説明

トイレ設備

【課題】トイレを使用しているユーザの排便を促すことができ、ひいてはユーザの健康管理を適正に行うことができるトイレ設備を提供すること。
【解決手段】トイレ12には便器65が設置されており、その便器65には便座67が設けられている。また、トイレ12には、握り棒73が設けられており、握り棒73は、ユーザが便座67に座った状態で容易に握ることができる位置にある。ユーザは、排便時に握り棒73を握ってその状態でいきむことで排便を行い易くなる。握り棒73は、握り棒73に対してユーザにより加えられる圧力(すなわちユーザが握り棒73を握る力)の大きさを検出する圧力検出部を有している。握り棒用センサ75はトイレサーバ22と電気的に接続されており、トイレサーバ22は、握り棒用センサ75により検出された検出信号に基づいてユーザのいきみ量を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体調に異変が生じている人、例えば便秘状態にある人がユーザとしてトイレを使用する場合、そのユーザは排便時に過度に力む(すなわち「いきむ」)ことがあると考えられる。これに対して、特許文献1には、過度に力むことを抑制する構成として、握力の計測が可能な筋力計測部を有する警報装置付き筋力計測器についての構成が記載されている。この筋力計測器は、ユーザが所定値以上の握力で且つ所定時間以上に亘って継続して筋力計測部を握っている場合に、警報を発する。この場合、過度に力んでいることをユーザ本人に報知することができるため、排便時に過度に力むことを抑制できる。
【特許文献1】特開平6−225865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている構成では、警報が発せられることでユーザが力むことをやめれば過度に力むことを抑制できる一方で、力むことをやめると排便を行うことができなくなると考えられる。また、例えばユーザの便通状態が良好でない場合、ユーザは排便を行うためには強く力むことが必要であると考えられるため、ユーザが過度に力むことを抑制できても、排便を促すことはできない。
【0004】
そこで、本発明は、トイレを使用しているユーザの排便を促すことができ、ひいてはユーザの健康管理を適正に行うことができるトイレ設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0006】
第1の発明は、ユーザの排便時に該ユーザの身体の一部に接触する被接触部と、前記被接触部に前記ユーザの身体の一部が接触している状態で、該被接触部に作用する圧力を検出する圧力検出手段と、前記ユーザの排便を補助する排便補助装置と、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記排便補助装置の動作制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするトイレ設備である。
【0007】
第1の発明によれば、トイレにおいて、ユーザは力む(以下、いきむともいう)ことで排便を行う。ユーザは、いきむ際に被接触部に対して力を加えることで、強くいきんだり排便を行い易くなったりすると考えられる。すなわち、ユーザは排便を行い易くなる。ここで、ユーザは、例えば便秘状態にある場合など、便通状態が良好でない場合には、排便を行うために強くいきむ必要があり、ユーザのいきみ度合いや心身の負担の度合いは、被接触部に加えられる圧力の大きさに反映されると考えられる。これに対して、被接触部に作用する圧力に基づいて排便補助装置の動作制御が行われるため、便通状態が良好でない場合に、排便補助装置によりユーザの排便を補助することが可能となる。したがって、ユーザは、便通状態が良好でなくても、過度にいきむことなく排便を行うことができる。以上の結果、トイレを使用しているユーザの排便を促すことができ、ひいてはユーザの健康管理を適正に行うことができる。
【0008】
第2の発明では、ユーザの肛門に向かって水を噴射する噴射装置を備え、前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記排便補助装置としての前記噴射装置の動作制御を行う。
【0009】
第2の発明によれば、便通状態が良好でない場合に、排便を補助する目的で噴射装置によりユーザの肛門に向かって水が噴射される。この場合、ユーザの便意と便通が促進され、ユーザは過度にいきむことなく排便を行うことができる。
【0010】
第3の発明では、トイレの空間温度を調整する空調装置を備え、前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記排便補助装置としての前記空調装置の動作制御を行う。
【0011】
第3の発明によれば、便通状態が良好でない場合に、排便を補助する目的で空調装置の動作制御が行われる。この場合、トイレの空間温度が調整されたり、快適な温度の風がユーザに与えられたりすることで、排便時におけるユーザの身体負荷が低減される。これにより、ユーザの便意と便通が促進され、ユーザは過度にいきむことなく快適に排便を行うことができる。
【0012】
第4の発明では、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記ユーザの便通状態を推定する手段を備え、前記制御手段は、前記便通状態の推定結果に応じて前記排便補助装置の動作制御を段階的に行う。
【0013】
第4の発明によれば、ユーザの便通状態に応じて排便補助装置の動作制御が段階的に行われる。このため、便通状態に合わせてユーザの便通を適宜補助することができる。
【0014】
第5の発明では、前記被接触部は、前記ユーザの手により握られる握り部であり、前記圧力検出手段は、前記ユーザが前記握り部を握る力の大きさを検出する。
【0015】
第5の発明によれば、握り部がユーザにより握られる。ここで、ユーザは、排便時に握るという行為を行うことでいきみ易くなり、ひいては排便を行うことが容易になると考えられる。また、ユーザが握り部を握る力の大きさが検出されるため、いきみ度合いを好適に取得することができる。すなわち、便通状態を好適に取得することができる。例えば、握り部を握る力が大きい場合には便通状態が良好でないと推定され、握り部を握る力が小さい場合には便通状態が良好であると推定される。
【0016】
第6の発明では、前記握り部は、外径が一端から他端に向かって連続的に小さくなっている円柱状に形成されており、前記ユーザの側方にて前記外径の大きい方が小さい方より上方に位置するように斜めに設置されている。
【0017】
第6の発明によれば、円柱状をした握り部が斜めに設置されているため、ユーザは左右方向だけでも上下方向だけでもなく、左右方向及び上下方向において握り部の好みの位置を握ることができる。また、身体の大きなユーザ(例えば大人)は握り部の上部を握ることになると考えられるが、上部は下部に比べて外径が大きいため、大きな手で握るのに適している。一方、身体の小さなユーザ(例えば子供)は握り部の下部を握ることになると考えられるが、下部は上部に比べて外径が小さいため、小さな手で握るのに適している。以上の結果、ユーザは握り部を体格に合った位置で且つ手の大きさに合った太さの部分を適宜握ることができる。
【0018】
第7の発明では、前記被接触部は、前記ユーザが足で踏むトイレの床であり、前記圧力検出手段は、前記ユーザが前記トイレの床に加える圧力の大きさを検出する足側検出手段である。
【0019】
第7の発明によれば、ユーザがトイレの床に対して足で加える圧力の大きさが検出されるため、いきみ度合いを好適に取得することができる。すなわち、便通状態を好適に取得することができる。ここで、ユーザは、排便時に足を踏ん張るという行為を行うことでいきみ易くなり、ひいては排便を行うことが容易になると考えられる。したがって、例えば、ユーザの足によりトイレの床に加えられる圧力が大きい場合には便通状態が良好でないと推定され、前記圧力が小さい場合には便通状態が良好であると推定される。
【0020】
第8の発明では、前記圧力検出手段の検出結果に関する情報を報知する報知装置を備え、前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記報知装置の動作制御を行う。
【0021】
第8の発明によれば、排便時にユーザが被接触部に加える圧力の大きさに応じて報知装置が動作する。この場合、ユーザは都度のいきみ度合いを認識することができるため、すなわち、便通状態を認識することができるため、便通状態に合わせて排便を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、住宅等の建物に設けられているトイレについて具体化している。また、トイレには、着座姿勢で排便を行ういわゆる洋式便器を含むトイレ設備が設けられている。図1では、トイレ12内の便座67に人が座っている状態を示しており、(a)は平面図であり、(b)は電気的構成を含んだ正面透視図である。
【0023】
図1に示すように、トイレ12は、四方の壁61と床62とにより囲まれているトイレスペースを有している。壁61の一面には、人が出入する出入口63が形成されており、その出入口63は扉64により開閉されるようになっている。トイレ12には、便器65と、水を貯めるタンク66とが設置されている。便器65は、タンク66から水が供給されることで排泄物が流される構成となっている。
【0024】
便器65には、ユーザが腰掛けるように座ることが可能な便座67と、その便座67に座ったユーザがもたれることができる背もたれ68とが設けられている。背もたれ68は、便器65におけるトイレ12の奥側に取り付けられており、上端部が回動可能となるように便器65に軸支されている。また、便器65には、背もたれ68の傾倒角度を調整する傾倒調整装置69が設けられており、傾倒調整装置69は、モータ等の駆動部を含んで構成されている。さらに、便器65には、ユーザの肛門に向かって水を噴射させる噴射装置71が設けられている。噴射装置71は、排便補助装置として水を噴射することで排便を促したり肛門部の洗浄を行ったりする。噴射装置71は、噴射する水の量や温度、噴き付け圧力等を調整することが可能な調整機能を有している。
【0025】
便座67は、着座したユーザの生体情報を検出する生体情報検出部として便座用センサ72を有している。便座用センサ72は、ユーザの身体の一部が便座67に接触することでそのユーザの生体情報を検出する構成となっており、例えば、電極を含んで構成されている生体インピーダンス検出部と、生体電位を検出する生体電位検出部と、呼吸数等を検出するべく圧電素子を含んで構成されている圧電センサ部と、身体の表面温度を体表面温度として検出する表面温度検出部とを有している。
【0026】
便座用センサ72は、シート状に形成されて便座67の上面側に配置されており、ユーザが便座67に座った場合にそのユーザの尻部や足の付け根(例えば太股の裏側)と接触するようになっている。そして、それら尻部や足の付け根から生体情報として生体インピーダンスや生体電位、呼吸数、体表面温度等を検出する。
【0027】
トイレ12には、ユーザの手により握られる握り棒73が握り部として設けられている。握り棒73は、ユーザの排便時にそのユーザの身体の一部に接触する被接触部に相当し、排便時において、ユーザが握り棒73を握ってその状態で力むこと(すなわちいきむこと)で排便がし易くなると考えられる。こうした利用方法からすれば、握り棒73を「いきみ棒」と称することもできる。
【0028】
握り棒73は、トイレ12の壁61に、ユーザが便座67に座った状態で容易に握ることができる位置に取り付けられている。より詳しくは、握り棒73は、壁61から延びている取付部74を有しており、出入口63に対して両側方の壁61のそれぞれに取付部74を介して取り付け固定されている。各握り棒73は、便器65を挟んで互いに対向している。また、握り棒73は、全体として略円柱状に形成されており、その外径が一端から他端に向かって連続的に大きくなっている。すなわち、連続的に太くなっている。そして、中心線が壁面に対して平行となるように、例えば床面に対して45度の角度で斜め上方に延びている。この場合、太い方の端部に対して細い方の端部が斜め下方に位置しており、且つ太い方の端部が細い方の端部よりも出入口63側に位置している。
【0029】
これにより、ユーザが便座67に座って左右それぞれの手で左右両側(換言すれば両側方)の握り棒73をそれぞれ握る際、ユーザは、それぞれの体格に合った位置及び太さの部分を握ることができる。例えば、大柄なユーザであれば、握り棒73の上部の太い部分を容易に握ることができ、小柄なユーザや子供であれば、握り棒73の下部の細い部分を容易に握ることができる。なお、握り棒73は、例えば太い方の端部における断面の直径が5〜7cm程度、細い方の端部における断面の直径が2〜4cm程度となっており、その全長が1m程度となっている。また、握り棒73は、手摺りとして使用されてもよい。
【0030】
握り棒73には、その握り棒73を握っているユーザの生体情報を検出する生体情報検出部として握り棒用センサ75が設けられている。握り棒用センサ75は、便座用センサ72と同様に、ユーザの身体の一部が握り棒73に接触することでそのユーザの生体情報を検出する構成となっており、生体インピーダンス検出部と、生体電位検出部と、圧電センサ部と、表面温度検出部とを有している。また、握り棒用センサ75は、握り棒73に対してユーザにより加えられる圧力(すなわちユーザが握り棒73を握る力)の大きさを検出する圧力検出部を有しており、圧力検出手段としての役割を担っている。
【0031】
握り棒用センサ75は、握り棒73の表面に巻かれた状態で設けられており、握り棒73をユーザが握った場合にユーザの手のひらと接触するようになっている。そして、ユーザの手のひらから、生体情報として生体インピーダンスや生体電位、呼吸数、体表面温度、ユーザが握り棒73を握る力等を検出する。
【0032】
また、トイレ12の床62には、ユーザの体重を検出する重量センサ76が設けられている。重量センサ76は、トイレ12で立ったまま排尿する時や便器65に座る前後にユーザが立つ位置、すなわち出入口63と便器65との間の位置にある。これにより、ユーザの体重は意図的に計測しようとしなくても、排尿又は排便に伴って計測されることになる。また、重量センサ76は、便座67に座った状態のユーザが足を乗せる(足で踏む)ことが可能な位置に設置されている。
【0033】
次に、トイレ12における電気的な構成について説明する。
【0034】
図1(b)において、トイレサーバ22は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有しており、トイレ機器の動作制御を行う。また、トイレサーバ22は、ユーザにより入力操作が行われるサーバ操作部22aを有しており、ユーザは、サーバ操作部22に対して入力操作を行うことでトイレ機器の制御内容等を設定できるようになっている。トイレサーバ22は、通信機能を有しており、医療機関等の外部施設との間で通信可能となっている。
【0035】
トイレサーバ22には、上記の傾倒調整装置69や噴射装置71がトイレ機器として接続されている。また、その他のトイレ機器として、トイレ12内の空間温度を調整するトイレ用エアコン77と、ユーザの健康状態について表示するトイレ用表示モニタ78とが接続されている。
【0036】
トイレサーバ22及びトイレ用表示モニタ78は、1つのケースに一体的に収容された状態で例えばトイレ12の壁61に設置されている。トイレサーバ22は、トイレ使用時にユーザによりサーバ操作部22に対して入力操作が行われることでユーザを特定するようになっている。トイレ用表示モニタ78は、ユーザがトイレ12で便座67に座った状態で表示画面を視認することができるようなっている。なお、トイレサーバ22及びトイレ用表示モニタ78は個別に設置されていてもよく、設置場所はトイレ12に通じる廊下等であってもよい。また、トイレサーバ22には、報知手段として、トイレ用表示モニタ78に加えて表示ランプやスピーカなどが接続されていてもよい。
【0037】
トイレサーバ22は、指令信号を出力することでトイレ機器の動作制御を実行する。例えば、指令信号を出力することで、傾倒調整装置69を動作させて背もたれ68の傾倒角度を調整したり、噴射装置71を動作させてユーザの肛門に水を噴き付けたりする。さらには、トイレ用エアコン77を動作させてトイレ12の空間温度を調整したり、トイレ用表示モニタ78における表示内容を設定したりする。
【0038】
トイレサーバ22には、便座用センサ72、握り棒用センサ75及び重量センサ76が接続されており、それら便座用センサ72、握り棒用センサ75及び重量センサ76からそれぞれ検出信号が入力される。トイレサーバ22は、それらに検出信号に基づいて、ユーザの生理データや行動データを取得し、それらデータを記憶する。
【0039】
生理データの取得について説明すると、トイレサーバ22は、便座用センサ72及び握り棒用センサ75の各検出信号にそれぞれ含まれている生体インピーダンス検出部の検出結果から生体インピーダンスを取得し、その生体インピーダンスと、身長や体重等といった個人情報とに基づいて、体脂肪率や筋肉量、推定骨量、内臓脂肪量、基礎代謝量といった体組成に関する生理データを算出する。なお、内臓脂肪については、内臓脂肪量ではなく、内臓脂肪量を複数段階で評価した内臓脂肪レベルを算出してもよい。また、トイレサーバ22は、生体電気検出部の検出結果から生体電位を取得し、その生体電位に基づいて、心拍数などの情報が含まれている心電図波形を生理データとして算出する。さらに、圧電センサ部の検出結果から、所定時間当たりの脈拍数や呼吸数、体動を生理データとして算出し、表面温度検出部の検出結果から体表面温度を生理データとして算出する。
【0040】
また、トイレサーバ22は、その他の生理データとして、「いきみ量」や体重、BMI(肥満度指数)等を取得する。いきみ量について、トイレサーバ22は、握り棒用センサ75の検出信号からユーザが握り棒73を握る力(圧力)の大きさを取得し、その大きさに基づいてユーザの「いきみ度合い」をいきみ量として算出する。体重及びBMIについて、トイレサーバ22は、重量センサ76により計測された体重を取得するとともにBMIを算出し、それら体重及びBMIを生理データとして取得する。
【0041】
さらに、トイレサーバ22は、いきみ量に基づいてユーザの便通状態を取得する。ユーザが排便を行う場合、便通状態によっていきみ量が異なると考えられるため、便通状態を推定することができる。例えば、ユーザが便秘状態にあったりして便通状態が良好でない場合は、排便を行うために強くいきむ必要があるため、排便時のいきみ量が大きくなる。一方、便通状態が良好である場合は、排便を行うために強くいきむ必要がないため、排便時のいきみ量が小さくなる。
【0042】
行動データの取得について説明すると、トイレサーバ22は、便座用センサ72の検出信号に基づいて、ユーザが便座67に座っていた継続時間を着座時間として算出し、その着座時間を行動データとして取得する。なお、ユーザがトイレ12に滞在していたトイレ滞在時間を行動データとして取得してもよい。
【0043】
さらに、トイレサーバ22は、生理データや行動データに基づいて、ユーザの体調に異変が発生したか否かを判定する。例えば、生理データに関して、心拍数や脈拍数、いきみ量など数値で表される項目については、各種メモリに記憶している過去の数値と比較し、現在の数値が正常値の範囲より大きい又は小さい場合に異常であると判定する。同様に、行動データにおける着座時間については、現在の着座時間が正常時間の範囲より著しく長い場合に異常であると判定する。
【0044】
また、生理データにおいて、図2に示すような心電図波形については、その波形の形状や振幅の大きさに基づいて現在の状態を判定する。心臓疾患が発生していると、心電図波形に異常が発生する。例えば、心臓疾患が不整脈である場合、R波と次のR波との間の間隔が一定の間隔にならない。すなわち、間隔RR1と間隔RR2と間隔RR3とが一定の大きさにならない。また、心臓疾患が心筋梗塞である場合、心電図波形のうちT波を含んだ部分が上昇する。すなわち、周波数解析が行われるとその周波数分布に異常が生じる。これらの場合は、心電図波形の項目に異常があると判定する。
【0045】
次いで、トイレサーバ22により実行されるトイレ機器を制御対象としたトイレ機器制御処理について説明する。
【0046】
図3において、ステップS101では、ユーザを特定する個人認証処理を行う。例えば、ユーザがトイレサーバ22の入力操作部から入力した情報に基づいてそのユーザをトイレ使用者として特定する。また、トイレ12の出入口周辺にユーザの身体的特徴を検出する身体感知センサが設けられている構成であれば、その身体感知センサから入力される検出信号に基づいてユーザを特定してもよい。
【0047】
ステップS102では、便座用センサ72、握り棒用センサ75又は重量センサ76から検出信号を受信したか否かを判定する。それら検出信号を受信していない場合は、そのまま本処理を終了し、検出信号を受信した場合は、ステップS103にて、受信した検出信号に基づいて生理データ及び行動データを取得する。例えば、ユーザのいきみ量や体重等を生理データとして取得したり、着座時間等を行動データとして取得したりする。ステップS104では、トイレ用表示モニタ78に対して指令信号を出力し、トイレ用表示モニタ78に生理データをユーザの健康状態として表示させたり、行動データをトイレ使用状況として表示させたりする。
【0048】
ステップS105では、着座時間が正常であるか否かを判定する。なお、トイレ滞在時間を取得し、トイレ滞在時間が正常であるか否かを判定してもよい。要は、トイレ使用に関する行動データが正常であるか否かを判定すればよい。着座時間が正常でない場合、ステップS106に進み、着座時間異常報知処理を行う。例えば、現在の着座時間長さが通常の着座時間長さより長くなった場合、トイレ用表示モニタ78に対して指令信号を出力し、トイレ用表示モニタ78に着座時間が正常時より長くなっていることを表示させる。一方、着座時間が正常である場合、例えば、現在の着座時間長さが通常の着座時間長さより短い場合は、そのままステップS107に進む。
【0049】
ステップS107では、生理データに異常項目があるか否かを判定する。すなわちユーザの体調に異変が発生しているか否かを判定する。例えば、心拍数や脈拍数、いきみ量、心電図波形について異常があるか否かを判定する。着座時間が正常であって生理データに異常項目がない場合、そのまま本処理を終了し、生理データに異常項目がある場合、ステップS108にて、生理データにおける心電図波形及び心拍数が正常であるか否かを判定する。心電図波形及び心拍数が正常でない場合、ステップS109に進み、心拍異常報知処理を行う。例えば、トイレ用表示モニタ78に心電図波形又は心拍数が正常でないことを表示させる。なお、心電図波形に異常がある場合、心臓疾患が発生したとして緊急通報を行ってもよい。例えば、通信機能を用いて病院等の医療機関に対して異常発生を報知する。また、傾倒調整装置69に対して指令信号を出力し、背もたれ68の傾倒角度を調整してもよい。この場合、ユーザに体調異変が生じても、ユーザをリラックス可能な体勢とすることになり、体調回復を図ることができる。
【0050】
心電図波形及び心拍数が正常である場合、ステップS110に進み、いきみ量が正常であるか否かを判定する。具体的には、現在のいきみ量と、各種メモリに記憶されている過去のいきみ量に関するデータとを比較し、いきみ量が正常の範囲内にあるか否かを判定する。これにより、ユーザの排便状態が正常であるか否かを判定することができる。
【0051】
いきみ量が正常でない場合、ステップS111に進み、排便異常報知処理を行う。例えば、トイレ用表示モニタ78に排便状態が異常であることを表示させる。ステップS112では、排便補助処理を行う。排便補助処理は、ユーザの便通状態が良好でない場合に排便を段階的に補助するべく、トイレ機器の動作制御を段階的に実行する処理であり、その詳細については後述する。
【0052】
一方、いきみ量が正常である場合(ステップS110がYES判定の場合)には、生理データにおいて、心電図波形、心拍数及びいきみ量以外の項目に異常があると考えられる。この場合、ステップS113に進み、異常報知処理を行う。異常報知処理では、例えば、トイレ用表示モニタ78に対して指令信号を出力し、健康状態に異常があることを報知させる。
【0053】
ステップS112にて実行する排便補助処理について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。図4では、排便補助処理として、それぞれ処理内容が異なる多段階処理(本実施形態では、第1段階処理〜第3段階処理の3段階処理)を実行することとしている。
【0054】
図4において、ステップS201では、トイレ機器を制御対象とした段階的な処理のうち、第1段階処理が実行中であるか否かを判定する。第1段階処理が実行中でない場合、ステップS202に進み、第1段階処理を実行する。第1段階処理では、噴射装置71に対して指令信号を出力し、噴射装置71から水を噴射させる。この場合、水が肛門部に噴き付けられることでユーザの便意と便通が促進され、ユーザは過度にいきむことなくスムーズに排便を行うことができる。なお、噴射装置71から噴射される水の量や温度、噴き付け圧力を適宜調整してもよい。これにより、ユーザの排便をより一層効果的に補助することが可能となる。
【0055】
第1段階処理が実行中である場合、すなわち、第1段階処理が実行されているにもかかわらずいきみ量が正常とならない場合、ステップS203に進み、第2段階処理が実行中であるか否かを判定する。第2段階処理が実行中でない場合、ステップS204に進み、第1段階処理に加えて、第2段階処理を実行する。第2段階処理では、トイレ用エアコン77に対して指令信号を出力し、空調制御を行う。例えば、季節が夏であればトイレ12内に冷たい空気を送り込み、季節が冬であればトイレ12内に暖かい空気を送り込む。この場合、トイレ12内の空間温度が快適な温度に調整されたり、快適な温度の風がユーザに当てられたりすることで、噴射装置71により排便補助が行われている場合に比べて、より一層ユーザの便意と便通が促進され、ユーザは過度にいきむことなくスムーズに排便を行うことができる。つまり、トイレ用エアコン77が排便補助装置としての役割を果たすことができる。なお、トイレ12に酸素供給装置が設置されていれば、酸素供給装置から酸素を供給させ、ユーザに酸素を吹きつけたりトイレ12内の酸素濃度を高めたりしてもよい。
【0056】
第2段階処理が実行中である場合、すなわち、第1段階処理及び第2段階処理が実行されているにもかかわらずいきみ量が正常とならない場合、ステップS205に進み、第1段階処理及び第2段階処理に加えて第3段階処理を実行する。第3段階処理では、緊急通報を行う。例えば、通信機能を用いて病院等の医療機関に対して異常発生を報知する。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0058】
トイレ12に握り棒73が設けられているため、ユーザは、排便時に握り棒73を握りつついきむことで、強くいきんだり排便を容易に行ったりすることができる。また、ユーザが握り棒73を握る力の大きさは握り棒用センサ75により検出されるため、トイレサーバ22は、握り棒用センサ75の検出結果に基づいてユーザのいきみ量を取得することができる。これは、ユーザのいきみ度合いや心身の負担の度合いが、ユーザが握り棒73を握る強さに反映されるためである。また、トイレサーバ22は、いきみ量に基づいて排便補助処理を実行する。この場合、仮にユーザの便通状態が良好でなくても、ユーザの排便が都度の便通状態に合わせて好適に補助されるため、ユーザは過度にいきむことなく排便を快適に行うことができる。以上の結果、トイレを使用しているユーザの排便を促すことができ、ひいてはユーザの健康管理を適正に行うことができる。
【0059】
ユーザの通便状態が良好でない場合、第1段階処理として、噴射装置71の動作制御が行われる。このため、肛門に水が噴き付けられることでユーザの便意と便通が促進されるため、ユーザは過度にいきむことなく排便を行うことが可能となる。また、第2段階処理として、噴射装置71の動作制御に加えて空調制御が行われるため、排便時におけるユーザの身体負荷が低減され、ユーザは排便をより一層快適に行うことが可能となる。第1段階処理と第2段階処理とは、いきみ量に応じて段階的に実行されるため、ユーザの通便状態に合わせて適切な内容で排便を促すことができる。
【0060】
トイレサーバ22には、いきみ量など生理データに関する過去のデータが記憶されているため、現在のいきみ量など生理データが正常の範囲内にあるか否かの判定を好適に行うことができる。したがって、トイレサーバ22は、ユーザの排便状態が良好でない場合に限って排便補助処理を実行することができる。
【0061】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0062】
(1)上記実施形態では、被接触部としての握り棒73がトイレ12の壁61に取り付けられているが、握り棒73が便器65や便座67に取り付けられていてもよい。例えば、図5に示すように、握り棒73が便座67に取り付けられている構成とする。握り棒73は、弓状に湾曲した形状をなし、その凸側が上方に突出するように両端部が便器65に固定されている(図5(a)参照)。この場合、握り棒73は鉛直方向に起立しており、ユーザは便座67に着座した状態で握り棒73を握ることが可能となっている。
【0063】
ユーザは、握り棒73を握るだけでなく、握り棒73をユーザ自身の上半身側へ引きつけるように腕に力を込めることでいきみ易くなると考えられる。そこで、便座67の便座用センサ72は、握り棒用センサ75と同様に、圧力検出手段としての役割を担っており、ユーザの尻部や足の付け根により便座67に加えられる圧力を検出する構成となっている。したがって、ユーザのいきみ量は、トイレサーバ22により、便座用センサ72の検出結果に基づいて取得される。これは、ユーザが握り棒73を握って腕に力を込めると、それに伴ってユーザの尻部が便座67に押し付けられ、単にユーザが便座67に座っている場合と比べて便座67に加えられる圧力が増し、その圧力にはいきみ量が反映されていると考えられるためである。
【0064】
また、背もたれ68を、便器65の開放部側に傾倒する構成としてもよい。この場合、背もたれ68は、便器65の開放部を上方から覆うことで閉鎖することが可能になっている。すなわち、蓋の役割を果たすことが可能になっている。また、この場合、握り棒73は、起立状態と便器65の開放部側に傾倒した傾倒状態とに切り替え可能な構成となっており、傾倒状態になることで、便器65の開放部を閉鎖するべく傾倒している背もたれ68を上から押さえつける(図5(b)参照)。これにより、便器65の開放部が閉鎖された状態を保持することができ、ひいては、便器65から排泄物の臭い等が広がることを抑制できる。
【0065】
(2)上記実施形態では、排便補助手段として、噴射装置71及びトイレ用エアコン77が設けられているが、ユーザの身体を刺激することで排便を促す手段が設けられていてもよい。例えば、あたかも指圧を行うかのように身体の一部を押圧する押圧装置が便座67に設けられている構成とする。この場合でも、ユーザの便通状態が良好でなければ、押圧装置を動作させることで、ユーザの便意と便通とを促進することができる。
【0066】
(3)上記実施形態では、トイレサーバ22が、握り棒用センサ75の検出結果に基づいてユーザのいきみ量を取得する構成としたが、圧力検出手段としての重量センサ76の検出結果に基づいてユーザのいきみ量を取得する構成としてもよい。ここで、ユーザはトイレ12の床62に対して足で踏ん張るという行為を行うことでいきみ易くなると考えられる。この場合、床62が被接触部となる。その床62には、重量センサ76が、ユーザが便座67に座った状態で足を乗せることが可能な位置に設置されているため、ユーザはいきむ際に重量センサ76に対して足で圧力を加えることが可能となる。したがって、トイレサーバ22は、重量センサ76の検出結果に基づいていきみ量を取得することができ、ひいては、ユーザの便通状態を取得することができる。例えば、排便時に重量センサ76に加えられる圧力が通常時より大きい場合は、ユーザの便通状態を良好でないとして取得し、前記圧力が通常時と同等又はそれより小さい場合は、ユーザの便通状態を良好であるとして取得する。
【0067】
また、圧力検出手段がトイレ12の壁61に設けられていてもよい。ここで、床62と同様に、ユーザは壁61を手のひらで押すという行為を行うことでいきみ易くなると考えられる。この場合、壁61が被接触部となり、圧力検出手段はユーザにより壁61に対して加えられた圧力の大きさを検出する。したがって、排便時のいきみ量を取得することができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、トイレサーバ22により排便補助処理として、3段階の処理が実行される構成となっているが、処理の段階は3段階としなくてもよい。また、第2段階処理は第1段階処理とともに実行される構成としたが、第1段階処理と第2段階処理とは個別に実行される構成としてもよい。例えば、第2段階処理では、噴射装置71の動作制御が実行されずに空調制御だけが実行される構成とする。
【0069】
(5)上記実施形態では、握り棒73がトイレ12の壁61に固定されているが、握り棒73は移動可能に設けられていてもよい。例えば、取付部74が、あらかじめ定めた範囲内で上下左右方向及び壁離間方向の少なくとも一方に変位又は変形可能な機構を有しており、取付部74が変位又は変形することで握り棒73の移動が可能となる構成とする。この場合、ユーザは、握り棒73を握り易い位置に移動させることができる。
【0070】
(6)上記実施形態では、トイレ12に便器65としていわゆる洋式便器が設置されているが、ユーザが跨いだ状態で排便を行ういわゆる和式便器が設置されていてもよい。
【0071】
(7)トイレサーバ22及びトイレ機器が、ホームサーバや建物設備を含んで構築されているホームネットワークシステムに含まれていてもよい。この場合、トイレサーバ22に記憶されている生理データや行動データなどの記憶情報がネットワークを介してホームサーバにも記憶される構成とすることで、ホームサーバにより、建物に設けられているトイレ機器以外の設備を含めて統括的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】トイレの構成を説明するための概略図。
【図2】心電図波形について説明するための図。
【図3】トイレサーバにより実行されるトイレ機器制御処理を示すフローチャート。
【図4】排便補助処理を示すフローチャート。
【図5】握り棒の別例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
11…トイレ、22…コントローラとしてのトイレサーバ、61…被接触部としての壁、62…被接触部としての床、67…便座、71…排便補助装置としての噴射装置、72…便座用センサ、73…被接触部としての握り棒、75…圧力検出手段としての握り棒用センサ、76…圧力検出手段としての重量センサ、77…排便補助装置としてのトイレ用エアコン、78…報知装置としてのトイレ用表示モニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの排便時に該ユーザの身体の一部に接触する被接触部と、
前記被接触部に前記ユーザの身体の一部が接触している状態で、該被接触部に作用する圧力を検出する圧力検出手段と、
前記ユーザの排便を補助する排便補助装置と、
前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記排便補助装置の動作制御を行う制御手段と
を備えることを特徴とするトイレ設備。
【請求項2】
ユーザの肛門に向かって水を噴射する噴射装置を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記排便補助装置としての前記噴射装置の動作制御を行う請求項1に記載のトイレ設備。
【請求項3】
トイレの空間温度を調整する空調装置を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記排便補助装置としての前記空調装置の動作制御を行う請求項1又は2に記載のトイレ設備。
【請求項4】
前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記ユーザの便通状態を推定する手段を備え、
前記制御手段は、前記便通状態の推定結果に応じて前記排便補助装置の動作制御を段階的に行う請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトイレ設備。
【請求項5】
前記被接触部は、前記ユーザの手により握られる握り部であり、
前記圧力検出手段は、前記ユーザが前記握り部を握る力の大きさを検出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトイレ設備。
【請求項6】
前記握り部は、外径が一端から他端に向かって連続的に小さくなっている円柱状に形成されており、前記ユーザの側方にて前記外径の大きい方が小さい方より上方に位置するように斜めに設置されている請求項5に記載のトイレ設備。
【請求項7】
前記被接触部は、前記ユーザが足で踏むトイレの床であり、
前記圧力検出手段は、前記ユーザが前記トイレの床に加える圧力の大きさを検出する足側検出手段である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトイレ設備。
【請求項8】
前記圧力検出手段の検出結果に関する情報を報知する報知装置を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記報知装置の動作制御を行う請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトイレ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−243218(P2009−243218A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93127(P2008−93127)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】