説明

データ通信システム、送信側機器およびサーバ機器

【課題】データ通信量を削減する。
【解決手段】車載機器1は、サーバ機器2からサービス情報を受信するサービス情報受信部11と、サービス情報に基づいて、該当する装置5からデータを収集するプローブデータ収集部12と、収集データから、サービスごとに必要なデータを抽出するサービス対応データ抽出部13と、抽出データを圧縮するサービス対応データ圧縮部14と、圧縮データをサーバ機器2に送出するデータ送出部15とを備え、サーバ機器2は、サービス情報を車載機器1に送出するサービス情報送出部21と、データ送出部15からのデータを受信するデータ受信部22と、受信データから、サービスごとにデータを抽出するサービス対応データ抽出部23と、抽出データを復号するデータ復号部24と、復号データを該当するサービスサーバ7に送出するサービスデータ送出部25とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介して送出する送信側機器と、送信側機器からのデータをサービスサーバに送出するサーバ機器とを備えたデータ通信システムにおいて、特にデータ通信量を削減するデータ通信システム、送信側機器およびサーバ機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンの登場により、携帯電話に多くのセンサが設けられるようになった。そして、センサで取得された人の健康状態やライフログなどの情報を、クラウド技術を利用して収集し、サーバ機器で管理するといったサービスが提供可能となってきた。
また、自動車においても、各種ECU(Electronic Control Unit)をセンサとして用いることで、渋滞情報や、ワイパーの動作状況による天候情報、ABS(Antilocked Braking System)などのブレーキや滑り止め装置の動作状況による道路状態情報などが取得できる。そして、サーバ機器側で、広域ネットワークを介して、これらの情報を経路案内情報として収集することで、そのポイントに向かう自動車に対して当該経路案内情報を配信するサービスが提供可能となってきた。
さらに、電車などの軌道上を走る移動物体や航空機などにおいても、走行中に受ける風の力や、走行時の細かい振動の状況や障害物との距離の情報などを様々な目的でサーバ機器で管理することで、各種サービスが提供可能となる。
【0003】
従来、このようなサービスが普及するにはコストが課題であった。しかしながら、スマートフォンが登場し、普段持っている携帯電話を自動車に接続することである程度の情報収集が可能となり、また、人の健康状態を把握するための簡単なデバイスなども登場してきており、十分普及の兆しが出てきている。
【0004】
一方、上記のようなサービスが急速に普及すると、サービスの種別も増えることになる。よって、サービス提供に必要な情報収集も増加し、そのデータ通信量も急激に増加することが考えられる。データ通信量の急激な増加は、ビジネスモデルによって、ユーザ、メーカまたはキャリアのいずれかに対してコスト負担を強いることになる。
それに対して、従来から、送信側機器とサーバ機器との間でのデータ通信量の削減手法が開示されている(例えば特許文献1−3参照)。
【0005】
この特許文献1に開示された手法では、複数の計算機間でデータを必ず毎回送るデータとそうではないデータとに分けて送ることで、通信トラフィックの集中時に最低限のデータのみを送れるようにしている。すなわち、通信トラフィックの集中を避けるために、リアルタイム性のあるデータとそうではないデータとに分け、直ちに送信すべきか否かを判断している。
【0006】
また、特許文献2に開示された手法では、前回送信データとの差分部分のデータのみを送信している。また、特許文献3に開示された手法は、差分送信に関するものであり、符号化してデータを送ることによりデータ通信量の削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−265437号公報
【特許文献2】特開平8−298525号公報
【特許文献3】特開平9−200201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1では、通信トラフィックの集中を避けるために、リアルタイム性のあるデータとそうではないデータとに分け、直ちに送信すべきか否かを判断している。しかしながら、決まった時間に送るべきデータ通信量の削減については考慮されていない。
また、特許文献2,3では、毎回違う情報を送信する場合におけるデータ通信量の削減については考慮されていない。また、特許文献2では、データが前回送信データと同一であった場合に、同一である旨を通知する必要がある。
したがって、特許文献1−3に開示された従来の手法では、上記サービスで必要な情報を収集する際のデータ通信量の削減を図ることは難しいという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介して送出する送信側機器と、送信側機器からのデータをサービスサーバに送出するサーバ機器とを備えたデータ通信システムにおいて、データ通信量を削減することができるデータ通信システム、送信側機器およびサーバ機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るデータ通信システムは、サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介して送出する送信側機器と、送信側機器からのデータをサービスサーバに送出するサーバ機器とを備え、送信側機器は、サーバ機器からサービスに関する情報を受信するサービス情報受信部と、サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、該当する装置からデータを収集するデータ収集部と、サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、データ収集部により収集されたデータから、サービスごとに必要なデータを抽出するサービス対応データ抽出部と、サービス対応データ抽出部により抽出されたデータを圧縮するサービス対応データ圧縮部と、サービス対応データ圧縮部により圧縮されたデータをネットワークを介してサーバ機器に送出するデータ送出部とを備え、サーバ機器は、サービスに関する情報をネットワークを介して送信側機器に送出するサービス情報送出部と、データ送出部からのデータを受信するデータ受信部と、データ受信部により受信されたデータから、サービスごとにデータを抽出するデータ抽出部と、データ抽出部により抽出されたデータを復号するデータ復号部と、データ復号部により復号されたデータを該当するサービスサーバに送出するサービスデータ送出部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、上記のように構成したので、サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介して送出する送信側機器と、送信側機器からのデータをサービスサーバに送出するサーバ機器とを備えたデータ通信システムにおいて、データ通信量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るデータ通信システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るデータ通信システムによるサービス情報受信動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1におけるサービス情報例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるプローブデータ収集部による動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1におけるサービス対応データ抽出部による動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1におけるサービル対応データ抽出部で用いるデータ例を示す図であり、(a)抽出前のプローブデータ例を示す図であり、(b)抽出・加工後のデータ例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1におけるサービス対応データ圧縮部による動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1におけるサービス対応データ圧縮部による圧縮前のデータ例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1におけるサービス対応データ圧縮部による圧縮後のデータ例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1におけるサービス対応データ抽出部およびデータ復号部による動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るデータ通信システムの構成を示す図である。なお以下では、自動車に搭載された車載機器(送信側機器)1から、サービスサーバ7からのサービス提供に必要なデータを、サーバ機器2を介して送出することで、サービスサーバ7からサービスを受けるテレマティクスサービスに、本発明のデータ通信システムを適用した場合について説明する。
このデータ通信システムは、車載機器1およびサーバ機器2から構成されている。この車載機器1とサーバ機器2との間は、携帯電話網やDSRC(Dedicated Short Range Communications)などを利用した広域ネットワーク3により接続されている。
【0014】
車載機器1は、広域の通信機能を保持した機器であり、広域ネットワーク3を介してサーバ機器2との間で通信可能に構成されている。また、車載機器1は、CAN(Controller Area Network)などの自動車内の車載ネットワーク(ローカルネットワーク)4を介して、自動車に搭載された各種装置(ECUなどの制御機器やセンサなど)5と接続されている。なお、車載ネットワーク4に接続可能な装置5の数に上限がある場合は、複数の車載ネットワーク4を用いて接続を行う。
【0015】
この車載機器1は、図1に示すように、サービス情報受信部11、プローブデータ収集部12、サービス対応データ抽出部13、サービス対応データ圧縮部14およびデータ送出部15から構成されている。
【0016】
サービス情報受信部11は、車載機器1がサーバ機器2と初めて通信を行った際に、サーバ機器2から、提供されるサービスに関する情報(サービス情報)を受信し、管理するものである。このサービス情報には、サービスごとに、例えば、サービスを一意に特定するID(サービスID)、サービス提供に必要なデータ種別、データの送信間隔や、該当する装置5へデータ取得要求を行う要求タイミングなどが含まれている。
また、サービス情報受信部11は、サーバ機器2からサービス情報に対する変更情報が通知された場合には、管理しているサービス情報を適宜変更する。
【0017】
プローブデータ収集部12は、サービス情報受信部11により管理されているサービス情報に基づいて、該当する装置5から各サービス提供に必要なデータをプローブデータとして収集するものである。この際、プローブデータ収集部12は、該当する装置5から出力され車載ネットワーク4上を流れるデータを取捨選択することで必要なデータを収集したり、適切なタイミングで該当する装置5に対してデータ取得要求を出すことでデータを収集する。
ここで、「適切なタイミング」とは、車載ネットワーク4上を流れるデータを止めることなくデータを収集することができるタイミングのことであり、予め決められた手順に沿って空き時間などを利用してデータを収集する。
また、各種装置5は、車載機器1と車載ネットワーク4を介して接続されるものとしているが、これに限るものではなく、車載機器1が保持している装置や直接接続された装置であってもよい。この場合には、プローブデータ収集部12は、車載ネットワーク4を介することなく、直接、各種装置5から必要なデータを収集する。
【0018】
サービス対応データ抽出部13は、サービス情報受信部11により管理されているサービス情報に基づいて、プローブデータ収集部12により収集されたプローブデータからサービスごとに必要なデータを抽出し、当該サービスに対応したデータとして加工するものである。
【0019】
サービス対応データ圧縮部14は、サービス対応データ抽出部13により抽出・加工されたデータに対して、できるだけ小さいデータ通信量となるように圧縮処理を行うものである。
【0020】
データ送出部15は、サービス情報受信部11により管理されているサービス情報に基づいて、所定の送信間隔で、サービス対応データ圧縮部14により圧縮された各データをまとめてサービス対応データとして、広域ネットワーク3を介してサーバ機器2に送出するものである。
【0021】
サーバ機器2は、広域ネットワーク3を介して車載機器1との間で通信可能に構成されている。また、サーバ機器2は、ネットワーク6を介して、実際に車載機器1に対してサービスを提供するサービスサーバ7と接続されている。ただし、サーバ機器2とサービスサーバ7が実態として同一の場合には、ネットワーク6は仮想的なネットワークとなり、プロセス間の通信となる。
【0022】
このサーバ機器2は、図1に示すように、サービス情報送出部21、データ受信部22、サービス対応データ抽出部23、データ復号部24およびサービスデータ送出部25から構成されている。
【0023】
サービス情報送出部21は、初めて通信を行った車載機器1に対して、該当するサービス情報を、広域ネットワーク3を介して送出するものである。また、サービス情報送出部21は、サービス情報が変更された場合には、その変更情報を車載機器1に送出する。
【0024】
データ受信部22は、車載機器1からのサービス対応データを受信するものである。
サービス対応データ抽出部23は、データ受信部22により受信されたサービス対応データを時間ごとのデータに分割し、サービス対応データのサービスIDに基づいて、サービスごとにデータを抽出するものである。
【0025】
データ復号部24は、サービス対応データ抽出部23により抽出されたデータを復号するものである。
サービスデータ送出部25は、データ復号部24により復号されたデータを、ネットワーク6を介して該当するサービスサーバ7に送出するものである。
【0026】
次に、上記のように構成されたデータ通信システムの動作について説明する。
まず、データ通信システムによるサービス情報受信動作について、図2,3を参照しながら説明する。
【0027】
データ通信システムによるサービス情報受信動作では、図2に示すように、まず、車載機器1は、初めて電源が投入されると、サーバ機器2に対して通信接続を要求する(ステップST201)。
次いで、サーバ機器2は、車載機器1からの通信接続要求に応じ、当該車載機器1との間で通信接続を行う(ステップST202)。
【0028】
次いで、車載機器1は、例えば携帯電話のSIM番号や製造番号など、自機を一意に特定するためのID(車載機器ID)をサーバ機器2に通知する(ステップST203)。
次いで、サーバ機器2は、車載機器1からの車載機器IDを受信し、認証処理を行う(ステップST204)。
【0029】
ここで、サービスサーバ7がサーバ機器2を介して車載機器1に提供するサービスは、事前に申し込みがされているものとする。よって、サーバ機器2は、ステップST204において受信した車載機器IDから、該当するサービスを特定することができる。そして、サーバ機器2のサービス情報送出部21は、当該サービスに関する情報(サービス情報)を当該車載機器1に送信する(ステップST205)。
次いで、車載機器1のサービス情報受信部11は、サービス情報送出部21からのサービス情報を受信する(ステップST206)。
【0030】
ここで、図3は、サービスサーバ7からサーバ機器2を介して車載機器1に提供されるサービス情報例を示す図である。
図3に示すサービス情報例では、車載機器IDと、この車載機器1が提供を受けるサービスの数、サービスID、サービスIDごとのサービス情報が示されている。サービス情報には、サービス提供に必要なデータ種別(時刻、経度、緯度、標高、速度、方向、ワイパー情報、ABS,TCS情報やエアバッグ情報など)、データの送信間隔や、該当する装置5への要求タイミングなどが含まれている。
ここで、送信間隔は、例えば、渋滞情報や道路の滑り情報などについては短いほどよい。一方、自動車の故障の予兆などを知るための情報は、それほど頻繁である必要はない。また、サービスによって要求される送信間隔は異なっていてもよい。
【0031】
次いで、車載機器1は、サーバ機器2との通信接続を切断する処理を行う(ステップST207)。
また、サーバ機器2も同様に、車載機器1との通信接続を切断する処理を行う(ステップST208)。
【0032】
次いで、車載機器1のサービス情報受信部11は、ステップST206において受信したサービス情報を保存する(ステップST209)。以上により、車載機器1側の処理を終了する。
一方、サーバ機器2は、当該車載機器1に該当するサービス情報を送信済みであることを記憶する(ステップST210)。以上により、サーバ機器2側の処理を終了する。
【0033】
次に、プローブデータ収集部12による動作について、図4を参照しながら説明する。
プローブデータ収集部12による動作では、図4に示すように、まず、サービス情報受信部11により管理されているサービス情報を読み出す(ステップST401)。
次いで、読み出したサービス情報から、ECUなどの装置5にデータ取得要求を出さなければ収集できないデータ種別を抽出する(ステップST402)。なお、車載ネットワーク4上を流れるデータの種別と、装置5にデータ取得要求を出さなければ収集できないデータの種別とは、通常、予め決められている。例えば、図3に示す例では、速度情報は車載ネットワーク4上を定期的に流れてくるが、時刻、経度、緯度や標高などを示す情報は車載ネットワーク4上を流れるものではなく、装置5にデータ取得要求を出す必要がある。
次いで、抽出したデータ種別に基づいて、車載ネットワーク4を介して、該当するECUなどの装置5に対してデータ取得要求を出し、プローブデータを収集する(ステップST403)。ここで、CANなどの車載ネットワーク4では、予め決められたタイミングにしか要求を出すことができない場合が多い。このような場合には、図3のサービスID:8に示すように、サービス情報から要求タイミングを抽出することで、そのタイミングに従ってデータ取得要求を行う。
【0034】
次いで、車載ネットワーク4上を流れるデータを取捨選択して必要なデータを吸上げる(ステップST404)。例えば、速度情報は、車載ネットワーク4上を、速度情報として流れてくる場合もあれば、軸の回転情報として流れてくる場合もある。加速度情報や位置情報などについても、車載ネットワーク4上を流れるデータから取得する。
なお、装置5が、車載ネットワーク4を経由することなく、車載機器1が保持している場合や直接接続されている場合には、直接、情報を収集するようにしても構わない。例えば車載機器1がGPSを保持している場合には、位置情報などは必ずしも車載ネットワーク4を介して収集しなくてもよい。
【0035】
また、ステップST403,ST404における各処理は、逐次動作である必要はなく、並行して動作するようにしてもよい。すなわち、ステップST403ではタイミングを見てデータ収集を行っているが、このタイミングを見ている間にも車載ネットワーク4上には情報が流れてくる。そのため、ステップST403における処理を行っている最中にも、ステップST404における処理を行って情報を吸上げるようにしても構わない。なお、ステップST404における処理では、一定の周期(例えば1分などの単位)で情報を吸上げる。
【0036】
次いで、ステップST404における処理が一周期分完了すると、吸上げた生データから所望の形式のデータに加工して、プローブデータとする(ステップST405)。例えば、軸の回転数から走行速度を計算したり、平均の計算などを行う。
このステップST403において収集したデータおよびステップST405における加工処理後のデータの例を図6(a)に示す。なお、図6(a)に示すデータ601では、すべてのサービスで必要となるコアデータ(時刻、緯度、経度や標高など)と、サービスにより必要/不要が異なるセンシングデータ(温度、ワイパー、雨量、明るさ、ABSやTCSなど)とが、それぞれ決められたバイト数で表現されている。
【0037】
その後、シーケンスは再びステップST403に戻り、ステップST403〜405におけるECU情報読み出し処理と、ネットワーク情報吸上げ処理および情報加工処理とを繰り返し続ける。なお、ステップST405における情報加工処理を行っている最中にも、並行してステップST403,ST404における処理は動作している方がよい。
【0038】
次に、サービス対応データ抽出部13による動作について、図5を参照しながら説明する。
サービス対応データ抽出部13による動作では、図5に示すように、まず、現在の時刻を確認する(ステップST501)。
【0039】
次いで、保持している過去のサービス対応履歴を参照し、現在の時刻に送出すべきプローブデータを確認する(ステップST502)。例えば、サービス情報に含まれる送信間隔が5分である場合には、過去のサービス対応履歴を参照して、過去5分以内にプローブデータを抽出したか否かを確認することで、このサービスに対応すべきかどうかを判断する。また、初めて抽出を行う場合には、サービス対応履歴が存在しないため、必ず対応するようにしてもよいし、複数あるサービスの中で送信間隔が最も短いもののみに対応し、なるべく複数のサービス対応が重ならないようにしても構わない。また、同じような情報を含むサービスに対して、できるだけ同じタイミングで対応する方が好ましく、そのようにしても構わない。
【0040】
次いで、ステップST502における確認結果に応じて、プローブデータ収集部12により収集されたプローブデータの中から、対応するサービスで必要なデータのみを抽出し、加工する(ステップST503)。例えば、図6の例では、まず、図6(a)に示すプローブデータ601から、コアデータと、所定のセンシングデータ(温度、ワイパー、雨量および明るさ)とを抽出している。そして、図6(b)に示すように、上記抽出データに、サービスIDを付加し、所定のフォーマットに従った順に配置したデータ602を作成している。
なお、複数のサービスに対応したデータを抽出・加工する場合には、例えば、複数のサービスを合わせた1つのIDでデータ602を実現するようにしてもよい。また、複数のサービスIDをデータ602内に含めるようにしてもよい。あるいは、サービスをビットで表現し、IDの和で示すようにしても構わない。
【0041】
次いで、当該サービスに対するサービス対応履歴を更新して保存する(ステップST504)。
【0042】
次に、サービス対応データ圧縮部14による動作について、図7を参照しながら説明する。
なお、図8はサービス対応データ圧縮部14による圧縮前のデータ例を示し、図9は圧縮後のデータ例を示している。また、図8には、サービス対応データ抽出部13により抽出・加工された5分間分のデータを示している。
【0043】
サービス対応データ圧縮部14による動作では、図7に示すように、まず、サービス対応データ抽出部13により抽出・加工された所定時間分のデータのうち、ある時刻でのデータを抽出する(ステップST701)。例えば、図8の例では、まず、0分のデータを抽出する。
次いで、データ種別ごとの対応する過去のデータを読み出す(ステップST702)。また、この際、読み出したデータを過去データとして保存する。
【0044】
次いで、ステップST701において抽出したデータと、ステップST702において読み出した過去データとの差分を計算する(ステップST703)。例えば位置情報において、ステップST702において読み出した過去データが「東経135度30分30秒」であり、ステップST701において抽出した1分後のデータが「東経135度30分25秒」であった場合には、「マイナス5秒」として表現できる。すなわち、符号付の整数のみで表現できるため、元のデータが例えば8バイトであったとしても、1バイト程度で圧縮表現することが可能である。緯度、高さや時刻などについても同様の手法で差分を計算する。
また、圧縮対象のデータを、上記のように過去データとの差分値(符号付の整数)により表現するのではなく、差分値が0である(すなわち値が同一の)過去データの位置を指定することで表現するようにしてもよい。また、上記では、同一のデータ種別の過去データを用いて差分による圧縮表現を行う場合について示したが、これに限るものではなく、異なるデータ種別の過去データを用いて差分による圧縮表現を行うようにしてもよい。
【0045】
また、ステップST701において抽出したデータと、対応するデフォルト値とを比較し、デフォルト値から変化したデータのみを抽出する(ステップST704)。すなわち、もともと1バイトや1ビットで表現されているデータは、差分計算を行っても変化しない場合が多い。このような場合には、通常状態をデフォルトで設定しておき、通常状態から変化した場合にのみデータを送出する方が効率がよい。なお、差分による圧縮表現のように一定のフォーマットでテータ送出を行う場合には、データ全体での位置からデータ種別を示すことができるが、一部のデータのみを送出する場合には、データ全体での位置からデータ種別を示すことができない。
そのため、一部のデータのみを送出する場合には、データ種別を一意に特定するID(データID)を付けて送出する。なお、デフォルト値から変化したデータのみをIDとともに送出する場合に、差分による圧縮表現で構成する場合と比べてデータ通信量が大きくなるか小さくなるかは全体のデータ量に依存する。
【0046】
また、ステップST701において抽出したデータと、ステップST702において読み出した過去データとを比較し、同一のデータ種別の過去データから変化したデータのみを抽出する(ステップST705)。すなわち、上記デフォルト値からの変化以外にも、前回送信を行った同一のデータ種別の過去データからの変化が少ない場合も多い。例えば、温度やワイパーの動作状況などがそれに該当する。
このような場合には、過去データから変化した場合にのみデータを送出する方が効率がよい。また、この場合にも、抽出したデータ種別を一意に特定するID(データID)を付して送出する。なお、全体としてみた場合に、データ通信量が小さくなるとは限らない。
【0047】
そして、ステップST703における差分による圧縮表現と、ステップST704におけるデフォルト値から変化したデータおよびデータIDによる圧縮表現と、ステップST705における過去データから変化したデータおよびデータIDによる圧縮表現とをそれぞれ比較し、最もデータ通信量の小さいものを選択して送出形式とする(ステップST706)。
【0048】
その後、サービス対応データ抽出部13により抽出・加工された所定時間分のデータに対して、未圧縮のデータが存在するかを判断する(ステップST707)。
このステップST707において、未圧縮のデータが存在すると判断した場合に、シーケンスは再びステップST701に戻り、次の時刻でのデータに対する圧縮処理を行う。 一方、ステップST707において、全てのデータに対して圧縮処理を行ったと判断した場合には、シーケンスは終了する。このサービス対応データ圧縮部14により圧縮された結果例を図9に示す。
【0049】
そして、サービス対応データ圧縮部14により圧縮されたデータは、データ送出部15により、サービス対応データとして、広域ネットワーク3を介してサーバ機器2に送出される。その後、このサービス対応データは、サーバ機器2のデータ受信部22により受信され、サービス対応データ抽出部23に渡される。
なお、サービス対応データ圧縮部14は、圧縮した複数のデータがデータ送出部15によりまとめて送出される場合において、当該各データ内に同一種別のデータが含まれる場合には、次回からは当該各データ間で圧縮表現を行うようにしてもよい。すなわち、例えば図8に示すような5分間のデータを圧縮してまとめて送出する場合、最初は、以前に送出した過去データを用いて0〜4分での全てのデータに対して差分による圧縮表現を行うことになるが、2回目以降は、例えばこれらのデータのうち、0分でのデータはそのままのデータとし、1〜4分でのデータに対しては、それぞれ1つ前(1分前)のデータを用いて差分による圧縮表現を行う。
【0050】
次に、サービス対応データ抽出部23およびデータ復号部24による動作について、図10を参照しながら説明する。
サービス対応データ抽出部23およびデータ復号部24による動作では、図10に示すように、まず、サービス対応データ抽出部23は、データ受信部22により受信されたサービス対応データを時刻ごとに分割する。そして、分割したデータに含まれるサービスIDおよびデータIDに基づいて、サービスおよびデータ種別を特定し、該当するフィールドに当該データを入れる(ステップST1001)。
【0051】
次いで、データ復号部24は、サービス対応データ抽出部23により分割・抽出されたデータが差分により圧縮表現されたものである場合には、このデータに過去データを加算することで元のデータに復号する(ステップST1002)。
【0052】
一方、データ復号部24は、サービス対応データ抽出部23により分割・抽出されたデータが、デフォルト値からの変化したデータのみを抽出することで圧縮表現されたものである場合には、対応するデフォルト値を用いて元のデータに復号する(ステップST1003)。すなわち、復号対象のデータと、当該データ以外の種別のデータとして対応するデフォルト値を当てはめることで元のデータに復号する。
【0053】
一方、データ復号部24は、サービス対応データ抽出部23により分割・抽出されたデータが、過去データから変化したデータのみを抽出することで圧縮表現されたものである場合には、対応する過去データを用いて元のデータに復号する(ステップST1004)。すなわち、復号対象のデータと、当該データ以外の種別のデータとして対応する過去データを当てはめることで元のデータに復号する。
【0054】
その後、データ復号部24により復号されたデータは、サービス情報送出部21により該当するサービスサーバ7に送出される。
【0055】
以上のように、この実施の形態1によれば、サービス単位での必要情報の絞込みを行い、過去データとの差分やその他の複数の圧縮表現を適用するように構成したので、そのままのデータを送信することに比べてデータ通信量を圧縮することができ、大量のデータが送受信される中での全体としてのデータ通信量を抑えることができる。また、通信が行われるかぎり、実際にはデータが来なくても変化がないということを確認できるため、変化がないという情報を送信する無駄も省くことができ、全体のデータ量圧縮に対して効果がある。
【0056】
なお、実施の形態1では、自動車に搭載された車載機器1から、サービスサーバ7からのサービス提供に必要なデータを、サーバ機器2を介して送出することで、サービスサーバ7からサービスを受けるテレマティクスサービスに、本発明のデータ通信システムを適用した場合について説明した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば、スマートフォンを用いて、人の健康状態やライフログなどの情報を、クラウド技術を利用して収集し、サーバ機器で管理するといったサービスに対しても同様に適用可能である。また、電車などの軌道上を走る移動物体や航空機など、走行中に受ける風の力や、走行時の細かい振動の状況や障害物との距離の情報などを様々な目的でサーバ機器で管理し、各種サービスを受けるシステムに対しても同様に適用可能である。
【0057】
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車載機器(送信側機器)、2 サーバ機器、3 広域ネットワーク、4 車載ネットワーク(ローカルネットワーク)、5 装置、6 ネットワーク、7 サービスサーバ、11 サービス情報受信部、12 プローブデータ収集部、13 サービス対応データ抽出部、14 サービス対応データ圧縮部、15 データ送出部、21 サービス情報送出部、22 データ受信部、23 サービス対応データ抽出部、24 データ復号部、25 サービスデータ送出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介して送出する送信側機器と、前記送信側機器からのデータを前記サービスサーバに送出するサーバ機器とを備えたデータ通信システムにおいて、
前記送信側機器は、
前記サーバ機器から前記サービスに関する情報を受信するサービス情報受信部と、
前記サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、該当する装置からデータを収集するデータ収集部と、
前記サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、前記データ収集部により収集されたデータから、前記サービスごとに必要なデータを抽出するサービス対応データ抽出部と、
前記サービス対応データ抽出部により抽出されたデータを圧縮するサービス対応データ圧縮部と、
前記サービス対応データ圧縮部により圧縮されたデータを前記ネットワークを介して前記サーバ機器に送出するデータ送出部とを備え、
前記サーバ機器は、
前記サービスに関する情報を前記ネットワークを介して前記送信側機器に送出するサービス情報送出部と、
前記データ送出部からのデータを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部により受信されたデータから、前記サービスごとにデータを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部により抽出されたデータを復号するデータ復号部と、
前記データ復号部により復号されたデータを該当する前記サービスサーバに送出するサービスデータ送出部とを備えた
ことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記サービス対応データ圧縮部は、圧縮対象のデータと、過去のデータとの差分を算出することで圧縮表現を行う
ことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記圧縮対象のデータと前記過去のデータは同一種別である
ことを特徴とする請求項2記載のデータ通信システム。
【請求項4】
前記サービス対応データ圧縮部は、圧縮対象のデータのうち、対応するデフォルト値から変化したデータを抽出し、当該抽出したデータ種別を特定するIDを付加することで圧縮表現を行う
ことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項5】
前記サービス対応データ圧縮部は、圧縮対象のデータのうち、同一種別の過去のデータから変化したデータを抽出し、当該抽出したデータ種別を特定するIDを付加することで圧縮表現を行う
ことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項6】
前記サービス対応データ圧縮部は、圧縮対象のデータに対して、過去のデータとの差分を算出する圧縮表現と、対応するデフォルト値から変化したデータを抽出し、当該抽出したデータ種別を特定するIDを付加する圧縮表現と、同一種別の過去のデータから変化したデータを抽出し、当該抽出したデータ種別を特定するIDを付加する圧縮表現とを比較し、データ通信量が最も小さい圧縮表現を用いる
ことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項7】
前記装置は、前記送信側機器と1つ以上のローカルネットワークを介してもしくは直接接続され、または、前記送信側機器に保持され、
前記データ収集部は、前記装置から出力され前記ローカルネットワーク上を流れるデータを収集し、または、前記装置にデータ取得要求を出すことでデータを収集する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項8】
前記サービスに関する情報には、前記サービスを特定するIDと、前記サービスで必要なデータ種別とが含まれる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項9】
前記サービス対応データ抽出部は、抽出したデータに、対応するサービスを特定するIDを付したデータを作成し、
前記サービス対応データ圧縮部は、前記サービス対応データ抽出部により作成されたデータを圧縮する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項10】
前記データ送出部は、前記サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、前記サービス対応データ圧縮部により圧縮されたデータを所定の間隔でまとめて送出する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項11】
前記サービス対応データ圧縮部は、圧縮した複数のデータが前記データ送出部によりまとめて送出される場合において、当該各データ内に同一種別のデータが含まれる場合には、次回からは当該各データ間で圧縮表現を行う
ことを特徴とする請求項10記載のデータ通信システム。
【請求項12】
前記データ抽出部は、前記データ受信部により受信されたデータに含まれるデータ種別を特定するIDに基づいて、当該データの種別を特定する
ことを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項13】
前記データ復号部は、復号対象のデータに、対応する過去のデータを加算することでデータを復号する
ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項14】
前記データ復号部は、復号対象のデータと、当該データ以外の種別のデータとして対応するデフォルト値を当てはめることでデータを復号する
ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項15】
前記データ復号部は、復号対象のデータと、当該データ以外の種別のデータとして対応する過去のデータを当てはめることでデータを復号する
ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のデータ通信システム。
【請求項16】
サービスサーバからのサービス提供に必要なデータをネットワークを介してサーバ機器に送出する送信側機器において、
前記サーバ機器から前記サービスに関する情報を受信するサービス情報受信部と、
前記サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、該当する装置からデータを収集するデータ収集部と、
前記サービス情報受信部により受信された情報に基づいて、前記データ収集部により収集されたデータから、前記サービスごとに必要なデータを抽出するサービス対応データ抽出部と、
前記サービス対応データ抽出部により抽出されたデータを圧縮するサービス対応データ圧縮部と、
前記サービス対応データ圧縮部により圧縮されたデータを前記ネットワークを介して前記サーバ機器に送出するデータ送出部と
を備えたことを特徴とする送信側機器。
【請求項17】
送信側機器からネットワークを介して送出された、サービスサーバからのサービス提供に必要なデータを、前記サービスサーバに送出するサーバ機器において、
前記サービスに関する情報を前記ネットワークを介して前記送信側機器に送出するサービス情報送出部と、
前記送信側機器からのデータを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部により受信されたデータから、前記サービスごとにデータを抽出するデータ抽出部と、
前記データ抽出部により抽出されたデータを復号するデータ復号部と、
前記データ復号部により復号されたデータを前記サービスサーバに送出するサービスデータ送出部と
を備えたことを特徴とするサーバ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97530(P2013−97530A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238980(P2011−238980)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】