説明

データ転送装置

【課題】スケジューリングテーブルや入出力データバッファからデータを読む際に一過性の入出力エラーが発生しても誤った入出力データの転送を回避する。
【解決手段】制御部130は、データ転送に先立ち、スケジューリングテーブル12aの先頭位置に予め設定された、読み出したデータが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、入出力データバッファ12bの先頭位置に予め設定された第1の特定の情報とを照合し、更に、スケジューリングテーブルの任意の位置に予め設定された、ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報と、入出力データバッファの任意の位置に予め設定された第2の特定の情報とを照合し、共に一致した場合にデータ転送を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、分散型制御システム(DCS:Distributed Control
System)や、安全計装システム(SIS:safety Instrument System)に用いて好適な、データ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二重照合方式(ペア&スペア)に代表される高信頼性技術は、上記したDCSや、SISを支える重要な要素技術になっている。DCSに実装されているプロセッサモジュールの内部構成を図4に示す。図4に示すプロセッサモジュール100によれば、制御中枢となるプロセッサ101(MPU:Micro Processer Unit)はペア構成になっており、ペアのMPUがそれぞれ演算を実行し、照合器により、双方の演算結果を常に照合して、結果が正しいか否かを判定しており、ハードウェア故障や一過性エラーによる演算ミスを検出できる仕組みになっている。
【0003】
また、不図示のプロセス入出力装置(PIO:Process Input-Output
Device)は、プロセッサ101との通信を行うバスインタフェースモジュール、各種プロセス入出力信号を制御する入出力モジュール等、複数のモジュールによって構成される。プロセッサモジュール100には、拡張ノードも接続可能であり、この場合、不図示の入出力モジュールは、IO通信コントローラ104に接続される。その各入出力モジュール間のデータ転送を行う入出力バスがIOバス105である(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、上記したペア&スペア方式に加え、プロセッサモジュール100の入出力処理機能を分散したIOコプロセッサ方式が採用されている。IOコプロセッサ方式を実現するIOコプロ回路103は、プロセッサ同様に制御中枢となるMPU、およびRAM、ROMのメモリが内蔵される。IOコプロ回路103は、従来、プロセッサ101が実行していた入出力通信処理機能を担う入出力処理装置であり、この場合、プロセッサ101は、入出力処理で浪費していた処理能力を本来の演算制御に集中させることができる。
【0005】
ところで、IOコプロ回路103は一般的に安価な回路構成であるため、プロセッサ101とは異なり、シングルプロセッサでECC(Error Checking and Correcting Code )等のメモリチェック機能を持たない構成になっている。そのため、データの信頼性が確保できない問題があり、IOコプロ回路103が入出力パケットを生成すると信頼性が確保できない。このため、入出力モジュールへの通信に必要な入出力パケットは、ペア構成のMPU(プロセッサ101)が生成するようにしている。MPUで生成された入出力パケットは主メモリ102に記憶される。入出力パケットが記憶される主メモリ102にはECC機能が付加されているため、ビット化けや読み書き時の一過性エラーの検出・訂正が可能であり、その結果、データインテグリティを確保し、誤出力を防止することができる。主メモリに記憶された入出力パケットは、IO通信コントローラ104に転送され、IOバス105を介して入出力モジュールへ送信される。
【0006】
主メモリ102から入出力モジュール(IO通信コントローラ104)に転送される入出力パケットの流れを図5に示す。主メモリ102上に記憶される入出力パケットは、スケジューリングテーブル102aに記憶されるアドレスと、入出力データバッファ102bに記憶される入出力データとから構成される。スケジューリングテーブル102aは、入出力モジュールの定周期アクセスを要求するために主メモリ102の作業領域に確保されるアドレステーブルであり、プロセッサ101によって割り当てられ記憶される。スケジューリングテーブル102aには、次にアクセスされるテーブルへのポインタと、入出力データバッファポインタを含むアドレス情報が設定され、入出力データバッファポインタが指した入出力データバッファの入出力データがIO通信コントローラ104へ送られる仕組みになっている。
【0007】
図5において、所望のデータ(IOMパケット)を主メモリ102からIO通信コントローラ104に転送するために、IOコプロ回路103は、まず、スケジューリングテーブル102aの先頭アドレス(先頭ポインタ)を内蔵するRAMに読み込み、読み込んだアドレスから演算が行われる。そしてIOコプロ回路103は、演算から導き出されたデータバッファポインタを内蔵RAMに読み込む。続いてIOコプロ回路103は、DMAコントローラ(DMAC106)に対してDMA転送の起動要求を発行する。このとき、IOコプロ回路103は、読み込んだデータバッファポインタから、主メモリ102におけるどの領域のデータをIO通信コントローラ104に転送するか、IO通信コントローラ104のどの領域をどれくらいのサイズで使うかを示すパラメータをDMAC106にセットする。その後、DMAC106によってデータバッファポインタが示すデータが、主メモリ102からIO通信コントローラ104にダイレクトメモリアクセス転送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】横河技報Vol.48、 No4(2004年)、頁35〜38「CENTUM CS3000 R3 コンパクトステーションFFCS」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来のデータ転送の流れによれば、IO通信コントローラ104に送られるデータは、スケジューリングテーブル102a内のデータバッファポインタによって指定されるが、このテーブルデータや入出力データを読み込む際に、ポインタがIOコプロ回路103に内蔵されるRAMに一旦保持される。しかしながら、IOコプロ回路103は、一般的に安価な回路で構成されるため、ECC機能が付加されていないのが一般的である。そのため、IOコプロ回路103が、ポインタを内部に読み込んだ際、内蔵RAMエラー等によってポインタの内容が変化した場合、エラーの検出・訂正ができない。したがって、次にアクセスすべきテーブルやデータを正しく指定することができず、その結果、誤った入出力データを転送してしまう。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、スケジューリングテーブルや入出力データバッファからデータを読みこむ際に、一過性の入出力エラーが発生しても誤った入出力データの転送を無くし、信頼性の高い入出力データの転送を可能にしたデータ転送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために本発明は、 プロセッサにより生成され、主メモリの所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブルに記憶されたポインタが示す入出力データバッファの転送データを読み出し、前記読み出した転送データを、前記プロセッサに入出力バス経由で接続される入出力モジュールへ転送するデータ転送装置であって、前記転送に先立ち、前記スケジューリングテーブルの先頭位置に予め設定された、前記読み出したデータが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、前記入出力データバッファの先頭位置に予め設定された前記第1の特定の情報と、を照合し、更に、前記スケジューリングテーブルの任意の位置に予め設定された、前記ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報と、前記入出力データバッファの任意の位置に予め設定された前記第2の特定の情報と、を照合し、共に一致した場合に前記転送を許可する制御部、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、制御部は、スケジューリングテーブルと入出力データバッファの両方に設けられた、転送データが目的のデータであることを示す第1の特定の情報、またはポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報に不一致が発生した場合、その入出力データの転送を禁止する。このため、スケジューリングテーブルや入出力データバッファからデータを読み込む際に、一過性の入出力エラーが発生しても誤った入出力データの送信は行なわれず、したがって、信頼性の高いデータ転送が可能になる。
【0013】
本発明において、前記プロセッサが有する内部バスにDMAコントローラが接続され、前記制御部は、前記第1の情報を照合した結果、一致が確認されると、前記DMAコントローラに対し、転送元になる前記主メモリのアドレスと、転送先になる前記入出力モジュールのアドレスと、前記転送される入出力データの転送量とからなる前記プロセッサにより生成されるパラメータを設定し、前記パラメータが設定された前記DMAコントローラは、前記読み出された転送データのDMA転送に先立ち、前記スケジューリングテーブルの先頭位置に予め設定された、前記読み出した転送データが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、前記入出力データバッファの先頭位置に予め設定された前記第1の特定の情報とを照合し、更に、前記スケジューリングテーブルの任意の位置に予め設定された、前記ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報と、前記入出力データバッファの任意の位置に予め設定された前記第2の特定の情報とを照合し、共に一致した場合に、前記パラメータにしたがうDMA転送を開始することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スケジューリングテーブルと入出力データバッファの両方に、転送データが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報とを設け、その照合を、制御部とDMAコントローラの両方で行なうことにより、データの信頼性を確保することができる。仮に、入出力エラーが発生し、照合の結果、スケジューリングテーブルや入出力データバッファに設けられた第1の特定の情報、または第2の特定の情報に不一致が発生した場合、これらデータは主メモリから入出力モジュールへ転送されることはない。したがって、データの誤転送を防止することが出来、より一層、信頼性の高いデータ転送が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スケジューリングテーブルや入出力データバッファからデータを読みこむ際に、一過性の入出力エラーが発生しても誤った入出力データの転送を無くし、信頼性の高い入出力データの転送を可能にしたデータ転送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るデータ転送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るデータ転送装置の動作を主メモリ上に展開して示した動作概念図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るデータ転送装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来のデータ転送装置の動作の流れを示す図である。
【図5】従来のデータ転送装置の動作を主メモリ上に展開して示した動作概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0018】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係るデータ転送装置の構成を示すブロック図であり、データ転送装置として、DCSのプロセッサモジュール10を例示している。図1によれば、プロセッサモジュール10は、プロセッサ11と、主メモリ12と、IOコプロ回路13と、IO通信コントローラ14と、DMAC15とが、アドレス、データ、コントロールのためのラインが複数本で構成されるCPUバス16(内部バス)経由で接続され、構成される。また、IO通信コントローラ14には、更に、IOバス17(入出力バス)経由で、複数の入出力モジュール18a〜18n(IOM#1〜IOM#n)が接続される。
【0019】
プロセッサ11は、MPU11a、11bがペア構成になっており、ペアのMPU11a、11bがそれぞれ演算を実行し、照合器11cにより、双方の演算結果を常に照合して、結果が正しいか否かを判定しており、ハードウェア故障や一過性エラーによる演算ミスを検出できる仕組みになっている。IOコプロ回路13は、従来、プロセッサ11が実行していた入出力通信処理機能を担う入出力処理装置であり、この場合、プロセッサ11は、入出力処理で浪費していた処理能力を本来の演算制御に集中させることができる。
【0020】
主メモリ12の所定の領域(作業領域)に割り当てられ記憶される入出力データ(IOMパケット)は、例えば、図2にそのデータ構造の一例が示されるように、スケジューリングテーブル12aに記憶されるポインタを含むアドレスデータと、入出力データバッファ12bに記憶される転送データとからなる。
【0021】
スケジューリングテーブル12aは、入出力モジュール18a〜18nの定周期アクセスを要求するために確保されるテーブルであり、プロセッサ11によって主メモリ12の所定の領域に割り当てられる。スケジューリングテーブル12aには、次にアクセスされるテーブルへのポインタと、入出力データバッファポインタを含むアドレス情報が設定される他に、先頭アドレス位置に、読み出したデータが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)と、任意の位置に、ポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)とが設定される。また、入出力データバッファ12bには、入出力データバッファポインタが指す入出力データバッファ毎に入出力データが設定される他に、その先頭アドレス位置に、読み出したデータが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)と、任意の位置に、ポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)とが設定される。
【0022】
なお、上記したマークとIDは、入出力データの転送に先立ち、プロセッサ11により生成される。また、ここで、生成される情報を、マークとIDに区別した理由は、使用目的が異なるためである。すなわち、一方(マーク)は、読み出したデータが目的のデータであること、他方(ID)は、ポインタが所望の位置にあることを確認するために使用されるものである。このため、マークとIDによらず、上記の目的のために使用されるデータであればその種類は問わない。
【0023】
IOコプロ回路13は、プロセッサ11により生成され、主メモリ12の所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブル12aに記憶されたポインタが示す入出力データバッファ12bの入出力データを読み出し、当該読み出したデータを、プロセッサ11にIOバス17(入出力バス)経由で接続される入出力モジュール18a〜18nへデータ転送する入出力処理装置である。
【0024】
IOコプロ回路13は、データ転送に先立ち、スケジューリングテーブル12aの先頭位置に予め設定された、読み出したデータが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)を照合し、更に、ポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)を照合し、共に一致した場合にデータ転送を許可する、例えば、MPUで構成される制御部130を内蔵する。制御部130は、更に、マーク、ID照合の結果、両方の一致が確認されると、CPUバス16経由で接続されるDMAC15に対し、転送元の主メモリ12のアドレスと、転送先の入出力モジュール18a〜18nのアドレスと、入出力データの転送量とからなるパラメータを設定する。
【0025】
IO通信コントローラ14は、プロセッサ11と、IOバス17を介して接続される入出力モジュール18a〜18nとの間で通信を行う入出力コントローラである。
【0026】
DMAC15は、上記したIOコプロ回路13の制御部130によるマーク、ID照合の結果、両方の一致が確認されると、制御部130により、転送元の主メモリ12のアドレスと、転送先の入出力モジュール18a〜18nのアドレスと、転送される入出力データの転送量とからなる、プロセッサ11によって生成されるパラメータが設定され、主メモリ12とIO通信コントローラ14間でダイレクトメモリアクセス転送を行う。DMAC15は、読み出された入出力データのDMA転送に先立ち、スケジューリングテーブル12aの先頭位置に予め設定された、読み出した転送データが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)と、入出力データバッファ12bの先頭位置に予め設定されたマーク(第1の特定の情報)とを照合し、更に、スケジューリングテーブル12aの任意の位置に予め設定された、ポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)と、入出力データバッファ12bの任意の位置に予め設定されたID(第2の特定の情報)とを照合し、共に一致した場合にのみ先に受信したパラメータにしたがうDMA転送を開始する。
【0027】
入出力モジュール18a〜18nは、IO通信コントローラ14にIOバス17経由で接続されるプロセス入出力装置であり、プロセッサ11との通信を行うバスインタフェースモジュール、各種プロセス入出力信号を制御する入出力モジュール等、複数のモジュールによって構成される。
【0028】
(実施形態の動作)
以下、図2に示す動作概念図、および図3に示すフローチャートを参照しながら、図1に示す本実施形態に係るデータ転送装置の動作について詳細に説明する。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態に係るデータ転送装置は、プロセッサ11が、主メモリ12からIO通信コントローラ14を介した入出力モジュール18a〜18nへのデータ転送に先立ち、マーク(第1の特定の情報)とID(第2の特定の情報)を生成し、主メモリ12の所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bに記憶する。ここでマークは、スケジューリングテーブル12a、入出力データバッファ12b共に、先頭位置に、IDは任意の位置にそれぞれ割り当てられ記憶される。
【0030】
そして、IOコプロ回路13が、スケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bに記憶されたマークを照合することにより、読み出したデータ(スケジューリングテーブルに記憶されたポインタが示す入出力データバッファのデータ)が目的のデータであることの正当性を判定する。また、スケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bの任意のアドレス位置に記憶されたIDを照合することで、ポインタが所望の位置にあることを確認する。そして、DMAC15が、スケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bに記憶されたマークを照合することにより、読み出したデータ(スケジューリングテーブルに記憶されたポインタが示す入出力データバッファのデータ)が目的のデータであることの正当性を判定する。そして、スケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bの任意のアドレス位置に記憶されたIDを照合することで、ポインタが所望の位置にあることを確認してIO通信コントローラ14へのDMA転送を許可し、入出力データの信頼性を確保するものである。
【0031】
具体的な動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、プロセッサ11は転送データ(IOMパケット)を生成し(ステップS101)、主メモリ12の作業領域に割り当てたスケジューリンクテーブル102a、入出力データバッファ102bにその該当データを記憶する(ステップS102)。このとき、マーク、IDも生成して所定の領域に記憶する。これらデータはECC付きで記憶される。
【0032】
続いて、IOコプロ回路13(制御部130)は、主メモリ12に記憶されたスケジューリングテーブル12aや入出力データバッファ12bへのポインタを内蔵のRAMに読み込む(ステップS103)。続いて制御部130は、読み込んだポインタが示す入出力データが、正しいデータであるか否かを確認するために、スケジューリングテーブル102aと入出力データバッファ102bのそれぞれの先頭位置に記憶されたマークを照合する(ステップS104)。また、スケジューリングテーブル102aと入出力データバッファ102bのそれぞれの任意の位置に記憶されたIDを照合する(ステップS105)。これら照合の結果、マーク、ID共に一致すると(ステップS106“YES”)、制御部130は、DMAC15に対し、プロセッサ11により生成される、転送元(主メモリ12)と転送先(IO通信コントローラ14に接続される入出力モジュール18a〜18n)のアドレスと、データ量を示すデータとからなるパラメータを設定し、DMAC15にDMA転送の起動を要求する信号を出力する(ステップS107)。照合の結果、マークまたはIDのいずれか一つでも不一致の場合(ステップS106“NO”)、DMA転送の起動を要求する信号は出力されない。
【0033】
DMAC15は、DMA転送に先立ち、スケジューリングテーブル102aと入出力データバッファ102bのそれぞれの先頭位置に記憶されたマークを照合して転送データが正しいデータであることを判定する(ステップS108)。続いて、スケジューリングテーブル102aと入出力データバッファ102bのそれぞれの任意の領域に記憶されたIDを照合し(ステップS109)、ポインタが正しい位置を示すデータであるか否かを判定する。照合の結果、マーク、ID共に一致すると(ステップS110“YES”)、主メモリ12からIO通信コントローラ14へのDMA転送が許可され、DMA転送が開始される(ステップS111)。照合の結果、マークまたはIDのいずれかが不一致と判定されれば(ステップS110“NO”)、誤った入出力データであるとしてDMA転送は禁止される。
【0034】
このように、IOコプロ回路13(制御部130)とDMAC15の両方で二重に入出力データの照合を行なうことで、仮に、マークやIDが一致していないのにIOコプロ回路13が正しいデータであると判定しても、DMAC15でその間違いを発見することができる。したがって、誤った入出力データの転送を回避することができる。このため、マークとIDの両方を照合し、さらに、IOコプロ回路13とDMAC15で二重に入出力データの正当性を判定することで、誤ったデータの送信を防ぐことができ、データの信頼性を確保することができる。また、これにより、例え、主メモリ12にECC機能が付与されていなくてもデータの誤りを検出でき、誤送信は回避されるため、簡易的にデータの信頼性を上げることが可能となる。
【0035】
(実施形態の効果)
本実施形態に係るデータ転送装置(プロセッサモジュール10)によれば、IOコプロ回路13が内蔵する制御部130は、主メモリ12上の所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブル12aと入出力データバッファ12bの両方に記憶された、転送データが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)、またはポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)に不一致が発生した場合、その入出力データの転送を禁止する。このため、スケジューリングテーブル12aや入出力データバッファ12bからデータを読みこむ際に一過性の入出力エラーが発生しても誤った入出力データの送信は行なわれず、したがって、信頼性の高いデータ転送が可能になる。
【0036】
また、本実施形態に係るデータ転送装置(プロセッサモジュール10)によれば、プロセッサ11が、転送データが目的のデータであることを示すマーク(第1の特定の情報)と、ポインタが所望の位置にあることを示すID(第2の特定の情報)を生成し、主メモリ12の所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブルと入出力データバッファの両方に予め記憶しておき、その照合を、IOコプロ回路13とDMAC15で二重に行なうことにより、一層、データの信頼性を確保することができる。
【0037】
仮に、入出力エラーが発生し、照合の結果、スケジューリングテーブルや入出力データバッファに記憶されたマークまたはIDが不一致の場合、入出力データは主メモリ12からIO通信コントローラ14経由で入出力モジュール18a〜18nへ転送されることはない。したがって、入出力データの誤転送を防止することが出来、より一層信頼性の高いデータ転送が可能になる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0039】
10・プロセッサモジュール、11・・プロセッサ、12・・主メモリ、12a・・スケジューリングテーブル、12b・・入出力データバッファ、13・・IOコプロ回路(入出力処理装置)、14・・IO通信コントローラ、15・・DMAコントローラ(DMAC)、16・・内部バス(CPUバス)、17・・IOバス(入出力バス)、18(18a〜18n)・・入出力モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサにより生成され、主メモリの所定の領域に割り当てられるスケジューリングテーブルに記憶されたポインタが示す入出力データバッファの転送データを読み出し、前記読み出した転送データを、前記プロセッサに入出力バス経由で接続される入出力モジュールへ転送するデータ転送装置であって、
前記転送に先立ち、
前記スケジューリングテーブルの先頭位置に予め設定された、前記読み出した転送データが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、前記入出力データバッファの先頭位置に予め設定された前記第1の特定の情報とを照合し、
更に、前記スケジューリングテーブルの任意の位置に予め設定された、前記ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報と、前記入出力データバッファの任意の位置に予め設定された前記第2の特定の情報とを照合し、
共に一致した場合に前記転送を許可する制御部、
を有することを特徴とするデータ転送装置。
【請求項2】
前記プロセッサが有する内部バスにDMAコントローラが接続され、
前記制御部は、
前記第1の情報を照合した結果、一致が確認されると、前記DMAコントローラに対し、転送元になる前記主メモリのアドレスと、転送先になる前記入出力モジュールのアドレスと、前記転送される入出力データの転送量とからなる、前記プロセッサにより生成されるパラメータを設定し、
前記パラメータが設定された前記DMAコントローラは、
前記読み出された転送データのDMA転送に先立ち、
前記スケジューリングテーブルの先頭位置に予め設定された、前記読み出した転送データが目的のデータであることを示す第1の特定の情報と、前記入出力データバッファの先頭位置に予め設定された前記第1の特定の情報とを照合し、
更に、前記スケジューリングテーブルの任意の位置に予め設定された、前記ポインタが所望の位置にあることを示す第2の特定の情報と、前記入出力データバッファの任意の位置に予め設定された前記第2の特定の情報とを照合し、
共に一致した場合に、前記パラメータにしたがうDMA転送を開始することを特徴とする請求項1記載のデータ転送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25576(P2013−25576A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159971(P2011−159971)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】