説明

トイレ用手すり

【課題】使用者が洋式腰掛便器から立ち上がる際に転倒することを防止し、小さな負担で楽に立ち上がることを可能とするトイレ用手すりを提供する。
【解決手段】トイレ用手すり1は、把持部5を使用者側に引き寄せる向きに力が加えられる部分である引き寄せ面部と、把持部5を下方に押し下げる向きに力が加えられる部分である押し上げ面部とを有しており、水平面に対して引き寄せ面部のなす傾斜角度を第一の角度とし、水平面に対して押し上げ面部のなす傾斜角度を第二の角度としたときに、第一の角度は、第二の角度よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ用手すりに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洋式腰掛便器の周辺には、使用者が着座した状態から立ち上がる際の動作をサポートすることを目的として、トイレ用手すりが設けられている。
【0003】
使用者が洋式腰掛便器から立ち上がる際は、使用者はまず身体を前に傾けて重心を前方に移動するための前傾動作を行い、体重を足に乗せた状態に移行する。続いて、足を伸ばしながら重心を上方に移動するための立ち上がり動作を行い、立ち上がった状態に移行する。使用者が行うこれらの動作は、トイレ用手すりによって次のようにサポートされる。
【0004】
前傾動作を行う際においては、使用者はまずトイレ用手すりの把持部を掴んで、引き寄せ力を把持部に加える。引き寄せ力とは、把持部を使用者側に引き寄せる向きに加える力であり、使用者はこの引き寄せ力の反力を受けることによって身体を前傾させる。
【0005】
続いて、立ち上がり動作を行う際においては、使用者は把持部を掴んだ状態で、押し上げ力を把持部に加える。押し上げ力とは、把持部を下方に押し下げる向きに加える力であり、使用者はこの押し上げ力の反力を受けることによって身体が上方に押し上げられる。使用者はこの上方に向かう力によるサポートを受けながら足を伸ばしてゆき、立ち上がった状態へと移行する。
【0006】
このように、前傾動作、立ち上がり動作において、使用者はトイレ用手すりの把持部に対しそれぞれ引き寄せ力、押し上げ力を加える。使用者は、これらの反力を受けることにより動作をサポートされながら、楽に立ち上がることができる。
【0007】
このようなトイレ用手すりとして、下記特許文献1に記載のものが提案されている。下記特許文献1に記載のトイレ用手すりは、側面視でL字型の形状となっており、鉛直に配置された第一把持部と、水平に配置された第二把持部と、の二つの把持部を備えている。
【0008】
このような形状のトイレ用手すりを使用して立ち上がる際、着座した状態の使用者は、まず鉛直に配置された方の第一把持部を掴む。その後、第一把持部に対して引き寄せ力を加えることにより前傾動作を行う。続いて、使用者は第一把持部から一度手を放し、水平に配置された方の第二把持部を掴む。その後、第二把持部に対して押し上げ力を加えることにより立ち上がり動作を行う。
【0009】
前傾動作から立ち上がり動作に移行する際、上記のように、使用者は第一把持部から一度手を放して掴む位置を第二把持部に変更する必要があった。その理由は、第一把持部と第二把持部とに加えられる二つの力、すなわち、引き寄せ力と押し上げ力との向きが互いに異なることにより、それぞれ大きな力を把持部に加えるための適切な掴み位置が異なるためである。
【0010】
使用者は掴み位置を変更せず、鉛直に配置された方の第一把持部を掴んだままの状態で押し上げ力を加えることも可能ではある。しかしこの場合、押し上げ力の向きと掴んだ把持部の軸方向とが略一致し、手と把持部との摩擦力を主とする力によって身体がサポートされることとなる。このため、滑りを防止するために大きな握力を加える必要が生じ、使用者に掛かる負担は大きくなってしまう。
【0011】
これは、最初に水平に配置された方の第二把持部を掴んだ状態で引き寄せ力を加えた場合も同様で、前傾動作の際に、やはり滑りを防止するために大きな握力を加える必要が生じ、使用者に掛かる負担は大きくなってしまう。
【0012】
特に、トイレ用手すりを必要とするような使用者は、高齢者や身体障害者などのように、握力が弱い場合が多い。そこで使用者は、大きな握力を加えることなく小さな負担で安全に立ち上がるために、引き寄せ力を発揮する際の掴み位置と、押し上げ力を発揮する際の掴み位置とを異ならせる必要があった。
【0013】
特許文献1に記載されているような従来のトイレ用手すりにおいては、前傾動作から立ち上がり動作に移行する際、使用者は把持部から一度手を放す必要があった。この時の使用者は立ち上がり動作の途中であり、不安定な体勢であるので、把持部から手を放してしまうことによりバランスを崩してしまう可能性があった。
【0014】
一方、特許文献2に記載されているように、一様な太さの把持部を傾斜状に配置した手すりも知られている。このように把持部を配置すると、使用者が立ち上がる際に行う一連の動作において、使用者は途中で把持部の掴み位置を変更することなく、把持部に対し引き寄せ力、押し上げ力を加えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−238806号公報
【特許文献2】特開2002−201784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献2に記載の手すりでは、傾斜状に配置した把持部に対して加えることができる引き寄せ力、押し上げ力はいずれも、特許文献1に記載の側面視L字型の手すりの場合と比較すると、小さな力しか加えることができないという問題があった。
【0017】
これは、把持部に対し加えられる引き寄せ力と押し上げ力とは、いずれも把持部の配置角度によりその大きさが変化し、互いにトレードオフの関係にあることによるものである。具体的には、使用者が把持部に引き寄せ力を加える際、手と把持部との摩擦力に頼ることなく最も強い力を把持部に加えることができるのは、把持部を鉛直に配置した場合である。一方で、使用者が把持部に押し上げ力を加える際、手と把持部との摩擦力に頼ることなく最も強い力を把持部に加えることができるのは、把持部を水平に配置した場合である。
【0018】
従って、把持部を傾斜状に配置した場合においては、引き寄せ力、押し上げ力のいずれについても、最も強い力を把持部に加え得る場合と比べて、小さい力しか加えることができなかった。
【0019】
本発明はかかる事情及び知見に鑑みてなされたものであり、使用者が洋式腰掛便器から立ち上がる際に行う一連の動作において、把持部から手を放して掴み位置を変更する必要がなく、使用者が大きな引き寄せ力と大きな押し上げ力を容易に把持部に加えることのできるトイレ用手すりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ用手すりは、洋式腰掛便器に着座した使用者が、前傾動作から立ち上がり操作を経て立ち上がる際の動作をサポートするトイレ用手すりであって、前記洋式腰掛便器を側方側から見たときに、前記洋式腰掛便器の前方且つ上方に配置され、鉛直方向の上方から下方に向かって前記洋式腰掛便器に接近するように斜めに配置された把持部を備え、前記把持部は、前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面の少なくとも一部であり、前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者が当該把持部を掴んで前傾動作を行う際、指が掛けられた状態で前記把持部を使用者側に引き寄せる向きに力が加えられる部分である引き寄せ面部と、前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面の少なくとも一部であり、使用者が前記前傾動作に続いて立ち上がり動作を行う際、当該把持部を持ち替えることなく、手の平を載せた状態で前記把持部を下方に押し下げる向きに力が加えられる部分である押し上げ面部と、を有しており、前記洋式腰掛便器を側方側から見たときの、水平面に対する前記引き寄せ面部のなす傾斜角度を第一の角度とし、前記洋式腰掛便器を側方側から見たときの、水平面に対する前記押し上げ面部のなす傾斜角度を第二の角度としたときに、前記第一の角度は、前記第二の角度よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
先述のように、洋式腰掛便器に着座した使用者が立ち上がる際の動作は、前傾動作と立ち上がり動作とからなっている。そして、それぞれの動作において、使用者の手が把持部に及ぼす力の向きが異なっている。本発明者らは、洋式腰掛便器に着座した使用者が側面視傾斜状に配置された把持部を掴んで立ち上がる際の動作や、そのとき把持部に及ぼされる力について、詳細な観察を行った。その結果、使用者の手が把持部に及ぼす力の向きだけではなく、把持部において力が作用する場所についても、前傾動作と立ち上がり動作とでは互いに異なっているという知見を得た。
【0022】
前傾動作においては、まず、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面の一部に対して指を掛けた状態となる。その後、その状態で把持部に対し引き寄せ力が加えられるため、引き寄せ力の大部分は、把持部のうち指が掛けられた側の側面に対して加えられることとなる。言い換えると、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面に対しては、前傾動作時において力は殆ど加えられない。
【0023】
一方、前傾動作に続いて行われる立ち上がり動作においては、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面の一部に対して手の平を載せた状態となる。その状態で把持部に対し押し上げ力が加えられるため、押し上げ力の大部分は、把持部のうち手の平を載せた側の側面に対して加えられることとなる。言い換えると、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面に対しては、立ち上がり動作時において力は殆ど加えられない。
【0024】
本発明は上記知見に基づくものであって、把持部のうち、前傾動作の際に引き寄せ力の大部分が加わる部分の形状と、立ち上がり動作の際に押し上げ力の大部分が加わる部分の形状とを互いに異なるものとし、それぞれの力を加えるのに適した形状としたものである。本発明のトイレ用手すりでは、鉛直方向の上方から下方に向かって前記洋式腰掛便器に接近するように側面視傾斜状に把持部を配置している。このため、使用者は、前傾動作から立ち上がり動作に移行する際、把持部から手を放して持ち替える必要がなく、一連の動作を安全に行って立ち上がることができる。
【0025】
また、本発明のトイレ用手すりでは、水平面に対して引き寄せ面部がなす傾斜角度である第一の角度を、水平面に対して押し上げ面部のなす傾斜角度である第二の角度よりも大きくしている。これにより、前傾動作の際に力が加わる引き寄せ面部の傾斜角度が大きくなるため、使用者は強い引き寄せ力を把持部に加えることができる。一方、立ち上がり動作の際に力が加わる押し上げ面部の傾斜角度は小さくなるため、使用者は強い押し上げ力を把持部に加えることができる。
【0026】
以上のように、本発明のトイレ用手すりによれば、着座した状態の使用者が立ち上がるために行う一連の動作において転倒する危険がなく、使用者が把持部に対し大きな引き寄せ力、及び大きな押し上げ力を加えることを可能とし、立ち上がる際において使用者に掛かる負担を著しく低減することができる。
【0027】
また本発明に係るトイレ用手すりでは、前記洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいて、前記押し上げ面部が上方側に突出するように湾曲形成されていることも好ましい。
【0028】
使用者の手によって把持部に加えられる力のベクトルは、前傾動作及び立ち上がり動作の過程で連続的に変化していく。特に、立ち上がり動作中において押し上げ面部が受ける力のベクトルは、使用者の体勢が変化し重心位置が高くなっていくに従って大きく変化するこの好ましい態様では、押し上げ面部が上方側に突出するように湾曲形成されている。これにより、使用者は把持部を持ち替えることなく、湾曲形成されている押し上げ面部に加える力の方向を連続的に変化させることで押し上げ面部に加える力のベクトルを円滑に変化させ、把持部に対して大きな押し上げ力を加えることが可能となる。
【0029】
また本発明に係るトイレ用手すりでは、前記洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいて、前記引き寄せ面部が上方側に後退するように湾曲形成されており、前記押し上げ面部の曲率半径が、前記引き寄せ面部の曲率半径よりも大きく形成されていることも好ましい。
【0030】
この好ましい態様では、引き寄せ面部が上方側に後退するように湾曲形成されている。これにより、使用者は把持部を持ち替えることなく、湾曲形成されている引き寄せ面部に加える力の方向を連続的に変化させることで引き寄せ面部に加える力のベクトルをも円滑に変化させ、把持部に対して大きな引き寄せ力、及び大きな押し上げ力を加えることが可能となる。
【0031】
また、押し上げ面部と引き寄せ面部とがいずれも上方側に突出又は後退するように湾曲形成されているため、把持部の一部が極端に太くなってしまうことがない。従って使用者は把持部をしっかりと掴むことができ、手が滑って転倒してしまうことが防止される。
【0032】
更に、押し上げ面部の曲率半径が、引き寄せ面部の曲率半径よりも大きく形成されているため、押し上げ面部は水平に近づき、立ち上がり動作時において把持部に加えられる押し上げ力を大きなものとすることができる。一方、引き寄せ面部の曲率半径は小さく形成されるため、引き寄せ面部は鉛直に近づき、引き寄せ動作時において把持部に加えられる引き寄せ力を大きなものとすることができる。
【0033】
また本発明に係るトイレ用手すりでは、前記把持部は、前記洋式腰掛便器を前方側から見たときに下方から上方へ向かって前記洋式腰掛便器に接近するように斜めに配置されることも好ましい。
【0034】
使用者が把持部に対し引き寄せ力を加える際において、最も力を加えやすい方向は、把持部から使用者自身の胴体に向かう方向である。この好ましい態様では、洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいて把持部が傾斜状となるよう配置したことに加え、洋式腰掛便器を正面側から見たときにおいても把持部が傾斜状となるように配置している。これにより、使用者が把持部を握った際に最も力を加えやすい方向と、使用者が着座した状態から立ち上がる際に把持部に加える必要のある力の方向とを、略一致させることができる。従って、使用者は立ち上がる際に必要な力を効率的にトイレ用手すりに加えることが可能となる。これにより、使用者に掛かる負担を著しく低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、使用者が洋式腰掛便器から立ち上がる際に行う一連の動作において、把持部から手を放して掴み位置を変更する必要がなく、大きな引き寄せ力と大きな押し上げ力を把持部に加えることのできるトイレ用手すりを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりが設置されたトイレ室を模式的に示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりが設置されたトイレ室を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりの、把持部の形状を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりの把持部に対し、引き寄せ力が加えられる様子を説明するための側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりの把持部に対し、押し上げ力が加えられる様子を説明するための側面図である。
【図6】引き寄せ面部の傾斜角度と引き寄せ力の大きさとの関係、及び、押し上げ面部の傾斜角度と押し上げ力の大きさとの関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る把持部を、その軸方向に垂直な面で切断した場合の断面図である。
【図8】図7に示す把持部を、使用者が掴んだ様子を説明する断面図である。
【図9】本発明の比較例に係るトイレ用手すりにおいて、使用者が把持部に対し引き寄せ力を加える様子を模式的に説明するための側面図である。
【図10】本発明の比較例に係るトイレ用手すりにおいて、使用者が把持部に対し引き寄せ力を加える様子を模式的に説明するための上面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るトイレ用手すりにおいて、使用者が把持部に対し引き寄せ力を加える様子を模式的に説明するための上面図である。
【図12】第2実施形態に係るトイレ用手すりが設置されたトイレ室を模式的に示す側面図である。
【図13】第2実施形態に係るトイレ用手すりの、把持部の形状を模式的に示す側面図である。
【図14】第2実施形態に係るトイレ用手すりの把持部に対し、引き寄せ力が加えられる様子を説明するための側面図である。
【図15】第2実施形態に係るトイレ用手すりの把持部に対し、押し上げ力が加えられる様子を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0038】
本発明の実施形態であるトイレ用手すりについて、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るトイレ用手すりが設置されたトイレ室を模式的に示す正面図であり、図2はその側面図である。
【0039】
本実施形態のトイレ用手すり1は、トイレ室の横壁2に固定され、洋式腰掛便器3の側方に配置されている。トイレ用手すり1は、その上部から縦手すり4、把持部5、横手すり6によって構成されており、これらが全て一体に結合され可動部を有さない構造の固定手すりである。
【0040】
縦手すり4は、トイレ用手すり1の上部を占める部分であって、その軸が鉛直方向となるように配置されている。縦手すり4は、立ち上がった状態の使用者によって掴まれる部分であり、トイレ室に入室してこれから洋式腰掛便器3に着座しようとする時点の体勢や、洋式腰掛便器3から立ち上がった後における体勢等をサポートする目的で設けられている。
【0041】
把持部5は、縦手すり4の下部に設けられた部分であって、洋式腰掛便器3の前方且つ上方に配置されている。把持部5は、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者が立ち上がる際に掴む部分であって、使用者が立ち上がるために行う一連の動作をサポートする目的で設けられている。この把持部5の具体的な形状については、後に詳しく説明する。
【0042】
横手すり6は、把持部5の下部に設けられた部分であって、その軸が水平方向となるように配置されている。横手すり6は、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者によって掴まれる部分であり、当該状態における使用者の体勢をサポートする目的で設けられている。
【0043】
尚、本実施形態では、トイレ用手すり1はトイレ室の横壁2に固定されているが、トイレ室の天井や床に固定するなど、種々の態様で固定することができる。
【0044】
次に、把持部5の具体的な形状について説明する。図2に示したように、本実施形態の把持部5は、洋式腰掛便器3を側方側から見たときに、鉛直方向の上方から下方に向かって洋式腰掛便器3に接近するように側面視傾斜状に配置されている。
【0045】
図3には、把持部5の形状を拡大して示した。同図においてθ1は、把持部5の側面のうち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面が水平面に対してなす傾斜角度である。また、θ2は、把持部5の側面のうち、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面が水平面に対してなす傾斜角度である。本実施形態では、θ1がθ2よりも大きくなるように把持部5が形成されている。これにより、本実施形態に係る把持部5の太さは一様ではなく、下方にいくほどその太さが太くなっている。
【0046】
次に、使用者が洋式腰掛便器3に着座した状態から立ち上がる際、使用者の手から把持部5に加えられる力について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0047】
使用者が把持部5を掴んで立ち上がる際の動作は、一連に行われる二つの動作からなっている。始めに行われるのが前傾動作であり、続いて行われるのが立ち上がり動作である。
【0048】
前傾動作とは、使用者が身体を前に傾けて重心を前方に移動するための動作である。この動作により、使用者は体重を足に乗せた状態に移行し、立ち上がるための準備が完了した状態となる。
【0049】
立ち上がり動作とは、前傾動作によって体重を足に乗せた状態の使用者が、足を伸ばしながらその重心を上方に移動する動作である。この動作によって、使用者は洋式腰掛便器3から完全に立ち上がった状態へと移行する。
【0050】
前傾動作においては、使用者は把持部5を掴んだ状態で、引き寄せ力7を把持部5に加える。引き寄せ力7とは、図4に矢印で示したように、把持部5を使用者側に引き寄せる向きに加える力である。使用者はこの引き寄せ力7の反力を受けることによって、身体を前傾させる。言い換えると、当該反力によって使用者の前傾動作がサポートされる。
【0051】
図4から明らかなように、引き寄せ力7はその大部分が、把持部5の側面のうち図4において左側の側面の一部、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面の一部に対し加えられることとなる。この、引き寄せ力7が加えられる部分を引き寄せ面部9と定義すると、引き寄せ面部9が水平面となす傾斜角度はθ1となる。
【0052】
本実施形態では、θ1が大きくなるように把持部5が形成されているため、使用者は強い引き寄せ力7を把持部5に加えることができる。
【0053】
立ち上がり動作においては、使用者は把持部5を掴んだ状態で、押し上げ力8を把持部5に加える。押し上げ力8とは、図5に矢印で示したように、把持部5を下方に押し下げる向きに加える力である。使用者はこの押し上げ力8の反力を受けることによって、身体が上方に押し上げられる。言い換えると、当該反力によって使用者の立ち上がり動作がサポートされる。
【0054】
図5から明らかなように、押し上げ力8はその大部分が、把持部5の側面のうち図5において右側の側面の一部、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面の一部に対し加えられることとなる。この、押し上げ力8が加えられる部分を押し上げ面部10と定義すると、押し上げ面部10が水平面となす傾斜角度はθ2となる。
【0055】
本実施形態では、θ2が小さくなるように把持部5が形成されているため、使用者は強い押し上げ力8を把持部5に加えることができる。
【0056】
図6は、引き寄せ面部9の傾斜角度と、使用者から加えられる引き寄せ力7の大きさとの関係を示している。また、押し上げ面部10の傾斜角度と、使用者から加えられる押し上げ力8の大きさとの関係も示している。従来のトイレ用手すりにおいては把持部の太さが一様であったため、引き寄せ面部9の傾斜角度と押し上げ面部10の傾斜角度は、いずれも把持部の設置角度と一致していた。このため、図6から明らかなように、把持部の設置角度を大きくすると、使用者から加えられる引き寄せ力は大きくなる一方で押し上げ力は小さくなっていた。逆に、把持部の設置角度を小さくすると、使用者から加えられる押し上げ力は大きくなる一方で引き寄せ力は小さくなっていた。
【0057】
すなわち、従来のトイレ用手すりにおいては、把持部に対し加えられる引き寄せ力と押し上げ力とは、いずれも把持部の配置角度によりその大きさが変化し、互いにトレードオフの関係にあった。このため、把持部を傾斜状に配置しただけの従来のトイレ用手すりにおいては、使用者は把持部5の掴み位置を変更することなく、把持部に対し引き寄せ力、押し上げ力を加えることが可能であったが、いずれについても小さな力しか加えることができなかった。
【0058】
それに対し、本実施形態に係るトイレ用手すり1は、引き寄せ力7を受ける引き寄せ面部9の傾斜角度θ1と、押し上げ力8を受ける押し上げ面部10の傾斜角度θ2とを互いに異ならせ、それぞれの力を受けるのに適した角度としている。すなわち、使用者が強い引き寄せ力7を把持部5に加えることができるように、θ1は大きく形成している。一方、使用者が強い押し上げ力8を把持部5に加えることができるように、θ2は小さく形成している。
【0059】
次に、本実施形態に係る把持部5の、軸方向断面形状について説明する。
【0060】
図7に示したのは、把持部5をその軸方向に垂直な面で切断した場合の断面図である。また、図7に示した把持部5を、使用者の手が掴んだ状態を図8に示した。
【0061】
本実施形態に係る把持部5の軸方向に垂直な面による断面形状は、これらの図に示したように略円形上に形成されているが、真円とはなっていない。当該断面形状において、押し上げ面部10側における外形の曲率半径R2が、引き寄せ面部9側における外形の曲率半径R1よりも大きくなるよう、把持部5が形成されている。
【0062】
使用者が前傾動作時において把持部5に力を加える際は、使用者は把持部5のうち引き寄せ面部9に指をかけた状態で引き寄せ力を加えることとなる。従って、把持部5の軸方向に垂直な面による断面形状において、引き寄せ面部10側における外形の曲率半径R1を小さく形成すると、使用者はより大きな握力を発揮することができ、その結果、大きな引き寄せ力を把持部に加えることができる。
【0063】
一方、使用者が立ち上がり動作時において把持部5に力を加える際は、使用者は把持部5のうち押し上げ面部10に手の平を載せた状態で押し上げ力を加えることとなる。従って、把持部5の軸方向に垂直な面による断面形状において、押し上げ面部10側における外形の曲率半径R2を大きく形成すると、使用者は手の平の全体を使って大きな押し上げ力を把持部5に加えることができる。
【0064】
続いて、洋式腰掛便器3を前方側から見たときにおける、把持部5の配置について説明する。
【0065】
図1に示したように、洋式腰掛便器3を前方側から見たときにおいては、把持部5は下方から上方へ向かって洋式腰掛便器3に接近するように、正面視傾斜状に配置されている。すなわち、把持部5は、これまでに説明したように側面視において傾斜状に配置されているのみならず、正面視においても傾斜状に配置されている。
【0066】
洋式腰掛便器3を前方側から見たときにおける把持部5の傾斜角度と、使用者が把持部5に対して加える引き寄せ力との関係について、図9乃至図11を参照しながら説明する。
【0067】
図9は、本発明の比較例に係るトイレ用手すりにおいて、使用者が把持部に対し引き寄せ力を加える様子を模式的に説明するための側面図であり、図10はその上面図である。
【0068】
本比較例に係るトイレ用手すりの把持部は、洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいては本実施形態と同様に、鉛直方向の上方から下方に向かって洋式腰掛便器に接近するように側面視傾斜状に配置されている。一方、洋式腰掛便器を正面側から見たときにおいては本実施形態と異なり、正面視傾斜状ではなく、その軸方向が鉛直下方に向かうよう配置されている。
【0069】
使用者が洋式腰掛便器3から立ち上がる際は、これまで説明したように、把持部に対してまず引き寄せ力が加えられる。ここで、使用者の前傾動作をサポートするために必要な引き寄せ力の方向は、矢印F7で示したように、把持部から使用者の胴体に向かう方向である。
【0070】
一方、使用者が把持部を掴んだ状態において最も引き寄せ力を加えやすい方向は、本実施形態の把持部においては矢印F8で示した方向となる。これは、人間の骨格や筋肉などの構造によるものであって、把持部を掴んだ状態の手首の向きに応じて、力を加えやすい方向が限定されてしまうことに起因している。
【0071】
図10において明らかなように、矢印F7の方向と矢印F8の方向とは一致していない。すなわち、本比較例においては、前傾動作をサポートするために必要な引き寄せ力の方向と、使用者が把持部を掴んだ状態において最も引き寄せ力を加えやすい方向とが一致していない。その結果、使用者は前傾動作に必要な力を把持部に対して効率的に加えることができないため、使用者に掛かる負担が大きくなってしまっていた。
【0072】
このような本比較例とは異なり、本実施形態においては、把持部5は側面視において傾斜状に配置されているのみならず、正面視においても傾斜状に配置されている。
【0073】
図11は、本実施形態に係るトイレ用手すりにおいて、使用者が把持部5に対し引き寄せ力を加える様子を模式的に説明するための上面図である。同図において、使用者の前傾動作をサポートするために必要な引き寄せ力の方向を矢印F9で示した。また、使用者が把持部5を掴んだ状態において最も引き寄せ力を加えやすい方向を矢印F10で示した。
【0074】
図11で明らかなように、矢印F9の方向と矢印F10の方向とは一致している。すなわち、本実施形態においては、本比較例と異なり、前傾動作をサポートするために必要な引き寄せ力の方向と、使用者が把持部5を掴んだ状態において最も引き寄せ力を加えやすい方向とが一致している。その結果、使用者は前傾動作に必要な力を把持部5に対して効率的に加えることが可能となるため、使用者に掛かる負担を低減することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るトイレ用手すり1によれば、使用者は洋式腰掛便器3から立ち上がる際、途中で把持部5から手を放して持ち替えなくとも、把持部5に対し大きな引き寄せ力7、及び大きな押し上げ力8を加えることができる。従って、使用者は転倒することなく安全に立ち上がることができる上、小さな負担で楽に立ち上がることができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図12は、第2実施形態に係るトイレ用手すり11が設置されたトイレ室を模式的に示す側面図である。第2実施形態においては、先に説明した第1実施形態と比較すると、把持部の形状が異なっている。
【0077】
本実施形態のトイレ用手すり11は、トイレ室の横壁2に固定され、洋式腰掛便器3の側方に配置されている。トイレ用手すり11は、その上部から縦手すり4、把持部12、横手すり6によって構成されており、これらが全て一体に結合され可動部を有さない構造の固定手すりである。
【0078】
縦手すり4は、トイレ用手すり1の上部を占める部分であって、その軸が鉛直方向となるように配置されている。縦手すり4は、立ち上がった状態の使用者によって掴まれる部分であり、トイレ室に入出してこれから洋式腰掛便器3に着座しようとする時点の体勢や、洋式腰掛便器3から立ち上がった後における体勢等をサポートする目的で設けられている。
【0079】
把持部12は、縦手すり4の下部に設けられた部分であって、洋式腰掛便器3の前方且つ上方に配置されている。把持部12は、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者が立ち上がる際に掴む部分であって、立ち上がるための一連の動作をサポートする目的で設けられている。この把持部12の具体的な形状については、後に詳しく説明する。
【0080】
横手すり6は、把持部12の下部に設けられた部分であって、その軸が水平方向となるように配置されている。横手すり6は、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者によって掴まれる部分であり、当該状態における使用者の体勢をサポートする目的で設けられている。
【0081】
次に、把持部12の具体的な形状について説明する。図12に示したように、本実施形態において把持部12は、洋式腰掛便器3を側方側から見たときに、鉛直方向の上方から下方に向かって洋式腰掛便器3に接近するように側面視傾斜状に配置されている。
【0082】
更に本実施形態においては、把持部12は上方側に突出するように側面視湾曲凸状に形成されている。従って、把持部12の側面のうち図12において左側の側面、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面は、洋式腰掛便器3を側方側から見たときにおいて、上方側に突出するように側面視湾曲凹状に形成されている。また、把持部12の側面のうち図12において右側の側面、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面は、洋式腰掛便器3を側方側から見たときにおいて、上方側に突出するように側面視湾曲凸状に形成されている。
【0083】
図13には、把持部12の形状を拡大して示した。同図においてθ3は、把持部12の側面のうち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面が水平面に対してなす傾斜角度である。また、θ4は、把持部12の側面のうち、洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面が水平面に対してなす傾斜角度である。
【0084】
本実施形態では、洋式腰掛便器3を側方側から見たときにおいて、把持部12の側面のうち図12において左側の側面の曲率半径が、把持部12の側面のうち図12において右側の側面の曲率半径よりも大きくなるように形成されている。その結果、本実施形態の把持部12においては、θ3がθ4よりも大きくなっている。
【0085】
尚、把持部12が湾曲凸状に形成されているため、これら傾斜角度の大きさは、把持部12における場所によって変化する。このため、θ3とθ4とを比較するにあたっては、把持部12を使用者が掴んだ場所(例えば図13のP1)において、対応するθ3とθ4とを比較している。即ち、把持部12におけるどの位置を使用者が掴んだとしても、当該位置において対応するθ3とθ4とを比較すると、常にθ3がθ4よりも大きくなるように把持部12が形成されている。
【0086】
次に、使用者が洋式腰掛便器3に着座した状態から立ち上がる際、使用者の手から把持部12に加えられる力について、図14及び図15を参照しながら説明する。
【0087】
本実施形態においても、使用者が洋式腰掛便器3に着座した状態から立ち上がる際、前傾動作、立ち上がり動作が一連に行われる。これらの動作は、先に説明した第1実施形態におけるものと同一である。
【0088】
前傾動作においては、使用者は把持部12を掴んだ状態で、引き寄せ力13を把持部12に加える。引き寄せ力13とは、図14に矢印で示したように、把持部12を使用者側に引き寄せる向きに加える力である。使用者はこの引き寄せ力13の反力を受けることによって、身体を前傾させる。言い換えると、当該反力によって使用者の前傾動作がサポートされる。
【0089】
図14から明らかなように、引き寄せ力13はその大部分が、把持部12の側面のうち図14において左側の側面の一部、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面の一部に対し加えられることとなる。この、引き寄せ力13が加えられる部分を引き寄せ面部15と定義すると、引き寄せ面部15が水平面となす傾斜角度はθ3となる。
【0090】
本実施形態においては、θ3が大きくなるように把持部12が形成されているため、使用者は強い引き寄せ力13を把持部12に加えることができる。
【0091】
立ち上がり動作においては、使用者は把持部12を掴んだ状態で、押し上げ力14を把持部12に加える。押し上げ力14とは、図15に矢印で示したように、把持部12を下方に押し下げる向きに加える力である。使用者はこの押し上げ力14の反力を受けることによって、身体が上方に押し上げられる。言い換えると、当該反力によって使用者の立ち上がり動作がサポートされる。
【0092】
図15から明らかなように、押し上げ力14はその大部分が、把持部12の側面のうち図15において右側の側面の一部、すなわち、洋式腰掛便器3に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面の一部に対し加えられることとなる。この、押し上げ力14が加えられる部分を押し上げ面部16と定義すると、押し上げ面部16が水平面となす傾斜角度はθ4となる。
【0093】
本実施形態では、θ4が小さくなるように把持部12が形成されているため、使用者は強い押し上げ力14を把持部12に加えることができる。
【0094】
次に、引き寄せ力13及び押し上げ力14のベクトルについて説明する。
【0095】
図14には、引き寄せ面部15に対して加えられる引き寄せ力13のベクトル、すなわち、引き寄せ力13の大きさ、向き、作用点する位置が、前傾動作が行われる間において時間とともに変化していく様子を示している。同図において、前傾動作初期における引き寄せ力13を矢印F1で示し、前傾動作中期における引き寄せ力13を矢印F2で示し、前傾動作後期における引き寄せ力13を矢印F3で示している。説明の便宜上、前傾動作中の期間を3つに分け、それぞれにおける引き寄せ力13を矢印で表したが、これらは実際には連続的に変化していくものである。
【0096】
前傾動作中に使用者の姿勢が変化するに伴い、引き寄せ面部15に対して加えられる引き寄せ力13のベクトルは変化していく。図14に示したように、引き寄せ力13の大きさは次第に大きくなっている。また、引き寄せ力13の向きは、使用者の手前下方に向かう状態から、水平に向かうように変化する。更に、引き寄せ力13の作用する位置は、引き寄せ面部15に沿って次第に上方へと変化している。
【0097】
本実施形態においては、引き寄せ面部15の形状が、洋式腰掛便器3を側方側から見たときにおいて、上方側に突出するように側面視湾曲凹状に形成されている。従って、前傾動作中に使用者の体勢が変化しても、使用者は把持部12を持ち替えることなく、引き寄せ力13のベクトルを円滑に変化させることができる。
【0098】
図15には、押し上げ面部16に対して加えられる押し上げ力14のベクトル、すなわち、押し上げ力14の大きさ、向き、作用点する位置が、立ち上がり動作が行われる間において時間とともに変化していく様子を示している。同図において、立ち上がり動作初期における押し上げ力14を矢印F4で示し、立ち上がり動作中期における押し上げ力14を矢印F5で示し、立ち上がり動作後期における押し上げ力14を矢印F6で示している。説明の便宜上、立ち上がり動作中の期間を3つに分け、それぞれにおける押し上げ力14を矢印で表したが、これらは実際には連続的に変化していくものである。
【0099】
立ち上がり動作中に使用者の姿勢が変化するに伴い、押し上げ面部16に対して加えられる押し上げ力14のベクトルは変化していく。図15に示したように、押し上げ力14の大きさは次第に大きくなっている。また、押し上げ力14の向きは、使用者の奥側下方に向かう状態から、鉛直下方に向かうように変化する。更に、押し上げ力14の作用する位置は、押し上げ面部16に沿って次第に使用者からみて手前側へと変化している。
【0100】
本実施形態においては、押し上げ面部16の形状が、洋式腰掛便器3を側方側から見たときにおいて、上方側に突出するように側面視湾曲凹状に形成されている。従って、立ち上がり動作中に使用者の体勢が変化しても、使用者は把持部12を持ち替えることなく、押し上げ力14のベクトルを円滑に変化させることができる。
【符号の説明】
【0101】
1:トイレ用手すり
2:横壁
3:洋式腰掛便器
4:縦手すり
5:把持部
6:横手すり
7:引き寄せ力
8:押し上げ力
9:引き寄せ面部
10:押し上げ面部
11:トイレ用手すり
12:把持部
13:引き寄せ力
14:押し上げ力
15:引き寄せ面部
16:押し上げ面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式腰掛便器に着座した使用者が、前傾動作から立ち上がり動作を経て立ち上がる際の動作をサポートするトイレ用手すりであって、
前記洋式腰掛便器を側方側から見たときに、前記洋式腰掛便器の前方且つ上方に配置され、鉛直方向の上方から下方に向かって前記洋式腰掛便器に接近するように斜めに配置された把持部を備え、
前記把持部は、
前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て奥側に位置する側面の少なくとも一部であり、前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者が当該把持部を掴んで前傾動作を行う際、指が掛けられた状態で前記把持部を使用者側に引き寄せる向きに力が加えられる部分である引き寄せ面部と、
前記洋式腰掛便器に着座した状態の使用者から見て手前側に位置する側面の少なくとも一部であり、使用者が前傾動作に続いて立ち上がり動作を行う際、当該把持部を持ち替えることなく、手の平を載せた状態で前記把持部を下方に押し下げる向きに力が加えられる部分である押し上げ面部と、を有しており、
前記洋式腰掛便器を側方側から見たときの、水平面に対する前記引き寄せ面部のなす傾斜角度を第一の角度とし、
前記洋式腰掛便器を側方側から見たときの、水平面に対する前記押し上げ面部のなす傾斜角度を第二の角度としたときに、
前記第一の角度は、前記第二の角度よりも大きいことを特徴とする、トイレ用手すり。
【請求項2】
前記洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいて、前記押し上げ面部が上方側に突出するように湾曲形成されていることを特徴とする、請求項1記載のトイレ用手すり。
【請求項3】
前記洋式腰掛便器を側方側から見たときにおいて、前記引き寄せ面部が上方側に後退するように湾曲形成されており、前記押し上げ面部の曲率半径が、前記引き寄せ面部の曲率半径よりも大きく形成されていることを特徴とする、請求項2記載のトイレ用手すり。
【請求項4】
前記把持部は、前記洋式腰掛便器を前方側から見たときに、下方から上方へ向かって前記洋式腰掛便器に接近するように斜めに配置されることを特徴とする、請求項1記載のトイレ用手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−22363(P2013−22363A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162035(P2011−162035)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】