説明

トウモロコシイベントTC1507およびそれを検出するための方法

【課題】植物細胞および植物で発現された場合に昆虫に対する耐性を与えるDNA構築物を提供する。
【解決手段】本発明は、植物細胞および植物で発現された場合に植物細胞および植物に対して昆虫抵抗性を与える宿主細胞への導入および該宿主細胞内での複製が可能なDNA構築物を提供する。DNA構築物は、PHI8999Aと命名されたDNA分子から構成され、2つの導入遺伝子発現カセットを含む。上記DNA構築物を含む植物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、植物分子生物学の分野に関し、詳しくは、本発明は植物に対して昆虫抵抗性を与えるためのDNA構築物に関する。さらに詳しくは、本発明は昆虫抵抗性トウモロコシ植物TC1507と、サンプル中のトウモロコシ植物TC1507DNAおよびその組成物の存在を検出するためのアッセイとに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、昆虫抵抗性トウモロコシ(Zea mays)植物TC1507(トウモロコシTC1507系統もしくはトウモロコシのイベントTC1507とも呼ばれる)と、トウモロコシ植物TC1507のDNA植物発現構築物ならびにトウモロコシ植物TC1507およびその子孫にある導入遺伝子/隣接挿入領域の検出とに関する。
【0003】
トウモロコシは重要な作物であり、世界中の多くの地域で主要な食糧源となっている。昆虫に起因する損害は、化学的殺虫剤等の防御手段の使用にもかかわらず、世界中のトウモロコシ作物損失の主要要因である。この観点から考えると、虫害を制御するために、また従来の化学的殺虫剤の必要性を少なくするために、虫抵抗性がトウモロコシ等の作物に遺伝子組換えによって取り込まれてきた。トランスジェニック昆虫抵抗性作物を生産するために利用されてきた一群の遺伝子は、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)のデルタエンドトキシンである。デルタエンドトキシンは、トウモロコシと同様に、綿、ジャガイモ、米、ひまわり等の作物で成功裏に発現されており、害虫に対して優れた防御をもたらすことが証明されている(Perlak,F.Jら(1990)Bio/Technology 8、939−943;Perlak,F.J.ら(1993)Plant Mol.Biol.22:313−321;Fujimoto H.ら(1993)Bio/Technology 11:1151−1155;Tuら(2000)Nature Biotechnology 18:1101−1104;PCT公開番号WO 01/13731;およびBing J Wら(2000)Efficacy of Cry1F Transgenic Maize,14th Biennial International Plant Resistance to Insects Workshop,Fort Collins,CO)。
【0004】
植物での外来遺伝子の発現は、その植物のゲノム内での外来遺伝子の位置によって影響されることが知られており、このような影響は、おそらくクロマチン構造(例えば、ヘテロクロマチン)もしくは組込部位近傍の転写制御因子(例えば、エンハンサー)の近接性によると考えられる(Weisingら,Ann.Rev.Genet 22:421−477,1988)。同時に、ゲノム内の異なる位置にある導入遺伝子の存在は、異なる方法での植物の全体的な表現系に影響する。このことから、目的とする導入遺伝子の最適な発現によって特徴づけられるイベントを同定するために数多くのイベントをスクリーニングする必要がたびたび生ずる。例えば、導入遺伝子の発現レベルがイベント間で多種多様となり得ることが、植物および他の生物で観察されている。また、空間的または一時的発現パターンの違い(例えば、導入遺伝子構築物に存在する転写制御因子から予想されるパターンとは一致しないと思われる種々の植物組織での導入遺伝子の相対的発現の違い)もあると考えられる。この理由から、何百、何千もの異なるイベントを作り出し、これらのイベントを、商業目的のために所望の導入遺伝子発現レベルおよびパターンを有する単一のイベントについてスクリーニングすることが、一般的である。所望のレベルまたはパターンの導入遺伝子を持つイベントは、従来の育種法を用いた異系交配による他の遺伝的バックグラウンドへの導入遺伝子の遺伝子移入にとって、有用である。そのような交配の子孫は、元の形質転換体の特徴である導入遺伝子発現を維持する。この戦略は、局所的な成長条件に十分適応されるいくつかの種での信頼できる遺伝子発現を確かなものにすることに用いられる。
【0005】
交配による子孫が目的の導入遺伝子を含むかどうかを判断するために、特定のイベントの存在を検出することが可能であることが、有利であると思われる。また、特定のイベントを検出することは、市販前の承認に必要な規則および遺伝子組換え作物由来食品の表示付けに必要な規則に従う上で、野外での作物の形質モニタリングや環境モニタリングで使用する上で、あるいは収穫された作物に由来する製品のモニタリングをおこなう上で、さらにまた規定もしくは契約条件に制約された当事者のコンプライアンスを確実にする上で、有用である。
【0006】
限定されるものではないが、核酸プローブを用いたDNAハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ鎖反応(PCR)等の任意の公知核酸検出方法によって、導入遺伝子の存在を検出することが可能である。これらの検出方法は、一般に、頻繁に使用される遺伝的因子(例えば、プロモーター、ターミネーター、およびマーカー遺伝子)に焦点を当てている。なぜなら、多くのDNA構築物では、コード領域が互いに置換可能であるからである。その結果、それらの方法は、挿入された非相同DNAに隣接した隣接DNAのDNA配列が知られていない限り、異なるイベント間、特に同一DNA構築物またはかなり類似した構築物を用いて作られるイベント間の違いを識別する上で有用ではないと思われる。例えば、イベント特異的PCRアッセイが、優良GAT−ZM1の検出に関する米国特許第6,395,485号に開示されている。したがって、イベントTC1507の同定のための単純かつ判別可能な方法を有することが求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、好ましくは、昆虫抵抗性単子葉植物作物の生産および選択のための方法に関する。より詳しくは、植物細胞および植物で発現された場合に昆虫に対する耐性を与えるDNA構築物が提供される。したがって、本発明の第1の局面によれば、植物細胞および植物で発現された場合に植物細胞および植物に対して昆虫抵抗性を与える宿主細胞への導入および該宿主細胞内での複製が可能なDNA構築物が提供される。DNA構築物は、PHI8999Aと命名されたDNA分子から構成され、2つの導入遺伝子発現カセットを含む。第1の発現カセットは、プロモーター、5’非翻訳エキソン、およびアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)から単離された3’ORF25 転写終結因子を含むDNA分子(Barkerら(1983)Plant Mol.Biol.2:335−350)に作用自在に結合したCRy1Fとして同定されるB.t.δ−エンドトキシンをコードするDNA分子(米国特許第5,188,960号および第6,218,188号)に作用自在に結合したトウモロコシユビキチン(Ubni−1)遺伝子(Christensenら(1992)Plant Mol.Biol.18:675−689およびChristensen and Quail(1996)Transgenic Res..5:213−218)の第1のイントロンを含むDNA分子を有する。上記DNA構築物の第2の導入遺伝子発現カセットは、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター由来の3’転写終結因子を含むDNA分子(Mitsuharaら(1996)Plant Cell Physiol.37:49−59を参照せよ)に作用自在に結合したホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子をコードするDNA分子(Wohlleben W.ら(1988)Gene 70:25−37)に作用自在に結合したCaMV35SプロモーターのDNA分子(Odell J.T.ら(1985)Nature 313:810−812;Mitsuharaら(1996)Plant Cell Physiol.37:49−59)を有する。上記DNA構築物を含む植物も提供される。
【0008】
本発明の別の局面によれば、TC1507と表された新規のトウモロコシ植物を同定するために組成物および方法が提供され、該方法はTC1507の5’および/または3’隣接配列を特異的に認識するプライマーまたはプローブに基づく。PCR反応で利用された場合、遺伝子組換えイベントTC1507に特有の単位複製配列を生ずるプライマー配列を含むDNA分子が提供される。これらの分子を、
5’−GTAGTACTATAGATTATATTATTCGTAGAG−3’(配列番号1);
5’−GCCATACAGAACTCAAAATCTTTTCCGGAG−3’(配列番号2);
5’−CTTCAAACAAGTGTGACAAA−3’(配列番号23);
5’−TGTGGTGTTTGTGGCTCTGTCCTAA−3’(配列番号3);
5’−AGCACCTTTTCATTCTTTCATATAC−3’(配列番号4);
5’−GACCTCCCCACAGGCATGATTGATC−3’;(配列番号5)
からなる群ならびにそれらの相補体からなる群より選択することが可能である。これらの分子を含むトウモロコシ植物および種子は、本発明の一局面である。さらに、上記イベントTC1507の同定のためのそれらのプライマー配列を利用するキットが提供される。
【0009】
本発明の別の局面は、本明細書に記載したTC1507の特異的隣接配列に関し、該配列は生物学的サンプルのTC1507に対する特異的な同定方法を開発するのに用いられ得る。より詳しくは、本発明は配列番号21、配列番号22、およびTC1507の5’/または3’隣接領域に関し、これらは特異的なプライマーおよびプローブの開発に使用し得る。本発明はさらに、そのような特異的プライマーまたはプローブの使用に基づいて生物学的サンプル中のTC1507の存在を同定する方法に関する。
【0010】
本発明の別の局面によれば、サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507に対応するDNAの存在を検出する方法が提供される。そのような方法は、(a)DNAを含むサンプルを、トウモロコシのイベントTC1507から抽出したゲノムDNAによる核酸増幅反応で使用した場合に、トウモロコシのイベントTC1507にとって特徴的な単位複製配列を作るDNAプライマーセットと接触させること、(b)核酸増幅反応を実施することで、単位複製配列を生成すること、ならびに(c)この単位複製配列を検出することを含む。
【0011】
新規導入遺伝子/隣接挿入領域、配列番号26、および配列番号27を含み、また配列番号26および配列番号27に対して相同または相補的であるDNA分子が、本発明の一局面である。
【0012】
新規導入遺伝子/隣接挿入領域、配列番号26を含むDNA配列が本発明の一局面である。トウモロコシ植物TC1507にとって特徴的な単位複製配列産物の生産のためのプライマー配列として有用である、導入遺伝子挿入配列の十分な長さのポリヌクレオチドと配列番号26のトウモロコシ植物TC1507由来のトウモロコシゲノムおよび/または隣接配列の十分な長さのポリヌクレオチドとが含まれるDNA配列が挙げられる。
【0013】
また、新規導入遺伝子/隣接挿入領域、配列番号27を含むDNA配列が本発明の一局面である。トウモロコシ植物TC1507にとって特徴的な単位複製配列産物の生産のためのプライマー配列として有用である、導入遺伝子挿入配列の十分な長さのポリヌクレオチドと配列番号27のトウモロコシ植物TC1507由来のトウモロコシゲノムおよび/または隣接配列の十分な長さのポリヌクレオチドとが含まれるDNA配列が挙げられる。
【0014】
本発明の別の局面によれば、配列番号26のDNA配列の導入遺伝子部分の少なくとも11以上のヌクレオチドまたはそれらの相補体と、配列番号26の同様の長さのトウモロコシの5’隣接DNA配列またはそれらの相補体とを含むDNA配列が、DNA増幅方法でDNAプライマーとして有用である。これらのプライマーを用いて生産された単位複製配列は、トウモロコシのイベントTC1507にとって特徴的である。したがって、本発明はまた、配列番号26に相同または相補的なDNAプライマーによって生産される単位複製配列を包含する。
【0015】
本発明の別の局面によれば、配列番号27のDNA配列の導入遺伝子部分の少なくとも11以上のヌクレオチドまたはそれらの相補体と、配列番号27の同様の長さのトウモロコシの3’隣接DNA配列またはそれらの相補体とを含むDNA配列が、DNA増幅方法でDNAプライマーとして有用である。これらのプライマーを用いて生産された単位複製配列は、トウモロコシのイベントTC1507にとって特徴的である。したがって、本発明はまた、配列番号27に相同または相補的なDNAプライマーによって生産される単位複製配列を包含する。
【0016】
より詳しくは、DNA分子が配列番号1もしくはその相補体および配列番号2もしくはその相補体;配列番号2もしくはその相補体および配列番号23もしくはその相補体;配列番号3もしくはその相補体および配列番号5もしくはその相補体;配列番号4もしくはその相補体および配列番号5もしくはその相補体として同定されるDNAプライマーセットを含む一対のDNA分子が、本発明の局面である。
【0017】
本発明のさらなる局面は、配列番号1および配列番号2のDNA分子を含む単位複製配列;配列番号2および配列番号23のDNA分子を含む単位複製配列;配列番号3および配列番号5のDNA分子を含む単位複製配列;ならびに配列番号4および配列番号5のDNA分子を含む単位複製配列を包含する。
【0018】
本発明の別の局面によれば、サンプル中のイベントTC1507に対応するDNA分子の存在を検出する方法であって、該方法は、(a)トウモロコシ植物から抽出したDNAを含むサンプルを、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でトウモロコシのイベントTC1507から抽出したDNAとハイブリダイズする一方でストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でコントロールトウモロコシ植物DNAとハイブリダイズしない分子であるDNAプローブと接触させること、(b)上記サンプルおよびプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件にさらすこと、ならびに(c)DNAに対するプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含む。より詳しくは、サンプル中のイベントTC1507に対応するDNA分子の存在を検出する方法は、(a)トウモロコシ植物から抽出されたDNAを含むサンプルを、そのイベントに特有な配列(例えば連結配列)からなるDNAプローブ分子であって、トウモロコシのイベントTC1507から抽出されるDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズし、かつそのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でコントロールトウモロコシ植物DNAとはハイブリダイズしないDNAプローブ分子とハイブリダイズさせること、(b)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件にサンプルおよびプローブをさらすこと、ならびに(c)DNAに対するプローブのハイブリダイゼーションを検出すること、からなる。
【0019】
さらに、配列番号24内のTC1507特異的領域を検出する生物学的サンプル内のイベントTC1507を同定するためのキットおよび方法が提供される。
【0020】
配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、および57からなる群より選択される配列または該配列の相補体からなる群より選択されるTC1507の少なくとも1つの結合配列を含むDNA分子が提供され、結合配列は、ゲノムに挿入された非相同DNAと挿入部位に隣接するトウモロコシ細胞由来のDNA(すなわち、隣接DNA)とのあいだの結合を補い、イベントTC1507にとって特徴的である。
【0021】
本発明の別の局面によれば、昆虫抵抗性トウモロコシ植物を生産する方法は、(a)昆虫抵抗性を与える本発明の発現カセットを含む第1のトウモロコシ親系統と昆虫抵抗性が欠如した第2のトウモロコシ親系統とを交配させることで、複数の後代植物を生産すること、ならびに(b)昆虫抵抗性である後代植物を選択すること、を含む。そのような方法は、第2のトウモロコシ親系統に対して後代植物を戻し交配することで、昆虫抵抗性であるトウモロコシ植物の純粋種トウモロコシ植物を生産するさらなるステップを、任意に含むものであってもよい。
【0022】
本発明は、昆虫抵抗性であるトウモロコシ植物を生産する方法であって、DNA構築物PHI8999A(配列番号25)によってトウモロコシ植物細胞を形質転換すること、形質転換されたトウモロコシ細胞をトウモロコシ植物に成長させること、昆虫抵抗性を示すトウモロコシ植物を選択すること、ならびにトウモロコシ植物を稔性トウモロコシ植物に成長させること、を含む方法を提供する。上記稔性トウモロコシ植物を、自家受粉または適合性のあるトウモロコシ種と交配して、昆虫抵抗性の子孫を得ることができる。
【0023】
本発明はさらに、生物学的サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507を同定するためのDNA検出キットに関する。好ましくは、本発明のキットは、PCR同定プロトコルで使用するために、TC1507の5’もしくは3’隣接領域を特異的に認識する第1のプライマーと、TC1507の外来DNA内または隣接DNA内の配列を特異的に認識する第2のプライマーとを含む。本発明もまた、イベントTC1507の特異的領域と80%ないし100%の配列同一性を持つ配列に一致または該配列に相補的である配列を有する特異的プローブを含む、生物学的サンプル中のイベントTC1507を同定するためのキットを提供する。好ましくは、プローブの配列は、イベントTC1507の5’または3’ 隣接領域の一部を含む特異的領域に対応する。
【0024】
本発明によって包含される方法およびキットを、以下に限定されるものではないが、植物、植物材料、あるいは限定されるものでないが、植物材料を含む、もしくは該植物材料から作られた食物もしくは飼料製品(生または加工済み)等の製品に含まれるイベントTC1507を同定すること等の異なる目的のために、用いることができる。さらに、あるいはそれに代わって、本発明の方法およびキットを、遺伝子組換え材料と非遺伝子組換え材料とのあいだの分離を目的として遺伝子組換え植物材料の同定に用いることできる。さらに、あるいはその代わりに、本発明の方法およびキットを、トウモロコシのTC150イベントを含む植物材料の品質を決定するのに用いることができる。キットは、上記検出方法を実行するために必要な試薬および材料を含むものであってもよい。
【0025】
本発明はさらに、TC1507トウモロコシ植物またはその一部に関するもので、該一部として、限定されるものではないが、トウモロコシ植物TC1507およびそれに由来する子孫の花粉、胚珠、栄養細胞、花粉細胞の核、および卵細胞の核が挙げられる。本発明のDNAプライマー分子が特異的単位複製配列産物を与えるトウモロコシ植物および種子TC1507は、本発明の一局面である。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
単離DNA分子であって、配列番号21として同定されたヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子。
(項目2)
単離DNA分子であって、配列番号22として同定されたヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子。
(項目3)
単離DNA分子であって、配列番号24として同定されたヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子。
(項目4)
単離DNA分子であって、配列番号26として同定されたヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子。
(項目5)
単離DNA分子であって、配列番号27として同定されたヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子。
(項目6)
TC1507特異的領域を検出する生物学的サンプル内のイベントTC1507を同定するためのキットであって、該キットは、少なくとも第1のプライマーを備え、該第1のプライマーが配列番号21内の配列または配列番号22内の配列を認識する、キット。
(項目7)
配列番号25内の配列を認識する少なくとも第2のプライマーを、さらに備える、項目6に記載のキット。
(項目8)
配列番号22内の配列を認識する少なくとも第2のプライマーを、さらに含む、項目6に記載のキット。
(項目9)
前記第1のプライマーが配列番号21内の配列を認識する、項目6に記載のキット。
(項目10)
前記第1のプライマーが配列番号22内の配列を認識する、項目6に記載のキット。
(項目11)
前記少なくとも第1および第2のプライマーがそれぞれ配列番号1の配列および配列番号2の配列を含む、項目7に記載のキット。
(項目12)
前記少なくとも第1および第2のプライマーがそれぞれ配列番号2の配列および配列番号23の配列を含む、項目7に記載のキット。
(項目13)
前記少なくとも第1および第2のプライマーがそれぞれ配列番号3の配列および配列番号5の配列を含む、項目8に記載のキット。
(項目14)
前記少なくとも第1および第2のプライマーがそれぞれ配列番号4の配列および配列番号5の配列を含む、項目8に記載のキット。
(項目15)
トウモロコシのイベントTC1507およびその子孫のジャンクションDNAに対して特異的なDNA検出キットであって、配列番号26に対して相同的または相補的であるDNA検出法で機能するのに十分な長さの隣接DNAポリヌクレオチドの少なくとも1つのDNA分子を備える、DNA検出キット。
(項目16)
トウモロコシのイベントTC1507およびその子孫のジャンクションDNAに対して特異的なDNA検出キットであって、配列番号27に対して相同的または相補的であるDNA検出法で機能するのに十分な長さの隣接DNAポリヌクレオチドの少なくとも1つのDNA分子を備える、DNA検出キット。
(項目17)
生物学的サンプル内のイベントTC1507を同定するためのキットであって、それと隣接する配列番号21および配列25とハイブリダイズする配列を含む特異的プローブを備える、キット。
(項目18)
生物学的サンプル内のイベントTC1507を同定するためのキットであって、それと隣接する配列番号22および配列25とハイブリダイズする配列を含む特異的プローブを備える、キット。
(項目19)
DNA検出キットであって、該キットは、以下:トウモロコシのイベントTC1507およびその子孫に対して特異的なDNAプライマーまたはプローブとして機能する配列番号26または配列番号27に対して相同または相補的な十分な長さの隣接ヌクレオチドの少なくとも1つのDNA分子を備える、DNA検出キット。
(項目20)
DNA構築物であって、該DNA構築物は、以下:第1の発現カセットおよび第2の発現カセットを含み、作用可能な連結で該第1の発現カセットが、
(a)トウモロコシユビキチンプロモーター;
(b)トウモロコシユビキチン遺伝子の5’非翻訳エキソンと;
(c)トウモロコシユビキチンイントロン;
(d)Cry1FコードDNA分子;および
(e)3’ORF25転写終結因子を含み、作用可能な連結で該第2の発現カセットが、
(i)CaMV35Sプロモーター;
(ii)patコードDNA分子;および
(iii)(CaMV)35S由来の3’転写終結因子を含む、DNA構築物。
(項目21)
項目20に記載のDNA構築物を含む、植物。
(項目22)
前記植物がトウモロコシ植物である、項目21の植物。
(項目23)
生物学的サンプル中のイベントTC1507を同定するための方法であって、該方法は、配列番号21および配列番号22内の配列を特異的に認識するプローブまたは第1のプライマーを用いてTC1507特異的領域を検出する工程を包含する、方法。
(項目24)
少なくとも2種類のプライマーを用いたポリメラーゼ鎖反応を使用して前記生物学的サンプル中に存在する核酸からDNAフラグメントを増幅する工程をさらに包含し、前記第1のプライマーが配列番号21または配列番号22内の配列を認識し、そして第2のプライマーが配列番号22または配列番号25内の配列を認識する、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記第1のプライマーが配列番号21内の配列を認識し、前記第2のプライマーが配列番号25内の配列を認識する、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記第1のプライマーが配列番号22内の配列を認識し、前記第2のプライマーが配列番号22内の配列を認識する、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記第1のプライマーおよび前記第2のプライマーがそれぞれ、配列番号2の配列および配列番号1の配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記第1のプライマーおよび前記第2のプライマーがそれぞれ、配列番号2の配列および配列番号23の配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記第1のプライマーおよび前記第2のプライマーがそれぞれ、配列番号3の配列および配列番号5の配列を含む、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記第1のプライマーおよび前記第2のプライマーがそれぞれ、配列番号4の配列および配列番号5の配列を含む、項目26に記載の方法。
(項目31)
TC1507 PCR同定プロトコルを用いて、約912bpのフラグメントを増幅する工程を包含する、項目27に記載の方法。
(項目32)
TC1507 PCR同定プロトコルを用いて、約844bpのフラグメントを増幅する工程を包含する、項目28に記載の方法。
(項目33)
TC1507 PCR同定プロトコルを用いて、約342bpのフラグメントを増幅する工程を包含する、項目29に記載の方法。
(項目34)
TC1507 PCR同定プロトコルを用いて、約252bpのフラグメントを増幅する工程を包含する、項目30に記載の方法。
(項目35)
生物学的サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507またはその子孫の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該生物学的サンプルからDNAサンプルを抽出する工程;
(b)DNAプライマー分子である配列番号1および配列番号2を提供する工程;
(c)DNA増幅反応条件を提供する工程;
(d)該DNA増幅反応を実行して、それによってDNA単位複製配列分子を生成する工程;および
(e)該DNA単位複製配列分子を検出する工程であって、ここで、該DNA増幅反応での該DNA単位複製配列分子の検出がトウモロコシのイベントTC1507の存在を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目36)
生物学的サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507またはその子孫の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該生物学的サンプルからDNAサンプルを抽出する工程;
(b)DNAプライマー分子である配列番号2および配列番号23を提供する工程;
(c)DNA増幅反応条件を提供する工程;
(d)該DNA増幅反応を実行して、それによってDNA単位複製配列分子を生成する工程;および
(e)該DNA単位複製配列分子を検出する工程であって、ここで、該DNA増幅反応での該DNA単位複製配列分子の検出がトウモロコシのイベントTC1507の存在を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目37)
生物学的サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507またはその子孫の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該生物学的サンプルからDNAサンプルを抽出する工程;
(b)DNAプライマー分子である配列番号3および配列番号5を提供する工程;
(c)DNA増幅反応条件を提供する工程;
(d)該DNA増幅反応を実行して、それによってDNA単位複製配列分子を生成する工程;および
(e)該DNA単位複製配列分子を検出する工程であって、ここで、該DNA増幅反応での該DNA単位複製配列分子の検出がトウモロコシのイベントTC1507の存在を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目38)
生物学的サンプル中のトウモロコシのイベントTC1507またはその子孫の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該生物学的サンプルからDNAサンプルを抽出する工程;
(b)DNAプライマー分子である配列番号4および配列番号5を提供する工程;
(c)DNA増幅反応条件を提供する工程;
(d)該DNA増幅反応を実行して、それによってDNA単位複製配列分子を生成する工程;および
(e)該DNA単位複製配列分子を検出する工程であって、ここで、該DNA増幅反応での該DNA単位複製配列分子の検出がトウモロコシのイベントTC1507の存在を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目39)
項目35に記載の方法によって生産された単位複製配列を含む、単離DNA。
(項目40)
項目36に記載の方法によって生産された単位複製配列を含む、単離DNA分子。
(項目41)
項目37に記載の方法によって生産された単位複製配列を含む、単離DNA分子。
(項目42)
項目38に記載の方法によって生産された単位複製配列を含む、単離DNA分子。
(項目43)
サンプル中のTC1507イベントに対応するDNAの存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
a.トウモロコシDNAを含むサンプルと、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でトウモロコシのイベントTC1507に由来するDNAとハイブリダイズし、該ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でTC1507でないトウモロコシ植物DNAとハイブリダイズしないポリヌクレオチドプローブとを接触させる工程;
b.該サンプルおよびプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供する工程;ならびに
c.該DNAに対する該プローブのハイブリダイゼーションを検出する工程であって、ここで、ハイブリダイゼーションの検出が該TC1507イベントの存在を示す、工程、を包含する、方法。
(項目44)
配列番号1、2、3、4、5、23、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57からなる群よりなる群より選択される配列またはその相補体を含む、単離DNAヌクレオチドプライマー配列。
(項目45)
配列番号1、2、3、4、5、および23からなる群より選択される配列またはその相補体を含む、項目44に記載の単離DNAヌクレオチドプライマー。
(項目46)
一対のDNA分子であって、該一対のDNA分子は、以下:第1のDNA分子と第2のDNA分子とを含み、ここで、該DNA分子が、TC1507トウモロコシ植物またはその子孫から抽出されたDNAにとって特徴的であるDNAプライマーまたはプローブとして機能するために十分な長さの、配列番号26の隣接ヌクレオチドまたはその相補体である、一対のDNA分子。
(項目47)
一対のDNA分子であって、該一対のDNA分子は、以下:第1のDNA分子と第2のDNA分子とを含み、ここで、該DNA分子が、TC1507トウモロコシ植物またはその子孫から抽出されたDNAにとって特徴的であるDNAプライマーまたはプローブとして機能するために十分な長さの、配列番号27の隣接ヌクレオチドまたはその相補体である、一対のDNA分子。
(項目48)
配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57からなる群より選択される配列またはその相補体を含むジャンクション配列を含む、単離DNA分子。
(項目49)
種子サンプル中で、配列番号21または配列番号22内の配列を特異的に認識する特異的プライマーまたはプローブを用いて、TC1507特異的領域を検出する工程を包含する、種子純度を確認するための方法。
(項目50)
イベントTC1507の存在について種子をスクリーニングする方法であって、1つの種子ロットのサンプル中で、配列番号21または配列番号22内の配列を特異的に認識する特異的プライマーまたはプローブを用いて、TC1507特異的領域を検出する工程を包含する、方法。
(項目51)
昆虫抵抗性トウモロコシ植物、またはその一部分であって、ここで、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそのそれらの相補体からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を有するDNAが、該植物のゲノムの一部分を形成する、昆虫抵抗性トウモロコシ植物、またはその一部分。
(項目52)
項目51に記載の昆虫抵抗性トウモロコシ植物の後代植物であって、ここで、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそれらの相補体からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を有するDNAが、該植物のゲノムの一部分を形成する、後代植物。
(項目53)
項目51または52に記載の植物の種子。
(項目54)
昆虫抵抗性トウモロコシ植物を生産するための方法であって、該方法は、項目51または52に記載の植物を用いて育種する工程、ならびに配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそれらの相補体からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列について分析することによって子孫を選択する工程、を包含する方法。
(項目55)
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、23、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57からなる群より選択される少なくとも1つのDNAならびにそれらの相補体からなる群より選択される配列を含む、単離DNA配列。
(項目56)
一対の単離DNA配列であって、その各々が、少なくとも10個のヌクレオチドを含み、かつDNA増幅手順で一緒に使用される場合、イベントTC1507にとって特徴的な単位複製配列を生産する、一対の単離DNA配列。
(項目57)
各々が配列番号26から選択される、項目56に記載の一対の単離DNA配列。
(項目58)
各々が配列番号27から選択される、項目56に記載の一対の単離DNA配列。
(項目59)
トウモロコシ組織へのTC1507イベント挿入の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)プライマー対の各メンバーが、該TC1507イベント挿入にとって特徴的な配列の反対側にある、配列番号26または配列番号27由来の少なくとも10個のヌクレオチドを、各々、含むプライマー対を選択する工程;
(b)該トウモロコシ組織のサンプルと該プライマー対とを接触させる工程;および
(c)DNA増幅を実行し、そして単位複製配列について分析する工程、
を包含する、方法。
(項目60)
前記プライマー対が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、23、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57およびそれらの相補体からなる群より選択される、項目59に記載の方法。
(項目61)
トウモロコシ組織へのイベントTC1507挿入の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下:
(a)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で該トウモロコシ組織のサンプルと、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそれらの相補体からなる群より選択される1つ以上のDNA配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブとを接触させる工程;
(b)該サンプルおよびプローブを、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供する工程;ならびに
(c)該プローブのハイブリダイゼーションについて分析する工程、
包含する、方法。
(項目62)
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそれらの相補体からなる群より選択される1つ以上のDNA配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを備える、DNA検出キット。
(項目63)
DNA検出キットであって、該DNA検出キットは、プライマー対を備え、該プライマーは、配列番号26および配列番号27由来の少なくとも10個のヌクレオチドを各々含み、ここで、各々が、TC1507イベント挿入にとって特徴的な配列の反対側にある、DNA検出キット。
(項目64)
前記プライマー対が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、23、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56および57ならびにそれらの相補体からなる群より選択される、項目61に記載のDNA検出キット。
(項目65)
生物学的サンプル中のイベントTC1507を同定するためのキットであって、配列番号24内のTC1507特異的領域を検出する、キット。
(項目66)
生物学的サンプル中のTC1507を同定するための方法であって、配列番号24内のTC1507特異的領域を検出する、方法。
本発明の上記局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付した図面から、よりいっそう明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、トランスジェニック挿入PHI8999Aとともに、そのトランスジェニック挿入に隣接する配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
以下の定義および方法は、本発明をより良く定義するために、また本発明の実施に際して当業者を導くために、提供される。特に示さない限り、用語は関連技術分野における当業者の慣例的用法にしたがって理解される。また、分子生物学での共通する用語の定義も、Riegerら,Glossary of Genetics:Classical and Molecular、第5版、Springer−Verlag;New York,1991;およびLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に見いだされよう。37CFR1.822に記載のDNA塩基についての命名法が用いられる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「含む(comprising)」という表現は「限定されるものではないが含まれる(including but not limited to)」ことを意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「トウモロコシ(corn)」という用語は、ズィーメイス(Zea mays)またはトウモロコシ(maize)を意味するもので、トウモロコシの野生種を含むトウモロコシと交配し得るすべての植物種を包含する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「TC1507特異的」という用語は、植物、植物材料、あるいは限定されるものでないが、植物材料を含む、もしくは該植物材料から作られた食物もしくは飼料製品(生または加工済み)等の製品に含まれるイベントTC1507を識別可能に同定することに適したヌクレオチド配列のことをいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「昆虫抵抗性(insect resistant)」および「害虫に影響を及ぼす(impacting insect pests))」という表現は、昆虫の任意の発育段階での摂食、増殖、および/または行動に変化をもたらすことをいい、昆虫を殺すこと、成長を遅らせること、生殖能を抑制すること等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「殺虫活性(pesticidal activity)」および「殺虫力(insecticidal activity)」という表現は、数多くのパラメーターによって測定し得る生物または物質(例えば、タンパク質)の活性に言及するために同義的に使われる。上記パラメーターとして、限定されるものではないが、適当な時間にわたって生物または物質に対して給餌および/または暴露した後の害虫致死率、害虫体重減少、害虫誘引、害虫忌避性、ならびに害虫の他の行動的および生理的変化が挙げられる。例えば、「殺虫性タンパク質(pesticidal proteins)」は、単独で、あるいは他のタンパク質と組み合わさって、殺虫活性を示すタンパク質である。
【0033】
「コード配列(coding sequence)」とは、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のことをいう。本明細書中で使用される場合、特定の核酸に関する文脈のなかで用いられる場合、「コードしている(encoding)」または「コードされている(encoded)」という表現は、特定のタンパク質にヌクレオチド配列が翻訳されるのを導くために必須の情報を上記核酸が含むことを意味する。タンパク質がコードされている核酸は、核酸の翻訳領域内に非翻訳配列(例えば、イントロン)を含むものであってもよく、あるいはそのような介在非翻訳配列が欠けたもの(例えば、cDNAにあるようなもの)であってもよい。
【0034】
遺伝子(gene)は、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントのことをいい、コード配列の上流にある制御配列(5’非コード配列)および該コード領域の下流にある制御配列(3’非コード配列)が挙げられる。「天然遺伝子(native gene)」は、自然界で見いだされるような遺伝子のことをいい、それ自身の制御配列を有する。「キメラ遺伝子(chimeric gene)は、天然遺伝子ではない任意の遺伝子をいい、自然界では一緒には見いだされない調節配列とコード配列とを含む。したがって、キメラ遺伝子は異なる源に由来する調節配列およびコード配列を含むものであってもよいし、あるいは同一の源に由来する調節配列およびコード配列を含むものであってもよいけれども、自然界で見いだされるものとは異なる様式で配置されている。「内因性遺伝子(endogenous gene)」は、生物のゲノム中の本来の位置にある天然遺伝子のことをいう。「外来(foreign)」とは目的とする位置に通常見いだされてない物質をいう。したがって、「外来DNA(foreign DNA)」は、新たに導入された植物の再配列DNAと組換えDNAとを含むものであってもよい。「外来」遺伝子は、宿主生物で通常見いだされない遺伝子のことをいうが、遺伝子導入によって宿主生物に導入される。外来遺伝子は、非天然生物に導入された天然遺伝子、あるいはキメラ遺伝子を含むことができる。「導入遺伝子(transgene)」は、形質転換という手段によってゲノムに導入された遺伝子である。組換えDNAが挿入されている植物ゲノム内の部位を、「挿入部位(insertion site)」または「標的部位(target site)」ということもある。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「挿入DNA(insert DNA)」は植物材料を形質転換させるために用いられる発現カセット内の異質DNAのことをいい、一方「隣接DNA(flanking DNA)」は植物等の生物に天然に存在するゲノムDNAあるいは形質転換イベントに関連したフラグメント等の本来の挿入DNA分子にとって異物である形質転換プロセスを介して導入された外来(異質)DNAのいずれかの存在であり得る。本明細書で用いられる「隣接領域(flanking region)」または「隣接配列(flanking sequence)」とは、少なくとも20塩基対、好ましくは少なくとも50塩基対、さらに最大で5,000塩基対の配列であり、元の外来挿入DNA分子の直上流かつ隣接して、あるいは直下流かつ隣接して位置している。外来DNAの無秩序な組込みをもたらす形質転換の手順は、各々の形質転換体にとって特徴的かつ固有の異なる隣接領域を含む形質転換体を生ずる。組換えDNAが従来通りの交配を介して植物に導入される場合、その隣接領域は一般に変化しない。形質転換体は、異質挿入DNAの一断片とゲノムDNAとの間、ゲノムDNAの2断片間、あるいは異質DNAの2断片間の固有な連結も含む。「連結(junction)」は、2つの特定のDNA断片が結合する1つの点である。例えば、挿入DNAが隣接DNAと結合するところに連結が存在する。連結点もまた、天然の生物に見いだされるものから改変されるかたちで2つのDNA断片が互いに結合している形質転換生物に存在する。「連結DNA(junction DNA)」とは、連結点を含むDNAのことをいう。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「非相同(heterologous)」とは外来種に由来する核酸である核酸のことをいい、あるいは同一種に由来するものであれば、意図的になされるヒトの干渉によって、組成および/またはゲノム遺伝子座が天然の形態から実質的に改変されている核酸のことをいう。例えば、非相同ヌクレオチド配列に作用自在に結合したプロモーターを、ヌクレオチド配列が由来する種とは異なる種から由来するものとすることができ、あるいは同一種に由来するものであるならば、ヌクレオチド配列に作用自在に結合することが自然には見いだされないプロモーターである。非相同タンパク質は、外来種に由来するものであってもよく、あるいはもし同一種に由来するものであるならば、意図的にされるヒトの干渉によって元の形態から実質的に改変される。
【0037】
「制御配列(regulatory sequence)」とは、コード配列の上流に位置したヌクレオチド配列(5’非コード配列)、該コード配列のヌクレオチド配列、あるいは該コード配列内の下流に位置したヌクレオチド配列(3’非コード配列)のことをいい、転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、あるいは関連コード配列の翻訳に影響を及ぼす。制御配列として、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を挙げることができる。
【0038】
「プロモーター(promoter)」とは、コード配列または機能性RNAの発現を制御することが可能なヌクレオチド配列のことをいう。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に位置している。このプロモーター配列は、近位の上流因子とより遠位の上流因子とからなり、後者の因子はしばしばエンハンサーといわれる。したがって、「エンハンサー(enhancer)」は、プロモーター活性を刺激することができるヌクレオチド配列であって、またプロモーターの不活性因子であってもよく、あるいはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を高めるために挿入された非相同因子であってもよい。プロモーターは、天然遺伝子から該プロモーターの全体が由来するものであってもよく、あるいは自然界で見いだされる異なるプロモーターに由来する異なる因子から構成されるプロモーターであってもよく、あるいは合成ヌクレオチド部分から構成されるものであってもよい。異なるプロモーターが異なる組織または細胞種で、あるいは成長の異なる段階で、もしくは異なる環境条件に対する応答のなかで、遺伝子発現を指示することが可能であることが、当業者によって理解される。ほとんどの時間でほとんどの細胞で発現される核酸断片を生ずるプロモーターは、一般に「構成プロモーター(constitutive promoter)と呼ばれる。植物細胞で有用な種々のタイプの新規プロモーターは、常に発見されており、数多くの例がOkamuro and Goldberg(1989)Biochemistry of Plants 15:1−82によるコンパイルで見つかる可能性がある。多くの場合、制御配列の正確な境界は完全には規定されていないことから、異なる長さの核酸フラグメントが同一のプロモーター活性を持つ可能性があると、さらに認められている。
【0039】
「翻訳リーダー配列(translation leader sequence)」とは、遺伝子のプロモーター配列とコード配列とのあいだに位置したヌクレオチド配列のことをいう。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の完全に処理されたmRNA上流に存在する。翻訳リーダー配列は、数多くのパラメーターに作用を及ぼす可能性があり、該パラメーターとして、mRNAに対する一次転写産物のプロセッシング、mRNA安定性、および/または翻訳効率が挙げられる。翻訳リーダー配列の例が記載されている(Turner and Foster(1995)Mol.Biotechnol.3:225−236)。
【0040】
「3’非コード配列(3’non−coding region)」とは、コード配列の下流に位置したヌクレオチド配列のことをいい、ポリアデニル化認識配列とmRNAプロセッシングもしくは遺伝子発現に影響を及ぼし得る制御シグナルをコードする他の配列とが挙げられる。ポリアデニル化シグナルは、一般にmRNA前駆体の3’末端にポリアデニル酸トラクトの付加に作用することによって特徴づけられる。異なる3’非コード配列の使用は、Ingelbrechtら(1989)Plant Cell 1:671−680によって例示される。
【0041】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド内のコード配列によって定まる特定の順番で配置された複数のアミノ酸からなる鎖である。
【0042】
DNA構築物は、互いに結合したDNA分子の集合体であり、1つ以上の発現カセットを提供する。DNA構築物は、細菌細胞での自己複製が可能となったプラスミドであってもよく、機能性遺伝因子(すなわち、特に、プロモーター、イントロン、リーダー、コード配列、および3’末端領域)を提供するDNA分子の導入に有用である種々のエンドヌクレアーゼ酵素制限部位を含む。あるいは、DNA構築物は、DNA分子の直鎖状集合体、例えば1つの発現カセットであってもよい。DNA構築物に含まれる発現カセットは、伝令RNAの転写を生ずるために必須の遺伝因子を含む。発現カセットを、原核細胞もしくは真核細胞で発現するように設計することができる。本発明の発現カセットは、植物細胞で最も好ましく発現するように設計される。
【0043】
本発明のDNA分子は、目的とする生物での発現のための発現カセットに提供される。このカセットは、本発明のコード配列に作用自在に結合した5’および3’調節配列を含む。「作用自在に結合(operably linked)」とは、結合している核酸配列が隣接し合っており、2つのタンパク質コード領域が連結する必要性がある場合、隣接し、かつ同一リーディングフレームにあることを意味する。作用自在に結合することが意図することは、プロモーターと第2の配列とのあいだの機能的結合を示すことであり、その第2の配列に対応したDNA配列の転写の開始および実行にプロモーター配列が関与する。上記カセットに、生物に同時形質転換される少なくとも1つの遺伝子を新たに加えることも可能である。あるいは、追加の遺伝子を多重発現カセットまたは多重DNA構築物に設けることができる。
【0044】
発現カセットは、転写の5’から3’方向に、宿主として働く生物で機能的な転写および翻訳開始領域、コード領域、および転写および翻訳終止領域を含む。転写開始領域(すなわち、プロモーター)は、宿主生物に対して天然もしくは類似、あるいは外来もしくは異質であってもよい。さらに、プロモーターは天然の配列もしくはそれにとって代わるものとして合成配列であってもよい。発現カセットは、発現カセット構築物内に5’リーダー配列をさらに含んでもよい。そのようなリーダー配列は翻訳を高めるように作用することができる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「トランスジェニック」という用語は、非相同核酸の存在によって遺伝子型が変えられた任意の細胞、細胞系統、カルス、組織、植物の一部分、または植物を包含し、そのように改変されたトランスジェニックに加えて、最初のトランスジェニックから交配または無性生殖によって作られたトランスジェニックも含まれる。本明細書で使用される「トランスジェニック」という用語は、従来の植物育種法または自然発生的なイベント(例えば、無作為他家受精、非組換え型ウイルス感染、非組換え型細菌形質転換、非組換え型転位、もしくは偶発突然変異)によって、ゲノム(染色体または染色体外)の変化を含まない。
【0046】
トランスジェニック「イベント(event)」は、異質DNA構築物による植物細胞の形質転換によって生じるもので、目的とする導入遺伝子を含む核酸発現カセット、植物ゲノムへの導入遺伝子の挿入によって生ずる植物集団の再生、および特定のゲノム位置への挿入によって特徴づけられる特定の植物の選択が挙げられる。イベントは、表現型の上では、導入遺伝子の発現によって特徴づけられる。遺伝子レベルでは、イベントは、植物の遺伝学的構成の一部である。「イベント」という用語は、形質転換体と異質DNAを含む他の種とのあいだの外部交配によって生ずる子孫のこともいう。反復親に対する反復戻し交配後でさえ、形質転換された親由来の挿入DNAおよび隣接DNAが同一染色体上の位置に、上記交配の後代に存在する。「イベント」という用語は、挿入DNA(例えば、自家受粉によって生じた子孫および元の形質転換体)を含む親系統と挿入DNAを含まない親系統との交配の結果として、目的とする導入遺伝子を含む挿入DNAを受け取る子孫への転移が期待される挿入DNAに直に隣接した挿入DNAおよび隣接配列を含む形質転換体に由来するDNAのこともいう。
【0047】
昆虫抵抗性TC1507トウモロコシ植物は、遺伝子組換えTC1507トウモロコシ植物から生長したトウモロコシ植物と昆虫抵抗性を与える本発明の発現カセットによる形質転換に由来したその後代とからなる第1の親トウモロコシ植物と、昆虫抵抗性を持たない第2の親トウモロコシ植物とを一代交配させて複数の第一後代植物を作り、次に、昆虫抵抗性の第一後代植物を選択し、この第一後代植物を自家受粉させることで、複数の第2の後代植物を作り、次に第2の後代植物から昆虫抵抗性植物を選択することによって、育種することができる。これらのステップは、さらに、昆虫抵抗性第一後代植物または昆虫抵抗性第二後代植物を第2の親トウモロコシ植物または第3の親トウモロコシ植物と戻し交配することで、昆虫耐性であるトウモロコシ植物が得られる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「植物(plant)」という用語は、全ての植物、植物器官(例えば、葉、茎、および根)、種子、植物細胞、およびその子孫について言及するものである。本発明の範囲内であると理解されるトランスジェニック植物の部分は、例えば、本発明のDNA分子によって事前に形質転換されたトランスジェニック植物またはその子孫に由来する植物細胞、プロトプラスト、組織、カルス、胚、同様に花、茎、果実、葉、および根を含むことから、少なくとも部分的にはトランスジェニック細胞からなるものも本発明の一局面である。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「植物細胞(plant cell)という用語は、限定されることなく、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織細胞領域、カルス組織、葉、根、芽、配偶体、造胞体、花粉、および花粒粉を包含する。本発明の方法で使用し得る植物の網は、通常、形質転換技術に受け入られる高等植物の種類と同程度に広く、単子葉植物および双子葉植物の両方が挙げられる。
【0050】
「形質転換(transformation)」とは、核酸断片を宿主生物のゲノムに移して、遺伝的に安定な遺伝的形質を得ることをいう。形質転換核酸断片を含む宿主生物を「トランスジェニック」生物という。植物形質転換法の例として、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換(De Blaereら(1987)Meth.Enzymol.143:277)および粒子加速もしくは「遺伝子銃(gene gun)」形質転換技術(Kleinら(1987)Nature(London)327:70−73;米国特許第4,945,050号、本明細書で援用)が挙げられる。別の形質転換方法を以下に開示する。
【0051】
したがって、本発明の単離ポリヌクレオチドを組換え体構築物、概してDNA構築物に取り込むことができ、該構築物は宿主細胞への導入および該宿主細胞での複製をおこなうことが可能である。そのような構築物をベクターとすることができ、ベクターは所定の宿主細胞でポリペプチドコード配列の転写および翻訳をおこなうことができる。植物細胞の安定的トランスフェクションまたはトランスジェニック植物の確立に適した多くのベクターが、例えば、Pouwelsら,(1985;上掲1987)Cloning Vectors:A Laboratory Manual、Weissbach and Weissbach(1989)Methods for Plant Molecular Biology,(Academic Press、New York);およびFlevinら,(1990)Plant Molecular Biology Manual,(Kluwer Academic Publishers)に記載されている。一般に、植物発現ベクターとして、例えば、5’および3’制御配列および優性選択可能なマーカーの転写制御下にある1種類以上のクローン化植物遺伝子が挙げられる。そのような植物発現ベクターは、プロモーター制御領域(例えば、誘導もしくは構成的、環境もしくは発生的に制御された、または細胞もしくは組織特異的である発現を調節する制御領域)、転写開始の開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセッシングシグナル、転写終結部位、および/あるいはポリアデニル化シグナルを含むこともできる。
【0052】
2つの異なるトランスジェニック植物を交配させて2つの独立して分離する追加された外来遺伝子を含む子孫を生ずることも可能であることも理解される。適当な子孫の自家受粉によって、両方の追加された外来遺伝子に関してホモ接合性である植物を生産することができる。親植物に対する戻し交配と非遺伝子組換え植物との外部交配もまた、栄養生殖のように、考えられる。他の育種法の説明は、異なる形質および作物に関して一般的に用いられており、いくつかの参考文献の1つ、例えばFehr,in Breeding Methods for Cultivar Development,Wilcos J.ed.,American Society of Agronomy,Madison Wis.(1987)に見いだすことができる。
【0053】
「プローブ(probe)」は、従来の検出可能な標識またはレポーター分子、例えば放射性同位元素、リガンド、化学発光剤、もしくは酵素が取り付けられる単離された核酸である。そのようなプローブは、標的核酸の一本の鎖に対して相補的であり、本発明の場合、トウモロコシのイベントTC1507からの単離DNAの鎖に、トウモロコシ植物に由来もしくは該イベント由来のDNAを含むサンプルに由来するにせよ、相補的である。本発明にもとづくプローブとして、デオキシリボ核酸もしくはリボ核酸のみならず、標的DNA配列に特異的に結合し、標的DNA配列の存在を検出するために使用し得るポリアミド類および他のプローブ材料が挙げられる。
【0054】
「プライマー(primer)」は、プライマーと標的DNA鎖との間でハイブリッドを形成するために核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖にアニールされ、次にポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼ)によって標的DNA鎖に沿って延伸される単離された核酸である。本発明のプライマー対とは、例えばポリメラーゼ鎖反応(PCR)または他の従来の核酸増幅法によって、標的核酸配列を増幅させる用途のことをいう。「PCR」または「ポリメラーゼ鎖反応(polymerase chain reaction)」は、特異的DNAセグメントを増幅させるために用いられる技術である(米国特許第4,683,195号および第4,800,159号(本明細書で援用)を見よ)。
【0055】
プローブおよびプライマーは、操作者が定めたハイブリダイゼーション条件または反応条件で特異的に標的DNA配列に結合する十分なヌクレオチド長である。この長さは、選ばれる検出方法で有用である十分な長さである任意の長さであってもよい。一般に、長さが11ヌクレオチド以上、好ましくは18ヌクレオチド以上、より好ましくは22ヌクレオチド以上が用いられる。そのようなプローブおよびプライマーは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で標的配列と特異的にハイブリダイズする。好ましくは、本発明のプローブおよびプライマーは、標的配列と隣接ヌクレオチドのDNA配列類似性が完全であり、プローブが標的DNA配列とは異なっても、標的DNA配列に対するハイブリダイゼーション能力を保持するプローブを従来の方法によって設計することができる。プローブはプライマーとして使用することもできるが、一般に標的DNAまたはRNAと結合するように設計されており、増幅プロセスでは使用されない。
【0056】
特異的プライマーを用いて組込み断片を増幅し、生物学的サンプルでのイベントTC1507を同定するための「特異的プローブ」として使用し得る単位複製配列を作ることができる。プローブが、該プローブと生物学的サンプルとの結合を可能にする条件下で、その生物学的サンプルの核酸とハイブリダイズする場合、この結合を検出することができるので、生物学的サンプル中のイベントTC1507の存在を示すことが可能である。そのような結合プローブの同定は、当技術分野で記載されている。特異的プローブは、望ましくは、最適化された条件下で、特異的に、上記イベントの5’または3’隣接領域内の領域にハイブリダイズし、好ましくはそれに隣接した外来DNAの一部を含む。好ましくは、特異的プローブは、上記イベントの特的領域と、少なくとも80%、より好ましくは80%ないし85%、より好ましくは85%ないし90%、特に好ましくは90%ないし95%、さらに最も好ましくは95%ないし100%同一(または相補的)である。
【0057】
プローブおよびプライマーを調製および使用するための方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,ed.Sambrookら,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1989(以下、「Sambrookら,1989」とする);Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubelら,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1992(定期的更新を含む)(以下、「Ausubelら,1992」とする);およびInnisら,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press:San Diego,1990に記載されている。PCRプライマー対は、例えばそのような目的を意図したコンピュータプログラムを用いることによって、既知の配列から得ることができ、該プログラムの例として、PCRプライマー分析ツールを含むVector NTI version 6(Informax Inc.,Bethesda Md.);PrimerSelect(DNASTAR Inc.,Madison,Wis.);およびPrimer(Version 0.5,(c)1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,Mass.)が挙げられる。さらに、当業者に既知のガイドラインを用いて、配列を視覚的に走査してプライマーを手動で同定することができる。
【0058】
本明細書で用いられる「キット(kit)」とは、本発明の目的、より詳しくは生物学的サンプル中のイベントTC1507の同定を実施することを目的とした複数の試薬からなるセットのことをいう。品質管理(例えば、種子ロットの純度)、植物材料のTCV1507イベントの検出、あるいは植物材料を含む材料もしくは該植物材料に由来する材料、例えば限定されるものではないが食品または飼料のために、本発明のキットを用いることができ、またその成分を明確に調節することができる。本明細書で用いられるように「植物材料(plant material)とは、植物から得られる材料または植物に由来する材料のことをいう。
【0059】
本明細書に開示された隣接DNAおよび挿入配列に基づいたプライマーおよびプローブを、従来の方法(例えば、そのような配列の再クローニングおよびシークエンシング)によって、開示された配列を確認するために(および、もし必要ならば、訂正するために)用いることができる。本発明の核酸プローブおよびプライマーは、ストリンジェントな条件下で標的DNA配列とハイブリダイズする。任意の従来の核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅方法を用いて、サンプル中でのトランスジェニックイベント由来DNAの存在を同定することができる。核酸分子またはその断片は、一定の環境で他の核酸分子と特異的にハイブリダイズすることができる。本明細書中で使用される場合、2つの核酸分子は、2つの核酸分子が逆平行性の二重鎖核酸構造を形成することが可能であるならば、互いに特異的にハイブリダイズすることが可能であると考えられる。
【0060】
核酸分子は、完全な相補性を示すならば、この他の核酸分子の「相補体(complement)」であると考えられる。本明細書中で使用される場合、一方の分子の各々のヌクレオチドが他方の分子のヌクレオチドに対して相補的である場合、これらの分子は「完全な相補性(complete complementarity)」を示すと考えられる。2つの分子は、少なくとも従来の「ストリンジェンシーが低い(low−stringency)」条件下で互いにアニールしたままであることを許すのに十分な安定性をもって互いにハイブリダイズすることができる場合、「最小限に相補的(minimally complementary)」と考えられる。同様に、上記分子は、少なくとも従来の「ストリンジェンシーが高い(high−stringency)」条件下で互いにアニールしたままであることを許すのに十分な安定性をもって互いにハイブリダイズすることができる場合、「相補的(complementary)」と考えられる。従来のストリンジェントな条件は、Sambrookら,1989、およびHaymesら,In:Nucleic Acid hybridization,a Practical Approach,IRL Press,Washington,D.C.(1985)に記載されており、したがって完全な相補性からの逸脱は、該逸脱が二重鎖構造を形成する分子の能力を完全に排除しない限り、許される。プライマーまたはプローブとして役に立つ核酸分子となるように、用いられた特定の溶媒および塩濃度のもとで、安定な二重鎖構造を形成することが可能であるように、配列が十分に相補的であることのみが求められる。
【0061】
ハイブリダイゼーション反応では、特異性は一般にハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、最終洗浄溶液の温度およびイオン強度が重要な要素である。熱融解点(Tm)は、相補的標的配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度(所定のイオン強度およびpH下で)である。DNA−DNAハイブリッドについては、Meinkoth and Wahl(1984)Anal.Biochem.138:267−284の等式、すなわちTm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%形態)−500/LからTmを近似させることができ、式中、Mは一価カチオンのモル濃度、%GCはDNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドの割合、%形態はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合、さらにLは塩基対内のハイブリッドの長さである。各々1%のミスマッチで約1℃、Tmが減少する。したがって、Tm、ハイブリダイゼーション、および/または洗浄条件を、所望の同一性の配列に対してハイブリダイズするように調節することができる。例えば、>90%同一性を持つ配列が求められた場合、Tmを10℃下げることができる。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHで特異的配列およびその相補体のTmよりも約5℃低く選択される。しかし、厳しいストリンジェントな条件は、Tmよりも1、2、3、または4℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ、また中程度のストリンジェントな条件では、Tmよりも6、7、8、9、または10℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができ、低ストリンジェントな条件では、Tmよりも11、12、13、14、15、または20℃より低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。
【0062】
上記等式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成物、ならびに所望のTmを用いることで、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変化が本質的に記載されていることを理解する。もし所望の度合いのミスマッチによってTmが45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)よりも低くなるならば、より高い温度が使用できるようにSSC濃度を高めることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションについての詳しい指針は、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−− Hybridization with nucleic
acid Probe,Part I,Chapter 2(Elsevier、New York);and Ausubelら,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 2(Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York)に見いだされる。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、N.Y.)を見よ。
【0063】
本明細書中で使用される場合、実質的に相同な配列は、ストリンジェンシーが高い条件下で比較されている核酸分子の相補体に特異的にハイブリダイズする核酸分子である。DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェントな条件は、例えば、約45℃の6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて50℃で2xSSCによる洗浄が当業者に知られており、あるいはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons、N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見いだすことができる。一般に、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0ないし8.3で、約1.5MNaイオン未満、通常、約0.01ないし1.0MNaイオン濃度(あるいは他の塩類)であり、温度は短いプローブ(例えば、10ないし50ヌクレオチド)に対して少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回る)に対して少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によって達成することが可能である。典型的な低ストリンジェントな条件として、37℃で、30ないし35%ホルムアミド、1MNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液でハイブリダイゼーションをおこない、50ないし55℃で1Xないし2XSSC(20XSSC=3.0MNaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)で洗浄することが挙げられる。典型的な中ストリンジェントな条件として、37℃で、40ないし45%ホルムアルデヒド、1M NaCl、1% SDSでのハイブリダイゼーション、および55ないし60℃で、0.5ないし1×SSCでの洗浄が挙げられる。典型的な高ストリンジェントな条件として、37℃で、50%ホルムアミド、1MNaCl、1%SDSの緩衝液、でハイブリダイゼーションをおこない、60ないし65℃で0.1XSSCで洗浄することが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の核酸を、イベントTC1507またはその相補体あるいはいずれかの断片に特有の1つ以上の核酸分子に対して、中程度にストリンジェントな条件で、特異的にハイブリダイズさせる。
【0064】
比較のために配列を位置合わせする方法が当技術分野で周知である。したがって、任意の2つの配列間でのパーセント同一性を決定することは、数学的なアルゴリズムを用いることで達成することができる。そのような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller(1988)CABIOS 4:11−17のアルゴリズム、Smithら(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同アルゴリズム、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453の相同位置合わせアルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−2448の類似性検索方法(search−for−similarity−method)、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877によって改変されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264のアルゴリズムである。
【0065】
これらの数学的アルゴリズムのコンピュータインプリメンテーションを配列同一性の決定のための配列比較に利用することができる。そのようなインプリメンテーションとして、限定されるものではないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics、Mountain View、Calif.より入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、ALIGN PLUSプログラム(version 3.0、著作権1997)、およびGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTAを含むWisconsin Genetics Software Package、Version 10(Accelrys、9685 Scranton Road、San Diego、Calif.92121、USAより入手可能)が挙げられる。これらのプログラムを用いた位置合わせを、デフォルトパラメーターを用いて実行することができる。
【0066】
CLUSTALプログラムは、Higgins and Sharp,Gene 73:237−244(1988);Higgins and Sharp,CABIOS 5:151−153(1989);Corpet,ら,Nucleic Acid Research 16:10881−90(1988);Huang,ら,Computer Applications in the Biosciences 8:155−65(1992)、およびPearson,ら,Methods in Molecular Biology 24:307−331(1994)によって詳しく記載されている。ALIGNおよびALIGN PlLUSプログラムは、Myers and Miller(1988)上掲のアルゴリズムにもとづいている。Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403のBLASTプログラムは、Karlin and Altschul(1990)上掲のアルゴリズムにもとづいている。データベース類似性検索に使えるプログラムのBLASTファミリーとして、ヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のBLASTN、タンパク質データベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のBLASTX、タンパク質データベース配列に対するタンパク質クエリー配列のBLASTP、ヌクレオチドデータベース配列に対するタンパク質クエリー配列のTBLASTN、ならびにヌクレオチドデータベース配列に対するヌクレオチドクエリー配列のTBLASTXが挙げられる。 Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 19,Ausubel,ら,Eds.,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York(1995)を見よ。位置合わせまた、検査によって手動で実行することが可能である。
【0067】
比較を目的としてギャップ位置合わせ(gapped alignment)を得るために、Gapped BLAST(BST2.0内)を、Altschul etl.,(1997)Nucleic Acid Res.25:3389に記載したように利用することができる。あるいは、PSI−BLAST(BLAST2.0内)を用いて、分子間の距離関係を検出する反復検索を実行することができる。Altschulら(1997)上掲を見よ。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BLASTを利用する場合、各々のプログラム(例えば、ヌクレオチド配列のBLASTN、タンパク質のBLASTX)のデフォルトパラメーターを用いることができる。例えば、www.ncbi.hlm.nih.gov.を見よ。
【0068】
本明細書中で使用される場合、2つの核酸またはポリペプチド配列の文脈にある「配列同一性(sequence identity)」または「同一性(identity)」は、特定の比較窓全体にわたる最大一致に対して位置合わせした場合に、同一である2つの配列の残基に言及する。配列同一性の割合をタンパク質に関して用いる場合、同一ではない残基位置が保守的アミノ酸置換によってしばしば異なることが認められ、アミノ酸残基は、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を持つ他のアミノ酸残基に対して置換されるので、分子の機能的特性を変化させない。配列が保存的置換において異なるとき、パーセント配列同一性は置換の保守的な性質を修正するために上方を調整される可能性がある。配列が保守的置換で異なる場合、配列同一性率を上方調整して置換の保守的性質について修正をおこなってもよい。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性(sequence similarity)」または「類似性(similarity)」があると言われている。この調整をするための手段は、当業者に周知である。概して、このことは、完全なミスマッチよりはむしろ部分的なものとして保守的置換を採点することを伴い、それによって配列同一性率が増加する。このように、例えば、同一アミノ酸に得点1が与えられ、非保守的置換の得点はゼロであり、保守的置換にゼロないし1の得点があたえられる。保守的置換の採点は、例えばプログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)にインプリメントされるようにして、計算される。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性の割合(percentage of sequence identity)」は、比較窓上に最適に位置合わせされた2つの配列を比較することによって決定された値を意味し、2つの配列の最適位置合わせに対して参照配列(付加または欠失を含まない)と比べて、比較窓内のポリヌクレオチド配列の一部が付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むものであってもよい。上記割合は、一致した位置の数を得るために、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生ずる位置の数を測定し、比較窓内の位置の全数で一致した位置の数を割り、結果に対して100を掛けることで配列同一性の割合を求めることによって、計算される。
【0070】
特定の増幅プライマー対を用いた標的核酸配列の増幅(例えば、PCRによる)に関して、「ストリンジェントな条件(stringent conditions)」は、プライマー対が標的核酸配列のみにハイブリダイズすることを可能とする条件であり、その標的核酸配列に、対応の野生型配列(またはその相補体)を持つプライマーが結合し、好ましくは固有の増幅産物である単位複製配列をDNA熱増幅反応で生ずる。
【0071】
「(標的配列に対して)特異的な(specific for(a target sequence))」という表現は、プローブまたはプライマーがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、標的配列を含むサンプル中でその標的配列のみとハイブリダイズすることを示す。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「増幅DNA(amplified DNA)または「単位複製配列(amplicon)」とは、核酸テンプレートの一部である標的核酸配列の核酸増幅の産物のことをいう。例えば、交配の結果生ずるトウモロコシ植物が、本発明のトウモロコシ植物由来のトランスジェニックイベントゲノムDNAを含むかどうかを決定するために、トウモロコシ植物組織サンプルから抽出したDNAを、DNAプライマー対を用いた核酸増幅法にさらしてもよく、該DNAプライマー対は、異質挿入DNAの挿入部位に隣接した隣接配列に由来する第1のプライマーと、DNAイベントの存在にとって特徴的な単位複製配列を生成するための異質挿入DNAに由来する第2のプライマーとを含む。あるいは、第2のプライマーが隣接配列に由来するものであってもよい。単位複製配列は一定の長さで、上記イベントに特徴的でもある配列を有する。単位複製配列の長さは、プライマー対とヌクレオチド塩基対とを組み合わせた長さから、DNA増幅プロトコルによって生産可能な任意の長さの単位複製配列に至るまでの範囲であってもよい。あるいは、プライマー対は、図1に示すように、約6.2kbの大きさであるPHI8999A発現構築物の挿入ヌクレオチド配列全体を含む単位複製配列を生成するようにして、挿入DNAの両側で、隣接配列に由来することができる。隣接配列に由来するプライマー対の一つの構成要素を、挿入DNA配列から離間して配置してもよく、この離間距離は1塩基対から増幅反応の限界までの範囲、あるいは約20,000塩基対とすることができる。「単位複製配列」という用語の使用は、DNA熱増幅反応で形成され得るプライマー二量体を特異的に排除する。
【0073】
核酸増幅は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を含む当技術分野で公知の種々の核酸増幅法のいずれかによって達成し得る。種々の増幅法が当技術分野で公知であり、また記載されており、とりわけ米国特許第4,683,195号および第 4,683,202号に記載され、またPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,ed.Innisら,Academic press,San Diego,1990に記載されている。PCR増幅方法は、最大で22kbのゲノムDNAならびに最大で42kbのバクテリオファージDNAを増幅するために、開発された(Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5695−5699、1994)。DNA増幅の技術分野で知られている他の方法と同様に、それらの方法を本発明が実施される際に用いることが可能である。特定のPCRプロトコルのいくつかのパラメーターを特定の実験室条件に調整することが必要であり、またわずかに修飾することも可能であり、さらに同様の結果を収集することが可能である。これらの調整は、当業者にとって明らかである。
【0074】
これらの方法によって生産される単位複製配列は、複数の技術によって検出することが可能であり、該技術として、限定されるものではないが、隣接する隣接DNA配列および挿入DNA配列の両方とオーバーラップするようにDNAオリゴヌクレオチドが設計されるGenetic Bit Analysis(Nikforov,ら,Nucleic Acid Res.22:4167−4175,1994)が挙げられる。オリゴヌクレオチドは、マイクロウエルプレートのウエル内に固定される。目的とする領域のPCR(挿入配列に1つのプライマーを用い、隣接する隣接領域にも1つ用いる)をおこなった後、単鎖PCR産物を固定化オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズすることができ、DNAポリメラーゼおよび予想される次の塩基に特異的な標識ddNTPを用いる単一塩基伸長反応のテンプレートとしての役割を果たす。読み出しは、蛍光またはELISAをベースとすることが可能である。シグナルは、成功裏になされる増幅、ハイブリダイゼーション、および単一塩基伸長による挿入/隣接配列の存在を示す。
【0075】
別の検出方法は、Winge(Innov.Pharma.Tech.00:18−24、2000)に記載されているピロ塩基決定法である。この方法では、隣接DNAおよび挿入DNA連結にかさなるオリゴヌクレオチドが設計されている。オリゴヌクレオチドは、目的とする領域に由来する単鎖PCR産物(挿入配列にプライマーが一つあり、隣接配列にプライマーが1つある)にハイブリダイズされ、DNAポリメラーゼ、ATP、スルフリラーゼ、アピラーゼ、アデノシン5’ホスホ硫酸、およびルシフェリンの存在下で、インキュベートされる。dNTPは個々に添加され、その取り込みは、測定される光シグナルを生ずる。光シグナルは、成功裏になされる増幅、ハイブリダイゼーション、および単一または多重塩基伸長による導入遺伝子挿入/隣接配列の存在を示す。
【0076】
Chenら,(Genome Res.9:492−498,1999)に記載されたような蛍光偏光は、本発明の単位複製配列を検出するために用い得る方法である。この方法を用いることで、隣接および挿入DNA連結に重なるオリゴヌクレオチドが設計される。オリゴヌクレオチドは、目的とする領域に由来する単鎖PCR産物(挿入DNA配列にプライマーが一つあり、隣接DNA配列にプライマーが1つある)にハイブリダイズされ、DNAポリメラーゼおよび蛍光標識ddNTPの存在下でインキュベートされる。単一塩基伸長は、ddNTPの取り込みをもたらす。取り込みは、蛍光光度計を用いた偏光の変化として測定することができる。偏光の変化は、成功裏になされる増幅、ハイブリダイゼーション、および単一塩基伸長による導入遺伝子挿入/隣接配列の存在を示す。
【0077】
Taqman(登録商標)(PE Applied Biosystems,Foster City,Calif.)は、DNA配列の存在を検出および定量するための方法として記載されており、製造元によって提供される指示書で完全に理解される。手短に言うと、隣接および挿入DNA連結に重なるFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入DNA配列にプライマーが一つあり、隣接ゲノム配列にプライマーが1つある)が耐熱性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で、循環される。FRETプローブのハイブリダイゼーションは、FRETプローブ上で消光部分から離れて、切断と蛍光部分の放出とに帰着する。蛍光シグナルは、成功裏になされる増幅とハイブリダイゼーションとによる隣接/導入遺伝子挿入配列の存在を示す。
【0078】
分子指標は、Tyangiら(Nature Biotech.14:303−308、1996)に記載されたように、配列検出で使用するために記載されている。手短に言うと、隣接および挿入DNA連結に重なるFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブの固有の構造により、接近状態でも蛍光および消光部分の2次構造を保持する。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入DNA配列にプライマーが一つあり、隣接配列にプライマーが1つある)が耐熱性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で、循環される。成功裏になされるPCR増幅の後、FRETプローブと標的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブの2次構造の除去をもたらし、蛍光および消光部分の空間的分離をもたらす。蛍光シグナルが生ずる。蛍光シグナルは、成功裏になされる増幅およびハイブリダイゼーションによる隣接/導入遺伝子挿入配列の存在を示す。
【0079】
アンプリコン内で見いだされる配列に対して特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーション反応は、単位複製配列がPCR反応によって生ずることを検出するために用いられるさらに別の方法である。
【0080】
本発明は、以下の実施例によってさらに定義される。発明の好ましい実施形態を示す一方で、これらの実施例が説明することのみを目的として与えられることが理解されなければならない。上記の考察とこれらの例から、当業者は、本発明の必須特性を確認することができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それをさまざまな用途および状況に適応させるために、発明の種々の変更および修飾をおこなうことができる。このように、発明の種々の変形は、本明細書に例示および記載したものに加えて、前述の説明から当業者にとって明らかである。そのような変形は、添付の請求の範囲の範囲内にあることも意図している。
【0081】
本明細書中に述べられた前述の参照の各々の開示は、全体として本明細書に援用される。
【実施例】
【0082】
(実施例1.粒子衝突によるトウモロコシの形質転換とCry1F遺伝子含有トランスジェニック植物の再生)
PHI8999Aと表された6.2kbのDNA分子(図1参照、配列番号25)は、アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)から単離した3’ORF25転写終結因子(Barkerら(1983)Plant Mol.Biol.2:335−350)を含むDNA分子に作用自在に結合したCry1Fと同定されたバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のδ−エンドトキシンをコードするDNA分子(米国特許第5,188,960号および6,218,188号)に作用自在に結合したトウモロコシユビキチン(Ubni−1)遺伝子(Christensenら(1992)Plant Mol.Biol.18:675−689およびChristensen and Quail(1996)Transgenic Res.5:213−218)のプロモーター、5’非翻訳エキソン、および第1のイントロンを含む第1の導入遺伝子発現カセットと、(CaMV)35S由来の3’転写終結因子(Mitsuharaら(1996)Plant Cell Physiol.37:49−59)を含むDNA分子に作用自在に結合した選択可能なマーカーであるホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子(Wohlleben W.ら(1988)Gene 70:25−37)をコードするDNA分子に作用自在に結合したカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35プロモーター(Odell J.T.ら(1985)Nature 313:810−812;Mitsuharaら(1996)Plant Cell Physiol.37:49−59)のDNA分子を含む第2の導入遺伝子発現カセットとを有し、トウモロコシ胚組織を形質転換するために用いられた。
【0083】
B.t Cryst1Fトウモロコシ植物は、基本的にKleinら(1987)Nature、UK 327(6117):70−73に記載されているように、Bio−Rad、Hercules、CAが製造したBiolistics(登録商標)PDS−100He粒子ガンを用いた微小発射体ボンバードメントを用いて得た。受粉直後に収穫したトウモロコシ穂から単離した未成熟胚を数日間にわたってカルス誘導培地で培養した。形質転換の日に、タングステン微粒子を精製PHI8999DNA(配列番号25)で被覆して培養胚へ加速させ、挿入DNAが細胞染色体へ取り込まれた。挿入PHI8999Aのみが形質転換の過程で使用され、形質転換体へのさらなるプラスミドDNAの取り込みは起こらなかった。ボンバードメント後、選択剤としてグルフォシネートを含むカルス誘導培地に胚を移した。培養中、個々の胚を物理的に分けておいたところ、外植体の大部分がその選択培地上で死滅した。
【0084】
生き残って正常なグルフォシネート耐性カルス組織を生産する胚に対して、推定上の形質転換イベントを表す固有の識別コードを割り当て、新鮮な選択培地に連続して移した。各々の固有のイベントに由来する組織から植物を再生させ、該植物を温室に移した。分子学的分析をおこなうために葉サンプルを採取し、PCRによる導入遺伝子の有無の確認およびELISAによるCry1Fタンパク質の発現について確認をおこなった。次に、植物を、アワノメイガ昆虫を用いた全植物バイオアッセイに供した。陽性の植物を近交系とかけ合わせて、最初の形質転換植物から種子を得た。この分野で多数の系統を評価した。イベントTC1507を、昆虫抵抗性および農学的特性等の優れた特徴の組み合わせに基づいた、独立した遺伝子組み換えイベントの母集団から選択した(Bing J Wら(2000)Efficacy of Cry1F Transgenic Maize、14th Biennial International Plant Resistance to Insects Workshop、fort Collins、Co.を見よ。なお、この文献を本明細書で援用する)。
【0085】
(実施例2.バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)Cry1F トウモロコシTC1507系統の遺伝子組換え挿入DNAに対して5’側の隣接配列を含むヌクレオチドの同定)
イベントTC1507内のPHI899A挿入に対して5’側の配列を含んだDNA断片を同定するために、イベントTC1507ゲノムDNA由来のSpeI制限酵素断片をアガロースゲル上でサイズ選択、精製、およびサザン分析によるスクリーニングをおこなうことで、Cry1Fプローブに対するハイブリダイゼーションを確認した。エンリッチされたサイズ選択プラスミド系ゲノムDNAライブラリーを調製するために、ハイブリダイゼーションおよび断片サイズの確認後、目的とする断片をpBluescript II SK(+)(商標)クローニングベクターにクローニングした。Cry1F遺伝子の一部に相同なプローブを用いて、陽性クローンに対するプラスミドライブラリーをスクリーニングした。陽性クローンを同定し、新たなスクリーニングによって精製し、さらにCry1Fプローブにハイブリダイズした場合に陽性シグナルをもたらすかを確認した。単離された陽性クローンに含まれるSpeI断片のおよそ3kbを、プライマーウオーキングアプローチを用いて、シークエンシングをおこなった。第1のシークエンシングを開始させるために、クローニングベクターDNA内の既知の配列に結合するプライマーを設計して目的とするDNAの一部分をシークエンシングした。逆方向に配向した別のプライマーを用いた同一領域にわたる第2のシークエンシングの実行は、第2の鎖の範囲(カバリッジ)を与えた。プライマーウオーキングは、先行する実行から得た配列データを繰り返し用いて、新規のプライマー(このプライマーは、次に、トウモロコシのイベントTC1507の挿入遺伝子組換えDNAに対して5’側の隣接領域が得られるまで、目的とするDNAまでさらにシークエンシングの次のラウンドを伸ばすために用いられる)を設計することによって達成された。具体的な配列情報を実施例4に示す。
【0086】
(実施例3.B.t.Cry1FトウモロコシTC1507系統挿入に対して5’側の隣接配列の確認)
B.t.Cry1FトウモロコシTC1507系統挿入の5’隣接配列を確認するために、PCRプライマー対を設計して5’隣接領域から完全長PHI8999A遺伝子組換え挿入に延びる重複PCR産物を得た。PCR産物を成功裏にB.t.Cry1FトウモロコシTC1507系統ゲノムDNAから増幅し、単離し、表1に示すように領域1から領域6までのシークエンシングをおこない、実施例2に記載したSpeI断片由来の既に決定された配列と一致するか確認した。しかし、完全長挿入の開始に対して直に隣接し、かつ5’側である2358bpから2829bpまでの領域は、PCR増幅にとっては扱いにくく、上記したSpeIクローンから得た配列よりも大きいことがわかった。この領域に隣接するプライマー対とAdvantage(登録商標)−GC2Polymerase Mix(BD Biosciences Clontech、Palo Alto、Calif.)の使用は、シークエンシングのためのB.t.Cry1FトウモロコシTC1507系統ゲノムDNA由来のPCR産物の増幅では成功裏になされた。Advantage(登録商標)−GC2システムによる単位複製配列の生産に用いられる増幅条件を表10に示す。2358bpないし2829bpの領域にある配列を確認するために用いられるDNAプライマー対は、配列番号1および配列番号2ならびに配列番号2および配列番号23に挙げられたものである。この領域の配列を表1に記載する(領域7a、7b、および8)。
【0087】
(実施例4.イベントTC1507の5’隣接配列。各々の領域を表1に記述する)
(領域1(配列番号28)トウモロコシゲノム(有意な相同性なし))
【数1】

(領域2(配列番号29)記述されていないトウモロコシゲノム配列(相補体))
【数2】

(領域3(配列番号30)トウモロコシHuck−1レトロトランスポゾンの断片)
【数3】

(領域4(配列番号31)cry1F遺伝子のフラグメント)
【数4−1】

【数4−2】

(領域5(配列番号32)葉緑体rpoC2遺伝子の断片)
【数5】

(領域6(配列番号33)トウモロコシ葉緑体またはubiZM1(2)プロモーターの断片)
【数6】

(ヌクレオチド2355〜2358(CGT)は領域6を領域7aに結合)
(領域7a(配列番号34)pat遺伝子の断片)
【数7】

(領域7b(配列番号35)pat遺伝子の断片(相補体))
【数8】

(領域7c(配列番号36)cry1遺伝子の断片(相補体))
【数9】

(領域8(配列番号37)ポリリンカーの断片)
【数10】

(領域9(配列番号25)PHI8999Aの完全長挿入)
(実施例5.トウモロコシのイベントTC1507の挿入に対して5’側にある隣接配列の記述)
イベントTC1507の5’隣接配列をさらに完全に説明するために、相同性検索を、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて、GenBankの公的データベース(リリース122、2/01)に対しておこなった。BLASTプログラムは、配列類似性検索を実行し、未知の配列に対する相同性を同定する上で特に有用である。公的データベース検索に加えて、二つ一組の位置合わせをAlignX(InforMax Inc.,Bethesda、Md.)を用いて実行し、トウモロコシのイベントTC1507の隣接配列とPHI8999Aトランスジェニック挿入とのあいだの相同性について調べた。これらの相同性検索の結果を表1に示す。TC1507の5’隣接配列に、挿入に対して最も遠い5’側の塩基1と、完全長PHI8999Aトランスジェニック挿入の開始点の塩基2830とによって番号がつけられている(図1参照)。同一性パーセントの値は、分析した配列の長さにわたる完全な一致の割合を示す。
【0088】
多くの場合、イベントTC1507の5’隣接配列による類似性検索が、かなり高い同一率の値に基づいて1つの固有の配列との一致をもたらした。これらの配列は表1に同定されている。加えて、2つ以上の既知の配列に対して高い類似性を持つTC1507の5’DNA隣接配列に2つの領域が存在する。領域870〜1681および2338〜2354では、単一の一致(ホモログ)が検出できない両配列断片による同一性パーセントの得点が十分に高い。これらの領域の各々についての2つの可能性のあるホモログを表1に示す。
【0089】
非常に類似した配列が、配列の最初の669塩基対を除いて全てに関して同定された。一般に、類似性検索の結果は、塩基1681に対して5’側にあるトウモロコシゲノム配列との高い相同性を示している。塩基1682から2830位にあるPHI8999Aの開始点に至る領域は、形質転換イベントに関連したいくつかのフラグメントを含む。
【0090】
【表1−1】

【0091】
【表1−2】

(実施例6:未修飾コントロールトウモロコシ系統内の領域1、2、および3の存在の確認)
トウモロコシTC1507を生成する形質転換について用いられる未修飾コントロールトウモロコシ系統に、イベントTC1507の5’隣接領域中の領域1、2、および3(表1)が存在して、それによってトウモロコシゲノムDNAによって境界が示されるかどうかを判断するために、PCR分析を用いた。9通りの異なるPCR分析を、表3に示すプライマー配列を用いて表2に概説したように、 TC1507および未修飾コントロールトウモロコシHi−II系統からから調製したゲノムDNA上で実施した(Hi−IIの情報については、Armstrong(1994)The Maize Handbook、ed.Freeling and Walbot、Springer−Verlag、New York、pp.663−671を参照せよ)。2つの反応が、25ないし324bpの5’隣接領域の領域1内のDNA(反応A−300bp単位複製配列)と25ないし480bpの5’隣接領域の領域1内のDNA(反応B−456bp単位複製配列)を増幅するように、設計された。予想される単位複製配列は、Hi−II未修飾トウモロコシ系統およびトウモロコシのイベントTC1507の両方に存在した。1つのPCRプライマー対、反応C、759ないし1182bpの5’隣接領域(424pb単位複製配列)の領域2ないし領域3をスパン化し、Hi−IIおよびTC1507の両方で期待される大きさのPCR産物を再び生成した。反応D、415ないし1182bpの5’隣接領域(768pb単位複製配列)の領域1ないし領域3をスパン化し、Hi−IIおよびTC1507の両方で期待される大きさのPCR産物を再び生成した。反応EおよびFは、TC1507内のPHI8999Aの完全長挿入のpat遺伝子領域に対する特異的プライマー対として設計されたことから、未修飾Hi−IIトウモロコシ系統の単位複製配列は期待されない。結果は、EおよびFの反応が共に、pat遺伝領域によって形質転換されたトウモロコシ系統に対して特異的であり、期待される単位複製配列を生成し、その一方で未修飾Hi−IIトウモロコシ系統では単位複製配列が生成されなかった。反応Gもまた、トウモロコシのイベントTC1507で366bpの単位複製配列を生成し得るプライマー対として設計され、未修飾Hi−IIトウモロコシ系統では単位複製配列の生成は見られなかった。
【0092】
反応HおよびIを、遺伝子組換え挿入の末端を5’隣接領域にスパン化し得るTC1507に対する特異的プライマー対として設計した。反応HおよびIの両方で、逆方向プライマーが完全長PHI8999A挿入(表1の領域9)のユビキチンプロモーター領域に配置され、順方向プライマーが領域5、rpoC2遺伝子フラグメントに配置された(表1を参照)。反応Hおよび反応Iの両方は、トウモロコシTC1507系統内で単位複製配列を生成し、未修飾コントロールトウモロコシ系統では単位複製配列を生成しなかった。これらの結果は、反応HおよびIの両方が、イベントTC1507に対して特異的であることを示す。
【0093】
PCR結果は、未記載の配列(領域1)が未修飾トウモロコシ系統Hi−IIに存在し、領域1、2、および3が未修飾トウモロコシ系統Hi−IIに隣接していることを示す。反応A、B、C、およびDで増幅したDNA配列は、トウモロコシのイベントTC1507の5’隣接領域に特有ではなく、また未修飾トウモロコシ系統Hi−IIにも存在している。
【0094】
【表2−1】

【0095】
【表2−2】

【0096】
【表2−3】

【0097】
【表3−1】

【0098】
【表3−2】

(実施例7.トウモロコシのイベントTC1507の挿入トランスジェニックDNAに対して3’側の隣接配列)
トウモロコシのイベントTC1507の完全長PHI8999A挿入に対して3’側の配列情報の長さを伸ばすのに、2通りの異なるPCRアプローチを用いた。第1のアプローチでは、PCRプライマー対を、完全長挿入と逆方向ORF25ターミネーターとのあいだの連結をスパン化した産物を増幅するように設計した。逆方向ORF25ターミネーターを示す図1を参照せよ。順方向プライマーを完全長PHI8999A挿入の末端に配置させ、一連の逆方向プライマーを逆方向配列に100bp間隔で配置させた。このようにして、トウモロコシのイベントTC1507に存在する逆方向断片の長さを、成功裏になされるPCR反応に基づいて100bp領域内に定めることができた。この方法は、ORF25ターミネーターの大部分を含むがCry1F配列は含まない逆方向断片を示した。この領域からPCR断片を単離してシークエンシングした。
【0099】
第2のアプローチでは、PCRプライマーを、上記したPCR実験で決定されたように、逆方向ORF25ターミネーター領域から隣接DNA配列に入るように設計した。2ないし3つの個々のイベントTC1507の植物と未修飾コントロールトウモロコシ系統とから単離したゲノムDNAを、種々の制限酵素を用いて消化し、その後、消化に用いた制限酵素に対して特異的なアダプターに結合させた(Universal Genome Walker(登録商標)Kit、Clontech Laboratories、Inc.およびDevonら(1995)Nucleic Acids Res.23:1644−1645)。一次PCRをORF25ターミネーター特異的プライマーと消化DNAに結合したアダプター配列に対して相同なプライマーとを用いて実施した。反応の特異性を増すために、ネスト化した二次PCRを別のORF25ターミネーター特異的プライマーと一次PCRで使用した各々のプライマーに対して内側である第2のプライマーによりアダプター配列に対して相同な第2のプライマーとを用いて再び実施した。ネスト化PCRによって生産される産物を、アガロース電気泳動によって分析し、TC1507DNAサンプルに特有な断片を単離してシークエンシングした。断片を、完全長PHI8999A挿入の3’末端にある標的(逆方向)ORF25ターミネーターと完全長挿入内に含まれるORF25ターミネーターとの両方から、増幅した。完全長挿入由来の断片は、完全長挿入内に位置した既知の制限酵素部位に基づいた予測サイズであった。3’逆方向ORF25ターミネーターから作られた断片は、予想外のサイズの断片として現れた。3’逆方向ORF25ターミネーター由来の増幅断片の配列分析は、1043bpの隣接DNA配列をもたらした。上記一連のゲノムウオーキング実験から結果として得られる配列を用いて、挿入から2346bpの最終の3’隣接配列を持つボーダリングトウモロコシゲノムの中にウォーキングするためのさらなるプライマーを設計した。
【0100】
TC1507の3’隣接配列を記述するために、相同性検索を、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて、GenBank公共データベースに対して実施した。BLASTプログラムは、配列類似性検索を実行し、特に未知の配列に対するホモログを同定する上で有用である。公共データベースを検索することに加えて、SeqMan4.05(商標)、Martinez and Needleman−Wunsch アラインメントアルゴリズム(DNASTAR Inc.)を用いて実行し、TC1507の3’隣接配列とPHI8999Aトランスジェニック挿入とのあいだの相同性を調べた。これらの相同性検索の結果を表1に示す。同一性パーセントの値は、分析した配列の長さにわたる完全一致の割合を示す。3’隣接配列についての類似性検索の結果は、トウモロコシの葉緑体DNA、pat遺伝子の188bpフラグメント、および有意な相同性のない254bpのDNA(領域15、表1)の3つの領域と高い相同性があることを示す。領域15(表1)を超えたさらなる749bp(領域16)についてもシークエンシングした。領域6について、類似した検索結果はなんら得られなかった。
【0101】
コントロールおよびTC1507ゲノムDNAに対するPCR分析により、254bp配列(領域15、トウモロコシ葉緑体「ORF241」のフラグメント)がトウモロコシゲノムに存在することを決定した。3’隣接領域内の領域15のDNA配列は、トウモロコシのイベントTC1507の3’隣接領域に対して固有ではないが、未修飾コントロールトウモロコシ系統にも存在する。TC1507の3’隣接配列を実施例8に示すとともに、図1に図示する。
【0102】
(実施例8.トウモロコシイベントTC1507における完全長挿入DNAの末端に対して3’側の領域の配列。各々の領域の説明は表1にある)
(領域10(配列番号38)ORF25ターミネーター(相補体)の断片)
【数11】

(領域11(配列番号39)トウモロコシ葉緑体rps12rRNA遺伝子の断片)
【数12】

(ヌクレオチド9694〜9695(CG)が領域11と領域12とを結合する)
(領域12(配列番号40)トウモロコシ葉緑体ゲノムの断片)
【数13−1】

【数13−2】

(領域13(配列番号41)pat遺伝子の断片(相補体))
【数14】

(ヌクレオチド10276〜10277(AA)が領域13と領域14とを結合する)
(領域14(配列番号42)トウモロコシ葉緑体ORF241(相補体)の断片)
【数15】

(領域15(配列番号43)トウモロコシゲノム(有意な相同性なし))
【数16】

(領域16(配列番号44)トウモロコシゲノム)
【数17−1】

【数17−2】

(実施例9.未修飾コントロールトウモロコシ系統の領域15の存在の確認)
3’隣接配列の末端上の未記載の領域(表1の領域15)が、トウモロコシのイベントTC1507を生成するために形質転換で用いられる未修飾コントロールトウモロコシ系統に存在し、それによってトウモロコシゲノムDNAとの境界が示されるかどうかを決定するために、PCR分析が用いられる。トウモロコシTC1507系統と未修飾Hi−IIコントロールトウモロコシ系統との両方における領域15の成功裏になされるPCR増幅によって、領域15が実際にトウモロコシゲノムDNAに存在することが明らかになった。5通りの異なるPCR分析を、表8に示すプライマー配列を用いて、トウモロコシTC1507系統と未修飾Hi−IIコントロールトウモロコシ系統とから調製したゲノムDNA上で、以下の表7に概説したように、実施した。3’隣接領域の領域15内でのDNA増幅をおこなうために、3通りの反応を設計した。すなわち、反応L−175bp単位複製配列を生産、反応M−134bp単位複製配列を生産、さらに反応N−107bp単位複製配列を生産。予想される単位複製配列は、未修飾コントロールトウモロコシ系統とトウモロコシTC1507系統とのなかに存在した。反応JおよびKを、挿入の末端を3’隣接領域にスパン化し得るTC1507に対して特異的プライマー対として設計した。反応Jでは、順方向プライマーを、完全長PHI8999A挿入(表1の領域13)の3’末端上のpat遺伝子フラグメントに配置し、逆方向プライマーを未定義の領域15に配置した。反応Kでは、順方向プライマーを、完全長挿入の3’末端上の葉緑体と仮定するタンパク質遺伝子に配置した(表1の領域14)。また、逆方向プライマーを未定義の領域15に配置した。反応Jおよび反応Kの両方とも、トウモロコシ系統TC1507中で単位複製配列を生産したが、未修飾コントロールトウモロコシ系統では単位複製配列が生産されなかった。このような結果は、反応JおよびKの両方がイベントTC1507に対して特異的であることを示す。
【0103】
PCRは、TC1507の3’隣接配列の未記載の配列(領域15)もまた、未修飾Hi−IIコントロールトウモロコシ系統由来の単離ゲノムDNA中に存在することを示す。反応L、M、およびNで増幅したDNA配列は、TC1507の3’隣接領域に対して固有ではないが、未修飾コントロールトウモロコシ系統にも存在する。
【0104】
【表4】

【0105】
【表5−1】

【0106】
【表5−2】

(実施例10.PCRプライマー)
DNAイベント特異的プライマー対を用いて、TC1507に特徴的な単位複製配列を生成した。これらのイベントプライマー対として、限定されるものではないが、配列番号1および配列番号2、配列番号2および配列番号23、配列番号3および配列番号5、ならびに配列番号4および配列番号5が挙げられる。これらのプライマー対に加えて、DNA増幅反応で使用した場合にTC1507に対して特異的なDNA単位複製配列を作る配列番号26および配列番号27に由来する任意のプライマー対は、本発明の一局面である。この分析のための増幅条件を表9に示すが、TC1507に特徴的な増幅DNA分子を生産するためのDNAプライマーまたはその相補体を用いたこれらの方法の任意の修飾は、当技術分野の通常技量の範囲内である。配列番号1、2、および23によって同定されるPCRプライマーを利用した反応のための好ましい増幅条件を表10に示す。また、内因性のトウモロコシ遺伝子の増幅のために、コントロールプライマー対(配列番号10および11、配列番号10および12、配列番号13および14、配列番号14および15、配列番号5および16、配列番号5および17、ならびに配列番号5および18を含む)を反応条件の内部基準として包含する。さらに含まれるものは、pat遺伝子を含むトランスジェニックイベントで単位複製配列を生産するプライマー対(配列番号6および7、配列番号8および9)とcry1F遺伝子を含むトランスジェニックイベントで単位複製配列を生産するプライマー対(配列番号19および20)とである。
【0107】
TC1507イベントの存在について試験するための植物組織DNA抽出物の分析は、陽性の組織DNA抽出物コントロール(トランスジェニック配列を含むことが知られているDNAサンプル)を含むべきである。陽性コントロールの成功裏になされる増幅では、標的配列の増幅を可能とする条件下でPCRが実行される。陰性の、または野生型のDNA抽出物コントロールでは、提供されたテンプレートDNAが非トランスジェニック植物から調製されたゲノムDNAもしくは非TC1507トランスジェニック植物のいずれかであり、これもまた含まれるべきである。さらに、テンプレートトウモロコシDNA抽出物を含まない陰性のコントロールは、PCRプロトコルで使用する試薬および条件の有用な基準である。
【0108】
十分な長さのさらなるDNAプライマー分子は、DNA増幅法の当業者によって、配列番号26および配列番号27から選択することができ、また表9または表10に示される方法とは異なると思われるが、イベントTC1507に特徴的な単位複製配列を生ずる単位複製配列の生産にとって最適化された条件を選択することができる。表9および表10に示した方法に対する修飾を伴うこれらのDNAプライマー配列の利用は、本発明の範囲内である。十分な長さの少なくとも1つのDNAプライマー分子が、TC1507イベントにとって特徴的な配列番号26および27に由来する単位複製配列は、本発明の一局面である。十分な長さの少なくとも1つのDNAプライマー分子が、TC1507イベントにとって特徴的なPHI8999Aの遺伝エレメントに由来する単位複製配列は、本発明の一局面である。TC1507単位複製配列のアッセイは、Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin−Elmer 9700、またはEppendorf Mastercycler Gradient thermocyclerを用いて実施することができ、あるいは当業者に公知の方法および装置によって実施することができる。
【0109】
【表6−1】

【0110】
【表6−2】

【0111】
【表7】

本発明の原理を例示および説明したが、本発明がそのような原理から逸脱することなく構成および詳細を改変することができることは当業者に容易に理解されなければならない。我々は、添付の請求の精神および範囲内である全ての修飾の権利を主張する。
【0112】
この明細書で引用した全ての刊行物および公開された特許文献は、各々の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に参照によって取り込まれることが示されるのと同程度に、本明細書で援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−55956(P2013−55956A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−271425(P2012−271425)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2006−514201(P2006−514201)の分割
【原出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(390039192)ダウ・アグロサイエンス・エル・エル・シー (20)
【氏名又は名称原語表記】Dow AgroSciences LLC
【出願人】(505406855)イー. アイ. ドゥ ポン デュ ヌムール アンド カンパニー (3)
【出願人】(500207899)パイオニア ハイ−ブレッド インターナショナル, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】