説明

トイレの手洗い器用水はね防止具

【課題】手洗い時の水飛沫により、トイレルームの床や壁、使用者の衣服などが濡れてしまうのを防止可能な、既存の手洗い器にも設置できる水はね防止具を提供する。
【解決手段】水はね防止具1はボウル部4の水栓5に取り付けられる。水はね防止具1は、凹面状の内面を持つ水受ボウル21を有している。水受ボウル21には水栓孔22が形成されており、水栓孔22に水栓5を挿通させることにより、ボウル部4内に取り付けられる。手洗い時に飛散する水滴は水受ボウル21に受け止められ、下方に案内されて排水孔23に流れ込み、排水口6から給水タンク本体11内へと排出される。水受ボウル21の上端部には、塩化ビニル製のエッジカバー41が取り付けられる。水受ボウル21の外側には、水はね防止具1をボウル部4に取り付けたとき、ボウル部4の水受面4aに当接し、水受ボウル21と水受面4aの間に隙間を形成するボス33が突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレルーム内に設置された手洗い器に取り付けられる水はね防止具に関し、例えば、水洗トイレの水タンク上部に設けられた手洗い器に装着することにより、手洗いの際に手洗い器の周囲に水が飛散するのを防止する水はね防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅用トイレなどにおいては、水洗トイレの給水タンク上部や、トイレルーム内の側壁、サイドカウンター等に手洗い器が設けられている。このような手洗い器は、通常、手洗い水が吐出する水栓と、手洗い水を流すためのボウルを備えている。ところが、トイレルーム内の手洗い器では、手洗い時に水滴が周囲に飛び散り、便座やトイレルームの床・壁、使用者の衣服などが濡れてしまうという問題があった。
【0003】
そこで従来より、水はね防止具として、特許文献1のように、給水タンクの前面に蛇腹状に開閉可能な水はねガードを設けたり、特許文献2のように、手洗い器のボウル背面にガードパネルを設けたりした手洗い器が提案されている。また、特許文献3のように、ボウルを奥行きが狭く深い形状とすることにより、手洗い水の飛散を抑えた手洗い器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−200394号公報
【特許文献2】特開2005−264543号公報
【特許文献3】特開2001−65030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水はね防止具は、例えば、特許文献1の手洗い装置は、大掛かりな装置を別置きする構成となっており、既存のトイレに簡単に設置できるようにはなっていない。また、特許文献2の手洗い器は、側壁など背後への水はねは防止できるものの、前面側への水はねは防止できず、使用者や便座、床などへの水濡れは避けられない。特に、便座の水濡れは、次のトイレ使用者に多大な不快感を与えるため、その回避が求められる。この場合、便座を起こし便座ふたと共に立て掛けた状態としても、便座と便座ふたの間に手洗い器から飛散した水が入り込み、便座が濡れてしまうおそれがある。このため、便座の濡れを防止するには、便器側への水はね自体を抑止する必要がある。一方、特許文献3の手洗い器は、深いボウル内にて手を洗うため、ボウル外への水はねを抑えることが可能ではあるものの、給水タンク上部には形成しにくく、既存のトイレには後付けできない。
【0006】
本発明の目的は、手洗い時の水飛沫により、トイレルームの床や壁、使用者の衣服などが濡れてしまうのを防止でき、しかも、トイレルーム内の既存の手洗い器にも設置可能な水はね防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水はね防止具は、トイレルーム内に設置された手洗い器に取り付けられ、該手洗い器の外に飛散しようとする水滴を受け止める水はね防止具であって、前記手洗い器のボウル部内に取り付けられ、凹面状の内面を有し、前記手洗い器に設けられた水栓が挿通される水栓孔と、前記ボウル部に設けられた排水口と連通する排水孔とを備えてなる水受ボウルを有することを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、当該水はね防止具をボウル部に装着することにより、手洗いの際に飛び散る水滴を水受ボウルにて受け止め、回収し、排水口へと流すことができる。このため、ボウル部外に水滴が飛散するのを抑えることができ、便座やトイレルームの床・壁、使用者の衣服などが濡れてしまうのを防止できる。特に、便座の倒立状態に関わらず、便座への水はねを防止でき、トイレ使用者の不快感を大幅に低減できる。
【0009】
前記水はね防止具において、前記水受ボウルを椀状に形成し、該水受ボウルの高さを、前記ボウル部の深さよりも高く形成しても良い。これにより、水受ボウル上端がボウル部の上方まで立ち上がり、手洗い時に四方八方に飛散する水滴が効果的に水受ボウルに受け止められる。
【0010】
また、前記排水孔の裏面側に、前記排水口の内径よりも小径に形成されたガイドボスを突設し、当該水はね防止具を前記ボウル部上に取り付けたとき、前記ガイドボスを前記排水口内に挿入するようにしても良い。これにより、水はね防止具は、水栓が挿通される水栓孔とガイドボスの2箇所で移動が規制される。従って、水はね防止具が水栓を中心に回転することがなく、水はね防止具をボウル部上に安定的に載置できる。
【0011】
前記水受ボウルの内面側に、前記水受ボウルと一体に石鹸収容部を形成しても良く、これにより、特に別製品を配置することなく、手洗い器に石鹸を置くことができる。
【0012】
前記水はね防止具を、水洗トイレの給水タンクの上部に設けられた手洗い器に取り付けても良く、その際、前記水受ボウルに、当該水はね防止具を前記手洗い器に取り付けたとき、前記給水タンクに吸着可能に設けられた吸盤を備えたストッパを設けても良い。これにより、給水タンク上の手洗い器に水はね防止具を安定的に固定できる。
【0013】
前記水受ボウルの上縁部に、前記水受ボウル部の端部を覆うように合成樹脂製のカバー部材を装着しても良い。これにより、水受ボウルの上端縁の存在が明確となり、手洗いの際に使用者が上端縁にぶつからないよう注意喚起できる。また、デザイン上のアクセントともなり、水はね防止具の意匠的な美観も向上する。
【0014】
前記水受ボウルの外側に、当該水はね防止具を前記手洗い器に取り付けたとき、前記手洗い器の前記ボウル部内面に当接し、前記ボウル部と当該水はね防止具との間に隙間を形成する凸部を設けても良い。これにより、水はね防止具とボウル部内面との間に、ボウル部の仕様によらず、一定の距離を持った間隙が確実に形成され、水はね防止具とボウル部との間に流入した水が支障なく排水口に流出すると共に、水はね防止具とボウル部も容易に乾燥し、カビやヌメリ、変色などを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トイレルーム内に設置された手洗い器のボウル部内に、凹面状の内面を有する水受ボウルを有する水はね防止具を取り付けることにより、手洗いの際に飛び散る水滴を水受ボウルにて受け止めることができる。従って、手洗いの際に水滴がボウル部外に飛散してしまうのを抑えることができ、ボウル部の周囲に水滴が飛び散り、便座やトイレルームの床・壁、使用者の衣服などが濡れてしまうという事態を防止することが可能となる。また、本発明の水はね防止具は、特別な工事や別の設備等を必要とすることなく、トイレルーム内の既存の手洗い器にも容易に設置できるので、低コストにてボウル部やトイレルームを清潔に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である水はね防止具の使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1の水はね防止具の拡大斜視図である。
【図3】図1の水はね防止具の構成を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図4】エッジカバーの取付構造を示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図5】ボスと水受面との当接部の構成を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2である水はね防止具におけるエッジカバー固定部の構成を示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図7】図6の水はね防止具にて使用される固定片の構成を示す説明図である。
【図8】固定片によってエッジカバーを取り付ける手順を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例3である水はね防止具におけるエッジカバーの取付構造を示す説明図であり、(a)は水受板の内側からエッジカバー固定部を見た状態、(b)は水受板の外側からエッジカバー固定部を見た状態をそれぞれ示している。
【図10】エッジカバー固定部の構成を示す断面図である。
【図11】図9の水はね防止具にて使用される固定フックの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1である水はね防止具1の使用状態を示す斜視図、図2は、図1の水はね防止具1の拡大斜視図である。また、図3は、図1の水はね防止具の構成を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。水はね防止具1は、トイレルーム内に設けられた手洗い器2に設置される。図1に示すように、当該実施例の水はね防止具1は、水洗トイレの給水タンク3の上部に設けられた手洗い器2に取り付けられる。水はね防止具1全体の高さX(図3(b)参照)は、ボウル部4の深さよりも高くなっている(概ね2〜3倍程度)。
【0019】
手洗い器2は、手洗い用のボウル部4と、手洗い水が吐出する水栓5と、ボウル部4内の水を排水する排水口6を備えている。ボウル部4は、給水タンク3の上部に載置されるタンク上蓋7の上面側に凹設されている。ボウル部4の内側は、排水口6に向かって下る曲面状の斜面となっている。水栓5は、ボウル部4の使用者側から見て奥側から、ボウル部4の中心側に向かって伸びており、上方に向かって斜めに延びる導水管8を備えている。導水管8の先端には、下方に開口する吐水口9が設けられている。排水口6は、ボウル部4の中心最深部に開口形成されている。タンク上蓋7を給水タンク本体11上に載置すると、排水口6はタンク本体11内の空間と連通する。
【0020】
給水タンク本体11の側面には、フラッシュレバー12が取り付けられている。フラッシュレバー12を操作すると、吐水口9から手洗水が流出する。吐水口9から流出した手洗い水は、使用者の手洗いに供された後、ボウル部4内に流れ、排水口6から給水タンク本体11内へと排出される。給水タンク本体11内に流入した水は、フラッシュレバー12の操作に伴い、適宜、便器13の洗浄に使用される。
【0021】
水はね防止具1は、図1〜5に示すように、凹面状の内面を有する水受ボウル21によって形成されている。水受ボウル21は、手洗い器2のボウル部4と略同形の椀状となっている。水受ボウル21には、曲面状の前壁部21a・側壁部21b,21c・奥壁部21dと、略平面状の底面部21eが設けられている。水受ボウル21は、合成樹脂材料を用いて一体に成型されており、前壁部21aと側壁部21b,21c、奥壁部21d、底面部21eは、継ぎ目なく連続的に形成されている。水受ボウル21の材料としては、例えば、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)や塩化ビニル等の合成樹脂が用いられる。
【0022】
奥壁部21dの中央部やや下方には、水栓5が挿通される水栓孔22が開口形成されている。水はね防止具1は、この水栓孔22に導水管8を挿通することにより、図1に示すように、ボウル部4上に取り付けられる。水受ボウル21の底面部21eには、排水孔23が形成されている。排水孔23の裏面側(ボウル部4と対向する面側)には、外側に向かって突出するガイドボス24が形成されている。
【0023】
ガイドボス24の外径は、排水口6の内径よりも小径に形成されている。ボウル部4上に水はね防止具1を取り付けると、排水孔23は排水口6の上方に配される。その際、ガイドボス24は排水口6内に挿入され、ガイドボス24は排水口6内に遊嵌状態で挿入される。このように、ガイドボス24を排水口6内に挿入すると、水はね防止具1は、水栓孔22(導水管8が挿通)と、ガイドボス24の2箇所で移動が規制される。従って、水はね防止具1が導水管8を中心に回転することがなく、水はね防止具1は、ボウル部4上に安定的に載置される。
【0024】
奥壁部21dにはまた、2つの貫通孔25が形成されている。貫通孔25は、水栓孔22の両側にそれぞれ形成されており、各貫通孔25は、水栓孔22から水受ボウル21の幅方向にほぼ等間隔の位置に開口している。貫通孔25は、水受ボウル21を安定させるために設けられており、万一、水受ボウル21の取付状態が安定しない場合には、図2に示すように、貫通孔25に紐26の一端を結びつける。そして、トイレルームの壁面などに紐26の他端を固定することにより、水受ボウル21の揺れ動きを抑制し、より安定的に水はね防止具1をボウル部4上に取り付けることが可能となる。
【0025】
水受ボウル21の側壁部21b,21cの外面側には、水はね防止具1をボウル部4上に固定するためのストッパ27が設けられている。ストッパ27は、シート状のフィルム部材からなるストッパ本体27aと、ストッパ本体27aの先端部(下端部)に取り付けられた吸盤28を備えた構成となっている。ストッパ本体27aは、PETや塩化ビニル等の透明な合成樹脂にて形成されており、側壁部21b,21cの上部に、接着剤やハトメ、タグピンなどにて固定されている。吸盤28は、ストッパ本体27aに形成された吸盤取付孔29に装着される。吸盤取付孔29に装着された吸盤28は、吸盤固定ピン31によって抜け止め固定される。吸盤28には、ピン孔32が設けられており、吸盤固定ピン31はピン孔32に挿入固定される。なお、ストッパ本体27aとしては、シート状のフィルム部材以外に、紐やチェーン(金属又は合成樹脂)、ゴムなどを使用しても良い。
【0026】
水受ボウル21には、球面状のボス(凸部)33が複数個形成されている。ボス33は水受ボウル21の裏面側に突設されており、外方に向かって突出している。ボス33は、底面部21eの手前側に2個、奥側に1個設けられている。ボウル部4に水はね防止具1を取り付けると、ボス33の頂部が、ボウル部4の水受面(内面)4aに対向・当接し、ボウル部4と水はね防止具1との間に隙間46が形成される。このように、水はね防止具1では、全体がボウル部4と密着せず、両者間に隙間46が形成されるため、水はね防止具1とボウル部4との間に水が流れ込んでも、その水は支障なく排水口6に流出する。また、水はね防止具1とボウル部4との間に隙間46が存在するため、両者間に空気が流通し、ボウル部4や水はね防止具1が容易に乾燥する。従って、ボウル部4や水はね防止具1に発生するカビやヌメリ、変色などを防止でき、掃除の手間が掛からず、衛生状態も良好に保たれる。
【0027】
水受ボウル21にはさらに、石鹸入れ(石鹸収容部)34が形成されている。石鹸入れ34は、水栓孔22の向かって右側、すなわち、奥壁部21dの右端側に突設されている。石鹸入れ34は、周壁部35に取り囲まれた四角形状となっており、周壁部35の内側は、石鹸を収容するための凹部36となっている。周壁部35の上縁部35aは、逆U字形に折り曲げられた曲面状に形成されており、利用者が石鹸入れ34の上端縁にぶつかっても、利用者が不快感を抱かないようになっている。周壁部35の手前側には、排水用のスリット37が形成されている。凹部36は、図5に示すように、手前側に向かって下方に傾斜しており、石鹸入れ34内に溜まった水は、スリット37から排出される。なお、石鹸入れ34の形状は四角形には限定されず、円形やハート形など、意匠的な観点も含め適宜変更可能である。
【0028】
水受ボウル21の上端部には、合成樹脂製のエッジカバー(カバー部材)41が取り付けられている。図4は、エッジカバー41の取付構造を示す説明図であり、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。エッジカバー41は、塩化ビニルのような柔軟性のある合成樹脂にて形成されており、例えば、半透明な水色に着色されている。図4に示すように、エッジカバー41は断面が略U字形となっており、その中央には装着溝(溝部)42が形成されている。エッジカバー41は、水受ボウル21の上縁部43を装着溝42に挿入する形で、水受ボウル21の上端部に装着される。なお、エッジカバー41の透明度や色彩は、前述の「半透明/水色」には限定されず、不透明や他の色彩(例えば、赤や黄色など)とすることも可能である。
【0029】
水受ボウル21の上縁部43には、長手方向に沿って、テープ挿入孔44が複数個形成されている。テープ挿入孔44は、エッジカバー脱落防止用のテープ45を取り付けるために設けられている。テープ挿入孔44には、エッジカバー41を上縁部43に装着した状態でテープ45が取り付けられる。そして、テープ45をテープ挿入孔44に挿入しつつエッジカバー41に複数回巻き付けることにより、エッジカバー41は、水受ボウル21の上縁部43を挟持しつつ、水受ボウル21の上端部に固定される。なお、図4(b)では、理解を容易にするため、テープ45の厚みを誇張して示している。また、同図では、テープ45が1回巻装されている様子が示されているが、実際は、テープ45を複数回巻装することが好ましい。
【0030】
このような柔軟・有色のエッジカバー41を透明な水受ボウル21に取り付けることにより、水受ボウル21の上端縁の存在が明確となる。このため、手洗いの際に利用者の手が上端縁にぶつからないように注意喚起することができる。また、万一、利用者が上端縁にぶつかった場合でも、エッジカバー41が柔軟素材にて形成されているため、エッジのままの製品に比して、利用者の不快感も大幅に軽減される。さらに、板材に割れが生じた場合でも、割れ目がエッジカバー41によって覆われ露出しないため、割れ部分に手が当たってしまうことがない。従って、当該水はね防止具1は、利用者の使用感が損なわれず、子供や高齢者でも安心して手洗いを行うことが可能となる。
【0031】
加えて、有色のエッジカバー41は、透明な水受ボウル21に対してデザイン上のアクセントともなる。従って、水はね防止具1の意匠的な美観も向上し、デザイン上の特徴を構成しつつ、利用者の使い勝手の向上を図ることが可能となる。
【0032】
一方、当該水はね防止具1は、次のようにしてボウル部4に取り付けられる。図1に示すように、水はね防止具1は、水受ボウル21の水栓孔22に水栓5の導水管8を挿入する形でボウル部4に取り付けられる。この場合、水はね防止具1は、導水管8に沿って装着され、水受ボウル21がボウル部4の底面に接触し、ガイドボス24が排水口6内に挿入されるまで押し込まれる。そして、水受ボウル21をボウル部4上に取り付けた後、ストッパ27の吸盤28を、給水タンク本体11の側面に吸着させる。これにより、水はね防止具1は、水栓5に取り付けられる形で、ボウル部4上に安定的に固定される。なお、万一、水受ボウル21の取付状態が安定しない場合には、前述のように、貫通孔25に紐26を取り付け、それをトイレルームの壁面などに固定しても良い。
【0033】
水はね防止具1をこのようにしてボウル部4に取り付けると、水受ボウル21の裏面に形成されたボス33がボウル部4の水受面4aに当接する。図5は、ボス33と水受面4aとの当接部の構成を示す説明図である。図5に示すように、ボス33の頂部が水受面4aに当接すると、水受ボウル21とボウル部4との間に隙間46が形成される。これにより、水はね防止具1と水受面4aとの間には、ボウル部4の仕様によらず、一定の距離(ボス33の高さH)を持った間隙が確実に形成される。この場合、水受ボウル21は、前述のように、吸盤28によってしっかりとボウル部4上に固定されるため、水受ボウル21がばたつかず、隙間46も安定的に形成される。従って、水はね防止具1とボウル部4が密接しにくくなり、両者間内の水が容易に流出し、ボウル部4や水はね防止具1も汚れにくくなる。
【0034】
なお、図1の水はね防止具1では、ガイドボス24が排水口6に遊嵌状態で取り付けられるため、ガイドボス24と排水口6の間には隙間が残存している。この隙間は、水受ボウル21とボウル部4との間に生じる隙間46と連通しており、隙間46を流れる水も排水口6から適宜流出する。従って、水はね防止具1を取り付けた状態でも、隙間46からの排水が阻害されず、水受ボウル21とボウル部4との間に水が溜まってしまうことはない。
【0035】
このようなボウル部4では、フラッシュレバー12を操作すると、水栓5の吐水口9から水道水が流出する。前述のように、水はね防止具1を取り付けない場合、手洗いやボウル部4からの跳ね返りにより、水滴がボウル部4から四方八方に飛び散る。これに対し、水はね防止具1を図1のようにボウル部4に装着すると、四方八方に飛散する水滴は、ボウル部4の上方まで立ち上がった水受ボウル21に受け止められる。水受ボウル21に受け止められた水滴は、その後、重力によって水受ボウル21の下方に案内され、排水孔23を介して、排水口6から給水タンク本体11内へと排出される。
【0036】
従って、本発明による水はね防止具1をボウル部4に装着することにより、手洗いの際に飛び散る水滴をボウル部4外に飛散させることなく水受ボウル21内に回収し、排水口6へと流すことができる。このため、ボウル部4の周囲に水滴がかかることがなく、便座やトイレルームの床・壁、使用者の衣服などが濡れてしまうのを防止できる。特に、便座の倒立状態に関わらず便座への水はねを防止できるので、便座の水濡れにより、次のトイレ使用者が感じる不快感を大幅に低減することが可能となる。
【0037】
また、ボウル部4の汚れも防止でき、重いタンク上蓋7を取り外すことなく、トイレ清掃時も、水はね防止具1のみを洗浄すれば良く、トイレ掃除の負担軽減も図られる。さらに、当該水はね防止具1は、特別な工事や別の設備等を必要とすることなく、トイレルーム内の既存の手洗い器にも容易に設置でき、低コストにてボウル部4やトイレルームを清潔に保つことが可能となる。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の実施例2である水はね防止具51について説明する。図6は、本発明の実施例2である水はね防止具におけるエッジカバー固定部の構成を示す説明図である。水はね防止具51では、エッジカバー41を水受ボウル21の上縁部21fに装着するに当たり、実施例1のテープ45に代えて、図7のような固定片52を使用している。固定片52は、概ね、幅Wa10mm×長さL50mm×厚さt0.2mm程度の合成樹脂シートであり、上縁部21fに複数個形成された固定片取付孔53に挿入される。なお、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
固定片52は、帯状のシート片54と、シート片54の一端側に形成されたきのこ形状のフック部55と、シート片54の他端側に形成された半円形の尾端部56とを有している。フック部55は、半円形の頭端部57と、固定片52のシート片54から幅方向に張り出す形で設けられた係止部58とから構成されている。一方、固定片52の他端側も半円形の尾端部56となっている。つまり、固定片52は両端が曲線状に形成されており、組付作業時や防止具使用時に、作業者や利用者が固定片52によって怪我を負わないよう安全性が考慮されている。固定片52の尾端部56側には、3本の折り目59a〜59c(第1の折り目〜第3の折り目)が付けられている。固定片52は、各折り目59a〜59cに沿って折り曲げることができるようになっている。
【0040】
図8は、固定片52によってエッジカバー41を取り付ける手順を示す説明図である。ここではまず、図8(a)のように、固定片52の尾端部56を水受ボウル21の内側から固定片取付孔53に挿入する。次に、折り目59aを折り曲げた後、折り目59cに沿って、尾端部56を上縁部21fを越える形で水受ボウル21の内側に折り曲げる(図8(b))。その状態で、折り目59aから先の尾端部56を固定片取付孔53に挿入する(図8(c))。そして、尾端部56が固定片取付孔53から抜け出ないように押さえつつ、頭端部57を引っ張り、折り目59bを折り曲げる(図8(d))。これにより、固定片取付孔53に挿入された固定片52のシート片54が、折り目59a〜59cが折り曲げられた状態で、上縁部21fに巻き付いて保持される。
【0041】
固定片52を固定片取付孔53に挿入し、上縁部21fに巻き付かせた後、上縁部21fにエッジカバー41を取り付ける(図8(e))。そして、エッジカバー41を覆うように、頭端部57を水受ボウル21の内側から外側に巻き付け(図8(f))、フック部55を固定片取付孔53に挿入し係合させる(図8(g))。固定片取付孔53は台形状となっており、フック部55が入れやすく、抜けにくい形状となっている。この場合、固定片取付孔53の上底部53aは、固定片52のシート片54よりも若干大きい寸法Wuとなっている(Wu>Wa)。これに対し、下底部53bの幅Wdは、上底部53aより広いが、係止部58の幅Wkよりは小さくなっている(Wd<Wk)。従って、フック部55は、固定片取付孔53に下底部53b側から斜めに挿入され、その後、孔から出た係止部58が固定片取付孔53の側縁53cに引っ掛かり抜け止めされる。これにより、固定片52は、エッジカバー41の周りに巻き付いた状態で固定片取付孔53に固定され、エッジカバー41は、水受ボウル21の上縁部21fを挟持しつつ、水受ボウル21の上端部に固定される。
【実施例3】
【0042】
さらに、本発明の実施例3である水はね防止具61について説明する。図9は、本発明の実施例3である水はね防止具61におけるエッジカバーの取付構造を示す説明図であり、(a)は水受ボウル21の内側から、(b)は水受ボウル21の外側からエッジカバーの固定部を見た状態を示している。また、図10はエッジカバー固定部の構成を示す断面図、図11は実施例3の水はね防止具61にて使用される固定フック62の構成を示す説明図である。
【0043】
図9〜11に示すように、水はね防止具61では、図11の固定フック62を使用してエッジカバー41を固定している。固定フック62は、断面が略U字状となった合成樹脂部材であり、エッジカバー41の外側を覆う形で水はね防止具61に装着される。固定フック62の一端側には係合ボス63が突設されており、係合ボス63は、水受ボウル21に形成されたフック取付孔64に挿入嵌合される。係合ボス63は、スリット65によって上下に分割されている。また、係合ボス63の中央にはピン挿入孔66が形成されている。固定フック62の係合ボス63の裏面側には、円形の凹部67が設けられている。
【0044】
水はね防止具61では、まず、水受ボウル21の上縁部21fにエッジカバー41を取り付ける。次に、フック取付孔64の位置に合わせて、エッジカバー41上に固定フック62を装着する。そして、係合ボス63をフック取付孔64に挿入し、固定フック62を水受ボウル21に固定する。その際、係合ボス63は、その先端部を窄める形でフック取付孔64に挿入される。フック取付孔64に挿入された係合ボス63は、フック取付孔64を抜けたところでスナップフィット状に先端部が開く。これにより、係合ボス63は水受ボウル21に抜け止めされる。その後、係合ボス63が閉じて水受ボウル21から抜け出てしまうのを防止するため、ピン挿入孔66に脱落防止ピン68を挿入する。
【0045】
脱落防止ピン68は、一端側がキノコ状の頭端部68a、他端側がフランジ部68bとなっている。脱落防止ピン68は、頭端部68aからピン挿入孔66に圧入気味に挿入される。そして、頭端部68aが凹部67内に抜け出たところで、頭端部68aがピン挿入孔66の開口縁に引っ掛かり抜け止めされる。一方、フランジ部68bはピン挿入孔66よりも大径となっており、頭端部68aが凹部67内に抜け出たところで、係合ボス63の先端部に当接するようになっている。このように、水はね防止具61では、固定フック62をエッジカバー41上に嵌め込んで、係合ボス63をフック取付孔64に挿入し、脱落防止ピン68を装着するだけで容易にエッジカバー41を水受ボウル21の上縁部21fに固定することができる。
【0046】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、水受ボウル21の上縁部43にエッジカバー41を取り付ける構成を示したが、水受ボウル21とエッジカバー41を一体に成形した形態を採用することも可能である。この場合、水受ボウル21とエッジカバー41を前述同様の別素材にて二色成形しても良いが、同一素材にて、エッジカバー41相当形状を上縁部43に拡大形成しても良い。
【0047】
また、水受ボウル21とエッジカバー41の固定方法は、前述のテープ45には限定されず、接着剤を用いて両者を固定しても良い。その場合、前述のテープ挿入孔44を接着剤溜まりとして使用し、その部位に接着を塗布するようにしても良く、テープ45と接着剤を併用することも可能である。さらに、U字形のクリップや、ハトメ、タグピンなどを用いて水受ボウル21にエッジカバー41を固定しても良い。
【0048】
加えて、ボス33の形成位置や個数は前述の態様には限定されず、ボス33の形状も略半球状には限定されない。すなわち、ボス33を、底面部21e以外の前壁部21aや側壁部21b,21c、奥壁部21dに設けても良く、その個数も任意である。また、ボス形状も、長手方向が長円形状となった凸部や、星形の凸部など任意の形状を採用可能である。さらに、ボス全体が球面状でなくとも良く、ボス上端を平面状に形成しても良い。
【0049】
一方、前述の実施例では、水はね防止具1を長方形状のボウル部4に取り付けているが、水受ボウル21の形状を適宜変更することにより、楕円形や正方形など各種形状の手洗い器に本発明の水はね防止具1は取り付け可能である。すなわち、水はね防止具1の形状は、図示する形状に限られることはなく、手洗い器の形状に応じて適宜変更しても良い。
【0050】
さらに、前述の実施例では、水受ボウル21をPET樹脂にて形成しているが、水受ボウル21の材料はPET樹脂限られることはなく、耐水性を備える材料であれば他の材料を用いて水受ボウル21を形成しても良い。また、貫通孔25の紐26に関しても、前述のように、他端を壁面に固定するのではなく、他端側に吸盤やねじ部材を取り付け、それらをトイレルームの壁面に固定することにより、水受ボウル21の取付状態を安定させても良い。なお、貫通孔25の部位に吸盤を取り付け、ボウル部4の水受面4aに吸着させても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 水はね防止具
2 手洗い器
3 給水タンク
4 ボウル部
4a 水受面
5 水栓
6 排水口
7 タンク上蓋
8 導水管
9 吐水口
11 給水タンク本体
12 フラッシュレバー
13 便器
21 水受ボウル
21a 前壁部
21b,21c 側壁部
21d 奥壁部
21e 底面部
21f 上縁部
22 水栓孔
23 排水孔
24 ガイドボス
25 貫通孔
26 紐
27 ストッパ
27a ストッパ本体
28 吸盤
29 吸盤取付孔
31 吸盤固定ピン
32 ピン孔
33 ボス(凸部)
34 石鹸入れ
35 周壁部
35a 上縁部
36 凹部
37 スリット
41 エッジカバー(カバー部材)
42 装着溝
43 上縁部
44 テープ挿入孔
45 テープ
46 隙間
51 水はね防止具
52 固定片
53 固定片取付孔
53a 上底部
53b 下底部
53c 側縁
54 シート片
55 フック部
56 尾端部
57 頭端部
58 係止部
59a〜59c 折り目(第1の折り目〜第3の折り目)
61 水はね防止具
62 固定フック
63 係合ボス
64 フック取付孔
65 スリット
66 ピン挿入孔
67 凹部
68 脱落防止ピン
68a 頭端部
68b フランジ部
X 水はね防止具高さ
H ボス高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレルーム内に設置された手洗い器に取り付けられ、該手洗い器の外に飛散しようとする水滴を受け止める水はね防止具であって、
前記手洗い器のボウル部内に取り付けられ、凹面状の内面を有し、前記手洗い器に設けられた水栓が挿通される水栓孔と、前記ボウル部に設けられた排水口と連通する排水孔とを備えてなる水受ボウルを有することを特徴とする水はね防止具。
【請求項2】
請求項1記載の水はね防止具において、前記水受ボウルは椀状に形成され、該水受ボウルの高さは、前記ボウル部の深さよりも高いことを特徴とする水はね防止具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水はね防止具において、前記排水孔の裏面側に、前記排水口の内径よりも小径に形成されたガイドボスを突設し、
当該水はね防止具を前記ボウル部上に取り付けたとき、前記ガイドボスが前記排水口内に挿入されることを特徴とする水はね防止具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水はね防止具において、前記水受ボウルの内面側に、前記水受ボウルと一体に形成された石鹸収容部を設けたことを特徴とする水はね防止具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水はね防止具において、前記水はね防止具は、水洗トイレの給水タンクの上部に設けられた手洗い器に取り付けられ、
前記水受ボウルは、当該水はね防止具を前記手洗い器に取り付けたとき、前記給水タンクに吸着可能に設けられた吸盤を備えたストッパを有することを特徴とする水はね防止具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水はね防止具において、前記水受ボウルの上縁部に、前記水受ボウル部の端部を覆うように合成樹脂製のカバー部材を装着したことを特徴とする水はね防止具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水はね防止具において、前記水受ボウルの外側に、当該水はね防止具を前記手洗い器に取り付けたとき、前記手洗い器の前記ボウル部内面に当接し、前記ボウル部と当該水はね防止具との間に隙間を形成する凸部を有することを特徴とする水はね防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−241328(P2012−241328A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109443(P2011−109443)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(593187364)ト−タルプリント豊工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】