説明

データ送受信装置及びデータ送受信方法

【課題】ACK等の応答メッセージを効率的に通信する技術を提供すること。
【解決手段】データ送受信装置160は、ネットワークに接続された第1IF部168と、第1IF部168を介して、ネットワークに接続されたクライアント端末との間で、データを送受信する処理を行うデータ送受信制御回路164と、クライアント端末がデータを送受信することのできる帯域を割り当てる帯域割当制御回路165と、帯域割当制御回路165が割り当てた帯域を示すスケジュールを生成し、クライアント端末宛てにこのスケジュールを送信させる送受信タイミング制御回路163と、を備え、帯域割当制御回路165は、データ送受信制御回路164が、第1IF部168を介して、クライアント端末宛てに送信させたデータに対して、このクライアント端末からの応答が見込まれる場合には、予め応答用の帯域を割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送受信装置及びデータ送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11で規定される無線LANは、伝送帯域を予め確保してデータを伝送するTDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用している。例えば、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:社団法人電波産業会)にて標準規格化されたHiSWANa(High Speedo Wireless Access Networking Type a:ARIB STD−T70 1.0版)規格では、TDMA方式が採用されている。
【0003】
以下、HiSWANa規格に採用されたTDMA方式の概要を説明する。HiSWANaで採用されたTDMA方式は、管理端末と呼ばれる1台の端末によりネットワーク内の各クライアント端末が管理される。
【0004】
管理端末は、ネットワーク全体の時刻同期を管理するために、ビーコンと呼ばれるパケットデータであるBCH(Broadcast CHannel)を、予め定められた周期で同報通信する。例えば、HiSWANa規格では、この周期は2msである。
【0005】
ネットワーク内に配置された各クライアント端末は、BCHを受信すると、それを基準に、端末内の基準時刻情報をリセットするとともに、管理端末より送信される各種制御パケットの受信準備を開始する。
【0006】
管理端末は、BCHの送出後、ネットワークに接続された各クライアント端末のデータ送信スケジュールを含むネットワークシステム制御のパケットデータであるFCH(Frame CHannel)を、各クライアント端末に対して同報通信する。
【0007】
このFCHには、ネットワークに接続された各クライアント端末のデータの通信スロット情報(送受信開始タイミング情報、データ送受信時間情報など)を含む、データの送信及び受信のスケジュールが付加されており、各クライアント端末は、FCHを受信すると、自端末においてデータを送受信するタイミングを検出する。
【0008】
管理端末は、FCHの送信後、各クライアント端末に対して送信要求受信通知のパケットデータであるACH(Access feedback CHannel)を送信する。ACHは、各クライアント端末の帯域割当要求に対する管理端末からの応答である。
【0009】
管理端末より、上記BCH、FCH及びACHの各パケットデータの送信が完了すると、各クライアント端末は、FCHにて通知されたスケジュールに基づき、ユーザデータ及び必要な制御情報等のパケットデータであるTCH(Transport CHannel)の受信及び送信動作を開始する。ここで、TCHの送受信を行う期間は、TCH期間である。
【0010】
TDMA方式では、管理端末は、送信したいデータを持つクライアント端末についてのみ通信スロットをスケジューリングする。従って、送信したいデータを持つクライアント端末は、管理端末に対して、自端末のデータを送信するための送信スロットを割り振るよう要求する必要がある。HiSWANa規格で採用されたTDMA方式では、各クライアント端末より送信リクエストを受け付けるため、1ビーコン周期(以下、1フレームともいう)内の最後に、各クライアント端末からの送信スロット要求リクエストのパケットデータ(帯域割当要求)をRCH(Random CHannel)にて受け付ける。ここで、RCHを受け付けるためのCSMA(Carrier Sense Multiple Access)期間を、以下、RCH期間という。
【0011】
管理端末は、RCH期間に、帯域割当要求を受け取ったクライアント端末に対しては、次の1ビーコン周期内のACHにて、帯域割当要求を受け取った旨を通知する。
【0012】
各端末間の送受信タイミングを規定するFCHにより、データの送受信を行うTCHは、ネットワークシステムに適応して伝送帯域を効率的に利用できるよう、MAC(Media Access Control)フレームに組み込まれている。ここで、特許文献1には、単一チャネルにおいて、送信されるデータパケットの1つ以上の通信メッセージに、肯定応答メッセージ(以下、ACKという)を組み合わせる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2007−520169号公報(第14−15頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載された技術では、FCHで規定されている送受信タイミングが、ACK分の帯域まで確保されていない場合、FCHで規定されているフレームでは、通信メッセージにACKを組み合わせて一つのTCHとして送信することができない。このため、特許文献1に記載された技術では、次フレーム以降において、通信メッセージにACKを組み合わせた分の帯域が確保されるまで、TCHの送信を待機しなければならず、遅延が発生する。なお、新たな帯域割当要求は、TCH又はRCHにて行うが、必ずしも次フレームでACK分の帯域が割り当てられるとは限らないため、遅延時間が長くなる場合もある。また、RCHにて帯域割当要求行う場合には、CSMA方式が採用されているため、他の端末が通信中はRCHを送信することができず、さらに遅延時間が長くなる。
【0015】
例えば、TCP/IP通信においてはACKが返ってくるまで次のデータの送信を行うことができないため、ネットワークシステム全体としては余剰帯域があったとしても、ACKの遅延によりスループットが向上しないという問題が起こり得る。
【0016】
そこで、本発明は、ACK等の応答メッセージを効率的に通信する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係るデータ送受信装置は、ネットワークに接続されたインターフェース部と、前記インターフェース部を介して、前記ネットワークに接続されたクライアント端末との間で、データを送受信する処理を行うデータ送受信制御部と、前記ネットワークにおいて、前記クライアント端末がデータを送受信することのできる帯域を割り当てる帯域割当制御部と、前記帯域割当制御部が割り当てた帯域を示すスケジュールを生成し、前記データ送受信制御部に、当該スケジュールを前記クライアントへ送信させる送受信タイミング制御部と、を備え、前記帯域割当制御部は、前記データ送受信制御部が、前記インターフェース部を介して、前記クライアントへ送信する処理を行ったデータに対して、前記クライアント端末からの応答が見込まれる場合には、予め前記応答用の帯域を割り当てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、ACK等の応答メッセージを効率的に通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1に係る通信システムを概略的に示す構成図である。
【図2】実施の形態1におけるデータ送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるフレーム構成を示す概略図である。
【図4】実施の形態1におけるFCHの構造を示す概略図である。
【図5】実施の形態1におけるTCH期間の構成を示す概略図である。
【図6】実施の形態1におけるMACフレームの構成を示す概略図である。
【図7】実施の形態1におけるMACフレームの生成方法を示す概略図である。
【図8】従来の通信システムにおける、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【図9】実施の形態1における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【図10】実施の形態2及び3に係る通信システムを概略的に示す構成図である。
【図11】実施の形態2におけるデータ送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図12】実施の形態2における送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【図13】実施の形態3におけるデータ送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図14】実施の形態3における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【図15】実施の形態3における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る通信システム100を概略的に示す構成図である。通信システム100は、管理端末110と、クライアント端末120A、120B、120C(以下、特に各々を区別する必要のないときはクライアント端末120という)とを備える。管理端末110には、下流側装置としてのサーバ130が接続されている。クライアント端末120Aには、下流側装置としての情報処理装置140Aが接続されており、クライアント端末120Bには、下流側装置としての情報処理装置140Bが接続されており、クライアント端末120Cには、下流側装置としての情報処理装置140Cが接続されている。なお、情報処理装置140A、140B、140Cについても、特に各々を区別する必要のないときは、情報処理装置140という。また、管理端末110及びクライアント端末120は、ネットワーク150に接続されている。そして、管理端末110は、サーバ130とネットワーク150との間の通信を中継し、クライアント端末120は、情報処理装置140とネットワーク150との間の通信を中継する。
【0021】
ここで、管理端末110は、ネットワーク150の全体を管理して、HiSWANa規格に対応したTDMA方式で、クライアント端末120が行う送受信を管理する。なお、ネットワーク150は、高速メタル線通信ネットワーク、高速PLC(Power Line Communication)ネットワーク及び無線LAN等、種々の有線及び無線ネットワークの何れかであればよい。
【0022】
図2は、管理端末110及びクライアント端末120として使用されるデータ送受信装置160の構成を概略的に示すブロック図である。データ送受信装置160は、MAC方式として、HiSWANa規格で採用されたTDMA方式を利用する。図示するように、データ送受信装置160は、制御部としての制御回路161と、送受信データ記憶部としての送受信データバッファ回路166と、スイッチ部167と、第1インターフェース部(以下、第1IF部という)168と、第2インターフェース部(以下、第2IF部という)169とを備える。
【0023】
制御回路161は、同期情報制御部としての同期情報制御回路162と、送受信タイミング制御部としての送受信タイミング制御回路163と、データ送受信制御部としてのデータ送受信制御回路164と、帯域割当制御部としての帯域割当制御回路165とを備える。
【0024】
同期情報制御回路162は、データ送受信装置160が管理端末110として動作する場合には、同期情報の同報送信を制御する。例えば、同期情報制御回路162は、BCHを生成し、データ送受信制御回路164を介して、このBCHを周期的に送信する処理を行う。
また、同期情報制御回路162は、データ送受信装置160がクライアント端末120として動作する場合には、データ送受信装置160における同期制御を行う。例えば、同期情報制御回路162は、管理端末110からのBCHを受信し、自端末内の基準時刻情報をリセットする。そして、同期情報制御回路162は、基準時刻情報を生成して、この基準時刻情報を、送受信タイミング制御回路163に通知する。
【0025】
送受信タイミング制御回路163は、データ送受信装置160が管理端末110として動作する場合には、管理端末110及びクライアント端末120がデータを送受信するスケジュールを管理する処理を行う。例えば、送受信タイミング制御回路163は、帯域割当制御回路165からの帯域割当指示に従い、管理端末110及びクライアント端末120のデータ送受信スケジュールを含むFCHを生成し、データ送受信制御回路164を介して、このFCHを同報送信する処理を行う。さらに、送受信タイミング制御回路163は、生成したFCHに基づいて、自装置内のデータ送受信タイミングを生成し、データ送受信制御回路164に通知する。
また、送受信タイミング制御回路163は、データ送受信装置160がクライアント端末120として動作する場合には、自装置におけるデータの送受信タイミングを制御する。例えば、送受信タイミング制御回路163は、管理端末110からのFCHを受け取ると、このFCHから自装置内のデータ送受信タイミングを生成し、データ送受信制御回路164に通知する。
【0026】
データ送受信制御回路164は、データの送受信制御を行う。例えば、データ送受信制御回路164は、ユーザデータ等の送受信期間となるTCH期間において、ユーザデータ等の送受信制御を行うほか、帯域割当要求に関するACH及びRCH等の送受信制御も行う。また、データ送受信制御回路164は、データ送受信状況通知を帯域割当制御回路165に与える。このデータ送受信状況通知は、送信したいデータの蓄積量を示す蓄積量情報を含む。また、データ送受信装置160が管理端末110である場合には、データ送受信状況通知は、クライアント端末120からの帯域割当要求と、送信するデータに対してクライアント端末120からの応答が見込まれるか否かを示す応答見込み情報とを含む。
【0027】
帯域割当制御回路165は、送受信するデータの帯域を割り当てる処理を制御する。例えば、帯域割当制御回路165は、データ送受信装置160が管理端末110として動作する場合には、データ送受信制御回路164からのデータ送受信状況通知を受けて帯域割当を行い、この帯域割当をFCHに反映するよう送受信タイミング制御回路163に指示する。特に、クライアント端末120からの応答が予め見込まれる場合には、先行してこの応答用の帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するよう、送受信タイミング制御回路163に指示する。
また、帯域割当制御回路165は、データ送受信装置160が管理端末110として動作する場合には、クライアント端末120からのRCHによる帯域割当要求に対する応答であるACHを生成し、データ送受信制御回路164を介して、このACHを送信する処理を行う。
さらに、帯域割当制御回路165は、データ送受信装置160がクライアント端末120として動作する場合には、自装置が送信したいデータの蓄積量情報に基づいて帯域割当要求を生成し、TCH期間又はRCH期間に、この帯域割当要求をデータ送受信制御回路164に送信させる処理を行う。
【0028】
送受信データバッファ回路166は、ネットワーク150を介して送受信するデータを記憶する。例えば、送受信データバッファ回路166は、第1IF部168を介して、ネットワーク150から受信されたデータを記憶し、また、第2IF部169を介して、サーバ130又は情報処理装置140から与えられた入力データを記憶する。
【0029】
スイッチ部167は、データ送受信装置160を、管理端末110として動作させるか、クライアント端末120として動作させるかの設定の入力を受け付ける。そして、制御回路161は、スイッチ部167で入力の受け付けられた設定に従って、管理端末110又はクライアント端末120としての動作に対応する処理を実行する。
【0030】
第1IF部168は、ネットワーク150に接続され、ネットワーク150との間でデータの送受信を行う。
第2IF部169は、接続されている下流側装置との間でデータの送受信を行う。例えば、第2IF部169は、下流側装置としてサーバ130が接続されている場合には、サーバ130との間で、又は、下流側装置として情報処理装置140が接続されている場合には、情報処理装置140との間で、データの送受信を行う。
【0031】
以下、通信システム100での動作について説明する。まず、図3から図5を用いて、通信システム100における概略的な動作について説明する。
【0032】
図3は、通信システム100におけるフレーム構成を示す概略図である。図示するように、一つのフレームである1フレーム170は、BCH170Aと、FCH170Bと、ACH170Cと、TCH170Dと、RCH170Eとを含む。
【0033】
まず、管理端末110の動作を説明する。管理端末110では、同期情報制御回路162が、ネットワーク150全体の時刻を同期させるため、同期情報としてのBCHを生成して、このBCHをデータ送受信制御回路164に送る。データ送受信制御回路164は、送受信タイミング制御回路163からの指示に従って、図3に示されている1フレーム170の最初に、同期情報制御回路162から与えられたBCH170Aを、予め定められた周期で同報通信する処理を行う。
【0034】
また、管理端末110では、送受信タイミング制御回路163が、管理端末110及クライアント端末120のデータ送受信スケジュールを含むFCHを生成し、このFCHをデータ送受信制御回路164に与える。そして、データ送受信制御回路164は、図3に示されている1フレーム170において、送受信タイミング制御回路163からの指示に従って、BCH170A送信後に、タイミング制御回路163から与えられたFCH170Bを、同報通信する処理を行う。
【0035】
また、図3に示されている1フレーム170の前のフレーム(図示せず)において、クライアント端末120よりRCHを受信している場合には、管理端末110の帯域割当制御回路165は、RCHを正常に受信したことを通知するACHを生成し、このACHをデータ送受信制御回路164に与える。そして、データ送受信制御回路164は、図3に示されている1フレーム170において、送受信タイミング制御回路163からの指示に従って、FCH170B送信後に、帯域割当制御回路165から与えられたACH170Cを、RCHを送信してきたクライアント端末120に送信する処理を行う。
【0036】
また、管理端末110のデータ送受信制御回路164は、送受信タイミング制御回路163から通知されたデータ送受信タイミングに従って、図3に示されている1フレーム170において、ACH170C送信後に、TCH170Dに割り当てられているTCH期間において、クライアント端末120との間でデータを送受信する処理を行う。例えば、データ送受信制御回路164は、送受信データバッファ回路166に、クライアント端末120に送信する入力データがある場合には、TCH170Dに割り当てられているTCH期間において、クライアント端末120にこの送信データを送信する処理を行う。また、データ送受信制御回路164は、TCH170Dに割り当てられているTCH期間において、クライアント端末120からの送信データを受信する処理を行い、この送信データを送受信データバッファ回路166に記憶させる。
【0037】
次に、クライアント端末120の動作について説明する。図3に示されている1フレーム170において、BCH170Aを受信したクライアント端末120では、同期情報制御回路162が、このBCH170Aに基づいて、基準時刻情報を生成して、送受信タイミング制御回路163に与えることで、クライアント端末120内の基準時刻を同期させる。
【0038】
また、基準時刻の同期を実施した後、図3に示されている1フレーム170において、FCH170Bを受信したクライアント端末120では、送受信タイミング制御回路163が、このFCH170Bよりデータ送受信タイミングを生成して、データ送受信制御回路164に通知することで、それぞれのデータ送信タイミング及びデータ受信タイミングを内部に設定し、パケットデータの送信及び受信の準備を開始する。
【0039】
図4は、FCHの構造を示す概略図である。図4では、TCH期間がN個(Nは、4以上の自然数)の通信スロットに分割されている場合を示しているが、TCH期間は、少なくとも一つの通信スロットが有ればよい。図示するように、FCHは、通信スロット毎に、送信開始時間、送信時間、送信端末及び受信端末を示す情報と、送受信関連情報とを含んでいる。このようなFCHに基づいて、送受信タイミング制御回路163は、自装置がデータを送信及び受信できるタイミング及びその時間長(つまり帯域割当)を把握することができる。
【0040】
図5は、TCH期間の構成を示す概略図である。図示するように、TCH期間は、図4に示されているFCHが規定するとおり、N個の通信スロットに分割されている。図4に示されているFCHに含まれている送信開始時間及び送信時間、又は、受信開始時間及び受信時間は、この通信スロットを示す。
【0041】
そして、クライアント端末120のデータ送受信制御回路164は、パケットデータの送信の場合には、図3に示されているFCH170Bで示されている送信開始時間が近づくと、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データを連結してMACフレームの生成を開始し、FCHで示されているタイミングで、このMACフレームを第1IF部168から送信させる。一方、クライアント端末120のデータ送受信制御回路164は、パケットデータの受信の場合には、図3に示されているFCH170Bで示されている受信時刻になると、第1IF部168で受信されたMACフレームを復調し、入力データの抽出及び誤り検出等のMACフレーム受信動作を行う。
【0042】
図3に示されているFCH170Bで示されるデータ送受信スケジュールに基づいて、TCH170Dに割り当てられているTCH期間における、MACフレームの送受信が終了すると、クライアント端末120の帯域割当制御回路165は、送受信データバッファ回路166に送信する入力データが記憶されている場合には、帯域割当要求のRCHを生成して、この帯域割当要求をデータ送受信制御回路164に与える。データ送受信制御回路164は、帯域割当制御回路165から与えられた帯域割当要求を、送受信タイミング制御回路163からの指示に従って、RCH170Eに割り当てられているRCH期間に、管理端末110に送信する処理を行う。なお、帯域割当要求に必要な帯域は、TCH期間の通信スロットの一部に割り当てられていてもよい。
【0043】
以上のようにして、通信システム100においては、データの送受信が行われる。
次に、図6及び7を用いて、データ送受信装置160が、ネットワーク150を介して送受信するMACフレームを生成する処理の概要について説明する。
【0044】
図6は、MACフレーム171の構成を示す概略図である。実施の形態1では、MACフレーム171の構成要素である入力データをEthernet(登録商標)フレームとしているが、これに限るものではなく、同様の構成で長さ情報を持つフレームであれば、MACフレーム171の構成要素とすることができる。
【0045】
図6に示すように、MACフレーム171は、MACヘッダ171Aが先頭に付加され、MACヘッダ171Aの後ろの領域171Bに、Ethernetフレーム#1〜#Pが順次連結される構成となっている。ここで、Ethernetフレーム#1〜#Pの前には、各々のEthernetフレーム#1〜#Pのデータ長を示す長さ情報*1〜*Pが挿入される。なお、図6においては、「P」は2以上の自然数であるが、Ethernetフレームの数は、「1」以上であればよい。
MACヘッダ171Aは、MACフレーム171の送信元端末を示す送信元情報、MACフレーム171の送信先端末を示す宛先情報、Ethernetフレームの連結数、その他のMACフレーム送信関連情報を含んでいる。
また、MACフレーム171の末尾には、MACフレームのエラーチェックのためのFCS(Frame Check Sequence)171Dが付与される。
さらに、MACフレーム171において、Ethernetフレームが連結されない余剰領域がある場合には、パディングされ、余剰帯域のIDLE171Cが挿入される。
【0046】
例えば、クライアント端末120の帯域割当制御回路165は、送受信データバッファ回路166に入力データとして蓄積されているEthernetフレームの状況を判断して、管理端末110に帯域割当要求を行う。例えば、送受信データバッファ回路166に、図6に示されているEthernetフレーム#1〜#Pが記憶されている場合には、帯域割当制御回路165は、P個のEthernetフレームが収まるデータ量の帯域割当要求を管理端末110に通知する。なお、P個のEthernetフレームは、各々長さが異なってもよい。また、帯域割当要求をTCHで行う場合には、帯域割当制御回路165は、帯域割当要求を示すEthernetフレームを生成し、データ送受信制御回路164に、このEthernetフレームをMACフレーム171の領域171Bに格納させる。
【0047】
なお、クライアント端末120からの帯域割当要求を受信した管理端末110では、帯域割当制御回路165が、帯域割当要求を受信したフレームの次のフレームにおいて、その要求に対応する帯域を割り当てるか、又は、帯域の割り当てを一旦保留して、その次のフレーム以降で改めて帯域を割り当てるか、という判断を行う。言い換えると、管理端末110の帯域割当制御回路165が行う帯域の割り当ては、クライアント端末120が要求する量に対して「0」か、又は、その要求量以上の帯域を割り当てるか、のどちらかとなる。管理端末110の帯域割当制御回路165が、クライアント端末120からの帯域割当要求で示されたデータ量を超えて、帯域を割り当てるのは、通信システム100全体として帯域に余剰がある場合等である。
【0048】
図7は、MACフレーム172の生成方法を示す概略図である。ここでは、Ethernetフレームを連結する際の締め切りタイミングについて説明する。
【0049】
図7は、クライアント端末120の送受信データバッファ回路166が蓄積しているEthernetフレーム#1及び#2を、データ送受信制御回路164が連結してMACフレーム172を生成した状況を示している。図7では、送受信データバッファ回路166が、Ethernetフレーム#3を蓄積する前に、このMACフレーム172の連結締め切りタイミングT1となったため、Ethernetフレーム#3は、MACフレーム172内に連結されていない。なお、図7では、クライアント端末120により要求されたデータ量以上の帯域が割り当てられており、MACフレーム172内に、Ethernetフレームが連結されていない、IDLE172Aが挿入されている。
【0050】
なお、Ethernetフレーム#3が、連結締め切りタイミングT1前に送受信データバッファ回路166に蓄積されており、かつ、IDLE172Aの領域に収まるデータ量である場合には、クライアント端末120のデータ送受信制御回路164は、Ethernetフレーム#3の帯域割当要求を行うことなく、このEthernetフレーム#3をMACフレーム172内に連結することができる。しかしながら、図7では、連結締め切りタイミングT1後に、Ethernetフレーム#3が送受信データバッファ回路166に入力されたため、IDLE172Aが無駄な帯域となっている。また、図7では、Ethernetフレーム#3が送受信データバッファ回路166に残っているため、帯域割当制御回路165は、Ethernetフレーム#3用の帯域割当要求をデータ送受信制御回路164に送信させる必要がある。このため、図7では、Ethernetフレーム#3の送信遅延が発生している。
【0051】
以上のように、データ送受信制御回路164は、TCH期間にて送信するMACフレームを生成する際には、連結締め切りタイミングで連結対象となるEthernetフレームの選別を打ち切る。このため、TCH期間でも通信スロットが時間的に後のもの、例えば、図5では通信スロット#Nに近いものほど、連結締め切りタイミングが遅くなるので、1フレーム内に連結するEthernetフレームの数を増やすためには、通信スロットを時間的に遅い位置に配置する方がよい。
【0052】
ところで、TCP/IP通信では、管理端末110に接続されているサーバ130から、クライアント端末120に接続されている情報処理装置140に送信データを送信する際に、管理端末110に接続されているサーバ130からの送信データに対して、クライアント端末120に接続されている情報処理装置140からACKデータを返すことにより通信が制御されている。そして、このような通信では、送信データに対するACKデータの返答が遅延すると、通信速度(スループット)が低下する。
【0053】
以下、図8及び図9を用いて、実施の形態1に係る通信システム100における、ACKデータの遅延低減について説明する。
【0054】
図8は、従来の通信システムにおける、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。この従来の通信システムでは、TDMA方式をMAC方式として採用しており、管理端末180とクライアント端末181との間で、送信データとACKデータとを送受信する。
【0055】
管理端末180は、管理端末180に接続されている下流側装置、例えば、サーバ(図示せず)から入力された入力データを、例えば、MACフレームに格納することで送信データ10を生成して、この送信データ10を、クライアント端末181に送信する。この送信データ10は、TCHの送信時刻に送信される。
【0056】
クライアント端末181は、受信された送信データ10から、入力データを抽出し、この入力データから出力データ11を生成して、この出力データ11を、クライアント端末181に接続されている下流側装置、例えば、情報処理装置(図示せず)に送信する。
【0057】
クライアント端末181に接続されている下流側装置は、出力データ11を受信すると、ACKデータ12をクライアント端末181に送信する。
【0058】
ACKデータ12を受信したクライアント端末181は、このACKデータ12を送信するため、帯域割当要求を、管理端末180に、自身の帯域割当要求タイミングで送信する。ここでは、TCHとして帯域割当要求を送信するようにしているため、例えば、クライアント端末181は、帯域割当要求をMACフレームに格納することで、送信データ13を生成して、この送信データ13を管理端末180に送信する。
【0059】
管理端末180は、送信データ13を受信すると、送信データ13に含まれている帯域割当要求を抽出する。そして、管理端末180は、次のフレーム#2にACKデータの帯域を割り当て、この帯域割当が反映されたデータ送受信スケジュールを含むFCH14を送信する。
【0060】
FCH14を受信したクライアント端末181は、FCH14を受信したフレーム#2において、FCH14に含まれているデータ送受信スケジュールで規定された送信タイミングで、ACKデータ12を含む送信データ15を管理端末180に送信する。
【0061】
図8に示した従来の通信システムによる送受信では、管理端末180の送信データ10の送信(フレーム#0)から、管理端末180にACKデータが返ってくるまで(フレーム#2)に、2フレームかかることとなる。さらに、図8では、管理端末180によりフレーム#2でACKデータの帯域割当が行われているが、管理端末180及び他のクライアント端末(図示せず)の通信状況によっては、すぐに帯域が割り当てられるとは限らないため、この通信状況によっては、さらにACKデータが返ってくるまでに長い時間がかかる場合もある。
【0062】
図9は、実施の形態1に係る通信システム100における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。
【0063】
まず、管理端末110のデータ送受信制御回路164は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ20を生成して、この送信データ20をクライアント端末120に送信する処理を行う。ここで、データ送受信制御回路164は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データをMACフレームに格納することで、送信データ20を生成する。
【0064】
送信データ20を受信したクライアント端末120では、データ送受信制御回路164が、この送信データ20から入力データを抽出し、この入力データから出力データ21を生成し、この出力データ21を、クライアント端末120に接続されている情報処理装置140に出力する処理を行う。
【0065】
送信データ20を送信した管理端末110のデータ送受信制御回路164は、送信データ20に対してクライアント端末120からの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路165に与える。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路165は、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路163に指示する。ここで、帯域割当制御回路165は、このACKデータの帯域は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てるよう制御する。例えば、帯域割当制御回路165は、ACKデータ用の帯域を通信スロットの最後尾から順に割り当て、残った通信スロットに他のデータ用の帯域を割り当てる。ここでは、ACKデータ用の帯域は、ACKデータだけを送信できるような帯域としているが、クライアント端末120から既に帯域の割当要求を受けている場合等には、他のデータの帯域にACKデータの帯域を加算した帯域としてもよい。そして、送受信タイミング制御回路163は、帯域割当制御回路165からの先行帯域割当指示に従い、データ送受信スケジュールを含むFCH22を生成する。データ送受信制御回路164は、送受信タイミング制御回路163が生成したFCH22を、クライアント端末120に送信する処理を行う。
【0066】
FCH22を受信したクライアント端末120では、送受信タイミング制御回路163が、FCH22に含まれているデータ送受信スケジュールから、自端末のデータ送受信タイミングを生成して、このデータ送受信タイミングをデータ送受信制御回路164に通知する。ここで、図9において、通常のデータ用の送信タイミングとしてST1が、ACKデータ用の送信タイミングとしてST2が、データ送受信制御回路164に通知されているものとする。
そして、クライアント端末120のデータ送受信制御回路164は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データを連結してMACフレームに格納することで、送信データ23を生成して、送信タイミングST1において、この送信データ23を管理端末110に送信する。
【0067】
また、クライアント端末120に接続されている情報処理装置140は、出力データ21を受信すると、ACKデータ24をクライアント端末120に送信する。
【0068】
ACKデータ24を受信したクライアント端末120では、既にACKデータ用の帯域が割り当てられているため、データ送受信制御回路164が、ACKデータ24をMACフレームに格納することで、送信データ25を生成して、送信タイミングST2において、この送信データ25を管理端末110に送信する。
【0069】
ここで、本実施の形態においては、ACKデータ用の帯域は、通信スロットの遅い方に配置されている。例えば、図9においては、ACKデータ用の送信タイミングST2は、通常のデータ用の送信タイミングST1よりも遅いタイミングとなっている。このため、ACKデータを送信するための連結締め切りタイミングCT2は、通常のデータを送信するための連結締め切りタイミングCT1よりも遅くなっている。これにより、情報処理装置140からのACKデータは、連結締め切りタイミングCT1よりも遅く、クライアント端末120に入力されても、連結締め切りタイミングCT2よりも早ければ、送信データ25に含めることができる。このように、ACKデータの通信スロットを、連結締め切りタイミングを考慮して、時間的に遅い位置に割り当てることで、ACKデータの送信帯域を有効に使用することができるというメリットがある。
【0070】
図9に示されているように、実施の形態1に係る通信システム100では、管理端末110の送信データの送信(フレーム#0)から、管理端末110にACKデータが返ってくるまで(フレーム#1)に、1フレームで済むこととなる。さらに管理端末110によりACKデータの帯域が確実に割り当てられるため、割り当てられた帯域がACKデータの入力タイミングと合致していれば、ACKデータが返ってくるフレーム遅延を低減することができる。
【0071】
以上のように、実施の形態1に係る通信システム100によれば、例えば、TCP/IP通信のような送信データに対するACKデータの返答が必要な通信方式において、ACKデータの遅延を低減することができ、通信速度(スループット)を向上させることができるという効果がある。
【0072】
実施の形態2.
以下、実施の形態2に係る通信システム200について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明したACKデータに対する先行帯域割り当てについて、管理端末210は、各クライアント端末220の通信遅延状況を管理した上で、割り当てる帯域を制御する。
【0073】
図10は、実施の形態2に係る通信システム200を概略的に示す構成図である。通信システム200は、管理端末210と、クライアント端末220A、220B、220C(以下、特に各々を区別する必要のないときはクライアント端末220という)とを備える。管理端末210には、サーバ130が接続されている。クライアント端末220Aには、情報処理装置140Aが接続されており、クライアント端末220Bには、情報処理装置140Bが接続されており、クライアント端末220Cには、情報処理装置140Cが接続されている。また、管理端末210及びクライアント端末220は、ネットワーク150に接続されている。そして、管理端末210は、サーバ130とネットワーク150との間の通信を中継し、クライアント端末220は、情報処理装置140とネットワーク150との間の通信を中継する。ここで、実施の形態2に係る通信システム200は、管理端末210及びクライアント端末220が行う処理において、実施の形態1に係る通信システム100と異なっている。なお、図10の括弧内の符号は、実施の形態3における構成を示す。
【0074】
実施の形態2における管理端末210は、通信ネットワーク200の立上げ時等に、各クライアント端末220から遅延量を収集する。例えば、図10においては、クライアント端末220Aの遅延量は「D」、クライアント端末220Bの遅延量は「2D」、クライアント端末220Cの遅延量は「3D」となっている。
【0075】
図11は、管理端末210及びクライアント端末220として使用されるデータ送受信装置260の構成を概略的に示すブロック図である。データ送受信装置260は、MAC方式として、HiSWANa規格で採用されたTDMA方式を利用する。図示するように、データ送受信装置260は、制御部としての制御回路261と、送受信データ記憶部としての送受信データバッファ回路166と、スイッチ部167と、第1IF部168と、第2IF部169とを備える。実施の形態2におけるデータ送受信装置260は、制御回路261において、実施の形態1におけるデータ送受信装置160と異なっている。
【0076】
制御回路261は、同期情報制御部としての同期情報制御回路162と、送受信タイミング制御部としての送受信タイミング制御回路163と、データ送受信制御部としてのデータ送受信制御回路264と、帯域割当制御部としての帯域割当制御回路265とを備える。実施の形態2における制御回路261は、データ送受信制御回路264及び帯域割当制御回路265において、実施の形態1における制御回路161と異なっている。
【0077】
実施の形態2におけるデータ送受信制御回路264は、実施の形態1におけるデータ送受信制御回路164と同様の処理を行うほか、以下の処理を行う。
データ送受信制御回路264は、データ送受信装置260がクライアント端末220として動作する場合には、自装置がTCP/IPに従った通信を行う場合に、送信データを受信してからACKデータを送信するまでの遅延量を推定し、この推定された遅延量を示す遅延解析情報を管理端末210に送信する処理を行う。例えば、データ送受信制御回路264は、自装置に接続される下流側装置の種別毎に、予め定められた遅延量を示す種別遅延量情報を記憶する種別遅延量記憶部264Aを備えており、この種別遅延量情報に基づいて、自装置に接続された下流側装置の種別に対応する遅延量を特定することで、遅延量の推定を行う。自装置に接続された下流側装置の種別については、自装置に下流側装置が接続された際等に、データ送受信制御回路264がこの下流側装置から取得する処理を行い、取得された種別を示す種別情報を種別遅延量記憶部264Aに記憶しているものとする。ここで、本実施の形態における遅延量は、一フレームを一単位として遅延する量を示すものとする。例えば、遅延量が「D」である場合には、送信データを受信したフレームの次のフレームでACKデータを送信することができ、遅延量が「2D」である場合には、送信データを受信したフレームの二つ後のフレームでACKデータを送信することができることを示す。また、データ送受信制御回路264は、遅延解析情報を管理端末210に送信する際には、帯域割当要求をRCH等にて、管理端末210に送信する。なお、データ送受信制御回路264は、管理端末210との間の接続確立時等の予め定められた時に、遅延解析情報を管理端末210に送信する。
また、データ送受信制御回路264は、データ送受信装置260が管理端末210として動作する場合には、クライアント端末220より受信した遅延解析情報を、この遅延解析情報を送信してきたクライアント端末220を識別することのできる識別情報とともに、帯域割当制御回路265に与える。この識別情報として、例えば、クライアント端末220のIPアドレス又はMACアドレスを利用することができる。
【0078】
帯域割当制御回路265は、クライアント端末220毎の遅延量を示す遅延量情報を記憶する遅延量記憶部265Aを備える。そして、帯域割当制御回路265は、データ送受信装置260が管理端末210として動作する場合には、データ送受信制御回路264から、遅延解析情報及びこの遅延解析情報を送信してきたクライアント端末220を識別することのできる識別情報を受け取ると、この遅延解析情報で示される遅延量にこの識別情報を対応付けて、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報に登録する。
また、帯域割当制御回路265は、送受信するデータの帯域を割り当てる処理を制御する。例えば、帯域割当制御回路265は、データ送受信装置260が管理端末210として動作する場合には、データ送受信制御回路264からのデータ送受信状況通知を受けて帯域割当を行い、この帯域割当をFCHに反映するよう送受信タイミング制御回路163に指示する。特に、クライアント端末220からの応答が予め見込まれる場合には、先行してこの応答用の帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するよう、送受信タイミング制御回路163に指示する。ここで、帯域割当制御回路265は、先行帯域割当を行う際に、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送信先のクライアント端末220の遅延量を特定し、この遅延量に対応するフレームでACKデータ用の帯域が確保されるように、帯域を割り当てる。
さらに、帯域割当制御回路265は、データ送受信装置260が管理端末210として動作する場合には、クライアント端末220からのRCHによる帯域割当要求に対する応答であるACHを生成し、データ送受信制御回路264を介して、このACHを送信する処理を行う。
また、帯域割当制御回路265は、データ送受信装置260がクライアント端末220として動作する場合には、自装置から送信する入力データ等の蓄積量情報に基づいて帯域割当要求を生成し、データ送受信制御回路264を介して、TCH期間又はRCH期間にこの帯域割当要求を送信する処理を行う。
【0079】
なお、クライアント端末220の遅延量情報の収集は通信システム200の立ち上げ時のみに限るものではなく、管理端末210は、通信システム200の運用中に新規に接続されたクライアント端末220に対しても同様に遅延量情報の収集を行うものとする。また、クライアント端末220は、自端末に接続されている下流側装置の種別が変わり、推定される遅延量が変わった場合にも、解析遅延情報を管理端末210に送信する。このような場合には、管理端末210の帯域割当制御回路265は、遅延量情報を更新して、更新後の遅延量情報が変更後の遅延量を示すようにする。
【0080】
図12は、実施の形態2に係る通信システム200における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。図12では、管理端末210と、管理端末210に「2D」の遅延量を通知したクライアント端末220Bとの間で、送信データ及びACKデータが送受信されるものとして説明する。
【0081】
まず、管理端末210のデータ送受信制御回路264は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ30を生成して、この送信データ30をクライアント端末220Bに送信する処理を行う。
【0082】
送信データ30を受信したクライアント端末220Bでは、データ送受信制御回路264が、この送信データ30から入力データを抽出することで、出力データ31を生成し、この出力データ31を、クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bに出力する処理を行う。
【0083】
送信データ30を送信した管理端末210のデータ送受信制御回路264は、送信データ30に対してクライアント端末220Bからの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路265に与える。なお、この送受信状況通知には、応答が見込まれるクライアント端末220Bを識別するための識別情報が含まれているものとする。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路265は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送受信状況通知に含まれている、応答が見込まれるクライアント端末220Bに対応付けられている遅延量を特定する。そして、帯域割当制御回路265は、特定された遅延量に対応するフレームで、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路163に指示する。ここでは、クライアント端末220Bの遅延量は「2D」であるため、帯域割当制御回路265は、送信データ30を送信したフレーム#0から2フレーム後のフレーム#2に、ACKデータ用の帯域を割り当てる。なお、ここでも、帯域割当制御回路265は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、このACKデータ用の帯域を、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てる。そして、送受信タイミング制御回路163は、帯域割当制御回路265からの先行帯域割当指示に従い、データ送受信スケジュールを含むFCH32を生成する。データ送受信制御回路264は、送受信タイミング制御回路163が生成したFCH32を、クライアント端末220Bに送信する処理を行う。
【0084】
また、クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bは、出力データ31を受信すると、ACKデータ33をクライアント端末220Bに送信する。
【0085】
ACKデータ33を受信したクライアント端末220Bでは、既にACKデータ用の帯域が割り当てられているため、データ送受信制御回路264が、ACKデータ33をMACフレームに格納することで、送信データ34を生成して、FCH32に含まれているデータ送受信スケジュールにおいて規定されているACKデータ用の送信タイミングで、この送信データ34を管理端末210に送信する。
【0086】
遅延量情報による制御がない場合には、管理端末210の帯域割当制御回路265は、予め定められたタイミング、例えば、送信データ30を送信したフレーム#0の次のフレーム#1に含まれるタイミングFT1において、ACKデータ用の帯域割当が含まれているFCHを送信してしまう。図12に示す例では、ACKデータ33は、フレーム#2に含まれるタイミングで、クライアント端末220Bに入力されているため、クライアント端末220Bは、フレーム#1では、このACKデータ33を送信することはできない。このため、このACKデータ用の帯域割当は無駄になる。
これに対して、実施の形態2では、クライアント端末220毎の遅延量に応じて、ACKデータ用の帯域を割り当てるタイミングが調整されるため、ACKデータ用の帯域の割当が無駄となることを防止することができる。
【0087】
以上のように、実施の形態2に係る通信システム200によれば、ACKデータの先行帯域割当を実施する際、遅延量情報を参照することにより、ACKデータの帯域割当が無駄となることを防ぐことができ、通信システム200全体として、帯域の利用効率を向上させることができる。
【0088】
実施の形態3.
以下、実施の形態3に係る通信システム300について説明する。実施の形態3における管理端末310は、実施の形態2における管理端末210で説明した各クライアント端末220の遅延量を、リアルタイムに監視して、この遅延量を更新する。
【0089】
図10に示すように、実施の形態3に係る通信システム300は、管理端末310と、クライアント端末220A、220B、220Cとを備える。管理端末310には、サーバ130が接続されている。クライアント端末220Aには、情報処理装置140Aが接続されており、クライアント端末220Bには、情報処理装置140Bが接続されており、クライアント端末220Cには、情報処理装置140Cが接続されている。また、管理端末310及びクライアント端末220は、ネットワーク150に接続されている。そして、管理端末310は、サーバ130とネットワーク150との間の通信を中継し、クライアント端末220は、情報処理装置140とネットワーク150との間の通信を中継する。ここで、実施の形態3に係る通信システム300は、管理端末310で行う処理において、実施の形態2に係る通信システム200と異なっている。
【0090】
実施の形態2で述べたように、管理端末210が各クライアント端末220の通信遅延状況を管理することで、より適切にACKデータに対する先行帯域割当を行うことができる。実施の形態2では、各クライアント端末220の遅延量は、固定的なものとされている。これに対して、実施の形態3では、管理端末310は、通信システム300の運用中に、各クライアント端末220の通信遅延状況をリアルタイムに監視し、その通信遅延状況に変化が生じたときは、遅延量情報を更新し、先行帯域割当の制御に反映させる。
【0091】
図13は、管理端末310及びクライアント端末220として使用されるデータ送受信装置360の構成を概略的に示すブロック図である。データ送受信装置360は、MAC方式として、HiSWANa規格で採用されたTDMA方式を利用する。図示するように、データ送受信装置360は、制御部としての制御回路361と、送受信データ記憶部としての送受信データバッファ回路166と、スイッチ部167と、第1IF部168と、第2IF部169とを備える。実施の形態3におけるデータ送受信装置360は、制御回路361において、実施の形態2におけるデータ送受信装置260と異なっている。
【0092】
制御回路361は、同期情報制御部としての同期情報制御回路162と、送受信タイミング制御部としての送受信タイミング制御回路363と、データ送受信制御部としてのデータ送受信制御回路364と、帯域割当制御部としての帯域割当制御回路365とを備える。実施の形態3における制御回路361は、送受信タイミング制御回路363、データ送受信制御回路364及び帯域割当制御回路365において、実施の形態2における制御回路261と異なっている。
【0093】
実施の形態3における送受信タイミング制御回路363は、実施の形態2における送受信タイミング制御回路263と同様の処理を行うほか、以下の処理を行う。
送受信タイミング制御回路363は、データ送受信装置360が管理端末310として動作する場合には、帯域割当制御回路365からの先行帯域割当指示に従って、ACKデータ用の帯域が割り当てられたデータ送受信スケジュールを作成した場合には、このACKデータを受信するタイミングを先行割当受信タイミング情報としてデータ送受信制御回路364に通知する。
【0094】
実施の形態3におけるデータ送受信制御回路364は、実施の形態2におけるデータ送受信制御回路264と同様の処理を行うほか、以下の処理を行う。
データ送受信制御回路364は、データ送受信装置360が管理端末310として動作する場合に、各クライアント端末220の通信遅延状況のリアルタイム管理を行う。言い換えると、データ送受信制御回路264は、先行帯域割当で割り当てられた帯域をクライアント端末220が使用しているかどうか、先行帯域使用状況の監視を行い、各クライアント端末220の遅延量を更新する処理を行う。例えば、データ送受信制御回路364は、クライアント端末220に送信データを送信する処理を行った際に、この送信データを送信する処理を行ったクライアント端末220を識別する識別情報を監視情報として種別遅延量記憶部264Aに記憶させておくとともに、この送信データを送信したフレームよりも後に処理したフレーム数をカウントする。そして、データ送受信制御回路364は、送受信タイミング制御回路363から受け取った先行割当受信タイミング情報で示されるタイミングにおいて、クライアント端末220からACKデータを受信しなかった場合には、送信データを送信したフレームの次のフレームから、送信データを送信した後にこのクライアント端末220から帯域割当要求を受信したフレームまでのフレーム数を特定し、このクライアント端末220の識別情報と、特定されたフレーム数と、を示す監視結果情報を、帯域割当制御回路365に通知する。
【0095】
実施の形態3における帯域割当制御回路365は、実施の形態2における帯域割当制御回路265と同様の処理を行うほか、以下の処理を行う。
帯域割当制御回路365は、データ送受信装置360が管理端末310として動作する場合に、データ送受信制御回路364より監視結果情報を受け取ると、この監視結果情報に基づいて、先行帯域割当の割当タイミングが適正か(つまり先行帯域割当タイミングが早すぎないか、あるいは遅すぎないか)を判断し、適正ではない場合には、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を更新する処理を行う。例えば、帯域割当制御回路365は、データ送受信制御回路364より、監視結果情報を受け取ると、監視結果情報で示される識別情報に対応するクライアント端末220の遅延量を、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照することで特定する。そして、帯域割当制御回路365は、特定された遅延量で示されるフレームの遅延数と、監視結果情報で示されるフレーム数とを比較して、これらが異なる値である場合には、遅延量情報を更新して、このクライアント端末220に対応する遅延量が監視結果情報で示されるフレーム数を示すようにする。
【0096】
以下、図14及び図15を用いて、管理端末310が行う、遅延量情報の更新と先行帯域割当の制御とについて説明する。
【0097】
図14は、実施の形態3に係る通信システム300における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。図14では、管理端末310と、管理端末310に「D」の遅延量を通知したクライアント端末220Aとの間で、送信データ及びACKデータが送受信されるものとして説明する。また、図14は、クライアント端末220AへのACKデータの先行帯域割当のタイミングが早すぎて、帯域に無駄が発生し、管理端末310がその補正を行う一連の処理を示す。
【0098】
まず、管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ40を生成して、この送信データ40をクライアント端末220Aに送信する処理を行う。ここで、送信データ40は、TCHの送信時刻に送信される。
【0099】
送信データ40を受信したクライアント端末220Aでは、データ送受信制御回路364が、この送信データ40から入力データを抽出し、この入力データから出力データ41を生成し、この出力データ41を、クライアント端末220Aに接続されている情報処理装置140Aに出力する処理を行う。
【0100】
送信データ40を送信した管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送信データ40に対してクライアント端末220Aからの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路365に与える。なお、この送受信状況通知には、応答が見込まれるクライアント端末220Aを識別するための識別情報が含まれているものとする。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送受信状況通知に含まれている、応答が見込まれるクライアント端末220Aに対応付けられている遅延量を特定する。そして、帯域割当制御回路365は、特定された遅延量で示されるフレームで、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路363に指示する。ここでは、クライアント端末220Aの遅延量は「D」であるため、帯域割当制御回路365は、送信データ40を送信したフレーム#0から1フレーム後のフレーム#1に、ACKデータ用の帯域を割り当てる。なお、ここでも、帯域割当制御回路265は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、このACKデータ用の帯域を、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てる。そして、送受信タイミング制御回路363は、帯域割当制御回路365からの先行帯域割当指示に従い、データ送受信スケジュールを含むFCH42を生成する。また、送受信タイミング制御回路363は、先行帯域割当により割り当てたACKデータの受信タイミングを示す先行割当受信タイミング情報をデータ送受信制御回路364に与える。そして、データ送受信制御回路364は、送受信タイミング制御回路363が生成したFCH42を、クライアント端末220Aに送信する処理を行う。
【0101】
FCH42に含まれているデータ送受信スケジュールでは、ACKデータを送信する帯域が、フレーム#1に割り当てられているが、この時点では、クライアント端末220AにACKデータが蓄積されていないため、フレーム#1に含まれるタイミングで送信するデータがなく、無駄な帯域43が発生する。このとき、管理端末310のデータ送受信制御回路364は、先行割当受信タイミング情報で示されたタイミングでACKデータを受信しないため、先行帯域割当で割り当てられた帯域が空振りになったことを検知することができる。
【0102】
クライアント端末220Aに接続されている情報処理装置140Aは、出力データ41を受信すると、ACKデータ44をクライアント端末220Aに送信する。ここで、ACKデータ44は、FCH42で示されたACKデータの先行帯域割当で割り当てられている通信スロットで通信を行う場合の連結締め切りタイミングよりも後に、クライアント端末220Aで受信される。
【0103】
ACKデータ44を受信したクライアント端末220Aは、このACKデータ44を送信するため、フレーム#2のタイミングで、帯域割当要求を管理端末310に送信する。ここでは、TCHとして帯域割当要求を送信するようにしているため、例えば、クライアント端末220Aは、帯域割当要求をMACフレームに格納することで、送信データ45を生成して、この送信データ45を管理端末310に送信する。
【0104】
送信データ45を受信した管理端末310では、データ送受信制御回路364が、送信データ45に含まれている帯域割当要求を抽出して、帯域割当制御回路365に与える。そして、管理端末310の帯域割当制御回路365は、次のフレーム#3にACKデータの帯域を割り当て、送受信タイミング制御回路363は、この帯域割当が反映されたデータ送受信スケジュールを含むFCH46を生成し、データ送受信制御回路364は、フレーム#3において、このFCH46を送信する処理を行う。
【0105】
FCH46を受信したクライアント端末220Aでは、データ送受信制御回路364が、FCH46を受信したフレーム#3において、FCH46に含まれているデータ送受信スケジュールで規定された送信タイミングで、ACKデータ44を含む送信データ47を管理端末310に送信する。
【0106】
そして、管理端末310は、フレーム#1にて割り当てたACKデータ用の先行帯域割当が空振りになったことを検知し、フレーム#2にてクライアント端末220AよりACKデータ用の帯域割当要求があったことを考慮して、送信データに対するACKデータ用の先行帯域割当が早すぎたと判断し、次回以降の先行帯域割当に反映させる。例えば、データ送受信制御回路364は、クライアント端末220Aの識別情報と、送信データを送信したフレームの次のフレームから帯域割当要求を受信したフレームまでのフレーム数(ここでは、「2」)と、を示す監視結果情報を帯域割当制御回路365に通知する。そして、帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報において、クライアント端末220Aの遅延量を、「D」から「2D」に更新する。
【0107】
次に、管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ48を生成して、この送信データ48をクライアント端末220Aに送信する処理を行う。ここで、送信データ48は、フレーム#4にて送信される。
【0108】
送信データ48を受信したクライアント端末220Aでは、データ送受信制御回路364が、この送信データ48から入力データを抽出し、この入力データから出力データ49を生成し、この出力データ49を、クライアント端末220Aに接続されている情報処理装置140Aに出力する処理を行う。
【0109】
送信データ48を送信した管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送信データ48に対してクライアント端末220Aからの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路365に与える。なお、この送受信状況通知には、応答が見込まれるクライアント端末220Aを識別するための識別情報が含まれているものとする。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送受信状況通知に含まれている、応答が見込まれるクライアント端末220Aに対応付けられている遅延量を特定する。そして、帯域割当制御回路365は、特定された遅延量で示されるフレームで、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路363に指示する。ここでは、クライアント端末220Aの遅延量は「2D」に更新されているため、帯域割当制御回路365は、送信データ48を送信したフレーム#4から2フレーム後のフレーム#6において、先行帯域割当を行う。なお、ここでも、帯域割当制御回路365は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、このACKデータの帯域を、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てる。そして、送受信タイミング制御回路363は、帯域割当制御回路365からの先行帯域割当指示に従い、データ送受信スケジュールを含むFCH50を生成する。また、送受信タイミング制御回路363は、先行帯域割当により割り当てたACKデータの受信タイミングを示す先行割当受信タイミング情報をデータ送受信制御回路364に与える。そして、データ送受信制御回路364は、送受信タイミング制御回路363が生成したFCH50を、クライアント端末220Aに送信する処理を行う。
【0110】
また、クライアント端末220Aに接続されている情報処理装置140Aは、出力データ49を受信すると、ACKデータ51をクライアント端末220Aに送信する。
【0111】
ACKデータ51を受信したクライアント端末220Aでは、既にACKデータ用の帯域が割り当てられているため、データ送受信制御回路364が、ACKデータ51をMACフレームに格納することで、送信データ52を生成して、FCH50に含まれているデータ送受信スケジュールにおいて規定されているACKデータ用の送信タイミングで、この送信データ52を管理端末310に送信する。このとき、データ送受信制御回路364は、先行割当受信タイミング情報で示されたタイミングでACKデータを受信しているため、先行帯域割当で割り当てられた帯域が利用されていることを検知することができる。
【0112】
図15は、実施の形態3に係る通信システム300における、送信データ及びACKデータの送受信処理を示す概略図である。図15では、管理端末310と、管理端末310に「2D」の遅延量を通知したクライアント端末220Bとの間で、送信データ及びACKデータが送受信されるものとして説明する。また、図15は、クライアント端末220BへのACKデータの先行帯域割当のタイミングが遅すぎて、帯域に無駄が発生し、管理端末310がその補正を行う一連の処理を示す。
【0113】
まず、管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ60を生成して、この送信データ60をクライアント端末220Bに送信する処理を行う。ここで、送信データ60は、TCHの送信時刻に送信される。
【0114】
送信データ60を受信したクライアント端末220Bでは、データ送受信制御回路364が、この送信データ60から入力データを抽出することで、出力データ61を生成し、この出力データ61を、クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bに出力する処理を行う。
【0115】
クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bは、出力データ61を受信すると、ACKデータ62をクライアント端末220Bに送信する。ここで、図15においては、情報処理装置140Bは、送信データ60が送られてきたフレーム#0の次のフレーム#1に含まれるタイミングで、ACKデータ62をクライアント端末220Bに送信するものとする。
【0116】
ACKデータ62を受信したクライアント端末220Bは、このACKデータ62に対して先行帯域割当が行われていないため、フレーム#1に含まれるタイミングで、このACKデータ62を送信するための帯域割当要求を管理端末310に送信する。ここでは、TCHとして帯域割当要求を送信するようにしているため、例えば、クライアント端末220Bは、帯域割当要求をMACフレームに格納することで、送信データ63を生成して、この送信データ63を管理端末310に送信する。
【0117】
送信データ60を送信した管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送信データ60に対してクライアント端末220Bからの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路365に与える。なお、この送受信状況通知には、応答が見込まれるクライアント端末220Bを識別するための識別情報が含まれているものとする。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送受信状況通知に含まれている、応答が見込まれるクライアント端末220Bに対応付けられている遅延量を特定する。そして、帯域割当制御回路365は、特定された遅延量で示されるフレームで、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路363に指示する。ここでは、クライアント端末220Bの遅延量は「2D」であるため、帯域割当制御回路365は、送信データ60を送信したフレーム#0から2フレーム後のフレーム#2において、先行帯域割当を行う。なお、ここでも、帯域割当制御回路265は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、このACKデータの帯域を、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てる。
また、送信データ63を受信した管理端末310では、データ送受信制御回路364が、送信データ63に含まれている帯域割当要求を抽出して、帯域割当制御回路365に与える。そして、管理端末310の帯域割当制御回路365は、次のフレーム#3にACKデータの帯域を割り当てる。
そして、送受信タイミング制御回路363は、先行帯域割当及び帯域割当要求に基づく帯域割当が反映されたデータ送受信スケジュールを含むFCH64を生成する。また、送受信タイミング制御回路363は、先行帯域割当により割り当てたACKデータの受信タイミングを示す先行割当受信タイミング情報をデータ送受信制御回路364に与える。そして、データ送受信制御回路364は、フレーム#2において、このFCH64を送信する処理を行う。
【0118】
FCH64を受信したクライアント端末220Bでは、データ送受信制御回路364が、FCH64を受信したフレーム#2において、FCH64に含まれているデータ送受信スケジュールで規定された送信タイミングで、ACKデータ62を含む送信データ65を管理端末310に送信する。
このとき、ACKデータの帯域割当要求で割り当てられた帯域は、先行帯域割当で割り当てられる帯域よりも早い通信スロットに割り当てられるため、ACKデータ62を含む送信データ65は、通信スロットの早いほうの帯域で送信される。そして、先行帯域割当で割り当てられた帯域は、無駄な帯域66となる。このとき、データ送受信制御回路364は、先行割当受信タイミング情報で示されたタイミングでACKデータを受信しないため、先行帯域割当で割り当てられた帯域が空振りになったことを検知することができる。
【0119】
そして、管理端末310は、フレーム#2にて割り当てたACKデータ用の先行帯域割当が空振りになり、フレーム#1にてクライアント端末220BよりACKデータ用の帯域割当要求があったことを考慮して、送信データに対するACKデータ用の先行帯域割当が遅すぎたと判断し、次回以降の先行帯域割当に反映させる。例えば、データ送受信制御回路364は、クライアント端末220Bの識別情報と、送信データを送信したフレームの次のフレームから帯域割当要求を受信したフレームまでのフレーム数と、を示す監視結果情報を帯域割当制御回路365に通知する。そして、帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報において、クライアント端末220Bの遅延量を、「2D」から「D」に更新する。
【0120】
次に、管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送受信データバッファ回路166に記憶されている入力データから、送信データ67を生成して、この送信データ67をクライアント端末220Bに送信する処理を行う。ここで、送信データ67は、フレーム#3にて送信される。
【0121】
送信データ67を受信したクライアント端末220Bでは、データ送受信制御回路364が、この送信データ67から入力データを抽出し、この入力データから出力データ68を生成し、この出力データ68を、クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bに出力する処理を行う。
【0122】
送信データ67を送信した管理端末310のデータ送受信制御回路364は、送信データ67に対してクライアント端末220Bからの応答が見込まれるため、応答見込み情報を含む送受信状況通知を帯域割当制御回路365に与える。なお、この送受信状況通知には、応答が見込まれるクライアント端末220Bを識別するための識別情報が含まれているものとする。このような送受信状況通知を受け取った帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を参照して、送受信状況通知に含まれている、応答が見込まれるクライアント端末220Bに対応付けられている遅延量を特定する。そして、帯域割当制御回路365は、特定された遅延量で示されるフレームで、ACKデータのデータ量を含めて帯域を割り当てる先行帯域割当を行い、この先行帯域割当を反映するように、送受信タイミング制御回路363に指示する。ここでは、クライアント端末220Bの遅延量は「D」に更新されているため、帯域割当制御回路365は、送信データ67を送信したフレーム#3から1フレーム後のフレーム#4において、先行帯域割当を行う。なお、ここでも、帯域割当制御回路365は、連結締め切りタイミングに余裕を持たせるため、このACKデータの帯域を、TCH期間において、なるべく遅い通信スロットに割り当てる。そして、送受信タイミング制御回路363は、帯域割当制御回路365からの先行帯域割当指示に従い、データ送受信スケジュールを含むFCH69を生成する。また、送受信タイミング制御回路363は、先行帯域割当により割り当てたACKデータの受信タイミングを示す先行割当受信タイミング情報をデータ送受信制御回路364に与える。データ送受信制御回路364は、送受信タイミング制御回路363が生成したFCH69を、クライアント端末220Bに送信する処理を行う。
【0123】
また、クライアント端末220Bに接続されている情報処理装置140Bは、出力データ68を受信すると、ACKデータ70をクライアント端末220Bに送信する。
【0124】
ACKデータ70を受信したクライアント端末220Bでは、既にACKデータ用の帯域が割り当てられているため、データ送受信制御回路364が、ACKデータ70をMACフレームに格納することで、送信データ71を生成して、FCH69に含まれているデータ送受信スケジュールにおいて規定されているACKデータ用の送信タイミングで、この送信データ71を管理端末310に送信する。このとき、データ送受信制御回路364は、先行割当受信タイミング情報で示されたタイミングでACKデータを受信しているため、先行帯域割当で割り当てられた帯域が利用されていることを検知することができる。
【0125】
以上のように、実施の形態3に係る通信システム300によれば、管理端末310が送信データに対するACKデータの先行帯域割当を実施する際、クライアント端末220毎にACKデータを返信するタイミングが変化しても、そのようなタイミングの変化に対応して、管理端末310で管理する遅延量を補正することができるため、先行帯域割当が無駄となることを防ぎ、通信システム300全体として帯域の利用効率が向上し、通信速度(スループット)が向上する。
【0126】
以上に記載した実施の形態3においては、管理端末310の遅延量記憶部265Aには、クライアント端末220から通知された遅延量が記憶されているが、これに限定されるものではなく、例えば、クライアント端末220毎に、遅延量の初期値(例えば、D)が予め記憶されており、各クライアント端末220の通信遅延状況に応じて、この遅延量を更新していってもよい。
【0127】
以上に記載した実施の形態3においては、帯域割当制御回路365は、遅延量記憶部265Aに記憶されている遅延量情報を、監視結果情報で示される、フレーム数とを比較して、これらが異なる値である場合には、遅延量情報を更新して、送信データを送信したフレームの次のフレームから帯域割当要求を受信したフレームまでのフレーム数を示すようにしているが、このような更新方法に限定されるものではない。例えば、データ送受信制御回路364が、帯域割当制御回路365が予め割り当てたACK用の帯域よりも前に、クライアント端末220から帯域割当要求を受けた場合には、遅延量情報を更新して、このクライアント端末220の遅延量が、予め定められたフレーム、例えば、1フレームだけ早いものを示すようにしてもよい。また、データ送受信制御回路364が、帯域割当制御回路365が予め割り当てたACK用の帯域よりも後に、クライアント端末220から帯域割当要求を受けた場合には、遅延量情報を更新して、このクライアント端末220の遅延量が、予め定められたフレーム、例えば、1フレームだけ遅いものを示すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
100:通信システム、 110,210,310:管理端末、 120,220:クライアント端末、 130:サーバ、 140:情報処理装置、 150:ネットワーク、 160,260,360:データ送受信装置、 161,261,361:制御回路、 162:同期情報制御回路、 163,363:送受信タイミング制御回路、 164,264,364:データ送受信制御回路、 264A:種別遅延量記憶部、 165,265,365:帯域割当制御回路、 265A:遅延量記憶部、 166:送受信データバッファ回路、 167:スイッチ部、 168:第1インターフェース部、 169:第2インターフェース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続されたインターフェース部と、
前記インターフェース部を介して、前記ネットワークに接続されたクライアント端末との間で、データを送受信する処理を行うデータ送受信制御部と、
前記ネットワークにおいて、前記クライアント端末がデータを送受信することのできる帯域を割り当てる帯域割当制御部と、
前記帯域割当制御部が割り当てた帯域を示すスケジュールを生成し、前記データ送受信制御部に、当該スケジュールを前記クライアントへ送信させる送受信タイミング制御部と、
を備え、
前記帯域割当制御部は、前記データ送受信制御部が、前記インターフェース部を介して、前記クライアントへ送信する処理を行ったデータに対して、前記クライアント端末からの応答が見込まれる場合には、予め前記応答用の帯域を割り当てること
を特徴とするデータ送受信装置。
【請求項2】
前記帯域割当制御部は、前記クライアント端末より前記応答用の帯域割当要求を受ける前に、前記応答用の帯域を割り当てること
を特徴とする請求項1に記載のデータ送受信装置。
【請求項3】
前記帯域割当制御部は、1ビーコン周期内において、前記応答用の帯域を、前記応答以外の帯域よりも遅い時間に割り当てること
を特徴とする請求項1又は2に記載のデータ送受信装置。
【請求項4】
前記帯域割当制御部は、前記応答用の帯域を、1ビーコン周期の最も遅い時間から順に割り当てること
を特徴とする請求項3に記載のデータ送受信装置。
【請求項5】
前記クライアント端末が、前記データ送受信装置よりデータを受信してから、当該データに対する応答を送信するまでの遅延量を示す遅延量情報を記憶する遅延量記憶部をさらに備え、
前記帯域割当制御部は、前記データ送受信制御部が、前記インターフェース部を介して、前記クライアントへ送信する処理を行ったビーコン周期から、前記遅延量情報で示される遅延量を遅らせたビーコン周期に、前記応答用の帯域を割り当てること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のデータ送受信装置。
【請求項6】
前記データ送受信制御部は、予め定められた時に、前記クライアント端末から前記遅延量を取得する処理を行うこと
を特徴とする請求項5に記載のデータ送受信装置。
【請求項7】
前記データ送受信制御部は、前記帯域割当制御部により予め割り当てられた前記応答用の帯域が、前記応答の送信に使用されたか否かを検出し、前記帯域割当制御部により予め割り当てられた前記応答用の帯域が、前記応答の送信に使用されていない場合には、前記帯域割当制御部に、前記遅延量情報を更新させること
を特徴とする請求項5又は6に記載のデータ送受信装置。
【請求項8】
前記データ送受信制御部は、前記帯域割当制御部により予め前記応答用に割り当てられた帯域が含まれるビーコン周期よりも遅いビーコン周期において、前記クライアント端末から帯域割当要求を受信した場合には、前記帯域割当制御部に、前記遅延量に対応するビーコン周期が遅くなるように、前記遅延量情報を更新させること
を特徴とする請求項7に記載のデータ送受信装置。
【請求項9】
前記データ送受信制御部は、前記帯域割当制御部により予め前記応答用に割り当てられた帯域が含まれるビーコン周期よりも早いビーコン周期において、前記クライアント端末から帯域割当要求を受信した場合には、前記帯域割当制御部に、前記遅延量に対応するビーコン周期が早くなるように、前記遅延量情報を更新させること
を特徴とする請求項7又は8に記載のデータ送受信装置。
【請求項10】
ネットワークに接続されたインターフェース部と、
前記インターフェース部を介して、前記ネットワークに接続されたクライアント端末との間で、データを送受信する処理を行うデータ送受信制御部と、
前記ネットワークにおいて、前記クライアント端末がデータを送受信することのできる帯域を割り当てる帯域割当制御部と、
前記帯域割当制御部が割り当てた帯域を示すスケジュールを生成し、前記データ送受信制御部に、当該スケジュールを前記クライアントへ送信させる送受信タイミング制御部と、
を備えるデータ送受信装置が行うデータ送受信方法であって、
前記データ送受信制御部が、前記インターフェース部を介して、前記クライアント端末へ送信する処理を行ったデータに対して、前記クライアント端末からの応答が見込まれる場合には、前記帯域割当制御部が、予め前記応答用の帯域を割当てる過程を有すること
を特徴とするデータ送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−199745(P2012−199745A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62086(P2011−62086)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】