説明

トイレ装置

【課題】トイレ装置から汚物流動体が漏出することを防止し、当該トイレ装置を製造する際の作業効率を向上させる。
【解決手段】便器本体部1と仕切機構部との間の隙間をシールするシール機構部は、略リング形状を成して、その内径が便器本体部1の下部開口部1eの外径よりも小さい形状を成す第1のシール部材92を有する。この第1のシール部材92は、その外周部が取付固定されて、その内周部が仕切機構部側に湾曲した状態で下部開口部1eの周囲を囲んで弾接する。これにより、下部開口部1eが第1のシール部材92によって締め付けられて、便器本体部1と仕切機構部とを密閉できる。この結果、便器本体部1と仕切機構部との間の隙間からの汚物流動体の漏出を防止できる。更に、従来のような液体状の接着シール剤を使用しないので、当該接着シール剤の乾燥時間が不要になり、当該トイレ装置を製造する際の作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭や公共施設等に設置される一般的なトイレ装置や、屋外等で簡易的に設置使用されたり、車載用等として使用されたりするポータブルトイレ装置や、介護用のトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、介護を必要とする人のために、介護用のポータブルトイレ装置が使用されている。このポータブルトイレ装置は、便座に腰を掛ける腰掛式(所謂洋式)の形態が多い。ポータブルトイレ装置は、汚物を受け入れて排出するための容器を備えた形態や、汚物排水を自然流下で行う形態が一般的である。
【0003】
特許文献1には、筒状本体部に開閉機構及び破砕機構が収容されたトイレ装置が開示されている。このトイレ装置によれば、座部から連なる漏斗状をなす誘導筒部が筒状本体部の上部にある投入口に設けられ、誘導筒部からの洗浄水及び汚物等からなる汚物流動体が開閉機構を介して筒状本体部内に流入して、破砕機構によって破砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1によれば、筒状本体部内に流入した汚物流動体が当該筒状本体部から漏出しないように、筒状本体部の投入口と仕切機構との間にシール片(Oリング)が挟まれている。しかしながら、特許文献1には誘導筒部と筒状本体部とをシールすることについて開示されていない。
【0006】
誘導筒部は一般に陶器で構成されているので、その寸法誤差が大きい。そのため、誘導筒部と筒状本体部とがシールされていないと、当該誘導筒部と筒状本体部との間から汚物流動体が漏出する可能性がある。
【0007】
例えば、誘導筒部と筒状本体部とをOリングのようなシール片でシールした場合、上述のように誘導筒部の寸法誤差が大きいので、誘導筒部及び筒状本体部とシール片との間に隙間が生じ、これを埋めるために液体状の接着シール剤を使用する必要がある。この場合、誘導筒部及び筒状本体部をOリング及び接着シール剤でシールすることができるが、接着シール剤の乾燥時間が必要であったり、接着シール剤の接着作業に失敗するとやり直しができなかったりする等の問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題を解決したものであって、トイレ装置から汚物流動体が漏出することを防止し、当該トイレ装置を製造する際の作業効率を向上させることができるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係るトイレ装置は、排泄された汚物と洗浄水とを受容して下部開口部から汚物及び洗浄水を流出させる便器本体部と、便器本体部から流出した汚物及び洗浄水が流入する開口部を有し、汚物を粉砕して洗浄水と共に汚物流動体と成して流下する粉砕機構部と、便器本体部と粉砕機構部との間に設けられ、開口部を開閉する仕切機構部と、便器本体部と仕切機構部との間の隙間をシールするシール機構部とを備え、シール機構部は、略リング形状を成して、その内径が下部開口部の外径よりも小さい形状を成すシール部材を有し、シール部材は、その外周部が取付固定されて、その内周部が仕切機構部側に湾曲した状態で下部開口部の周囲を囲んで弾接することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係るトイレ装置によれば、便器本体部、粉砕機構部、仕切機構部及びシール機構部を備える。便器本体部は、排泄された汚物と洗浄水とを受容して下部開口部から汚物及び洗浄水を流出させる。粉砕機構部は、便器本体部から流出した汚物及び洗浄水が流入する開口部を有し、汚物を粉砕して洗浄水と共に汚物流動体と成して流下する。仕切機構部は、便器本体部と粉砕機構部との間に設けられ、開口部を開閉する。シール機構部は、便器本体部と仕切機構部との間の隙間をシールする。
【0011】
これを前提にして、シール機構部は、略リング形状を成して、その内径が下部開口部の外径よりも小さい形状を成すシール部材を有し、このシール部材は、その外周部が取付固定されて、その内周部が仕切機構部側に湾曲した状態で下部開口部の周囲を囲んで弾接する。これにより、便器本体部の下部がシール部材によって締め付けられて、便器本体部と仕切機構部とを密閉することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトイレ装置によれば、便器本体部と仕切機構部とを密閉することができるので、便器本体部と仕切機構部との間の隙間からの汚物流動体の漏出を防止することができる。更に、従来のような液体状の接着シール剤を使用しないので、当該接着シール剤の乾燥時間が不要になり、当該トイレ装置を製造する際の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る介護用トイレ装置100の構成例を示す側面断面図である。
【図2】介護用トイレ装置100の構成例を示す背面図である。
【図3】シール機構部9及び仕切機構部10の構成例を示す断面斜視図である。
【図4】シール機構部9及び仕切機構部10の構成例を示す側面断面図である。
【図5】シール機構部9の組立例を示す分解斜視図である。
【図6】仕切機構部10の組立例を示す分解斜視図である。
【図7】介護用トイレ装置100の組立例を示す分解斜視図である。
【図8】第1のシール部材92の湾曲例(その1)を示す側面断面図である。
【図9】第1のシール部材92の湾曲例(その2)を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態の一例として、介護用トイレ装置について説明する。介護用トイレ装置は、排泄された汚物や使用済みのトイレットペーパ等を受容する便器本体部の下方に設けられた粉砕機構部で、便器本体部に供給される洗浄水と共に汚物及びトイレットペーパ等を粉砕して排出する、病院の病室や住宅の居間等に設置可能なものである。
【0015】
[介護用トイレ装置100の構成例]
最初に、本発明に係る介護用トイレ装置100の構成例について説明する。図1及び図2に示すように、介護用トイレ装置100は、便器本体部1、粉砕機構部2、圧送タンク3、給水タンク4、シール機構部9及び仕切機構部10で構成される。
【0016】
給水タンク4は、例えば1.5から3リットルの洗浄水を貯える。この洗浄水は、当該介護用トイレ装置100が設置されている部屋とは別の部屋にある備え付けトイレ5(既設の通常のトイレ)から、介護用トイレ装置100の下後方にあるタンク給水口31等を介して給水される。
【0017】
備え付けトイレ5から給水タンク4へ給水する給水管4cには給水タンク用電磁弁4a及び流量センサ4bが設けられる。給水タンク用電磁弁4aは、図示しない制御部からの指令により開状態になると、備え付けトイレ5からの洗浄水が給水タンク4に給水される。この給水時に給水管4cを流れる洗浄水の流量を流量センサ4bが積算する。洗浄水が所定の流量だけ流れると、流量センサ4bから制御部へ信号を出力して、制御部は、給水タンク用電磁弁4aを閉状態にして給水タンク4への給水を停止させる。このようにして、給水タンク4に所定量の洗浄水が貯えられる。なお、流量センサの代わりに給水管4cに流れる洗浄水の時間を積算するフローセンサを設けても構わない。
【0018】
給水タンク4の下部にある給水口には給水弁4dが設けられる。また、この給水口から便器本体部1の流水口1cに向けて給水管4eが設けられる。給水弁4dが開くと、給水タンク4に貯えられた洗浄水が給水管4eを通って、流水口1cから便器本体部1の内部に流れ込む。その後、給水タンク4に洗浄水を貯めるときには、給水弁4dを閉じて、備え付けトイレ5から洗浄水を供給する。
【0019】
便器本体部1の上方には便蓋1a及び便座1bが設けられる。便蓋1aの開閉により介護用トイレ装置100の各種処理が行われる。便座1bには介護用トイレ装置100の下後方にある便座給水口32に繋がる図示しない給水管と接続される。便座給水口32には備え付けトイレ5からの洗浄水が給水されて、便座1bから洗浄水が噴出して当該便座1bに腰掛けたユーザの臀部等を洗浄する。
【0020】
便器本体部1は、洗浄水が流入する流水口1cと、上部から汚物を受け入れる上部開口部1dと、下部から洗浄水及び汚物等を排出する下部開口部1eとを有する。便器本体部1は、便蓋1aを開けて便座1bに腰掛けたユーザから排泄された汚物を上部開口部1dにより受容して、この汚物を流水口1cから流水する洗浄水と共に下部開口部1eから排出するものである。便器本体部1は、陶器で構成されているので、その寸法誤差が大きい(例えば、±数mm程度)。
【0021】
便器本体部1の下方には粉砕機構部2が設けられる。粉砕機構部2は、便器本体部1から流出した汚物及び洗浄水が流入する開口部2aを有する。また、粉砕機構部2は、略円盤状を成して回転する回転歯2bと、この回転歯2bの下側に設けられ、略円盤状を成して筐体2dと一体の固定歯2cとを有する。
【0022】
粉砕機構部2は、便器本体部1から流出した汚物及び洗浄水を開口部2aから取り込んで、回転歯2bを図示しないモータにより回転させる。すると、汚物及び洗浄水は、回転歯2bと固定歯2cとの間に流入して、回転歯2bと固定歯2cとの対面しあう凹部及び凸部により粉砕される。この粉砕により、汚物及び洗浄水は汚物流動体となる。
【0023】
便器本体部1と粉砕機構部2との間には仕切機構部10が設けられる。仕切機構部10は、図3及び図4で後述する開閉蓋15によって開口部2aを開閉して、汚物及び洗浄水等を粉砕機構部2に流入させる。例えば、仕切機構部10は、ユーザが排泄を済まして便座1bから立ち上がり、便蓋1aを閉じると、開閉蓋15が移動(図4では左側に移動)して開口部2aを開状態にする。そして、仕切機構部10は、便器本体部1で受容した汚物及び洗浄水が開口部2aを通って粉砕機構部2に流入すると、開閉蓋15が移動(図4では右側に移動)して開口部2aを閉状態にする。
【0024】
便器本体部1と仕切機構部10との間にはシール機構部9が設けられる。シール機構部9は、便器本体部1及び仕切機構部10との間の隙間をシールするものである。また、シール機構部9は図3及び図4で後述する第1のシール部材92を有する。
【0025】
第1のシール部材92は、略リング形状を成して、その内径が便器本体部1の下部開口部1eの外径よりも小さい形状を成す。このような第1のシール部材92は、その外周部がシール機構部9の各部材に取付固定されて、その内周部が下側(仕切機構部10側)に湾曲した状態で下部開口部1eの周囲を囲んで弾接する。これにより、便器本体部1の下部が第1のシール部材92によって締め付けられて、便器本体部1と仕切機構部10とを密閉することができるようになる。
【0026】
粉砕機構部2の下部には圧送タンク3が設けられる。圧送タンク3は、例えば、円筒形状に加工された金属又は樹脂等で構成されている。圧送タンク3の容量は3〜5リットル程度である。圧送タンク3は、粉砕機構部2により粉砕された汚物流動体が流入する流入口37と、この流入口37に流入した汚物流動体を備え付けトイレ5に向かって流出する流出口39とを有する。
【0027】
更に、圧送タンク3は、図2に示すエアーコンプレッサー6に接続されて、このエアーコンプレッサー6によって内部に圧縮空気が充填される。このとき、圧送タンク3内の圧縮空気が逆流しないように、流入口37に設けられた図示しない弁機構により、流入口37が開閉自在になっている。
【0028】
流入口37から汚物流動体が流入して圧縮空気が充填された圧送タンク3は、流出口39から汚物流動体を流出する。そして、汚物流動体は、介護用トイレ装置100の下後方にある排水口33から備え付けトイレ5に向かって排出される。
【0029】
図2に示すように、介護用トイレ装置100の下後方にはコンセント34が設けられる。従来の介護用トイレ装置は、暖房洗浄便座等の電気により駆動するものを追加するときに、暖房洗浄便座の電源コードが短いと、当該介護用トイレ装置を設置する部屋に設けられたコンセントの位置によって、設置場所が制限されてしまい不便であった。また、複数の電気駆動のものを当該介護用トイレ装置に追加すると、電源コードが何本も部屋を這うようになってしまう。
【0030】
そこで、本発明に係る介護用トイレ装置100ではコンセント34を設けた。これにより、暖房洗浄便座等の電源コードをこのコンセント34に差し込むことで、設置部屋のコンセントの位置に依存されないので当該介護用トイレ装置100の設置場所が制限されることなく、また、当該介護用トイレ装置100を設置した部屋に電源コードが何本も這うようなことを防止することができる。
【0031】
なお、コンセント34は、図2では1つしか設けていないが、これに限定されず、複数設けても構わない。
【0032】
[シール機構部9の構成例]
次に、シール機構部9の構成例について説明する。図3及び図4に示すように、シール機構部9は、第1の支持部材91、第1のシール部材92及び第2の支持部材93で構成される。
【0033】
第1のシール部材92は、EPM(エチレン−プロピレンゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等の耐水性、耐温度性、耐薬品性等の耐久性に優れたゴム部材で形成される。第1のシール部材92は、略リング形状であって、外径部分から内径部分に向かって下方に傾斜した形状になっている(図5参照)。また、第1のシール部材92は、その内径が便器本体部1の下部開口部1eの外径よりも小さい形状になっている。
【0034】
第1のシール部材92は、仕切機構部10側に湾曲して(図5に示す定常状態の下方傾斜よりも更に傾斜して、図4のように湾曲する。詳しくは、図8及び図9参照)下部開口部1eの周囲を囲んで弾接する。
【0035】
これにより、便器本体部1の下部が第1のシール部材92によって締め付けられて、便器本体部1の寸法誤差が大きくても、便器本体部1と第1のシール部材92との間に隙間が生じない。この結果、便器本体部1と第1のシール部材92との間からの汚物流動体の漏出を防止することができる。また、第1のシール部材92を便器本体部1に密着させるためのバンド部材等が不要になる。
【0036】
更に、第1のシール部材92が湾曲した状態で便器本体部1に設けられているので、当該第1のシール部材92に汚物流動体による水圧がかかったとしても、その水圧により、便器本体部1と当該第1のシール部材92と密着性が増して汚物流動体が漏出することがない。
【0037】
第1の支持部材91及び第2の支持部材93は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の耐水性、耐温度性、耐薬品性等の耐久性に優れた樹脂部材で形成される。第1のシール部材92は、その上部に第1の支持部材91が設けられ、その下部に第2の支持部材93が設けられる。つまり、第1の支持部材91及び第2の支持部材93は、第1のシール部材92を挟持する。この挟持は、第2の支持部材93の下方を押え板94で押えて、ネジ9aを締めることで実現できる。
【0038】
これにより、上述した便器本体部1と第1のシール部材92との間の汚物流動体の漏出防止だけでなく、第1の支持部材91と第1のシール部材92、第2の支持部材93と第1のシール部材92の隙間を埋めて、それらの間からの汚物流動体の漏出を防止することができる。
【0039】
[仕切機構部10の構成例]
次に、仕切機構部10の構成例について説明する。仕切機構部10は上側ケース13、開閉蓋15、下側ケース16及びモータ18で構成される。更に、仕切機構部10は、上側ケース押え板11、第2のシール部材12、ケースパッキン14、下側ケース押え板17、開検知センサ19a及び閉検知センサ19bを備える。
【0040】
上側ケース13及び下側ケース16は共に開口孔を有し、この開口孔から汚物流動体を流入及び流出する。上側ケース13と下側ケース16との間に汚物流動体の漏出防止用のケースパッキン14を挿入して、上側ケース13の上部から上側ケース押え板11、下側ケース16の下側から下側ケース押え板17で上側ケース13及び下側ケース16をそれぞれ固定することにより、収容部の一例である本体ケースが構成される。
【0041】
下側ケース16は、当該下側ケース16の開口孔に向かって下方に傾斜する傾斜部16aを有する。万一、汚物流動体が便器本体部1から粉砕機構部2に流入せずに、本体ケース内に流入したとしても、汚物流動体は、自重で傾斜部16aに沿って下側ケース16の開口孔まで流動する。これにより、本体ケース内に汚物流動体が残留して本体ケースを汚染することを防止できる。
【0042】
本体ケースには開閉蓋15及びモータ18等が収納される。開閉蓋15は、クランク15aを介してモータ18に接続され、便器本体部1と粉砕機構部2とを仕切る。モータ18は、駆動部の一例であり、開閉蓋15の駆動源である。
【0043】
モータ18が回転駆動することにより、クランク15aが作用して、開閉蓋15が粉砕機構部2の開口部2aを開閉する。例えば、モータ18が所定時間回転したときには、開閉蓋15が図4では左に移動して開口部2aを開状態にし、モータ18が更に所定時間回転したときには、開閉蓋15が右に移動して開口部2aを閉状態にする。
【0044】
なお、図3及び図4では、モータ18は上側ケース13に設けられているが、これは、万一、汚物流動体が本体ケースから下方に垂れるように漏出した場合に、モータ18に付着することを防止するため(品質向上のため)である。
【0045】
上側ケース13には開検知センサ19a及び閉検知センサ19bが設けられる。開検知センサ19aは、モータ18及びクランク15aにより開閉蓋15が左側に移動して、粉砕機構部2の開口部2aが開状態になったことを検知するものである。閉検知センサ19bは、開閉蓋15が右側に移動して、開口部2aが閉状態になったことを検知するものである。
【0046】
開検知センサ19a及び閉検知センサ19bには、反射光を検知する光学的センサや、反射した超音波を検知する超音波センサ、又は、物理的な接触を検知する接触センサ等が使用される。これらは適宜選択可能である。
【0047】
また、本実施の形態では、開検知センサ19a及び閉検知センサ19bの2つを設けたものを説明したが、これに限定されず、開検知センサ19a又は閉検知センサ19bを1つだけ設けて、そのセンサのみで開閉の検知をするように設定しても構わない。
【0048】
上側ケース13の開口孔には第2のシール部材12が設けられる。第2のシール部材12は、上述した第1のシール部材92と同様に、EPD、EPDM等のゴム部材で形成される。第2のシール部材12は、略リング形状を成して、その内径が仕切機構部10の開閉蓋15よりも小さい形状を成している(図6参照)。
【0049】
第2のシール部材12は、その外周部が上側ケース13と第2の支持部材93とで挟持されて取付固定される。また、第2のシール部材12は、その内周部が開閉蓋15の表面に弾接する。これにより、開閉蓋15と第2のシール部材12との間から汚物流動体が漏出することを防止することができる。
【0050】
下側ケース16の開口孔近傍には持上部16bが設けられる。持上部16bは、開閉蓋15が閉状態のときに、開閉蓋15に下方から当接して該開閉蓋15を持ち上げるように付勢する。これにより、開閉蓋15が第2のシール部材12を撓ませつつ当接して、開閉蓋15と第2のシール部材12との密着性が向上する(図3及び図4参照)。この結果、開閉蓋15と第2のシール部材12との間に隙間ができず、当該開閉蓋15と第2のシール部材12との間から汚物流動体が漏出することをより防止できる。
【0051】
[シール機構部9の組立例]
次に、シール機構部9の組立例について分解斜視図を用いて説明する。図5に示すように、まず、シール機構部9の組み立ては、第1の支持部材91と第2の支持部材93との間に第1のシール部材92を挟み込む。このとき、第2の支持部材93の上部にある溝に第1のシール部材92の下部にある図示しない凸部を嵌めて、第2の支持部材93に第1のシール部材92を仮固定した状態にしておく。
【0052】
第1の支持部材91、第1のシール部材92及び第2の支持部材93を仮固定した状態で、その下方を押え板94で押えて、6個のネジ9aを押え板94のネジ孔、第2の支持部材93のネジ孔、そして、第1の支持部材91のネジ孔の順番に挿入して締めることにより、第1の支持部材91、第1のシール部材92及び第2の支持部材93が固定される。このようにして、シール機構部9が完成する。
【0053】
[仕切機構部10の組立例]
次に、仕切機構部10の組立例について分解斜視図を用いて説明する。図6に示すように、まず、仕切機構部10の組み立ては、上側ケース13に、モータ18をネジ18aで上方から固定し、開検知センサ19a及び閉検知センサ19bを取り付ける。更に、上側ケース13の開口孔に第2のシール部材12を嵌めておく。そして、下側ケース16にクランク15aが接続された開閉蓋15を取り付ける。
【0054】
上述のように各種部品が取り付けられた上側ケース13と下側ケース16との間にケースパッキン14を挟み込んで、上側ケース13の上方から上側ケース押え板11を、下側ケース16の下方から下側ケース押え板17を取り付けて、13個のネジ10aを下側ケース押え板17のネジ孔、下側ケース16のネジ孔、上側ケース13のネジ孔、そして、上側ケース押え板11のネジ孔の順番に挿入して締めることにより、上側ケース13及び下側ケース16が固定される。このようにして、仕切機構部10が完成する。
【0055】
なお、図6にて、ネジ10aから延びている一点鎖線は、ネジ10aが13本あるので、本来13本あるものであるが、図を見やすくするために、一部を省略している。
【0056】
[介護用トイレ装置100の組立例]
次に、介護用トイレ装置100の組立例について分解斜視図を用いて説明する。図7に示すように、まず、介護用トイレ装置100の組み立ては、シール機構部9が有する第2の支持部材93の下方にある図示しない溝に、仕切機構部10が有する第2のシール部材12の外径部分を嵌める。これにより、シール機構部9及び仕切機構部10が仮固定される。
【0057】
その後、仮固定されたシール機構部9及び仕切機構部10に粉砕機構部2及び便器本体部1を組み付けるために、シール機構部9が有する第1の支持部材91の開口孔に組み付け治具を挿入する。この組み付け治具は、第1の支持部材91の開口孔の中心、便器本体部1が有する下部開口部1eの中心及び粉砕機構部2の開口部2aの中心を一致させて組み付ける(センター基準で組み付ける)ためのものである。このような組み付け治具を必要とする理由は、便器本体部1が陶器製のためにその寸法誤差が±数mm程度と大きいことによる。
【0058】
組み付け治具が第1の支持部材91の開口孔に挿入されたシール機構部9に、上方から便器本体部1を組み付ける。粉砕機構部2の下方から図示しないネジを粉砕機構部2のネジ用孔、仕切機構部10のネジ孔、シール機構部9のネジ孔、そして、便器本体部1のネジ孔の順番に挿入して締めることにより、粉砕機構部2に便器本体部1、シール機構部9及び仕切機構部10が固定される。この後、圧送タンク3や給水タンク4等が取り付けられることにより、介護用トイレ装置100が完成する。
【0059】
このように、第1のシール部材92と第2のシール部材12とは、便器本体部1と仕切機構部10とに挟持されて、取付固定が成される。これにより、介護用トイレ装置100に汚物流動体の漏出を防止する第1及び第2のシール部材92,12を取り付けることができる。
【0060】
[シール部材92の湾曲例]
次に、便器本体部1がシール機構部9及び仕切機構部10等に組み付けられる際の、第1のシール部材92の湾曲例について説明する。図5及び図6で説明したシール機構部9及び仕切機構部10が完成されていることを前提にする。図8に示すように、便器本体部1の取り付けは、上述したように、便器本体部1の下部開口部1eの中心と第1の支持部材91の開口孔の中心とが一致するように、第1の支持部材91の上方から便器本体部1を降ろしていく。このとき、第1のシール部材92は、内径が下方に傾斜していて、まだ湾曲していない。
【0061】
その後、図9に示すように、便器本体部1が第1の支持部材91を通過して、第1のシール部材92に便器本体部1の下部が当接する。更に、便器本体部1が下降すると、第1のシール部材92が下方向(図4で示した開閉蓋15がある方向)に湾曲する。便器本体部1が所定の位置まで下降すると、第1のシール部材92が便器本体部1の下部側面を締め付けて、便器本体部1と第1のシール部材92との隙間を埋める。
【0062】
このように、本実施の形態に係る介護用トイレ装置100によれば、便器本体部1、粉砕機構部2、仕切機構部10及びシール機構部9を備える。便器本体部1は、排泄された汚物と洗浄水とを受容して下部開口部1eから汚物及び洗浄水を流出させる。粉砕機構部2は、便器本体部1から流出した汚物及び洗浄水が流入する開口部2aを有し、汚物を粉砕して洗浄水と共に汚物流動体と成して流下する。仕切機構部10は、便器本体部1と粉砕機構部2との間に設けられ、粉砕機構部2の開口部2aを開閉する。シール機構部9は、便器本体部1と仕切機構部10との間の隙間をシールする。
【0063】
これを前提にして、シール機構部9は、略リング形状を成して、その内径が下部開口部1eの外径よりも小さい形状を成す第1のシール部材92を有し、この第1のシール部材92は、その外周部が取付固定されて、その内周部が仕切機構部10側に湾曲した状態で下部開口部1eの周囲を囲んで弾接する。これにより、便器本体部1の下部が第1のシール部材92によって締め付けられて、便器本体部1と仕切機構部10とを密閉することができるようになる。
【0064】
この結果、便器本体部1と仕切機構部10とを密閉することができるので、便器本体部1と仕切機構部10との間の隙間からの汚物流動体の漏出を防止することができる。更に、従来のような液体状の接着シール剤を使用しないので、当該接着シール剤の乾燥時間が不要になり、当該介護用トイレ装置100を製造する際の作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0065】
1・・・便器本体部、1a・・・便蓋、1b・・・便座、1c・・・流水口、1d・・・上部開口部、1e・・・下部開口部、2・・・粉砕機構部、2a・・・開口部、2b・・・回転歯、2c・・・固定歯、2d・・・筐体、3・・・圧送タンク、4・・・給水タンク、4a・・・給水タンク用電磁弁、4b・・・流量センサ、4c,4e・・・給水管、4d・・・給水弁、5・・・備え付けトイレ(廃棄場所)、6・・・エアーコンプレッサー、9・・・シール機構部、10・・・仕切機構部、11・・・上側ケース押え板、12・・・第2のシール部材、13・・・上側ケース、14・・・ケースパッキン、15・・・開閉蓋、15a・・・クランク、16・・・下側ケース、16a・・・傾斜部、16b・・・持上部、17・・・下側ケース押え板、18・・・モータ、19a・・・開検知センサ、19b・・・閉検知センサ、31・・・タンク給水口、32・・・便座給水口、33・・・排水口、34・・・コンセント、37・・・流入口、39・・・流出口、91・・・第1の支持部材、92・・・第1のシール部材、93・・・第2の支持部材、94・・・押え板、100・・・介護用トイレ装置(トイレ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄された汚物と洗浄水とを受容して下部開口部から前記汚物及び前記洗浄水を流出させる便器本体部と、
前記便器本体部から流出した前記汚物及び前記洗浄水が流入する開口部を有し、前記汚物を粉砕して前記洗浄水と共に汚物流動体と成して流下する粉砕機構部と、
前記便器本体部と前記粉砕機構部との間に設けられ、前記開口部を開閉する仕切機構部と、
前記便器本体部と前記仕切機構部との間の隙間をシールするシール機構部とを備え、
前記シール機構部は、
略リング形状を成して、その内径が前記下部開口部の外径よりも小さい形状を成すシール部材を有し、
前記シール部材は、
その外周部が取付固定されて、その内周部が前記仕切機構部側に湾曲した状態で前記下部開口部の周囲を囲んで弾接することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記シール機構部は、
略リング形状を成して、その内径が前記仕切機構部が有する開閉蓋よりも小さい形状を成す第2のシール部材を更に有し、
前記第2のシール部材は、
その外周部が取付固定されて、その内周部が前記開閉蓋の表面に弾接することを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記シール部材と前記第2のシール部材とは、
前記便器本体部と前記仕切機構部とに挟持されて、前記取付固定が成されることを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記仕切機構部は、
前記開閉蓋に下方から当接して該開閉蓋を持ち上げる持上部を有することを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記仕切機構部は、
前記便器本体部と前記粉砕機構部とを仕切る開閉蓋と、
前記開閉蓋を駆動する駆動部と、
前記開閉蓋及び前記駆動部を収容する収容部とを備え、
前記収容部は、下方に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36682(P2012−36682A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179841(P2010−179841)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】