説明

データ記録装置およびデジタルカメラ

【課題】通信速度が遅いメモリカードを併用した場合に記録速度を低下させない。
【解決手段】作成したデータを第1メモリカードおよび第2メモリカードにそれぞれ記録する設定が行なわれている場合において、前記書き込みバッファメモリの空き容量が所定値以下となった場合に、作成したデータを前記第1メモリカードのみへ記録するよう制御するよう制御すると共に、前記第1メモリカードへ記録済みのデータをバッファメモリ内から削除する制御部と、前記第1メモリカードから前記第2メモリカードへの画像ファイルの転送経路が空いている期間に、前記第1メモリカードに記録されている複数の画像データのうちの前記第2メモリカードに記録されていない画像ファイルを前記第2メモリカードに転送する転送制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ記録装置およびデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、撮像装置に付加する通信装置が記載される。この通信装置は、撮像装置が記録したデジタル画像あるいは撮像装置の記憶媒体に格納されたデジタル画像を、無線LANを通じて外部に送信できる。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2006−086595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デジタルカメラ等のデータ記録装置に装備させる通信装置は、特定のデジタルカメラに対応した構造を有する。このため、専用の接続端子等を備えた特定の機種にしか装着することができない。そこで、異種のデジタルカメラに対して共通に脱着自在なメモリカードに無線通信部を組み込むことが提案されている。これにより、既存のデジタルカメラに無線通信の機能を付加することができる。
【0004】
しかしながら、寸法が規格化されたメモリカードにフラッシュメモリと無線通信部とを組み込んだ場合、メモリカード内のスペースの制約、供給電力の制約等によりフラッシュメモリの読み書き速度を向上させることが難しい。このため、無線通信部を有するメモリカードなどの通信速度が一般的なメモリカードよりも低速なメモリカードを装着した場合、デジタルカメラの実効的な動作速度がフラッシュメモリへの書込速度に制約されて、例えば撮影間隔が長くなる等の影響が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明の第1態様として、データを一時記録するバッファメモリと、データを格納するメモリを有するメモリカードを装着可能な第1カードスロットおよび第2カードスロットと、第1および第2カードスロットに装着されたメモリカードの通信速度を判定し、該通信速度が速いと判定されたメモリカードを第1メモリカード、第1メモリカードより通信速度が遅いと判定されたメモリカードを第2メモリカードとして判定する判定部と、作成したデータを前記第1メモリカードおよび第2メモリカードにそれぞれ記録する設定が行なわれている場合において、前記書き込みバッファメモリの空き容量が所定値以下となった場合に、作成したデータを前記第1メモリカードのみへ記録するよう制御するよう制御すると共に、前記第1メモリカードへ記録済みのデータをバッファメモリ内から削除する制御部と、前記第1メモリカードから前記第2メモリカードへの画像ファイルの転送経路が空いている期間に、前記第1メモリカードに記録されている複数の画像データのうちの前記第2メモリカードに記録されていない画像ファイルを前記第2メモリカードに転送する転送制御部を備えるデータ記録装置が提供される。
【0006】
また、本発明の第2態様として、上記データ記録装置を具備するデジタルカメラが提供される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】デジタルカメラ100の構造を模式的に示すブロック図である。
【図2】第1メモリカード200の構造を模式的に示すブロック図である。
【図3】第2メモリカード300の構造を模式的に示すブロック図である。
【図4】転送制御部140による制御を示す流れ図である。
【図5】転送制御部140による転送制御1を示す流れ図である。
【図6】転送制御部140による転送制御2を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、デジタルカメラ100の構造を模式的に示すブロック図である。デジタルカメラ100は、データバス110を介して相互に接続された撮像部101、第1カードスロット120、第2カードスロット130、転送制御部140、ワークメモリ170、マイクロプロセッサ180および画像処理部190を備える。
【0011】
第1カードスロット120には第1メモリカード200が、第2カードスロット130には第2メモリカード300がそれぞれ着脱自在に装着される。第1メモリカード200および第2メモリカード300は、それぞれ、フラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を有する。第1カードスロット120または第2カードスロット130に装着された場合、第1メモリカード200および第2メモリカード300の各不揮発性記録媒体は、データバス110に接続される。
【0012】
撮像部101は、撮像素子150およびD/Aコンバータ160を含む。撮像素子150は、CCD、C−MOS等の光電変換素子であり、撮影画像を電気信号に変換する。D/Aコンバータ160は、電気信号に変換された撮影画像を符号化して画像データとする。画像データは、ワークメモリ170に設定されたバッファ領域172に格納される。
【0013】
ワークメモリ170において、画像データは、ノイズ除去、露出補正、歪補償等の画像処理を受ける。更に、画像データは、日付、撮影条件等の他のデータと共に、記録媒体に格納できるファイル形式に変換されて、個々の撮影画像に対応した画像ファイルとなる。
【0014】
画像ファイルの各々は、第1メモリカード200または第2メモリカード300の少なくとも一方に転送されて保存される。このように記録媒体に格納された画像ファイルは、バッファ領域172から順次削除される。
【0015】
マイクロプロセッサ180は、上記の一連の処理を制御する。また、デジタルカメラ100の他の動作、即ち、シャッタ、絞り等の機械的な動作、表示部等への表示画像の生成も、マイクロプロセッサ180が処理する。一方、負荷の大きな画像処理等は、画像処理部190により実行される。
【0016】
また、本実施の形態においては、第1カードスロット120または第2カードスロット130にメモリカードが装着されると、マイクロプロセッサ180は当該装着されたメモリカードと通信し、当該メモリカード情報(通信速度情報、メモリカードのIDなど)を取得し、各メモリカードスロットに装着されたメモリカードがどのようなカードであるかを判別する。
【0017】
そして、マイクロプロセッサ180は、上記メモリカードから取得したメモリカード情報に基づき、通信速度(書込み速度および/又は読出し速度)が遅いメモリカードを判別する。マイクロプロセッサ180は、接続されたメモリカードが、当該メモリカードIDより無線機能内蔵等の特殊なメモリカードであると判別した場合には、通常のメモリカードと判別されたメモリカードに対して低速なメモリカードであると判別する。
【0018】
なお、マイクロプロセッサ180が、接続時に取得した通信速度情報を比較し、通信速度が遅いメモリカードを判別しても良い。また、メモリカードの通信速度を実際に所定量のデータ書込みを実施することにより判別しても良い。更に、第1カードスロット120および第2カードスロット130が対応するメモリカードの規格が相互に異なり、それぞれの規格で定められた通信速度が互いに異なる場合は、いずれのカードスロットに挿入されたメモリカードかということで第1メモリカード200および第2メモリカード300の通信速度の高低を判定してもよい。
【0019】
以下、第2メモリカード300の通信速度が、第1メモリカード200の通信速度よりも遅いと判断された場合を例に挙げて説明する。
【0020】
転送制御部140は、上記のようにして生成された画像ファイルの、第1メモリカード200または第2メモリカード300に対する転送を制御する。また、後述する、第1メモリカード200から第2メモリカードへの画像ファイルの転送も制御する。なお、転送制御部140は、専用のデバイスが実装される場合もあるが、マイクロプロセッサ180の機能の一部として実装される場合もある。転送制御部140による制御の内容については後述する。
【0021】
図2は、第1メモリカード200の構造を模式的に示すブロック図である。第1メモリカード200は、内部バス210、コントローラ220、フラッシュメモリ230、接続端子250およびプロテクトスイッチ260を備える。
【0022】
内部バス210は、コントローラ220、フラッシュメモリ230および接続端子250を相互に接続する。接続端子250は、第1カードスロット120が対応する規格に応じた配列を有して、第1メモリカード200が第1カードスロット120に装着された場合に、第1カードスロット120を通じて、デジタルカメラ100のデータバス110に内部バス210を電気的に接続する。
【0023】
フラッシュメモリ230は不揮発性記録媒体であり、デジタルカメラ100から転送された画像ファイルを格納する。また、第1メモリカード200が第1カードスロット120から取り外された場合も、第1メモリカードのフラッシュメモリ230は、格納した画像ファイルを保持し続ける。コントローラ220は、内部バス210の調停、デジタルカメラ100との通信の他、フラッシュメモリ230の書き込みおよび読み出し、ブロック消去、ウェアレベリング等を実行する。プロテクトスイッチ260は、有効にされた場合に、フラッシュメモリ230に対する書き込みおよびブロック消去を禁止する。
【0024】
なお、第1メモリカード200は、第1カードスロット120が対応する特定の規格に適合する形状と構造とを有する。即ち、カードの寸法、接続端子の数および配置等の機械的な仕様、論理電圧、消費電力等の電気的な仕様、および、ファイルシステム、プロトコル等のデータ仕様について、第1メモリカード200および第1カードスロット120は互いに共通の仕様を有する。
【0025】
第2メモリカード300の規格は様々あり、「SD(Secure Digital)」、「SDHC(SD High Capacity)」、「CF(Compact Flash)」等を例示できる。また、第1メモリカード200は、アダプタ等を用いることにより異なる規格のカードスロットに装着できる場合もある。
【0026】
図3は、第2メモリカード300の構造を模式的に示すブロック図である。第2メモリカード300は、内部バス310、コントローラ320、フラッシュメモリ330、無線通信部340、接続端子350およびプロテクトスイッチ360を備える。
【0027】
なお本実施形態では、第1メモリカードより通信速度が遅いと判定された第2メモリカード300が無線機能内蔵するメモリカードである場合を例にして説明している。しかしながら、第2メモリカード300として、無線通信部340を具備せず、無線機能を備えていないものを第2カードスロット130に挿して使用してもよい。
【0028】
第2メモリカード300は、コントローラ320、フラッシュメモリ330、接続端子350およびプロテクトスイッチ360を備える点で、第1メモリカード200と共通の構造と機能を有する。即ち、第2メモリカード300を第2カードスロット130に装着した場合、第2メモリカード300の内部バス310とデジタルカメラ100のデータバス110とが接続され、コントローラ320の制御の下に、フラッシュメモリ330に画像ファイルが格納される。このため、デジタルカメラ100側から見た場合は、第2メモリカード300は、第1メモリカード200と同じように、データバス110に接続された記録媒体と見なされる。
【0029】
更に、第2メモリカード300は、無線通信部340を備える。無線通信部340は、フラッシュメモリ330に格納された画像ファイルを、アンテナ342を介して無線信号として外部に送信する機能を有する。これにより、コントローラ320は、フラッシュメモリ330に格納されている画像ファイルを、無線通信部340を通じて外部のファイルサーバ等に転送する。このような無線通信部340の動作は、専らコントローラ320が制御するので、外部からは、第2メモリカード300が自主的に画像ファイルを転送するように見える。
【0030】
なお、無線通信部340の制御も担うという点で、コントローラ320は、第1メモリカード200のコントローラ220とは異なる機能を有する。また、無線通信部340は、画像ファイルの送信に専ら使用される。しかしながら、画像ファイルの送信先とのハンドシェイクを確立する等の用途で、無線通信部340は、無線信号の受信機能も有する。
【0031】
第2メモリカード300も、第2カードスロット130が対応する特定の規格に適合する仕様を有する。即ち、第2メモリカード300は、機械的仕様、電気的仕様およびデータ仕様を、第2カードスロット130と共通にする。
【0032】
このように、無線通信部340を備えた第2メモリカード300としては、例えば、SD規格のメモリカードにTCP/IP無線通信機能を実装したアイファイカード(米国、アイファイインコーポレイテッド社製)が市販されている。
【0033】
上記のように、第2メモリカード300は、デジタルカメラ100側からは記録媒体として認識される。このため、第1カードスロット120および第2カードスロット130の仕様が共通の場合は、第1メモリカード200を第2カードスロット130に、第2メモリカード300を第1カードスロット120に、それぞれ装着して使用することもできる。
【0034】
逆に、第1カードスロット120および第2カードスロット130は、互いに同じ規格を満たすものでなくてもよく、記録媒体として動作する第1メモリカード200は、デジタルカメラ100に内蔵されていてもよい。また、記録媒体はフラッシュメモリに限定されるわけではなく、ハードディスクドライブ等の他種の媒体であってもよい。
【0035】
また、無線通信部340の動作はコントローラ320が専ら制御するが、例えば、マイクロプロセッサ180あるいは転送制御部140からの要求に応じて、第2メモリカード300が、送信済の画像ファイルを特定する情報をデジタルカメラ100側に参照させることはできる。
【0036】
なお、本実施の形態における第2メモリカード300は、フラッシュメモリ330と共に無線通信部340を備える。このため、SDカードの規格で定められた消費電力の範囲で、フラッシュメモリ330への書き込みと無線通信部340による通信とを実行する。従って、フラッシュメモリ330の動作に使用できる電力が制約され、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に比較すると実効的な書き込み速度が低い。
【0037】
また、SDカードの規格では、カードの寸法が定められている。このため、一定のスペースに、無線通信部340と共に納められたフラッシュメモリ330の容量を大きくする目的で、フラッシュメモリ330にはマルチレベルセル型のメモリチップが用いられる。
【0038】
容量の点では有利なマルチレベルセル型のフラッシュメモリは、書き込み速度の点ではシングルレベルセル型に劣り、この点からも、フラッシュメモリ330の書き込み速度は、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に比較すると低い。
【0039】
一方、バッファ領域172への書き込み速度は、いずれのフラッシュメモリ230、330への書き込み速度よりも速い。このため、撮像した画像の画像ファイルをバッファ領域172に書き込むことにより、デジタルカメラ100は短い時間間隔で次の画像を撮像できる。
【0040】
図4は、転送制御部140による画像ファイルの転送制御の流れ図である。ここでは、バッファ領域172から記録媒体への画像ファイルの転送に関する制御が示される。
【0041】
デジタルカメラ100において撮像が開始され、バッファ領域172に画像ファイルが生成されると、転送制御部140は、まず、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に空き容量が残っているか否かを調べる(S101)。フラッシュメモリ230に画像ファイルを保存するに足る空き容量が残っている場合(S101:YES)は、次に、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に、画像ファイルを保存する空き容量が残っているか否かを調べる(S102)。
【0042】
第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に画像ファイルを保存するに足る空き容量が残っている場合(S102:YES)、転送制御部140は更に、バッファ領域172に、所定の空き容量が残っているか否かを調べる(S103)。こうして、バッファ領域172に、所定の空き容量が残っていることが判明した場合(S103:YES)、転送制御部140は、バッファ領域172に生成された画像ファイルをフラッシュメモリ230およびフラッシュメモリ330の両方にそれぞれ記録する(S105)。なお、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に書き込んだ画像ファイルにフラグを設けて、当該画像ファイルをフラッシュメモリ330にも書き込んだ場合に当該フラグをセットしてもよい。
【0043】
このように、画像ファイルをフラッシュメモリ230およびフラッシュメモリ330の両方に記録することにより、第1メモリカード200から第2メモリカード300への画像ファイルの転送を省略することができる。ただし、バッファ領域172からフラッシュメモリ230、330への画像ファイルの記録を完了するまでに要する時間は、書き込み速度が遅いメモリカードのフラッシュメモリ(本実施の形態では第2メモリカード300のフラッシュメモリ330)の書き込み速度に制約される。
【0044】
上記の一連の手順において、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に画像ファイルを記録するに足る空き容量が残っていない場合(S101:NO)、転送制御部140は、撮影をしても画像ファイルを保存できないことをマイクロプロセッサ180に通知して、ユーザに向かって警報を発生させる(S106)。これにより、デジタルカメラ100による撮影は終了する。
【0045】
また、何らかの事情で、第1メモリカード200の残り容量が無くなったにもかかわらず、第2メモリカード300の残り容量が残っている場合があり得る。このような場合は、画像ファイルを第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に記録することにより、撮影を継続することができる。しかしながら、後述するように、撮像した画像の全ての画像ファイルを第1メモリカード200に保存することが好ましい場合は、第2メモリカード300の残り容量如何にかかわらず、撮影を終了することが好ましい。
【0046】
また、上記の一連の手順において、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330の空き容量が残っていない場合(S102:NO)は、画像ファイルを第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に記録する(S104)ことにより撮影を継続する。即ち、残り容量がなくなったフラッシュメモリ330に、それ以上に画像ファイルを保存できないことはいうまでもないが、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に画像ファイルを順次保存することにより、デジタルカメラ100による撮影を継続できる。
【0047】
更に、上記の一連の手順において、バッファ領域172に、所定の空き容量が残っていない場合(S103:NO)は、バッファ領域172に記録されている画像データのうち、第1メモリカードへ記録が完了している画像データをバッファ領域172から削除し、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330の空き容量の如何にかかわらず、画像ファイルを第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に記録するよう制御することにより(S104)撮影を継続する。即ち、バッファ領域172に対する画像データの書き込み速度は、フラッシュメモリ230、330に対する画像ファイルの書き込み速度よりも速い。このため、デジタルカメラ100において多数の画像を連続的に撮像した場合は、バッファ領域172に残る画像ファイルが徐々に増えて、やがてバッファ領域172に空き容量がなくなる。なお、上述した所定の空き容量とは、次の画像ファイル1枚を記録するに足る容量でもよく、また、1〜5枚程度の画像の画像データを記録するに足る容量でもよい。
【0048】
このような場合、バッファ領域172内の画像ファイルがフラッシュメモリ230、330に転送されて、バッファ領域172に空き領域が生じるまで、次の画像を撮像できない。換言すれば、バッファ領域172の残り容量がなくなった場合は、デジタルカメラ100による撮影間隔は、フラッシュメモリ230、330への書き込み速度に依存する。
【0049】
既に説明した通り、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330は、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230よりも書き込み速度が遅いと判定されている。このため、バッファ領域172の残り容量が所定容量以下の場合は、フラッシュメモリ230への書き込み速度が速い第1メモリカードへ画像ファイルを書き込みつつ撮影を継続して、実効的な撮影間隔を短縮することができる。
【0050】
このように、画像ファイルを高速に記録することが求められる場合、第1メモリカードおよび第2メモリカードへそれぞれ画像ファイルを記録するよう設定されていたとしても転送制御部140は、第1メモリカード200および第2メモリカードへ画像ファイルを並列的に記録せず、第1メモリカード200に記録するようにしてもよい。なお、前記所定容量とは1又は所定の枚分の画像データを記録できなくなる容量とする。
【0051】
図5は、転送制御部140による画像ファイルの転送制御の流れ図である。ここでは、第1メモリカード200から第2メモリカード300への画像ファイルの転送に関する制御(転送制御1)が示される。
【0052】
デジタルカメラ100が稼働している間、転送制御部140は、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230を監視して、フラッシュメモリ230に、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330には格納されていない画像ファイルがあるか否かを調べる(S201)。
【0053】
ここで、画像ファイルが、バッファ領域172から第1メモリカード200および第2メモリカード300の両方に書き込まれている場合(図4のS105)は、該当する画像ファイルはすべて第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に記録されている。この場合、第1メモリカード200に書き込んだ画像ファイルに設けたフラグをすべてセットしてもよい。
【0054】
また、画像ファイルが、バッファ領域172から第1メモリカード200だけに書き込まれている場合(図4のS104)は、該当する画像ファイルに設けた、第2メモリカード300に当該画像ファイルが記録されているか否かを示すフラグを調べる。
【0055】
第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に格納されていない画像ファイルがなかった場合(S201:NO)、転送制御部140は、監視を継続する(S201)。個々の画像ファイルがフラッシュメモリ330に格納されていないことは、例えば、当該画像ファイルにおいて上記フラグがセットされていることにより判断できる。
【0056】
また、上記フラグがセットされていない画像ファイルがあった場合は、当該画像ファイルが、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に格納されていないことが判断できる(S201:YES)。そこで、転送制御部140は、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に、当該画像ファイルを格納する残り容量が残っているか否かを調べる(S202)。
【0057】
第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に、当該画像ファイルを格納するに足る空き容量が残っていない場合(S202:NO)は、フラッシュメモリ330に十分な空き容量ができるまで監視を継続する(S202)。フラッシュメモリ330に十分な空き容量がある場合は、当該画像ファイルを第1メモリカード200から第2メモリカード300に転送する場合の転送経路となるデータバス110が空いているか否かを調べる(S203)。また、第1メモリカード200および第2メモリカード300の各々の内部バス210、310が空いているか否かも併せて調べる。
【0058】
データバス110および内部バス210、310が空いていない場合(S203:NO)は、マイクロプロセッサ180およびコントローラ220、320にバス要求を発信しつつ監視を継続する(S203)。データバス110および内部バス210、310が空いている場合(S203:YES)は、フラッシュメモリ230からフラッシュメモリ330への画像ファイルの転送を開始する(S204)。ただし、この転送は、第1メモリカードから第2メモリカードへのファイルの複写であって、転送された画像ファイルは、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230にも残る。
【0059】
更に、転送制御部140は、当該画像ファイルの転送が完了したか否かを監視する(S205)。転送が継続している間は監視を継続し(S205:NO)、転送が完了した場合(S205:YES)は、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に残っている元の画像ファイルに、それが転送済みであることを示すフラグをセットする(S206)。こうして、ひとつの画像ファイルの転送が完了すると、転送制御部140は、再び第1メモリカード200に未転送の画像ファイルがあるか否かを監視する(S201)。
【0060】
以上のような一連の制御により、デジタルカメラ100による撮像で生成された画像ファイルは、第1メモリカード200と同時か否かの違いはあるにせよ、いずれ第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に格納される。しかしながら、図4を参照して説明した転送制御部140の制御により、フラッシュメモリ330への書き込み速度が、デジタルカメラ100の撮影間隔を制限することは回避される。
【0061】
図6は、通信速度の遅い第2メモリカードが無線通信機能を内蔵したカードであった場合についての転送制御部140による画像ファイルの転送制御の流れ図である。ここでは、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330における画像ファイルの取り扱いに関する制御(転送制御2)が示される。
【0062】
既に説明した通り、本実施の形態においては、第1のメモリカードよりも通信速度が遅い第2メモリカード300として無線通信機能を内蔵したメモリカードが装着されている場合においては第2メモリカード300のコントローラ320は、フラッシュメモリ330に画像ファイルがあった場合に、無線通信部340を制御して当該画像ファイルを外部に向かって送信する。この場合の外部とは、無線ネットワークを介して無線通信部340に接続されたファイルサーバ、パーソナルコンピュータ等であり得る。
【0063】
デジタルカメラ100が稼働している間、転送制御部140は、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に書き込まれた画像ファイルがあるか否かを監視する(S301)。また、フラッシュメモリ330に書き込まれた画像ファイルが無い場合(S301:NO)は、監視を継続する(S301)。
【0064】
一方、フラッシュメモリ330に書き込まれた画像ファイルがある場合(S301:YES)は、当該画像ファイルが、無線通信部340により外部に送信されている画像ファイルか否かを検知する(S302)。更に、監視対象の画像ファイルの転送が完了したか否かを監視して(S303)、転送が完了するまで監視を継続する(S303:NO)。
【0065】
画像ファイルの転送が完了した場合(S303:YES)、転送制御部140は、当該ファイルを、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330から削除させる。これにより、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に空きが生じるので、図5に示した転送制御1におけるステップS202の状態が変化する。
【0066】
このように、第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に格納された画像ファイルは、順次、外部に送信された上で削除される。このため、フラッシュメモリ330に格納された画像ファイルは、送信先の外部に保存されるが、デジタルカメラ100の内部には残らない。
【0067】
従って、第1メモリカード200のフラッシュメモリ230に空き容量が無くなったにもかかわらず第2メモリカード300のフラッシュメモリ330に空き容量が残っていた場合、第1メモリカードに保存することなく第2メモリカードに画像ファイルを保存することは好ましくない。あるいは、第1メモリカードに保存することなく第2メモリカードに画像ファイルを保存する場合は、外部に送信された画像ファイルの削除(S304)を実行ないことが好ましい。
【0068】
また、図4から図6に示す一連の処理は、ユーザの撮影操作後に実行される。このため、処理中に、ユーザによって電源スイッチがOFFにされる場合がある。このような場合は、電源が再投入された場合の処理の開始個所を記録した上で処理を中断して、電源スイッチの指示に従って電源を遮断してもよい。あるいは、処理の実行に伴って転送制御部140に供給される電流を検出して、処理が完了するまで電力の供給を保持してもよい。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0070】
例えば、メモリカードに記録するデータの形式として画像データを用いた場合を例として説明したが、記録するデータは、音声データ、テキストデータ等のデータであってもよい。また、メモリカードにデータを記録するデータ記録装置としてデジタルカメラを例に挙げて説明したが、音声レコーダ、パーソナルコンピュータ等のデータ記録装置に本発明を適用しても良い。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および制御手順等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
100 デジタルカメラ、101 撮像部、110 データバス、120 第1カードスロット、130 第2カードスロット、140 転送制御部、150 撮像素子、160 D/Aコンバータ、170 ワークメモリ、172 バッファ領域、180 マイクロプロセッサ、190 画像処理部、200 第1メモリカード、210、310 内部バス、220、320 コントローラ、230、330 フラッシュメモリ、250、350 接続端子、260、360 プロテクトスイッチ、300 第2メモリカード、340 無線通信部、342 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを一時記録するバッファメモリと、
データを格納するメモリを有するメモリカードを装着可能な第1カードスロットおよび第2カードスロットと、
前記第1カードスロットおよび前記第2カードスロットに装着されたメモリカードの通信速度を判定し、該通信速度が速いと判定されたメモリカードを第1メモリカード、前記第1メモリカードより通信速度が遅いと判定されたメモリカードを第2メモリカードとして判定する判定部と、
作成したデータを前記第1メモリカードおよび前記第2メモリカードにそれぞれ記録する設定が行なわれている場合において、前記バッファメモリの空き容量が所定値以下となった場合に、作成したデータを前記第1メモリカードのみへ記録するよう制御するよう制御すると共に、前記第1メモリカードへ記録済みのデータをバッファメモリ内から削除する制御部と、
前記第1メモリカードから前記第2メモリカードへの画像ファイルの転送経路が空いている期間に、前記第1メモリカードに記録されている複数の画像データのうちの前記第2メモリカードに記録されていない画像ファイルを前記第2メモリカードに転送する転送制御部を備えるデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ記録装置において、
前記制御部は、前記第2メモリカードが無線転送部を有するメモリカードであった場合に前記無線転送部が外部に転送したデータを、前記第2メモリから削除するデータ記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデータ記録装置において、
前記データは画像データであることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のデータ記録装置を具備するデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−283809(P2010−283809A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97252(P2010−97252)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】