説明

トイレブース便器洗浄システム

【課題】ビルなどのトイレ室に備えられた複数のトイレブース間で連携をとりながら各便器装置の自動洗浄ができるようにしたトイレブース便器洗浄システムを提供する。
【解決手段】それぞれに自動洗浄手段を備えた洋風便器装置を設置したトイレブース便器洗浄システムであって、それぞれのトイレブース10は、洗浄時の状態表示手段13を備えるとともに、天井面Cを共通にして、それぞれの仕切壁Wで区分される該天井面Cの特定位置にワイヤレス送受信器16bを設けており、トイレブース内の自動洗浄手段12は、ワイヤレス送受信器16aを通じて送受される洗浄指令信号を伝達しながら、所定の自動洗浄プログラムに従って作動する構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定時刻に到達したこと、所定の汚れを検出したことなどをトリガとして便器の自動清掃を実行する洋風便器装置を有したトイレブースを複数有したトイレブース便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、便器未使用時に便器本体のボウル部内全エリアの洗浄、乾燥などの一連の自動清掃を行う自動洗浄モードを実行可能とした洋風便器装置が開発されている。
【0003】
この自動洗浄モードは、所定時刻に到達したこと、所定の汚れを検出したこと、あるいはスイッチ操作などをトリガとして自動清掃が開始され、ボウル部内の各部位の洗浄と乾燥が連続的に実行されるため、ボウル部内については人手による清掃がほとんど不要である。
【0004】
特許文献1には、自動洗浄が可能な便器装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−346960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビルなどのトイレ室には、仕切壁で仕切られた複数のトイレブースを備えているが、これらに上記の自動洗浄モードを有した便器装置を適用させた場合、次のような種々の問題が発生する。
【0006】
すなわち、操作により起動するものでは、複数の便器装置を1つずつ操作しなければならないため不便であり、また、所定時刻にあるいは所定の汚れ検出などの条件でそれぞれの便器装置が自動起動するものでは、各便器装置は装置間で連携することなく不規則に自動洗浄モードに入るため、利用者にとって自動洗浄タイミングの予測ができず、トイレを使用しにくいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、ビルなどのトイレ室に備えられた複数のトイレブースのブース間で連携をとりながら各便器装置の自動洗浄ができるようにしたトイレブース便器洗浄システムを提供することにある。
【0008】
また、利用者のために複数のトイレブースの少なくとも1つは使用可能状態にしておくことが望ましく、同時に全ての便器が自動洗浄モードになることを避けるようにすることも、主たる目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明システムは、それぞれに自動洗浄手段を備えた洋風便器装置を設置したトイレブース便器洗浄システムであって、それぞれのトイレブースは、洗浄時の状態表示手段を備えるとともに、天井面を共通にして、それぞれの仕切壁で区分される該天井面の特定位置にワイヤレス送受信器を設けており、トイレブース内の自動洗浄手段は、ワイヤレス送受信器を通じて送受される洗浄指令信号を伝達しながら、所定の自動洗浄プログラムに従って作動する構成にしている。
【0010】
請求項2に記載の本発明システムは、それぞれのトイレブースは人体検知手段を備えており、トイレブース内の自動洗浄手段は、人体検知手段によって人体を検知したときには、自動洗浄を禁止して、ワイヤレス送受信器を通じて、次のトイレブースに洗浄指令信号を伝達し、人体の検知がなくなったときに、自動洗浄を開始する構成にしている。
【0011】
請求項3に記載の本発明システムは、自動洗浄手段はトイレブースのいずれか1つは使用可能なようにして、自動洗浄プログラムを実行するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明によれば、天井面を介して洗浄指令信号をワイヤレス送受信する構成であるため、連続して隣り合ったトイレブースに適用でき、ビルなどのトイレ室に設置した複数のトイレブースは相互に連携がとれ、そのため、全てのブースについて自動洗浄の起動操作をする必要がなく、これらのトイレブースをブースの並び順にしたがって自動清掃することができる。また、洗浄時の状態表示手段を備えているため、どのトイレブースが洗浄中であるかを視認することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明によれば、人体検知手段によって人体を検知したときには、自動洗浄を禁止して、ワイヤレス送受信器を通じて、次のトイレブースに洗浄指令信号を伝達し、人体の検知がなくなったときに、自動洗浄を開始する構成にしているので、便器使用が終わった後に洗浄指令を待つことなく、自動洗浄を開始することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明によれば、トイレブースのいずれか1つは使用可能な構成としているため、すべてのトイレブースが使用できないことはなく、利便性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本実施形態のシステム説明図、図2は各トイレブースの要部制御ブロック図、図3は各トイレブースの自動洗浄手段の基本動作を示すフローチャートである。この本実施形態は、ビルなどで、天井面を共通にして仕切壁Wで区切った複数のトイレブース10を有したトイレ室に適用可能である。
【0017】
ここで、トイレブース10は仕切壁Wで仕切られた空間そのものを指すものではなく、その空間に設置した便器装置(本体)、それに備わった、あるいは接続された種々の装置(後述する自動洗浄手段、人体検知手段、状態表示灯など)を含んだものとして位置付けられる。
【0018】
本実施形態に示すシステムは、図1に示すように、複数のトイレブース10、10・・・が無線でネットワーク接続されており、図1、図2に示すように、それぞれのトイレブース10は、自動洗浄モードの清掃のための一連の洗浄や乾燥を連続的に実行する自動洗浄手段12と、洗浄時の状態を表示する状態表示手段13と、便器使用の有無を検知するための人体検知手段14と、自動洗浄を開始操作するための操作手段15と、他のトイレブース10と通信するためのワイヤレス通信手段(ワイヤレス送受信器)16aと、これらを制御するとともに、状態表示手段13を表示制御しながら、トイレブース10内の自動洗浄手段12を作動させるようにした制御部11とを備えている。
【0019】
自動洗浄手段12は、自動洗浄プログラムを含んで構成され、制御部11からの作動により自動洗浄プログラムが起動し、そのプログラムにしたがって不図示の自動洗浄機構を制御して、便器本体17のボウル部(不図示)内の自動洗浄を実行する。
【0020】
これらの構成部のうち制御部11、自動洗浄手段12は洋風便器装置の便器本体17に内蔵されることが望ましいが、人体検知手段14、通信手段16a、操作手段15は、便器本体17またはトイレブース10内の適所に設けられればよい。状態表示手段13は、例えばトイレブース10の扉に設けた状態表示灯、トイレブース10内の壁に取り付けた表示操作パネル、便器本体17に内蔵した表示部などいずれでもよく、便器そのものが光るものでもよい。なお、いずれに設置してもよいが、各部は相互に接続されていることはいうまでもない。また、表示操作パネルで状態表示手段13と操作手段15とを構成してもよい。
【0021】
また、上記ワイヤレス通信手段16aは、便器本体17に内蔵したものでも後付けしたものでもよく、天井面Cには、このワイヤレス通信手段16aからのワイヤレス信号を中継して隣のトイレブース10のワイヤレス通信手段16aに転送するためのワイヤレス送受信器16bが設置されている。ワイヤレス信号は自動洗浄の洗浄指令を含むものであるが、便器を特定するIDコードを含めてもよい。なおワイヤレス信号は、赤外線、超音波などでもよい。
【0022】
ワイヤレス通信手段16aが送出したワイヤレス信号はいったん、天井面Cに設けたワイヤレス送受信器16bで受信し、そのワイヤレス送受信器16bが隣のトイレブース10のワイヤレス送受信器16aに送信し、その後は順次同様に、最後のトイレブース10のワイヤレス通信手段16aまで信号を伝達していく。
【0023】
このように本システムは、自動洗浄の洗浄指令信号を、天井面Cのワイヤレス送受信器16bを介して、隣接するトイレブース10へ伝達していく構成としており、つまり、始点となるトイレブース10と終点となるトイレブース10が予め定められている。
【0024】
図3は、各トイレブース10の自動洗浄手段12(自動洗浄プログラム)の基本動作を示している。なお、この図では始点と終点の間のトイレブース10での基本動作を示しており、始点、終点のトイレブース10での動作については、図示を省略する。始点ではプログラムの起動が操作手段15の操作による点が異なり、終点では次ブースへの指令伝達を行わない点が図3のものと異なる。
【0025】
ワイヤレス信号により洗浄指令を受けた各トイレブース10では、そのトイレブース10が使用中かどうかを人体検知手段14からの人体検知信号により判断し、使用中でなければ自動洗浄機構を作動させて自動洗浄モードを開始し、自動洗浄が終了すれば、次のトイレブース10(天井面のワイヤレス送受信器16b)へ洗浄指令信号を送出する(ステップ101〜105)。なお、状態表示手段13は自動洗浄の開始、終了に連動して、点灯、消灯がなされる。なお、自動洗浄が終了した後、タイマー手段(不図示)を参照して所定時間後に指令信号を送出するようにしてもよい。
【0026】
また、使用中であれば、天井面のワイヤレス送受信器16bを介して、次のトイレブース10へ洗浄指令信号を送出し、その後、当該トイレブース10の使用が終了するのを待って自動洗浄を開始する(ステップ106〜108)。
【0027】
このように、天井面Cを介して洗浄指令信号を順次リレーする構成であるため、自動洗浄モードを操作により起動する場合、所定時刻になったとき自動起動する場合、所定の条件で自動起動する場合のいずれであっても、起動してからほぼ一定の時刻帯の間で、始点から終点までのすべてのトイレブース10について便器の自動洗浄を完了させることができる。
【0028】
本実施形態では、始点となるブース10での1回の自動洗浄の起動で、洗浄指令信号が終点となるブース10まで1回のみ伝達する構成とすれば、このように、各トイレブース10では使用中のときには使用終了を待ち、自らの判断で自動洗浄を開始する必要がある。
【0029】
次トイレブース10へのワイヤレス洗浄指令信号は、洗浄指令を受けてすぐに転送するようにしてもよいが、洗浄終了後に伝達するロジックとすることにより、トイレブース10が同時に自動洗浄中となることを防止できる。
【0030】
ただし、上記のような構成においても、すべてのトイレブース10が使用中であるため、すべてのトイレブース10が自己の判断で自動洗浄を開始する場合には、同時に自動洗浄が行われるおそれがあるが、そのような事態を回避し、確実に1つのトイレブース10を使用可能状態とするために、1回の洗浄リレーにおいて必ずいずれかのトイレブース10での自動洗浄をスキップできる構成としてもよい。
【0031】
例えば、それぞれのトイレブース10が何回目の指令であるかをカウントしておき、(n*N)回目であれば先頭のトイレブース10、(n*N−1)回目であれば2番目のトイレブース、・・・(n*N−(N−1))回目であれば最後のトイレブース10が、それぞれの制御部11の判断によりスキップするロジックとすればよい。ここで、Nはトイレブースの台数、nは1以上の整数を示している。
【0032】
また、自動洗浄が1日に1回のみ起動されるのであれば、各トイレブース10が内蔵カレンダー(不図示)でスキップの要否を判断するようにしてもよい。ワイヤレス信号に洗浄をスキップするトイレブース10のIDコードを含め、そのIDコードを自動洗浄の起動のつど巡回設定するようにしてもよい。
【0033】
また、使用中のためすぐに指令を隣のブースへリレーする場合、その指令信号に使用中のカウンタを含め、最後のトイレブースが、カウンタを見てそれまでのブースがすべて使用中であるかどうかを判断し、すべてが使用中であれば、その回の自動洗浄はパスするようにしてもよい。
【0034】
さらに、始点となるブース10での1回の自動洗浄の起動で、洗浄指令信号を、順、逆往復あるいは1往復半以上リレーするようにし、各トイレブース10が数回受信した洗浄指令にもとづいて少なくとも1回、自動洗浄モードを実行するようにしてもよい。各トイレブース10は使用中のときは隣へリレーするだけでよく、その後に自己判断で洗浄開始しなくとも、すべてのブース10でほとんどもれることなく自動洗浄を実行できる。しかも、自己判断による自動洗浄が行われないため、同時にすべてが自動洗浄モードになるおおれがない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明システムの説明図。
【図2】本発明システムにおける要部制御ブロック図。
【図3】本発明システムにおける各トイレブースの基本動作の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
10 トイレブース
11 制御部
12 自動洗浄手段
13 状態表示手段
14 人体検知手段
15 操作手段
16a ワイヤレス通信手段(ワイヤレス送受信器)
16b 天井面に設置するワイヤレス送受信器
17 便器本体
W 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに自動洗浄手段を備えた洋風便器装置を設置したトイレブース便器洗浄システムであって、
それぞれのトイレブースは、洗浄時の状態表示手段を備えるとともに、天井面を共通にして、それぞれの仕切壁で区分される該天井面の特定位置にワイヤレス送受信器を設けており、
上記トイレブース内の自動洗浄手段は、上記ワイヤレス送受信器を通じて送受される洗浄指令信号を伝達しながら、所定の自動洗浄プログラムに従って作動する構成にしていることを特徴とするトイレブース便器洗浄システム。
【請求項2】
請求項1において、
それぞれのトイレブースは、人体検知手段を備えており、
上記トイレブース内の自動洗浄手段は、上記人体検知手段によって人体を検知したときには、自動洗浄を禁止して、上記ワイヤレス送受信器を通じて、次のトイレブースに洗浄指令信号を伝達し、人体の検知がなくなったときに、自動洗浄を開始する構成にしていることを特徴とするトイレブース便器洗浄システム。
【請求項3】
請求項2において、
上記自動洗浄手段は、上記トイレブースのいずれか1つは使用可能なようにして、上記自動洗浄プログラムを実行するようにしていることを特徴とするトイレブース便器洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−25287(P2008−25287A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201437(P2006−201437)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】