説明

トイレ用芳香洗浄剤

【課題】 使用に際して人の手のみならず器具自体も便器に触れない点で極めて衛生的であり、付着性に優れ、トイレの便器内壁面への適用直後から使用することができ、さらに便器内で長時間ゲル状態を保持できるトイレ用芳香洗浄剤を提供することである。
【解決手段】 便器内壁面に付着させて使用するトイレ用芳香洗浄剤であって、下記の成分(A)〜(F)を含有するゲル状組成物であることを特徴とするトイレ用芳香洗浄剤である。
(A)水 25〜55質量%
(B)グリセリン 5〜30質量%
(C)非イオン性界面活性剤 20〜45質量%
(D)アニオン性界面活性剤 0.5〜5質量%
(E)香料 0.5〜10質量%
(F)油脂 0.5〜5質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの便器内で衛生的に使用でき、便器内壁面に付着して長時間ゲル状態で保持されるトイレ用芳香洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗トイレにおいて、水洗水中に洗浄成分を放出させ、水洗の度に持続的に便器の洗浄を行う芳香洗浄剤として、固形のインタンクタイプ(貯水タンク内に設置)のもの、並びに固形又は液体のオンタンクタイプ(貯水タンク上の手洗い部分に設置)のものがあり、近年では簡便性、香りの多様性の観点からオンタンクタイプの芳香洗浄剤が多く利用されている(特許文献1、2)。
【0003】
しかし、タンク付便器を前提に開発された洗浄剤は、最近普及が進んでいる水道直圧式のタンクレス型トイレ用便器には使用できないという問題点がある。
その解決策として、便器のリムに取り付けて便器内で使用される芳香洗浄剤、便器内壁面に塗布後ゲル化して水洗中に有効成分を持続的に放出する液体洗浄剤、並びにゲルを押し出し便器内壁面に塗布可能な容器を用いたゲル状洗浄剤等が提案されている(特許文献3、4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−173500号公報
【特許文献2】特開2000−273484号公報
【特許文献3】特開2005−9156号公報
【特許文献4】特開2005−187511号公報
【特許文献5】特開2011−57780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載されたリム取付けタイプの洗浄剤は使用後に容器を取り外す際に人の手が便器へ接触するという点で不衛生である。
また、特許文献5に記載された便器内壁面に塗布するゲル押出容器を使用するタイプは、人の手が接触することは回避できるが、使う度に押出容器自体が便器に接触する点で同様に不衛生であった。
さらに、特許文献4に記載された便器内壁面でゲル化させる洗浄剤は、ゲル化するまで最低でも1分間(実施例によれば1時間)要するので、すぐに使用できない、又は、すぐに使用することによりゲル強度が低下し、便器内壁面からすぐに流れ落ちてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、使用に際して人の手のみならず器具自体も便器に直接触れない点で極めて衛生的であり、付着性に優れ、トイレの便器内壁面への適用直後から流水して使用することができ、さらに便器内で長時間ゲル状態を保持できるトイレ用芳香洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の成分を特定量含有するゲル状組成物を射出器具によって便器内壁面に射出し付着させることによって課題であった器具の衛生問題が解決され、さらには、便器内壁面に付着直後から流水して使用可能で、貼り付きの良い状態で長時間ゲルが便器内壁面で保持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、便器内壁面に付着させて使用するトイレ用芳香洗浄剤製品であって、(A)水 25〜55質量%、(B)グリセリン 5〜30質量%、(C)非イオン性界面活性剤 20〜45質量%、(D)アニオン性界面活性剤 0.5〜5質量%、(E)香料 0.5〜10質量%及び(F)油脂 0.5〜5質量%を含有するゲル状組成物であることを特徴とするトイレ用芳香洗浄剤である。
【0009】
また、本発明は、上記トイレ用芳香洗浄剤を、射出器具を用いて便器内壁面に射出して付着させ、流水によってゲル状組成物を持続的に放出させて洗浄することを特徴とする、トイレの洗浄方法であり、これによって射出器具が便器に直接接触することはない。
そして、射出器具は、圧力又は弾性力を利用して洗浄剤を発射する構造である。本発明の一様態は、前記トイレ用芳香洗浄剤と射出器具とからなるトイレ用芳香洗浄剤製品セットである。
圧力を利用して発射する構造の射出器具としては、注射器、コーキングガン、水鉄砲、空気鉄砲、ラッパホーンや液化ガスのガス圧を利用したスプレー缶がある。
また、弾性体の弾性力や復元力によって洗浄剤を発射する構造の射出器具としては、クロスボウ、弓、パチンコ、ばね式鉄砲がある。
【0010】
さらに、本発明は、便器内壁面に付着させて使用するトイレ用芳香洗浄剤製品であって、下記の成分(A)〜(F)を含有するゲル状の芳香洗浄剤と(G)液化ガスとがスプレー缶のような耐圧容器に充填されており、芳香洗浄剤がガス圧で容器のノズルから噴射され便器内壁面に付着する形態のトイレ用芳香洗浄剤製品であり、ゲル状組成物を100質量%としたとき液化ガスを10〜60質量%含有する。
(A)水 25〜55質量%
(B)グリセリン 5〜30質量%
(C)非イオン性界面活性剤 20〜45質量%
(D)アニオン性界面活性剤 0.5〜5質量%
(E)香料 0.5〜10質量%
(F)油脂 0.5〜5質量%
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄剤は器具を離れた後、塊となって空中を飛び便器に到達するので、人の手のみならず、洗浄剤を収容し射出又は噴射する器具自体が便器内壁面に直接触れないために極めて衛生的に使用できる。
また、トイレの便器内壁面への付着直後から流水して使用することができる。従ってトイレ洗浄の衛生面及び簡便性に大きく貢献する。
さらに洗浄剤は、付着性に優れ、便器内壁面にゲル状態を保ったまま付着状態が長時間保持されるので、長時間にわたって洗浄剤を持続的、継続的に放出し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コーキングガンから射出する芳香洗浄剤が充填されたカートリッジ容器の説明図である。
【図2】芳香洗浄剤を射出するコーキングガンの説明図である。
【図3】芳香洗浄剤を射出するクロスボウの斜視図である。
【図4】クロスボウから射出する矢の説明図である。
【図5】水鉄砲と筒状カートリッジの説明図である。
【図6】筒状カートリッジを装着した水鉄砲の説明図である。
【図7】ラッパホーンと筒状カートリッジの説明図である。
【図8】筒状カートリッジを装着したラッパホーンの説明図である。
【図9】スプレー缶タイプの芳香洗浄剤製品の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)芳香洗浄剤
本発明の芳香洗浄剤は、下記の成分(A)〜(F)を含有するゲル状組成物である。
【0014】
(A)水
本発明で用いる水はイオン交換水、蒸留水、水道水を使用することが出来るが、ゲルの保持性の点からイオン交換水が良い。
水の量は、ゲルを収容する装置からの射出性や便器内壁面でのゲル保持性の点からゲル状組成物全体の25〜55質量%が望ましい。
【0015】
(B)グリセリン
本発明では水と同様にゲルの保持性に寄与する溶剤としてグリセリンを用いる。ゲル状組成物全体の5〜30質量%の範囲で用いるが、ゲルを収容する器具からの射出性や、便器内壁面でのゲル保持性の点から、より好ましくは15〜25質量%である。
【0016】
(C)非イオン性界面活性剤
本発明で用いられる非イオン性界面活性剤は、便器内壁面でのゲル保持性、洗浄性の点からゲル状組成物全体の20〜45質量%の範囲で使用することが望ましい。
具体的には、ゲル化能を有するものとして、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられるが、中でも、ゲルの透明性、耐熱性の点からポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用することが望ましい。
【0017】
その他、洗浄性を付与する目的として、脂肪族アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル、アルキルメチルグルカミド等があり、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いる。
【0018】
(D)アニオン(陰イオン)性界面活性剤
本発明では気泡性、洗浄性を付与する成分としてアニオン性界面活性剤を用いる。便器内壁面でのゲル保持性、洗浄性の点から、ゲル状組成物全体の0.5〜5質量%の範囲で使用することが望ましい。
具体的には、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸のカリウム、ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン等の塩、エーテルカルボン酸のアルキル塩、N−アシルアミンの塩、N−アシルサルコン塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル塩やアルキルエーテルサルフェート塩が挙げられ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、価格や汎用性の観点からラウレス硫酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
(E)香料
芳香性を付与する香料としては、特に限定されず、合成香料、天然香料、あるいは調合香料を使用することができる。
例えば、ラベンダー油、ジャスミン油、レモン油、等の天然香料、ゲラニオール、シトロネロール、フェネチルアルコール等の合成香料があげられる。
香料は、芳香性、ゲル保持性の点から、ゲル状組成物全体の0.5〜10質量%用いることが望ましい。
【0020】
(F)油脂
本発明では、便器内壁面でのゲル保持性を上げる目的で各種油脂を使用する。
各種油脂としては、例えば、アボガド油、アルモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、ホホバ油、モクロウ、ヤシ油、豚脂、硬化油及び硬化ヒマシ油等を使用することができるが、価格、汎用性の観点からホホバ油を使用することが好ましい。
油脂は、便器内壁面でのゲル保持性の観点から、ゲル状組成物全体の0.5〜5質量%用いることが望ましい。
【0021】
(G)液化ガス
本発明において、スプレーあるいはエアゾールタイプの射出構造とし、缶などの耐圧容器から芳香洗浄剤を噴射させるために液化ガスを使用する。
液化ガスはジメチルエーテル、LPG、窒素、炭酸ガスなどを使用することができるが、コストの点からジメチルエーテルが良い、その範囲は射出性やゲル保持性の点からゲル状組成物を100質量%としたとき10〜60質量%用いることが望ましい。
【0022】
(H)その他の成分
本発明において使用する上記の必須構成成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、通常の芳香洗浄剤に用いられる基材、添加剤を併用することができる。
例えば、アルキルカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドアミン型ベタイン、アルキルイミダゾリン型ベタイン等の両性界面活性剤、次亜塩素酸塩や亜塩素酸塩等の漂白剤、殺菌剤、植物抽出物、有機化合物、無機化合物等の消臭成分、水、アルコール以外の溶剤、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、無機塩、有機酸等の塩、着色料、防腐剤などを添加することができる。
【0023】
射出性、外観、ゲル保持性、耐水流性及び耐熱性に優れたゲルを得るためには、上記(A)〜(D)成分に関して、水25〜55質量%(特に30〜45質量%)、グリセリン5〜30質量%(特に15〜25質量%)、非イオン性界面活性剤20〜45質量%(特にポリオキシエチレンセチルエーテル20〜35質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜15質量%)、アニオン性界面活性剤0.5〜5重量%(特にラウレス硫酸ナトリウム1.0〜5質量%)、の組み合わせが好ましい。
【0024】
(2)ゲル状組成物の製造方法
本発明で使用するゲル状組成物は、上記各成分を配合し、均一化して、常法に従って製造することができる。
本発明の効果を損なわない範囲において、固形物を溶媒に溶解させて混合する方法、固形物を加温融解させた状態で混合する方法、全成分を混合後、加温し均一化させる方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0025】
(3)射出器具
上記のゲル状の芳香洗浄剤を便器内壁面に付着させるための器具であって、人の手のみならず器具自体が便器に直接触れることがないものとしては、芳香洗浄剤を勢いよく押し出して射出できる器具が好ましい。
射出器具は、圧力又は弾性力を利用する構造、すなわち射出器具内に気体や液体を溜め、それにピストン等で圧力を加え気体や液体の圧力や反発力によって洗浄剤を発射する構造であるか、あるいは射出器具に備えた弾性体の反発力・復元力によって洗浄剤を発射する構造であり、5〜10cmの距離から芳香洗浄剤を勢いよく便器内壁を狙って発射し命中できる形態であれば、その構造、形状や材質に限定はない。
【0026】
圧力を利用して発射する構造の射出器具としては、例えば、注射器、コーキングガン、水鉄砲、空気鉄砲、ラッパホーンあるいは液化ガスのガス圧を利用したスプレー缶がある。
また、弾性体の弾性力や復元力によって洗浄剤を発射する構造の射出器具としては、例えば、クロスボウ(石弓又はボウガンともいう)、弓幹と弦からなる通常の弓、パチンコ(二股の支軸にゴム紐を張り小石などをはさんで飛ばす玩具)、ばね式鉄砲(コイルばねの復元力で弾を発射する玩具)がある。
構造の単純化、取扱いの簡便性、低コスト化を考慮すると、市場で容易に且つ廉価で入手できる既製品、例えば玩具、実験用器具や日用品をそのまま又は最小限の加工を施して本射出器具に転用する方が有利である。
【0027】
(ア)注射器タイプの射出器具
ここで使用する注射器は、医療用や研究実験用に使用されている中容量シリンジなどを使用することができる。
容量としては5ml〜200ml程度が適当であり、例えば、テルモ社製の「テルモシリンジ(登録商標)」などを使用できる。
なお、注射器タイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水35〜45質量%、グリセリン15〜20質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル20〜30質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜10質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1〜5質量%を含むものである。
【0028】
(イ)コーキングガンタイプの射出器具
コーキングガンは、建築現場を中心に使用され、隙間をシーリング材で充填するための押出し器具である。
図1は、コーキングガンタイプの射出器具から射出する芳香洗浄剤が充填されたカートリッジ容器11を示す図である。ゲル状の芳香洗浄剤を射出させる際に、コーキングガン本体12(図2参照)から直接ゲル状組成物に圧力を加えるため、カートリッジ容器11は加圧部材11aを有する。
【0029】
図2はコーキングガン本体12を示し、カートリッジ容器11を挿入する円筒体部分13と、図1の加圧部材11aを介してゲル状組成物を射出させるためのピストン部14と、押出機構部15とからなる。
このコーキングガン本体12の円筒体部分13にカートリッジ容器11をセットし、15aと15bのレバーを引くことによりピストン部14が稼動し、カートリッジ容器内の加圧部材11aが移動して内容物のゲル状芳香洗浄剤を射出するという機構である。
以上の機構を有する製品として、例えば、株式会社山本製作所製の「YCG−2300HC」、「SCG−500H」、「YCG−340N」をコーキングガン本体として使用することができる。
なお、コーキングガンタイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水35〜45質量%、グリセリン15〜20質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル20〜30質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜10質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1〜5質量%を含むものである。
【0030】
(ウ)クロスボウタイプの射出器具
図3はクロスボウを示す。クロスボウ本体は、ゲル状芳香洗浄剤を射出させるための弦を有する弓部、矢溝、引き金、柱身から構成される。
図4はクロスボウに使用する矢であり、その先端に芳香洗浄剤をセットする充填部を有する。
なお、クロスボウタイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水35〜45質量%、グリセリン15〜20質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル25〜30質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜10質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1.5〜5質量%を含むものである。
【0031】
(エ)水鉄砲又は空気鉄砲タイプの射出器具
水鉄砲では水の代わりに空気を用いることが好ましい。
図5は、ゲル状芳香洗浄剤を充填する筒状カートリッジ51と水鉄砲タイプの発射器具を示す図である。
さらに図6は、図5の筒状カートリッジ51を水鉄砲本体と繋ぐ連結部52に装着した状態を示す。
図5に示すように、充填した洗浄剤を押し出すための空気溜め部53と、空気の流通路である通気構54と空気を貯めるため、及び、ゲル状芳香洗浄剤を射出するためのピストン部55を有することで、充填したゲルが射出するという構造である。
なお、水鉄砲又は空気鉄砲タイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水30〜40質量%、グリセリン15〜25質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル25〜35質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜15質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1.5〜5質量%を含むものである。
【0032】
(オ)ラッパホーンタイプの射出器具
ラッパホーンは主に自転車用の警笛として使用するために市販されており、本発明の射出器具に転用可能である。
図7はラッパホーンタイプの射出器具を示す。
さらに図8は、図7のゲル状芳香洗浄剤を充填する筒状カートリッジ71を、ラッパホーン先端の空気噴出孔72に装着したものである。
充填した洗浄剤を押し出すための空気溜め部73と、空気を押し出すためのゴム球74を有する構造であり、中空のゴム球を握ることで、ホーンに装着した洗浄剤が空気圧で発射されるという構造である。
なお、ラッパホーンタイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水35〜45質量%、グリセリン15〜20質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル25〜35質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜10質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1.5〜5質量%を含むものである。
【0033】
(カ)ゲル状芳香洗浄剤の器具への充填方法
本発明は、上記器具へ予め調製した上記ゲル状組成物を充填したものである。この充填方法としては、本発明の効果を損なわない範囲において、各種器具にゲル状組成物を加温融解させた後流し込む方法、ゲルの状態のまま詰め込む方法、コーキングガンのようにカートリッジにゲルを充填させたものを、装置に設置する方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0034】
(キ)液化ガス使用のトイレ用芳香洗浄剤製品(スプレー缶タイプ)
気化した液化ガスの圧力によって、内容物であるゲル状組成物を容器の外に勢いよく放出させる製品である。ユーザーはボタンを押す操作だけで放出量を調節でき、衛生的で取扱いの簡便さに優れる。
このスプレー又はエアゾール缶タイプの製品は、図9に示すように主としてボタン91、ノズル92、シール93、ディップチューブ94、耐圧容器95からなる。ボタン91を押してシール93を開くと、容器内で圧力をかけられているゲルと液化ガス96(噴射
剤)の混合内容物が、ディップチューブ94を通ってノズル92から一気に噴射される。噴射された内容物は、減圧による液化ガスの急激な膨張によって細かい粒子になる、という仕組みである。
なお、スプレー缶タイプの射出器具に最適のゲル状組成物は、水20〜25質量%、グリセリン10〜15質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル15〜25質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜10質量%、ラウレス硫酸ナトリウム1〜5質量%、ジメチルエーテル(DME)30〜40質量%を含むものである。
【実施例】
【0035】
次に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1〜2、比較例1〜2>
〔注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品〕
下記表1に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物を注射器(テルモ社製「テルモシリンジ(登録商標)10mL」)に充填した。この注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品について、以下の評価方法により、射出性、外観、垂直壁面での保持性、水流耐性、耐熱性を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0037】
(A)射出性の評価
下記表1に従い注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し内容物を射出させ、下記評価基準によりその射出性を評価した。評価は10名で行った。
評価基準:
◎:90%以上の評価者が過度の力を加えることなく容易に射出することができた。
○:60%以上の評価者が過度の力を加えることなく容易に射出することができた。
△:30%以上の評価者が過度の力を加えることなく容易に射出することができた。
×:過度の力を加えることなく容易に射出させることができた評価者が30%以下であった。
【0038】
(B)外観の評価
下記表1に従い注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し内容物をガラス板に射出し、下記評価基準によりガラス板に貼り付いたゲルの外観を評価した。
評価基準:
◎:透明且つ流動性がない。
○:半透明で流動性がない。
△:不透明もしくは流動性がある。
×:液状である。
【0039】
(C)垂直壁面での保持性の評価
下記表1に従い注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、床に対して垂直に置いた20cm×20cmのガラス板(表面の平滑さは便器用陶器と同等)に向かって10cmの距離から内容物を射出させ、貼りついたゲルの保持性を、下記評価基準により評価した。
評価基準:
◎:2日以上ゲルが落下せずに残っていた。
○:1日〜2日、ゲルが落下せずに残っていた。
△:半日〜1日、ゲルが落下せずに残っていた。
×:半日以下でゲルが落下してしまった。
【0040】
(D)水流耐性の評価
下記表1に従い注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、トイレの便器(株式会社LIXIL社製の抗菌タイル「KILAMIC(キラミック)」(登録商標)を使用した洋式便器C-5U)の外から便器内壁面に向かって、10cm3分の内容物を射出させて貼りついたゲルの水流に対する耐性を、下記評価基準により評価した。
評価基準:
◎:100回以上水を流してもゲルが残っていた。
○:30〜100回は水を流してもゲルが残っていた。
△:1〜30回は水を流してもゲルが残っていた。
×:1回でゲルが全て流れてしまった。
【0041】
(E)耐熱性の評価
下記表1に従い調製したゲル状組成物を密閉可能なガラス容器に入れ、40、50、60、70℃の恒温槽に1日入れ、ゲルが融解する温度を確認し、その温度を表1に記載した。すでにゲルに流動性がある場合は無記入とした。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から、注射器から射出させた特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面部で保持するものであることを確認できた。また、特定配合比で作成したゲル自身の保存安定性も高いことがわかった。この方法によれば手を汚すことなくゲルを設置することができた。
【0044】
<実施例3〜4、比較例3〜4>
〔コーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤製品〕
下記表2に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物をコーキングガンの空のカートリッジに充填し、コーキングガン本体に装着した。
このコーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤について、以下の評価方法により、射出性、外観、垂直壁面での保持性、水流耐性、耐熱性を評価した。これらの結果を下記表2に示す。
【0045】
(A)射出性の評価
下記表2に従いコーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、レバーを1回引いて内容物を射出させ、下記評価基準によりその射出性を評価した。評価は10名で行った。評価基準は注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤と同じ基準とした。
【0046】
(B)外観の評価
下記表2に従いコーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、レバーを1回引いて内容物を射出させ、下記評価基準により貼りついたゲルの外観を評価した。
評価基準は注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤と同じ基準とした。
【0047】
(C)垂直壁面での保持性の評価
下記表2に従いコーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、20cm×20cmのガラス板に向かって10cmの距離からレバーを引いて内容物を射出させ、貼りついたゲルの保持性を、下記評価基準により評価した。
評価基準は注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤と同じ基準とした。
【0048】
(D)水流耐性の評価
下記表2に従いコーキングガンタイプのトイレ用芳香洗浄剤を調製し、トイレの便器の外から便器内壁面に向かって、レバーを最大引ける範囲まで1回引いて内容物を射出させて貼りついたゲルの水流に対する耐性を、下記評価基準により評価した。この時射出されるゲルの重量は10gであった。
評価基準は注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤と同じ基準とした。
【0049】
(E)耐熱性の評価
耐熱性の評価は注射器タイプトイレ用芳香洗浄剤と同じ方法とした。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果から、コーキングガンから射出させた特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面部で保持するものであることを確認できた。また、特定配合比で作成したゲル自身の保存安定性も高いことがわかった。この方法によれば手を汚すことなくゲルを設置することができた。
【0052】
<実施例5〜6、比較例5〜6>
〔クロスボウタイプのトイレ用芳香洗浄剤製品〕
下記表3に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物10gをクロスボウの矢の先端に充填した。
このボーガンタイプトイレ用芳香洗浄剤について、1回分のゲルを射出させた後、外観、垂直壁面での保持性、水流への耐性、及びゲルの耐熱性を注射器タイプトイレ用芳香洗浄剤の評価で設定した基準に従って評価した。
射出性については、本器具はピストンではなく弦の反発力を利用したものであり一定性があるため評価は行わなかった。これらの結果を下記表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
表3の結果から、クロスボウから射出させた特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面で保持するものであることを確認できた。また、特定配合比で作成したゲル自身の保存安定性も高いことがわかった。この方法によれば手を汚すことなくゲルを設置することができた。
【0055】
<実施例7〜9、比較例7〜8>
〔水鉄砲タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品〕
下記表4に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物10gを水鉄砲用カートリッジの先端に充填した。この水鉄砲タイプのトイレ用芳香洗浄剤について、以下評価方法により射出性について評価した。
また、1回分のゲルを射出させた後の外観、垂直壁面での保持性、水流への耐性及びゲルの耐熱性については、注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品の評価で設定した基準に従って評価した。これらの結果を下記表4に示す。
【0056】
(A)射出性の評価
下記表4に従い水鉄砲タイプトイレ用芳香洗浄剤を調製し1回分のゲルを射出させ、下記評価基準によりその射出性を評価した。
評価基準:
◎:カートリッジ容器に残ったゲルがゲル全体の5%以下であった。
○:カートリッジ容器に残ったゲルがゲル全体の10%以下であった。
△:カートリッジ容器に残ったゲルがゲル全体の20%以下であった。
×:カートリッジ容器に残ったゲルがゲル全体の20%以上であった。
【0057】
【表4】

【0058】
表4の結果から、水鉄砲から射出させた特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面で保持するものであることを確認できた。また、特定配合比で作成したゲル自身の保存安定性も高いことがわかった。この方法によれば手を汚すことなくゲルを設置することができた。
【0059】
<実施例10〜11、比較例9〜10>
〔ラッパホーンタイプのトイレ用芳香洗浄剤〕
下記表5に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物10gをラッパホーン用カートリッジの先端に充填した。このラッパホーンタイプトイレ用芳香洗浄剤について、射出性、外観、垂直壁面での保持性、水流への耐性、耐熱性を水鉄砲タイプのトイレ用芳香洗浄剤の評価で設定した基準に従って評価した。これらの結果を下記表5に示す。
【0060】
【表5】

【0061】
表5の結果から、ラッパホーンから射出させた特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面で保持するものであることを確認できた。また、特定配合比で作成したゲル自身の保存安定性も高いことがわかった。この方法によれば手を汚すことなくゲルを設置することができた。
【0062】
<実施例12〜13、比較例11>
〔スプレー缶タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品〕
下記表6に示す組成のゲル状組成物を調製し、得られた各ゲル状組成物と液化ガス(ジメチルエーテル(DME))混合物をスプレー用の缶に充填した(ノズル孔の直径は約0.3〜0.6mm)。このスプレー缶タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品について、以下評価方法により水流への耐性を評価した。
外観、垂直壁面での保持性については、1回分の製剤を射出させ、注射器タイプのトイレ用芳香洗浄剤の評価で設定した基準に従って評価した。これらの結果を下記表6に示す。
【0063】
(A)水流耐性の評価
下記表6に従いスプレー缶タイプのトイレ用芳香洗浄剤製品を調製し、トイレの便器の外から便器内壁面に向かって、5秒間内容物を射出させて貼りついたゲル約1.5gの水流に対する耐性を、下記評価基準により評価した。
評価基準:
◎:10以上水を流してもゲルが残っていた。
○:5〜10回は水を流してもゲルが残っていた。
△:1〜5回は水を流してもゲルが残っていた。
×:1回でゲルが全て流れてしまった。
【0064】
【表6】

【0065】
表6の結果から、ガスと共にスプレー缶に充填した特定配合比で作成したゲルは水流への耐性が優れており、長時間に渡って垂直壁面で保持するものであることを確認できた。この方法によれば手を汚すことなくゲルを便器に付着させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のトイレ用芳香洗浄剤は、トイレの便器に衛生的に使用することができ、トイレの便器内壁面への付着直後から流水して使用でき、便器内壁面で長時間保持することができるので、貯水タンク型便器やタンクレス型便器を問わず広く適用可能なので、水洗水中に洗浄剤成分を放出させて持続的に便器内の洗浄を行うタイプのトイレ芳香洗浄剤の使用領域を拡大することに貢献する。
【符号の説明】
【0067】
11 カートリッジ容器
11a 加圧部材
12 コーキングガン本体
13 円筒体部分
14 ピストン部
15 押出機構部
15a レバー
15b レバー
51 筒状カートリッジ
52 連結部
53 空気溜め部
54 通気構
55 ピストン
71 筒状カートリッジ
72 空気噴出孔
73 空気溜め部
74 ゴム球
91 ボタン
92 ノズル
93 シール
94 ディップチューブ
95 耐圧容器
96 ゲルと液化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内壁面に付着させて使用するトイレ用芳香洗浄剤であって、下記の成分(A)〜(F)を含有するゲル状組成物であることを特徴とするトイレ用芳香洗浄剤。
(A)水 25〜55質量%
(B)グリセリン 5〜30質量%
(C)非イオン性界面活性剤 20〜45質量%
(D)アニオン性界面活性剤 0.5〜5質量%
(E)香料 0.5〜10質量%
(F)油脂 0.5〜5質量%
【請求項2】
請求項1に記載のトイレ用芳香洗浄剤を、便器内壁面に射出して付着させ、流水によってゲル状組成物を持続的に放出させて洗浄することを特徴とする、トイレの洗浄方法。
【請求項3】
トイレ用芳香洗浄剤の射出が、圧力を利用する構造の射出器具を用いて行われる請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
圧力を利用する構造の射出器具が、注射器、コーキングガン、水鉄砲、空気鉄砲、ラッパホーンから選ばれる器具である請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
トイレ用芳香洗浄剤の射出が、弾性力を利用する構造の射出器具を用いて行われる請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項6】
弾性力を利用する構造の射出器具が、クロスボウ、弓、パチンコ、ばね式鉄砲から選ばれる器具である請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかの項に記載の洗浄方法に使用されるトイレ用芳香洗浄剤とそれを射出するための射出器具とからなるトイレ用芳香洗浄剤製品セット。
【請求項8】
トイレ用芳香洗浄剤の射出が、液化ガスのガス圧を利用する構造の射出器具を用いて行われる請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項9】
射出器具がスプレー缶であることを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法。
【請求項10】
便器内壁面に付着させて使用するトイレ用芳香洗浄剤製品であって、下記の成分(A)〜(F)を含有するゲル状組成物と(G)液化ガスとが耐圧容器に充填されており、芳香洗浄剤がガス圧で容器から噴射され便器内壁面に付着する構造を有するトイレ用芳香洗浄剤製品。
(A)水 25〜55質量%
(B)グリセリン 5〜30質量%
(C)非イオン性界面活性剤 20〜45質量%
(D)アニオン性界面活性剤 0.5〜5質量%
(E)香料 0.5〜10質量%
(F)油脂 0.5〜5質量%
【請求項11】
ゲル状組成物を100質量%としたとき液化ガスを10〜60質量%含有する請求項10に記載のトイレ用芳香洗浄剤製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−57029(P2013−57029A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197142(P2011−197142)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】