する。
【0137】
そして、パソコンPC上で録画再生ソフトウエア62を起動すると、データ画像記録装置本体51のビデオ出力端子から出力される画像信号(図2に示す信号合成手段32により合成された信号)がビデオキャプチャボード84を介してパソコンPCに取り込まれ、赤外線カメラ56によって撮影された画像が録画再生ソフトウエア62のウインドウに映し出される。
【0138】
なお、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号はLVDSなどのデジタル信号であるのが望ましいが、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号がNTSCなどのアナログ信号の場合でも、最終的にはビデオキャプチャボード84によって量子化されたデジタルデータ(画像データ)に変換されるので、赤外線カメラ56から出力されるビデオ出力信号はNTSCなどのアナログ信号であってもよい。
【0139】
また、この画像データには、各画像フレームの記録開始時点に計測された温度データT(n)を含む測定データがラインデータとして記録されている。
【0140】
そして、この画像を、温調コントローラ制御用ソフトウエア61による温調ユニット55の一連の制御が終了するまで、録画再生ソフトウエア62によってハードディスク85に動画ファイルとして録画(記録)する。
【0141】
なお、温調コントローラ制御用ソフトウエア61による温調ユニット55の制御の開始および終了と、録画再生ソフトウエア62による録画の開始および終了とを連動させてもよい。
【0142】
〔データ解析〕
次に、パソコンPC上で画像解析ソフトウエア63を起動して、ハードディスク85に記録された動画ファイルについて記録データの解析を行う。
【0143】
具体的には、画像再生プログラム64により、動画ファイルとして記録された画像が再生され、この画像から各画像フレームに記録されたラインデータが抽出され、抽出されたラインデータが対応する文字列に変換され、この変換された文字列などがモニタ60のウインドウに表示される。
【0144】
実施形態2に係る熱分析システム200では、放射率補正プログラム65により、次のような温度補正処理が行われる。
(温度補正処理)
【0145】
図13は、温度補正処理の詳細な流れを説明するフローチャートである。
【0146】
図13に示すように、赤外線強度抽出ルーチン70が、ハードディスク85に記録された動画ファイルに含まれる画像データから各ピクセルの赤外線強度データI(n)i,jを抽出する(赤外線強度抽出処理(ステップS1))。
【0147】
そして、温度データ抽出ルーチン71が、ラインデータ変換ルーチン68が変換した画像フレーム毎に対応する温度データT(n)を抽出する(温度データ抽出処理(ステップS2))。
【0148】
次に、温度補正ルーチン72が、画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データ(I(n)i,j)と、これらの各画像フレームに対応する測定対象物の温度データ(T(n))とに基づいて、赤外線強度データ(I(n)i,j)を各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正
を用いて算出する(温度補正処理(ステップS3))。
【0149】
規化画像データ生成処理(ステップS4))。
【0150】
また、補正動画ファイル記録ルーチン74が、正規化画像データ生成処理により各ピクセルに赤外線放射率に関して正規化された画像データD(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、ハードディスク85に記録する(補正動画ファイル記録処理(ステップS5))。
【0151】
〈本実施例の作用効果〉
このようにして記録された補正動画ファイルを再生すると、赤外線放射率に関して正規化され、赤外線放射率に影響されない温度のみの情報である温度画像としてモニタ60に表示することができる。
【0152】
例えば、温調コントローラ制御用ソフトウエア61を制御して温度センサ83の温度を徐々に下げていくと、載置部81に載置された測定対象物Cはある瞬間から凍り始め、この凍り始める瞬間にわずかに発熱が起こる。
【0153】
そして、このような温度制御を行った場合、温度画像がモニタ60に表示されるため、わずかな発熱が例えば明るさや色の違いなどによって画像に表されるため、相転移等の物性変化をモニタ60上で明確に目視することができるとともに、物性変化(画像上の変化)が起きたタイミングでの正確な温度を取得することができる。
【0154】
また、例えば測定対象物Cに熱を与えていった場合、この測定対象物Cのうち各ピクセルに対応する微小領域毎の温度の違いをモニタ60上で目視できるため、ピクセル単位での熱の流れを把握することができる。
【0155】
さらに、赤外線カメラ56により撮影した後に測定対象物Cが凍り始めたタイミングでの温度のみを取得するなど、後から各画像フレームの一部を任意に抽出して熱分析を行うことができる。
【0156】
上述したように、本発明に係るデータ画像記録装置100は、撮影画像の画像フレーム毎に物理量の測定データを画像情報として記録することにより、後で撮影画像を解析する際、各画像フレームの撮影のタイミングと測定データの取得タイミングとが対応しているため、画像上に変化が現れた際の正確な物理量を把握することができる。
【0157】
そして、本実施例では、パソコンPCに搭載された放射率補正プログラム65が、画像にラインデータとして記録された測定データを、画像を再生しつつ抽出し、解析することにより、赤外線カメラ56により撮影された画像の各画素に対して放射率補正を行なった温度画像を生成することが可能になる。
【0158】
このように、本発明に係る熱分析システム200によれば、物理量の測定データを撮影画像の1つの画像フレーム毎に画像情報として記録できるので、記録された画像に書き込まれた測定データを、後から、しかも、撮影時の画像フレーム毎に正確に解析することができる。
【0159】
[実施形態3]
従来から、交流熱流束を利用して測定対象物の熱拡散率や熱伝導率を測定する方法が知られている(特許文献2、特許文献3等参照)。
【0160】
特許文献2に記載の発明では、ヒーター等により測定対象物の裏面側から表面側に交流熱流束を生じさせた状態で測定対象物の裏面側の温度と表面側の温度とを計測して、計測された測定対象物の裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθを取得して、次式に基づいて測定対象物の熱拡散率αを導出している。
【0161】
ただし、πは円周率、fはヒーター等により加えられる交流熱の周波数、dは測定対象物の厚さである。
【0162】
また、熱伝導率λは、測定対象物の熱拡散率α、密度ρ、比熱容量cから、次式
λ=ρ・c・α
によって導出される。
【0163】
ところで、本発明の実施形態2に係る熱分析システム200でも、温調ユニット55を制御することにより測定対象物Cの裏面側(温度センサ83側)から交流熱を加えつつ、温度センサ83によって測定対象物Cの裏面側の温度を計測し、赤外線カメラ56によって測定対象物Cの表面側の赤外線放射強度を計測してデータとして記録し、これらの記録されたデータから測定対象物Cの裏面側の温度変化と表面側の温度変化とを解析することは可能である。
【0164】
一般に、交流熱流束を利用した測定対象物の熱拡散率や熱伝導率の測定では、測定対象物の材質や厚さなどによって加える交流熱の周波数を変えるが、通常は加える交流熱の周波数が数[Hz]〜数百[Hz]程度であるのに対して、一般的な赤外線カメラのフレームレートは毎秒30フレームである。
【0165】
このため、実施形態2に係る熱分析システム200では、測定対象物Cの交流的温度変化1周期当たりの温度データのデータ数が0〜30個程度になるので、1周期分の温度データだけでは、交流的温度変化の正弦波形を正確に再現するには温度データのデータ数が不十分である。
【0166】
測定対象物Cの裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθを正確に得るには、交流的温度変化がピークとなる時間(ピーク時間)を正確に得る必要があるので、実施形態2に係る熱分析システム200では、正確な熱拡散率αや熱伝導率λを算出することができない。
【0167】
そこで、実施形態3では、画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように、この測定データのデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得する。
【0168】
具体的には、温度センサ83によって計測された測定対象物Cの裏面側の温度の温度データと、赤外線カメラ56によって計測された測定対象物Cの表面側の赤外線放射強度を正規化して得られた温度データとがそれぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えることにより、これらの交流的温度変化の位相差Δθを取得し、これに基づいて熱拡散率や熱伝導率を導出する。
【0169】
[熱分析システムの全体構成]
図11に、実施形態3に係る熱分析システム300(熱分析装置)の全体構成が示されている。
【0170】
熱分析システム300の[熱分析システムの全体構成]、[温度調節装置]、[コンピュータシステム(パソコン)の構成]、[熱分析システムの接続]、[データ画像記録装置本体の構成]については、実施形態2に係る熱分析システム200と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0171】
[パソコンに搭載されるソフトウエアの構成]
図14は、実施形態3に係るパソコン本体57のハードディスク85に搭載されたソフトウエアの構成を示す図であり、図14に示す矢印はデータの流れを示している。
【0172】
図14に示すように、ハードディスク85には、温調コントローラ制御用ソフトウエア61と、録画再生ソフトウエア62と、画像解析ソフトウエア63とが予めインストールされており、これらのうち、温調コントローラ制御用ソフトウエア61と録画再生ソフトウエア62とは実施形態2のそれらと同一の構成となっている。
【0173】
また、画像解析ソフトウエア63は、画像再生プログラム64と、放射率補正プログラム65と、熱物性量算出プログラム90(熱物性量算出プログラム)とを有しており、これらのうち、画像再生プログラム64と放射率補正プログラム65とは実施形態2のそれと同一の構成となっている。
【0174】
熱物性量算出プログラム90は、温度センサ83によって測定された測定対象物Cの裏面側の温度の温度データT(n)(以下、これを「センサ側温度データT(n)」とする。)と、赤外線カメラ56により得られた赤外線強度データI(n)i,jに基づいて算出される測定対象
【0175】
熱物性量算出プログラム90は、オフセットルーチン91(オフセット手段)と、データ補完ルーチン92(データ補完手段)と、ピーク時間取得ルーチン93(ピーク時間取得手段)と、位相差取得ルーチン94(位相差取得手段)と、熱物性量算出ルーチン95(熱物性量算出手段)とを有している。
【0176】
オフセットルーチン91は、上記のセンサ側温度データT(n)と上記の表面側温度データ
処理を行う。
【0177】
データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理されたセン
期に等しいサンプリング周期で分割し、それらの複数のサンプリング周期の各周期に含まれる温度データを抽出し、抽出した温度データを並び替えて重ね合わせて、少なくともサンプリング周期の1周期分の温度データを補完することにより、センサ側温度データT(n)
の補完データを生成する。
【0178】
そして、ピーク時間取得ルーチン93は、データ補完ルーチン92により生成された2組の補完データについて、それらの交流的温度変化がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ取得する。
【0179】
また、位相差取得ルーチン94は、ピーク時間取得ルーチン93により取得された2組の補完データの各ピーク時間に基づいて、これら2つの正弦波形の位相差を算出する。
【0180】
さらに、熱物性量算出ルーチン95は、位相差取得ルーチン94により取得された2つの正弦波形の位相差と、温調コントローラ制御用ソフトウエア61等により設定された交流熱の周波数と、予め測定され、予め熱物性量算出プログラム90を操作して入力された測定対象物Cの厚さ、密度、比熱容量とに基づいて測定対象物Cの熱拡散率や熱伝導率を算出する。
【0181】
[熱分析の手順]
次に、熱分析システム300による測定対象物Cの温度上昇に対する熱拡散率や熱伝導率の変化に関する熱分析の手順について説明する。
【0182】
さらに具体的には、この熱分析では、熱分析システム300により、図15に示すような全体として正の勾配を有する交流熱流束を測定対象物Cに加えつつ計測された、測定対象物Cの裏面側の温度と赤外線カメラ56によって取得された赤外線強度に基づいて算出される測定対象物Cの表面側の温度とから、測定対象物Cの融解前後における熱拡散率や熱伝導率の変化を計測する。
【0183】
〔測定〕
まず、データ画像記録装置本体51、温調コントローラ52、赤外線カメラ56、および、パソコンPCを起動して熱分析処理を開始する。
【0184】
次に、パソコンPC上で温調コントローラ制御用ソフトウエア61を起動して温調コントローラ制御用ソフトウエア61のウインドウ上で温調ユニット55の制御を設定する。
【0185】
本実施の形態では、温調素子(ここではペルチェ素子)82によって、測定対象物Cに、図15に示すような正の勾配を有する交流熱流束(周期:Tth)が加わるように温調ユニット55を制御する。
【0186】
そして、パソコンPC上で録画再生ソフトウエア62を起動すると、赤外線カメラ56によって撮影された画像が録画再生ソフトウエア62のウインドウに映し出される。
【0187】
この画像の画像データには、各画像フレームの記録開始時点に計測されたセンサ側温度データT(n)を含む測定データがラインデータとして記録されている。
【0188】
そして、この画像を録画再生ソフトウエア62によってハードディスク85に動画ファイルとして録画(記録)する。
【0189】
〔データ解析〕
次に、パソコンPC上で画像解析ソフトウエア63を起動して、ハードディスク85に記録された動画ファイルについて記録データの解析を行う。
【0190】
まず、放射率補正プログラム65によりハードディスク85に記録された動画ファイルに対して温度補正処理を行なう。
【0191】
放射率補正プログラム65は、赤外線強度データ(I(n)i,j)に基づいて赤外線放射率に
D(n)i,jに基づいて補正動画ファイルを生成し、生成された補正動画ファイルをハードディスク85に記録する。
【0192】
【0193】
するが、例えば、これらの複数の画素のうち特定の画素から抽出した画素データを使用してもよいし、これらの複数の画素の画素データに対して適宜の平均処理を施してから使用してもよい。
【0194】
〔熱物性量算出処理〕
図16は、熱物性量算出プログラムによる熱物性量算出処理の流れを説明するフローチ
と時間tとの関係を示すグラフ、図17(b)は、図17(a)に示すグラフに対してオフセット処理して得られた正弦波のグラフを示している。
【0195】
上述のように、測定対象物Cには、図15に示すような全体として正の勾配を有する交流熱流束が加えられるので、センサ側温度データT(n)と時間tとの関係を示すグラフも、表
して正の勾配を有する正弦波形となる。
【0196】
(オフセット処理)
のそれぞれについて、位相差の抽出に不要な成分である温度上昇成分をオフセットして、図17(b)に示すような正弦波形の温度データを得る(ステップS11)。
【0197】
なお、図18(a)は、オフセット処理後のセンサ側温度データT(n)の正弦波形であり、
【0198】
(データ補完処理)
次に、データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理され
補完処理を行う(ステップS12)。
【0199】
このデータ補完処理を、図17(b)に示すようなTth≧Tfrの場合について、データ補完処理の方法を示した図19(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
【0200】
まず、データ補完ルーチン92は、オフセットルーチン91によりオフセット処理され
束の周期Tthに等しいサンプリング周期Tsで分割する(図17(b)参照)。
【0201】
このようにして分割された各周期をそれぞれ、サンプリング周期(1),サンプリング周期(2),…とすると、例えば、図17(b)に示すように、サンプリング周期(1)には、温度データT11,T12,T13,…が含まれ、サンプリング周期(2)には、温度データT21,T22,T23,…が含まれる。
【0202】
次に、データ補完ルーチン92は、各サンプリング周期(1),(2),…のサンプリング開始時間と、各サンプリング周期(1),(2),…の最初の温度データT11,T21,…の取得時間との間の各時間偏差(タイムシフト量)t1,t2,…を、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとに基づいて算出する。
【0203】
そして、データ補完ルーチン92は、図19(a)〜(c)に示すように、分割されたサンプリング周期(1)に含まれる温度データT11,T12,T13,…(図19(a)参照)と、サンプリング周期(2)に含まれる温度データT21,T22,T23,…(図19(b)参照)と、をそれぞれ基準時間からタイムシフト量t1,t2,…だけ時間的にシフトさせて重ね合わせる(図19(c)参照)。
【0204】
なお、図19(a)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(1)について抽出した温度データの図であり、図19(b)は、図17(b)に示すオフセット処理後の正弦波のうちサンプリング周期(2)について抽出した温度データの図であり、図19(c)は、図19(a)に示す温度データおよび図19(b)に示す温度データを重ね合わせた図である。
【0205】
図19(c)に示すように、上述のデータ補完処理により、交流熱流束の1周期分に含まれる温度データをおよそ2倍に増やすことができる。
【0206】
本実施の形態では、このようなデータの重ね合わせを、例えば、数周期から数十周期分について行なうことによって、緻密な正弦波形を再現する。
【0207】
《時間偏差の算出例》
図17(b)に示すように、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとの大小関係がTth≧Tfrである場合には、サンプリング周期(n)のタイムシフト量tnは、次式(C1)により求められる。
また、図20に示すように、交流熱流束の周期Tthと画像フレームの取得周期Tfrとの大
(C2)により求められる。
ただし、[ ]はガウス記号であり、[x]は、実数xを超えない最大の整数を表す。
【0208】
なお、図20に示すTth≦Tfrの場合には、各サンプリング周期内に含まれている温度デ
最初の温度データのデータ取得時間になっている。
【0209】
ところで、本実施の形態の熱分析システム300では、温度センサ83側から交流熱を加えており、この交流熱が測定対象物Cの温度センサ83側から表面側まで伝達するのに
波形に対して、図18(a),(b)に示すような時間的遅れが生じる。
【0210】
また、測定対象物Cの表面側の温度の振幅は、温度の減衰により、実際には測定対象物Cのセンサ側の温度の振幅より小さくなっているが、図18(a),(b)に示されたグラフは、それぞれの振幅が一致するように規格化している。
【0211】
これらの正弦波形がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ抽出することにより、これらの正弦波形の位相差Δθ[rad]を算出することができる。
【0212】
(ピーク時間取得処理)
ピーク時間取得ルーチン93は、データ補完ルーチン92により生成された2組の補完
波形がピークとなる時間(ピーク時間)をそれぞれ取得する(ステップS13)。
【0213】
補完ルーチン92により緻密な正弦波形になっているので、ピーク時間取得ルーチン93によって正確なピーク時間を取得することができる。
【0214】
(位相差取得処理)
位相差取得ルーチン94は、ピーク時間取得ルーチン93により取得された2組の補完
て、これら2つの正弦波形の位相差Δθ[rad]を算出する(ステップS14)。
【0215】
(熱物性量算出処理)
熱物性量算出ルーチン95は、位相差取得ルーチン94により取得された2つの正弦波形の位相差Δθと、温調コントローラ制御用ソフトウエア61等により設定された交流熱の周波数fと、予め測定され、予め熱物性量算出プログラム90を操作して入力された測定対象物Cの厚さd、密度ρ、比熱容量cとから、次の2式に基づいて測定対象物Cの熱拡散率αや熱伝導率λを算出する(ステップS15)。
実施形態3に係る熱分析システム300では、各画素について赤外線強度データI(n)i,j
毎の各画素について熱拡散率や熱伝導率を算出することが可能である。
【0216】
そして、このように算出された各画素の熱拡散率や熱伝導率のデータは、時系列毎(すなわち、画像フレーム毎)に数表として出力してもよいが、データ数が膨大であるため、本実施の形態の熱分析システム200では、各画素の熱拡散率や熱伝導率の大小を表示画像のピクセル色に対応させて表示することにより、熱拡散率や熱伝導率の分布をカラー画像として表示するように構成されている。
【0217】
〈本実施例の作用効果〉
このような構成により、熱拡散率や熱伝導率の分布が視覚化され、熱拡散率や熱伝導率の分布を直感的に把握することができる。
【0218】
また、特定の画素あるいは画像領域について、熱拡散率や熱伝導率のデータを時系列毎(すなわち、画像フレーム毎)にグラフにプロットすることにより、熱入力に対する被測定物の熱拡散率や熱伝導率の変化を調べることもできる。
【0219】
本実施の形態に係る測定では、測定対象物Cに全体として正の勾配を有する交流熱流束を加えるので、測定対象物Cに入力される熱流束の成分のうち、正勾配の線形成分により測定対象物Cの温度は徐々に上昇し、あるとき測定対象物Cの融解が始まる。
【0220】
例えば、赤外線放射率に関して正規化された補正動画ファイルの画像と、上述のカラー画像化された熱拡散率や熱伝導率の分布画像とを同時に参照することにより、測定対象物Cが融解する様子を温度画像で目視しつつ、融解前後での熱拡散率や熱伝導率の変化を確認することできる。
【0221】
このように、実施形態3に係る熱分析システム300では、相転移などの物性状態の変化に伴う熱拡散率や熱伝導率の変化を測定することができ、熱拡散率や熱伝導率の相状態に関する依存性を調べることができる。
【0222】
しかも、データ補完ルーチン92により正弦波形を正確に再現するので、ピーク時間取得ルーチン93により正確なピーク時間を取得でき、位相差取得ルーチン94により各正弦波形の正確な位相差を取得できるので、熱物性量算出ルーチン95により、この正確な位相差に基づいて測定対象物の正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0223】
これにより、例えば、交流熱の数周期から数十周期分のデータの重ね合わせることによってデータを補完することができるので、フレームレートがさほど大きくない一般的な赤外線カメラであっても、正確な熱拡散率および/または熱伝導率を算出することができる。
【0224】
なお、実施形態3の熱分析システム300では、放射率補正プログラム65によって、赤外線カメラ56により撮影された測定対象物Cの表面側の赤外線画像データから測定対象物Cの表面側の温度を正確に測定することができることにより、測定対象物Cの正確な熱拡散率や熱伝導率の算出が可能になっている。
【0225】
本実施の形態で示されたように、本発明の熱分析装置では、画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるようにデータ順序を並べ替えて参照することにより、これらの並べ替えた複数の測定データから目的とする熱物性量を算出するのに必要とされる情報を取得することができる。
【0226】
具体的には、本実施の形態において、上記の「測定データの値が略連続となるようなデータ順序の並べ替え」は「温度データの並べ替え」であり、上記の「必要とされる情報」は「測定対象物Cの裏面側の交流的温度変化と表面側の交流的温度変化との位相差Δθ」であり、「目的とする熱物性量」は「熱拡散率や熱伝導率」であるが、本発明の熱分析装置では、データ順序を並べ替える物理量は、必ずしも温度である必要はなく、また、その物理量が時間に対して周期性を有する必要もない。
【0227】
例えば、ある測定データの値が単調に増大または減少する順に、画像フレームの表示順序を並び替えることにより、上記の測定データの増大または減少に伴い測定対象物Cに生じる画像上の変化をモニタ60によって確認することもできる。
【0228】
このように、本発明の熱分析装置では、撮影された画像の画像フレームの取得のタイミングと、計測されてラインデータとして画像データに記録された物理量の取得のタイミングとが同期しているので、計測されたある測定データが略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することにより、計測された物理用のうち、少なくとも1つの物理量に注目して、この物理量の変化に対して撮影された画像がどのように変化するかが分析可能になる。
【符号の説明】
【0229】
1 赤外線カメラ(撮影手段)
2 測定センサ(測定手段)
3 データ画像記録装置本体
31 同期信号分離手段
32 信号合成手段
33 クロック信号発生部
34 信号生成手段
35 アナログスイッチ
100 データ画像記録装置
A 測定対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を動画として撮影する撮影手段と、
前記測定対象物に関する物理量を測定する測定手段と、
前記撮影手段からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段と、
前記測定手段により測定された測定データを、前記同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化して、前記映像信号に合成して出力する信号合成手段と、有し、
前記信号合成手段が、前記明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力することを特徴とするデータ画像記録装置。
【請求項2】
前記2値化された測定データが表示される走査線が前記各画像フレームの最上位の走査線であることを特徴とする請求項1に記載のデータ画像記録装置。
【請求項3】
前記信号合成手段が、前記測定データを、前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段と、前記同期信号に基づいて、前記撮影手段からの映像信号を遮断すると共に、前記信号生成手段により生成された信号を出力するアナログスイッチと、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ画像記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ画像記録装置と、
該データ画像記録装置により前記測定データが合成された映像信号を画像データに変換して記録可能、かつ、変換された該画像データと該画像データに含まれる前記測定データを演算処理可能とするコンピュータシステムと、を備えた熱分析装置であって、
前記コンピュータシステムが、前記動画として記録された画像を表示する画像再生手段と、前記画像データから前記明暗に2値化された測定データを抽出する2値化データ抽出手段と、
前記明暗に2値化された測定データを対応する文字列のデータに変換する2値化データ変換手段と、を有する画像再生ソフトウエアを搭載していることを特徴とする熱分析装置。
【請求項5】
測定対象物を動画として撮影した映像信号と前記測定対象物に関する物理量の測定データとを取得し、
前記測定データを、前記映像信号から分離した同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、
前記画像上の明暗となるように2値化し、
前記映像信号に合成して出力する、ことを特徴とするデータ画像記録方法。
【請求項6】
前記撮影手段を、赤外線画像を撮影する赤外線画像撮影手段とし、
前記測定手段を、前記測定対象物の温度を測定する温度センサとして、
前記赤外線画像の画像データから画像フレーム毎に各画素の赤外線強度データを抽出する赤外線強度抽出手段と、
前記画像データから前記測定データとしての前記測定対象物の温度データを抽出する測定データ抽出手段と、
前記画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データと該各画像フレームに対応する前記測定対象物の温度データとに基づいて、前記赤外線強度データを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた補正温度データを算出する温度補正手段と、
前記補正温度データに基づいて各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データを生成する正規化画像データ生成手段と、を有する画像解析ソフトウエアを搭載していることを特徴とする請求項4に記載の熱分析装置。
【請求項7】
測定対象物の赤外線画像を動画として撮影する赤外線画像撮影手段によって取得された画像データの画像フレーム毎に請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて合成され記録された前記測定対象物の温度データと、少なくとも1つの前記画像フレームの各画素の赤外線強度データと、に基づいて、前記画像フレームの各画素に対応する実効的な赤外線放射率を算出し、
前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを前記実効的な赤外線放射率によって割ることにより該実効的な赤外線放射率に関して前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを正規化した補正赤外線強度データを算出し、
該補正赤外線強度データに基づいて、前記画像フレームの各画素について正規化した補正温度データを算出する、ことを特徴とする画像データの正規化方法。
【請求項8】
前記画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように該少なくとも1つの測定データのデータ順序を並べ替えて参照することを特徴とする請求項6に記載の熱分析装置。
【請求項9】
前記測定対象物の裏面側から交流熱を加えつつ前記温度センサによって該測定対象物の裏面側の温度を計測した温度データとしての測定データと、前記赤外線画像撮影手段によって前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度を計測した赤外線放射強度データとしての測定データと、を解析する熱分析装置であって、
前記測定対象物の裏面側の温度の温度データと前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度データを正規化して得られた温度データとが、それぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えて重ね合わせることによりデータ補完を行なうデータ補完手段と、
該データ補完手段によりデータ補完された2組の正弦波形が示すデータから正弦波形がピークとなるピーク時間を取得するピーク時間取得手段と、
該ピーク時間取得手段により取得された前記2組の正弦波形の各ピーク時間から各正弦波形の位相差を取得する位相差取得手段と、
該位相差取得手段により取得された前記2組の正弦波形の位相差に基づいて熱拡散率および/または熱伝導率を算出する熱物性量算出手段と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の熱分析装置。
【請求項10】
請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて、
複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することを特徴とする記録画像の表示方法。
【請求項1】
測定対象物を動画として撮影する撮影手段と、
前記測定対象物に関する物理量を測定する測定手段と、
前記撮影手段からの映像信号から同期信号を分離する同期信号分離手段と、
前記測定手段により測定された測定データを、前記同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、前記画像上の明暗となるように2値化して、前記映像信号に合成して出力する信号合成手段と、有し、
前記信号合成手段が、前記明暗に2値化された測定データを、該測定データに対応する画像フレームの少なくとも1つの走査線上に表示するように出力することを特徴とするデータ画像記録装置。
【請求項2】
前記2値化された測定データが表示される走査線が前記各画像フレームの最上位の走査線であることを特徴とする請求項1に記載のデータ画像記録装置。
【請求項3】
前記信号合成手段が、前記測定データを、前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期させた信号に変換して生成する信号生成手段と、前記同期信号に基づいて、前記撮影手段からの映像信号を遮断すると共に、前記信号生成手段により生成された信号を出力するアナログスイッチと、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ画像記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ画像記録装置と、
該データ画像記録装置により前記測定データが合成された映像信号を画像データに変換して記録可能、かつ、変換された該画像データと該画像データに含まれる前記測定データを演算処理可能とするコンピュータシステムと、を備えた熱分析装置であって、
前記コンピュータシステムが、前記動画として記録された画像を表示する画像再生手段と、前記画像データから前記明暗に2値化された測定データを抽出する2値化データ抽出手段と、
前記明暗に2値化された測定データを対応する文字列のデータに変換する2値化データ変換手段と、を有する画像再生ソフトウエアを搭載していることを特徴とする熱分析装置。
【請求項5】
測定対象物を動画として撮影した映像信号と前記測定対象物に関する物理量の測定データとを取得し、
前記測定データを、前記映像信号から分離した同期信号に基づいて前記動画の画像フレーム毎に取得し、
前記画像上の明暗となるように2値化し、
前記映像信号に合成して出力する、ことを特徴とするデータ画像記録方法。
【請求項6】
前記撮影手段を、赤外線画像を撮影する赤外線画像撮影手段とし、
前記測定手段を、前記測定対象物の温度を測定する温度センサとして、
前記赤外線画像の画像データから画像フレーム毎に各画素の赤外線強度データを抽出する赤外線強度抽出手段と、
前記画像データから前記測定データとしての前記測定対象物の温度データを抽出する測定データ抽出手段と、
前記画像フレーム毎の各画素の赤外線強度データと該各画像フレームに対応する前記測定対象物の温度データとに基づいて、前記赤外線強度データを各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた補正温度データを算出する温度補正手段と、
前記補正温度データに基づいて各画像フレームの各画素について赤外線放射率に関して正規化して得られた画像データを生成する正規化画像データ生成手段と、を有する画像解析ソフトウエアを搭載していることを特徴とする請求項4に記載の熱分析装置。
【請求項7】
測定対象物の赤外線画像を動画として撮影する赤外線画像撮影手段によって取得された画像データの画像フレーム毎に請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて合成され記録された前記測定対象物の温度データと、少なくとも1つの前記画像フレームの各画素の赤外線強度データと、に基づいて、前記画像フレームの各画素に対応する実効的な赤外線放射率を算出し、
前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを前記実効的な赤外線放射率によって割ることにより該実効的な赤外線放射率に関して前記画像フレームの各画素の赤外線強度データを正規化した補正赤外線強度データを算出し、
該補正赤外線強度データに基づいて、前記画像フレームの各画素について正規化した補正温度データを算出する、ことを特徴とする画像データの正規化方法。
【請求項8】
前記画像フレーム毎の赤外線強度データを含む複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように該少なくとも1つの測定データのデータ順序を並べ替えて参照することを特徴とする請求項6に記載の熱分析装置。
【請求項9】
前記測定対象物の裏面側から交流熱を加えつつ前記温度センサによって該測定対象物の裏面側の温度を計測した温度データとしての測定データと、前記赤外線画像撮影手段によって前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度を計測した赤外線放射強度データとしての測定データと、を解析する熱分析装置であって、
前記測定対象物の裏面側の温度の温度データと前記測定対象物の表面側の赤外線放射強度データを正規化して得られた温度データとが、それぞれ正弦波形を正確に再現するようにデータ順序を並べ替えて重ね合わせることによりデータ補完を行なうデータ補完手段と、
該データ補完手段によりデータ補完された2組の正弦波形が示すデータから正弦波形がピークとなるピーク時間を取得するピーク時間取得手段と、
該ピーク時間取得手段により取得された前記2組の正弦波形の各ピーク時間から各正弦波形の位相差を取得する位相差取得手段と、
該位相差取得手段により取得された前記2組の正弦波形の位相差に基づいて熱拡散率および/または熱伝導率を算出する熱物性量算出手段と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の熱分析装置。
【請求項10】
請求項5に記載のデータ画像記録方法を用いて、
複数の前記測定データのうち少なくとも1つの測定データの値が略連続となるように画像フレームの表示順序を並び替えて表示することを特徴とする記録画像の表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−145556(P2012−145556A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87740(P2011−87740)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506354216)株式会社アイフェイズ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506354216)株式会社アイフェイズ (2)
【Fターム(参考)】
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