説明

トイレ装置

【課題】安全性をより確保することができる昇降装置を備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ボウルを有する便器と、前記ボウルよりも後方における前記便器の上面に設置され機能部品を内蔵するケーシングと、前記ケーシングに回動可能に取り付けられた便座と、前記便器から前記ケーシングを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置により前記ケーシングが前記便器から上昇した状態において、前記ケーシングが上昇していることを報知する報知手段と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰かけた使用者の「おしり」などを水で洗浄可能としたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ装置のなかには、例えば、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄する局部洗浄機能や、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能などを有する局部洗浄装置が設けられたものがある。このような局部洗浄装置が有する各種機能の機能部品は、一般的に、洋式腰掛便器(以下、単に「便器」と称する)の後方上部に設置されたケーシングに内蔵されている。このとき、局部洗浄装置のケーシングと、便器の上面と、の間の隙間に汚水が浸入し、その隙間から異臭が発生する場合がある。
【0003】
そこで、洋式便器の後部上面に装着される便器装着体の下面と、洋式便器の上面と、の間に清掃等に十分な隙間を形成するため、便器装着体を洋式便器の上面から引き離すように持ち上げるリフト機構がある(特許文献1)。特許文献1に記載されたリフト機構は、自由端側を常時互いに離れ出させる向きに付勢手段により付勢される一対のアーム体を有する。そして、清掃時には、リフト機構は、アーム体の自由端を開くことにより便器装着体を持ち上げ、便器装着体の上昇を保持する。これにより、便器装着体の下面と、洋式便器の上面と、の間に清掃等に十分な隙間を形成することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたリフト機構では、便器装着体を下方に押し下げる方向に力がかかると、リフト機構による便器装着体の上昇状態が維持されず、その便器装着体は下降するおそれがある。つまり、特許文献1に記載されたリフト機構では、安全性に関してさらなる改善の余地がある。そこで、安全性を確保するための1つの方法として、便器装着体の上昇時に一対のアーム体を90度以上回動させ、便器装着体を下方に押し下げる方向に力がかかっても便器装着体が下降しないようにする方法が挙げられる。
【0005】
しかしながら、リフト機構がそのような構造を有する場合には、例えば、便器装着体が上昇した状態において、使用者などが便器装着体に設けられた便座を下ろして着座すると、リフト機構に大きな荷重がかかる。そうすると、リフト機構や便器装着体や便座などが破損するおそれがある。その際、破損により着座時のバランスを失う可能性があり、使用者の安全性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−252221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、安全性をより確保することができる昇降装置を備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ボウルを有する便器と、前記ボウルよりも後方における前記便器の上面に設置され機能部品を内蔵するケーシングと、前記ケーシングに回動可能に取り付けられた便座と、前記便器から前記ケーシングを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置により前記ケーシングが前記便器から上昇した状態において、前記ケーシングが上昇していることを報知する報知手段と、を備えたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、報知手段は、ケーシングが便器から上昇した状態であることを音や表示などにより報知し警告するため、使用者は、ケーシングが上昇状態であることに気付くことができる。そのため、ケーシングが上昇した状態において、使用者が便座を下ろして着座することを抑制することができる。これにより、昇降装置やケーシングや便座などが破損することを抑制することができる。また、使用者がバランスを崩すことを抑制することができ、安全性をより確保することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記報知手段は、前記ケーシングが前記便器から上昇した状態において、前記便座が閉じると、前記ケーシングが上昇していることを報知することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、報知手段は、ケーシングが便器から上昇し、便座が閉じた際に報知するため、使用者が便座に着座する前に報知し警告することができる。そのため、使用者が便座を下ろして着座することを抑制することができる。これにより、昇降装置やケーシングや便座などが破損することをより確実に抑制することができる。
【0010】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記ケーシングの位置を検知する位置検知手段と、前記便座の開閉状況を検知する便座開閉検知手段と、前記位置検知手段および前記便座開閉検知手段からの出力に基づいて前記ケーシングが上昇していることを前記報知手段に報知させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、制御部は、ケーシングの位置を検知する位置検知手段と、便座の開閉状況を検知する開閉検知手段と、の出力に基づいて報知の有無を決定するため、使用者が便座に着座する前に報知し警告することができる。そのため、使用者が便座を下ろして着座することを抑制することができる。これにより、昇降装置やケーシングや便座などが破損することをより確実に抑制することができる。
【0011】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記報知手段は、前記ケーシングが前記便器から上昇した状態が所定時間を経過すると、前記ケーシングが上昇していることを音声により報知することを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ケーシングが便器から上昇した状態が所定時間を経過すると、報知手段は、ケーシングが便器から上昇した状態であることを音声により報知する。そのため、使用者がケーシングを下降させることを忘れてトイレ室から退室した場合でも、報知手段は、その操作忘れを使用者に気付かせることができる。つまり、報知手段は、ケーシングを下降させることを使用者に促すことができる。そのため、使用者は、トイレ室に戻り、トイレ装置を使用可能な状態に戻すことができる。
【0012】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記ケーシングの位置を検知する位置検知手段と、前記位置検知手段により検知された前記ケーシングの上昇状態が所定時間を経過すると、前記ケーシングが上昇していることを前記報知手段に報知させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、制御部は、ケーシングの位置を検知する位置検知手段がケーシングの上昇状態を検知した時間に基づいて音声による報知の有無を決定する。そのため、使用者がケーシングを下降させることを忘れてトイレ室から退室した場合でも、報知手段は、その操作忘れを使用者に気付かせることができる。つまり、報知手段は、ケーシングを下降させることを使用者に促すことができる。そのため、使用者は、トイレ室に戻り、トイレ装置を使用可能な状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、安全性をより確保することができる昇降装置を備えたトイレ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかるトイレ装置の主構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態のケーシングを下側から眺めた斜視模式図である。
【図4】ケーシングの前方部が上昇した状態を側方から眺めた断面模式図である。
【図5】本実施形態のケースプレートを下側から眺めた斜視模式図である。
【図6】本実施形態の位置検知手段の構造を説明するための断面模式図である。
【図7】本実施形態の位置検知手段を上方から眺めた斜視模式図である。
【図8】本実施形態の位置検知手段を下方から眺めた斜視模式図である。
【図9】本実施形態のホールICカバーの取付構造を表す斜視模式図である。
【図10】位置検知手段の動作と制御部の判断との関係を説明するための断面模式図である。
【図11】ホールIC基板の検知範囲およびマグネットの回動軌跡を表す断面模式図である。
【図12】本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
【図13】本実施形態にかかるトイレ装置の動作の他の具体例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかるトイレ装置の主構成を表すブロック図である。
なお、図1(a)は、本実施形態にかかるトイレ装置においてハンドルを引き出した状態を表す斜視模式図であり、図1(b)は、本実施形態にかかるトイレ装置においてハンドルを回動させた状態を表す斜視模式図である。
【0016】
本実施形態にかかるトイレ装置は、前部にボウル810を有する便器800と、便器800の上部に設置された局部洗浄装置100と、を備える。局部洗浄装置100は、ボウル810の後方上部に設置されたケーシング200と、そのケーシング200に対して開閉自在に軸支された便座300および便蓋400と、を有する。
【0017】
ケーシング200の内部には、便座300に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する局部洗浄機能部250が内蔵されている。また、ケーシング200の内部には、便座300に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる乾燥装置260と、便器800のボウル810内の空気を吸い込み、フィルタや触媒などを介して臭気成分を低減させる脱臭装置270と、が内蔵されている。またさらに、ケーシング200の内部には、局部洗浄機能部250や便器洗浄装置280などの動作を制御する制御部210が内蔵されている。便器800のボウル810の後方には、ボウル810を洗浄する便器洗浄装置280が設けられている。
【0018】
また、便器800の後方側部には、パネル830が設けられている。これによれば、パネル830は、便器800の側面や適宜設けられた配管などを覆い隠すことができるため、意匠性を確保することができる。なお、パネル830は、便器800と一体的に形成されていてもよい。
【0019】
ケーシング200の下部には、図1(a)および図1(b)に表したように、ハンドル540が設けられている。使用者は、例えば手などを利用することにより、図1(a)に表した矢印A1のように、ハンドル540を右側方に引き出すことができる。そしてさらに、使用者は、図1(b)に表した矢印A2のように、その引き出したハンドル540を回動させることができる。そうすると、ケーシング200の前方部は、図1(b)に表した矢印A3のように、ケーシング200の後方部を中心として回動し、便器800の上面820から上昇して離間できる。
【0020】
そうすると、図1(b)に表したように、ハンドル540を矢印A2の方向に回動させる前、すなわちケーシング200の前方部が上昇する前よりも大きな隙間が、ケーシング200と、便器800の上面820と、の間において生ずる。これによれば、使用者は、ケーシング200と、便器800の上面820と、の間の隙間から清掃用具や手などを入れることにより、その隙間の部分や、ケーシング200の下面に設けられたパッキン205などを容易に清掃することができる。なお、パッキン205は、ケーシング200が下降しているときに、ケーシング200と便器800との間への汚水浸入を防止することができる。
【0021】
また、ケーシング200と、便器800の上面820と、の間の隙間に汚れやゴミが溜まったり、パッキン205に汚れが付着したままの状態となることを抑制することができる。そのため、便器800の上面820との間の隙間や、パッキン205から異臭が発生することを抑制することができる。
【0022】
ここで、例えば、清掃者が清掃後にハンドル540を回動させることを忘れ、ケーシング200を下降させることを忘れると、ケーシング200は、便器800の上面820から上昇した状態で放置される。そうすると、トイレ室に入室してきた清掃者以外の人は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇していることに気付かず、便座300を下ろして着座するおそれがある。あるいは、清掃者自身は、ケーシング200を便器800の上面820から上昇させたことを忘れ、便座300を下ろして着座するおそれがある。
【0023】
そうすると、後に詳述するが、ケーシング200の前方部を便器800の上面820から上昇させ離間させる昇降装置500(図3参照)に大きな荷重がかかり、昇降装置500やケーシング200や便座300などが破損するおそれがある。あるいは、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態において、そのケーシング200に軸支された便座300に使用者が着座すると、便器800の上面820から浮いていた便座300の位置が、昇降装置500やケーシング200や便座300などの破損によって急激に変化するおそれがある。これにより、使用者は、バランスを崩すおそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態にかかるトイレ装置は、図2に表したように、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知可能な報知手段240を備える。また、本実施形態にかかるトイレ装置は、ケーシング200の位置を検知する位置検知手段600と、便座300の開閉状況を検知する便座開閉検知手段230と、を備える。
【0025】
報知手段240は、ケーシング200に内蔵されていてよいし、例えばトイレ室の壁面などに設置された操作部(リモコン)700に内蔵されていてもよい。また、図2に表したブロック図では、報知方法が音声(ブザー)である場合を例示しているが、これだけに限定されず、報知手段240の報知方法は、光や表示であってもよい。
便座開閉検知手段230としては、例えば、ホールICまたはマイクロスイッチなどを用いることができる。そのため、便座開閉検知手段230は、ケーシング200に内蔵されていることに限定されず、便座300のヒンジ部やケーシング200の外部に設けられていてもよい。つまり、便座開閉検知手段230は、便座300の開閉を検知できればよい。
位置検知手段600については、後に詳述する。
【0026】
そして、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態において、便座300が閉じると、報知手段240は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知する。より具体的には、位置検知手段600がケーシング200の上昇状態を検知している場合において、便座開閉検知手段230が便座の閉止を検知すると、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知手段240に報知させる。つまり、制御部210は、位置検知手段600および便座開閉検知手段230からの出力信号に基づいて、便座300を下ろして着座可能となったときにケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知手段240に報知させる制御信号を出力する。
【0027】
あるいは、報知手段240は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態が所定時間を経過すると、ブザーなどの音声により報知する。より具体的には、位置検知手段600により検知されたケーシング200の上昇状態が所定時間を経過すると、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知手段240に報知させる。
【0028】
これらによれば、報知手段240は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知し警告するため、使用者は、ケーシング200が上昇状態であることに気付くことができる。そのため、ケーシング200が上昇した状態において、使用者が便座300を下ろして着座することを抑制することができる。これにより、昇降装置500やケーシング200や便座300などが破損することを抑制することができる。また、使用者がバランスを崩すことを抑制することができ、安全性をより確保することができる。
【0029】
なお、制御部210が報知手段240に報知させるタイミングは、これらだけに限定されるわけではない。例えば、そのタイミングは、位置検知手段600がケーシング200の上昇状態を検知している場合において、使用者の操作により操作部700が便座300を閉じる信号を出力し、制御部210が操作部700からその出力信号を受信したときであってもよい。これによっても、前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0030】
次に、ケーシング200を上昇させる機構および動作について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図3は、本実施形態のケーシングを下側から眺めた斜視模式図である。
また、図4は、ケーシングの前方部が上昇した状態を側方から眺めた断面模式図である。
なお、図3(a)は、ハンドル540を回動させる前の状態を表しており、図3(b)は、ハンドル540を回動させた後の状態を表している。
また、図4は、図1(b)に表したD−D断面図である。
【0031】
図3(a)および図3(b)に表したように、ケーシング200は、ケースカバー201と、ケースプレート202と、を有する。局部洗浄機能部250や乾燥装置260や脱臭装置270などは、ケースプレート202に適宜載置され、その上方をケースカバー201により覆われている。ケースプレート202の下側には、ケーシング200の位置を検知する位置検知手段600が設けられている。この位置検知手段600については、後に詳述する。
【0032】
ケースプレート202の下面には、図3(a)および図3(b)に表したように、便器800のボウル810の形状に略沿うように直線部分や湾曲部分などを有するパッキン205が付設されている。つまり、パッキン205は、ケースプレート202の下面におけるボウル810側の前端部に付設されている。パッキン205は、例えばゴムなどの弾性を有する材料により形成されている。そのため、ケーシング200が便器800の上面820に設置された際には、パッキン205は、圧縮変形し便器800の上面820に密着する。そのため、パッキン205は、ケーシング200と便器800との間への汚水浸入を防止できる。
【0033】
また、ケースプレート202の下面には、ケーシング200の前方部を便器800の上面820から上昇させ離間させる昇降装置500が付設されている。昇降装置500は、図3(a)および図3(b)に表したように、回動軸530と、回動軸530の一端に固定されたハンドル540と、回動軸530の中間部に固定された支柱550と、を有する。回動軸530は、ハンドル540の回動と連動して回動することができる。また、支柱550は、回動軸530に固定されているため回動軸530の回動と連動して回動することができる。つまり、使用者は、ハンドル540を回動させると、回動軸530を介して支柱550を回動させることができる。なお、回動軸530と支柱550とは、一体的に形成されていてもよい。
【0034】
ケーシング200は、後方部において、固定具203により便器800に取り付けられ、固定具203により取り付けられた部分を中心として便器800に対して回動することができる。
【0035】
そして、ケーシング200の前方部が下降した状態(図3(a)参照)から、図3(b)および図1(b)に表した矢印A2のように、使用者がハンドル540を回動させると、支柱550は、回動軸530を介して伝達されたハンドル540からの回動力を受け、図3(b)に表したように回動する。すなわち、使用者がハンドル540を回動させると、支柱550は、ケースプレート202の下面からみて倒立した状態となる。
【0036】
そうすると、支柱550は、図4に表したように、便器800の内部に設置されたガイドプレート840に支持される。その結果として、支柱550は、昇降装置500が付設されたケーシング200の前方部を便器800の上面820から上昇させ離間させることができる。支柱550が回動する際には、回動軸530に固定されていない側の支柱550の端部は、ガイドプレート840の表面と当接しつつその表面上をスライドする。このとき、支柱550およびガイドプレート840は、例えば樹脂などのような摺動性のより良い材料から形成されており、また支柱550の端部は、略円形の断面形状を有するため、その支柱550は、ガイドプレート840の表面上を滑らかにスライドすることができる。なお、ガイドプレート840は、便器800とは別部材として設けられていてもよく、便器800と一体的に形成されていてもよい。
【0037】
これによれば、使用者は、より小さな力で楽にハンドル540を回動させ、ケーシング200の前方部を便器800の上面820から上昇させ離間させることができる。また、これにより、ケースプレート202の下面に付設されたパッキン205を便器800の上面820から離間させることができる。そのため、図1および図2に関して前述したように、使用者は、ケーシング200と、便器800の上面820と、の間の隙間から清掃用具や手などを入れることにより、その隙間の部分やパッキン205などを容易に清掃することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ケーシング200の前方部が、その後方部を中心として回動し、便器800の上面820から上昇して離間する場合を例に挙げて説明したが、ケーシング200が便器800の上面820から上昇する動作はこれだけに限定されるわけではない。例えば、ケーシング200の下面と、便器800の上面820と、が略並行状態を保ちつつ、ケーシング200は、便器800の上面820から上昇してもよい。つまり、昇降装置500は、便器800からみてケーシング200を昇降させることができればよい。
【0039】
次に、本実施形態の位置検知手段600について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態のケースプレートを下側から眺めた斜視模式図である。
また、図6は、本実施形態の位置検知手段の構造を説明するための断面模式図である。 なお、図5(a)は、ハンドル540を矢印A2の方向に回動させる前の状態を表しており、図5(b)は、ハンドル540を矢印A2の方向に回動させた後の状態を表している。
また、図6は、図5(a)に表したE−E断面図である。
【0040】
本実施形態の位置検知手段600は、ケースプレート202の下側に設けられている。位置検知手段600は、図6に表したように、マグネットユニット610と、ホールICユニット620と、を有する。
【0041】
マグネットユニット610は、図5(a)および図5(b)に表したように、昇降装置500の回動軸に固定されている。そのため、マグネットユニット610は、昇降装置500の支柱550と同様に、回動軸530の回動と連動して回動することができる。つまり、使用者がハンドル540を矢印A2の方向に回動させると、マグネットユニット610は、図5(b)に表したように、回動軸530の回動と連動して回動し、ケースプレート202の下面からみて倒立した状態となる。
一方、ホールICユニット620は、ケースプレート202に設けられた収納部207に収納されている。
【0042】
マグネットユニット610は、図6に表したように、回動軸530に固定されるマグネットケース611と、マグネット615を保持し保護するマグネットキャップ613と、マグネットキャップ613に保持されるマグネット615と、を有する。マグネットキャップ613は、マグネットケース611に挿入され固定されている。その結果、マグネット615は、マグネットケース611と、マグネットキャップ613と、の間に設けられている。
【0043】
ホールICユニット620は、図6に表したように、ケースプレート202の収納部207に収納され固定されるホールIC基板621と、ホールIC基板621の上方を覆いケースプレート202に固定されるホールICカバー623と、を有する。そして、マグネットユニット610と、ホールICユニット620と、はハンドル540が矢印A2の方向に回動されていない状態において互いに隣接するように設置されている。これらについて、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0044】
図7は、本実施形態の位置検知手段を上方から眺めた斜視模式図である。
また、図8は、本実施形態の位置検知手段を下方から眺めた斜視模式図である。
また、図9は、本実施形態のホールICカバーの取付構造を表す斜視模式図である。
【0045】
マグネットユニット610とホールICユニット620とは、図7および図8に表したように、ハンドル540が矢印A2(図5(b)参照)の方向に回動されていない状態において互いに隣接するように設置されている。その結果、マグネットユニット610のマグネット615と、ホールICユニット620のホールIC基板621と、はハンドル540が矢印A2の方向に回動されていない状態において互いに隣接する。なお、ホールICカバー623は、図9に表したように、ホールIC基板621の上方を覆い、ケースプレート202に適宜固定されている。
【0046】
このように、マグネット615とホールIC基板621とが隣接し、マグネット615からの磁界がホールIC基板621に作用する状態では、ホールIC基板621は、ホール効果などと呼ばれる効果により起電力(ホール電圧)を検知できる。そして、使用者がケーシング200を便器800の上面820から上昇させるためにハンドル540を矢印A2の方向に回動させると、マグネットユニット610は、回動軸530の回動と連動して回動する。そうすると、ホールIC基板621からみたマグネット615の位置が変化し、ホールIC基板621は、ホール電圧の変化を検知できる。
【0047】
そして、使用者がハンドル540を矢印A2の方向にさらに回動させると、マグネット615からホールIC基板621に作用する磁界が極めて小さくなる、あるいはマグネット615からの磁界がホールIC基板621に作用しなくなる。そうすると、ホールIC基板621は、起電力(ホール電圧)を検知できなくなる。このようにして、ホールIC基板621は、マグネットユニット610の回動角度、すなわち回動軸530やハンドル540や支柱550の回動角度を検知することができる。
【0048】
これにより、制御部210は、ケーシング200の位置を検知できる。つまり、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であるか、あるいはケーシング200が便器800の上面820に下降した状態であるかなどを判断できる。
【0049】
次に、位置検知手段600の動作と、制御部210の判断と、の関係について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、位置検知手段の動作と制御部の判断との関係を説明するための断面模式図である。
また、図11は、ホールIC基板の検知範囲およびマグネットの回動軌跡を表す断面模式図である。
なお、図10(a)は、ハンドル540を矢印A2の方向に回動させる前の状態を表しており、図10(b)は、ハンドル540を矢印A2の方向に回動させた後の状態を表している。
また、図10および図11は、図7に表したF−F断面図を表している。
【0050】
ハンドル540が矢印A2の方向に回動されていない状態、すなわちケーシング200が便器800の上面820に下降した状態において、マグネット615の中心615aと、ホールIC基板621の中心621aと、の位置合わせがなされている。これにより、図10(a)に表した状態、すなわちハンドル540が矢印A2の方向に回動されていない状態では、ホールIC基板621は、起電力(ホール電圧)を検知できる。このように、ホールIC基板621がホール電圧を検知できる状態を、本願明細書においては「検知ON状態」ともいう。
【0051】
一方、図10(b)に表した状態、すなわちマグネットユニット610が矢印A4の方向に回動した状態では、マグネット615の中心615aと、ホールIC基板621の中心621aと、がずれた状態となる。そうすると、ホールIC基板621は、起電力(ホール電圧)を検知できない。このように、ホールIC基板621がホール電圧を検知できない状態を、本願明細書においては「検知OFF状態」ともいう。
【0052】
この検知ON状態および検知OFF状態について、図11を参照しつつさらに詳細に説明すると、ホールIC基板621は、ホールIC基板621の中心621aを中心とし、マグネット615の中心615aを検知可能な検知領域631を有する。一方、マグネット615の中心615aは、回動軸530を中心とした回動軌跡635上を回動できる。
【0053】
そして、ホールIC基板621は、マグネット615の中心615aが検知領域631内に存在する場合には、ホール電圧を検知することができる。一方、ホールIC基板621は、マグネット615の中心615aが検知領域631内に存在しない場合には、ホール電圧を検知することができない。つまり、マグネットユニット610が矢印A4(図10(b)参照)の方向に回動しても、マグネット615の中心615aが検知領域631と回動軌跡635との交点633を通過する前では、ホールIC基板621は、ホール電圧を検知することができる。一方、マグネットユニット610が矢印A4の方向に回動し、マグネット615の中心615aが検知領域631と回動軌跡635との交点633を通過すると、ホールIC基板621は、ホール電圧を検知することができない。
【0054】
制御部210は、ホールIC基板621がホール電圧を検知すると、すなわち検知ON状態では、ケーシング200が便器800の上面820に下降した状態であると判断する。一方、制御部210は、ホールIC基板621がホール電圧を検知しないと、すなわち検知OFF状態では、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であると判断する。
【0055】
さらには、例えば使用者が、ハンドル540を矢印A1(図1(a)参照)の方向に引き出すと、マグネット615の中心615aとホールIC基板621の中心621aとの間の距離は、回動軸530の軸方向により大きくなるが、マグネット615の中心615aが検知領域631外に移動するわけではない。そのため、使用者などがハンドル540を矢印A1の方向に引き出した状態では、ホールIC基板621は、ホール電圧を検知することができる。つまり、この状態では、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820に下降した状態であると判断する。
【0056】
なお、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であると判断すると、局部洗浄機能部250と、乾燥装置260と、脱臭装置270と、への通電を停止し動作不能とすることがより好ましい。一方、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であると判断しても、便器洗浄装置280への通電を停止せず動作可能とすることがより好ましい。
【0057】
次に、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
まず、制御部210は、待機状態(ステップS101)から、位置検知手段600が検知ON状態であるか否か、すなわちケーシング200が便器800の上面820に下降した状態であるか否かを判断する(ステップS103)。位置検知手段600が検知ON状態ではない、すなわち検知OFF状態である場合には(ステップS103:NO)、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であると判断する。
【0058】
続いて、制御部210は、便座開閉検知手段230が便座の閉止を検知したか否かを判断する(ステップS105)。便座開閉検知手段230が便座の閉止を検知すると(ステップS105:YES)、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知手段240に報知させる(ステップS107)。
【0059】
このとき、制御部210は、位置検知手段600が検知ON状態になるまで、すなわちケーシング200が便器800の上面820に下降されるまで、音声や光などによる報知を継続させることができる。
あるいは、制御部210は、一定時間の間だけ報知を実行させ、しばらく経ってから再び一定時間の間だけ報知を実行させてもよい。すなわち、制御部210は、間欠的に報知手段240に報知させてもよい。
あるいは、使用者が報知に気付き、操作部700などによりその報知を停止させても、位置検知手段600が検知ON状態とならない場合には、制御部210は、その停止から一定時間後に再び報知を実行させてもよい。
【0060】
続いて、制御部210は、位置検知手段600が検知ON状態であるか否かを判断し(ステップS109)、位置検知手段600が検知ON状態である場合には(ステップS109:YES)、報知手段240による報知を終了させ待機状態となる(ステップS101)。
【0061】
本具体例によれば、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態において、便座300が閉じると、報知手段240は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知する。そのため、使用者が便座300に着座する前に報知し警告することができ、使用者が便座300を下ろして着座することを抑制することができる。これにより、昇降装置500やケーシング200や便座300などが破損することを抑制することができる。また、使用者がバランスを崩すことを抑制することができ、安全性をより確保することができる。
【0062】
図13は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の他の具体例を表すフローチャートである。
まず、ステップS201およびS203の動作については、図12に関して前述したステップS101およびS103の動作と同様である。続いて、位置検知手段600が検知ON状態ではない、すなわち検知OFF状態である場合には(ステップS203:NO)、制御部210は、タイマをスタートさせる(ステップS205)。
【0063】
続いて、制御部210は、位置検知手段600が検知ON状態であるか否かを再び判断し(ステップS207)、位置検知手段600が検知ON状態である場合には(ステップS207:YES)、待機状態となる(ステップS201)。一方、位置検知手段600が検知ON状態ではない、すなわち検知OFF状態である場合には(ステップS207:NO)、制御部210は、タイマが所定時間よりも長くなったか否かを判断する(ステップS209)。なお、本具体例における所定時間は、例えば約2〜3分程度である。但し、この所定時間は一例であり、適宜変更することができる。
【0064】
タイマが所定時間以下である場合には(ステップS209:NO)、制御部210は、ステップS207およびS209の動作を繰り返す。一方、タイマが所定時間よりも長くなった場合には(ステップS209:YES)、制御部210は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを報知手段240に音声により報知させる(ステップS211)。この音声による報知方法は、図12に関して前述したステップS107における報知方法と同様に、継続的であってもよいし間欠的であってもよい。続いて、ステップS213の動作については、図12に関して前述したステップS109の動作と同様である。
【0065】
本具体例によれば、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態が所定時間を経過すると、報知手段240は、ケーシング200が便器800の上面820から上昇した状態であることを音声により報知する。そのため、使用者がケーシング200を下降させることを忘れてトイレ室から退室した場合でも、報知手段240は、その操作忘れを使用者に気付かせることができる。つまり、報知手段240は、ケーシング200を下降させることを使用者に促すことができる。そのため、使用者は、トイレ室に戻り、ケーシング200を下降させることができる。これにより、図12に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、位置検知手段600などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやマグネット615およびホールIC基板621の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
100 局部洗浄装置、 200 ケーシング、 201 ケースカバー、 202 ケースプレート、 203 固定具、 205 パッキン、 207 収納部、 210 制御部、 230 便座開閉検知手段、 240 報知手段、 250 局部洗浄機能部、 260 乾燥装置、 270 脱臭装置、 280 便器洗浄装置、 300 便座、 400 便蓋、 500 昇降装置、 530 回動軸、 540 ハンドル、 550 支柱、 600 位置検知手段、 610 マグネットユニット、 611 マグネットケース、 613 マグネットキャップ、 615 マグネット、 615a 中心、 620 ホールICユニット、 621 ホールIC基板、 621a 中心、 623 ホールICカバー、 631 検知領域、 633 交点、 635 回動軌跡、 700 操作部、 800 便器、 810 ボウル、 820 上面、 830 パネル、 840 ガイドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルを有する便器と、
前記ボウルよりも後方における前記便器の上面に設置され機能部品を内蔵するケーシングと、
前記ケーシングに回動可能に取り付けられた便座と、
前記便器から前記ケーシングを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置により前記ケーシングが前記便器から上昇した状態において、前記ケーシングが上昇していることを報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記報知手段は、前記ケーシングが前記便器から上昇した状態において、前記便座が閉じると、前記ケーシングが上昇していることを報知することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記ケーシングの位置を検知する位置検知手段と、
前記便座の開閉状況を検知する便座開閉検知手段と、
前記位置検知手段および前記便座開閉検知手段からの出力に基づいて前記ケーシングが上昇していることを前記報知手段に報知させる制御部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記報知手段は、前記ケーシングが前記便器から上昇した状態が所定時間を経過すると、前記ケーシングが上昇していることを音声により報知することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記ケーシングの位置を検知する位置検知手段と、
前記位置検知手段により検知された前記ケーシングの上昇状態が所定時間を経過すると、前記ケーシングが上昇していることを前記報知手段に報知させる制御部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−269063(P2010−269063A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125183(P2009−125183)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】