説明

データ転送装置及び方法

【課題】使用頻度に合わせて使用するレーン数を調整し、不要な電力消費を抑制する。
【解決手段】本発明に係るデータ転送装置1は、複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号11を転送するものであって、単位時間あたりのリクエスト数を計上するトラフィック検出部2と、前記リクエスト数に基づいて、前記複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定するレーン数決定部3と、前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御するインターフェース制御部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIのおける消費電力のうち、インターフェース部分に掛かる比率は比較的大きい。複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いる場合、使用するレーン数を縮退させることができれば、それだけ消費電力が軽減されることとなる。
【0003】
従来、このようなシリアルインターフェースにおいて、レーン故障等が生じた場合に、対象となるレーンを縮退させることにより、データの転送を継続できるようにする技術が用いられている。
【0004】
以下に、従来の技術を挙げる。特許文献1において、リクエストの数をカウントしてアクセス数を生成し、前記アクセス数に応じてリクエストを保持し、このリクエストの保持時間に応じて前記リクエストを出力する装置が開示されている。
【0005】
特許文献2において、PCI Expressインターフェースの制御を行い、その動作状態を保持するコントローラと、情報処理装置の初期処理完了時に前記コントローラから前記PCI Expressインターフェースの動作状態を取得して記憶し、故障発生の通知を受けた場合に、記憶している動作状態と前記コントローラが保持している動作状態を比較し、レーン数が縮退していることを検出した場合には、所定の対応処理を行う装置が開示されている。
【0006】
特許文献3において、ストアバッファから送出され、主記憶において未処理の状態にあるリクエストの数を検出する手段と、この検出結果に応じて待ち時間を変化制御する手段とを備える装置が開示されている。
【0007】
特許文献4において、送信側装置から送られてくるデータの正当性をビットシリアル対応に監視する手段と、前記データが正当性を欠く場合にこれを自装置及び前記送信側装置に通知する手段と、障害を生じた一本の直列インターフェースを切離すると共に、縮退した(N−1)本の直列インターフェースを用いてデータの送受信を行う手段とを備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−163481号公報
【特許文献2】特開2006−201881号公報
【特許文献3】特開平3−177959号公報
【特許文献4】特開平5−173922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術においては、全てのレーンが正常である場合には、喩えインターフェースの使用頻度(トラフィック)が少ない場合であっても、全てのレーンを使用してデータの転送が行われ、全てのレーンに対して電源供給が行われる。
【0010】
そこで、本発明は、使用頻度に合わせて使用するレーン数を調整し、不要な電力消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するデータ転送装置であって、単位時間あたりのリクエスト数を計上するトラフィック検出部と、前記リクエスト数に基づいて、前記複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定するレーン数決定部と、前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御するインターフェース制御部とを備えるデータ転送装置である。
【0012】
また、本発明の他の態様は、複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するデータ転送方法であって、単位時間あたりのリクエスト数を計上するステップと、前記リクエスト数に基づいて、前記複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定するステップと、前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御するステップとを備えるデータ転送方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単位時間あたりのリクエスト数からインターフェースの使用頻度を検出し、この検出結果に基づいてシリアルインターフェースの使用レーン数を最適化することができる。これにより、使用頻度が少ない場合には、使用レーン数を縮退させ、無駄な電力消費を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係るデータ転送装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】前記データ転送装置の具体的な構成を例示する機能ブロック図である。
【図3】前記データ転送装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【図4】レーンの縮退状態を例示する図である。
【図5】リクエスト数と縮退情報(最適レーン数)との関係を示すテーブルを例示する図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
図1は、本実施の形態に係るデータ転送装置1の機能的な構成を示している。前記データ転送装置1は、複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するものであり、トラフィック検出部2、レーン数決定部3、及びインターフェース制御部4を備える。
【0016】
前記トラフィック検出部2は、単位時間あたりのリクエスト数(前記リクエスト信号の受信数)を計上する。前記トラフィック検出部2は、所定の制御演算プログラムに従って動作するマイクロコンピュータ(ソフトウェア的構成)、各種論理回路の組み合わせ(ハードウェア的構成)等を用いて構成することができる。
【0017】
前記レーン数決定部3は、前記トラフィック検出部2により検出された前記リクエスト数に基づいて、前記シリアルインターフェースの複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定する。前記レーン数決定部3もまた、前記ソフトウェア的構成、前記ハードウェア的構成を用いて構成することができる。
【0018】
前記インターフェース制御部4は、前記レーン数決定部3により決定された前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御する。前記インターフェース制御部4もまた、前記ソフトウェア的構成、前記ハードウェア的構成、適宜のデバイスを用いて構成することができる。
【0019】
図2は、前記データ転送装置1の具体的な構成を例示している。前記データ転送装置1は、外部から複数のリクエスト信号11を入力し、これらを送出リクエスト信号12として所定の受信部12に出力する。
【0020】
本例に係る前記トラフィック検出部2は、トラフィック検出時間算出手段51及びリクエストカウント手段52を備える。
【0021】
前記トラフィック検出時間算出手段51は、タイマを保持し、一定時間毎に、リクエスト数送出指示信号20を出力する。
【0022】
前記リクエストカウント手段52は、前記リクエスト信号11の受信数をカウントし、前記リクエスト数送出指示信号20の受信時におけるカウント数を、リクエスト数情報(信号)21として出力する。
【0023】
本例に係る前記レーン数決定部3は、レーン数選択手段54、使用レーン数格納手段55、及びレーン数決定手段56を備える。
【0024】
前記レーン数選択手段54は、前記リクエスト数情報21を受信し、その数値に対応するレーン数、即ち前記最適レーン数を選択する。この選択は、前記リクエスト数と前記最適レーン数との関係を表化したテーブル(後述する)等を用いて行うことができる。
【0025】
前記使用レーン数格納手段55は、使用中のレーン数を示す情報を格納する。
【0026】
前記レーン数決定手段56は、前記レーン数選択手段54により選択された前記最適レーン数及び前記使用レーン数格納手段55に格納されたレーン数との比較結果に基づいて、レーン数変更指示信号22を出力する。即ち、前記レーン数決定手段56は、前記最適レーン数と前記使用中のレーン数とが異なる場合に、前記レーンの使用数を前記最適レーン数にする指示を出力する。
【0027】
本例に係る前記インターフェース制御部4は、リクエスト格納手段59、レーン数変更リクエスト生成手段60、送出リクエスト選択手段61、及びレーン制御手段62を備える。
【0028】
前記リクエスト格納手段59は、受信した前記リクエスト信号11を一時的に格納し、それらを送出するタイミングを調整する。
【0029】
前記レーン数変更リクエスト生成手段60は、前記レーン数変更指示信号22を受信した時に、レーン数の変更を通知するリクエスト信号(レーン数変更リクエスト信号)を生成する。
【0030】
前記送出リクエスト選択手段61は、前記リクエスト格納手段59に格納された前記リクエスト信号11と、前記レーン数変更リクエスト信号とを比較し、送出するべき信号を選択する。前記送出リクエスト選択手段61は、前記レーン数変更リクエスト信号を、前記リクエスト信号11よりも優先して送出することが好ましい。
【0031】
前記レーン制御手段62は、前記送出リクエスト選択手段61により選択されたリクエスト信号と前記レーン数変更リクエスト信号とを受信し、前記レーン数変更リクエスト信号に基づいたレーン数を駆動させると共に、前記選択されたリクエスト信号を送出リクエスト信号12として出力する。
【0032】
図3は、前記データ転送装置1の例示している。ここで、本実施の形態に係る前記シリアルインターフェースは、1/2縮退、1/4縮退が可能で、どの縮退状態からも異なる縮退状態(全て使用可能状態も含む)へ移行することが可能なものであるとする。ここでは、全てのレーンを使用している状態から、一度1/2縮退し、再び全てのレーンに戻る状態を説明する。
【0033】
図3中、タイミング01(T01)において、前記データ転送装置1は、前記リクエスト信号11(RQ1)を受信する。また、T10,T13,T14において、リクエスト信号RQ2,RQ3,RQ4を受信している。これらのリクエスト信号を受信する度に、リクエストカウント手段52がカウントアップする。本例においては、前記リクエストカウント手段52はT10までに4つのリクエスト信号を受信し、T10のリクエスト信号11(RQ2)が5つのリクエスト信号となる。
【0034】
前記トラフィック検出時間算出手段51は、初期値tを1サイクル毎に−1し、0になった次のサイクルで初期値tに戻る動作を繰り返す。値が0になった時に前記リクエスト数送出指示信号20を前記リクエストカウント手段52へ出力する(本例においては、T12,T21,T32で出力している)。
【0035】
前記リクエストカウント手段52は、前記リクエスト数送出指示信号20を受信すると、前記レーン数決定部3にカウント値である前記リクエスト数情報21を送出し、カウンタを0に戻す。本例においては、T12でリクエスト数5、T21でリクエスト数4、T32でリクエスト数15、T13及びT22でリクエスト数0となっている。また、T33においては、リクエスト数を0にすると同時にリクエスト信号を受信しているため、リクエスト数は1となる。
【0036】
前記トラフィック検出部2から前記レーン数決定部3へ渡される前記リクエスト数情報21は、単位時間tあたりの受信リクエスト数であり、T12におけるリクエスト数5は、トラフィックが比較的低いと判定することができる。従って、この場合には使用レーンを縮退させることが好ましい。一方、T32においては、リクエスト数が15であり、トラフィックは比較的高いと判定することができる。この場合には、使用レーンを増加させることが好ましい。
【0037】
前記レーン数選択手段54は、図4に示すテーブルを保持し、前記リクエスト数情報21に応じた前記最適レーン数を選択する。図4中、るm0,m1は初期値として与えられるものであり、本例においては、m0を3、m1を7とする。また、出力コード(3bit)は、縮退なしの場合には100b、1/2縮退の場合には101b、そして1/4縮退の場合には110bとする。図3中、T12,T21,T32において、前記リクエスト数情報21はそれぞれ5,4,15である。リクエスト数5及び4は、前記テーブルを参照すると、1/2縮退(出力コード101b)となり、リクエスト数15は、縮退なし(出力コード100b)となる。そして、これらの結果は、前記レーン数決定手段56に出力される。
【0038】
前記使用レーン数格納手段55は、現在のレーンの使用状態を格納し、前記レーン数決定手段56からの前記レーン数変更指示信号22により格納状態を変更する。本例においては、T13,T33において、それぞれ1/2縮退(01b)、全レーン使用(00b)の状態を格納している。
【0039】
前記レーン数決定手段56は、前記レーン数選択手段54からの出力コードと、前記使用レーン数格納手段55の格納情報に基づいて、使用レーン数の変更の要否を決定し、前記レーン数変更指示信号22を前記インターフェース制御部4及び前記使用レーン数格納手段55に出力する。前記レーン数決定手段56は、T12において前記レーン数選択手段54から1/2縮退を示す出力コード101bを受信し、上位1bit(101の最左bit)が1であるタイミングで、下位2bit(01b)と、前記使用レーン数格納手段55からのレーン状態コード2bit(00b)との一致チェックを行い、これらが異なる場合には、レーン数の変更が必要であると判定する。また、T32においては、同様に縮退なしの指示を出力する。また、T21においては、前記レーン数選択手段54からの出力コードが101b、前記使用レーン数格納手段55からのレーン状態コードが01bであるため、1/2レーン縮退から同じ縮退数となる。そのため、レーン数の変更は不要となる。
【0040】
前記リクエスト格納手段59は、受信した前記リクエスト信号11を格納し、前記データ転送装置1による送出制御において待ち合わせが必要な前記リクエスト信号11を格納しておく。前記レーン数変更リクエスト生成手段60は、前記レーン数決定手段56からの前記レーン数変更指示信号22を受信し、前記受信部65に対し、使用レーン数の変更を通知するリクエスト信号を生成する。本例においては、T12及びT32において、それぞれH−RQ1及びH−RQ2を生成している。
【0041】
前記送出リクエスト選択手段61は、前記レーン数変更リクエスト生成手段60からのリクエスト信号を優先的に選出し、前記レーン制御手段62に出力する。即ち、図3中、T32において、H−RQ2を優先的に選出する。
【0042】
前記レーン制御手段62は、図5に例示するようなレーン構成により、前記送出リクエスト信号12を出力する。前記レーン制御手段62は、前記レーン数変更指示信号22を受信し、1/2縮退の場合には、図5中、(1)又は(2)のいずれか1つの10レーンを使用して前記送出リクエスト信号12を出力し、1/4縮退の場合には、(I),(II),(III),(IV)のいずれか1つの5レーンを使用する。図3に例示するタイムチャートにおいては、T12において前記レーン数選択手段54から1/2縮退を受信し、T13から10レーンの制御となり、同様にT33から全レーン使用の20レーンの制御となる。
【0043】
以上のように、前記データ転送装置1によれば、前記リクエスト信号11のトラフィックに対応して、使用レーンが効率よく縮退又は増加される。これにより、消費電力が大きいインターフェースの制御部において、不要なレーンを駆動させるための電力を削減することができるので、優れた省電力効果を得ることができる。
【0044】
尚、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【符号の説明】
【0045】
1 データ転送装置
2 トラフィック検出部
3 レーン数決定部
4 インターフェース制御部
51 トラフィック検出時間算出手段
52 リクエストカウント手段
54 レーン数選択手段
55 使用レーン数格納手段
56 レーン数決定手段
59 リクエスト格納手段
60 レーン数変更リクエスト生成手段
61 送出リクエスト選択手段
62 レーン制御手段
65 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するデータ転送装置であって、
単位時間あたりのリクエスト数を計上するトラフィック検出部と、
前記リクエスト数に基づいて、前記複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定するレーン数決定部と、
前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御するインターフェース制御部と、
を備えるデータ転送装置。
【請求項2】
前記レーン数決定部は、前記最適レーン数と使用中のレーン数とに基づいて、前記インターフェース制御部に対し、使用するレーン数を変更させるレーン数変更指示信号を出力する、
請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項3】
前記インターフェース制御部は、前記レーン数変更指示信号に基づいて、前記リクエスト信号を受信する受信部に対し、使用するレーン数の変更を通知する信号を、前記リクエスト信号より優先して出力する、
請求項2に記載のデータ転送装置。
【請求項4】
複数のレーンを備えるシリアルインターフェースを用いてリクエスト信号を転送するデータ転送方法であって、
単位時間あたりのリクエスト数を計上するステップと、
前記リクエスト数に基づいて、前記複数のレーンのうち使用するべき最適レーン数を決定するステップと、
前記最適レーン数に基づいて、前記シリアルインターフェースのレーンの駆動状態を制御するステップと、
を備えるデータ転送方法。
【請求項5】
前記最適レーン数と使用中のレーン数とに基づいて、使用するレーン数を変更させるレーン数変更指示信号を出力するステップ、
を備える請求項4に記載のデータ転送方法。
【請求項6】
前記レーン数変更指示信号に基づいて、前記リクエスト信号を受信する受信部に対し、使用するレーン数の変更を通知する信号を、前記リクエスト信号より優先して出力するステップ、
を備える請求項5に記載のデータ転送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−123798(P2011−123798A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282728(P2009−282728)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】