説明

データ送信装置及びデータ送信方法及び測位装置

【課題】時間の経過と共に更新が必要な測位の補正データについて、データ送信量の低減と、より新しい補正データの提供とを両立させ、提供する補正データの精度を向上させる装置を提供する。
【解決手段】データ送信部は、それぞれの測位補強情報を伝送周期10秒で伝送する。第1計算部は、データ送信部により所定の順序に従って伝送中の測位補強情報31−1の伝送周期10秒の間に、基準点固有誤差を新たに計算する。第2計算部は、伝送中の測位補強情報31−1の伝送周期10秒の間に、それぞれの測位補強情報41〜43を新たに計算された基準点固有誤差に基づいて新たに生成する。データ送信部は、新たに生成された測位補強情報41〜43のうちの一つの測位補強情報42−1を所定の順序に従って伝送中の測位補強情報31−1の次に配信装置に伝送すると共に、所定の順序を周期的に繰り返しながら、測位補強情報を順次に前記配信装置に伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位に使用する補正データを送信するデータ送信装置及びデータ送信方法及び測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、位置を測位する場合の測位位置の補正のためには、測位装置に向けて補正データと観測データとを送信していた。このため、従来のFKPで日本全国をカバーする補正データを送信しようとすると、送信するデータ量が1〜2Mbps程度と多かった。また、このデータを受信する測位装置側には、このデータ量を処理する回路が必要であった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−315084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、時間の経過と共に更新が必要な測位の補正データについて、補正データのデータ送信量の低減と、より新しい補正データの提供とを両立させることを目的とする。また、提供する補正データの精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のデータ送信装置は、
測位信号を送信する人工衛星から前記測位信号を受信して所定の情報を出力する複数の電子基準点のそれぞれから、前記所定の情報を電子基準点情報として収集する収集部と、
前記収集部の収集した前記電子基準点情報を使用することにより、前記電子基準点の位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記電子基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差を前記複数の電子基準点のそれぞれについて計算する第1計算部と、
所定の地域がN個(Nは2以上の整数)に分割された各地域のデータを示すN個の地域データの各地域データであって前記地域の中の位置を示す複数の位置表示点が設定されている各地域データを対象として、前記複数の位置表示点のそれぞれに対して、前記位置表示点の示す位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記位置表示点のそれぞれに固有な誤差量を示す表示点固有誤差データを前記第1計算部が計算した前記基準点固有誤差に基づいて計算し、計算された表示点固有誤差データをそれぞれの位置表示点に関連付けることにより、表示点固有誤差データが関連付けられたそれぞれの位置表示点を含む測位補強情報を生成する第2計算部と、
前記第2計算部によって生成されたN個の測位補強情報を前記N個からできるN!通りの順列のうちの所定の順序で、順次に配信装置に伝送するデータ送信部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、送信する補正データの精度を向上するとともに、送信する補正データのデータ量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1における測位用補正データ配信システムの構成を示す。
【図2】実施の形態1における各誤差要因のレンジ幅を示す。
【図3】実施の形態1における各誤差要因毎のデータサイズを示す。
【図4】実施の形態1における地域データの配置例を示す。
【図5】実施の形態1におけるデータ送信装置の構成を示す。
【図6】実施の形態1におけるデータ送信装置の動作を示す。
【図7】実施の形態1における衛星の軌道誤差を示す。
【図8】実施の形態1における各グリッドの電離層遅延誤差を求める過程を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1における地域データの配置例を示す。
【図10】実施の形態1における地域データ内のグリッド配置例を示す。
【図11】実施の形態1における電子基準点とグリッドの関係を示す。
【図12】実施の形態1における関数モデルと統計モデルを使った2次元の場合の補間の概念を示す。
【図13】実施の形態1における電離層遅延誤差δIとグリッド電離層遅延誤差δIとの関係を示す。
【図14】実施の形態1における電離層データ配信フォーマットを示す。
【図15】実施の形態1における対流圏データ配信フォーマットを示す。
【図16】実施の形態1における各グリッドの対流圏遅延誤差を求める過程を示すフローチャートである。
【図17】実施の形態1における衛星軌道誤差モデルを示す。
【図18】実施の形態1におけるグリッド対流圏遅延誤差を示す。
【図19】実施の形態1におけるデータ送信方法の発明の工程を示すフローチャートである。
【図20】実施の形態2におけるデータ送信装置101の動作概要を説明する図。
【図21】実施の形態2におけるデータ送信装置101によって配信される測位補強情報31−1等を示す図。
【図22】実施の形態2におけるデータ送信装置101による測位補強データ31−1等の伝送方式を説明する図。
【図23】図22の内容を異なる表現で説明する図。
【図24】実施の形態2における日本の領域を6つのブロックに分割した場合を示す図。
【図25】実施の形態2における測位装置201の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図19を使用して本実施の形態を説明する。本実施の形態は、測位に使用する「補正データ」を配信する測位用補正データ配信システムに関する。「補正データ」とは、後述のように、GPS衛星の軌道誤差δO、GPS衛星の衛星クロック誤差δt、GPS衛星の送信する測位情報(L1波、L2波などである。測位情報を測位信号という場合もある。)の電離層遅延δI及び対流圏遅延δTを含む。
【0009】
図1は、本実施の形態1に係る測位用補正データ配信システム500の構成を示す。測位用補正データ配信システム500は、測位情報1を送信するGPS(Global Positioning System)衛星300a・・・300nと、測位情報1を受信し電子基準点情報2を出力する電子基準点10a・・・10nと、電子基準点情報2を収集して処理するセンター局100(データ送信装置101)と、センター局100からの補正データ3を中継する準天頂衛星400と、GPS衛星300a等の測位情報1及び準天頂衛星400の配信する補正データ3を受信して位置を測位する測位装置201とを備える。
【0010】
センター局100は、図に示すようにデータ送信装置101を備える。センター局100における処理は、データ送信装置101が実行する。また、GPS衛星は、GPS衛星300a,300nの2機のみ図示しているが、例示であり2機にかぎらない。通常、4機以上を想定する。また、電子基準点は、電子基準点10a,10nの2点を図示しているが、例示であり2点にかぎらない。電子基準点は、例えば日本各地に約1000点程度設置されているものとする。
【0011】
測位用補正データ配信システム500の特徴の一つは、後述のように、データ送信装置101の送信する補正データが、従来1Mbps以上必要であったのに対して40kbps程度のデータ量となる点にある。これはデータ送信装置101が「補正データ」のみを送信し、更新間隔の短くデータ容量の大きな観測データを送信しないこと、及び誤差要因をそれぞれのダイナミックレンジに最適化すること、さらに誤差要因ごとのダイナミクスを考慮することにより更新周期を最適化すること、送信するべき「補正データ」に対して地域データとしてブロック化して送ることにより日本全国に渡り無駄なく送信すること等により、送信するべき「補正データ」のデータ形式を変更することによる。
【0012】
また、地域データとしてブロック化することの利点は、データ量削減のほか、運用後においても、地域データのサイズ、位置、解像度を柔軟に変更できる、ユーザは自分の位置に合致した地域データのみを受信すればよく、信頼性が向上するなどが考えられる。図2に各誤差要因のレンジ幅を示す。図3に各誤差要因毎のデータサイズを示す。図4に各誤差要因毎の更新周期とそれに基づくデータ転送容量を示す。これらの表から、従来の方式では、日本全国のデータを配信するのに、1Mbps以上のデータ通信容量が必要であったのが、データを誤差要因に分解することにより、40Kbpsになり、さらに、各誤差要因に最適な更新周期を適応することにより、2Kbps以下にまでデータ量を圧縮できる。また、電離層と対流圏は関数化が難しいため、グリッド化することが効率的である。このとき、グリッドの矩形のまとまりを複数個想定し、サイズを可変長にしたグリッドマトリックスを日本の形状に重なり合うように合わせることにより、グリッド点数が削減できデータサイズを小さくすることが可能となる。受信側の複合を考えた場合、矩形にすることが最も効率がよく、さらに柔軟性と効率化を考えたとき、グリッドの間隔とサイズをグリッドマトリックス毎に付与する方法を提案する。
【0013】
図1を参照して、測位用補正データ配信システム500の概要を説明する。
(1)GPS衛星300a・・・300n等は測位情報1を送信する。
(2)電子基準点10a・・・10n等は、この測位情報1を受信して所定の情報を電子基準点情報2として出力する。所定の情報は、電子基準点とGPS衛星との擬似距離、ドップラ周波数、及び搬送波位相などを含む。
(3)センター局100の備えるデータ送信装置101は、電子基準点10a等のそれぞれが出力する電子基準点情報2を収集し、収集した電子基準点情報2に基づいて補正データを作成する。そして作成した補正データを、例えば準天頂衛星400を介して配信する。なお、準天頂衛星400を介して補正データを配信するのは一例である。他の衛星を介して配信しても構わない。また、衛星によらず地上波として配信しても構わない。また、インターネットなどのネットワークを介して配信しても構わない。
【0014】
図5は、センター局100の備えるデータ送信装置101の構成を示す。図に示すように、データ送信装置101は、源泉データ収集処理部102(収集部)、第1計算部103、第2計算部104、地域データ記憶部105、データ送信部106、電子基準点データ記憶部107とを備える。また、第2計算部104は、補間処理部1041とデータ形式変更部1042とを備える。
【0015】
(1)源泉データ収集処理部102は、電子基準点情報2を収集し処理する。
(2)第1計算部103は、電子基準点情報2と電子基準点データ記憶部107が記憶する電子基準点の座標を表したデータを使用して、後述の電離層遅延量(電離層遅延誤差という場合もある)や対流圏遅延量(対流圏遅延誤差という場合もある)などの補正データを計算する。
(3)補間処理部1041は、地域データ記憶部105が記憶する所定の地域内に複数のグリッドを設定し、第1計算部103が計算した電離層遅延量や対流圏遅延量に基づき、設定した複数のグリッドのそれぞれに固有な電離層遅延量や対流圏遅延量を求める。
(4)データ形式変更部1042は、第2計算部104が求めたグリッドごとの電離層遅延量や対流圏遅延量のデータ形式を変更する。特に、日本の形状は北東から南西に細長いため、グリッドで構成される矩形で全エリアをカバーするには冗長で、多くのグリッドは意味のない海上の点となる。そこで、複数の地域データにより、日本の形状を効率よくカバーするように配置する。さらに、ユーザにどの地域データがユーザ位置に対応するデータかをリアルタイムに判別し、ユーザ側で測位計算に使えるようにするため、各地域データの基準点となるグリッドの位置と地域データのサイズ、グリッドの間隔情報を付与する。
(5)地域データ記憶部105は、所定の地域を示す地域データを記憶する。「地域データ」とは、例えば、前記所定の地域内の任意の場所を座標で表したデータである。
(6)データ送信部106は、データ形式変更部1042がデータ形式を変更したグリッドごとの電離層遅延量や対流圏遅延量を含むデータを測位に使用する補正データとして配信(送信)する。
(7)電子基準点データ記憶部107は、電子基準点の座標を表したデータを記憶する。
【0016】
図6は、データ送信装置101の動作を示すフローチャートである。図6を参照して、データ送信装置101の動作の概略を説明する。
【0017】
S11において、源泉データ収集処理部102が複数の電子基準点のそれぞれから電子基準点情報2を収集する。
【0018】
S12において、第1計算部103は、源泉データ収集処理部102が収集した電子基準点情報2を使用することにより、
(1)GPS衛星の軌道誤差δO、
(2)GPS衛星の衛星クロック誤差δt、
(3)GPS衛星の送信する測位情報1の電離層遅延(Ionospheric delay)による電離層遅延誤差δI、
(4)GPS衛星の送信する測位情報1の対流圏遅延(Tropospheric delay)による対流圏遅延誤差δTを計算する。
ここで、(1)GPS衛星の軌道誤差δOと、(2)GPS衛星のクロック誤差δtとは、それぞれの電子基準点の位置には依存しない、個々のGPS衛星に固有の誤差である。一方、電離層遅延誤差δIと対流圏遅延誤差δTとは、それぞれの電子基準点の位置に依存する電子基準点に固有な基準点固有誤差である。それぞれの電子基準点を「添え字i」で表現するとすれば、各電子基準点における電離層遅延誤差δIと対流圏遅延誤差δTとは、「電離層遅延誤差δI」、「対流圏遅延誤差δT」と表すことができる。第1計算部103は、それぞれの電子基準点iごとに「電離層遅延誤差δI」、及び「対流圏遅延誤差δT」を計算する。「電離層遅延誤差δI」は、電子基準点iの位置を測位する場合の測位精度に影響する「電離層遅延による誤差」である。同様に「対流圏遅延誤差δT」は、電子基準点iの位置を測位する場合の測位精度に影響する「対流圏遅延による誤差」である。なお、第1計算部103の処理の詳細は後述する。
【0019】
S13において、補間処理部1041は、後述の図9で説明するが、地域データ記憶部105が記憶する「地域データ」を読み込み、「地域データ」が示す地域中に複数のグリッド(位置表示点の一例)を設定する。地域データは、複数エリア分用意し、日本の形状を効率よくカバーするように配置する。各地域データは、複数のグリッドで矩形の形状を構成する。地位データには、基準となるグリッドの位置座標と地域データの大きさを規定するための緯度/経度方向のサイズ、グリッドの間隔を付与情報として持つ。そして、電子基準点iごとの「電離層遅延誤差δI」に基づいて、設定した各グリッドg(位置表示点)ごとに「グリッド電離層遅延誤差δI」(表示点固有誤差データの一例)を計算する。「グリッド電離層遅延誤差δI」は、そのグリッドgの示す位置を測位する場合の測位精度に影響する「電離層遅延による誤差」であり、そのグリッドgに固有の誤差である。第2計算部104は、計算した複数の「グリッド電離層遅延誤差δI」を、送信するべき電離層遅延送信対象データ(送信対象データの一例)として出力する。同様に、補間処理部1041は、電子基準点iごとの「対流圏遅延誤差δT」に基づいて、設定した各グリッドgごとに「グリッド対流圏遅延誤差δT」(表示点固有誤差データの一例)を計算する。「グリッド対流圏遅延誤差δT」は、そのグリッドgの示す位置を測位する場合の測位精度に影響する「対流圏遅延による誤差」であり、そのグリッドgに固有の誤差である。補間処理部1041は、計算した複数の「グリッド対流圏遅延誤差δT」を、送信するべき対流圏遅延送信対象データ(送信対象データの一例)として出力する。これらのグリッドの設定及び「グリッド電離層遅延誤差δI」等については、さらに具体例により後述する。
【0020】
S14において、データ形式変更部1042は、入力した電離層遅延送信対象データに含まれる少なくともいずれかの「グリッド電離層遅延誤差δI」のデータ形式を変更する。データ形式の変更とは、例えば後述のように補間処理部1041が出力する電離層遅延送信対象データを入力し、各地域データに対応する電離層遅延送信対象データ毎に、基準となるグリッド座標値と地域データのサイズ、グリッド間隔を付与するなどのデータ形式に変更する。対流圏遅延送信対象データに関しても同様の処理を行う。また、データ形式の変更の第2の例として、「グリッド電離層遅延誤差δI」を各地域データの基準となるグリッドの「グリッド電離層遅延誤差δI」に対して差分表現するような場合である。同様に、データ形式変更部1042は、補間処理部1041が出力する対流圏遅延送信対象データを入力し、入力した対流圏遅延送信対象データに含まれる少なくともいずれかの「グリッド対流圏遅延誤差δT」のデータ形式を変更する。データ形式の変更は、「グリッド電離層遅延誤差δI」の場合と同様である。
【0021】
S15において、データ送信部106は、データ形式変更部1042によりデータ形式が変更された「グリッド電離層遅延誤差δI」を含む電離層遅延送信対象データと、データ形式変更部1042によりデータ形式が変更された「グリッド対流圏遅延誤差δT」を含む対流圏遅延送信対象データとを、「補正データ」の一部として送信する。
【0022】
次に、図6のS12の説明で述べた(1)GPS衛星の軌道誤差δO、(2)GPS衛星の衛星クロック誤差δt、(3)電離層遅延誤差δI、(4)対流圏遅延誤差δTについて順に説明する。
【0023】
まず「GPS衛星の軌道誤差δO」について説明する。図7を参照して軌道誤差δOについて説明する。図7は軌道誤差を説明する図である。第1計算部103は、1つのGPS衛星の軌道誤差を、軌道進行方向(AT)、軌道垂直方向(XT)、軌道半径方向(R)に分割する。従って、1つのGPS衛星毎に3パラメータの軌道誤差(δAT,δXT,δR)となる。なお更新周期はT秒とする。
【0024】
次に、「衛星クロック誤差δt」について説明する。第1計算部103は、「衛星クロック誤差δt」を、以下の2次多項式δtとして求める。データ送信装置101は、「衛星クロック誤差δt」として、以下の2次多項式δtにおける(af0、af1、af2)の3つの係数を配信する。従って、1つGPS衛星毎に、3パラメータとなる。
δt=af0+af1・(t−toc)+af2・(t−toc+Δt
ここで、
δt:satellite clock offset,
t:GPS t seconds,
oc:reference epoch,
f0:clock offset(second),
f1:fractional frequency offset(second/second),
f2:fractional frequency drift(second/second),
Δtr:relativistic correction,
【0025】
次に図8〜図14を参照して「電離層遅延誤差」について説明する。図8は、各グリッドにおける電離層遅延誤差の計算過程を示すフローチャートである。
(1)モデル化
S21において、第1計算部103は電子基準点情報を使用して電子基準点iごとの「電離層遅延誤差δI」を計算する。また、第1計算部103は、電子基準点情報を使用して次に示す関数Ifunctionを求める。電離層誤差は、次式のように関数モデルと統計モデルの2段階で表すことができる。
(2)モデル
【0026】
【数1】

【0027】
第1計算部103は、電離層の位置による変動状態を表現するために、関数モデルを使用する。関数モデルは、電離層レンジは30m、精度は1m以内とし、緯度/経度をパラメータとして、電離層遅延量を多項式で表現する。第1計算部103は、電子基準点情報を使用することにより、次に示す関数Ifunctionを求める。さらに、Istochasticを、時間的変動との整合性を維持するために、統計的条件として設定する。
【0028】
【数2】

【0029】
関数Ifunctionは、緯度(y)方向に4次、経度(x)方向に3次の関数(sprine関数、あるいは、spherical harmonic function)である。後述のようにデータ送信部106は、関数Ifunctionの定数項、クロス項を入れて、「α0,0〜α3,4」の20のパラメータを送信する。「α0,0〜α3,4」の20のパラメータは、関数Ifunctionを特定するための所定のパラメータである。第1計算部103は所定の期間ごとに「α0,0〜α3,4」の値を求め更新する。
関数モデルは、空間的な連続性を記述するのに対して、統計モデルIstochasticは時間的ダイナミクスを記述する。電離層遅延における統計的条件としては、一次マルコフ過程(前エポックからの時間間隔tと時定数τ)としてモデル化する。
【0030】
【数3】

【0031】
以上のように、電子基準点における空間的、時間的な条件により電離層遅延量をモデル化しリアルタイムに推定する。
【0032】
(2)グリッドの設定
S22において、第1計算部103において推定した電子基準点における電離層遅延量を、第2計算部104では、グリッドを日本における形状に効率よく配置した地域データ内のグリッドに変換する。図9に地域データの配置例を示す。図10は地域データ内のグリッド配置例、図11は電子基準点とグリッドの関係を示す。なお、地域データ内のグリッド配置は、エリアを重ねて配置する。グリッド変換は、関数モデルを使った座標値による変換と、グリッドの周囲の電子基準点の統計モデルを使った位置による内挿を行う。図12に関数モデルと統計モデルを使った2次元の場合の補間の概念を示す。
【0033】
(3)「グリッド電離層遅延誤差δI」の計算
さらにS22において、第2計算部104は、設定したグリッドのそれぞれにつき、第1計算部103が電子基準点iごとに計算(図6のS12)した「電離層遅延誤差δI」(基準点固有誤差)に基づき、「グリッド電離層遅延誤差δI」(表示点固有誤差データ)を計算する。これにより、グリッドgごとの「グリッド電離層遅延誤差δI」が決まる。図13は、電子基準点iごとの「電離層遅延誤差δI」とグリッドgごとの「グリッド電離層遅延誤差δI」との関係を示す概念図である。三角形は電子基準点を表し、三角形における矢印は「電離層遅延誤差δI」をあらわす。また、白丸はグリッドを表し、白丸における矢印は「グリッド電離層遅延誤差δI」を表す。第1計算部103が三角形における矢印(「電離層遅延誤差δI」)を算出し、第2計算部104がそれぞれの三角形における矢印(「電離層遅延誤差δI」)に基づいて、白丸(グリッド)における矢印(「グリッド電離層遅延誤差δI」)を算出する。
まず、関数モデルにより、対象となるグリッド位置における電離層遅延量を計算する。ついで、統計モデルにより、グリッドの周囲の電子基準点から線形補間によりグリッドの位置における統計モデルに相当する電離層遅延量を求める。この処理を、地域データごとに全てのグリッドについて実行する。
【0034】
(4)S23において、求められたグリッドにおける電離層遅延量について、各地域データごとに、地域データの基準となるグリッドの電離層遅延量からの差分を計算する。地域データのなかの各グリッドの電離層遅延量との差分を各グリッドの値とする。
【0035】
(5)さらに、S24において、データ形式変更部1042が、グリッド電離層遅延誤差δIのデータ形式を変更する。図14に地域データにおける電離層データ配信フォーマット例を示す。地域データ毎に基準となるグリッドの座標と、グリッドの間隔を付与し、あらかじめ定められた順番でグリッドの電離層遅延量がそれに続く。
【0036】
次に図15〜図18を使用して対流圏遅延誤差δTについて説明する。図15は、地域データにおける対流圏データ配信フォーマット例を示す。図16は、各グリッドにおける対流圏遅延誤差を求める過程を示すフローチャートである。図17は、対流圏遅延誤差δTを説明するための衛星軌道誤差を示す図である。図18は、グリッドの対流圏遅延誤差を示す図である。図16のフローチャートを参照して説明する。対流圏遅延誤差を電離層遅延誤差と同様に、50kmメッシュのグリッドで配信する。対流圏遅延誤差のレンジは2m、解像度は0.2cmとする。更新周期はt秒とする。
(1)S31において、第1計算部103は電子基準点情報を使用して電子基準点iごとの「対流圏遅延誤差δT」を計算する。
(2)グリッドの設定.
S32において、第2計算部104はグリッド(位置表示点の一例)を設定する。
(3)「グリッド対流圏遅延誤差δT」の計算.
さらにS32において、第2計算部104は、設定したグリッドのそれぞれにつき、第1計算部103が電子基準点iごとに計算した「対流圏延誤差δT」(基準点固有誤差)に基づき、「グリッド対流圏遅延誤差δT」(表示点固有誤差データ)を計算する。これにより、グリッドgごとの「グリッド対流圏遅延誤差δT」が決まる。図18は、グリッドについて計算する「グリッド対流圏遅延誤差δT」を示している。図18に示すように対流圏遅延誤差はグリッド位置により変動するが、変動量は通常電離層遅延誤差に比べて少ない。
(4)S33において、データ形式変更部1042が、「グリッド対流圏遅延誤差δT」のデータ形式を変更する。このデータ変更は、電離層遅延の場合と同様であるが、対流圏遅延の場合は、第2計算部104が計算した「グリッド対流圏遅延誤差δT」である。そして第2計算部104は、データ送信部106を介して、図15のフォーマットで「グリッド対流圏遅延誤差δT」として送信する。
【0037】
データ送信装置101は、以上から求めた軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTを補正データとして送信する。
【0038】
(拡張カルマンフィルタによる実時間推定)
次に第1計算部103による処理内容の詳細について以下に説明する。衛星軌道、衛星クロック、電離層遅延、対流圏遅延等の各変数は、以下の拡張カルマンフィルタを用いて実時間推定する。
【0039】
各状態量のモデルを以下に示す。
[搬送波位相]
Φは、観測距離であり、既知量である。
[幾何学的距離]
は衛星iと基地局k間の真の距離で次式で表され、衛星位置と基準位置が既知であることから既知量である。
【0040】
【数4】

【0041】
[アンビギュイティ]
アンビギュイティのダイナミクスは、定数としてモデル化する。
【0042】
【数5】

【0043】
[対流圏モデル]
対流圏モデルは、functionモデルと統計モデルの積で表す。
(1)functionモデル
functionモデルとしてホップフィールドを採用する。
【0044】
【数6】

【0045】
(2)統計モデル
統計モデルに関するダイナミックスは、ガウスマルコフモデルとする。
【0046】
【数7】

【0047】
[衛星軌道誤差]
図17に、衛星軌道誤差モデルを示す。1つの衛星の軌道誤差を軌道進行方向(AT)、軌道垂直方向(XT)、軌道半径方向(R)に、速度誤差を軌道進行方向(AT)、軌道垂直方向(XT)、軌道半径方向(R)に分割する。従って、1衛星毎に6パラメータとなる。更新周期はTsとする。
【0048】
【数8】

【0049】
【数9】

【0050】
【数10】

【0051】
[マルチパス]
アンビギュイティのダイナミクスは、ガウスマルコフモデルとする。
【0052】
(1)対象システムの状態方程式の記述
【0053】
【数11】

【0054】
ここで、tは時刻、x(t)は状態変数、f(x(t))は状態遷移関数、ω(t)はシステム雑音である。
状態変数の内容は以下の(a)〜(h)である。
(a)衛星位置・速度:衛星数×6
(b)衛星搭載時計のバイアス・ドリフト・周波数間バイアス・周波数間バイアスドリフト:衛星数×4
(c)衛星信号遅延:衛星数
(d)電離層遅延のFunctionモデルパラメータ+Stochastic項:20+1、
(e)対流圏遅延のStochastic項:1、
(f)地上基準点時計のバイアス・ドリフト・ドリフトレート・周波数間バイアス:基準点数×4、
(g)受信機信号遅延:基準点数
(h)波数不定数:衛星数×基準点数、
【0055】
(2)対象システムの観測方程式の記述
【0056】
【数12】

【0057】
ここで、m(t)は観測量、g(x(t))は観測関数、v(t)は観測雑音である。
観測量の内容は擬似距離、搬送波位相、デルタレンジである。
【0058】
【数13】

【0059】
ここで、記号の説明は以下の通りである。
【0060】
【数14】

【0061】
式(2)を離散値化することとで以下の離散表現が得られる。
【0062】
【数15】

【0063】
(3)時間外挿計算
【0064】
式(1)の状態量のダイナミクスは、線形化のために以下のように定義する。
【0065】
【数16】

【0066】
時間外挿計算のためのシステム状態量の更新は推移行列Φを用いて以下のように表す。
【0067】
【数17】

【0068】
(4)誤差共分散伝播計算
【0069】
【数18】

【0070】
(5)観測更新計算
【0071】
【数19】

【0072】
ここで、Kはカルマンゲインである。観測量計算において、光路差補正、サニャック効果、相対論補正、群遅延補正の4つの補正を考慮する。
カルマンゲインKは以下のように求める。
【0073】
【数20】

【0074】
以上、拡張カルマンフィルタによる実時間推定を示した。
【0075】
次に、図19を用いて方法及びソフトウェアの実施形態を示す。データ送信装置101の源泉データ収集処理部102、第1計算部103、第2計算部104、データ形式変更部1042等の各部が行なう動作は、ハードウェアのみでも実施することができ、ソフトウェアのみでも実施することができ、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせでも実施することができる。また、地域データ記憶部105、電子基準点データ記憶部107は、例えば、磁気記憶装置である。
【0076】
上記のデータ送信装置101の源泉データ収集処理部102、第1計算部103、第2計算部104、データ形式変更部1042、データ送信部106等の構成要素の動作は互いに関連しており、これら各構成要素の一連の動作からデータ送信方法の発明を把握することが可能である。図19はこれら各構成要素の一連の動作から把握したデータ送信方法の発明の工程を示すフローチャートである。
(1)S101は、測位情報1を送信する人工衛星から測位情報1を受信して電子基準点情報2を出力するそれぞれの電子基準点から、電子基準点情報2を収集する工程である。(2)S102は、収集した電子基準点情報2を使用することにより、電子基準点の位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに電子基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差(例えば、電離層遅延誤差、あるいは対流圏遅延誤差)を複数の電子基準点のそれぞれについて計算する工程である。
(3)S103は、地域データに地域の中の位置を示す複数のグリッド(位置表示点)を設定し、設定した複数のグリッドのそれぞれに対して、グリッドの示す位置を測位する場合の測位精度に影響するとともにグリッドのそれぞれに固有な誤差量を示す表示点固有誤差データ(例えば、そのグリッドについての電離層遅延誤差、あるいは対流圏遅延誤差)を複数の電子基準点のそれぞれについて計算した基準点固有誤差に基づいて計算し、複数のグリッドのそれぞれに対して計算した複数の表示点固有誤差データを送信対象データとして出力する工程である。
(3)S104は、出力された送信対象データに含まれる少なくともいずれかの表示点固有誤差データのデータ形式を変更する工程である。例えば、データ形式を差分表示に変更する。
(4)S105は、データ形式が変更された表示点固有誤差データを含む送信対象データを送信する工程である。
【0077】
センター局100のデータ送信装置101が送信する補正データを用いて自己の位置を測位する測位装置201について説明する。図1に示すように、測位装置201は、準天頂衛星400を介して補正データ3(軌道誤差δO、衛星クロック誤差、グリッド電離層遅延誤差δI、グリッド対流圏遅延誤差δT等)を受信する。測位装置201は、この補正データ3と、GPS衛星300a・・・GPS衛星300n等からの測位情報1とにより位置を測位する。補正データ3のうち、グリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTについては、図13に示した各グリッドのデータを受信する。測位装置201は、単独測位による単独測位位置を求め、この単独測位位置に基づいて、受信した各グリッドのうち所定のグリッドに関するグリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTを選択する。そして、選択したグリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTから、測位計算に使用するべき電離層遅延誤差及び対流圏遅延誤差を計算し(グリッド電離層遅延誤差δIとグリッド対流圏遅延誤差δTとを、使用するべき電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差に「変換」する)、これら変換した電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差を使用して測位する。
【0078】
また、図1に示すように、測位装置201は、準天頂衛星400を介して補正データ3(軌道誤差δO、衛星クロック誤差、グリッド電離層遅延誤差δI、グリッド対流圏遅延誤差δT等)を受信する。測位装置201は、この補正データ3と、GPS衛星300a・・・GPS衛星300n等からの測位情報1とにより位置を測位する。補正データ3のうち、グリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTについては、各グリッドのデータを受信する。測位装置201は、単独測位による単独測位位置を求め、この単独測位位置に基づいて、受信した各グリッドのうち所定のグリッドに関するグリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTを選択する。そして、選択したグリッド電離層遅延誤差δI、及びグリッド対流圏遅延誤差δTから、測位計算に使用するべき電離層遅延誤差及び対流圏遅延誤差を計算する(グリッド電離層遅延誤差δIとグリッド対流圏遅延誤差δTとを、使用するべき電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差に「変換」する)。並行して、単独測位による単独測位位置を求め、この単独測位位置に基づいて衛星間の幾何学的距離を求め、電離層、対流圏、衛星クロック誤差、軌道誤差を加算して、単独測位位置における仮想的な観測データ(仮想観測データ)を求める。この仮想的な観測データから、測位装置で観測された観測データとの差分を取り、相対測位を実施し、測位する。
また、上記の変換ための変換器を従来の受信機に付与して、従来の受信機からの単独測位結果から、上記の補正値および仮想的な観測データを生成し、従来の受信機に送ることにより、従来の受信機を用いても測位可能である。
なお、各電子基準点i(i=1,2,3・・・)における対流圏遅延誤差δTは、通常、ある電子基準点iの直上方向に対して決まる誤差であり、人工衛星k(k=1,2,3・・・)によらない誤差である。
一方、電子基準点iにおける電離層遅延誤差δIは、電子基準点iに対して人工衛星kごとに決まる誤差である。したがって、電離層遅延誤差δIは、各人工衛星を示すサフィックスkを用いて電離層遅延誤差δIのように表現することができる。
電子基準点iと、人工衛星(k)及び人工衛星(k+1)に対する電離層遅延誤差を、それδI、δIk+1する。この場合、例えば、電離層遅延誤差δIは、電子基準点iと人工衛星(k)とを結ぶ直線と、地上から350km上空に想定した電離層(ただし、本数値は、電離層モデルで設定するもので、他の数値でもよい)を示す面との交点位置における電離層の影響する電離層遅延誤差を意味し、電離層遅延誤差δIk+1は、電子基準点iと人工衛星(k+1)とを結ぶ直線と、地上から350km上空に想定した電離層を示す面との交点位置における電離層の影響する電離層遅延誤差を意味する。
なお、電子基準点における対流圏遅延誤差δT及び電離層遅延誤差δIとも、電子基準点ごとに決まる誤差であり、電子基準点iに固有の誤差である。
【0079】
以上のように本実施の形態に係るデータ送信装置は、電子基準点のそれぞれについて計算した電離層遅延誤差(あるいは対流圏遅延誤差)に基づき、各グリッドごとの電離層遅延誤差(あるいは対流圏遅延誤差)を計算し送信するので、測位の精度を向上することができる。また、観測データを送信しないので、送信するべきデータ量を低減することができる。
【0080】
以上のように本実施の形態に係るデータ送信装置は、送信するべきデータのデータ形式を変更するデータ形式変更部を備えたので、送信するデータのデータ量を低減することができる。
【0081】
以上のように本実施の形態に係るデータ送信方法は、電子基準点のそれぞれについて計算した電離層遅延誤差(あるいは対流圏遅延誤差)に基づき、各グリッドごとの電離層遅延誤差(あるいは対流圏遅延誤差)を計算し送信するので、測位の精度を向上することができる。また、観測データを送信しないので、送信するべきデータ量を低減することができる。
【0082】
以上のように本実施の形態に係る測位装置は、本実施の形態1に係るデータ送信装置からデータ量が低減された補正データを受信して位置を測位する。このため、より簡単な構成にすることができる。また、本実施の形態に係る測位装置は、各グリッドに関する電離層遅延誤差(あるいは対流圏遅延誤差)に基づき位置を測位するので、精度を向上することができる。
【0083】
以上のように本実施の形態に係るデータ送信装置は、地域データ毎に電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差を分割して送ることにより、グリッドの形状、サイズをシステム構築後の運用段階においても変更およびグリッドの追加、地域データの追加等が可能であり、システムにおける柔軟性を向上することができる。
【0084】
実施の形態2.
次に図20〜図25を参照して実施の形態2を説明する。実施の形態2は、データ送信装置101の送信する地域データ(以下、実施の形態2では測位補強情報ともいう)の伝送方式に関する実施形態である。システム構成及びデータ送信装置101の構成は、実施の形態1と同様である。実施の形態1と異なるのは、データ送信装置101の第2計算部104及びデータ送信部106の動作である。実施の形態2の特徴は以下に示す、「A.データ送信装置101による測位補強情報の伝送方式」、「B.測位補強情報の送信順序」、「C.誤差データの圧縮」、「D.測位装置201」である。
【0085】
図20は、実施の形態2におけるデータ送信装置101の動作概要を説明する図である。破線で囲んだ範囲(S12)は第1計算部103の処理を示している。範囲(S12)は、図6のS12の説明で述べた内容と同じである。すなわち、第1計算部103は、源泉データ収集処理部102が収集した電子基準点情報2を使用することにより、軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTを計算する。
【0086】
一方、図20の破線で囲んだ範囲(S13−1)は、図6の第2計算部104、データ送信部106によるS13〜S15の処理に対応するが、範囲(S13−1)の内容は図6のS13〜S15とは異なる。この範囲(S13−1)が実施の形態1のデータ送信装置101との相違である。この相違を以下に説明する。
【0087】
図21は、実施の形態2のデータ送信装置101によって配信される各ブロックごとの測位補強情報である。
図21は日本の領域が3つのブロック(ブロック1〜ブロック3)に分割されている状態を示している。3つの分割は例示であり、いくつでもよい。各ブッロク1〜3は、実施の形態1の地域データを意味する。データ送信装置101は、各ブロックの測位補強情報を配信する。
【0088】
(測位補強情報)
実施の形態2における「測位補強情報」とは、位置表示点に表示点固有誤差データが関連付けらた状態の実施の形態1の地域データに相当する。
実施の形態2では、単にグリッドの位置情報のみを有するものを地域データと呼び、地域データに対して、第2計算部104によって、電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差、衛星軌道誤差及び衛星時計誤差が対応付けられた後の地域データを「測位補強情報」と呼んでいる。電離層遅延誤差等が対応付けられていない地域データは、例えば地域データ記憶部105に格納されている。第2計算部104は、地域データを地域データ記憶部105から読み込み、電離層遅延誤差等の誤差を対応付ける。
【0089】
(A.データ送信装置101による測位補強情報の伝送方式)
実施の形態2のデータ送信装置101は、高精度測位に使用する測位補強情報31−1等を以下に述べる方式で伝送する。
【0090】
図22は、データ送信装置101による測位補強情報31−1等の伝送方式を説明する図である。また、図23は図22の示す内容をブロックごと、処理対象の誤差ごとに分類して示した図である。
【0091】
まず図22を説明する。横軸方向はデータ送信装置101による処理を示す。縦軸は時間(秒)を示す。<B1処理>はブロック1に対する測位補強情報の生成処理を示す。<B1伝送>はブロック1に対して生成した測位補強情報の伝送処理を示す。
【0092】
以下に図22を参照して実施の形態2のデータ送信装置101の動作を説明する。日本の領域は、図20に示すように3つのブロックに分割されているとする。3つに分割するのは一例であり、いくつに分割しても構わない。
【0093】
図22では左側の時間軸にそって、データ送信部106の伝送周期(T)(この例では10秒)ごとに実際に伝送された測位補強情報31−1等を示した。以下に、伝送周期(10秒)ごとの動作を説明する。
(1)0秒〜10秒:
時間軸における0秒(単に基準にしたにすぎない)〜10秒の間に、第1計算部103は、軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTなどの誤差を計算する。第2計算部104は、第1計算部103の計算結果を用いて測位補強情報を生成する。この場合、第2計算部104は、図22に示すように、並列処理により、ブロック1の測位補強情報31、ブロック2の測位補強情報32、ブロック3の測位補強情報33を同時進行で0秒〜10秒の間に作成する。<B1処理>における測位補強情報31では、「その他1−1」としてブロック1に関する軌道誤差δO、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTが生成され、ブロック1に関する時計1−1として衛星クロック誤差δtが生成される。ここで「1−1」の意味は、最初の「1」はブロック番号を示し、次の「1」は30秒間に3回生成されるうちの何回目(1は1回目)かを示している。<B2処理>及び<B3処理>についても同様に、「その他2−1、時計2−1」、「その他3−1、時計3−1」が生成されるが、その意味は、<B1処理>の場合と同様である。
(2)10秒〜20秒:
次の10秒の間では、測位補強情報の生成処理と測位補強情報の伝送処理とが実行される。まず伝送について説明する。データ送信部106は、10秒〜20秒の10秒間で、生成された3個の測位補強情報31〜33のうちの一つの測位補強情報31(ブロック1に対応)を伝送する。このとき、データ送信部106は、測位補強情報31に、第2計算部104によって生成されたそれぞれの測位補強情報32、33に含まれる衛星クロック誤差δt(時計2−1、時計3−1)も含めて伝送する。次に誤差の計算処理を説明する。第1計算部103は、10秒〜20秒の10秒間で、0秒〜10秒の場合と同様に、源泉データ収集処理部102によって新たに収集された直近の電子基準点情報を使用して、軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTなどを新たに計算し、更新する。第2計算部104は、0秒〜10秒の場合と同様に、第1計算部103の計算結果を用いて測位補強情報を生成する。この場合、第2計算部104は、測位補強情報41〜43を生成する。
(3)20秒〜30秒:
次の10秒の間では、10秒〜20秒と同様な処理が実行される。伝送については、データ送信部106は、20秒〜30秒の10秒間で、直前の10秒〜20秒で生成された3個の測位補強情報41〜43のうちの一つの測位補強情報42(ブロック2に対応)を伝送する。このとき、データ送信部106は、測位補強情報42に、第2計算部104によって生成されたそれぞれの測位補強情報41、43に含まれる衛星クロック誤差δt(時計1−2、時計3−2も加える)も含めて、測位補強情報42−1として伝送する。誤差の計算処理については、第1計算部103は、20秒〜30秒の10秒間で、10秒〜20秒の場合と同様に、源泉データ収集処理部102によって新たに収集された直近の電子基準点情報を使用して、軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTなどを新たに計算し、更新する。第2計算部104は、10秒〜20秒の場合と同様に、第1計算部103の計算結果を用いて測位補強情報を生成する。この場合、第2計算部104は、測位補強情報51〜53を生成する。
(4)30秒〜40秒:
次の10秒の間では、20秒〜30秒と同様な処理が実行される。伝送については、データ送信部106は、30秒〜40秒の10秒間で、直前の20秒〜30秒で生成された3個の測位補強情報51〜53のうちの一つの測位補強情報53(ブロック3に対応)を伝送する。このとき、データ送信部106は、測位補強情報53に、第2計算部104によって生成されたそれぞれの測位補強情報51、52に含まれる衛星クロック誤差δt(時計1−3、時計2−3も加える)も含めて、測位補強情報53−1として伝送する。以上で測位補強情報31−1、測位補強情報42−1、測位補強情報53−1が送信された。よってブロック1〜3に関する測位補強情報が30秒の周期で送信され、日本の領域がカバーされたことになる。例えば、これをブロック1〜3に関するN回目の伝送とすると、以降同様にして、データ送信装置101は、30秒周期で、ブロック1〜3に関するN+1回目、N+2回目・・・の測位補強情報の伝送を、繰り返す。
【0094】
次に図23を説明する。図23は図22の内容を異なる表現で説明する図である。縦軸方向は、各誤差の計算処理を示す。横軸は時間(秒)を示す。B(1)〜B(3)はブロック1〜3に対する測位補強情報の生成処理を示す。黒丸及び白丸は各誤差データの計算処理が実施されることを示している。黒丸は、さらに、その誤差データがデータ送信部106によって配信されたことを意味する。また、電子基準点情報2とあるのは、源泉データ収集処理部102によって、常時、電子基準点情報2が収集されることを示す。0秒〜60秒にかけて記載した上向きの矢印は、10秒ごとの時間を示す。また矢印60は10秒間の伝送周期(T)を示す。図23に示すように、データ送信装置101は、白丸及び黒丸で示すように、10秒周期で、それぞれのブロックに対応する4つの誤差である軌道誤差δO、衛星クロック誤差δt、電離層遅延誤差δI、対流圏遅延誤差δTを計算する。その場合、データ送信装置101は、計算された全部の誤差データを送信するのではない。送信される誤差データは、ある時間断面における黒丸である。
すなわち、
(1)0秒(0秒〜10秒)では、B(1)の4つの誤差と、B(2)、B(3)の衛星時計誤差δtとの6つの誤差データを含む測位補強情報(測位補強情報31−1に該当。ただし時間の基準が異なるので0秒〜10秒となっている)がデータ送信部106によって送信される(矢印60)。
(2)10秒(10秒〜20秒)では、B(2)の4つの誤差と、B(1)、B(3)の衛星時計誤差δtとの6つの誤差データを含む測位補強情報(測位補強情報42−1に該当)がデータ送信部106によって送信される(矢印61)。
(3)20秒(20秒〜30秒)では、B(3)の4つの誤差と、B(1)、B(2)の衛星時計誤差δtとの6つの誤差データを含む測位補強情報(測位補強情報53−1に該当)がデータ送信部106によって送信される(矢印62)。
(4)以降同様に、(1)〜(3)の処理が繰り返される。
【0095】
以上のように、実施の形態2のデータ送信装置101は、日本の領域をB(1)〜B(3)の3つのブロックに分けた場合の各ブロックに対応する測位補強情報を各ブロックごとに送信するので、送信するべきデータ容量を低減することができる。また、グリッドに関連付けた電離層遅延誤差、対流圏遅延誤差を含むので、高精度測位が可能になる。また、変動の大きい衛星時計誤差δtは、10秒ごとに配信するので、測位の精度を保つことができる。さらに、あるブロックの測位補強情報は、他のブロックの衛星時計誤差δtも含むので、測位装置側は10秒ごとに測位装置の属するブロックにける衛星時計誤差δtを取得できる。このため、測位精度を維持することができる。
【0096】
(B.測位補強情報の送信順序)
図23では、データ送信部106は、ブロック1の測位補強情報を測位補強情報B(1)とすれば、測位補強情報B(1)、測位補強情報B(2)、測位補強情報B(3)の順序で送信し、この順序を周期的に繰り返していた。この順序は一例であり、データ送信部106は、第2計算部104によって生成されたN個の測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(N)をN個からできるN!通りの順列のうちのいずれかの順序で、順次に準天頂衛星400、その他の人工衛星あるいはネットワークに設置された配信サーバ装置などの配信装置に伝送する。順序はN!通りの順列のうち予め定めた順序でもよいし、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(N)を1周期としたとき、1周期ごとにランダムに決めてもよい。図24は日本の領域をB(1)〜B(6)の6つのブロックに分割した場合を示す。6分割の場合、データ送信部106によって、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(6)を一組として、この一組の情報が周期的に送信される。図22、図23で示したように、日本の領域については30秒を要する。このため、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(6)の1周期ぶんの送信時間は30秒を要する。よって一つの測位補強情報B(k)(k=1〜6)は、5秒の送信時間を要する。この場合、データ送信部106は、測位補強情報B(1)、B(2)、B(3)、B(4)、B(5)、B(6)の順序、あるいは、逆の測位補強情報B(6)〜測位補強情報B(1)の順序では送信しない。例えば、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(6)の全部を送信する1周期(30秒)において、データ送信部106は、B(1)、B(3)、B(5)、B(2)、B(6)、B(4)のように送信する。すなわち、日本の領域が連続的にN個のブロックに分割され、連続的に分割された各領域には分割された順序でブロック番号が付けられている場合に、データ送信部106は、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(6)、あるいは逆方向の測位補強情報B(6)〜測位補強情報B(1)の順序では送信せず、ブッロク番号が不連続となる順序で送信する。この順序は予め決めておいてもよいし、送信時にランダムに決めてもよい。なお、ランダムに順序を決める場合は、測位補強情報B(1)〜測位補強情報B(6)、測位補強情報B(6)〜測位補強情報B(1)の順序の場合を除くようにしてもよいし、あるいはランダム発生なので、回数は頻発しないのでこれらを含めても構わない。
【0097】
このように、データ送信部106は、N!通りの順列のうち、測位補強情報に対応する地域データが一連に連続する順序以外の順序で、順次に配信装置に測位補強情報を伝送する。
【0098】
以上のように、データ送信部106が、測位補強情報B(1)等をブロック番号でみて非連続的に送信することにより次の効果がある。すなわち、あるブロックに位置するユーザ(測位装置)は、自身の位置するブロック(例えばB(3))に対応する測位補強情報B(3)の他、測位精度は若干低下すると思われるが、隣接するブロックB(2)、B(4)の測位補強情報B(2)、測位補強情報B(4)を使用して、測位することも可能である。その場合、測位補強情報B(1)等をブロック番号でみて非連続的に送信することにより、ユーザ(測位装置)にとっては、自身のブロック及び近隣ブロックの測位補強情報を入手する頻度が高まるという効果がある。近隣のブロックの測位補強情報を使用するかどうかは、ユーザ側のニーズで決めればよい。例えば、ユーザ(測位装置)は、それほどの高精度測位を必要としない場合は、近隣ブロックの測位補強情報を使用すればよい。
【0099】
(C.誤差データの圧縮)
次に、誤差データの圧縮について説明する。第2計算部104は、実施の形態1で述べたように、第1計算部103が計算した基準点固有誤差に基づいて、「グリッド電離層遅延誤差δI」(表示点固有誤差データの一例)と、「グリッド対流圏遅延誤差δT」(表示点固有誤差データの一例)とを計算する(図6のS13)。そして、第2計算部104は、計算された「グリッド電離層遅延誤差δI」、「グリッド対流圏遅延誤差δT」をそれぞれの位置表示点に関連付けることにより、これらが関連付けられたそれぞれの位置表示点を含む測位補強情報を生成する。第2計算部104は、表示点固有誤差データである「グリッド電離層遅延誤差δI」及び「グリッド対流圏遅延誤差δT」を対応するグリッド(位置表示点)に関連付ける際に、表示点固有誤差データである「グリッド電離層遅延誤差δI」及び「グリッド対流圏遅延誤差δT」をデータ圧縮処理を施した後に関連付ける。このデータ圧縮処理により、誤差自体の精度を維持することができる。
なお、実施の形態1の図2、図3に示した内容は、データ圧縮の例である。誤差データの圧縮には、図2、図3の方式を用いてもよい。
【0100】
(D.測位装置201)
次に実施の形態2の測位装置201を説明する。図24は実施の形態2の測位装置201の構成を示す図である。測位装置201は、測位補強情報受信部21、概略位置算出部22、高精度測位部23を備えている。測位補強情報受信部21は、データ送信装置101から配信装置である準天頂衛星400等を介して配信された各測位補強情報B(1)〜B(N)を受信する。一方、概略位置算出部22は、測位情報(測位信号ともいう)を送信する人工衛星(GPS衛星300a等)から測位情報を受信し、この測位情報に基づいて概略位置を算出する。高精度測位部23は、概略位置算出部22の算出した概略位置に基づいて、測位補強情報受信部21の受信するそれぞれの測位補強情報B(k)(k=1〜N)の中から概略位置に対応する測位補強情報B(i)を特定する。あるいは、隣接するブロックの測位補強情報を使用する設定の場合は、隣接するブロックの測位補強情報も特定対象となる。各測位補強情報B(1)〜B(N)は、概略位置から特定可能な情報を含んでいる。そして、高精度測位部23は、特定した測位補強情報B(i)を用いて概略位置における現時刻の補正量を算出し、算出した現時刻の補正量を用いて概略位置よりも精度の高い高精度位置を測位計算する。この場合、高精度測位部23は、算出した補正量を概略位置と人工衛星との距離に反映することにより、概略位置における仮想観測データを生成し、生成した前記仮想観測データを基準点データとして用いることにより測位計算する。
【0101】
以上の実施の形態2のデータ送信装置101によって、データ通信容量の小さい場合でも、高精度で新鮮な誤差データを測位装置に配信することができる。また実施の形態2の測位装置201は測位補強情報を使用して測位計算するので、高精度測位が可能となる。
【符号の説明】
【0102】
1 測位情報、2 電子基準点情報、3 補正データ、10a,10n 電子基準点、100 センター局、101 データ送信装置、102 源泉データ収集処理部、103 第1計算部、104 第2計算部、1041 補間処理部、1042 データ形式変更部、105 地域データ記憶部、106 データ送信部、107 電子基準点データ記憶部、201 測位装置、300a,300n GPS衛星、400 準天頂衛星、500 測位用補正データ配信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位信号を送信する人工衛星から前記測位信号を受信して所定の情報を出力する複数の電子基準点のそれぞれから、前記所定の情報を電子基準点情報として収集する収集部と、
前記収集部の収集した前記電子基準点情報を使用することにより、前記電子基準点の位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記電子基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差を前記複数の電子基準点のそれぞれについて計算する第1計算部と、
所定の地域がN個(Nは2以上の整数)に分割された各地域のデータを示すN個の地域データの各地域データであって前記地域の中の位置を示す複数の位置表示点が設定されている各地域データを対象として、前記複数の位置表示点のそれぞれに対して前記位置表示点の示す位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記位置表示点のそれぞれに固有な誤差量を示す表示点固有誤差データを前記第1計算部が計算した前記基準点固有誤差に基づいて計算し、計算された表示点固有誤差データをそれぞれの位置表示点に関連付けることにより、表示点固有誤差データが関連付けられたそれぞれの位置表示点を含む測位補強情報を地域データごとに生成する第2計算部と、
前記第2計算部によって生成されたN個の測位補強情報を前記N個からできるN!通りの順列のうちの所定の順序で、順次に配信装置に伝送するデータ送信部と
を備えたことを特徴とするデータ送信装置。
【請求項2】
前記データ送信部は、
地域データごとの測位補強情報を所定の伝送周期で伝送し、
前記第1計算部は、
前記データ送信部により前記所定の順序に従って伝送中の測位補強情報の伝送周期の間に、それぞれの基準点固有誤差を新たに計算し、
前記第2計算部は、
伝送中の測位補強情報の伝送周期の間に、それぞれの表示点固有誤差データを前記新たに計算された基準点固有誤差に基づいて新たに計算し、かつ、N個の地域データごとに、新たに計算された表示点固有誤差データの関連付けられたそれぞれの位置表示点を含む測位補強情報を新たに生成し、
前記データ送信部は、
新たに生成されたN個の測位補強情報のうちの一つの測位補強情報を前記所定の順序に従って前記伝送中の測位補強情報の次に前記配信装置に伝送すると共に、前記所定の順序を周期的に繰り返しながら測位補強情報を順次に前記配信装置に伝送する
ことを特徴とする請求項1記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記第1計算部は、
前記基準点固有誤差として前記電子基準点における電離層遅延誤差と対流圏遅延誤差とを計算すると共に、前記基準点固有誤差以外の誤差であって前記人工衛星に固有の誤差であり、かつ、前記電子基準点に対応する衛星軌道誤差と衛星クロック誤差とを計算し、
前記第2計算部は、
前記第1計算部が計算した前記電離層遅延誤差と、前記対流圏遅延誤差と、前記衛星軌道誤差と、前記衛星クロック誤差とに基づいて、N個の地域データのそれぞれを対象として各位置表示点における電離層遅延誤差と対流圏遅延誤差とを前記表示点固有誤差データとして計算すると共に、地域データに対応する前記測位補強情報のそれぞれに、前記地域データに対応する前記衛星軌道誤差と前記衛星クロック誤差とを含めることを特徴とする請求項2記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記データ送信部は、
伝送中の測位補強情報の次に伝送される測位補強情報に、前記伝送中の測位補強情報の伝送周期(T)の間に前記第2計算部によって生成されたそれぞれの測位補強情報に含まれる前記衛星クロック誤差をすべて含めて、前記次に伝送される補強情報を伝送することを特徴とする請求項3記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記第1計算部は、
1つ以上の電子基準点における電子基準点情報として、観測量である各人工衛星に関する擬似距離と、搬送波位相と、デルタレンジ(ドップラ)とのうちの少なくともいずれかを入力観測量として入力し、あらかじめ測定されている前記電子基準点の位置を取得し、
入力した前記入力観測量と取得した前記電子基準点の位置とに対してカルマンフィルタを使用することにより、測位に使用する誤差を前記電子基準点における前記基準点固有誤差である電離層遅延誤差と対流圏遅延誤差と、さらに前記基準点固有誤差以外の誤差である衛星クロック誤差と衛星軌道誤差との4つに分割して計算し、
前記第2計算部は、
前記第1計算部が計算した前記電離層遅延誤差と前記対流圏遅延誤差と前記衛星クロック誤差と前記衛星軌道誤差とを入力し、入力した前記電離層遅延誤差と前記対流圏遅延誤差と前記衛星クロック誤差と前記衛星軌道誤差とに基づいて、あらかじめ設定された前記位置表示点における電離層遅延誤差と対流圏遅延誤差とを、それぞれ前記表示点固有誤差データとして計算する
ことを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記第2計算部は、
前記第1計算部が2以上の前記電子基準点について、各電子基準点おける基準点固有誤差である前記電離層遅延誤差と前記対流圏遅延誤差とを計算した場合に、2以上の前記電離層遅延誤差を補完するとともに、2以上の前記対流圏遅延誤差を補完することにより、あらかじめ設定された前記位置表示点における電離層遅延誤差と対流圏遅延誤差とを計算することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項7】
前記第2計算部は、
それぞれの測位補強情報に、位置表示点の座標値、サンプリング間隔、範囲、及び測位補強情報の生成時刻を含めることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項8】
前記データ送信部が送信する前記測位補強情報は、
隣接する地域を示す他の地域データに対応する測位補強情報と重複する範囲を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項9】
前記第2計算部は、
前記測位補強情報の基準となる所定の位置表示点の誤差データと、この位置表示点と異なる他の位置表示点の誤差データとの差分として変換された表示点固有誤差データとを含む測位補強情報を生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項10】
前記データ送信部は、
前記N!通りの順列のうち、測位補強情報に対応する地域データが連続する順序以外の順序で、順次に配信装置に測位補強情報を伝送することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項11】
前記第2計算部は、
表示点固有誤差データをそれぞれの位置表示点に関連付けるときに、表示点固有誤差データを所定の圧縮方式で圧縮した後に、それぞれの位置表示点に関連付けることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のデータ送信装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のデータ送信装置から送信されたそれぞれの測位補強情報を受信する測位補強情報受信部と、
測位信号を送信する人工衛星から測位信号を受信し、受信した測位信号に基づいて概略位置を算出する概略位置算出部と、
前記概略位置算出部の算出した概略位置に基づいて前記測位補強情報受信部の受信するそれぞれの測位補強情報の中から概略位置に対応する測位補強情報を特定し、特定した測位補強情報を用いて概略位置における現時刻の補正量を算出し、算出した現時刻の補正量を用いて概略位置よりも精度の高い高精度位置を測位計算する高精度測位部と
を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項13】
前記高精度測位部は、
前記算出した補正量を前記概略位置と前記人工衛星との距離に反映することにより、前記概略位置における仮想観測データを生成し、生成した前記仮想観測データを基準点データとして用いることにより測位計算する
ことを特徴とする請求項12記載の測位装置。
【請求項14】
収集部が、
測位信号を送信する人工衛星から前記測位信号を受信して所定の情報を出力する複数の電子基準点のそれぞれから、前記所定の情報を電子基準点情報として収集し、
第1計算部が、
前記収集部の収集した前記電子基準点情報を使用することにより、前記電子基準点の位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記電子基準点のそれぞれに固有な誤差量を示す基準点固有誤差を前記複数の電子基準点のそれぞれについて計算し、
第2計算部が、
所定の地域がN個(Nは2以上の整数)に分割された各地域のデータを示すN個の地域データの各地域データであって前記地域の中の位置を示す複数の位置表示点が設定されている各地域データを対象として、前記複数の位置表示点のそれぞれに対して前記位置表示点の示す位置を測位する場合の測位精度に影響するとともに前記位置表示点のそれぞれに固有な誤差量を示す表示点固有誤差データを前記第1計算部が計算した前記基準点固有誤差に基づいて計算し、計算された表示点固有誤差データをそれぞれの位置表示点に関連付けることにより、表示点固有誤差データが関連付けられたそれぞれの位置表示点を含む測位補強情報を地域データごとに生成し、
データ送信部が、
前記第2計算部によって生成されたN個の測位補強情報を前記N個からできるN!通りの順列のうちの所定の順序で、順次に配信装置に伝送する
ことを特徴とするデータ送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−112576(P2011−112576A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270861(P2009−270861)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】