説明

データ通信切替システムおよびデータ通信切替方法

【課題】利用者の了解できる範囲内でバックアップ用の回線との間での切り替えが可能なデータ通信切替システムを得る。
【解決手段】端末204は、ADSL装置202を用いることで電話回線201をADSL回線として使用したり、そのバックアップのためのアナログ回線として用いる。記憶部212の回線切替条件記憶領域212Aには、アナログ回線に切り替えた後にADSL回線側に切り替える条件が記憶されており、ADSL回線が復旧した以外の経済的等の理由でアナログ回線の使用を停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信の切り替えを行うデータ通信切替システムに係わり、特に非対称ディジタル加入者回線でデータ通信を行っている場合に好適なデータ通信切替システムおよびデータ通信切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電話回線(メタル回線)を使用して、データ通信を行うADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称ディジタル加入者回線)回線による通信が普及している。ADSL回線を使用すると、電話に使用しない比較的高周波の伝送領域をデータ通信に用いるので、安価な常時接続環境を実現することができる。
【0003】
しかしながら、ADSLは、ベストエフォート(best effort)と呼ばれる通信形態を実現する技術であり、サービスの保証がない。したがって、高速のデータ通信が行われている状況でも、通信環境が突然劣化して回線断が発生しうるというマイナス面を持っている。また、通信網に過負荷が発生すると、ADSL回線を使用した通信システムの上位機器のATM(Asynchronous Transfer Mode)ルータ等で障害が発生することも想定される。特に、ADSL回線は、25kHz以上の高周波帯域を使用している関係で、外来ノイズが干渉すると回線断が発生しやすい。
【0004】
これにもかかわらず、ビジネスやコンシューマ(consumer:消費者)の現場では、インターネット等のネットワークに常時接続を行う要請が高まっており、常時接続の環境をベストエフォート型の通信形態でもバックアップする冗長な通信システムの構成が求められている。
【0005】
そこで、ADSL回線が、これよりも使用周波数帯域が低いアナログ回線と共用可能であることに着目してダイヤルアップ接続をバックアップに利用することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
図6は、この提案によるデータ通信切替システムの概要を表わしたものである。このデータ通信切替システム100でデータ通信を行う端末111は、ADSLルータ112を介して電話回線113に接続されている。ADSLルータ112には、回線を選択する回線制御部114と、これに接続されたADSLモデム115およびアナログモデム116と、これらの出力側に設けられたディジタル加入者線用のDSL(Digital Subscriber Line)スプリッタ117が配置されている。
【0007】
このようなデータ通信切替システム100で、回線制御部114は、ADSLモデム115の回線接続状態を検出し、ADSL回線が接続されていれば、端末111から送られてきたIPパケットをADSLモデム115へ渡す。ADSLモデム115から電話回線113に送出されたIPパケットは、インターネット118を経由して図示しない相手先の端末に送信される。以上がADSLモデム115を使用した通常の通信制御である。
【0008】
次に、経路障害によりADSLモデム115の回線接続ができなくなったり、IPパケットの到達確認が連続して失敗したような場合を説明する。回線制御部114は、ADSLモデム115の回線接続状態およびインターネットプロトコルによるIPパケットの到達確認を常に監視している。そして、前記したような経路障害が発生すると、アナログモデム116に対して回線接続の指示を出す。この接続指示には、あらかじめ登録されているADSLルータ112のアナログ回線電話番号が含まれている。
【0009】
回線制御部114は、アナログモデム116による回線接続が完了した後に、前記したIPパケットをアナログモデム116に渡し、アナログ電話網119を経由したIPパケットの通信路を確保する。回線制御部114は、アナログモデム116を介してIPパケットを送信している間、ADSLモデム115の回線接続状態を監視する。そして、回線が接続されたらADSLルータ112宛てにエコー要求メッセージを送信する。回線制御部114は、このエコー要求メッセージに対するADSLルータ112からの応答を確認した場合には、ADSLモデム115を介した通信路が復旧したと判断する。そして、アナログモデム116に対して回線切断の指示を出すとともに、IPパケットをADSLモデム115へ渡すように切替制御を行う。
【特許文献1】特開2004−134907号公報(第0017〜第0019段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところでADSLモデム115を使用して常時接続を行っている利用者にとって、アナログモデム116による回線接続は一般に回線速度を低下させるという不都合を生じさせる。しかも、このようなADSL回線を常時使用している者にとって、アナログ回線によるデータ通信は臨時に使用するものである。したがって、アナログ回線のダイアルアップ接続については常時接続の契約を行っていない場合が多い。このため、常時接続の感覚でアナログモデム116でのダイアルアップ接続を長時間放置した状態にしておくと、このアナログ回線の使用量として、利用者の予想しない多額の請求が行われる可能性がある。特に、ADSLモデム115からアナログモデム116への切り替えやその逆の切り替えが自動的に行われる場合、利用者はこれら切り替え処理に関与しない。従って、課金の高額請求が発生しやすい。
【0011】
もちろん、これら回線の切り替えが一切行えないようにすることは、ベストエフォート型の通信形態で通信をバックアップすることができないことを意味し、必要なファイルの転送等のデータ処理に大きな障害を発生させかねない。
【0012】
そこで本発明の目的は、利用者の了解する範囲内でバックアップ用の回線の利用が可能なデータ通信切替システムおよびデータ通信切替方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明では、(イ)データ通信用の第1の回線と、(ロ)第1の回線の予備のデータ通信用の第2の回線と、(ハ)これら第1の回線と第2の回線の間で回線の切り替えを行う回線切替手段と、(ニ)第1の回線によるデータ通信に障害が発生したとき回線切替手段を制御して第1の回線から第2の回線に回線を切り替える指示を行う第1の切替指示手段と、(ホ)第2の回線から第1の回線に切り替える指示を行う第2の切替指示手段と、(へ)第1の切替指示手段によって第2の回線に切り替えられた後に第1の回線の復旧以外の理由で第2の切替指示手段によって第1の回線側に切り替える条件を設定する条件設定手段と、(ト)第1の切替指示手段によって回線切替手段が第2の回線に切り替えた後、条件設定手段の設定した条件に合致するか否かを監視する条件合致監視手段と、(チ)この条件合致監視手段が条件設定手段の設定した条件に合致すると判別したとき第2の切替指示手段の切替指示を作動させる切替指示作動制御手段とをデータ通信切替システムに具備させる。
【0014】
すなわち請求項1記載の発明では、データ通信を本来行う第1の回線から予備の第2の回線に切り替えて通信を行うとき、第2の回線から第1の回線に切り替える条件を条件設定手段によって設定しておく。そして、第1の切替指示手段によって回線切替手段が第2の回線に切り替えた後、条件合致監視手段によって条件設定手段の設定した条件に合致するか否かを監視し、条件設定手段の設定した条件に合致すると判別したときには、切替指示作動制御手段によって第2の切替指示手段の切替指示を作動させる。これにより、従来のように少なくとも第1の回線側が復旧するまで第2の回線に接続されたままになるという状況がなくなり、利用者の了解する範囲内でバックアップ用の回線(第2の回線)の利用が可能になる。
【0015】
請求項9記載の発明では、(イ)ADSL回線でデータ通信を行っているときにそのADSL回線が切断されたとき、同一の電話線を使用するアナログ電話機が使用中であるか否かを判別するアナログ電話機使用中判別ステップと、(ロ)アナログ電話機が使用中のときにはアナログ電話機の使用とアナログ回線によるデータ通信のいずれを優先させるかを判別する優先順位判別ステップと、(ハ)この優先順位判別ステップでアナログ回線によるデータ通信が優先されていると判別されたとき、あるいはアナログ電話機使用中判別ステップでアナログ電話機が使用中でないと判別されたとき、アナログ回線へのダイアルアップ接続を行うダイアルアップ接続ステップと、(ニ)このダイアルアップ接続ステップによってダイアルアップ接続が行われた後、ADSL回線の復旧以外の理由によるアナログ回線によるデータ通信の停止条件のいずれかに該当するかを監視する監視ステップと、(ホ)この監視ステップでアナログ回線によるデータ通信を停止する条件が成立したときアナログ回線によるデータ通信を停止させる停止ステップとをデータ通信切替方法に具備させる。
【0016】
すなわち請求項9記載の発明では、ADSL回線でデータ通信を行っているときにそのADSL回線が切断されたとき、同一の電話線を使用するアナログ電話機が使用中であるか否かをアナログ電話機使用中判別ステップで判別する。そして、使用中であればアナログ電話機の使用とアナログ回線によるデータ通信の優先順位を判別してデータ通信の方が優位のときにダイアルアップ接続ステップに進むことになる。アナログ電話機が使用中でなければ、特に他の制限がない限りアナログ回線によるデータ通信のためのダイアルアップ接続が行われる。ダイアルアップ接続が行われた後は、ADSL回線の復旧以外の理由によるアナログ回線によるデータ通信の停止条件のいずれかに該当するかを監視ステップで監視して、アナログ回線によるデータ通信を停止する条件が成立したときには停止ステップでアナログ回線によるデータ通信を停止させるようにしている。これにより、利用者の了解する範囲内でバックアップ用の回線の利用が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、第2の回線への接続の切り替えが行われた後、第1の回線の復旧以外の理由で第2の回線によるデータ通信を終了させるようにしたので、第2の回線によるデータ通信の継続による利用者の経済的な負担が過剰になるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例におけるデータ通信切替システムの構成を表わしたものである。このデータ通信切替システム200は、電話回線201に接続されたADSL装置202を備えている。ADSL装置202は、端末接続端子203を備えており、これにユーザがデータ通信のために使用する端末204を接続する他、アナログ電話接続端子205を介してアナログ電話機206を接続するようになっている。ADSL装置202は、CPU(中央処理装置)211を備えている。CPU211は、制御プログラムを格納したROM(リード・オンリ・メモリ)やADSL回線の劣化や回線切替時間等に関する各種のデータおよび作業用のデータを格納するRAM(ランダム・アクセス・メモリ)等の記憶手段から構成される記憶部212と、データバス等のバスを介して接続されている。また、同様に、バスを介して、ADSL回線を終端するADSL送受信部213、ADSL回線の品質を監視するアラーム監視部214、アナログモデム回線を終端するアナログモデム送受信部215、端末204と送受信を行う端末送受信部216およびダイヤルアップ接続の時間制限のための計時動作を行うタイマ部217がCPU211と接続されている。本実施例では、記憶部212に回線切替条件記憶領域212Aを設けており、ここに各種の回線切替条件が記憶されるようになっている。
【0020】
更に、ADSL装置202に接続された電話回線201とADSL送受信部213の間には、POTS(Plain Old Telephone Service)部218が設けられている。POTS部218は、従来のアナログ回線によるサービスを行うために、アナログ通信で利用していた0kHzから4kHz程度の低い周波数帯域部分を取り出す分離用のフィルタを備えており、アナログ電話接続端子205を介してアナログ電話機206と接続される他、アナログモデム送受信部215とも接続されるようになっている。したがって、アナログモデム送受信部215は分離された本来電話に使用される低い周波数帯域部分を端末204の通信に使用することができる。
【0021】
図2は、本実施例のCPUとその周辺回路を示したものである。CPU211は、制御プログラムを実行することで、この図に示したような各種の機能ブロックの組み合わせを実現する。もちろん、これら機能ブロックの一部または全部をハードウェアで実現してもよい。この図に示すようにCPU211は、ADSL回線とアナログ回線の切り替えを行う切替部221と、この切替部221の切り替えを制御する切替制御部222を備えている。切替部221は、そのコモン接点223側にPPP(Point-to-Point Protocol)終端部224を接続し、端末インタフェース部225を介して端末送受信部216に接続する構成となっている。ここで、PPP終端部224は、ADSLやダイアルアップにおける二点間を接続してデータ通信を行うためのポイント−ツー−ポイントプロトコルの終端を行う。端末インタフェース部225は、切替部221で選択された方の経路で入出力されるデータを端末送受信部216が通信可能なフォーマットに変換し、あるいはその逆に端末送受信部216の送出するデータをADSL送受信部213またはアナログモデム送受信部215に送出するフォーマットに変換する。
【0022】
切替部221には、ADSL送受信部213方向に切り替えるADSL用接点226と、アナログモデム送受信部215方向に切り替えるアナログモデム用接点227が配置されている。ADSL用接点226は、SAR(Segmentation and Reassembly)レイヤ部228およびATM(Asynchronous Transfer Mode)レイヤ部229を介してADSL送受信部213に接続されている。また、アナログモデム用接点227は、そのままアナログモデム送受信部215に接続されている。ここで、SARレイヤ部228はセルの分割や組み立てを行うレイヤであり、ADSL回線ではATMレイヤ部229と共にATMセルデータの終端が行われる。その後、PPP終端部224によって、ADSL回線あるいはダイアルアップでのポイント−ツー−ポイントプロトコルの終端を行い、端末インタフェース部225で端末204(図1)と通信可能なフォーマットとしての100BASE(Mbps Ethernet(登録商標))−TのLANインタフェース等に変換されて、端末送受信部216との入出力を行うことになる。
【0023】
切替部221は、PPP終端部224の手前に組み込まれており、記憶部212、アラーム監視部214およびタイマ部217から送られてくる情報を基にして、切替制御部222による回線の切替制御が行われる。
【0024】
図3は、以上のような構成のデータ通信切替システムで、利用者がADSL装置を回線切替モードに設定した場合の処理の流れを表わしたものである。ADSL装置202(図1)が回線切替モードに設定されたら(ステップS301:Y)、その内蔵ディスプレイに、「障害時回線切替可否表示」が行われる(ステップS302)。ここで、「障害時回線切替可否表示」とは、ADSL回線がノイズの発生等の障害によって断となったときに、ダイアルアップによってアナログ回線に接続するかどうかを問う表示である。アナログ回線に接続することを可とする操作が行われた場合には(ステップS303:Y)、内蔵ディスプレイに「切替品質条件選択表示」が行われる(ステップS304)。これに対して、アナログ回線に接続することを否とする操作が行われた場合には(ステップS305:Y)、図1の記憶部212に用意された回線切替条件記憶領域212Aの内容をクリアして(ステップS306)、処理を終了させる(エンド)。これによって、仮に回線切替条件記憶領域に切り替えの条件がすでに入力されていても、その内容がオールクリアされることになる。もちろん、ADSL装置202が複数の者によって使用される環境では、パスワード等の設定によって回線切替モードを実行できる者を制限するようにしておくことは有効である。
【0025】
一方、ステップS304で内蔵ディスプレイに「切替品質条件選択表示」が行われると、利用者はADSL回線からアナログ回線に切り替える条件およびその逆にアナログ回線からADSL回線に復帰させる条件を選び出して「選択」ボタンを押す(ステップS307)。
【0026】
図4は、「切替品質条件選択表示」の一例を表わしたものである。ADSL装置202の内蔵ディスプレイ231には、ADSL回線からアナログ回線への切り替えを、エラーの発生率(頻度)で3種類のうちから1つを選択させると共に、アナログ回線からADSL回線への回復を、ADSL回線に接続された時点ですぐに回復させるか、ある程度接続が安定したことが確認された後に回復されるかのいずれかを選択させるようにしている。
【0027】
たとえば、[1]の少しのエラーでもADSL回線からアナログ回線へ切り替えることを選択した場合には、切替品質が高くなる一方で、切り替えが頻発し、またダイアルアップによる接続料が多く掛かる傾向が生じる。これに対して、[3]のエラー多発時に回線を切り替えることを特徴とする選択した場合には、切替品質が低下するものの、ダイアルアップ接続が行われる頻度が低下するので経済的となる。また、[4]のようにADSL回線が回復した直後にアナログ回線に戻すようにした場合には、ADSL回線が一時的に繋がったような不安的な状態でもダイアルアップ回線から復帰するので、切替品質が低いがダイアルアップによる接続料を軽減することができる。[5]を選択した場合には、これとは逆に切替品質が高くなるが、ADSL回線の品質が安定してからこのADSL回線への切り替えが行われることになるので、ダイアルアップ回線を使用する時間が相対的に長くなって経済的ではなくなる。ただし、経済性については、次のダイアルアップ課金条件の設定によって調整することができる。
【0028】
利用者が切替品質条件を選択したら(図3ステップS307:Y)、次に内蔵ディスプレイに「ダイアルアップ課金条件選択表示」が行われる(ステップS308)。ここでは、1ヶ月当たりのダイアルアップによる課金の上限を設定することができる。これは、ダイアルアップによる課金が利用時間に応じた従量制を採用していることを前提としている。従って、該当するISP(Internet Service Provider)が従量制の課金システムに課金の上限値を設定しており、常時接続との均衡を図っているような場合で、利用者がこの上限値以上の支払いを許容している場合には、事実上、ダイアルアップによる接続は無制限に可能となる。これ以外の場合には、ダイアルアップによってアナログ回線に接続するたびに利用時間がカウントアップされ、上限値に到達した段階でアナログ回線の接続は切断される。また、上限値に到達して以後の該当月におけるダイアルアップによるアナログ回線への接続は禁止される。
【0029】
利用者がダイアルアップ課金条件を選択したら(ステップS309:Y)、最後に、「タイムアウト条件選択表示」が行われる(ステップS310)。ここでは、1回のダイアルアップ回線接続についての最大接続時間を無制限とするか、有限のあらかじめ用意された幾つかの時間の中から所望の時間を選択することができる。後者の場合には従量制によって1回の接続の課金が過剰とならないようにするためである。
【0030】
利用者がタイムアウト条件についての選択を行ったら(ステップS311:Y)、選択あるいは設定された以上の各条件が回線切替条件記憶領域212Aに記憶される(ステップS312)。ただし、回線切替条件記憶領域212Aへの記憶は、利用者が記憶すべき各選択行為(ステップS303、S307、S309、S311)を行うたびに行うようにしてもよい。以上のようにして切替制御の内容が回線切替条件記憶領域212Aに格納されることになる。
【0031】
図5は、切替制御部による切替部の切替制御の様子を表わしたものである。図2に示した切替制御部222は、まず図1のADSL装置202に電源が投入された時点で、回線切替条件記憶領域212Aを用いて、バックアップを行う機能としての冗長機能がオンとなっているかどうかをチェックする(ステップS331)。回線切替条件記憶領域212Aに回線切替条件が記憶されていないとき、あるいは過去に記憶されてもその内容がクリアされている場合には、冗長機能がオフとなっている。この場合には(N)、ADSL回線のみ受信する状態の制御が行われる。したがって、切替制御は終了する(エンド)。
【0032】
これに対して、回線切替条件記憶領域212Aに回線切替条件が記憶されている場合には(ステップS331:Y)、ADSL回線を接続する(ステップS332)。このとき、アナログモデム送受信部215の電源の供給を断とする。これはアナログモデム送受信部215の消費電力を停止させるためである。アナログモデム送受信部215の電源の供給を断とする代わりに、スタンバイ状態にして、消費電力を同様に抑えることも有効である。その後はADSL回線にエラーによるアラームが発生したら(ステップS333:Y)、ダイアルアップ接続への切替条件に合致しているかどうかをチェックして(ステップS334)、合致していれば(Y)、ダイアルアップへの切り替えと接続を要求する(ステップS335)。ダイアルアップ接続時に、アナログモデム送受信部215の電源の供給を開始したり、スタンバイから復旧させるようにすることはもちろんである。ステップS333でアラームが発生していない場合(N)およびステップS334で切替条件に合致していない場合には(N)、ステップS333に戻ってアラームの発生を待機することになる。
【0033】
ステップS335でダイアルアップへの切り替えが要求されると、図2に示した切替制御部222は切替部221のコモン接点223がADSL用接点226に接続されている状態からアナログモデム用接点227に接続される状態になるように接片の切り替えを行う。これにより、ADSL接続からダイアルアップ接続に切り替わる(ステップS336)。これ以後、切替制御部222は、ADSL回線への復旧条件を満足するようになったか(ステップS337)と、ダイアルアップ接続についてタイムアウトになったかどうか(ステップS338)のチェックを繰り返す。ここで、ADSL回線の復旧条件を満足するとは、図4で説明したように、利用者が設定したADSL回線への接続切り替えの条件を満足することを意味する。すなわち、利用者が図4で示す[4]のADSL回線が回復した直後にアナログ回線に戻すことを設定していた場合には、ADSL回線が回復したとき直ちにADSL回線への切り替えが行われる。ただし、この場合には極めて短時間のうちに再びダイアルアップ接続に戻される場合もあり、切替制御が一時的に安定しない恐れがある。
【0034】
これに対して、利用者が図4で示す[5]のADSL回線安定後の切り替えを設定していた場合には、たとえばアナログ電話機206側で呼び出し信号を送出中でこれに伴うノイズが一時的に発生しているような場合には、このノイズによるエラーの発生が無くなった時点でADSL回線への復旧条件が満足することになる。この場合には(ステップS337:Y)、ADSL回線が安定した時点でADSL回線への切り替えが行われる(ステップS340)。ADSL回線への復旧条件を満足しない間は(ステップS337:N)、その時間がタイムアウトに到達するか否かのチェックが行われる(ステップS338)。
【0035】
ステップS338のタイムアウトになったかどうかのチェックについては、タイムアウトになった時点で(Y)、もう一度、ADSL回線が復旧したかどうかのチェックを行い(ステップS339)、復旧していた場合には(Y)、その時点の回線の品質を特にチェックすることなくダイアルアップ切断とADSL回線への接続切り替えを実行する(ステップS340)。そして、ステップS333の処理に戻ることになる。
【0036】
これに対して、ステップS339でADSL回線が復旧していなかった場合には(N)、ダイアルアップ接続についての接続料金が、図3のステップS308およびステップS309で課金の上限を設定している場合にその上限に示す範囲内であるかの判別を行う(ステップS341)。したがって、上限を設定していなかったり、設定していても許容された接続料金の範囲内であれば(Y)、ステップS337に戻って、ADSL回線への復旧の条件が満足するまでダイアルアップ接続が継続されることになる。ダイアルアップ回線の接続料金の枠を超えた場合には(ステップS341:N)、ダイアルアップ接続が終了することになる(エンド)。
【0037】
<変形可能性>
【0038】
以上説明した実施例では、ダイアルアップ接続を行った後は、ADSL回線が復旧しない限り、タイムアウトの時間が到来するまでダイアルアップ接続を継続することにした。これによって最低限の通信が行えるという利点があるものの、ダイアルアップ接続時に課金の上限値のぎりぎり手前になっている場合には、タイムアウト時に課金の上限値を超えてしまう場合がある。このような事態の発生を防止するためには、図5のステップS341の処理をステップS338の処理の前に行わせ、課金の上限値を超える場合には、タイムアウト前であってもダイアルアップ接続を切断するようにすることも有効である。
【0039】
また、ステップS334でダイアルアップ接続への切替条件に合致するかを判別する際に、タイムアウトとなるまでのダイアルアップ接続による接続料金をあらかじめ差し引いておいて、その金額よりも今までの接続料金が低い場合にダイアルアップ接続を許すようにしてもよい。更に実施例ではステップS337でADSL回線の復旧をチェックした後、ステップS339で更にADSL回線の復旧をチェックした。これにより、ダイアルアップ接続がタイムアウトするという事態では、ADSL回線の品質を問わずにこれへの復旧を行えるようにしたが、このようなステップS339の処理を省略して、直ちにステップS340でダイアルアップ回線の切断とADSL回線への切り替えを行えるようにしてもよい。
【0040】
もちろん、実施例ではダイアルアップ接続が行われた後のADSL回線への復旧について各種の条件を設定したが、これらの条件の一部を省略したり、他の条件を代わりに追加してもよいことは当然である。更に、実施例ではステップS334でバックアップのためのダイアルアップ接続への切替要求が行われたときには直ちにダイアルアップへの切り替えと接続要求を行うことにしたが(ステップS335)、この前に、端末送受信部216を通じて端末204に対してダイアルアップ接続を行う旨を利用者に通知するようにしてもよい。この通知は所定のディスプレイに表示されてもよいし、音によって行われてもよい。両者を伴ってもよいことはもちろんである。
【0041】
このような利用者に対する通知が行われる際に、ダイアルアップ接続を可とする応答がない限りダイアルアップ接続を行わないように利用者が指示することもできるし、ダイアルアップ接続はこの通知に対する利用者の確認の応答とは関係なく行われるようにすることもできる。後者の場合であっても、利用者は通信速度が低下した原因を回線異常ではなくバックアップとして切り替えられたダイアルアップ接続であることを知ることができるし、ダイアルアップ接続が必要でないと判別したときには早急にその接続を断とする指示を行うことができる。
【0042】
更に実施例ではダイアルアップ接続を行おうとしているときにアナログ回線を電話で使用している場合および、ダイアルアップ接続中にアナログ回線を電話で使用しようとする場合を説明しなかったが、両者の使用が時間的に競合したときにどちらを優先させるかを端末204によって設定することができる。これにより、アナログ電話機206による通話とアナログモデムによるダイアルアップ接続の両者が要求されたとき、どちらを優先させるかを簡易に設定可能である。
【0043】
具体的には、ADSL回線でデータ通信を行っている状態で回線が切断されたとき、アナログ電話機206が使用中であるかどうかを判別し、使用中であれば、ダイアルアップ接続とアナログ電話機206による通話の優先順位を定めた優先順位テーブルを見て、ダイアルアップ接続の方が優先順位が高い場合にはダイアルアップ接続を行うことになる。これにより、たとえば動画や音声といったリアルタイム性の高い情報を受信中であっても、そのような情報の受信を中断なく確保することができる。アナログ電話機206が使用中でなければ、ダイアルアップ接続を直ちに行うことになる。もちろん、課金の制限がないことが前提となる。
【0044】
また、CPU211によってADSL回線上のATMセルデータを監視することができるので、ATMセルの異常情報(OAM(Operation Administration and Maintenance)−AISセル等)を検出することができる。これにより、同様にダイアルアップへの切り替えを行うことができる。
【0045】
更に実施例ではADSL回線を第1の回線とし、第2の回線をADSL回線と共通する電話線にダイアルアップによって接続されるアナログ回線としたが、これに限るものではない。たとえば本発明を一般化したxDSL回線を第1の回線とするデータ通信の切り替えに適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例におけるデータ通信切替システムの構成を表わしたブロック図である。
【図2】本実施例のCPUとその周辺回路を示したブロック図である。
【図3】データ通信切替システムで、利用者がADSL装置を回線切替モードに設定した場合の処理を示した流れ図である。
【図4】「切替品質条件選択表示」の一例を表わした内蔵ディスプレイの平面図である。
【図5】本実施例で切替制御部による切替部の切替制御の様子を表わした流れ図である。
【図6】従来の提案によるデータ通信切替システムの概要を表わした説明図である。
【符号の説明】
【0047】
201 電話回線
202 ADSL装置
204 端末
211 CPU
212 記憶部
212A 回線切替条件記憶領域
214 アラーム監視部
217 タイマ部
221 切替部
222 切替制御部
231 内蔵ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信用の第1の回線と、
第1の回線の予備のデータ通信用の第2の回線と、
これら第1の回線と第2の回線の間で回線の切り替えを行う回線切替手段と、
前記第1の回線によるデータ通信に障害が発生したとき回線切替手段を制御して第1の回線から第2の回線に回線を切り替える指示を行う第1の切替指示手段と、
第2の回線から第1の回線に切り替える指示を行う第2の切替指示手段と、
前記第1の切替指示手段によって前記第2の回線に切り替えられた後に第1の回線の復旧以外の理由で前記第2の切替指示手段によって第1の回線側に切り替える条件を設定する条件設定手段と、
前記第1の切替指示手段によって前記回線切替手段が第2の回線に切り替えた後、前記条件設定手段の設定した条件に合致するか否かを監視する条件合致監視手段と、
この条件合致監視手段が前記条件設定手段の設定した条件に合致すると判別したとき前記第2の切替指示手段の切替指示を作動させる切替指示作動制御手段
とを具備することを特徴とするデータ通信切替システム。
【請求項2】
前記条件設定手段は、前記第2の回線から第1の回線に切り替えるための第2の回線における1回の接続時間の長さの最大値をタイムアウト条件として設定することを特徴とする請求項1記載のデータ通信切替システム。
【請求項3】
前記条件設定手段は、前記第2の回線の接続料金の累計による最大値を第1の回線に切り替えるための接続料金条件として設定することを特徴とする請求項1記載のデータ通信切替システム。
【請求項4】
前記条件設定手段は、第1の回線に復帰する際の第1の回線の最低必要とされる回線品質を回線品質条件として設定することを特徴とする請求項1記載のデータ通信切替システム。
【請求項5】
前記第1の回線はxDSL回線であることを特徴とする請求項1記載のデータ通信切替システム。
【請求項6】
前記第1の回線はADSL回線であり、前記第2の回線はADSL回線と共通する電話線にダイアルアップによって接続されるアナログ回線であることを特徴とする請求項5記載のデータ通信切替システム。
【請求項7】
前記第1の切替指示手段が第1の回線から第2の回線に回線を切り替える指示を行う際に、その回線の切り替えを利用者に通知する通知手段を具備することを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかに記載のデータ通信切替システム。
【請求項8】
前記第2の回線でダイアルアップ接続とアナログ回線による通話のいずれを優先するかを設定する優先順位設定手段を具備することを特徴とする請求項6記載のデータ通信切替システム。
【請求項9】
ADSL回線でデータ通信を行っているときにそのADSL回線が切断されたとき、同一の電話線を使用するアナログ電話機が使用中であるか否かを判別するアナログ電話機使用中判別ステップと、
アナログ電話機が使用中のときにはアナログ電話機の使用とアナログ回線によるデータ通信のいずれを優先させるかを判別する優先順位判別ステップと、
この優先順位判別ステップでアナログ回線によるデータ通信が優先されていると判別されたとき、あるいはアナログ電話機使用中判別ステップでアナログ電話機が使用中でないと判別されたとき、アナログ回線へのダイアルアップ接続を行うダイアルアップ接続ステップと、
このダイアルアップ接続ステップによってダイアルアップ接続が行われた後、ADSL回線の復旧以外の理由によるアナログ回線によるデータ通信の停止条件のいずれかに該当するかを監視する監視ステップと、
この監視ステップでアナログ回線によるデータ通信を停止する条件が成立したときアナログ回線によるデータ通信を停止させる停止ステップ
とを具備することを特徴とするデータ通信切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−166379(P2006−166379A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358854(P2004−358854)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】