説明

トイレ装置

【課題】便座温度や洗浄水温度、洗浄水流量、ノズル位置、温風温度などの調整操作を容易に行なえるようにして、使い勝手の良いトイレ装置を提供する。
【解決手段】使用者は操作手段9により便座制御手段3の出力を調節し、その調節量は衣類識別手段16による衣類情報と関連付けられて衣類別操作記憶手段19に記憶されている。次に使用するときには、衣類識別手段16が使用者の衣類情報を検出し、その衣類情報に関連付けて記憶されている衣類別操作記憶手段19の記憶内容に基づいて衣類別調節手段20が便座制御手段3の出力を調節する。それにより使用者が便座制御手段3の出力を調節したときと同じ衣類を着用して次に使用するときには、手動操作を何もしなくても前回調節した出力と同じ出力を再現できる。したがって使用者の操作の煩わしさを解消することができ、大幅に使い勝手を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座の暖房や肛門などの洗浄、乾燥などの機能を備えたトイレ装置に関するものであり、特に使用者の好みに合わせて設定する調整操作を容易にするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座の暖房や肛門などの洗浄、乾燥などの機能を備えたトイレ装置があり、使用者の操作により、便座の暖房設定温度や洗浄水の温度、流量、洗浄水を吐出するノズル位置、乾燥のための温風温度などを設定することができる。
【0003】
この便座温度や洗浄水温度、洗浄水流量、ノズル位置、温風温度などは毎回使用するたびに予め定めた初期値から設定するか、あるいは前回の設定値を記憶していて前回の設定値を初期値として設定変更するか、一般にはそのどちらかである。
【0004】
前回の設定値を初期値として設定変更するのであれば、同じ使用者が続けて使用するのであれば、ほとんど設定操作をする必要がなく使い勝手が良いのであるが、例えば、家庭用のトイレ装置であれば、家族の複数の人が使用する。そして、使用者ごとに快適感や好みや体型は異なるので、使用者が変わる毎に操作によって便座温度や洗浄水温度、洗浄水流量、ノズル位置、温風温度などの設定を変更しなければならない煩わしい操作が必要になるという課題を有していた。
【0005】
このため、便座で体重を測定し、その測定した体重で使用者を識別し、その使用者の前回の設定値を初期値として設定変更を開始するような構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−125755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、便座で体重を測定することの困難さがある。まず一般に便座に座る姿勢は、足を床に置き便座に臀部を置くものであるが、この場合、便座にかかる加重は、座る姿勢により大きく異なるものである。同じ使用者であっても前かがみになるか、背筋を伸ばすか、後ろにもたれる姿勢をとるかで、便座で測定できる体重はすべて違うことになる。
【0007】
また、精度良く体重を測定しようとすると、使用者は便座に臀部を置くだけで、足を床から上げれば、姿勢に関わらずほぼ一定の体重を測定することができる。しかし、床から足を上げた状態で便座に座ることは極めて不自然な姿勢であり、本来の排便や排尿の目的以外に体重計測のために足を上げるという行為が必要なる。
【0008】
いずれにしても、便座で体重を測定して個人を識別することは、測定誤差による識別間違いを発生させるか、識別正解率を向上させるために測定精度を上げるには使い勝手が悪くなるという課題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、使用者はごく自然に排便、排尿の行為を行なうだけで、便座温度や洗浄水温度、洗浄水流量、ノズル位置、温風温度などの調整操作が容易に行なえ、使い勝手のよいトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のトイレ装置は、便器に設けられた便座本体と、前記便座本体に設けられた各種機能部品を制御する便座制御手段と、使用者の衣類情報を検出し前記使用者の衣類を識別する衣類識別手段と、前記便座制御手段が出力する制御量を前記使用者が手動で調節できる操作手段と、前記衣類識別手段および前記操作手段からの出力を関連付けて記憶する衣類別操作記憶手段と、前記衣類識別手段および前記衣類別操作記憶手段に基づき前記便座制御手段が出力する制御量を調節する衣類別調節手段とを備えた構成としたものである。
【0011】
これによって、使用者は操作手段により便座制御手段の出力を調節し、その調節量は衣類識別手段による衣類情報と関連付けられて衣類別操作記憶手段に記憶されている。次に使用するときには、衣類識別手段が使用者の衣類情報を検出し、その衣類情報に関連付けて記憶されている衣類別操作記憶手段の記憶内容に基づいて衣類別調節手段が便座制御手段の出力を調節する。
【0012】
それにより使用者が便座制御手段の出力を調節したときと同じ衣類を着用して次に使用するときには、手動操作を何もしなくても前回調節した出力と同じ出力を再現できる。したがって使用者の操作の煩わしさを解消することができ、大幅に使い勝手を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトイレ装置は、便座温度や洗浄水温度、洗浄水流量、ノズル位置、温風温度などの調整操作について、使用者は何も手動操作をしなくても前回使用時と同じ状態を再現でき、操作の煩わしさを解消し、大幅に使い勝手を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、便器に設けられた便座本体と、前記便座本体に設けられた各種機能部品を制御する便座制御手段と、使用者の衣類情報を検出し前記使用者の衣類を識別する衣類識別手段と、前記便座制御手段が出力する制御量を前記使用者が手動で調節できる操作手段と、前記衣類識別手段および前記操作手段からの出力を関連付けて記憶する衣類別操作記憶手段と、前記衣類識別手段および前記衣類別操作記憶手段に基づき前記便座制御手段が出力する制御量を調節する衣類別調節手段とを備えたトイレ装置とすることにより、使用者は操作手段により便座制御手段の出力を調節し、その調節量は衣類識別手段による衣類情報と関連付けられて衣類別操作記憶手段に記憶されている。
【0015】
そして、次に使用するときには、衣類識別手段が使用者の衣類情報を検出し、その衣類情報に関連付けて記憶されている衣類別操作記憶手段の記憶内容に基づいて衣類別調節手段が便座制御手段の出力を調節する。これにより使用者が便座制御手段の出力を調節したときと同じ衣類を着用して次に使用するときには、手動操作を何もしなくても前回調節した出力と同じ出力を再現できる。したがって使用者の操作の煩わしさを解消することができ、大幅に使い勝手を向上することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明において、衣類は衣類の情報を記録した非接触ICタグを備え、衣類識別手段は前記非接触ICタグの情報を読み取ることにより衣類を識別することにより、衣類に対して一意に決まる情報を識別することが可能となり、正確に衣類を識別できる。
【0017】
第3の発明は、特に、第2の発明において、非接触ICタグは衣類の情報として少なくとも男女の区別を記録し、衣類識別手段は衣類の男女の区別を識別することにより、初めて着用した衣類であっても、同じ性別の衣類における前回の衣類別操作記憶手段の記憶内容を採用することで、同じ使用者にあてはまる確率が高くなる。また同じ使用者でなくても性別が共通しているので調整操作結果も似ていることが多く、初めての衣類を着用した使用者であっても操作の煩わしさを解消できる。
【0018】
第4の発明は、特に、第2の発明において、非接触ICタグは衣類の情報として少なくとも大きさの情報を記録し、衣類識別手段は衣類の大きさを識別することにより、初めて着用した衣類であっても、同じ大きさの衣類における前回の衣類別操作記憶手段の記憶内容を採用することで、同じ使用者にあてはまる確率が高くなる。また同じ使用者でなくても衣類の大きさが共通しているので、体格が似ているために調整操作結果も似ていることが多く、初めての衣類を着用した使用者であっても操作の煩わしさを解消できる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は便座本体の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は便座本体の温度を調節することにより、使用者ごとに異なる好みの暖房温度に対して、使用する度に温度設定操作する必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0020】
第6の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は洗浄水の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄水の温度を調節することにより、使用者ごとに異なる好みの洗浄水温度に対して、使用する度に温度設定操作する必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0021】
第7の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は洗浄水の流量操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄水の流量を調節することにより、使用者ごとに異なる好みの洗浄水流量に対して、使用する度に流量設定操作する必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0022】
第8の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は洗浄位置の操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄位置を調節することにより、使用者ごとに異なる肛門、局部などの位置に対して、使用する度に位置調整操作する必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0023】
第9の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は洗浄後の乾燥風の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は乾燥風の温度を調節することにより、使用者ごとに異なる好みの温風温度に対して、使用する度に温度設定操作する必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0024】
第10の発明は、特に、第1の発明において、衣類別操作記憶手段は便座本体の使用位置を記憶し、衣類別調節手段は便座の位置を調節することにより、男性であれば便座本体を上げ、女性であれば便座本体を下げるので使用する度に便座本体を上げ下げする必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるトイレ装置を示すものである。
【0027】
図に示すように、便器1には便座本体2が取り付けられている。この便座本体2には便座を暖房する便座暖房機能、肛門などを洗浄する洗浄機能、洗浄後に乾燥するための温風を送風する乾燥機能などの各種機能を実現するための機能部品が組み込まれている(図示せず)。そして、これら各種機能部品は便座制御手段3により制御している。便座制御手段3は、便座温度制御手段4、洗浄水温度制御手段5、洗浄水流量制御手段6、洗浄位置制御手段7、送風温度制御手段8を含むものである。
【0028】
便座温度制御手段4は、便座本体2の温度を設定値になるように制御するものであり、例えば、温度センサからの入力に基づき便座本体2に備えたヒータ(図示せず)を制御する。
【0029】
洗浄水温度制御手段5は、肛門などを洗浄する洗浄水の温度を設定値になるように制御するものであり、例えば、洗浄水のタンクに備えた温度センサからの入力で洗浄水のタンクに備えたヒータ(図示せず)を制御する。
【0030】
洗浄水流量制御手段6は、洗浄水の流量を設定値になるように制御するものであり、例えば、洗浄水のタンクに設けたポンプを設定された周波数で駆動する。
【0031】
洗浄位置制御手段7は、洗浄水の吐出する位置を制御するものであり、例えば、洗浄ノズルの位置をステッピングモータで制御するとして、ステッピングモータに設定されたパルス数を出力する。
【0032】
送風温度制御手段8は、洗浄後の乾燥のために送る温風の温度を設定値になるように制御するものであり、例えば、送風口に備えた温度センサからの入力でヒータを制御するものである。
【0033】
便座制御手段3が出力する制御量を使用者が手動で調節できる操作手段9は、便座制御手段3を制御して、便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度などを自分の好みに合うよう設定できる。操作手段9の操作信号は便座制御手段3に送られ、便座制御手段3は操作手段9での設定に合わせるように、便座温度制御手段4、洗浄水温度制御手段5、洗浄水流量制御手段6、洗浄位置制御手段7、送風温度制御手段8などで各種機能部品を制御する。
【0034】
操作手段9としてのリモコンの具体例を図2に示す。操作手段(リモコン)9には便座温度調節ボタン10、洗浄水温度調節ボタン11、洗浄水流量調節ボタン12、洗浄位置調節ボタン13、温風温度調節ボタン14を含んでいて、それぞれは高低または前後左右、あるいは強弱を段階的に変更する設定ボタンである。また、入/切ボタン15は洗浄の開始と停止を切替えるボタンであり、このボタン操作により便座制御手段3は洗浄水の吐出と停止を制御する。
【0035】
次に、図1に戻り、使用者の衣類情報を検出し使用者の衣類を識別する衣類識別手段16について説明する。
【0036】
衣類識別手段16は非接触ICタグリーダである。そして、衣類17には非接触ICタグ18が縫い付けられている。非接触ICタグ18は電池を内蔵しないが、衣類識別手段(非接触ICタグリーダ)16が発生させる電磁波領域内に入ると、電磁波により励起され、非接触ICタグ18に電源が供給される。衣類識別手段16が発生する電磁波にはコマンドが含まれているので、そのコマンドを非接触ICタグ18が受け取ると、個別IDを含むデータを衣類識別手段16に返答するというものである。そして、この個別IDが衣類17を一意に決定できるものであれば、衣類識別手段16で衣類を識別することができる。
【0037】
図3に非接触ICタグ18の例を示す。非接触ICタグ18は、例えば、図に示すようにプラスチックなどの基材180にコイルパターン181を形成し、コイルと容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を受信して送信することができる。図3の場合、コイルパターン181は導通部材182により基材180の裏面でジャンピング回路を形成してコイル接続端子183によりICチップ184の裏面のバンプに接続している。ICチップ184は容量素子を内蔵している。このような非接触ICタグ18は、基材180に銅箔などの金属箔を設けて、金属箔をパターンエッチングして形成することが多い。衣類識別手段16との交信には一般には135kHz、13.56MHz、2.45GHzの周波数帯を使用する。
【0038】
衣類別操作記憶手段19は、衣類識別手段16で読み取った非接触ICタグ18より送信された個別IDと、使用者が操作手段9を使って調節した便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度などの出力を関連付けて記憶する。そして、衣類別調節手段20は、前記衣類識別手段16および前記衣類別操作記憶手段19に基づき前記便座制御手段3が出力する制御量を調節する。すなわち、衣類識別手段16で非接触ICタグ18の個別IDを読み取った時に同じ個別IDに関連付けられた便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度があれば、その設定値を便座制御手段3に出力し、便座制御手段3はその設定値となるように便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度を制御するものである。
【0039】
この構成によって、使用者がこのトイレ装置を使用する際には、まず初めに自分の好みに合うように、操作手段9を用いて便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度を設定する。そして、次に使用する際に同じ衣類17を着用していれば、前回設定した設定値が採用されるので、煩わしい設定操作が不要になる。また、便器1を使用する家族であっても衣類は別々のものを着用するのが一般的であり、家族一人一人に別々の設定値を対応できることとなる。
【0040】
また、一般に、衣類は下着や靴下から上着まで複数着用するものであり、それぞれに非接触ICタグ18が縫い込まれていれば、その全ての個別IDを読み込むことができて、そのすべての各個別IDに操作手段9での設定値を衣類別操作記憶手段19が記憶しているので、複数の衣類のうちどれかが以前に着用したものがあればそのときの設定値を再現できることになり、以前の記憶がなく採用する設定値がないということは起こる可能性が非常に少ない。
【0041】
一般に、衣類は紳士用、婦人用または男児用、女児用の性別の区別がある。また、Lサイズ、Mサイズ、Sサイズなどや、子供用であれば、例えば、120cm用など大きさの区別がされている。個別IDの中にこの性別のコードと大きさのコードを埋め込んでいる。例えば、個別IDの最上位の1桁は性別のコードで、2桁目から4桁目までの3桁を大きさのコード、そして、5桁目より下位の桁を使って衣類を一意に決定できる番号を付けている。
【0042】
衣類別操作記憶手段19では、衣類識別手段16が読み取った複数の非接触ICタグ18の個別IDがいずれも記憶されているものでなかった場合には、記憶されている個別IDのうち性別と大きさの一致する情報を抽出し、その個別IDに関連付けて記憶している各種設定値を衣類別調節手段20に出力する。この構成で、使用者が下着から上着まですべて新品の衣類を着用したような場合でも、例えば、「女性でMサイズ」など、過去に着用した衣類と性別と大きさが共通することが多く、その設定値を採用することで過去の設定を再現できる。
【0043】
使用する人数が限られている家庭用途の場合などでは、性別と大きさの両方が一致しなくても、性別が一致するだけでも使用者を特定できる場合もあり、衣類識別手段16が読み取った複数の非接触ICタグ18の個別IDがいずれも記憶されているものでなく、しかも性別と大きさが一致するものがなかった場合は、性別だけが一致する情報を抽出し、その個別IDに関連付けて記憶している各種設定値を衣類別調節手段20に出力する。
【0044】
次に、本発明のトイレ装置の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
図は使用者が操作手段9の入/切ボタン15を押したところからの動作の流れである。まず、ステップS1において衣類識別手段16は非接触ICタグ18から個別IDを読み込み、一時的にバッファに記憶する。通常、使用者は複数の衣類を着用しているので複数の個別IDを受信するものであり、受信したIDはすべて記憶する。
【0046】
次に、ステップS2において、衣類別操作記憶手段19は読み取った個別IDが登録されているかどうかを調べ、登録されていればステップS5に進む。バッファに記憶したすべての受信した個別IDについて登録されているかどうかを調べ、どれも登録されていなければステップS3に進む。
【0047】
ステップS3では衣類別操作記憶手段19は読み取った個別IDと性別、大きさのコードが一致する個別IDが登録されているかどうかを調べ、登録されていればステップS5に進み、バッファに記憶されたすべての個別IDについて性別、大きさのコードが一致する個別IDがなければステップS4に進む。
【0048】
ステップS4では衣類別操作記憶手段19は読み取った個別IDと性別のコードが一致する個別IDが登録されているかどうかを調べ、登録されていればステップS5に進み、バッファに記憶されたすべての個別IDについて性別のコードが一致する個別IDがなければステップS6に進む。
【0049】
ステップS5では衣類別操作記憶手段19は該当する登録された個別IDに関連付けて記憶されている便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度の調節値を抽出しステップS7に進む。ここで該当する個別IDとは、ステップS2から進んできた場合には衣類識別手段16で読み取った個別ID、ステップS3から進んできた場合には衣類識別手段16で読み取った個別IDと性別、大きさについて一致する登録されている個別ID、ステップS4から進んできた場合には衣類識別手段16で読み取った個別IDと性別のみが一致する登録されている個別IDのことである。
【0050】
一方、衣類識別手段16で読み取った個別IDがすべて、登録されている個別IDと性別さえも一致しなかった場合には、ステップS6で予め定めた初期値を調節値としてステップS7に進む。初期値は複数人の好みの平均値をとるなど、標準的な調節値であり、製造段階から予め衣類別操作記憶手段19に組み込まれている。
【0051】
次に、ステップS7において、衣類別調節手段20は衣類別操作記憶手段19から入力する調節値に従い、便座制御手段3を調節し、便座制御手段3は各機能部品を制御する。これで使用者は入/切ボタン15を押してから最初の状態として、前回このトイレ装置を使用したときの各設定が再現された状態になる。そして、次にステップS8に進む。
【0052】
ステップS8では更に使用者の操作があるかどうかを調べる。操作があればステップS9に進む一方、操作がなければステップS10に進む。ステップS9では使用者の操作に合わせて調節値を更新してステップS7に戻り、便座制御手段3を調節して便座制御手段3が各機能部品を制御する。使用者からの操作があればこの処理を繰り返すことになる。
【0053】
ステップS10では使用者の「切」操作があるか、すなわち、再度、入/切ボタン15が押されたかどうかを調べる。操作があればステップS11に進む一方、なければステップS8に戻り使用者の調節操作があるかどうかを調べるものである。そして、ステップS11では、最後の調節値をバッファに記憶しているすべての個別IDに関連付けて衣類別操作記憶手段19に登録する。この登録処理を行うことで、次に同じ衣類を着用してこのトイレ装置を使用する際には最後の調節した状態を再現できることになる。
【0054】
本実施の形態において、図4のフローチャートでは、使用者が入/切ボタン15を操作してから非接触ICタグ18の発信を読み取る動作として説明したが、衣類識別手段16が常に電磁波を発生させておけば、非接触ICタグ18が縫い込まれた衣類17が近付くと個別IDが受信できるので、それを起点として動作を開始しても良い。この場合には常に電磁波を発生させておく電力消費が必要となるものの、使用者の入/切ボタン15の操作も省略でき使い勝手が向上する。
【0055】
また、本実施の形態において、非接触ICタグ18より読み取る個別IDに関連付けて記憶する設定値を便座温度、洗浄水温度、洗浄水流量、洗浄位置、温風温度としたが、これに限定するものではなく、例えば、洗浄水の流量に強弱の揺らぎを与えるかどうか、その揺らぎ幅や、洗浄位置をピンポイントの点にするか一定の領域に広げるか、その領域の大きさ、送風量やその揺らぎ、便座に振動を与えるなど、いろいろな便座機能の拡張が考えられる。それら個人の好みにより設定が異なるような機能については、同様に展開できるものである。
【0056】
たとえば、図示しないが、衣類別操作記憶手段は便座本体の使用位置を記憶し、衣類別調節手段は便座の位置を調節することにより、男性であれば便座本体を上げ、女性であれば便座本体を下げるので使用する度に便座本体を上げ下げする必要がなく、操作の煩わしさを解消できる。もちろん便座本体を下げて便座に座って小便する男性にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかるトイレ装置は、使用者が好みに合わせて個別に設定できる各種機能の調節値を使用者が着用していた衣類と関連付けて記憶しているので、同じ衣類を着用した使用者が使用する際には以前に設定した各種機能の調節値を再現できるので、使用するごとに調節する手間は不要となり、便座の暖房機能、肛門や局部の洗浄機能、洗浄後の乾燥機能に適用できるほか、揺らぎや振動などの機能拡張にも適用できる。
【0058】
また、衣類のほかに、ベルトやメガネ、指輪、腕時計、携帯電話、財布など日常携帯する物品に非接触ICタグを備えればさらに効果は高い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトイレ装置の構成を説明する説明図
【図2】同トイレ装置における操作手段の説明図
【図3】同トイレ装置における非接触ICタグの説明図
【図4】同トイレ装置の動作の流れを説明するフローチャート
【符号の説明】
【0060】
2 便座本体
3 便座制御手段
9 操作手段
16 衣類識別手段
18 非接触ICタグ
19 衣類別操作記憶手段
20 衣類別調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に設けられた便座本体と、前記便座本体に設けられた各種機能部品を制御する便座制御手段と、使用者の衣類情報を検出し前記使用者の衣類を識別する衣類識別手段と、前記便座制御手段が出力する制御量を前記使用者が手動で調節できる操作手段と、前記衣類識別手段および前記操作手段からの出力を関連付けて記憶する衣類別操作記憶手段と、前記衣類識別手段および前記衣類別操作記憶手段に基づき前記便座制御手段が出力する制御量を調節する衣類別調節手段とを備えたトイレ装置。
【請求項2】
衣類は衣類の情報を記録した非接触ICタグを備え、衣類識別手段は前記非接触ICタグの情報を読み取ることにより衣類を識別する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
非接触ICタグは衣類の情報として少なくとも男女の区別を記録し、衣類識別手段は衣類の男女の区別を識別する請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
非接触ICタグは衣類の情報として少なくとも大きさの情報を記録し、衣類識別手段は衣類の大きさを識別する請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項5】
衣類別操作記憶手段は便座本体の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は便座本体の温度を調節する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項6】
衣類別操作記憶手段は洗浄水の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄水の温度を調節する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項7】
衣類別操作記憶手段は洗浄水の流量操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄水の流量を調節する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項8】
衣類別操作記憶手段は洗浄位置の操作を記憶し、衣類別調節手段は洗浄位置を調節する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項9】
衣類別操作記憶手段は洗浄後の乾燥風の温度操作を記憶し、衣類別調節手段は乾燥風の温度を調節する請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項10】
衣類別操作記憶手段は便座本体の使用位置を記憶し、衣類別調節手段は便座本体の使用位置を調節する請求項1に記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−132126(P2006−132126A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320214(P2004−320214)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】