説明

トイレ設備管理システム

【課題】ショッピングセンターや公共施設など不特定多数の人々が利用するトイレ設備において、清掃作業や消耗品交換作業を効率的に行うことができ、また、トイレ内で居座る人を検知できるとともに、かつ、そのための設備を安価、かつ簡易に構築できるトイレ設備管理システムを提供することである。
【解決手段】個室トイレ20を少なくとも有するトイレ設備において、人間の姿勢に対応して、その状態を検知できる光センサからなる個室トイレ用に設けられた個室用センサS1と、トイレ設備の出入り口に設けられた人間の通過を検知する光センサからなる通過用センサS2と、両センサの情報を管理するシステムサーバから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトイレ設備管理システムに関する。特に、ショッピングセンターや公共施設など不特定多数の人々が利用するトイレを多数有する設備に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ショッピングセンターは、50店ほどの規模であっても5〜10ヶ所程度のトイレがあり、個室数で25〜50個程度になる。これらトイレの清掃は1つあたり30分程度を要し、1日当たりでは、例えば朝全館一斉に清掃を行い、日中は決められた手順に従って、定期的に行われる。
しかし、トイレは、フロア、売り場、イベント、天候などにより、使用頻度が大きく変動するとともに、設置場所によっても使用頻度の差は生じている。
従来は、このような使用頻度の異なるトイレに対して、画一的に決められた時間に決められた手順で清掃や消耗品の交換作業が行われており、全く使われていないトイレの清掃を行ったり、交換する必要のない消耗品のために点検作業を行うなど、著しい人件費の無駄が発生していた。
【0003】
また、一部のトイレ、特に個室トイレでは、体調が悪くなり個室内で倒れている人を検知するために遠赤外線センサを使った検知手段が設置する場合もある。
しかし、これらセンサは人体が発する遠赤外線を検出するものであり、指向性が広く、方向性の検出が困難のため、人の存在は検知できるものの、人の出入りまでも検知できるわけではない。また、温度の影響を受けるため、例えば、冬季暖房が効いているような場合は、暖房器具の噴出し口や壁などの温度が高くなって人間の体温と近くなり、人間の正確な検知が不可能となる。
さらに、悪意を持って閉店後もトイレに居座る者もおり、厚手の衣類などを被ることで人から放射される遠赤外線を遮断させ、センサの検知を避けることも簡単に可能となる。
【0004】
さらに、トイレ設備は、個室トイレだけでなく小便器や洗面所も含まれる。これらについても清掃作業や消耗品の交換作業が必要となる。理論的には、すべての個室トイレ、すべての小便器、すべての洗面箇所にセンサを設けて使用頻度を測定することもできるが、センサ設置や監視などが大掛かりとなり、費用も大きくなってしまう。
【特許文献1】特開平8−185135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ショッピングセンターや公共施設など不特定多数の人々が利用するトイレ設備において、清掃作業や消耗品交換作業を効率的に行うことができ、また、トイレ内で居座る人を検知できるとともに、かつ、そのための設備を安価、簡易に達成できるトイレ設備管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のトイレ設備管理システムは、個室トイレを少なくとも有するトイレ設備において、人間の姿勢に対応して、その状態を検知できる光センサからなる個室トイレ用に設けられた個室用センサと、トイレ設備の出入り口に設けられた人間の通過を検知する光センサからなる通過用センサと、両センサの情報を管理するシステムサーバから構成される。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、個室トイレ用センサにより各個室トイレの使用状況や累積使用人数をシステムサーバ上で把握することができ、また、通過用センサによりトイレ設備に入る人の累積総数を把握することができる。これにより、個室トイレごとのトイレットペーパの使用量や清掃のタイミングを推測することができ、また、両センサのカウント数の差を求めることにより小便器の累積使用人数を把握することもできる。さらには、全体のトイレの累積入室者数がわかることで洗面所の石鹸などトイレ利用者のほぼ全員使用する消耗品の補充のタイミングを図ることもできる。なお、システムサーバは管理室などに設置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係るトイレ設備管理システムの全体概要を示す。
ショッピングセンター内にはトイレ設備10(10a,10b,10c・・・)を有する。各トイレ設備10には、個室トイレ20、小便器30、洗面所40などが設けられる。個室トイレ20には個室トイレ内の人の有無を判断する個室用センサS1が設置され、トイレ設備10の出入り口にはトイレを入退出する人の数をカウントする通過用センサS2が設置される。各トイレ設備10には物置が設けられる。この物置の中には必要な作業を終えた後にIDカードを読み込ませるIDカードリーダが形成される。それぞれの機器はネットワークインターフェイスを備える。なお、通過用センサS2は、原則として1つであるが、出入口が複数ある場合などは出入口の数に対応して設けられる。
【0009】
2種類のセンサでカウントされた人数情報は、ショッピングセンター内の管理室などに備え付けられたシステムサーバ60に送られる。
サーバ60は、2種類のセンサーによるカウント情報から各トイレ設備の延べ使用人数を計測して、画面上にトイレ設備ごと、個室トイレごとの使用状況をバーグラフなどで表示する。カウント人数が、あらかじめ決められた閾値を超えた場合は、アラームなどの音声手段と画面をフラッシュさせるなどの視覚手段により、便器、洗面所などの清掃タイミングや、トイレットペーパや石鹸などの消耗品の補充タイミングをタイムリに知らせる。
清掃や交換作業を終えた作業員は、例えば、図2に示すようなIDカードリーダに必要事項を入力して管理事務所に作業終了を通知する。IDカードリーダは、清掃した個室の数、交換した消耗品などの数を入力することができ、登録実行ボタンを押した後にIDカードを読み込ませることにより、作業の内容、作業者、作業終了時刻などを管理事務所のサーバに記録する。
管理事務所のシステムサーバ60は、集中管理センタが随時インターネット網を介して通信できることで、集中管理センタから複数のショッピングセンター、テナント、施設などを一元的に管理することができる。
【0010】
図3は個室センサS1の一例を示す。個室センサS1は、光を放射する発光部と被測定体(利用者)にあたって反射した光を受ける受光部からなり、さらに非常発生時に係員に通報する非常呼び出しボタンや、管理事務所と会話できるインターホンも備えている。センサS1はネットワーク・インターフェイスを備えており、有線、または、無線で館内のLANに接続できる。さらに、停電時には自己照明装置により、個室トイレ内を照明してパニックになることを防止できる。
【0011】
ここで、個室トイレに設置した個室用センサと、出入口に設置した通過用センサにより、個室トイレに入室した延べ人数と、トイレ設備に入室した人の延べ人数を直接的に知ることができ、さらに、これら人数を差し引くことで個室トイレを使わない人の延べ人数、通常は小便器の利用者を推測することもできる。
例えば、通過用センサによりカウントした延べ人数は100人であり、個室用センサによりカウントした延べ人数が40人である場合には、概ね小便器の利用者は60人であると推測できる。
延べ人数を統計的に求めることで、個室トイレについてはトイレットペーパの補充、便器の清掃タイミングを知ることができ、小便器については清掃タイミングを知ることができ、洗面所については石鹸やペーパタオルの補充、清掃タイミングを知ることができる。ここで、個室トイレについては、個室ごとに情報を把握することができるため重点管理の対象となり、小便器については便器ごとの情報は知ることができないが、小便器については、消耗品の補充がなく、また、使用による汚れは致命的なものになりにくいからラフな管理をすることで足りる。この点について、小便器ごとに利用人数をカウントする方法も考えられるが、コスト(設置コスト、運用コストなどあらゆるコストを含む)を考慮すると、小便器についても個別に管理することは実用的ではない。そして、本発明はトイレに入室する延べ人数と、重点管理が必要な個室トイレの利用者をカウントするという方式を採用することで、極めて簡易に、かつ安価にトイレ全体を清掃、消耗品の交換という作業を可能とする。
なお、小便器、洗面所、物置は必須の構成ではなく、本発明はこれらを有さないトイレ設備にも適用できる。特に、小便器の存在しない女性用トイレで使用することができる。
【0012】
また、このような統計的管理を行うシステムを採用することで、必要なトイレを必要なときに管理する事ができ、従来のように、使用状況を勘案しない定時運用の方法に比して著しいコスト低減と、トイレの使用不可状態の発生を防止、あるいはあってもきわめて短時間に抑えるなど合理化を可能とする。
【0013】
さらに、特定の個室トイレが長時間使用されていないなどの情報を把握することで、当該個室が使用できないほどの故障、あるいは汚れがあったり、あるいは、人が倒れているなどの推測をすることができ、係員を迅速に立ち向かわせることができる。また、閉店後の悪意を持って居座る人を検知することができ、犯罪の未然防止という作用効果も有する。
【0014】
個室センサは、光を放射し反射光を受信判定するセンサである。
個室用センサは、複数、例えば8個のLEDと、等価的に1つの受光ダイオードを備えることにより、複数のLEDを切り替えて発光させることで、個室トイレ内の人の存在、不存在の情報のみならず、利用者の姿勢までも検知することができる。
通常この目的に使用する光は、個室トイレを使用する人の目に触れない方が良いので、人の目に不感でデバイスの安価な700〜950nmの波長の近赤外光を使うが、光の状態が見えた方がよい様な状況では、赤や青などの可視光を用いる事も出来る。
この場合、各センサの切り替えは、一のLEDを完全に消灯させてから次のLEDを点灯させるのではなく、両LEDの点灯が時間的に重なるように切り替えることで受信回路の急激な立ち上がり、立ち下がり、いわゆるオーバシュートやアンダーシュートの発生を防止することができ精度の高い測定を可能とする。
【0015】
通過センサは、人間の入室時における移動方向に沿って、複数のセンサを設置し、各センサが受光する光の強さや経時変化をCPU等で処理することにより、受光パターンの一致性と時間変化から、人の通過、および通過方向を検出することもできる。また、複数の人間が同時に入退出する場合にも精度よく人数をカウントすることができる。
【0016】
図4は本発明のトイレ設備管理システムを使ったシステムであって、ショッピングセンターと集中管理センタをつなぐインターネット網を概念的に示す。
トイレ設備内は、2つの個室センサ(トイレセンサ)を有する個室トイレと、通過用センサ、及び、これらをつなぐ無線LAN、有線LANとルータ/無線アクセスポイントを有している。
複数のトイレ設備は、LAN接続により構成されて、システムサーバ、インターネットを介して集中管理センタに接続される。
【0017】
以上、説明したようにこの発明に係るトイレ設備管理システムは、
(1)個室トイレ用センサにより各個室トイレの使用状況や累積使用人数をシステムサーバ上で把握することができ、また、通過用センサによりトイレ設備に出入りする人の累積総数を把握することができる。
(2)個室トイレごとのトイレットペーパの使用量や清掃のタイミングを推測することができ、また、両センサのカウント数の差を求めることにより小便器の累積使用人数を把握することもできる。
(3)トイレの累積入室者数がわかることで洗面所の石鹸などトイレ利用者が使用する消耗品の補充のタイミングを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るトイレ設備管理システムの全体構成を示す。
【図2】IDカードリーダの一例を示す。
【図3】個室用センサの一例を示す。
【図4】本発明のシステムの概念図を示す。
【符号の説明】
【0019】
10 トイレ設備
20 個室用トイレ
30 小便器
40 洗面所
50 物置
60 管理事務所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個室トイレを少なくとも有するトイレ設備において、
人間の姿勢に対応して、その状態を検知できる光センサからなる個室トイレに設けられた個室用センサと、
トイレ設備の出入り口に設けられた人間の通過を検知する光センサからなる通過用センサと、
両センサの情報を管理するシステムサーバと、
から構成されるトイレ設備管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57298(P2006−57298A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239169(P2004−239169)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】