説明

データ管理システムを含む被分析物検査器具システム

【課題】データ通信ネットワークに接続される複数の被分析物検査器具のためのデータを管理する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、各器具のデータ通信ネットワークへの接続を、ホストコンピュータを介して検出するステップと、各器具から受信されたデータをホストコンピュータへアップロードするステップと、アップロードされたデータを、オペレータのレビューのためにホストコンピュータ上で処理するステップと、構成データをホストコンピュータから各検査器具へダウンロードするステップとを備え、ダウンロードされたデータは、器具固有のセットアップおよびコントロールデータを有する。本発明は、ハンドヘルド被分析物検査器具および検査器具のためのドッキングステーションをさらに含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
データ管理システムを含む被分析物検査器具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設におけるヘルスケアの専門家は、患者の健康の種々の局面を監視すべく、患者に対して臨床検査を実行するために種々の器具を使用することが日常的に要求される。これらの検査は、しばしば収集され且つ後続の分析のために整理される、かなりの量の医療データを生成する。データは、1またはそれ以上のアナライト、すなわち被分析物(例えば、血液ブドウ糖、ケトン)のレベルを決定するために検査の結果を含み得る。
【0003】
伝統的には、器具により得られるデータを収集し且つ整理するための主要な手段は、検査結果のプリントされまたは筆記された記録である。結果を検討するため、ヘルスケア専門家は、施設の記録部門から結果を検索し、または患者の病室へ行く。これらの結果は、しばしば、プリントされた形態でのみ利用可能であるから、年代によるおよび統計的な分析は困難である。
【0004】
政府規則は、検査結果の正確さを確実にするために、一定の間隔での患者の検査に用いられる器具に対するコントロール検査を実行することを、医療施設に要求している。そのような器具を操作するヘルスケアの専門家は、定期的な証明更新を受けることも要求される。
【0005】
施設の管理スタッフのメンバーは、器具のコントロール検査データの検討、および連邦法の遵守を確実にするための手続きの証明の更新についての責任をしばしば負っている。しかしながら、多くの場合、管理者は、検査が完了した後に、「仕様を外れた」器具、期限切れの供給物(例えば、検査ストリップ)、または保証されていないヘルスケア専門家を含む検査を確認してしまう。これらの検査結果は、受け入れられ、または患者が他の検査に供せられ得る。
【0006】
それゆえ、複数の医療検査器具の各々が、患者検査結果の集中個所へのリアルタイム転送を提供するデータ通信ネットワークに接続されている、ヘルスデータ管理システムを有することが好ましい。加えて、そのようなシステムに、「仕様を外れた」器具、期限切れの供給物(例えば、検査ストリップ)、または保証されていないヘルスケア専門家により、患者を検査することを防止するためのセキュリティ機構を含ませることが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ハンドヘルド被分析物検査器具が開発された。該器具は、被分析物を受け入れるように検査ストリップに結合されたバーコードをスキャンするために、ハウジング内に配置されたバーコードリーダを含んでいる。ハウジングは、検査ストリップを受け入れるためのポートも含んでいる。ポートと電気的に通信する電子回路は、検査ストリップから受信された被分析物信号を処理し、且つ被分析物データを生成するために用いられる。いくつかの被分析物データを表示するために、電子回路と電気的に通信するディスプレイも含まれている。器具は、電子回路と電気的に通信をして、且つデータ通信ネットワークを越えてホストコンピュータに電気的に接続可能なコネクタも有している。電子回路は、コネクタがネットワークに接続されたときに、被分析物データをホストコンピュータへ自動的にアップロードする。
【0008】
ハンドヘルド被分析物検査器具は、被分析物を受け入れるように構成された、検査ストリップを受け入れるためのポートを有するハウジングを含んでいる。器具は、ポートおよびコネクタと電気的に通信する電子回路も含んでいる。電子回路は、検査ストリップから受信された被分析物信号を処理し、且つ被分析物データを生成する。コネクタは、電源に電気的に接続可能である。器具は、ディスプレイ、バッテリ室、および再充電可能なバッテリパックも含んでいる。ディスプレイは、電子回路と電気的に通信をしており、且ついくつかの被分析物データを表示するために用いられる。バッテリ室は、ハウジング内に形成され、且つ電子回路にバッテリからの電力を供給するための一対の電気的コンタクトと、一対の再充電コンタクトとを含んでいる。再充電可能なバッテリパックは、バッテリ室内に配置され、且つバッテリホルダ内に配置された再充電可能なバッテリと、バッテリホルダに配置されたバスバーとを含み、器具が前記電源に接続されたときに、バッテリを再充電するように一対の再充電コンタクトと電気的に通信する。
【0009】
ハンドヘルド被分析物検査器具を受け入れるためのドッキングステーションが開発された。ドッキングステーションは、コネクタ、スイッチ、第1および第2のデータポート、並びにコントロール機構を含んでいる。コネクタは、被分析物データを受信するために器具に電気的に接続可能である。スイッチは、コネクタと電気的に通信する。第1のデータポートおよび第2のデータポートは、スイッチと電気的に通信する。第1および第2のデータポートは、コンピュータおよび周辺デバイスにそれぞれ電気的に接続可能である。コントロール機構は、第1のデータポートを介してコンピュータへ、または第2のデータポートを介して周辺デバイスへ、被分析物データを選択的に通すように、スイッチをコントロールする。
【0010】
データ通信ネットワークに接続された複数の被分析物検査器具についてのデータを管理する方法は、ネットワークへの各器具の接続を、ホストコンピュータを介して検出するステップと、お各器具から受信されたデータをホストコンピュータへアップロードするステップとを含んでいる。この方法は、アップロードされたデータを、オペレータのレビューのためにホストコンピュータ上で処理するステップと、構成データをホストコンピュータから各検査器具へダウンロードするステップも含んでいる。ダウンロードされるデータは、各器具に固有であるセットアップおよびコントロールデータを含んでいる。
【0011】
本発明の上述およびその他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面において図示されているような、本発明の好ましい実施の形態の以下に述べるより詳細な記述により、明らかになるであろう。前記図面は、かならずしも一定の縮尺ではなく、むしろ本発明の原理の図解に強調が施されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ドッキングステーション内に配置された被分析物検査器具の斜視図である。
【図2】データ通信ネットワーク上でホストコンピュータに接続された複数個の医療検査器具の機能的なブロック図である。
【図3A】被分析物検査器具の上面図である。
【図3B】被分析物検査器具の側面図である。
【図3C】被分析物検査器具の端面図である。
【図4】被分析物検査器具の切欠斜視図である。
【図5】被分析物検査器具のLCDモジュール上に提供される表示データの例である。
【図6】被分析物検査器具と共に使用するための3電極検査ストリップの斜視図である。
【図7A】再充電可能なバッテリパックの図である。
【図7B】バッテリ室および分離された再充電可能バッテリパックを露出するように開いた、被分析物検査器具の背面の斜視図である。
【図8A】再充電可能なバッテリパックの図である。
【図8B】再充電可能なバッテリパックと共に用いる2フィンガリーフスプリングコンタクトコネクタの図である。
【図9A】アルカリ電源電池と共に示された被分析物検査器具の断面図である。
【図9B】再充電可能なバッテリパックと共に示された被分析物検査器具の断面図である。
【図10】一対の2フィンガリーフスプリングコンタクトコネクタを採用する、バッテリ監視回路および再充電電流回路の図である。
【図11A】被分析物検査器具と共に使用するためのドッキングステーションの斜視図である。
【図11B】被分析物検査器具と共に使用するためのドッキングステーションの斜視図である。
【図12】2つのポート間のデータ転送を方向付けするためのドッキングステーションスイッチング回路の機能的ブロック図である。
【図13】ドッキングステーションと共に使用するためのコンピュータインタフェースケーブルの図である。
【図14】病院の環境において多数の被分析物検査器具と共に使用するためのデータ管理システムの機能的ブロック図である。
【図15A】被分析物器具データ管理システムに使用するためのデータベーステーブルの一つの可能性のある構成を示している。
【図15B】被分析物器具データ管理システムに使用するためのデータベーステーブルの一つの可能性のある構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、病院の環境において1つまたはそれ以上の被分析物(例えば、血液ブドウ糖、ケトン、その他)についての患者検査に用いられる器具10が、ドッキングステーション12内に配置されて示されている。器具10は、検査ストリップの一端に載置された患者サンプル(例えば、血液)を、ストリップの他端が器具10に挿入されたときに分析する。ドッキングステーション12は、器具10がステーション12内に配置されたときに、ホストコンピュータへの検査結果の自動的な転送を可能とし、且つ内部のバッテリパックを再充電するための電力を供給する。
【0014】
典型的なヘルスケア施設において、複数の器具10が、図2に示されるように、ドッキングステーション12を介してホストコンピュータ14に対してネットワーク接続され得る。例えば、1つの器具は、各患者の部屋へ割り当てられ得る。ナースまたは他のオペレータは、器具内へ検査ストリップを挿入し、且つ検査ストリップの露出部分に患者サンプルを載置する。分析するために充分な患者サンプル量が、検査ストリップ上に載置されたときに、可聴表示がオペレータに報知する。器具は、それからサンプルを分析し、且つLCDモジュール上にその結果を表示する。オペレータは、結果が有効となる前でさえも、前記器具をドッキングステーション12に戻すことができ、ドッキングステーション12では、検査データ(オペレータID、患者ID、日付、時間、およびその他のパラメータ)が、ケーブルを介して、ホストコンピュータ14へ自動的に転送される。検査データおよび結果は、望むならば、ハードコピーを生成すべく、ケーブル(例えば、RS−232標準インタフェースケーブル)によってローカルプリンタ16に向けられ得る。ネットワークは、双方向データ通信リンクを介してホストコンピュータ14によって制御される。双方向データ通信リンクでは、データが、器具10からコンピュータ14へ転送され、且つデータが、コンピュータ14から器具10へ転送され得る。後者のモードは、個別の器具または器具のグループの独立の遠隔構成を可能とする。
【0015】
被分析物検査器具
図3および4を参照すると、被分析物検査器具20は、ハウジング22、ユーザインタフェース24、およびディスプレイ領域26を含んでいる。ハウジング22は、臨床患者検査のためにハンドヘルド操作を許容するように形成されている。ハウジング22は、アナログおよびディジタルプリント回路基板を取付けるための内部サブフレーム28、およびバーコードスキャンエンジン30を含んでいる。サブフレームはまた、バッテリキャビティを形成し、且つバッテリコンタクト(図示されていない)を含んでいる。ハウジング22は、ゴムまたはプラスチック(例えば、ABS、ポリカーボネート)から製作されている。滑らかな表面、および最小限に露出された留め具と合わせ目は、異物をため得る領域を最小化するのを助け、且つ器具をクリーニングするのを容易にする。シリコーンゴムパッドが、横滑りを防止するために、ハウジング22の底部に接着剤により取り付けられている。
【0016】
ユーザインタフェース24は、数字キーパッドと、ファンクションボタンとを含んでいる。該ファンクションボタンは、電源を作動する/非作動にする、検査またはメニューモードを選択する、エントリを編集する、エントリを終了する、およびマニュアル数字エントリの代わりとしてのバーコードリーダを作動させる。ユーザインタフェースにおける全てのボタンは、(例えば、メンブランスイッチを用いて)完全にシールされている。前記キーパッドおよびバーコードリーダは、オペレータが、オペレータおよび患者識別(ID)番号、ストリップコントロールロット番号、および較正コードを含む種々のデータを入力すること、並びに他の器具パラメータ(例えば、日時、セキュリティ間隔、ディスプレイバックライト)をセットすることを可能とする。バーコードリーダは、各検査の間、検査ストリップコードを視覚的に照合する必要性を排除するので、検査ストリップ較正データの入力に用いることが好ましい。
【0017】
ディスプレイ26は、グラフィック式の液晶ディスプレイ(LCD)モジュールであり、多数行のテキスト文字を提供する。図5を参照すると、数であらわした検査結果と共に、種々のプロンプト、音声的なおよび視覚的な警告、並びにメニュー項目が表示され得る。ディスプレイ26は、照明が不充分な光条件において視認性を改善するために、4個のアンバー高輝度LEDを用いる選択可能なバックライトモードを含んでいる。
【0018】
図3および4を再び参照すると、バーコードリーダは、レーザスキャンエンジン30、および赤色アクリル出口窓32を備えている。赤色出口窓32は、スキャンエンジンレーザ源の波長(例えば、680nm)に適合しない受光を減弱させるための光学フィルタとして動作する。バーコードリーダは、バーコードの非接触読み取りを提供するために、ハンドヘルド器具の先端に配置される光学系を含んでいる。リーダは、キーパッドの上端に配置されたスキャンキー34を押下することにより稼動される。バーコードリーダは、もしもオペレータが、オペレータID、患者ID、あるいはストリップロットまたはコントロールバイアル情報の、いずれか1つの入力が促された場合にのみ稼動され得る。識別は、手で入力され、またはオペレータおよび患者が身につけたバーコード化された識別タグ(例えば、リストバンド)から、リーダを介して器具内に読み込まれ得る。出口窓32の数インチの範囲内に配置されたバーコード化された項目は、ユーザインタフェース24内のスキャンボタン34を押下した後にスキャンされ得る。可聴信号が、バーコードの成功裏の読み取りを報知する。
【0019】
バーコードリーダは、当該技術分野においては良く知られており(例えば、小売り精算スキャナ)、Symbol Technologies,Inc.により商業的に販売されている。引用によりここに組み込まれた米国特許第5,637,856号は、被分析物器具に一体化するのに適するバーコードスキャニングシステムを記述している。
【0020】
器具20は、患者から取り出したサンプルにおける被分析物のレベルを判定するために、検査ストリップを受け入れる検査ストリップポート36を含んでいる。引用によりここに組み込まれた米国特許第5,628,890号は、一つのタイプの検査ストリップを示している。
【0021】
データポート10ピンコネクタ38は、データ転送、(外部電源からの)バッテリ再充電、およびプリンタ通信のために、ドッキングステーションにおける対応するコンタクトに接続することを可能とするために、器具の基部に設けられる。コネクタは、器具の基部端の外形を越えて延びることはない。コネクタ内の電気的コンタクトの単一の列は、外部導体に対する不用意な接触を防止するため、引っ込んでいる。器具20は、データポートを介してリンクされたホストコンピュータからアップロードされたコマンドに応答する。外部コンピュータシステムは、器具がドッキングステーションに結合された後には、オペレータ側でのいかなる操作もなしにデータ転送を開始させる。
【0022】
図6は、3つの電極を含み、且つ血液中の被分析物のレベルを判定するために器具(図4参照)と共に使用され得る、一つのタイプの検査ストリップ40を示している。ストリップは、サンプル領域42がハウジング22の外部に残るように、ポート36に部分的に挿入される。血液サンプルが、サンプル領域42に塗布され、且つ3個の電極の非露出端部におけるアクティブ領域(図示されていない)へ流れる。アクティブ領域は、サンプルにおける電気化学的反応を生じさせ、そしてそれは電気的に監視される。各検査ストリップは、典型的には、有効期限日を有しているので、ストリップパッケージ上に配置され得るストリップ識別コードは、器具20にマニュアルにより入力されるか、またはバーコードリーダによりスキャンされる。もしも、ストリップコードが、有効なコードとして認識されなければ、そのときは、器具20は、オペレータに警告し、当該ストリップ40についての器具20のさらなる操作を防止する。
【0023】
図7および8Aを参照すると、器具20は、器具20の下側のキャビティ52(すなわち、バッテリ室)内にしっかりと設置された、再充電可能なバッテリパック50(例えば、ニッケル金属水素化物(NiMH)バッテリパッケージ)により電源供給される。組み込まれたバッテリパック50(図9A参照)は、器具がドッキングステーション内に配置されたときに、ドッキングステーションによって再充電される。あるいはまた、器具は、同じキャビティ52(図9A参照)内にしっかりと設置された、2個の標準のアルカリバッテリにより電源供給され得る。もしもアルカリバッテリが不適切に設置されると、電気的接触を生じさせず、そして器具は作動しないであろう。
【0024】
加えて、アルカリバッテリを不用意に再充電してしまう可能性は、カスタムデザインされた再充電可能バッテリパック50の使用によって排除される。バッテリ室におけるキーイング特徴は、バッテリパックの不正な挿入、または指定されていないバッテリパックの挿入を防止するように構成され、それによって他のバッテリ化学物質が、不用意に使用されてしまう可能性を排除する。
【0025】
図9Aおよび9Bを参照すると、カスタムデザインされたバッテリパック50は、バッテリ室52に設置されたときの、2つの標準アルカリバッテリ54、56の間に存在する空の空間を利用し、それによって、標準アルカリ電池が再充電機能を作動させる可能性を排除する。再充電回路は、2つの独立の回路を含んでいる(図10参照)。第1の回路60は、再充電可能バッテリパック50へ再充電電流を供給する。第2の回路62は、バッテリレベルの計測を容易にするために、再充電可能バッテリパック50の存在を判定する。パック50は、2つのNiMHバッテリ54、56のホルダとして作用し、且つ2つの配設されたアルカリバッテリの間に通常存在する空の空間を占有するプラスチックスパイン58を含む。図8Aを再び参照すると、プラスチックスパイン58内に配置された2つの分離した導電パッド64、66は、バスバーコンタクトとして作用する。各バスバーコンタクトは、バッテリ室52(図8Bおよび9A〜9B参照)内の空の空間内に配置される、小さな2フィンガリーフスプリングコンタクトコネクタ68(例えば、ボーン(Bourne)コネクタ)と共に用いられる。各フィンガは、コネクタ内における他のフィンガに対して電気的に無関係である。バッテリパック50が設置されたとき、プラスチックスパイン58内の2つの電気的に分離しているバスバーコンタクトは、2つのコネクタの各々にわたって電気的なショートを生じさせ、それによって2つの独立の回路を完成する(図10参照)。電気経路の完成は、コネクタ上の一つのコンタクトから、バスバーコンタクトを通して、そして同一のコネクタの他のコンタクトの外へ電流を流れさせることを必要とするので、このバッテリパック構成を利用しないどんな他のバッテリシステムへも、再充電電流が供給され得る可能性はない。
【0026】
ドッキングステーション
図11Aは、机上設置構成におけるドッキングステーション70を示している。代わりの壁設置構成は、付属された取付ブラケット72の位置を変えることにより達成される。ドッキングステーション70は、器具に、少なくとも次の2つの重要な可能性を提供する。第1に、再充電可能なバッテリパックを有する器具は、ドッキングステーション内に設置したときに再充電される。第2に、ホストコンピュータまたは他のデバイスとのデータ通信は、ドッキングステーションを通して確立され得る。特に、ドッキングステーションは、検査データのホストコンピュータへのハンズフリーで且つほぼリアルタイムの転送(1)、そして前記ホストコンピュータからの構成データのハンズフリーで且つほぼリアルタイムの転送(2)が可能である。ドッキングステーション70は、使用中でないときに、器具の便利な置き場所をも提供する。
【0027】
電源電力は、外部ACアダプタを通してドッキングステーションに提供される。ドッキングステーション上のステータス(状態)ライト74(例えば、LED)は、いつ電源電力がオンとなったか、いつメータが成功裏にドッキングしたか、そしてデータがいつドッキングステーションを介して転送されたかを示す。ステーション70は、一連の電気的コンタクトを含み、且つ窪んだ基部に形成されたドッキングコネクタ76(図11B参照)を含んでいる。器具がドッキングされるとき、ドッキングコネクタ76は、器具の基部に配置された低挿入力(LIF)の結合されるコネクタを受ける。ステーションコネクタコンタクトの一つは、オプションのバッテリパックを再充電するために、器具に電力を供給する。器具に供給されるバッテリ再充電は、器具のデータポートコネクタ38を介してドッキングステーション70から受信される低電流である(すなわち、トリクル充電)。ドッキングステーション70は、過充電を制限するための回路を組み込んでいる。充電電流は、いつでも得られるが、再充電可能なバッテリパックを装備した器具のみが、この電流を受けることができる。
【0028】
図12を参照すると、ドッキングステーションを通るデータ接続が、器具データポートコネクタ(図4参照)から、2つの標準9ピンRS−232ポートの一つへの主要なパススルー接続である。第1のデータポート80は、(例えば、コンピュータ、モデムまたはイーサーネットターミナルサーバへの)データ転送に用いられ、且つその他のポート82は、周辺デバイス(例えばプリンタ)への接続を有効とする。そのデフォールト条件において、前記ドッキングステーション84は、器具86と第1のデータポート80との間でデータを通過させるために構成されている。ドッキングされた器具が、スイッチ88をプリントモードにセットするとき、データは第2のデータポート82へ通過される。第2のポート82を通るデータ転送が完了された後に、ドッキングステーション84は、第1のポート80へ戻り接続させるべく、スイッチをリセットする。
【0029】
ドッキングステーション84は、コンピュータインタフェースケーブルを介して、コンピュータ、モデムシリアルポート、または他のいくつかの通信ポート(例えば、Lantronixボックス)へ、通信ライン(例えば、電話ライン、またはイーサーネットのTCP/IPライン)を越えるデータ転送のために接続され得る。前記ケーブルは、ドッキングステーション84に結合された標準9ピンRS−232コネクタを含む。同様のケーブルが、プリンタまたは他の外部デバイスとの通信に用いられる。
【0030】
図13は、コンピュータ(例えば、ラップトップPC)との直接通信のために、ドッキングステーションに代えて用いられ得る、他のコンピュータインタフェース90ケーブルを示している。ケーブルは、一端に、標準DB9コネクタ91を、他端にRS−232Cコネクタ92を含んでいる。このケーブルは、しかしながら、バッテリパックを再充電するための手段は含んでいない。
【0031】
データ管理システム
データ管理システムは、多数の器具とコンピュータとの間のデータ通信および制御を容易にする。このシステムは、特に、ヘルスケア環境に使用される器具に有利である。このシステムは、検査データが各器具からホストコンピュータへ自動的にアップロードされ、それに続くデータのレビュー、グラフ化、およびプリントを可能とする。アップロードされたデータは、第三者のアプリケーションに使用するため、特定のポート(すなわち、データフォワードポート)を介して他の外部システムに対して有効とすることができる。加えて、器具構成およびセキュリティデータは、固有の手続きまたは優先権に従って、個々の器具へダウンロードされ得る。
【0032】
図14を参照すると、データ管理(DM)システムは、機能ブロックの関連するグループとして示されている。検査後、器具がドッキングステーション内に配置されたとき、器具は、その存在を示すネットワーク上のメッセージ(すなわち信号)を生成する。ホストソフトウェアは、器具から送信されるメッセージについてネットワークを監視している。メッセージが受信されたとき、ホストは、メッセージに肯定応答し、ドッキングステーションの位置を判定し、そして特定の器具を識別する。ホストは、それから、器具について、命令のためのデータベースをレビューし、且つそのセッションが終了する前に器具に対し、一組の器具固有データ(例えば、データ転送を促すコマンド、較正データ)を送る。転送される固有のデータは、先に実行されたセットアップ動作においてホストコンピュータのオペレータによって決定される。器具からのデータは、DMシステムおよび第三者ユーザ(例えば、独立のデータアプリケーション)の両方によってアクセスし得るように構成された、中央データベースに格納される。
【0033】
オペレータは、特定の器具または器具のグループへ、または特定の器具または器具のグループからデータを転送するためのアップロードおよびダウンロード手続きを設定するために、DMシステムと対話することができる。オペレータは、器具からアップロードされ且つデータベースに格納される検査データをレビューするために、DMシステムを使用することもできる。加えて、オペレータは、器具およびオペレータのパフォーマンスを遠隔監視することができる。
【0034】
ネットワーク監視機能は、器具からの通信信号を検出するための、ホストコンピュータ上のポートを監視する、ホストソフトウェアにおけるバックグラウンド処理である。ネットワーク監視は、選択されたTCP/IPポート、モデム器具、およびコンピュータシリアルポートをチェックすることができる。一旦、器具信号が検出されると、ネットワーク監視は、直ちに器具へ肯定応答信号を返し、且つその識別(すなわち、シリアル番号)および位置を判定する。ネットワーク監視は、この情報を通信マネージャに送り、それから他の器具からの通信のためにネットワークの監視に戻る。ネットワーク監視プロセスは、(1)ホストコンピュータがブートされた、(2)データレビューおよび器具セットアップ機能がスタートされた、または、(3)ユーザが、特に実行可能なネットワーク監視をスタートしたときはいつも、オペレータのオプションで開始され得る。一旦、スタートされると、ネットワーク監視は、オペレータにより、特に終了されない限り、ホスト上で連続的に実行される。オペレータは、器具のチェックインとして連続的にアップデートされる一覧ディスプレイ画面上に、DMシステムに知られる全ての器具の状態を観察することができる。
【0035】
通信マネージャは、ホストコンピュータと個別の器具との間のデータ転送を制御するための、ホストソフトウェア内の一組の機能である。これらの機能は、遠隔位置における器具への接続を許容し、そしていつでも器具へおよび器具からの自動的なデータ転送(すなわち、人間の介在なしに)を容易にする。通信マネージャは、器具への通信チャンネルを開き、データベース内の適切な場所へ情報をアップロードする。それは、また、予め構成されたセキュリティおよびセットアップ情報を、器具へダウンロードする。これらの機能のいくつかまたは全ては、器具管理機能の一つまたはそれ以上を用いて、オペレータにより前もって特定される。多数の器具のネットワークへの同時チェックインの場合には、多重通信マネージャプロセス(すなわち、器具毎に一つの)が実施され得る。代わりに、器具の待ち行列および対応するネットワークアドレスが確立され得る。
【0036】
器具プロファイルは、ホストコンピュータがグループ内の器具に対する接続を確立したときに、実行される一つのグループの器具のためのコマンドの組である。これらのコマンドは、器具の構成およびセキュリティオプションの設定(例えば、日付、時間、ストリップロットリスト、オペレータリスト)に使用される。もしも、与えられた器具について命令がなければ、デフォールトプロファイルが使用される。プロファイルは、現時点でネットワークに接続されている特定の器具タイプに従ったプロファイルにおいて、コマンドを変換する器具通信ライブラリ機能により作成される。
【0037】
オペレータは、情報をレビュー(数値的にまたはグラフィカルに)し、または編集するためのデータベースをアクセスするために、データレビュー機能を使用することができる。いくつかのケースにおいて、これらの機能は、オペレータのリストまたは新たな品質管理範囲を含む、新たなデータのデータベースへの入力に使用されるデータ編集性能を含んでいる。これらの機能は、また、器具からアップロードされたデータのレビューに基づく、通知または警告をも提供する。通知は、ユーザ応答または警告を発する項目に対する認知を要求し得る。警告項目は、期限切れ検査ストリップロット、検査切れQCロット、無資格のオペレータ、または他のいかなる重大な条件を含み得る。これらの機能は、メインデータベースの修正を含んでいるので、セキュリティ手続き(例えば、パスワード保護)が、許可されていない修正を防止するために採用される。好ましくは、データベースに対するいかなる修正も、独立のソフトウェアにより、独立のログファイルに記録される。データレビュー機能は、広範囲のレポートの作成および取扱いをも許可する。レポートは、データリスト、グラフおよび統計学的情報を含み得る。ファイル管理機能は、ユーザにセーブ、プリントまたはさもなければデータファイルの管理を許可する。
【0038】
器具管理機能は、病院において器具へ送られるべきデータを構成するために用いられる。ポイントおよびクリックグラフィカルユーザインタフェースは、器具についてのアップロードおよびダウンロードを設定するパラメータを選択するのに使用され、そしてダウンロードされるべきデータリストを作成するのに使用される。ユーザインタフェースは、ユーザにセットアップ項目(すなわち、直接検査に関連しない器具パフォーマンスに影響するパラメータ)を構成するのを許容させる、器具固有ダイアログを含んでいる。例えば、ユーザインタフェースは、ユーザに、データベースにおいてオペレータのリストをレビューさせ、且つ器具にダウンロードするためのこれらのオペレータのサブセットを選択させるための手段を含んでいる。同様に、受容可能なストリップロットのリストは、各器具にダウンロードされ得る。ダウンロードデータは、器具が、次にネットワーク(すなわち、ドッキングステーションに戻って)に接続した後で、起動され得る器具プロファイルの形態をなしている。器具グループ化ユーティリティは、ユーザに、病院内で、器具のグループを作成し、修正し且つ名前を付けることを許容する。与えられたグループ内の全ての器具には、同一のプロファイルを割り当てる。器具セットアップ機能は、器具設定、およびその検査を器具がどのように実行するかを確立するために用いられる。器具セキュリティ機能は、どのオペレータまたは検査ストリップが、与えられた器具と共に用いられ得るかを確立するために、データベース内に格納されるオペレータおよび検査ストリップリストを利用する。
【0039】
DMシステムに使用されるデータベースは、他のシステムまたはデバイスによってアクセスすることを可能とするために、標準の商業的に入手可能なデータベース(例えば、Access(登録商標)、Oracle(登録商標))である。一つの可能性のあるデータベーステーブルの構成は、図14に示される。データベースは、各デバイスからの検査レコードを格納し、且つ被分析物タイプ(例えば、ブドウ糖、ケトン)、検査タイプ(例えば、患者、対照、その他)、オペレータID(すなわち、名前、トレーニング日および/または期限満了日)、検査の時間および日付、アップロードの時間および日付、ストリップロットデータ(例えば、QC範囲、サービスおよび/または使用期限日)、患者ID、対照ロットID、器具名および割り当て位置、アップロード位置、合格/失敗指示、並びにコメントコード(数値コメントコードのテキスト説明を含む)のようなパラメータを含み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
被分析物を受け入れるように構成された検査ストリップに結合されたバーコードをスキャンするためにハウジング内に配置されたバーコードリーダと、
検査ストリップを受け入れるためにハウジング内に配置されたポートと、
検査ストリップから受信された被分析物信号を処理し、且つ被分析物信号から被分析物データを生成するためにポートと電気的に通信する電子回路と、
いくつかの被分析物データを表示するために、電子回路と電気的に通信するディスプレイと、
電子回路と電気的に通信をして、且つデータ通信ネットワークを介してホストコンピュータに電気的に接続可能であるコネクタとを備え、該電子回路が、データ通信ネットワークへ接続されると、被分析物データをホストコンピュータへ自動的にアップロードする、ハンドヘルド被分析物検査器具。
【請求項2】
ハウジングと、
被分析物を受け入れるように構成された検査ストリップを受け入れるためにハウジング内に配置されたポートと、
検査ストリップから受信された被分析物信号を処理し、且つ被分析物信号から被分析物データを生成するためにポートと電気的に通信する電子回路と、
いくつかの被分析物データを表示するために、電子回路と電気的に通信するディスプレイと、
電子回路と電気的に通信をして、且つ電源に電気的に接続可能であるコネクタと、
ハウジング内に形成され、且つバッテリから電子回路に電力を供給するための一対の電気的コンタクトと、一対の再充電コンタクトとを備えたバッテリ室と、
前記バッテリ室内に配置された再充電可能なバッテリパックとを備え、該再充電可能なバッテリパックは、再充電可能なバッテリ(1)および該再充電可能なバッテリが内部に配置されるバッテリホルダ(2)と、バッテリホルダに配置され、ハンドヘルド被分析物検査器具が電源に接続されたときに、バッテリを再充電するように一対の再充電コンタクトと電気的に通信するバスバーとを備える、ハンドヘルド被分析物検査器具。
【請求項3】
ハンドヘルド被分析物検査器具を受け入れるためのドッキングステーションであって、
ハンドヘルド被分析物検査器具から被分析物データを受信するために、ハンドヘルド被分析物検査器具に電気的に接続可能なコネクタと、
コネクタと電気的に通信するスイッチと、
スイッチと電気的に通信し、且つコンピュータに電気的に接続可能である第1のデータポートと、
スイッチと電気的に通信し、且つ周辺デバイスに電気的に接続可能である第2のデータポートと、
第1のデータポートを介してコンピュータへ、または第2のデータポートを介して周辺デバイスへ、被分析物データを選択的に通すように、スイッチをコントロールするためのコントロール機構と、
を備えるハンドヘルド被分析物検査器具を受け入れるためのドッキングステーション。
【請求項4】
データ通信ネットワークに接続された複数の被分析物検査器具についてのデータを管理する方法であって、
データ通信ネットワークへの各被分析物検査器具の接続を、ホストコンピュータを介して検出するステップと、
各被分析物検査器具から受信されたデータをホストコンピュータへアップロードするステップと、
アップロードされたデータを、オペレータのレビューのためにホストコンピュータ上で処理するステップと、
構成データをホストコンピュータから各被分析物検査器具へダウンロードするステップとを備え、該ダウンロードされるデータは、被分析物検査器具固有のセットアップおよびコントロールデータを有する、
データ通信ネットワークに接続された複数の被分析物検査器具についてのデータを管理する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate


【公開番号】特開2011−7815(P2011−7815A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−229343(P2010−229343)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【分割の表示】特願2000−562752(P2000−562752)の分割
【原出願日】平成11年7月30日(1999.7.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】