説明

トイレ用洗浄剤組成物

【課題】人体への安全性、及び、トイレ室内の便器、壁面、床面等の洗浄性に優れ、消臭効果及び除菌効果が高く、尿石の堆積を抑制することができるトイレ用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、ノニオン性界面活性剤からなる洗浄成分と、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種からなる除菌成分と、金属イオン(亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、銀イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等)からなる消臭成分と、水とを含有し、pHが6〜8の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体への安全性及び洗浄性に優れ、消臭効果及び除菌効果が高く、尿石の堆積を抑制することができるトイレ用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ室内の便器や、床面、壁面等のタイルに付着している汚れの多くは、尿中のリン酸塩、カルシウム塩、尿酸などが酵素により分解され、難溶性の化合物となった尿石によるものであることが知られている。そして、この尿石が放置され、更に堆積された場合、その除去が大変難しくなり、微生物、腐敗菌等が棲みつき、硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア等の悪臭の元となる。従来、この汚れを除去する洗浄剤組成物として、塩酸を主成分とする酸性の洗浄剤組成物が広く使用されてきた。しかしながら、塩酸を含有することで、使用時に、保護手袋、保護めがね等の着用を必要とする場合があった。また、塩素系の洗浄剤(カビ取り剤、漂白剤等)と混合された場合に、有害な塩素ガスが発生することがあり、細心の注意を払って使用しなければならなかった。
【0003】
一方、洗面台、浴室等のタイル類の洗浄に用いられる中性洗剤は、人体に対する刺激は、ほとんど皆無であるが、尿石からの悪臭を抑制することができなかった。
近年、洗浄効果及び消臭効果を改良した洗浄剤組成物が、各種開示されている。
特許文献1には、アニオン性界面活性剤と、両性界面活性剤と、ツバキ科植物から得られる消臭成分とを含有する消臭洗浄剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、酸性悪臭物質に対する消臭手段、及び、アルカリ性悪臭物質に対する消臭手段(有機酸及び/又はその塩)を備え、更に、モノグリセリド、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、サポニン、レシチン等の界面活性剤を含有する消臭洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−137194号公報
【特許文献2】特開2003−105385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、人体への安全性及び洗浄性に優れ、消臭効果及び除菌効果が高く、尿石の堆積を抑制することができるトイレ用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.ノニオン性界面活性剤からなる洗浄成分と、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種からなる除菌成分と、金属イオンからなる消臭成分と、水とを含有し、pHが6〜8の範囲にあることを特徴とするトイレ用洗浄剤組成物。
2.上記金属イオンが、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、銀イオン、マンガンイオン、コバルトイオン及びニッケルイオンから選ばれた少なくとも1種である上記1に記載のトイレ用洗浄剤組成物。
3.上記両性界面活性剤がグリシン型両性界面活性剤である上記1又は2に記載のトイレ用洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物によれば、人体への安全性、及び、トイレ室内の便器や、床面、壁面等の洗浄性に優れ、消臭効果及び除菌効果が高く、尿石の堆積を抑制することができる。洗浄後に、組成物が、小便器の目皿の下側のトラップ水、あるいは、大便器のトラップ水の中に残存することにより、消臭効果及び除菌効果を持続させることができる。また、下水管に滞留する悪臭が便器側に漂流するのを防止することもできる。更に、pHが6〜8の範囲にあることから、便器、床面、壁面等を侵食、劣化させることもない。
上記金属化合物が、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、銀イオン、マンガンイオン、コバルトイオン及びニッケルイオンから選ばれた少なくとも1種である場合には、より高い消臭効果が得られ、尿石の堆積を抑制することができる。
上記両性界面活性剤がグリシン型両性界面活性剤である場合には、微生物の繁殖を抑制することができ、より高い除菌効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、ノニオン性界面活性剤からなる洗浄成分と、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種からなる除菌成分と、金属イオンからなる消臭成分と、水とを含有し、pHが6〜8の範囲にあることを特徴とする。
【0009】
上記洗浄成分は、ノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシアルキレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸ジエステル類、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル類、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレンフェニルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド類、ポリオキシアルキレン脂肪酸ビスフェニルエーテル類、フッ素系界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、高い洗浄効果が得られることから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類及びショ糖脂肪酸エステル類が好ましく、特に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。
【0010】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、下記一般式で表される化合物が好ましい。
R−O−(EO)x1−(PO)−(EO)x2−H
〔式中、Rは、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。x1及びx2は、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数であり、いずれも1以上の数であり、x1及びx2の和は4〜20である。yはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数であり、0<y<(x1+x2)である。〕
【0011】
上記一般式において、Rは、洗浄効果の観点から、好ましくは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数8〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは炭素数8〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0012】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物に含有される洗浄成分の割合は、洗浄効果の観点から、組成物全体に対して、通常、1〜10質量%、好ましくは2〜9質量%、より好ましくは3〜8質量%である。上記洗浄成分の含有割合が少なすぎると、十分な洗浄効果が得られず、一方、10質量%を超えて含有されても、それ以上の洗浄効果は得られず、不経済である。
【0013】
上記除菌成分は、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種からなるものである。
【0014】
上記カチオン性界面活性剤としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジ(POE)オレイルメチルアンモニウム(2EO)クロライド;テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルベンザルコニウム、塩化アルキルジメチルベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ラノリン誘導四級アンモニウム塩、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、塩化ステアロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化トール油アルキルベンジルヒドロキシエチルイミダゾリニウム、ベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及び塩化アルキルベンザルコニウムが好ましい。
【0015】
また、上記両性界面活性剤としては、アルキルアミノエチルグリシン及びその塩酸塩、アルキルジ(アミノエチル)グリシン及びその塩酸塩等のグリシン型両性界面活性剤;N−ラウロイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−オレイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−ココイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−ラウロイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンカリウム、N−オレイル−N’−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンカリウム、N−ラウロイル−N−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−オレイル−N−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−ココイル−N−ヒドロキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム、N−ラウロイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンモノナトリウム、N−オレイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンモノナトリウム、N−ココイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンモノナトリウム、N−ラウロイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンジナトリウム、N−オレイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンジナトリウム、N−ココイル−N−ヒドロキシエチル−N’,N’−ジカルボキシメチルエチレンジアミンジナトリウム等のカルボキシメチルアミン型両性界面活性剤;2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、牛脂脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、硬化牛脂脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パルミチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オレイン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミドベタイン型両性界面活性剤;アルキルベタイン型両性界面活性剤;アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン等のアルキルスルホベタイン型両性界面活性剤;アミドスルホベタイン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン等のヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤;カルボベタイン型両性界面活性剤;アミノカルボン酸型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシホスホベタイン等のホスホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、グリシン型両性界面活性剤が好ましい。
【0016】
上記除菌成分としては、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれか一方であってよいし、両者であってもよい。
本発明のトイレ用洗浄剤組成物に含有される除菌成分の割合は、除菌効果の観点から、組成物全体に対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.2〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。上記除菌成分の含有割合が少なすぎると、十分な除菌効果が得られず、一方、10質量%を超えて含有されても、それ以上の除菌効果は得られず、不経済である。
尚、上記除菌成分として、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が併用されたとき、これらの含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは1〜99質量%及び99〜1質量%、より好ましくは10〜90質量%及び90〜10質量%である。上記割合であれば、十分な除菌効果が得られる。
【0017】
次に、消臭成分について説明する。この消臭成分は、1種又は2種以上の金属イオンであり、好ましくは、重金属イオンである。より好ましいイオンは、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、銀イオン、マンガンイオン、コバルトイオン及びニッケルイオンであり、特に好ましくは銅イオンである。この銅イオンは、上記の他のイオン、例えば、亜鉛イオン、銀イオン等と組み合わせて用いると、消臭対象物質が増加するとともに、その消臭率を向上させることができる。
上記の金属イオンに対するカウンターイオンとして用いられる陰イオンは、特に限定されず、例えば、硫酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン等とすることができる。従って、本発明のトイレ用洗浄剤組成物の製造に際しては、通常、上記金属の硫酸塩、塩化物、酢酸塩、硝酸塩等が用いられる。その金属塩の具体例としては、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酢酸銀等の銀化合物;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物;塩化銅(I)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)等の銅化合物;塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)等の鉄化合物;塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。
【0018】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物に含有される消臭成分の割合は、特に限定されないが、上記態様等の金属塩で換算した場合の含有量として、消臭効果の観点から、組成物全体に対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.04〜8質量%、より好ましくは0.07〜5質量%である。上記消臭成分の含有割合が少なすぎると、十分な消臭効果が得られず、一方、10質量%を超えて含有されても、それ以上の効果は得られず、不経済である。
【0019】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の洗浄剤組成物、脱臭消臭剤組成物等に配合されている添加剤、例えば、pH調整剤、香料、色素、酸化防止剤、防腐剤、粘度調整剤等を含有することができる。
pH調整剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸塩;ホウ酸塩;リン酸塩;炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の第4級アミン;乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸等が挙げられる。尚、pH調整剤の種類によっては、消臭成分である金属イオンと錯体を形成する場合があるが、それによって、本発明の効果を損なうことはない。
香料としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の炭化水素類;9−デセノール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール等の脂肪族アルコール類;l−メントール等の脂環式アルコール類;アニスアルコール、オイゲノール、イソオイゲノール等のフェノール類;シンナミックアルコール等の芳香族アルコール類;1,8−シネオール、1,4−シネオール、アニソール、β−ナフチルエチルエーテル等のエーテル類;オクチルアルデヒド、デシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール等の脂肪族アルデヒド類;2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、イソシクロシトラール、リラール等の脂環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、p−tert−ブチルフェニル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(Lily aldehyde)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、バニリン等の芳香族アルデヒド類;シトラールジメチルアセタール等のアセタール類;メントン、α−イオノン、β−イオノン、シスジャスモン、メチルナフチルケトン等のケトン類;エステル類;カルボン酸類;ラクトン類;合成ムスク類等が挙げられる。
【0020】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、上記の洗浄成分、除菌成分及び消臭成分と、水とを含有するが、洗浄成分、除菌成分、及び、消臭成分を形成することとなる金属塩の合計量の割合は、組成物全体に対して、通常、1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。この範囲の割合であれば、洗浄効果、除菌効果及び消臭効果を安定して発揮することができる。
また、本発明のトイレ用洗浄剤組成物が添加剤を含有する場合には、洗浄成分、除菌成分、消臭成分を形成することとなる金属塩、及び、添加剤の合計量の割合は、組成物全体に対して、通常、1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%である。残部は、水である。
【0021】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物のpHは、6〜8であり、好ましくは6.5〜7.4である。この範囲であれば、安全性に優れるので、清掃時の作業性にも優れる。また、便器、床面、壁面等が、陶器製及び樹脂製のいずれであっても、これらを侵食又は劣化させることもないので、長期に渡って使用することができる。
【0022】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、上記の洗浄成分、除菌成分、消臭成分を形成することとなる金属塩、及び、添加剤を水とともに混合することにより製造することができる。混合方法は、特に限定されず、また、混合装置としては、公知のミキサー等を用いることができる。
【0023】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、トイレ室内の便器、床面、壁面等の汚染部を含む被洗浄部にスプレー等し、ブラシ等を用いて清掃することにより、高い洗浄効果、消臭効果及び除菌効果を得ることができる。特に、消臭成分が、便器、床面、壁面等に吸着することから、消臭効果及び除菌効果は、持続性を有する。また、その吸着は、被洗浄部における尿石の堆積を抑制することができる。尿石は、微生物、腐敗菌等が棲みつきやすく、硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア等の悪臭の元となるので、便器、床面、壁面等に消臭成分が吸着したことで、更なる尿石の堆積、並びに、微生物、腐敗菌等の棲息を抑制することができる。尚、汚染部等の洗浄後、組成物が、小便器の目皿の下側のトラップ水、あるいは、大便器のトラップ水の中に残存し、組成物が、便器の使用後のすすぎ洗い等によって希釈される場合があるが、消臭効果及び除菌効果を持続させることができる。更に、下水管に滞留する悪臭が便器側に漂流するのを防止することもできる。従って、トイレ室内に悪臭が残存したり、漂ったりすることもない。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0025】
実施例1〜8及び比較例1〜2
以下に示す、洗浄成分と、除菌成分と、消臭成分を形成することとなる金属塩と、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩と、水とを、それぞれ、表1に記載の量(単位:部)で用い、トイレ用洗浄剤組成物を調製した。尚、用いた洗浄成分、除菌成分及び消臭成分は以下のとおりである。
洗浄成分
花王社製ポリオキシアルキレンアルキルエーテル「エマルゲンLS−110」(商品名)
除菌成分
・ライオンアクゾ社製塩化アルキルトリメチルアンモニウム「アーカードT−50」(商品名)
・日本油脂社製アルキルジ(アミノエチル)グリシン「ニッサンアノンLG−R」(商品名)
消臭成分を形成することとなる金属塩
以下の成分については、粉末試薬を用いた。
・塩化マンガン
・硫酸鉄
・塩化コバルト
・硝酸ニッケル
・塩化銅
・塩化亜鉛
・硝酸銀
【0026】
得られた各洗浄剤組成物について、除菌性、消臭性及び洗浄性の評価を行った。
[I]除菌試験
花壇の土200グラムを純水200グラム中に投入し、分散させた。放置後、上澄みを、JIS P3801に準ずる定量濾紙5種Aを用いて濾過し、濾液を供試菌とした。この供試菌における生菌数を、Biosan Laboratories社製「サニチェック」を用いて測定したところ、105個/ミリリットルであった。
一方、0.1ミリリットルの標準菌を、コンラージ棒を用いて、清浄なシャーレ(外径6.6センチ)の上面に塗布し、1時間乾燥し、培地を作製した。
次いで、上記培地に、洗浄剤組成物を0.1ミリリットル塗布した。これを、25℃の条件下、5分間放置後、栄研化学社製品を用いて、ぺたんチェックを行い、10cmあたりの生菌数を調べた。
[II]消臭試験
悪臭物質として、硫化水素、アンモニア、メチルメルカプタン、トリメチルアミン及びアセトアルデヒドを用い、別々に、試験を行った。
容積300ミリリットルの三角フラスコに、洗浄剤組成物を1ミリリットル入れ、シリンジを用いて、初期濃度が100ppmになるように各悪臭物質を正確に注入し、密栓した。これを、25℃の条件下、30分間静置し、消臭処理を行った。その後、ガス検知管を用いて、悪臭物質の濃度を測定し、下記式により、消臭率を算出した。
消臭率(%)=〔(初期濃度―処理後の濃度)/(初期濃度)〕×100
[III]洗浄試験
白色磁器タイルの表面に、日本フロアーポリッシュエ業会の規格JFPA204に準ずる標準汚れA(スピンドル油、土砂、カーボンブラック等を含む鉱物油)と、JIS K3362に準ずる標準汚れB(牛脂49%、大豆油49%及びカーボンブラック2%からなる動・植物油)とを、別々に、付着させ、試験を行った。
上記磁器タイルの表面に汚れを均―に塗布し、25℃の条件下、24時間放置した。その後、余分な汚垢を拭き取り、10ミリリットル分の洗浄剤組成物を汚れ付着面全体に塗布した。これを2分間放置後、30ミリリットルの洗浄剤組成物を含浸させた白パッドが配設されたウォッシャビリティテスターを用い、汚れ付着面を25回往復させ、洗浄処理を行った。
汚れを付着させる前における磁器タイルの明度Lと、汚れが付着しているときの磁器タイルの明度Lと、洗浄処理後の磁器タイルの明度Lとを用い、下記式により、洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=(L−L)/(L−L)×100
【0027】
【表1】

【0028】
表1から、以下のことが明らかである。
比較例1は、消臭成分を含有しない組成物を用いた例であり、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンが全く消臭されず、アンモニア及びアセトアルデヒドの消臭率が十分ではなかった。また、比較例2は、除菌成分を含有しない例であり、生菌数が43個と多く、除菌効果が得られなかった。
一方、実施例1〜8は、洗浄効果、除菌効果及び消臭効果に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のトイレ用洗浄剤組成物は、家庭用、公衆用及び仮設用のトイレ室内の便器や、床面、壁面等、更には、浴室内の浴槽、排水トラップ等、台所及び洗面所の排水口(溝)等の洗浄剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性界面活性剤からなる洗浄成分と、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種からなる除菌成分と、金属イオンからなる消臭成分と、水とを含有し、pHが6〜8の範囲にあることを特徴とするトイレ用洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記金属イオンが、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、銀イオン、マンガンイオン、コバルトイオン及びニッケルイオンから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のトイレ用洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記両性界面活性剤がグリシン型両性界面活性剤である請求項1又は2に記載のトイレ用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−185094(P2009−185094A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23216(P2008−23216)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000115083)ユシロ化学工業株式会社 (69)
【Fターム(参考)】