説明

トイレ装置

【課題】便器ボウルのスカートを直接振動させてトイレ空間に音を発生させること。音質向上を図ること。外観上の見栄えを良くすること。
【解決手段】便器ボウル10の下部外周側を全周に亘って覆う樹脂製のスカート2の内部空間2cに加振器3を収納すると共に、樹脂製のスカート2を直接振動させてトイレ空間に音を発生させるように加振器3の振動部3aを該スカート2の内面2aに取り付けたトイレ装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関し、詳しくは便器ボウルを覆うスカートの内部空間に加振器を設置したトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器ボウルの下部外周側をスカートで覆うようにした洋式のトイレ装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、現在のトイレ空間において、音楽を聞いたり或いは使用時の排水擬似音等の音を発生させたりするためのスピーカ装置20を設置する場合が多い。
【0004】
本発明者らは本発明に至る過程で、スピーカ装置20の取付部位として、図4(a)のようにトイレ装置1のスカート2の前部両側にスピーカ装置20を取り付ける前側設置構造と、図4(b)のようにスカート2の後面両側にスピーカ装置20を取り付ける後側設置構造とを開発した。
【0005】
しかしながらスピーカ装置20は音を放射するための開口部を必要とするため、スカート2に設置する場合は、スピーカ装置20の発音部が露出して見栄えが低下するという課題があり、またスカート2の開口部を防水構造にする必要があり、コストが高くつくという課題があった。
【非特許文献1】松下電工株式会社、カタログ「アラウーノ」、2006年11月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、便器ボウルのスカートを直接振動させてトイレ空間に音を発生させることができ、さらに音質向上を図ることができると共に、外観上の見栄えを良くできる加振器を備えたトイレ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、便器ボウル10の下部外周側を全周に亘って覆う樹脂製のスカート2の内部空間2cに加振器3を収納すると共に、樹脂製のスカート2を直接振動させてトイレ空間に音を発生させるように加振器3の振動部3aを該スカート2の内面2aに取り付けてなることを特徴としている。
【0008】
このような構成とすることで、樹脂製のスカート2の内部空間2cに加振器3を設置して、スカート2を音声発信板として機能させ、スカート2の内部空間2cをバックキャビティとして機能させることにより、スカート2を直接振動させてトイレ空間に音楽や、使用時の音消しとして排水擬似音等の音を発生させることができるようになり、しかも加振器3がスカート2表面に露出しないため、外観上の見栄えが良くなると共に、外観を考慮して加振器3を小型化する必要がなく、そのうえ加振器3を防水構造とする必要もなくなる。
【0009】
また、上記スカート2の内部空間2cの左右両側に複数の加振器3を設置するのが好ましく、この場合、左右複数の加振器3によってステレオ感を増大させることができる。
【0010】
また、上記スカート2における加振器3の取付部位に、加振器3の振動部3aの形状に応じた平面部2bを設けるのが好ましく、この場合、平面部2bに対して加振器3の振動部3aを密着させることが容易となり、加振器3の振動がスカート2に伝播しやすくなると共に、加振器3の設置角度も決まりやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、便器ボウルの下部外周側を覆う樹脂製のスカートを直接振動させてトイレ空間に音楽や、使用時の音消しとして排水擬似音等の音を発生させることができると共に、加振器がスカート表面に露出しないため、外観上の見栄えが良くなり、意匠性を向上させることができると共に、外観を考慮して加振器を小型化する必要がないため、音質を向上させることができ、そのうえ加振器を防水構造とする必要がないためコストを低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0013】
図1(a)に示す洋式のトイレ装置1において、便器ボウル10の上端部のリム面に便座11が設置され、便座11の上面が便蓋12で開閉自在に覆われると共に、便器ボウル10の下部外周側はその全周に亘ってスカート2にて覆われている。
【0014】
スカート2は、例えば合成樹脂材料で形成されている。また、本例のスカート2の前側壁2dは上端から下端にいくほど後方に凹むように傾斜しており、例えば、座って用を足す際に着衣が便器ボウル10のリムに触れて濡れたり汚れたりするのを防止でき、さらに、例えば、男性の尿が前側壁2dにかかるのを防止できるようにしている。
【0015】
ここで、本発明においては、図1(b)(c)に示すように、上記樹脂製のスカート2の内部空間2cに加振器3を設置し、この樹脂製のスカート2の内面2aに加振器3の振動部3aを取り付けることで、加振器3によりスカート2を直接振動させてトイレ空間に音を発生させるように構成している。
【0016】
本例の加振器3は、スカート2の傾斜した前側壁2dの内面2aに取り付けられており、これにより加振器3の向きは図1(c)の矢印Bで示すように斜め下向きとされる。また本例では前側壁2dの左右2箇所に加振器3を設置している。
【0017】
なお加振器3としては、例えば、電磁誘導を利用したダイナミック型アクチュエータ、超磁歪材料を用いて広帯域で超音波を発生する超磁歪型アクチュエータ、圧電素子が取り付けられた音声発信板をケース内に設けた圧電型アクチュエータ等、スピーカーの原理を応用したものであればよく、特に限定されない。
【0018】
しかして、便器ボウル10を覆う樹脂製のスカート2の内部空間2cに加振器3を設置して、スカート2を音声発信板として機能させ、スカート2の内部空間2cをバックキャビティとして機能させるようにしたことにより、トイレ空間に音楽や、使用時の音消しとして排水擬似音等の音を効率よく発生させることができる。しかも加振器3がスカート2表面に露出しないため、外観上の見栄えが良く意匠性を向上させることができると共に、外観を考慮して加振器3を小型化する必要がないため、音質を向上させることができ、そのうえ加振器3を防水構造とする必要がないためコストを低減できるものである。この結果、トイレ装置1の見栄えを良くしながら、音質向上と低コスト化を図ることが可能となる。
【0019】
また本例の加振器3は、スカート2の前側壁2dの傾斜した内面2aに対して図1(c)の矢印Bのように斜め下向きにして取り付けられているため、トイレの使用者の足元から音が発生すると共に、加振器3からスカート2を伝播して発せられた音は床面4に当たって反射してトイレの空間全体に広がりやすくなって反響音のバランスに優れたものとなる。そのうえ2個の加振器3を左右に配置しているため、左右のバランスがよく、ステレオ感を増大させることができる利点もある。
【0020】
図2は、上記加振器3を取り付けるスカート2の取付部位の形状の一例を示している。図2(a)において、スカート2の内面2aは曲面形状をしているため、ここに加振器3を設置する場合は振動部3aとスカート2の内面2aとの間に隙間Sが生じるようになり、振動が効率的に伝播しないという問題が想定される。
【0021】
そこで、スカート2の内面2aに加振器3の振動部3aと隙間なく密着可能な平面部2bを設けるのが望ましい。この平面部2bの形状は加振器3の振動部3aよりも大きな面積を有している。またこのとき、振動の伝播性能とスカート2の成形性とを考慮して、図2(b)又は図2(c)に示す平面部2bを形成する。
【0022】
図2(b)は凹型の平面部2bの一例であり、スカート2の内面2aの一部(加振器3の取付部位)から凹ませた平面部2bとしたものであり、この場合、加振器3の振動部3aの直前のスカート2に他の部分の肉厚Dよりも薄い最薄肉部d(<D)が形成可能となり、振動が伝播しやすくなる。なお、最薄肉部dの厚みは3〜5mm程度としてもよい。一方、図2(c)は凸型の平面部2bの一例であり、スカート2の内面2aの一部を突出させて平面部2bとしたものであり、この場合、平面部2bの厚みが肉厚となるため衝撃等の強度に優れるものとなる。ここで、スカート2は樹脂製なので、陶器の場合と異なり、図2(b)又は(c)の平面部2bの形成が容易となる。
【0023】
図3は上記加振器3の取り付け構造の一例を示している。図3(a)は、スカート2にネジ7を固定するためのネジ固定部となる突出部6bを設け、固定部材6aにより加振器3を背後から覆い、ネジ7で押し付け固定を行なう。加振器3と固定部材6aとの隙間には、加振器3の振動によるビビリ音抑止のための緩衝部材8を設置してもよい。固定部材6aはスカート2の取付部位に向けて加振器3を押し付けることが可能な材料、例えば金属或いは硬質樹脂などの剛性材により形成されており、またこのとき加振器3の通電線を通すための通線口(図示せず)を有する構造とするのが望ましい。固定部材6aの固定用フランジ6cをネジ7にて突出部6bにネジ固定することで、加振器3の振動部3aがスカート2に押し付け固定されるようになる。これにより、スカート2に対する加振器3の位置決め精度と機械的強度を向上させることができる。
【0024】
図3(b)は、加振器3の振動部3aを接着剤9にてスカート2の内面2aに接合すると共に係合手段5により係合させた場合の一例を示している。本例では、加振器3と係合することが可能な係合部材5aのベース5bをスカート2の内面2aに接着固定すると共に、係合部材5aに設けた爪5cを加振器3の両端に設けた凹部5dに圧入嵌合により係合させるものである。この場合、係合部材5aのベース5bを薄肉にすることで振動の伝播性を良好に保つことが可能となる。なお圧入嵌合方式以外に、例えば、ネジのように加振器3を回して係合部材5aの爪5cに対してネジリ嵌合させる方式であってもよい。しかして、接着剤9と係合部材5aとを組み合わせたことにより、スカート2に対する加振器3の取り付け強度を向上させることができる。なお、加振器3を直接、接着剤9にてスカート2の平面部2bに接着固定してもよい。この場合、スカート2表面に露出しない加振器3に対して外部から力がかかることがないため、接着剤9による接合のみでも十分な取り付け強度を確保できるものとなる。
【0025】
なお、前記図1〜図3の各実施形態では、加振器3の取付部位としてスカート2の前側壁2dの内面2aを例示したが、勿論これに限らず、スカート2の左右両側壁の各内面2a、或いは、後側壁の内面2aであってもよい。また加振器3の数も2個に限らず、1個或いは3個以上であってもよく、加振器3の取り付け位置及び数は適宜設計変更自在である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は樹脂製のスカートの内面に加振器を設置したトイレ装置の斜視図であり、(b)はスカートの正面図であり、(c)は(b)のA−A線断面図である。
【図2】同上の加振器の設置状態の説明図であり、(a)はスカートの内面の曲面部分に加振器を設置した状態の断面図、(b)(c)はスカートの内面に設けた平面部に加振器を設置した状態の断面図である。
【図3】同上の加振器の取り付け状態の説明図であり、(a)は加振器の振動部をネジでスカートの平面部に対して固定する場合の説明図、(b)は同上の加振器の振動部を係合部材にて係合させ且つ係合部材を接着剤にてスカートの内面に接合した場合の説明図である。
【図4】(a)(b)は参考例の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 トイレ装置
2 スカート
2a 内面
2b 平面部
2c 内部空間
3 加振器
3a 振動部
5 係合部材
7 ネジ
9 接着剤
10 便器ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器ボウルの下部外周側を全周に亘って覆う樹脂製のスカートの内部空間に加振器を収納すると共に、樹脂製のスカートを直接振動させてトイレ空間に音を発生させるように加振器の振動部を該スカートの内面に取り付けてなることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
上記スカートの内部空間の左右両側に複数の加振器を設置したことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
上記スカートにおける加振器の取付部位に、加振器の振動部の形状に応じた平面部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127391(P2009−127391A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306615(P2007−306615)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】