説明

データ解析装置及びデータ解析方法

【課題】非接触・非侵襲的に生体データを取得して局所以上の広範囲における発汗分布を解析することを可能とするデータ解析装置及びデータ解析方法を提供する。
【解決手段】データ解析装置1に、生体表面の熱画像を動画で撮影する画像撮影部5と、画像撮影部5により撮影された熱画像の動画から生体表面の温度変化の推移を検出して生体の発汗状況を解析するデータ処理部7とを設ける。また、生体表面の温度データと生体の発汗量データとを対応付けたテーブルを記憶したパラメータ設定・管理部9を設け、前記テーブルを使用して生体表面の温度データを発汗量データに変換することにより生体の発汗量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ解析装置及びデータ解析方法に関し、特に生体の発汗状況を解析するデータ解析装置及びデータ解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療診断などの診断目的で、人体などの生体の生理的変化を反映した生体データを解析する装置が提案されている。このような解析装置としては、生体データを簡易かつ高精度に検出して解析するため、様々なデータ検出手段及びデータ解析手段を備えたデータ解析装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、人の皮膚に生理的負荷を与える手段と、生理的負荷を与えてから発汗が開始するまでの時間を測定する手段とを備えた神経機能測定装置が記載されている。この装置では、発汗開始をマイクロスコープによる画像観察又は赤外光吸収変化の測定装置により検出する。
【0004】
また、特許文献2には、皮膚表面に乾燥空気を流入させて汗などの水分を蒸発させ、湿度検知手段によって拡散気湿の相対湿度を検知する発汗量連続測定装置が記載されている。この装置では、皮膚表面の汗腺の活動状況を撮像する撮像手段により皮膚表面の画像を別途撮影し、湿度データと画像を合成して表示する。
【特許文献1】特開平11−318874号公報
【特許文献2】特許2538538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の発明では、既存の発汗量計測計を使用して局所的な発汗量を測定するに過ぎなかった。また、熱画像の利用に関する記載もなかった。
【0006】
また、特許文献2記載の発明でも、やはり既存の温度センサを用いた発汗量計測計で局所的な発汗量を測定するに過ぎず、手掌全体などの広範囲な発汗量を計測することはできなかった。また、接触式の発汗量計測計を使用すると、データ測定時に人体に物理的・心理的負担がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した点に鑑み、非接触・非侵襲的に生体データを取得して局所以上の広範囲における発汗分布を解析することを可能とするデータ解析装置及びデータ解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、データ解析装置であって、生体表面の熱画像を動画で撮影する画像撮影部と、前記画像撮影部により撮影された熱画像の動画から生体表面の温度変化の推移を検出して生体の発汗状況を解析するデータ処理部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、被験者に非接触で生体表面の温度変化の推移を検出することが可能となる。また、生体表面の温度及び生体の発汗状況には相関関係があることから、生体表面の温度変化の推移を検出することにより、発汗状況の経時的変化を解析することが可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のデータ解析装置であって、生体表面の温度データと生体の発汗量データとを対応付けたテーブルを記憶したパラメータ管理部を備え、前記データ処理部は前記テーブルを使用して生体表面の温度データを発汗量データに変換することにより生体の発汗量を検出することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、熱画像から発汗量を定量化することが可能となる。また、テーブルの使用により、生体表面の温度データと発汗量データとの変換を簡易かつ正確に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のデータ解析装置であって、前記パラメータ管理部は周辺環境又は生体の性状ごとに複数の前記テーブルを備え、前記データ処理部は周辺環境又は生体の性状に応じて前記テーブルを選択して使用することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、生体の発汗状況には周辺環境や生体の性状が影響するところ、周辺環境又は生体の性状に応じてテーブルを選択して使用することにより、周辺環境や生体の性状を考慮して生体の発汗量を検出することが可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載のデータ解析装置であって、前記データ処理部は、生体の部位ごとに前記生体表面の温度変化から前記発汗量の変化を検出し、前記発汗量の時間による積分値を求めることにより、生体の発汗状況の分布を検出することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、熱画像から生体の発汗状況の分布を定量化することが可能となる。また、局所以上の広範囲における発汗分布を解析することが可能となる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のデータ解析装置であって、前記データ処理部は、生体の各部位における前記発汗量の時間による積分値の差異を画像化することにより、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することにより、生体の発汗分布を容易に把握することが可能となる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項2〜請求項5いずれか一項に記載のデータ解析装置であって、前記データ処理部による生体の発汗量の検出結果に基づき、前記生体の発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合は異常と判断する制御部を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、人体に非接触で生体の異常を監視することにより、生体の体調の急変や事故などを未然に防止・抑止することができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6いずれか一項に記載のデータ解析装置であって、前記画像撮影部は心理状態検査用の質問の前後にわたって人体の体表面の熱画像を動画で撮影し、前記データ処理部による人体の発汗状況の解析結果により、被験者の心理状態を判断する制御部を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、心理状態検査用の質問の前後にわたる人体の発汗状況を解析して、人体に非接触で被験者の心理状態を監視することが可能となる。
【0022】
請求項8記載の発明は、データ解析方法であって、生体表面の熱画像を動画で撮影する画像撮影工程と、前記画像撮影部により撮影された熱画像の動画から生体表面の温度変化の推移を検出して生体の発汗状況を解析するデータ処理工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、被験者に非接触で生体表面の温度変化の推移を検出することが可能となる。また、生体表面の温度及び生体の発汗状況には相関関係があることから、生体表面の温度変化の推移を検出することにより、発汗状況の経時的変化を解析することが可能となる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のデータ解析方法であって、生体表面の温度データと生体の発汗量データとを対応付けたテーブルを使用して生体表面の温度データを発汗量データに変換することにより生体の発汗量を検出することを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の発明によれば、熱画像から発汗量を定量化することが可能となる。また、テーブルの使用により、生体表面の温度データと発汗量データとの変換を簡易かつ正確に行うことが可能となる。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のデータ解析方法であって、周辺環境又は生体の性状ごとに複数の前記テーブルを使用し、周辺環境又は生体の性状に応じて前記テーブルを選択して使用することを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明によれば、生体の発汗状況には周辺環境や生体の性状が影響するところ、周辺環境又は生体の性状に応じてテーブルを選択して使用することにより、周辺環境や生体の性状を考慮して生体の発汗量を検出することが可能となる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項9又は請求項10記載のデータ解析方法によれば、生体の部位ごとに前記生体表面の温度変化から前記発汗量の変化を検出し、前記発汗量の時間による積分値を求めることにより、生体の発汗状況の分布を検出することを特徴とする。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、熱画像から生体の発汗状況の分布を定量化することが可能となる。また、局所以上の広範囲における発汗分布を解析することが可能となる。
【0030】
請求項12記載の発明は、請求項11記載のデータ解析方法であって、生体の各部位における前記発汗量の時間による積分値の差異を画像化することにより、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することを特徴とする。
【0031】
請求項12記載の発明によれば、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することにより、生体の発汗分布を容易に把握することが可能となる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項9〜請求項12いずれか一項に記載のデータ解析方法であって、前記生体の発汗量の検出結果に基づき、前記生体の発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合は異常と判断することを特徴とする。
【0033】
請求項13記載の発明によれば、人体に非接触で生体の異常を監視することにより、生体の体調の急変や事故などを未然に防止・抑止することができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項8〜請求項13いずれか一項に記載のデータ解析方法であって、心理状態検査用の質問の前後にわたって人体の体表面の熱画像を動画で撮影し、人体の発汗状況の解析結果により、被験者の心理状態を判断することを特徴とする。
【0035】
請求項14記載の発明によれば、心理状態検査用の質問の前後にわたる人体の発汗状況を解析して、人体に非接触で被験者の心理状態を監視することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
請求項1又は請求項8記載の発明によれば、非接触・非侵襲的に生体表面の温度変化の推移を検出して発汗状況の経時的変化を解析することが可能となる。
【0037】
請求項2又は請求項9記載の発明によれば、熱画像から発汗量を定量化することが可能となる。また、生体表面の温度データと発汗量データとの変換を簡易かつ正確に行うことが可能となる。
【0038】
請求項3又は請求項10記載の発明によれば、周辺環境や生体の性状を考慮して生体の発汗量を検出することが可能となる。
【0039】
請求項4又は請求項11記載の発明によれば、熱画像から生体の発汗状況の分布を定量化することが可能となる。また、局所以上の広範囲における発汗分布を解析することが可能となる。
【0040】
請求項5又は請求項12記載の発明によれば、生体の発汗分布を容易に把握することが可能となる。
【0041】
請求項6又は請求項13記載の発明によれば、生体の体調の急変や事故などを未然に防止・抑止することができる。
【0042】
請求項7又は請求項14記載の発明によれば、人体に非接触で被験者の心理状態を監視することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0044】
本発明のデータ解析装置1は、被験者の体表面の熱画像を動画で撮影して、この熱画像の変化の推移から被験者の発汗状況を解析することを主目的とする装置である。
【0045】
図1は、本実施形態に係るデータ解析装置1のブロック構成図である。図1に示すように、データ解析装置1には互いに通信可能なネットワークを介して外部装置2が接続されており、データ解析装置1における解析データを外部装置2に送信できるようになっている。
【0046】
なお、本実施形態におけるネットワークはデータ通信可能である通信網を意味するものであれば特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話回線網、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線網、CATV(Cable Television)回線、光通信回線などを含めることができる。また、有線のみならず無線によって通信可能な構成としてもよい。
【0047】
外部装置2はパーソナルコンピュータなどによって構成されており、何らかのコンサルティングや診断が受けられる場所に設置されていることが望ましい。また、外部装置2をコンサルティング情報が得られるインターネットサイトや、コンサルタントや医師、店員などの携帯端末として構成してもよい。また、外部装置14は、在宅健康管理システムのデータサーバとして構成してもよい。
【0048】
データ解析装置1は、図1に示すように、制御部3、外部通信部4、画像撮影部5、メモリ部6、データ処理部7、ユーザインターフェイス部8、パラメータ設定・管理部9、データ蓄積部10、I/O部11及び表示部12を備えている。このうちI/O部11及び表示部12は、データ解析装置1における任意の構成部分である。
【0049】
制御部3は、CPU及びRAMを備え、データ解析装置1の各構成部分を駆動制御するようになっている。本実施形態のデータ解析装置1は動画も扱うため、制御部3はできる限り高速動作・制御が可能なチップにより構成することが望ましい。
【0050】
外部通信部4は、有線又は無線の通信手段により外部装置2と情報通信ができるように構成されている。なお、本実施形態のデータ解析装置1は動画データを扱うため、できる限り高速伝送できる通信形態であることが望ましい。
【0051】
画像撮影部5は、被験者の近赤外〜赤外域に感度を有するサーモセンサ(熱画像カメラ)として構成されており、被験者の体表面の熱画像を動画として撮影するようになっている。なお、赤外域の分光感度特性を持つ透過フィルタ及びモノクロ撮像素子(CCDなど)によりサーモセンサと同様の構成が可能であれば、それでもよい。また、画像撮影部5にサーモセンサによる熱画像と同じ構図の可視域画像(モノクロ又はカラーのいずれも可)を撮像できるカメラを設けてもよい。また、個人認証用の画像を撮影することを目的として、可視画像撮影用のカラー又はモノクロのCCDカメラや、カメラモジュールなどをオプションとして設けてもよい。
【0052】
また、画像撮影部5を構成するサーモセンサの熱画像の描画カラーは、温度の高低との相関性があるモノクロ・グレースケール表示とすることが望ましい。また、サーモセンサによる測定対象温度域は20℃〜45℃程度とする。更に、この領域における画像撮影部5の感度及び分解能を高く設定することが望ましい。
【0053】
また、画像撮影部5は、撮影時にセンサ感度、レンジ、ゲイン又は測定温度域などのパラメータを一定の値に設定するようになっている。また、これらの値が変動した場合は、サーモセンサ内部でこれらの値を補正することにより、同一パラメータの場合と同様の撮影画像を出力するようになっている。
【0054】
また、画像撮影部5は、被験者が発汗する前に撮影を開始することが望ましい。また、動画を撮影する際のフレーム数は、被験者の変化や温度変化を違和感なく再生するのに十分な数であればよい。可視画像の撮影も別途行う場合は、可視画像のフレーム数と合わせておくと両者の対応が取りやすい。
【0055】
また、画像撮影部5は、撮影した画像をデータ処理部7に自動的に転送するようになっている。これにより、データ処理部7においてリアルタイムでデータ処理を行うことが可能となっている。
【0056】
メモリ部6は、RAM、ROM、DIMMなどから構成され、データ処理部7などにおいて必要なデータをデータ蓄積部10などから転送して一時的に蓄えることにより、データ解析装置1を高速かつ安定に動作させるようになっている。また、本実施形態のメモリ部6は、動画処理をコマ落ちなくリアルタイムで実行できる程度の容量が必要である。
【0057】
データ処理部7は、画像撮影部5において撮影された体表面の熱画像の動画から生体表面の温度変化を検出して、その温度変化から経時的な発汗状況を解析すると共に、局所以上の広範囲における発汗分布を解析するようになっている。
【0058】
まず、データ処理部7は、画像撮影部5において撮影された熱画像の画素値を温度データに変換することにより、熱画の動画から被験者の各部位における生体表面の温度変化を検出する。ここで、熱画像の画素値は、例えば8bitなら0〜225の値であり、直接温度データを表すものではないが、画像撮影部5における各パラメータを所定の値に設定することにより、熱画像の画素値と温度データとの関係は一意に決定することができる。
【0059】
図2及び図3に、熱画像の動画から検出した被験者の任意の部位における表面温度の時間的変化をそれぞれ示す。図2及び図3は、被験者の発汗前に撮影が開始され、撮影中の活動により発汗した被験者の表面温度の時間的変化である。なお、熱画像の動画としては被験者の発汗前に撮影が開始された動画を用いることが望ましく、被験者の発汗後に撮影が開始された場合は、一番初めに撮影された動画を用いる。
【0060】
また、動画における同一点の抽出は、パラメータ設定・管理部9に記憶された被験者の各部位のパターン及び位置情報に基づくフレーム間のマッチングにより行う。なお、検出部位の設定や動画処理の順序は、予めユーザインターフェイス部8において設定し、パラメータ設定・管理部9に記憶しておく。
【0061】
具体的には、テンプレートマッチングなど公知の手法を使用する。すなわち、直前フレームの画像から検出部位の部分画像を抽出し、これをテンプレートとしてマッチングを行い、このマッチング結果で抽出された部分画像を次のフレームのテンプレートとする。これにより、フレーム間でパターンの変化が小さくなり、マッチング精度を向上させることが可能となる。
【0062】
図2における被験者の発汗に伴う生体表面の温度変化時間はTであるのに対し、図3における被験者の発汗に伴う生体表面の温度変化時間はTであり、発汗に伴う温度変化時間は被験者の部位によって相違している。このように、本発明では被験者の部位ごとに表面温度の時間的変化を検出するようになっている。
【0063】
また、データ処理部7は、被験者の発汗に伴う生体表面の温度データと被験者の発汗量データとを対応づけたテーブルを自動的に作成してパラメータ設定・管理部9に記憶し、このテーブルにより、図4に示すように被験者の生体表面の温度データを被験者の発汗量データに変換して、被験者の発汗量を検出するようになっている。
【0064】
ここで、被験者の表面温度と被験者の発汗量との関係について説明する。
【0065】
生体において汗は熱放散の役割を果たしており、体温調節として汗を蒸発させることにより気化熱を奪い、生体の熱を取り除く。したがって、図2及び図3に示すように、被験者の発汗時には表面温度が発汗前よりも低くなる。このように、被験者の表面温度と被験者の発汗量とには相関関係がある。
【0066】
一方、被験者の発汗量は環境の様々な変化にも影響される。例えば、気温が高いときと低いときでは、被験者の生体表面の温度変化は同様でも、発汗の程度は異なる。また、湿度が高いときと低いときでも、同様に発汗量の程度は異なる。また、被験者の発汗量は被験者個人の性状にも影響される。例えば、被験者の発汗量は、被験者個人の年齢、性別、体温などにより異なる。したがって、被験者の表面温度を被験者の発汗量に正確に変換するためには、被験者の周辺環境及び被験者個人の性状を考慮する必要がある。
【0067】
そこで、データ処理部7は、周辺環境ごと又は被験者個人の性状ごとに被験者の発汗に伴う表面温度と被験者の発汗量とをそれぞれ測定し、測定により得られた温度データと発汗量データとを対応付けたテーブルを作成してパラメータ設定・管理部9に記憶するようになっている。ここで周辺環境とは、気温、湿度、気圧、風速、風向、日射量、日照時間などをいう。また、被験者個人の性状とは、年齢、性別、運動習慣、身長、体重、体脂肪率、肥満度、体温、血中コレステロール値、汗の粘度などをいう。
【0068】
なお、気温、湿度、気圧など経時的に値が変わる周辺環境データは、I/O部11に接続した計測計によって計測してもよく、外部装置2からインターネットの気象情報を随時取得するようにしてもよい。また、被験者の発汗量は、I/O部11に接続した発汗量計測計により計測することができる。
【0069】
また、被験者の測定部位における着衣の有無により水分量と温度変化の関係が違うことも考えられるので、肌表面と着衣がある部分とのそれぞれについてテーブルを作成し、手動又は自動的に選択できるようにしておくことが望ましい。この場合のテーブル作成では、基準的な環境(例えば気温20℃、湿度60%など)の下で、水分を付着させた時の肌表面及び着衣部分それぞれの生体表面の温度変化を実験的に計測する。この際、水分は体液に似せた生理食塩水とする。そして、水分量0から単位面積あたりの水分量を変化させて生体表面の温度変化を実験的に取得する。これにより、図5及び図6に示すように、水分量と温度変化との関係をテーブル化する。図5は肌表面の温度変化と水分量の変化とを対応付けたテーブルであり、図6は着衣部分の温度変化と水分量の変化とを対応付けたテーブルである。そして、これらのテーブルを使用して生体表面の温度変化から水分量を取得し、発汗量とする。なお、このテーブルはいくつかの環境下で計測を行うことにより作成しておくとよい。
【0070】
また、被験者の衣類の種類又は衣服の繊維の種類(綿、麻、アクリル、ポリエステルなど)により、水分量と温度変化の関係が違うことも考えられるので、各種類ごとに両関係をテーブル化して手動又は自動的に選択できるようにしておくことが望ましい。この場合のテーブル作成では、水分は生理食塩水ではなく、被験者の汗を実験用に採取してもよい。これにより、被験者の体調や普段の行動(運動好き、太り気味など)が汗に反映されるので、水によるデータより発汗状況の精度が上がる。また、この場合、テーブルを作成した各環境下で、水分が蒸発するまでにかかる時間を計測しておくとよい。この値を用いることで、蒸発分を補正した発汗量を取得することができる。
【0071】
また、データ処理部7は、熱画像の動画から被験者の発汗状況を解析する際に、周辺環境ごと又は被験者個人の性状ごとにパラメータ設定・管理部9に記憶されたテーブルを選択して、このテーブルの使用により被験者の表面温度を被験者の発汗量に変換するようになっている。
【0072】
この際、周辺環境の識別はI/O部11に接続した計測計などによる周辺環境データにより行い、被験者の識別はユーザインターフェイス部8からの入力やユーザインターフェイス部8にオプションとして設けた個人認証手段により行うことができる。ここで個人認証手段とは、例えば、初期登録時に撮影された熱画像などと照合することにより個人を特定する手段をいう。
【0073】
なお、データ処理部7は、熱画像の解析時の環境に適合したテーブルがない場合は、パラメータ設定・管理部9に記憶されたテーブルの中から近いものを選び、それらを補間することにより適合したテーブルを作成する構成とすることもできる。
【0074】
また、データ処理部7は、テーブル使用時の周辺環境又被験者個人の性状によって、テーブルを補正した上で使用するようになっている。例えば、気温が高い場合は発汗しやすいので発汗量を上げる補正パラメータ、湿度が高い場合は汗が蒸発しにくいので発汗量を下げる補正パラメータ、風速が高い場合は汗が蒸発しやすいので発汗量を上げる補正パラメータ、日射量が多い場合又は日照時間が長い場合は汗が蒸発しやすいので発汗量を上げる補正パラメータを使用してテーブルを補正することができる。また、被験者に運動習慣がある場合は汗がさらさらで蒸発しやすいので発汗量を上げる補正パラメータ、体脂肪率が高い場合は汗が蒸発しやすいので発汗量を下げる補正パラメータ、血中コレステロール値が高い場合は汗がどろどろで蒸発しにくいので発汗量を下げる補正パラメータ、汗の粘度が高い場合は汗が蒸発しにくいので発汗量を下げる補正パラメータを使用してテーブルを補正することができる。
【0075】
図7及び図8は、パラメータ設定・管理部9に記憶されたテーブルの使用により、図2及び図3に示す被験者の表面温度変化のグラフを、被験者の周辺環境及び被験者個人の性状を考慮して被験者の発汗量の変化にそれぞれ変換したグラフである。図7及び図8のグラフにおいて、X軸は計測開始時の発汗量を示している。
【0076】
また、データ処理部7は、被験者の複数部位について生体表面の温度変化を検出し、被験者の発汗量の変化に変換すると、図7及び図8のグラフに示す被験者の発汗量の変化を示す曲線(発汗量変化カーブ)の縦軸の正の領域と、X軸とで囲まれる領域の面積を計算して、図9に示すように画像化するようになっている。図9では、被験者の各部位における発汗量の時間による積分値の差異が色分けで画像化されることにより、被験者の発汗状況の2次元的な分布が視覚化されている。この発汗分布により、被験者のどの部位における発汗量が多いかを知ることが可能となり、例えば、全身的な発汗なのか、精神的理由による局所的な発汗なのか、それ以外の理由による異常な発汗なのかなどを判断することが可能となる。
【0077】
ユーザインターフェイス部8は、キーボード、マウス、トラックボールなどから構成され、ユーザの指示入力を可能とすると共に、ユーザにデータ解析装置1の状況や要求を伝達することを可能としている。なお、キーボード、マウス、トラックボールなど従来のインターフェイスを使用することも可能だが、ユーザの負担が少ない装置構成とすることが望ましいことから、表示部12と一体にしてタッチパネルとしてインターフェイスを構成することができる。
【0078】
パラメータ設定・管理部9は、被験者の生体表面の温度変化及び被験者の発汗量を対応づけたテーブルを記憶するようになっている。
【0079】
また、パラメータ設定・管理部9は、データ処理部7が動画の各フレーム間において被験者位置のマッチングを行うための、各検出部位のパターン及び位置情報を記憶するようになっている。
【0080】
また、パラメータ設定・管理部9は、被験者の発汗量の検出部位についての設定や動画処理の順序などを記憶するようになっている。
【0081】
データ蓄積部10は、HDDなどにより構成され、外部から入力された熱画像データ、データ解析装置1による画像処理が行われた熱画像データ又は画像処理途中のテンポラリデータなどを管理して保持するようになっている。
【0082】
I/O部11は、生体データ取得手段としてのバイタルセンサー(発汗量計測計、体温計、体重計、体脂肪率計、血圧計、心電計、肌年齢計測計、骨密度計、肺活量計など)や、CFカード、SDカード、USBメモリカードなどの可搬型デバイスを扱う機器を接続できるように構成されており、これらの機器から検出データや熱画像データの入出力を行うことができるようになっている。
【0083】
表示部12は、CRT,液晶,有機EL,プラズマ又は投影方式などのディスプレイから構成されており、データ処理部7で画像処理中の熱画像データ又はデータ蓄積部10で保持された熱画像データなどを表示するほか、データ解析装置1の各構成部分の状態に関する情報や、外部装置2から与えられた情報などを表示するようになっている。なお、タッチパネルとするなどユーザインターフェイス部8と機能を兼ねる構成とすることも可能である。
【0084】
次に、上述のデータ解析装置1を使用した本発明のデータ解析方法について説明する。
【0085】
画像撮影部5は、レンジ、ゲイン又は測定温度域などのパラメータを一定の値に設定した上で、被験者の各検出部位の熱画像を動画として撮影し、熱画像データをデータ処理部7に自動的に転送する。
【0086】
続いて、データ処理部7は、画像撮影部5で撮影された熱画像の動画から被験者の生体表面の温度変化を検出して、その温度変化から経時的な発汗状況を解析すると共に、局所以上の広範囲における発汗分布を解析する。
【0087】
具体的には、まず、画像撮影部5において撮影された熱画像の動画から被験者の各部位における生体表面の温度変化を検出する。図2及び図3は、被験者の任意の部位における表面温度の時間的変化である。
【0088】
一方、データ処理部7は、周辺環境ごと又は被験者ごとに被験者の発汗に伴う表面温度と被験者の発汗量を対応づけたテーブルを自動的に作成してパラメータ設定・管理部9に記憶しておく。この際、データ処理部7は、周辺環境ごと又は被験者個人の性状ごとにテーブルを作成する。
【0089】
そして、データ処理部7は、熱画像の動画から被験者の発汗状況を解析する際には、周辺環境ごと又は被験者個人の性状ごとにテーブルを選択し、このテーブルにより、図4に示すように被験者の表面温度を被験者の発汗量に変換する。図7及び図8は、図2及び図3に示す被験者の表面温度変化のグラフを、被験者の周辺環境及び被験者個人の性状を考慮して被験者の発汗量の変化に変換したグラフである。
【0090】
また、データ処理部7は、被験者の複数部位について生体表面の温度変化を検出し、被験者の発汗量の変化に変換すると、図7及び図8のグラフに示す被験者の発汗量の変化を示す曲線(発汗量変化カーブ)の縦軸の正の領域と、X軸とで囲まれる領域の面積を計算して、図9に示すように画像化する。図9では、被験者の各部位における発汗量の時間による積分値が色分けされることにより、被験者の発汗状況の2次元的な分布が視覚化されている。
【0091】
以上のように本実施形態に係るデータ解析装置1及びデータ解析方法によれば、被験者に非接触で生体表面の温度変化の推移を検出することが可能となる。また、生体表面の温度及び生体の発汗状況には相関関係があることから、生体表面の温度変化の推移を検出することにより、発汗状況の経時的変化を解析することが可能となる。
【0092】
また、熱画像から発汗量を定量化することが可能となる。また、テーブルの使用により生体表面の温度データと発汗量データとの変換を簡易かつ正確に行うことが可能となる。
【0093】
また、生体の発汗状況には周辺環境や生体の性状が影響するところ、周辺環境又は生体の性状に応じてテーブルを選択して使用することにより、周辺環境や生体の性状を考慮して生体の発汗量を検出することが可能となる。
【0094】
また、熱画像から生体の発汗状況の分布を定量化することが可能となる。また、局所以上の広範囲における発汗分布を解析することが可能となる。
【0095】
また、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することにより、生体の発汗分布を容易に把握することが可能となる。
【0096】
また、人体に非接触で生体の異常を監視することにより、生体の体調の急変や事故などを未然に防止・抑止することができる。
【0097】
また、心理状態検査用の質問の前後にわたる人体の発汗状況を解析して、人体に非接触で被験者の心理状態を監視することが可能となる。
【0098】
(本実施形態の適用例)
次に、本実施形態の適用例について、図10を参照して説明する。
【0099】
本実施形態のデータ解析装置1及びデータ解析方法は、ストレス・心理状況監視システム(嘘発見器など)に適用することが可能である。
【0100】
すなわち、被験者を動画カメラで撮影しながら、被験者に心理状態検査用の質問をすることにより、発汗量を検出して被験者の心理状態を判断することができる。
【0101】
図10(A)は、質問前の初期状態の被験者である。この被験者に心理状態検査用の質問をして検査を行うと、検査中に服に隠れている部分(脇の下、胸など)の発汗量が増えて、図10(B)に示す状態となる。この発汗状況の変化は視覚的にはわかりにくいが、本実施形態のデータ解析装置1により衣服又は肌表面の温度変化を検出することで、どの部位で発汗しているか知ることができる。そして、その温度変化により、発汗量を推定して、質問に対する発汗量の増減を知ることができる。この結果により、制御部3はパラメータ設定・管理部9に予め設定したパラメータなどを用いて被験者の心理状態を判断することが可能となる。
【0102】
これにより、従来の嘘発見システムでは、手のひらなどの発汗を電気的に測定するなど、血圧・脈拍・呼吸・皮膚電気活動の生理的変化を接触的に計測していたが、本実施形態のデータ解析装置1及びデータ解析方法によれば、肌表面及び服で隠れている部分の発汗状況を監視することが可能となる。
【0103】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図11〜図13を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0104】
図11に示すように、本実施形態のデータ解析システム13においては、第1の実施形態のデータ解析装置1に個人識別装置14、体調管理データサーバ装置15及び警報装置16がネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。
【0105】
個人識別装置14は、図示しない画像撮影部及び画像解析部を備え、被験者を非接触的に撮影し、顔、手、全身などの画像を解析して被験者の身元や個人情報を抽出するようになっている。この個人識別装置14としては、公知の個人識別装置を用いることができる。
【0106】
体調管理データサーバ装置15は、被験者の個人情報や識別用参照顔画データ、取得された体温・発汗計測データなどのデータベースの管理領域を有する図示しない記憶部を備えており、これらのデータを一元的に管理するようになっている。この体調管理データサーバ装置15としては、公知のサーバ装置を用いることができる。
【0107】
警報装置16は、ネットワークを介してデータ解析装置1から解析結果を受信し、その解析結果に応じて、音声手段や視覚的手段により警告を発するほか、第三者に対して警告を通告するようになっている。この警報装置16としては、公知の警報装置を用いることができる。
【0108】
また、本実施形態の制御部3は、個人識別装置14の個人識別の結果に従って、その個人に応じてパラメータ設定・管理部9に記憶されたテーブルを選択し、使用するようになっている。
【0109】
また、制御部3は、データ解析装置1のデータ処理部7の解析結果により被験者の発汗状況を監視し、図12に示すように、計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合は、警報装置16に警告の指示信号を送信するようになっている。なお、図12のグラフにおいて、X軸は計測開始時の発汗量を示している。また、「所定の水準値」は予め実験などにより決定してパラメータ設定・管理部9に記憶しておく。
【0110】
また、制御部3は、画像撮影部5で撮影された動画像を解析して被験者の動き情報を抽出し、被験者の動き量が所定の閾値を下回った場合は、警報装置16に警告の指示信号を送信するようになっている。なお、「所定の閾値」は予め実験などにより決定してパラメータ設定・管理部9に記憶しておく。
【0111】
なお、制御部3は、「所定の水準値」又は「所定の閾値」により被験者の異常を判断するほか、発汗量又は動き量の変化率により異常を判断することも可能である。例えば、発汗量の上昇率が所定値以上となった場合は警報装置16に警告の指示信号を送信する構成とすることも可能である。
【0112】
また、制御部3は、「所定の水準値」又は「所定の閾値」を、個人識別装置14で識別した個人ごとに、体調管理データサーバ装置15で管理されている個人情報を用いて補正してもよい。例えば、子供や老人(年齢で抽出)の場合は「所定の水準値」又は「所定の閾値」を上げ、スポーツ選手や肉体労働者の場合は「所定の水準値」又は「所定の閾値」を下げることもできる。
【0113】
次に、上述のデータ解析システム13を使用した本発明のデータ解析方法について、図13のフローチャートを参照して説明する。
【0114】
まず、個人識別装置14は、図示しない画像撮影部による被験者の撮影画像を図示しない画像解析部で解析し、体調管理データサーバ装置15で管理されている被験者の識別用参照顔画データを参照して個人識別を行う(ステップS1)。
【0115】
次に、制御部3は、データ処理部7の解析結果により被験者の発汗状況を監視すると共に、画像撮影部5で撮影された動画像を解析して被験者の動き情報を抽出し、被験者の動きを監視する(ステップS2)。
【0116】
続いて、制御部3は、データ処理部7の解析結果により得られた発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上であるか否か及び被験者の動き量が所定の閾値を下回ったか否かを判断する(ステップS3)。
【0117】
その結果、解析結果により得られた発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合又は被験者の動き量が所定の閾値を下回った場合は、警報装置16に警告の指示信号を送信する。続いて、警告の指示信号を受信した警報装置16は、音声手段や視覚的手段により警告を発するほか、第三者に対して警告を通告する(ステップS4)。
【0118】
以上のように本実施形態に係るデータ解析システム13及びデータ解析方法によれば、個人識別装置14により個人を識別して、その個人の発汗状況を監視し、異常がある場合は警報装置16による警報処理を行うことにより、その個人の体調の急変や事故などを未然に防止・抑止することができる。また、被験者の個人情報や識別用参照顔画データ、取得された体温・発汗計測データなどをデータベースで一元管理することが可能となる。
【0119】
(本実施形態の適用例)
次に、本実施形態の適用例について、図14〜図16を参照して説明する。
【0120】
本実施形態のデータ解析システム13及びデータ解析方法は、スポーツや集会などが行われる屋外又はサウナルームや浴室などの屋内における熱中症監視システムに適用することも可能である。
【0121】
例えば、スポーツが行われる屋外で熱中症監視システムとして使用する場合は、個人識別装置14が備える図示しない画像撮影部を、各運動施設(例えば、サッカーコート一面や体育館全体など)を俯瞰して撮影できる位置に設置して、図14又は図15に示すように動画撮影する。撮影は、一定の決まった構図だけでなく、図15に示すように、ところどころで1人〜数人に注目した撮影を行い、運動中の人たち全員をまんべんなく撮影できるようにする。また、画像撮影部は一箇所だけでなく施設への出入口やベンチ周辺など(人だまりができ、画像撮影がしやすいところ)を含めて複数箇所設置するとよい。
【0122】
また、スポーツジムなどの運動施設の場合、施設利用者は会員として登録されているか、少なくとも受付で事務手続きを行う必要があるため、その時に個人識別用の参照顔画像データや年齢・性別・運動経験などの個人情報を入手し、体調管理データサーバ装置15などに格納しておく。この際、顔画像データは正面方向のデータだけでなく、複数の角度から見た画像も登録しておくとよい。また、様々な方向から見た顔画像を処理して作成できるような手法・ツールや画像データを登録しておくとよい。
【0123】
これにより個人識別装置14は、運動中の俯瞰画像および拡大画像から、運動している人それぞれを抽出する。また、抽出された各人の顔部を抽出し、参照顔画像データとマッチングさせることで個人の特定を行う。なお、顔でなくてもゼッケンや背番号など個人を特定できるものが撮影されていれば、それを認識してもよい。また、俯瞰画像の場合、一度画像データと個人が特定されたら、頭部などの画像データを点像として運動による移動を追跡することができる。また、俯瞰画像とズーム画像は、フレーム間で追跡可能なので、運動中でも個人と画像中の位置を対応づけることができる。
【0124】
また、データ解析装置1の画像撮影部5も、個人識別装置14と同様に施設全体を俯瞰できるところや状況の確認がしやすい複数箇所に設置する。また、データ解析装置1の画像撮影部5は、個人識別装置14の図示しない画像撮影部と一緒に(できるだけ同じ光軸をとるように)設置し、撮影内容の切り替えタイミングを連動させると、熱画像と個人識別の結果との対応がとりやすくなるためより好ましい。また、データ解析装置1と個人識別装置14との位置関係データはパラメータ設定・管理部9に記憶しておく。
【0125】
これにより画像撮影部5は、個人識別装置14の図示しない画像撮影部と近い構図で動画を撮影することが可能となり、この画像撮影部との位置関係も既知であることから、それぞれの動画を対応付けることができる。したがって、運動中の個人ごとに生体表面の温度データを得ることができる。俯瞰時のデータは1人あたりの画素数が少ないため、表面温度の代表値として位置づけ、拡大時のデータによればより細かいデータを得ることができる。各部位の詳細な発汗状況のデータが必要でなければ、代表値を取得するのみでよい。また、発汗状況の初期値は、運動開始前に撮影された熱画像又は施設出入口若しくはベンチ周辺で撮影された熱画像から取得する。
【0126】
図16は、俯瞰時の表面温度の代表値から得られた発汗状況変化(体温変化)データの一例である。図16のグラフ(A)、(B)、(C)は、図15の各個人a、b、cに対応している。図16のグラフ(A)〜(C)に示すように、各個人a〜cはそれぞれ発汗量の水準値が異なっているが、個人b及び個人cはうまく給水をしており、発汗状況や体の表面温度をコントロールすることに成功している。これに対し、個人aは発汗状況や体の表面温度をコントロールできていない。図16の例では、時刻Tの時点で個人aに警告が発せられる。
【0127】
また、体調管理データサーバ装置15は、施設の事務室やデータベース室などに設置し、施設の会員および施設使用者の個人情報や識別用参照顔画データ、取得された体温・発汗計測データなどを一元的に管理させる。
また、データ解析装置1のデータ処理部7は、俯瞰画像から抽出した各個人の動き情報を一定の時間間隔で解析し(例えば動いた距離や範囲を抽出)、各時間帯における移動量などを監視することもできる。これにより、各個人の移動量の時間変化から疲労度が推定できる。
【0128】
また、警報装置16は、施設事務、同じグループメンバー及び本人に警報を発することができるように構成する。そして、データ解析装置1から警告の指示信号を受信すると、図示しない出力部より音声連絡をし、警告メッセージを表示するほか、警報装置16の図示しない記憶部に予め登録されている第三者に対して情報を送信するようになっている。例えば、図16の場合であれば、個人aの同行者やチーム関係者が登録されていれば彼らに連絡が入り、個人aについての問題(発汗が調整されていない旨)を通告する。これにより関係者は給水指示など個人aに適切な指示を与えることが可能となり、熱中症などの事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0129】
以上詳細に説明したように、本発明のデータ解析装置及びデータ解析方法によれば、非接触・非侵襲的に生体データを取得して局所以上の広範囲における発汗分布を解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施形態に係るデータ解析装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】被験者の任意の部位における生体表面の温度変化を示すグラフである。
【図3】被験者の他の部位における生体表面の温度変化を示すグラフである。
【図4】生体表面の温度変化を発汗量の変化に変換する様子を示す概念図である。
【図5】肌の表面温度と発汗量とを対応付けたテーブルの一例である。
【図6】着衣部分の表面温度と発汗量とを対応付けたテーブルの一例である。
【図7】生体表面の温度変化から変換された発汗量の変化を示すグラフである。
【図8】生体表面の温度変化から変換された発汗量の変化を示すグラフである。
【図9】被験者の発汗状況の2次元的な分布を視覚化した例を示す図である。
【図10】心理状態検査前後の被験者を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係るデータ解析装置の全体構成を示すブロック図である。
【図12】被験者の発汗量の変化を示すグラフである。
【図13】第2の実施形態に係るデータ解析方法を示すフローチャートである。
【図14】被験者の俯瞰画像及び拡大画像の例を示す図である。
【図15】被験者の俯瞰画像及び拡大画像の他の例を示す図である。
【図16】各被験者の発汗量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0131】
1 データ解析装置
2 外部装置
3 制御部
4 外部通信部
5 画像撮影部
6 メモリ部
7 データ処理部
8 ユーザインターフェイス部
9 パラメータ設定・管理部
10 データ蓄積部
11 I/O部
12 表示部
13 データ解析システム
14 個人識別装置
15 体調管理データサーバ装置
16 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面の熱画像を動画で撮影する画像撮影部と、
前記画像撮影部により撮影された熱画像の動画から生体表面の温度変化の推移を検出して生体の発汗状況を解析するデータ処理部と、
を備えることを特徴とするデータ解析装置。
【請求項2】
生体表面の温度データと生体の発汗量データとを対応付けたテーブルを記憶したパラメータ管理部を備え、
前記データ処理部は前記テーブルを使用して生体表面の温度データを発汗量データに変換することにより生体の発汗量を検出することを特徴とする請求項1記載のデータ解析装置。
【請求項3】
前記パラメータ管理部は周辺環境又は生体の性状ごとに複数の前記テーブルを備え、
前記データ処理部は周辺環境又は生体の性状に応じて前記テーブルを選択して使用することを特徴とする請求項2記載のデータ解析装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、生体の部位ごとに前記生体表面の温度変化から前記発汗量の変化を検出し、前記発汗量の時間による積分値を求めることにより、生体の発汗状況の分布を検出することを特徴とする請求項2又は請求項3記載のデータ解析装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、生体の各部位における前記発汗量の時間による積分値の差異を画像化することにより、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することを特徴とする請求項4記載のデータ解析装置。
【請求項6】
前記データ処理部による生体の発汗量の検出結果に基づき、前記生体の発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合は異常と判断する制御部を備えることを特徴とする請求項2〜請求項5いずれか一項に記載のデータ解析装置。
【請求項7】
前記画像撮影部は心理状態検査用の質問の前後にわたって人体の体表面の熱画像を動画で撮影し、前記データ処理部による人体の発汗状況の解析結果により、被験者の心理状態を判断する制御部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれか一項に記載のデータ解析装置。
【請求項8】
生体表面の熱画像を動画で撮影する画像撮影工程と、
前記画像撮影部により撮影された熱画像の動画から生体表面の温度変化の推移を検出して生体の発汗状況を解析するデータ処理工程と、
を有することを特徴とするデータ解析方法。
【請求項9】
生体表面の温度データと生体の発汗量データとを対応付けたテーブルを使用して生体表面の温度データを発汗量データに変換することにより生体の発汗量を検出することを特徴とする請求項8記載のデータ解析方法。
【請求項10】
周辺環境又は生体の性状ごとに複数の前記テーブルを使用し、周辺環境又は生体の性状に応じて前記テーブルを選択して使用することを特徴とする請求項9記載のデータ解析方法。
【請求項11】
生体の部位ごとに前記生体表面の温度変化から前記発汗量の変化を検出し、前記発汗量の時間による積分値を求めることにより、生体の発汗状況の分布を検出することを特徴とする請求項9又は請求項10記載のデータ解析方法。
【請求項12】
生体の各部位における前記発汗量の時間による積分値の差異を画像化することにより、生体の発汗状況の2次元的な分布を視覚化することを特徴とする請求項11記載のデータ解析方法。
【請求項13】
前記生体の発汗量の検出結果に基づき、前記生体の発汗量と計測開始時の発汗量との差異が所定の水準値以上となった場合は異常と判断することを特徴とする請求項9〜請求項12いずれか一項に記載のデータ解析方法。
【請求項14】
心理状態検査用の質問の前後にわたって人体の体表面の熱画像を動画で撮影し、人体の発汗状況の解析結果により、被験者の心理状態を判断することを特徴とする請求項8〜請求項13いずれか一項に記載のデータ解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−252803(P2007−252803A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83850(P2006−83850)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】