説明

トイレ装置及び便器システム

【課題】簡素な構造で節水性に優れたトイレ装置及び便器システムを提供する。
【解決手段】水を貯留し、前記水を便器に給水する給水口を有するタンクと、前記タンクから前記便器に給水される水の給水量を調節する給水量調節部と、前記給水量調節部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器を洗浄する第1の給水動作と、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器に封水を充填する第2の給水動作と、を前記給水調節部に行わせ、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作を制御することを特徴とするトイレ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置及び便器システムに関し、より詳細には、水洗便器に流す洗浄水を貯留するタンクを備えたトイレ装置及び便器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
便器に洗浄水を流した後に、便器にトイレ空間と下水空間とを遮断する封水を供給するタンク式便器がある。この洗浄水の量は、例えば大洗浄用及び小洗浄用などのために複数の値をとることがあり、これにより節水を図っている。また、封水については、これまで、タンクへの給水流路を分岐してオーバーフロー管を設け、このオーバーフロー管から補給水(封水)を供給する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、かかる構成のタンク装置では、洗浄水の量の多少に関係なく封水形成用に必要な水量が同等であるにもかかわらず、洗浄水の量が異なると封水形成用に補給される水の量が異なることがある。この結果、封水形成用に不要な水が供給され、無駄水が生じることがある。
【0004】
この課題に対して、タンクに水を供給する第一吐水口からの吐出量とタンク内のオーバーフロー管に水を供給する第二吐水口からの吐出量との配分を、大洗浄と小洗浄とで異なる配分とし、これにより大洗浄、小洗浄のいずれの場合にも、便器内の溜水(封水)を元の水量まで回復させる技術が提案されている(特許文献2)。これにより、水の無駄を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−283355号公報
【特許文献2】特開2001−279761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡素な構造で節水性に優れたトイレ装置及び便器システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、水を貯留し、前記水を便器に給水する給水口を有するタンクと、前記タンクから前記便器に給水される水の給水量を調節する給水量調節部と、前記給水量調節部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器を洗浄する第1の給水動作と、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器に封水を充填する第2の給水動作と、を前記給水量調節部に行わせ、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作を制御することを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構造で節水性に優れたトイレ装置及び便器システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るトイレ装置を例示する模式斜視断面図である。
【図2】本実施形態の制御を例示するブロック図である。
【図3】本実施形態に係るトイレ装置1と、タンク2から給水された水により洗浄される便器100と、を備えた便器システムを例示する模式斜視図である。
【図4】駆動部Dの動作を例示する模式側面図である。
【図5】本実施形態に係るトイレ装置1と対比される比較例に係るトイレ装置を表した模式断面図である。
【図6】制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。
【図7】制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。
【図8】本実施形態の他の構成に係るトイレ装置1Bを例示する模式断面図である。
【図9】トイレ装置1Bを用いた場合の制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。
【図10】本実施形態のさらに別の構成に係るトイレ装置1Cを例示する模式断面図である。
【図11】トイレ装置1Cと、便器100と、を備えた便器システムを例示する模式図である。
【図12】給水口3の構成を例示する模式平面図である。
【図13】トイレ装置1Cを用いた場合の制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。
【図14】トイレ装置1Cを用いた場合の制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。
【図15】本実施形態のさらに別の構成に係るトイレ装置1Dを例示する模式斜視断面図である。
【図16】トイレ装置1Dの給水口3及び給水量調節部4を例示する、図15のZY平面での模式断面図である。
【図17】回転体5、紐状体6a、6b、及び弁41a、41bの動作を例示する模式断面図である。
【図18】リフィル時の空気押し出しによる音の発生を抑制する制御態様について説明するための模式断面図である。
【図19】リフィル量を制御する他の方法を例示する模式断面図である。
【図20】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図21】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図22】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図23】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図24】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図25】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図26】リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。
【図27】回転体5を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、水を貯留し、前記水を便器に給水する給水口を有するタンクと、前記タンクから前記便器に給水される水の給水量を調節する給水量調節部と、前記給水量調節部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器を洗浄する第1の給水動作と、前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器に封水を充填する第2の給水動作と、を前記給水量調節部に行わせ、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作を制御することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、簡素な構造で節水性に優れたトイレ装置が提供される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作における給水時間を制御することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、簡単な制御で封水形成に係る給水量の調節ができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記給水量調節部は、前記給水口を開閉する弁を有し、前記制御部は、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作における前記弁の開度を制御することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、洗浄モードに関係なく速やかに封水を充填することができる。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記給水量調節部は、前記給水口の開口面積を調節する機構を有し、前記制御部は、前記第1の給水動作における給水量に応じて前記第2の給水動作における前記開口面積を制御することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、簡素な構造で洗浄モードに関係なく速やかに封水を充填することができる。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記給水量調節部は、前記給水口の少なくとも一部を開閉する第1の弁と、前記給水口の少なくとも一部を開閉する第2の弁と、を有し、前記制御部は、前記第1の弁を開いて前記第1の給水動作を行わせ、その後前記第2の弁を開いて前記第2の給水動作を行わせることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、例えば洗浄専用の弁と封水形成専用の弁とを設けるなどにより、精度よく効果的に洗浄及び封水形成の二種類の給水動作を行うことができる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、前記第2の弁は、前記第1の弁の上に設けられ、前記第1及び第2の弁が閉じた状態から前記第1の弁を開くと、前記第2の弁が押動して、前記給水口に相対的に大きい第1の開口が形成され、前記第1及び第2の弁が閉じた状態から前記第2の弁を開くと、前記第1の弁は閉じたまま前記第2の弁のみが開き、前記給水口には相対的に小さい第2の開口が形成されることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、タンクのサイズが小さい場合にも2つの弁を設けることができ、精度よく効果的に洗浄及び封水形成の二種類の給水動作を行うことができる。
【0016】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記便器は、リム孔と、ジェット孔と、前記給水口と前記リム孔と前記ジェット孔とに連通する給水流路と、を有し、前記制御部は、前記第2の給水動作において前記給水流路に存在する空気が前記ジェット孔から排出されないように給水させることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、封水形成時に便器のジェット孔から空気が押し出されることによる音の発生を抑制することができる。
【0017】
第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記第2の給水動作における流量は、前記第1の給水動作における流量よりも小さいことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、瞬間流量を小さくでき、これによりリフィル時(封水形成時)の給水量のばらつきを小さくすることができる。
【0018】
第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記第2の給水動作における給水時間は、前記第1の給水動作における給水時間よりも長いことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、瞬間流量を小さくして長い時間をかけて封水を充填することができ、これによりリフィル時(封水形成時)の給水量のばらつきを小さくすることができる。
【0019】
第10の発明は、第1〜第9のいずれか1つのトイレ装置と、前記便器と、を備えたことを特徴とする便器システムである。
この便器システムによれば、簡素な構造で節水性に優れた便器システムが提供される。
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るトイレ装置を例示する模式斜視断面図である。
図2は、本実施形態の制御を例示するブロック図である。
図3は、本実施形態に係るトイレ装置1と、タンク2から給水された水により洗浄される便器100と、を備えた便器システムを例示する模式斜視図である。
図4は、駆動部Dの動作を例示する模式側面図である。
【0021】
図1〜図3に表したように、本実施形態に係るトイレ装置1は、水を貯留し、この水を便器100に給水する給水口3を有するタンク2と、タンク2から便器100に給水される水の給水量を調節する給水量調節部4と、給水量調節部4の動作を制御する制御部Cと、を備える。また、トイレ装置1は、情報取得部Aと、モータなどの駆動部Dと、回転体5と、紐状体6と、を備える。制御部Cは、必要に応じ情報取得部Aが取得した情報を基に、駆動部D、回転体5、及び紐状体6を介して給水量調節部4の動作を制御する。トイレ装置1は、例えばサイホンジェット式水洗便器など、洗浄後に封水を充填させる任意の便器に適用することができる。
【0022】
制御部Cは、タンク2から便器100に水を給水して便器100を洗浄する第1の給水動作と、タンク2から便器100に水を給水して便器100に封水を充填する第2の給水動作と、を給水量調節部4に行わせる。便器100にサイホンジェット式水洗便器を用いた場合には、第1の給水動作においてサイホンを生じさせることができる。また、制御部Cは、第1の給水動作を行わせた後、即座に第2の給水動作を行わせることができる。これにより、封水が存在しない時間が短くなり、下水空間から便器100に異臭や害虫が進入してくる可能性を低減することができる。
【0023】
本実施形態によれば、制御部Cの制御により、弁41の開度や開放時間をきめ細かく調節することができる。例えば、第1の給水動作(洗浄時)において、弁41が開状態となる時間は2つ以上の時間、例えば3つの時間から選択される構成にすることができる。これにより、便器に供給される水の量を多段階、例えば大小、大中小(比率としては、例えば6:5:4)など、に設定することができる。また、制御部Cの制御により、流量のばらつきが抑制される。このように使用目的に応じてきめ細かく洗浄水の量を設定することにより、必要最小限の水量でタンク2から便器100に洗浄水を供給することができ、節水性の向上が図られる。特に、小洗浄を行う回数は多いと考えられるところ、この水量を小さくすることにより、節水効果は効果的に高まる。また、流量のばらつきを抑制することができ、節水性を確実に向上することができる。
【0024】
そして、制御部Cは、第1の給水動作に応じて第2の給水動作を制御する。例えば、制御部Cは、情報取得部Aから第1の給水動作における給水量の情報を得て、この給水量に応じて第2の給水動作を制御する。具体的には例えば、第1の給水動作において大洗浄が行われた場合と、小洗浄が行われた場合とで、第2の給水動作において略同等の量の水が給水されるように制御することができる。これにより、後に図5に関して詳細に説明するように無駄水の発生を抑制することができ、簡素な構造で節水性に優れたトイレ装置が提供される。
【0025】
次に、各構成要素について詳細に説明する。
タンク2は、図3に表したようにロータンクとすることができる。あるいは、ハイタンクや、便器に洗浄水を流すことのできる他の任意のタンクとしてもよい。
【0026】
給水量調節部4は、図1などに表したように給水口3を開閉する弁41を有することができる。図4に表したように、弁41は蝶番41sを有し、蝶番41sを回転軸として回動することにより給水口3の開閉を行う。あるいは、図示しないが、弁41は上下方向に移動することにより給水口3を開閉する構成にしてもよい。
【0027】
弁41は、次に説明するように、回転体5が回転することにより開閉する。
図4に表したように、回転体5は回転軸5sの回りに回転し、回転軸5s以外の部分に設けられた接続部51を有する。図4では、接続部51は回転軸5sから突出する突出部5pに設けてあるが、突出部5pを設けずに回転体5の軸体に直接設けてもよい。接続部51は、玉鎖、ワイヤーなどの紐状体6を介して弁41に接続している。
【0028】
そして、弁41は、制御部Cにより制御される駆動部Dの動作により開閉する。駆動部Dは、例えばモータ、具体的には、ブラシ付きやブラシレスの直流モータとすることができる。
【0029】
まず、図4(a)の矢印Tで示したように、弁41が閉じた状態において駆動部Dは右回りの方向にトルクを出力し、矢印Rで示したように駆動部Dを右回りに回転させる。すると、回転体5も連動して右回りに回転し、接続部51は上方に移動する。この結果、紐状体6は緊張状態になり、弁41は矢印Vで示したように上方に引き上げられる。これにより、弁41は「開」状態となる。
【0030】
次に、図4(b)の矢印Tで示したように、必要に応じ、駆動部Dは一定時間右回りの方向にトルクを出力し続ける。このときのトルクは、図4(a)で示した弁41の引き上げ時のトルクよりも小さく、接続部51を同じ位置に維持するだけの値とすることができる。これにより、接続部51を一定時間所定の位置に固定し、弁41の開状態を一定時間維持することができる。
【0031】
次に、弁41の閉止動作について説明する。
弁41を閉止させるには、例えば図4(a)や(b)に表した状態において駆動部Dへの電流の供給を停止して駆動部Dがトルクを出力しないようにすることができる。これにより、弁41を上方に引き上げる力がなくなり、弁41は自重により下方へ移動する。この結果、「閉」状態が実現する。なお、実際にはモータなどの駆動部Dのコギングトルクにより弁41は自由落下しないことがあり得るが、この場合も最終的には弁41は給水口3を閉止するまで下方に移動し、閉状態が実現する。
【0032】
あるいは、図4(c)の矢印Tで示したように駆動部Dが図4(a)及び(b)の場合よりも小さい右回りのトルクを出力することができる。これにより、図4(c)の矢印Rで示したように駆動部Dは左回りに回転する。すると、回転体5も連動して左回りに回転し、接続部51は下方に移動する。この結果、弁41は矢印Vで示したように下方に移動する。これにより、弁41は「閉」状態となる。このように駆動部Dにトルクを出力させつつ弁41を閉止させることにより、弁41の閉止速度を制御することができる。これにより、例えば弁41の閉止動作を減勢することが可能となり、給水口3を閉鎖するときの衝撃音などを低減することができる。すなわち、静音性が確保される。
【0033】
弁41の動作に係る制御部Cの制御には、例えば電圧を変化させる手法を用いることができる。まず、弁41を上方に引き上げて開状態とするときは、弁41の開放方向(図4(a)では、右回りの方向)に例えば24Vの電圧を印加する。次に、弁41の開状態を一定時間保持するときは、弁41の開放方向(図4(b)では、右回りの方向)に24Vよりも低い電圧、例えば15Vの電圧を印加する。次に、弁41を下方に移動させて閉止させるときは、前述したように駆動部Dへの電流供給を停止して弁41の自重により弁41を閉止させることができる。あるいは、弁41の開放方向(図4(c)では、右回りの方向)に例えば3Vの電圧を印加することができる。あるいは、制御を簡便にするため、例えば24Vから電圧を低下させずに電圧を一定値に保持する構成にしてもよい。
【0034】
また、弁41の開度については駆動部Dの出力トルクの値により制御することができ、開状態・閉状態の持続時間については出力トルクが開状態・閉状態に対応する値となっている状態の持続時間により制御することができる。
【0035】
電圧を変化させるには、例えばパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を用いて所望の電圧が印加されるように電力を調節する構成にすることができる。また、それぞれの電圧を印加するための電源をそれぞれ設け、弁41の動作に応じてこれらを切り替える構成にしてもよい。
【0036】
なお、モータなどの駆動部Dへの電流供給を停止して弁41の自重により接続部51を下方に移動させ、駆動部Dを左回りに回転させると、駆動部Dにコギングトルクが働くことがある。これにより、駆動部D及び回転体5が円滑に左回り方向に回転せず、弁41の閉止動作が円滑に行われないことがある。このため、閉止動作を円滑にするために、駆動部Dには図示しないリターンスプリングを設けることができる。リターンスプリングとは、電流が流れていないときにおいて弁41が閉止状態に戻るように付勢するためのばねであり、左回りの方向にトルクがかかるようにするばねである。
【0037】
次に、図1及び図2に戻って説明する。
図1及び図2に表したように、トイレ装置1は、情報取得部Aをさらに備えてもよい。情報取得部Aは、第1の給水動作における弁41の開度や開状態の持続時間を検出する構成にすることができる。これにより、第1の動作において大洗浄、中洗浄、及び小洗浄のいずれが行われたかが把握される。そして、制御部Cは、第1の給水動作において情報取得部Aで検出された弁41の開度や開状態の持続時間に応じて、第2の給水動作において駆動部Dの動作を制御することができる。
【0038】
弁41の開度や開状態の持続時間は、弁41の位置や弁41が開状態の位置に存在している時間を検出することにより取得することができる。弁41の位置は、例えば駆動部Dに付設されたエンコーダにより検出することができる。
【0039】
すなわち、駆動部D(モータ)の角速度から回転体5の軸体の角速度を検出する。これにより、接続部51の位置を検出する。接続部51の位置と弁41の位置とは、弁41が開状態にあるときを含め紐状体6が緊張状態にあるときには連動する。これにより、紐状体6が緊張状態にあるときの弁41の位置を検出することができる。より詳細には、まずエンコーダによりパルスを発振させる。そして、制御回路は、パルスの発振周波数を検知することで駆動部D(モータ)の回転数を算出する。これにより、弁41の位置を算出する。すなわち、駆動部Dの回転数及び接続部51の回転半径から、接続部51の移動距離を算出する。これは、弁41の移動距離と同じ値となる。そして、初期における弁41の位置にこの移動距離を加えることにより、弁41の位置を算出する。あるいは、弁41の移動距離のみを基に弁41が開状態にあるか否かを判断する構成にしてもよい。
【0040】
また、弁41が開状態となっている等の時間については、実時間時計(RTC)やストップウォッチなどを用い、弁41の位置とこれら時計で測定される時間または時刻とを関連付けることにより検出することができる。
【0041】
このようにして、第1の給水動作における弁41の開度や開状態の持続時間が取得される。これにより、第1の給水動作における洗浄モード(大洗浄、中洗浄、小洗浄など)が把握される。
そして、制御部Cは、情報取得部Aが取得した第1の給水動作における給水量の情報、例えば第1の給水動作における弁41の開度及び/または開状態の持続時間、に応じて第2の給水動作を制御する。
【0042】
なお、トイレ装置1は、便器100への水の供給の必要性及び水の供給態様を決める情報(以下、「水供給情報」という)を取得する水供給情報取得手段A2(図示せず)をさらに備えてもよい。この場合、制御部Cは、水供給情報取得手段A2が取得したこれら情報を用いて、駆動部Dに指示を行うことができる。
【0043】
水供給情報取得手段A2は、水供給情報の基となる第1の原情報を検知する検知手段を有することができる。第1の原情報は、例えば利用者の着座時間である。
また、水供給情報取得手段A2は、利用者が水供給情報の基となる第2の原情報を入力する入力手段を有してもよい。入力手段は、便器や壁などに付設することができ、あるいはリモコンの形態を有することができる。利用者は、入力手段のボタンを押すなどにより、便器への水の供給態様を選択することができる。
【0044】
検知手段と入力手段とを併有した場合、水供給情報取得手段A2は、第1及び第2の原情報を用いて水供給情報を取得することができる。この場合、第1の原情報と第2の原情報との間で齟齬が生じる場合には、第2の原情報を優先するように構成することができる。例えば、第1の原情報(検知情報)によれば便器に供給する洗浄水の量は多くすべきと判断される一方、第2の原情報(入力情報)によれば便器に供給すべき洗浄水の量は少なくてよいと判断される場合には、第2の原情報に基づいて水供給情報を取得することができる。これにより、制御部Cはこの水供給情報を基に、駆動部Dに対し適切な指示を行うことができる。この結果、適切な水量で水が供給される。
なお、水供給情報取得手段A2、検知手段、及び/または入力手段が制御部Cを遠隔操作する構成にしてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の効果について説明する。
図5は、本実施形態に係るトイレ装置1と対比される比較例に係るトイレ装置を表した模式断面図である。このトイレ装置200は、例えばサイホンジェット式水洗便器に用いられる。
【0046】
図5に表したように、比較例に係るトイレ装置200は、ボールタップにより分岐された2つの給水路を有する(タンク給水路201及びリフィル給水路202)。タンク給水路201には、タンクに供給する水が流れる。一方リフィル給水路202には、便器のリフィルに用いられる水が流れる。「リフィル」とは、便器の封水を形成するための水を便器に供給することである。すなわち、リフィル用の水は、タンクを経由せずに、直接水道管などから供給される。
【0047】
かかる構成において、タンクから便器へ洗浄水を流して便器の洗浄を行った場合、タンクへ水を補充するために、ボールタップの浮玉(図示せず)及びオーバーフロー管の機能によりタンク内に適量の水が供給される。以下、洗浄水の量が少量であるときには補充に係るタンク給水に60秒要し、多量であるときには75秒要する場合を例に取り上げて説明する。
【0048】
ここで、一般に、リフィルに係る流量は、洗浄水が少量であるときのタンク給水に要する時間だけ経過すれば十全に封水が形成されるように設定される。この設定は、流路抵抗を調節することにより行われる。このように設定することにより、洗浄水が少量である場合も多量である場合も、換言すればタンク給水時間が短い場合も長い場合も、封水が十全に形成される。このため、本事例では、タンク給水が60秒間なされれば、リフィルは十全になされるように構成されていると仮定する。
【0049】
なお、リフィルに要する水量は、通常は洗浄水の量に関係なく一定である。洗浄水の量に関係なく、サイホン現象によりボウル内の水はほぼ全て排出され、洗浄後のボウル面の水量は同等になるからである。
【0050】
図5(a)に表したように、洗浄水が少量である場合には、タンク給水に60秒要することから、タンク給水路201には60秒間水が流れる。この時、同時にリフィル給水路202にも60秒間水が流れる。これにより、便器の封水が適切に形成される。
【0051】
一方、図5(b)に表したように、洗浄水が多量である場合には、タンク給水に75秒要することから、タンク給水路201には75秒間水が流れる。この時、同時にリフィル給水路202にも75秒間水が流れる。この場合も、便器の封水は十全に形成される。しかし、60秒間給水された時点で既に封水は適切に形成されていることから、残余の15秒の間に流れた水は無駄に供給されたことになる。
このように、比較例においては、タンクからの給水量に差があると無駄水が生じ、給水量の差が大きくなると無駄水は増加する。
【0052】
これに対し、本実施形態に係るトイレ装置1では、封水形成のために供給される水(リフィル水)の量は、サイホン洗浄等の第1の給水動作における給水量に応じて制御部Cにより制御される。すなわち、制御部Cは、第1の給水動作において大洗浄、中洗浄、及び小洗浄のいずれが行われたか、に応じて、図6などに関して後述する態様で第2の給水動作において給水時間や弁41の開度を制御する。これにより、第2の給水動作において封水形成のための水を適切な量で供給することができる。従って、複数の洗浄モードに対して良好な精度でリフィル水の量を調整することができ、上述した封水形成時の無駄水に係る問題が解消される。このため、節水性の向上が図られる。また、これを簡素な構造により実現することができる。このため、費用の抑制や装置の信頼性向上が図られる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、複数の洗浄モードに対して、簡素な構造で無駄水なくリフィル水の供給を行い、節水性に優れたトイレ装置が提供される。本実施形態は、第1の給水動作、すなわち洗浄動作、においてサイホンを生じさせるサイホン式便器装置や、いわゆる「回動式トラップ方式」のようにトラップを可動式にして便器内の水を排出させる便器装置など、洗浄後に便器に封水を充填させる任意の便器装置に適用することができる。
【0054】
次に、制御部Cの制御態様について、図6及び図7を参照しつつ説明する。
図6及び図7は、制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。横軸は時間を表し、縦軸は弁41の開度を表している。また、図6(a)及び図7(a)は小洗浄時の、図6(b)及び図7(b)は中洗浄時の、図6(c)及び図7(c)は大洗浄時の制御態様を表している。
【0055】
まず、図6に表したように、制御部Cが、第1の給水動作に応じて、例えば、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の給水動作において給水時間を制御する構成にすることができる。
図6(a)に表したように、洗浄水の量が少ない小洗浄の場合には、タンク2から排出される水の量が少ないことから、洗浄終了時においてタンク2内の水位が相対的に高く、給水口3周辺にかかる水圧は相対的に高い。このため、第2の給水動作において弁41を開いて給水口3から給水するとき、ベルヌーイの定理により相対的に高い流速で給水口3から水が給水される。このため、小洗浄の場合は、制御部Cは第2の給水動作において相対的に短い時間だけ給水させることができる。
【0056】
また、図6(b)に表したように、洗浄水の量が中程度の中洗浄の場合には、洗浄終了時においてタンク2内の水位が小洗浄の場合よりも低く、給水口3周辺にかかる水圧は小洗浄の場合よりも低い。このため、第2の給水動作において弁41を開いて給水口3から給水するとき、小洗浄の場合よりも低い流速で給水口3から水が給水される。このため、中洗浄の場合は、制御部Cは第2の給水動作において小洗浄の場合よりも長い時間給水させることができる。
【0057】
また、図6(c)に表したように、洗浄水の量が多い大洗浄の場合には、同様の論拠により中洗浄の場合よりもさらに長い時間給水させることができる。
これらにより、小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のいずれの場合においても封水形成用に適切な量の水を供給することができる。例えば、それぞれの場合において封水形成用に略同等の量の水を供給することができる。この構成によれば、リフィル時の弁41の開度は洗浄モード間で略同じ値とすることができ、簡単な制御で給水量を調節することができる。
【0058】
また、図7に表したように、制御部Cが、第1の給水動作に応じて、例えば、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の給水動作において弁41の開度を制御する構成にしてもよい。
図7(a)に表したように、小洗浄の場合には、図6(a)に関して前述したように第1の給水動作が終了した時点でタンク2内の水位は相対的に高い。このため、第2の給水動作において給水するとき、相対的に高い流速で給水口3から給水される。従って、小洗浄の場合は、制御部Cは第2の給水動作において弁41の開度を相対的に小さくして給水させることができる。
【0059】
また、図7(b)に表したように、中洗浄の場合には、第1の給水動作が終了した時点でタンク2内の水位は小洗浄の場合よりも低い。このため、第2の給水動作において給水するとき、小洗浄の場合よりも低い流速で給水口3から給水される。従って、中洗浄の場合は、制御部Cは第2の給水動作において小洗浄の場合よりも弁41の開度を大きくして給水させることができる。
【0060】
また、図7(c)に表したように、大洗浄の場合には、同様の論拠により中洗浄の場合よりもさらに大きな開度で給水させることができる。
これらにより、小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のいずれの場合においても封水形成用に適切な量の水を供給することができる。例えば、それぞれの場合において水の流量を略同等とし、封水形成用に略同等の量の水を供給することができる。なお、水の「流量」とは、単位時間当たりに移動する水の量である。この構成によれば、リフィル時の給水時間は洗浄モード間で略同じ値とすることができ、洗浄モードに関係なく速やかにリフィルを行うことができる。
【0061】
ここで、封水形成に係る給水量の値を具体的に制御する方法の一例について説明する。この説明において、「流量Q」、「流速V」、「流路断面積S」、及び「給水時間T」は、特に断りのない限り第2の給水動作(リフィル)時の給水口3におけるそれぞれの値をいうものとする。以下、リフィル時において流路断面積Sが一定であり、リフィル時におけるタンク2内の水位の変化及び給水口3での流速Vの変化が無視できる程度のものである場合について説明する。この場合、流路断面積Sは弁41の開度から求めることができ、流速Vはトリチェリの定理を用いてタンク2内の水位から求めることができる。
【0062】
一般に、給水量は、流量Qを給水時間Tに対して積分した値である。ここで、流量Qは、本具体例では上記前提条件から流速V及び流路断面積Sが一定であるため、「流量Q=流速V×流路断面積S」になる。従って、「給水量=流量Q×給水時間T=流速V×流路断面積S×給水時間T」となる。
【0063】
また、第1の給水動作(洗浄)が終了した時点でのタンク2内の水位は、各洗浄モードに固有の値である。このため、第2の給水動作(リフィル)時の流速Vは、各洗浄モードに固有の値となる。また、リフィル時の流路断面積Sは、各洗浄モードに固有の値とすることができ、また洗浄モード間で等しい値とすることもできる。これらから、流量Qは、各洗浄モードに固有の一定値になる。
以上を基に、図6及び図7に関して前述した制御態様について給水量の値を制御する方法について説明する。
【0064】
まず、図6に関して前述した給水時間を調節する構成を用いた場合について説明する。前述したように、流量Qは各洗浄モードに固有の一定値となり、これら一定値はタンク2内の水位と弁41の開度とから求めることができる。小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のそれぞれの流量を、Q1、Q2、及びQ3とする。
そして、これら一定値を用いて給水量、すなわち「流量Q×給水時間T」が所望の値となるように、各洗浄モードにおける給水時間T(小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のそれぞれの給水時間T1、T2、及びT3)を適宜設定することができる。例えば、給水量が洗浄モード間で略等しくなるようにするためには、Q1・T1=Q2・T2=Q3・T3(=適切なリフィル量)となるように、T1、T2、及びT3を設定することができる。
【0065】
次に、図7に関して前述した弁41の開度を調節する構成を用いた場合について説明する。前述したように、流速Vは各洗浄モードに固有の一定値となり、これら一定値はタンク2内の水位から求めることができる。小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のそれぞれの流速を、V1、V2、及びV3とする。また、給水時間Tは、洗浄モードに関係なく一定の値「T0」であると仮定する。これにより、前述したように洗浄モードに関係なく速やかにリフィルを行うことができる。
【0066】
そして、これら一定値を用いて給水量、すなわち「流速V×流路断面積S×給水時間T」が所望の値となるように、各洗浄モードにおける流路断面積S(小洗浄、中洗浄、及び大洗浄のそれぞれの流路断面積S1、S2、及びS3)、より詳細には弁41の開度、を適宜設定することができる。例えば、給水量が洗浄モード間で略等しくなるようにするためには、V1・S1・T0=V2・S2・T0=V3・S3・T0(=適切なリフィル量)となるように、S1、S2、及びS3を設定することができる。これら値から、各洗浄モードにおける弁41の開度を設定することができる。
以上のようにして、封水形成に係る給水量を制御することができる。
【0067】
なお、後述する他の具体例を含め、本実施形態において洗浄モードは、大中小の3パターン以外のパターンを用いてもよい。また、リフィル量、すなわち封水形成のための給水量は、各洗浄モードにおいて略等しい値とすることができ、あるいは洗浄終了時の便器内の水量などに応じて異ならせてもよい(小洗浄<中洗浄<大洗浄、または小洗浄>中洗浄>大洗浄、など)。
【0068】
次に、本実施形態の他の構成について、図8及び図9を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の他の構成に係るトイレ装置1Bを例示する模式断面図である。
図8に表したように、トイレ装置1Bの給水量調節部4は、給水口3の開口面積を調節する機構(図では、シャッター42)を有する。シャッター42は駆動部Dを介して制御部Cと接続しており、その動作は制御部Cによって制御される。
【0069】
この場合、図8(a)に表したように給水量調節部4が弁41を有さない構成でもよく、図8(b)に表したように弁41とシャッター42とを併有する構成でもよい。なお、図8(b)において、弁41と接続する紐状体6及び回転体5については省略した。弁41をさらに設けることにより、シャッター42にかかる水圧を低減することができ、これによりシャッター42の劣化・損傷を抑制することができる。すなわち、制御部Cがまず弁41を閉じた状態でシャッター42を開閉させ、次に弁41を開く動作を行わせることにより、シャッター42の開閉時にはシャッター42に水圧がかからないようにすることができる。これにより、シャッター42が開閉するときにシャッター42とシャッター受け42rとの間の摩擦などを低減することができ、シャッター42の劣化・損傷を抑制することができる。
なお、図示しないが、トイレ装置1B及び後述する他の具体例において、情報取得部Aをさらに設けてもよい。
【0070】
本具体例において、制御部Cは、駆動部Dを介してシャッター42(及び、必要に応じ弁41)を開き、第1の給水動作を行わせ、その後第2の給水動作を行わせる。ここで、制御部Cは、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の給水動作において給水口3の開口面積を制御する。また、図8(b)に表した例では、弁41の開度をさらに制御することができる。図1並びに図8(a)及び(b)に係る例について上位概念的に表現すれば、制御部Cは、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の給水動作において給水口3における水の流路断面積を制御する。これにより、簡素な構造で大洗浄、中洗浄、小洗浄などの複数の洗浄モードに対してリフィル水の量を調節することができ、無駄水なくリフィル水を供給することができる。
【0071】
図9は、トイレ装置1Bを用いた場合の制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。横軸は時間を表し、縦軸は給水口3における給水流路の断面積を表している。より詳細には、図8(a)に表したトイレ装置1Bを用いた場合には給水口3の開口面積を表し、図8(b)に表したトイレ装置1Bを用いた場合には、給水口3の開口面積と弁41の開度とから導かれる給水口3における給水流路の断面積を表している。
【0072】
各洗浄モードにおいて、図7に関して前述した要領で制御部Cは給水口3における給水流路の断面積を制御する。
すなわち、図9(a)に表したように、小洗浄の場合には、第1の給水動作が終了した時点でタンク2内の水位は相対的に高い。このため、第2の給水動作において給水するとき、相対的に大きな流速で給水される。従って、小洗浄の場合は、制御部Cは第2の給水動作において流路断面積を相対的に小さくして給水させることができる。
【0073】
また、図9(b)に表したように、中洗浄の場合には、第1の給水動作が終了した時点でタンク2内の水位はより低くなるため、制御部Cは第2の給水動作において流路断面積をより大きくして給水させることができる。
また、図9(c)に表したように、大洗浄の場合には流路断面積をさらに大きくして給水させることができる。
【0074】
次に、本実施形態のさらに別の構成について、図10〜図14を参照しつつ説明する。
図10は、本実施形態のさらに別の構成に係るトイレ装置1Cを例示する模式断面図である。
図11は、トイレ装置1Cと、便器100と、を備えた便器システムを例示する模式図である。図11(a)はこの便器システムを例示する模式平面図であり、図11(b)は図11(a)のC−C’線断面図である。図11に表した便器100は、サイホンジェット式の水洗便器である。また、図11において、便器100以外の部分については構成要素を一部省略した。
図12は、給水口3の構成を例示する模式平面図である。
【0075】
図10〜図12に表したように、トイレ装置1Cの給水量調節部4は、給水口3の少なくとも一部を開閉する第1の弁41aと、給水口3の少なくとも一部を開閉する第2の弁41bと、を有する。これら図では、第1の弁41aは給水口3の一部を開閉し、第2の弁41bは給水口3の他の一部を開閉する。
【0076】
図10、図11、及び図12(a)に表したように、給水口3は2つの給水口3a、3bとすることができる。すなわち、トイレ装置1Cのタンク2は、タンク2に貯留された水を便器に給水する2つの給水口(第1の給水口3a及び第2の給水口3b)を有し、第1の弁41a及び第2の弁41bはそれぞれ第1の給水口3a及び第2の給水口3bを開閉する。また、図10(b)では、後述するように第1の弁41aが開状態のときは第2の弁41bも開状態となる。
【0077】
また、図12(b)に表したように、給水口3は1つの給水口としてもよい。この場合、第1の弁41aは1つの給水口3の一部の上に設け、第2の弁41bは当該1つの給水口3の他の一部の上に設けることができる。これにより、構造が簡素化され、費用の低減が図られる。
【0078】
以下、給水口3が2つの給水口3a、3bである場合(図10、図11、及び図12(a))について説明する。
第1の給水口3aは相対的に大きい流路断面積を有し、洗浄水を通すことができる。また、第2の給水口3bは相対的に小さい流路断面積を有し、リフィル水を通すことができる。また、図10(b)に表した例では、第1の弁41aが開状態のときは第2の弁41bも開状態となるため、第2の給水口3bは洗浄水をも通すことができる。
【0079】
また、第1の給水口3aは洗浄水のみならずリフィル水をも通す構成にしてもよい。リフィル量を多く必要とする場合などには、流路断面積の大きい第1の給水口3aを活用することにより、速やかに封水を充填することができる。
【0080】
回転体5は、第1の接続部51aと、第2の接続部51bと、を有する。第1の接続部51a、回転軸5s、及び第2の接続部51bのなす角は、図示したように略180度とすることができ、他の角度にしてもよい。
【0081】
図10(a)に表した例では、第1の弁41a及び第2の弁41bは、それぞれ紐状体6a及び6b、並びに接続部51a及び51bを介し、さらに駆動部Dを介して制御部Cに接続しており、第1及び第2の弁41a、41bの動作は制御部Cによって制御される。
【0082】
そして、制御部Cは、第1の弁41aを開いて第1の給水動作を行わせ、その後第2の弁41bを開いて第2の給水動作を行わせる。第1の弁41a及び第2の弁41bが閉じた状態で、制御部Cの制御を受けて駆動部Dにより回転体5が回転すると、第1の弁41a及び第2の弁41bのいずれかが開く。
【0083】
すなわち、回転体5が左回りの方向に回転すると第1の紐状体6aは緊張状態になり、第1の弁41aが開いて第1の給水動作が実現する。このとき、第2の紐状体6bは弛緩状態にあり、第2の弁41bは閉状態にある。また、回転体5が右回りの方向に回転すると第2の紐状体6bは緊張状態になり、第2の弁41bが開いて第2の給水動作が実現する(図示した状態)。このとき、第1の紐状体6aは弛緩状態にあり、第1の弁41aは閉状態にある。
【0084】
また、図10(b)に表した例では、第2の弁41bは、第1の接続部51aに接続した第3の紐状体6cとさらに接続している。かかる構成にすることにより、回転体5が左回りの方向に回転すると、第1の紐状体6aのみならず第3の紐状体6cも緊張状態になり、第1の弁41a及び第2の弁41bの両方が開く(図示した状態)。これにより、第1の給水動作が実現する。この場合、第1の給水動作における流量は図10(a)に表したトイレ装置1Cを用いた場合よりも大きくなり、より速やかに洗浄を行うことができる。
【0085】
また、回転体5が右回りの方向に回転するときは、図10(a)に表した例と同様に第2の紐状体6bのみが緊張状態となり、第2の弁41bのみが開く。これにより、第2の給水動作が実現する。
【0086】
なお、図10(b)に表した例において回転体5が左回りに回転するときに、第1の紐状体6aが緊張状態になるタイミングと、第3の紐状体6cが緊張状態になるタイミングと、を異ならせるようにそれぞれの紐状体を設けることにより、回転体5が左回りに回転したときにまず第1の弁41a及び第2の弁41bのいずれかが開き、その後これら両方の弁が開くようにすることができる。かかる構成は、それぞれの紐状体の長さを適宜調節することにより実現される。例えば、第1の紐状体6aの方が先に緊張状態になるように紐状体6a、6cの長さを設定すれば、回転体5が左回りに回転したときに、まず第1の弁41aのみが開き、その後第1の弁41a及び第2の弁41bの両方が開くことになる。このような動作は洗浄時のみならずリフィル時にも用いることができ、これにより例えば図14に関して後述する制御が可能となる。すなわち、リフィルに係る第2の給水動作において、第2の弁41bのみを開状態とする他、第1の弁41aのみを開状態としたり、第1及び第2の弁41a、41bの両方を開状態とする構成にすることができる。
【0087】
このように第1の弁41aと第2の弁41bとを設けることにより、精度よく効果的に洗浄及びリフィルの二種類の給水動作を行うことができる。例えば、洗浄時には流路断面積の大きい第1の弁41aを用いることにより、洗浄に適した大きな流量で水が供給される。これにより、速やかに便器を洗浄することができる。また、リフィル時には流路断面積の小さい第2の弁41bを用いることにより、小さな流量で水が供給され、ばらつきの少ない量で水が供給される。これにより、無駄水を抑制することができる。
【0088】
図11に表したように、第1及び第2の給水口3a、3bは、それぞれサイホンジェット式水洗便器100のジェット孔23及びリム孔22に供給される水を通すように設けることができる。すなわち、便器100は、第1の給水口3aと連通する第1の給水路21aと、第2の給水口3bと連通する第2の給水路21bと、を有し、第1の給水路21aはジェット孔23に供給される水を通すように設け、第2の給水路21bはリム孔22に供給される水を通すように設けることができる。
【0089】
リム孔22は、便器100のリム部に設けられ、ボウル部に向けて開口しており、便器の封水を形成するための水やボウル面の洗浄のための水を通す。また、ジェット孔23は、ボウル部の下流に連なるトラップ部の下流に向けて開口しており、サイホン現象を促進するための水を通す。なお、リム孔は、洗浄水を、ボウル部の上部開口の周縁に形成したリム部の、ボウル部内に面したリム部内側壁面に沿うように吐出する開口孔であってもよい。
【0090】
また、図示しないが、第1及び第2の給水口3a、3bは、それぞれ大流量リム給水口及び小流量リム給水口に連通する構成にしてもよい。この場合、大流量リム給水でサイホンを発生させ、小流量リム給水ではサイホンを発生させないようにすることができる。
【0091】
図13及び図14は、トイレ装置1Cを用いた場合の制御部Cの制御態様を例示する模式グラフ図である。横軸は時間を表し、縦軸は第1の弁41aの開度、第2の弁41bの開度、または第1の弁41aの開度及び第2の弁41bの開度の合計を表している。
【0092】
図13に表したように、制御部Cは、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の給水動作において給水時間を制御することができる。各洗浄モードにおける給水時間は、図6に関して前述した要領で決定することができる。また、図示しないが、図7に関して前述した要領で第2の弁41bの開度を調節する構成にしてもよい。
【0093】
また、図14に表したように、第2の給水動作において、用いる弁を選択することにより給水量を調節してもよい。
すなわち、図14(a)に表したように、小洗浄の場合には、第2の給水動作において給水するときの流速が高いため、流路断面積が小さい第2の弁41bのみを開状態にして給水することができる。
【0094】
また、図14(b)に表したように、中洗浄の場合には、第2の給水動作において給水するときの流速が小洗浄時に比べて低いため、流路断面積が第2の弁41bよりも大きい第1の弁41aを開状態にして給水することができる。
また、図14(c)に表したように、大洗浄の場合には、第2の給水動作において給水するときの流速がさらに低くなるため、流路断面積がさらに大きくなるように第1の弁41a及び第2の弁41bの両方を開状態にして給水することができる。
【0095】
これらにより、いずれの洗浄モードにおいても適切な量でリフィル水を供給することができる。かかる制御は、例えば図10(b)に関して前述したトイレ装置1Cを用いることにより可能となる。
【0096】
次に、本実施形態のさらに別の構成について、図15〜図17を参照しつつ説明する。
図15は、本実施形態のさらに別の構成に係るトイレ装置1Dを例示する模式斜視断面図である。
図16は、トイレ装置1Dの給水口3及び給水量調節部4を例示する、図15のZY平面での模式断面図である。
図17は、回転体5、紐状体6a、6b、及び弁41a、41bの動作を例示する模式断面図である。
【0097】
図15及び図16に表したように、トイレ装置1Dの給水量調節部4は、給水口3の少なくとも一部を開閉する第1の弁41a及び第2の弁41bを有する。また、第2の弁41bは、第1の弁41aの上に設けられている。すなわち、第1の弁41a及び第2の弁41bは、親子弁の形態を有する。親子弁を用いることにより、タンク2のサイズが小さい場合にも2つの弁を設けることができ、前述したトイレ装置1Cと同様に精度よく効果的に洗浄及びリフィルの二種類の給水動作を行うことができる。
【0098】
ここで、第1の弁41aは、第1及び第2の弁41a、41bが閉じた状態から第1の弁41aが開くときに第2の弁41bを押動して開けるように設けられている。つまり、第1の弁41aが開くとき、第2の弁41bは連動する。この結果、給水口3には相対的に大きい第1の開口が形成される。換言すれば、給水口3は相対的に大きい第1の開口面積を有する。また、第1及び第2の弁41a、41bが閉じた状態から第2の弁41bを開くと、第1の弁41aは閉じたまま第2の弁41bのみが開く。この結果、給水口3には相対的に小さい第2の開口が形成される。換言すれば、給水口3は相対的に小さい第2の開口面積を有する。すなわち、第1の弁41aは給水口3の全部を開閉し、第2の弁41bは給水口3の一部を開閉する。
【0099】
図16(a)に表したように、給水口3は1つの給水口とすることができる。この場合、構造が簡素になり、費用の低減が図られる。
また、図16(b)に表したように、給水口3は2つの給水口とすることができる。図では、外側に例えば洗浄水を通す第1の給水口3aが存在し、内側に例えばリフィル水を通す第2の給水口3bが存在する。第1の弁41aは、第2の給水口3bに連通する開口を有し、第2の弁41bはこの開口を開閉する。なお、前述したように第1の給水口3aが開状態となって洗浄水が供給されるときは第2の給水口3bも開状態となるため、第2の給水口3bは洗浄水を通す機能も有する。また、第1の給水口3aは洗浄水のみならずリフィル水をも通す構成にしてもよい。リフィル量を多く必要とする場合などには、流路断面積の大きい第1の給水口3aを活用することにより、速やかに封水を充填することができる。
【0100】
図16(b)に表した例では、給水口3a、3bは略同心円の形状を有する。あるいは、図示しないが、これら給水口の中心が異なってもよい。すなわち、第2の給水口3bの中心は、第1の給水口3aの中心に対して偏芯していてもよい。
第1及び第2の給水口3a、3bは、前述したトイレ装置1Cと同様に、例えばそれぞれサイホンジェット式水洗便器のジェット孔及びリム孔に供給される水を通すように設けることができる(図11参照)。
【0101】
図15に表したように、回転体5は、第1の接続部51aと、第2の接続部51bと、を有する。第1の弁41a及び第2の弁41bは、それぞれ紐状体6a及び6b、並びに接続部51a及び51bを介し、さらに駆動部Dを介して制御部Cに接続しており、第1及び第2の弁41a、41bの動作は制御部Cによって制御される。
【0102】
そして、制御部Cは、第1の弁41aを開いて第1の給水動作を行わせ、その後第2の弁41bを開いて第2の給水動作を行わせる。制御部Cの制御を受け、回転体5は、回転により第2の弁41bを開閉することができる。また、回転体5は、回転により第1の弁41a及び第2の弁41bを開閉することができる。上述した押動動作により、第1の弁41aが開いているときは第2の弁41bも開くことになる。
【0103】
以下、回転体5、紐状体6a、6b、及び弁41a、41bの動作について説明する。
図17(a)に表したように、接続部51a及び51bがZ軸方向(略鉛直方向)においてそれぞれ範囲Ra及び範囲Rbの位置にあるとき(例えば、両者が略同一の位置にあるとき)にそれぞれ紐状体6a及び6bが弛緩状態になるように、紐状体6a、6bが設けられている。
【0104】
また、図17(b)に表したように、第1の接続部51aがZ軸正側に移動して範囲Raから逸脱すると第1の紐状体6aが第1の弁41a(及び押動動作により第2の弁41b)を開放できる程度に緊張するように、第1の紐状体6aが設けられている。
また、図17(c)に表したように、第2の接続部51bがZ軸正側に移動して範囲Rbから逸脱すると第2の紐状体6bが第2の弁41bを開放できる程度に緊張するように、第2の紐状体6bが設けられている。
【0105】
範囲Ra及びRbは、同じ値でもよく、異なる値でもよい。これら値は、紐状体6a及び6bが弛緩する状態(平常時)、少なくとも第1の紐状体6aが緊張する状態(洗浄時など)、及び第2の紐状体6bのみが緊張する状態(リフィル時など)の全てを発現し得る限りにおいて任意の値に設定することができる。
このように構成することにより、回転体5は、第1及び第2の弁41a、41bが閉じた状態においてY軸負側から見て左回りの方向に回転すると第1及び第2の弁41a、41bを開け(図17(b))、第1及び第2の弁41a、41bが閉じた状態においてY軸負側から見て右回りの方向に回転すると第2の弁41bのみを開けることができる(図17(c))。
【0106】
トイレ装置1Dを用いた場合の制御部Cの制御態様としては、例えば図13に関して前述したのと同様の制御態様が挙げられる。すなわち、第1の給水動作における給水量に応じて、第2の弁41bの開放時間を調節することができる。また、図7に関して前述した要領で第2の弁41bの開度を調節する構成にしてもよい。
【0107】
また、図14に関して前述した要領で、使用する弁を選択することにより給水量を調節する構成にしてもよい。但し、親子弁を用いた場合における弁の選択の態様としては、第2の弁41bのみを開ける場合(図14(a))と、第1及び第2の弁41a、41bの両方を開ける場合(図14(c))と、の2つのみであるため、この構成は、例えば大洗浄及び小洗浄の2つの洗浄モードに対して適用することができる。
【0108】
次に、リフィル時にジェット孔から空気が押し出されることによる音の発生を抑制する制御態様について、図18を参照しつつ説明する。
図18は、リフィル時の空気押し出しによる音の発生を抑制する制御態様について説明するための模式断面図である。図18(a)は通常の洗浄時の直前の状態、すなわち第1の給水動作が行われる直前の状態を表している。また、図18(b)はリフィル時の直前の状態、すなわち第2の給水動作が行われる直前の状態を表している。また、図において矢印E、E1、及びE2は空気の流れを表し、矢印F、F1、及びF2は水の流れを表している。
【0109】
この例では、便器100にサイホンジェット式水洗便器を用いている。便器100はリム孔22と、ジェット孔23と、給水流路21と、を有し、給水流路21は給水口3、リム孔22、及びジェット孔23に連通している。このような構成の場合、次に説明するようにリフィル時にジェット孔23から空気が押し出され、これに伴い音が発生する可能性がある。
【0110】
まず、図18(a)に表したように、通常洗浄時の直前では、便器100に十分な水が存在している。従って、給水流路21における水位は高く、給水流路21において空気が存在する領域(空気だまり300)はリム孔22の周辺にのみ存在する。このため、かかる状態において給水口3から洗浄水が給水流路21に供給されると、矢印Eで示したように空気はほぼリム孔22から抜けることになる。
【0111】
一方、図18(b)に表したように、リフィル時の直前では、洗浄時に発生させたサイホンにより便器100内に存在する水は少なく、封水が存在しない。従って、給水流路21における水位は低く、給水流路21において空気だまり300はリム孔22周辺からジェット孔23周辺に至るまで広い範囲に存在する。このため、かかる状態において給水口3からリフィル水が給水流路21に供給されると、空気は矢印E1で示したようにリム孔22から抜けるだけでなく、矢印E2で示したようにジェット孔23からも抜ける可能性がある。すなわち、矢印F1で示したようにリフィル用の水が給水流路21内の空気の一部を下方に押し出し、この結果矢印E2で示したように空気が給水流路21の下部を通りジェット孔23から抜ける可能性がある。このように空気がジェット孔23から抜けることにより、音が発生する可能性がある(「ボコ」という音など)。
【0112】
このため、制御部Cは、第2の給水動作において給水流路21に存在する空気がジェット孔23から排出されないように給水させることができる。例えば、第2の給水動作における流量は、第1の給水動作における流量よりも小さくすることができる。また、第2の給水動作における給水時間は、第1の給水動作における給水時間よりも長くすることができる。このように、瞬間流量を小さくしてリフィルすることで、空気音の発生を抑制することができる。また、このような制御を行うことにより、瞬間流量を小さくして長い時間をかけて封水を充填することができ、これによりリフィル時の給水量のばらつきを小さくすることができるという効果も得られる。
【0113】
なお、第2の給水動作の給水量(リフィル量)を制御する方法としては、前述した給水時間を調節する方法、弁41の開度を調節する方法、給水口3の面積を調節する方法などの他、例えば次に示した方法を用いることができ、また前述した方法及び次に説明する方法のうちいくつかを組み合わせてもよい。
【0114】
まず、初期水位を調節することによりリフィル量を制御する方法について、図19を参照しつつ説明する。
図19は、リフィル量を制御する他の方法を例示する模式断面図である。図19(a)はリフィル量が大きい場合の模式断面図であり、図19(b)はリフィル量が中程度の場合の模式断面図であり、図19(c)はリフィル量が小さい場合の模式断面図である。
【0115】
図19に表したように、この方法で用いるタンク2は、その内部を区分する壁2a及び2bを有する。この2つの壁により、タンク2は3つの空間に区分される。また、壁2aには弁43が設けられ、壁2bには弁44が設けられている。また、弁41は、壁2aで区分される空間のいずれか1つを形成するタンク2の底面に設けられている。
【0116】
この方法では、タンク2内の水Wの初期水位Hを調節することにより瞬間流量を調節し、これによりリフィル量を制御する。この場合、リフィル量が異なっても、弁41が開状態となる時間を一定(略同一)にすることができる。
【0117】
まず、図19(a)に表したように、リフィル量を大きくする場合は、初期において弁43及び弁44を閉じることができる。この状態で、弁41に接する空間K1には水Wが充填され、その水位は相対的に高い「H1」である。また、タンク2内の空間であって弁41に接しない空間K2及びK3には、水Wは存在しない。
かかる状況において弁41を開くと、タンク2内の水位H1が相対的に高いため、給水口3における瞬間流量は相対的に大きい。このため、給水を一定時間(T0)行った場合に、リフィル量を大きくすることができる。
【0118】
次に、図19(b)に表したように、リフィル量を中程度にする場合は、初期において弁43を開き、弁44を閉じることができる。そして、水Wの量は、図19(a)に表した場合と同じである。この場合、弁43が開状態であり弁44が閉状態であるため、水Wは壁2aにより区分された空間の両方(空間K1及びK2)に存在する。このため、水Wが存在する空間の水平面積は図19(a)に表した場合よりも大きい。この結果、水Wの水位はH1よりも低い「H2」となる。
かかる状況において弁41を開くと、タンク2内の水位H2はH1よりも低いため、給水口3における瞬間流量は図19(a)に表した場合よりも小さい。このため、給水を同じ時間T0行った場合に、リフィル量を中程度にすることができる。
【0119】
次に、図19(c)に表したように、リフィル量を小さくする場合は、初期において弁43及び弁44を開くことができる。そして、水Wの量は、図19(b)に表した場合と同じである。この場合、弁43及び弁44が開状態であるため、水Wはタンク2の全ての空間(空間K1、K2、及びK3)に存在する。このため、水Wが存在する空間の水平面積はさらに大きくなる。この結果、水Wの水位はさらに低い「H3」となる。
かかる状況において弁41を開くと、タンク2内の水位H3はさらに低いため、給水口3における瞬間流量はさらに小さくなる。このため、給水を同じ時間T0行った場合に、リフィル量を小さくすることができる。
このように、初期水位を調節することにより、リフィル量を制御することができる。
【0120】
次に、給水口3の高さを調節することによりリフィル量を制御する方法について、図20を参照しつつ説明する。
図20は、リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。図20(a)はリフィル量が大きい場合の模式断面図であり、図20(b)はリフィル量が中程度の場合の模式断面図であり、図20(c)はリフィル量が小さい場合の模式断面図である。
【0121】
図20に表したように、この方法で用いる給水量調節部4は、給水口3c、3d、3eをそれぞれ開閉する弁41c、41d、41eを有する。また、給水口3dの上端部は給水口3cの上端部よりも高く、給水口3eの上端部は給水口3dの上端部よりも高い。閉じた状態で、弁41c、41d、41eの高さは、それぞれタンク2の底面を基準として、ゼロ。Hd、Heである。
この方法では、給水口3の高さを調節することにより瞬間流量を調節し、これによりリフィル量を制御する。この場合、リフィル量が異なっても、第2の給水動作の時間を一定(略同一)にすることができる。
【0122】
まず、図20(a)に表したように、リフィル量を大きくする場合は、弁41cを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。この場合、給水口3cから流れる水の水位は相対的に高い「H1」である。この結果、給水口3cにおける瞬間流量は相対的に大きくなる。従って、給水を一定時間(T0)行った場合に、リフィル量を大きくすることができる。
【0123】
次に、図20(b)に表したように、リフィル量を中程度にする場合は、弁41dを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。この場合、給水口3dから流れる水の水位H2は、(H1−Hd)となり、図20(a)に示したH1よりも低い。この結果、給水口3dにおける瞬間流量は図20(a)に表した場合よりも小さくなる。従って、給水を一定時間T0行った場合に、リフィル量を中程度にすることができる。
【0124】
次に、図20(c)に表したように、リフィル量を小さくする場合は、弁41eを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。この場合、給水口3eから流れる水の水位H3は、(H1−He)となり、図20(b)に示した(H1−Hd)よりもさらに低い。この結果、給水口3eにおける瞬間流量はさらに小さくなる。従って、給水を一定時間T0行った場合に、リフィル量を小さくすることができる。
このように、給水口3の高さを調節することにより、リフィル量を制御することができる。
【0125】
次に、浮玉(フロート)を用いてリフィル量を制御する方法について、図21〜図23を参照しつつ説明する。
図21〜図23は、リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。図21はリフィル量が大きい場合の模式断面図であり、図22はリフィル量が中程度の場合の模式断面図であり、図23はリフィル量が小さい場合の模式断面図である。
【0126】
図21〜図23に表したように、この方法では、給水量調節部4は、給水口3を開閉する弁41f、41g、41hを有する。弁41gは弁41fの上に設けられ、弁41hは弁41gの上に設けられている。そして、弁41fは、弁41g及び弁41hが閉じた状態から弁41fが開くときに弁41g及び弁41hを押動して開けるように設けられている。また、弁41gは、弁41hが閉じた状態から弁41gが開くときに弁41hを押動して開けるように設けられている。また、弁41fは開口を有し、弁41fが閉じた状態で弁41gが開くと、タンク2から給水口3を介して給水が行われる。また、弁41gも開口を有し、弁41gが閉じた状態で弁41hが開くと、タンク2から給水口3を介して給水が行われる。
【0127】
また、弁41f、41g、41hにはそれぞれ紐状体6f、6g、6hを介して浮玉7f、7g、7hが接続している。そして、弁41gから浮玉7gまでの距離L2は、弁41fから浮玉7fまでの距離L1よりも大きく、弁41hから浮玉7hまでの距離L3は、弁41gから浮玉7gまでの距離L2よりも大きい。
この方法では、複数の弁に対してそれぞれ浮玉を当該弁からの距離が異なるように設け、これにより弁が開いている時間を調節することにより、リフィル量を制御する。
【0128】
まず、図21(a)の矢印Xで示すように、リフィル量を大きくする場合は、弁41fを開くことができる。すると、図21(b)に表したように、弁41fは浮玉7fの作用により浮き上がる。この場合、水Wの水面から弁41fまでの距離はL1となる。そして、水位の低下とともに弁41fは浮玉7fとともに下降する。そして、図21(c)に表したように、水位が(L1+弁41fの厚さ)となった時点で弁41fは閉止し、第2の給水動作が終了する。以下、弁41f、41g、及び41hの厚さが距離L1、L2、及びL3と比べて十分小さく、無視できるものとする。このため、水位がL1となった時点で弁41fは閉止する。すなわち、図示したように、水位は初期水位をH0として(H0−L1)だけ下降する。L1はL2及びL3に比べて相対的に小さい値であるため。(H0−L1)は相対的に大きい値となる。このため、給水量は相対的に大きくなり、リフィル量を大きくすることができる。
【0129】
次に、図22(a)の矢印Yで示すように、リフィル量を中程度とする場合は、弁41gを開くことができる。すると、図22(b)に表したように、弁41gは浮玉7gの作用により浮き上がる。このとき、弁41fは閉じたままとなる。この場合、水Wの水面から弁41gまでの距離はL2となる。そして、水位の低下とともに弁41gは浮玉7gとともに下降する。そして、図22(c)に表したように、水位がL2となった時点で弁41gは閉止し、第2の給水動作が終了する。すなわち、図示したように、水位は(H0−L2)だけ下降する。L2はL1よりも大きい値であるため、(H0−L2)は図21(c)に示した水位変化量(H0−L1)よりも小さい値となる。このため、給水量は図21に表した場合よりも小さくなり、リフィル量を中程度とすることができる。
【0130】
次に、図23(a)の矢印Zで示すように、リフィル量を小さくする場合は、弁41hを開くことができる。すると、図23(b)に表したように、弁41hは浮玉7hの作用により浮き上がる。このとき、弁41f及び弁41gは閉じたままとなる。この場合、水Wの水面から弁41hまでの距離はL3となる。そして、水位の低下とともに弁41hは浮玉7hとともに下降する。そして、図23(c)に表したように、水位がL3となった時点で弁41hは閉止し、第2の給水動作が終了する。すなわち、図示したように、水位は(H0−L3)だけ下降する。L3はL2よりもさらに大きい値であるため、(H0−L3)は図22(c)に示した水位変化量(H0−L2)よりもさらに小さい値となる。このため、給水量はさらに小さくなり、リフィル量を小さくすることができる。
このように、浮玉(フロート)を用いることにより、リフィル量を制御することができる。
【0131】
次に、給水口3の高さを調節し、弁41の開いている時間を十分長くすることによりリフィル量を制御する方法について、図24〜図26を参照しつつ説明する。
図24〜図26は、リフィル量を制御するさらに別の方法を例示する模式断面図である。図24はリフィル量が大きい場合の模式断面図であり、図25はリフィル量が中程度の場合の模式断面図であり、図26はリフィル量が小さい場合の模式断面図である。
【0132】
図24〜図26に表したように、この方法で用いる給水量調節部4は、給水口3c、3d、3eをそれぞれ開閉する弁41c、41d、41eを有する。また、給水口3dの上端部は給水口3cの上端部よりも高く、給水口3eの上端部は給水口3dの上端部よりも高い。閉じた状態で、弁41c、41d、41eの高さは、それぞれタンク2の底面を基準として、ゼロ、Hd、Heである。
この方法では、給水口3の高さを調節し、且つ、弁41の開いている時間を十分長くすることによりリフィル量を制御する。
【0133】
まず、図24(a)に表したように、リフィル量を大きくする場合は、弁41cを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。そして、弁41cの開いている時間を十分長くする。すると、図24(b)に表したように、水Wは水位がタンク2の底面に達するまで流れる。すなわち、水Wは全部流れる。水位の変化量は、初期水位のH0と同じ値となる。このため、給水量は相対的に大きくなり、リフィル量を大きくすることができる。
【0134】
次に、図25(a)に表したように、リフィル量を中程度とする場合は、弁41dを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。そして、弁41dの開いている時間を十分長くする。すると、図25(b)に表したように、水Wは水位がHdとなるまで流れる。水位の変化量は、(H0−Hd)となる。この値は図24(b)で示した変化量H0よりも小さい。このため、給水量は図24に表した場合よりも小さくなり、リフィル量を中程度とすることができる。
【0135】
次に、図26(a)に表したように、リフィル量を小さくする場合は、弁41eを開き、他の弁は閉じたままとすることができる。そして、弁41eの開いている時間を十分長くする。すると、図26(b)に表したように、水Wは水位がHeとなるまで流れる。水位の変化量は、(H0−He)となる。この値は図25(b)で示した変化量(H0−Hd)よりもさらに小さい。このため、給水量はさらに小さくなり、リフィル量を小さくすることができる。
このように、給水口3の高さを調節し、弁41の開いている時間を十分長くすることにより、リフィル量を制御することができる。
【0136】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズ、動作などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、回転体5の回転に伴う動作の態様は、上記に限られず、例えば紐状体6の接続などを変更した上で上記で「右回り」と「左回り」とを逆にしてもよい。
【0137】
また、回転体5は、図27に表した構成にしてもよい。
図27は、回転体5を例示する模式断面図である。
回転体5は、図27に表したように、ラック・アンド・ピニオンを用いた構成にしてもよく、かかる構成も本実施形態に含まれる。この場合、回転体5において、ラック・アンド・ピニオンの作用により回転駆動が上下方向などの直線方向の駆動へと変換される。このような構成にしても、本実施形態の効果が発現される。
【0138】
また、これまで主に第2の給水動作の制御について説明してきたが、第1の給水動作についても、第2の給水動作と同様に給水時間や、弁の開度など給水流路の断面積を調節することにより、大洗浄、中洗浄、小洗浄等の各種洗浄モードを実現することができる。
さらに、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0139】
1、1B、1C、1D トイレ装置、2 タンク、2a、2b 壁、3 給水口、3a 第1の給水口、3b 第2の給水口、3c、3d、3e 給水口、4 給水量調節部、5 回転体、5p 突出部、5s 回転軸、6 紐状体、6a 第1の紐状体、6b 第2の紐状体、6c 第3の紐状体、6f、6g、6h 紐状体、7f、7g、7h 浮玉、21 給水流路、21a 第1の給水路、21b 第2の給水路、22 リム孔、23 ジェット孔、41 弁、41a 第1の弁、41b 第2の弁、41c、41d、41e、41f、41g、41h 弁、41s 蝶番、42 シャッター、42r シャッター受け、43、44 弁、51 接続部、51a 第1の接続部、51b 第2の接続部、100 便器、200 トイレ装置、201 タンク給水路、202 リフィル給水路、300 空気だまり、A 情報取得部、C 制御部、D 駆動部、E、E1、E2 矢印(空気の流れ)、F、F1、F2 矢印(水の流れ)、H0、H1、H2、H3 水位、Hd、He 高さ、K1、K2、K3 空間、L1、L2、L3 距離、R 矢印(駆動部Dの回転方向)、Ra、Rb 範囲、T 矢印(駆動部Dによるトルクの出力の方向)、V 矢印(弁41の移動方向)、W 水、X、Y、Z 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留し、前記水を便器に給水する給水口を有するタンクと、
前記タンクから前記便器に給水される水の給水量を調節する給水量調節部と、
前記給水量調節部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器を洗浄する第1の給水動作と、
前記タンクから前記便器に水を給水して前記便器に封水を充填する第2の給水動作と、
を前記給水量調節部に行わせ、
前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作を制御することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作における給水時間を制御することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記給水量調節部は、前記給水口を開閉する弁を有し、
前記制御部は、前記第1の給水動作に応じて前記第2の給水動作における前記弁の開度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記給水量調節部は、前記給水口の開口面積を調節する機構を有し、
前記制御部は、前記第1の給水動作における給水量に応じて前記第2の給水動作における前記開口面積を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記給水量調節部は、
前記給水口の少なくとも一部を開閉する第1の弁と、
前記給水口の少なくとも一部を開閉する第2の弁と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の弁を開いて前記第1の給水動作を行わせ、その後前記第2の弁を開いて前記第2の給水動作を行わせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記第2の弁は、前記第1の弁の上に設けられ、
前記第1及び第2の弁が閉じた状態から前記第1の弁を開くと、前記第2の弁が押動して、前記給水口に相対的に大きい第1の開口が形成され、
前記第1及び第2の弁が閉じた状態から前記第2の弁を開くと、前記第1の弁は閉じたまま前記第2の弁のみが開き、前記給水口に相対的に小さい第2の開口が形成されることを特徴とする請求項5記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記便器は、
リム孔と、
ジェット孔と、
前記給水口と前記リム孔と前記ジェット孔とに連通する給水流路と、
を有し、
前記制御部は、前記第2の給水動作において前記給水流路に存在する空気が前記ジェット孔から排出されないように給水させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項8】
前記第2の給水動作における流量は、前記第1の給水動作における流量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項9】
前記第2の給水動作における給水時間は、前記第1の給水動作における給水時間よりも長いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のトイレ装置と、
前記便器と、
を備えたことを特徴とする便器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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