説明

トウモロコシグルテン加水分解物の製造方法及びこれにより製造されたトウモロコシグルテン加水分解物

本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物の製造方法及びこれにより製造されたトウモロコシグルテン加水分解物を提供することを目的とする。
本発明は、(a)トウモロコシグルテンに含有されている炭水化物、水溶性糖類、無機物または繊維質を除去し、トウモロコシグルテンタンパク質を分離する段階と、(b)前記トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解、酵素分解及び天然発酵よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を通じて分解してトウモロコシグルテンタンパク質の分解物を製造する段階と、(c)前記トウモロコシグルテンタンパク質の分解物を分離、濃縮、沈殿、脱塩及びろ過して、分解物に含まれている分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid:BCAA)の含量を増加させる段階と、を含むトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法及びこれにより製造されたトウモロコシグルテン加水分解物に関することである。本発明の製造方法によれば、アミノ酸及び低分子ペプチドに富んでおり、特に、遊離アミノ酸及び分岐鎖アミノ酸(brain chain amino acid:BCAA)が多量含まれているトウモロコシグルテンの加水分解物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid:BCAA)が多量含まれているトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法及びこれにより製造されたトウモロコシグルテン加水分解物に関する。
【背景技術】
【0002】
元々、天然のトウモロコシ中にはタンパク質が約20%w/V含有されており、このタンパク質に対して分岐鎖アミノ酸(BCAA)は20〜30%w/V含有されている。このトウモロコシから糖成分のみを分離し、トウモロコシ澱粉及びトウモロコシ由来デキストリンを製造する工程を経て生成されるトウモロコシグルテンを製造することができる。このトウモロコシグルテンにおいて、分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、約60%w/Vにて含まれているタンパク質中にタンパク質に対して20〜30%w/V含有されている。
【0003】
しかしながら、トウモロコシグルテン(corn gluten)をはじめとして植物性タンパク質原料から加水分解物を製造する過程において、アミノ酸の様々な等電点及び化学的・物理的原因によりアミノ酸が沈殿もしくは破壊されることがあり、加水分解過程において分解効率が低くて水溶液に溶出される遊離アミノ酸の含量が低ければ、最終的なトウモロコシグルテン加水分解物における分岐鎖アミノ酸(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)の含量も低くならざるを得ない。
【0004】
上記の如き分解工程だけではなく、トウモロコシグルテン加水分解物を含む水溶液を処理する後続工程においても遊離アミノ酸の損失が多大になる可能性がある。特に、加水分解物を脱色・脱臭する目的で多用される活性炭(Activated Carbon)の処理に際して分子量が大きなペプチド及びタンパク質の吸着により全窒素(TN:Total Nitrogen)及びアミノ窒素(AN:Amino Nitrogen)の減少が引き起こされ、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む遊離アミノ酸の含量も低下する。
【0005】
結果的に、トウモロコシグルテン加水分解物の製造において分解工程及び分解液を処理する後続工程まで遊離アミノ酸の減少を引き起こす様々な原因が存在し、これにより、分岐鎖アミノ酸(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)の含量は原料に含まれている含量よりも低くなるという欠点がある。
【0006】
これらの理由から、最終製品における遊離アミノ酸及び分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含量比を増加させるためには、原料として用いられるトウモロコシグルテンに対する改善された前処理及び分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含量を増加させる工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許第10−0566380号
【特許文献2】米国特許第4675196号
【特許文献3】米国公開特許第2003−0022274号
【特許文献4】米国公開特許第2001−0003593号
【特許文献5】米国公開特許第2007−0172914号
【特許文献6】米国公開特許第2007−0190130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記の如き従来の技術の問題点と昔から求められてきた技術的課題を解消するところにある。
【0009】
具体的に、本発明の一実施形態による目的は、トウモロコシグルテン加水分解物に含まれている遊離アミノ酸及び分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含量比を従来に比べて増加させることのできる改善されたトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の一実施形態による目的は、従来の製造方法に従い製造された加水分解物に比べてアミノ酸及び低分子ペプチドに富んでおり、特に、遊離アミノ酸及び分岐鎖アミノ酸(BCAA)が多量含まれているトウモロコシグルテン加水分解物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、(a)トウモロコシグルテンに含有されている炭水化物、水溶性糖類、無機物または繊維質を除去し、トウモロコシグルテンタンパク質を分離する段階と、(b)前記トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解、酵素分解及び天然発酵よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を用いて分解してトウモロコシグルテンタンパク質の分解物を製造する段階と、(c)前記トウモロコシグルテンタンパク質の分解物を分離、濃縮、沈殿、脱塩及びろ過して、分解物に含まれている分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含量を増加させる段階と、を含むトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法を提供する。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物の製造方法により製造された分岐鎖アミノ酸(BCAA)含有トウモロコシグルテン加水分解物を提供する。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする機能性食料品組成物を提供する。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする美容食品組成物を提供する。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする化粧料組成物を提供する。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、トウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする薬剤学的組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記グルテンは、大麦、小麦、トウモロコシなどの穀類に存在する不溶性タンパク質であって、複数のタンパク質が混合する形態であってもよく、特に、トウモロコシグルテンはトウモロコシを湿式及び乾式加工して得られる。前記トウモロコシグルテンはタンパク質含有量が高く、しかも、消化性に優れていることから汎用されており、メチオニンが多量含有されているため、制限アミノ酸の供給源として利用可能である。
【0018】
前記段階(a)は、トウモロコシグルテンに含有されている水溶性糖類、無機物または繊維質を除去し、トウモロコシグルテンタンパク質を分離する段階であり、これにより、高純度のトウモロコシグルテンタンパク質を得ることができる。
【0019】
場合によって、前記段階(a)前に、トウモロコシグルテンを熱処理または蒸煮する段階をさらに含んでいてもよく、例えば、トウモロコシグルテンを110〜150℃において5〜10分間熱処理または蒸煮する段階、好ましくは、125〜135℃において6〜9分間熱処理または蒸煮する段階をさらに含んでいてもよい。
【0020】
このような熱処理または蒸煮の段階を通じてタンパク質は完全に変性可能であり、変性によりタンパク質の立体構造が破壊されると、タンパク質の内部に埋もれているアミノ酸側鎖が露出されることにより、酵素と接触し易くなる結果、加水分解効率を高めることができる。
【0021】
前記段階(a)において、水溶性糖類と無機物はトウモロコシグルテンに8〜10倍の水を投入して洗浄することにより行われてもよい。十分な除去のために、水は50℃以上に加温し、100rpm以上で攪拌することが好ましい。前記洗浄の回数は多いほどよいが、トウモロコシグルテン内部の水溶性タンパク質を減少させることなく作業を行う必要があるため、好ましくは、2〜3回洗浄してもよい。
【0022】
前記段階(a)において、繊維質は酵素を用いて分解してもよい。具体的に、前記分解は、水により十分に膨潤及び蒸煮されたトウモロコシグルテンに4〜5倍以上の水を加えた後、繊維質加水分解酵素を加えることにより行われてもよい。
【0023】
好ましくは、前記酵素の添加量はタンパク質の質量に対して0.5〜1.0質量%であってもよく、酵素分解温度は40〜60℃、pHは4.0〜6.0、酵素分解時間は1〜2時間であってもよい。
【0024】
前記繊維質加水分解酵素は、植物の細胞壁に付着したペクチン物質まで分解可能な複合酵素であれば特に制限はないが、例えば、セルラーゼ(Cellulase)、ヘミセルラーゼ(Hemicellulase)及びペクチナーゼ(Pectinase)よりなる群から選ばれるいずれか1種またはそれ以上が含まれていてもよく、前記複合酵素はトウモロコシグルテンに含まれている繊維質の除去に特に効果的である。
【0025】
前記トウモロコシグルテンが繊維質加水分解酵素により分解された後、トウモロコシグルテンタンパク質はさらに遠心分離機(decanter)を用いて分離されてもよい。前記タンパク質を遠心分離した後、遠心分離ろ液に2倍以上の水を加えて再遠心分離を行うことにより純度を高めることができ、希釈される水の量が多いほどタンパク質の純度は高くなりうる。
【0026】
前記段階(b)は、トウモロコシグルテンタンパク質を加水分解する段階であり、トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解、酵素分解及び天然発酵よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を用いて分解してトウモロコシグルテンタンパク質の分解物を製造する。
【0027】
前記酸加水分解は、酸を加え、熱処理してトウモロコシグルテンタンパク質を加水分解する方法であり、例えば、35%HClをトウモロコシグルテンタンパク質と同量混合した後、塩酸に対して1/3に見合う分の水を添加してスチームにより105℃を維持することにより、30時間以上行われてもよい。この後、スチームの供給を中止し、15時間以上滞留させた後、冷却水を用いて35℃まで冷却させてもよい。
【0028】
場合によって、前記段階(b)は、トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解した後に80℃においてpH9〜11に、好ましくは、50%NaOHを用いてpH10までアルカリ化させる段階を含んでいてもよい。また、冷却水を用いて冷却させた後、35%HClを用いてさらにpH4〜6に逆中和させてもよい。
【0029】
従来、酸加水分解法を用いてトウモロコシグルテンタンパク質を加水分解する場合には、工程中に有害性クロロヒドリン(chlorohydrin)化合物、例えば、3-MCPD(3-chloro-1,2-propanediol)が多量生成されて、トウモロコシグルテンタンパク質の加水分解反応液に最大15〜20ppmまで含まれてしまうという問題点があったが、上記の逆中和段階を含む場合、3-MCPDの量を最大0.05ppmまで低下することができる。
【0030】
前記酵素加水分解方法は、酵素を用いてトウモロコシグルテンタンパク質を加水分解する方法であり、酸加水分解法に比べて安全であるだけではなく、短時間内に加水分解工程を行うことができるという長所がある。前記段階(b)は、エンド型酵素及びエキソ型酵素よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の酵素をトウモロコシグルテンタンパク質に処理してトウモロコシグルテンタンパク質を分解する段階であってもよい。
【0031】
前記エンド型酵素はトウモロコシグルテンタンパク質を構成するペプチドの内部に作用してこれを分解する酵素であり、トウモロコシグルテンタンパク質の分解に好適に使用可能な酵素であれば特に制限はないが、例えば、アルカラーゼ(akalase)、プロタメックス(protamex)及びニュートラーゼ(neutrase)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上であってもよい。
【0032】
また、前記エキソ型酵素は、トウモロコシグルテンタンパク質を構成するペプチドの末端に作用してこれを分解する酵素であり、トウモロコシグルテンタンパク質の分解に好適に使用可能な酵素であれば特に制限はないが、例えば、フレーバーザイム(flavourzyme)であってもよい。
【0033】
前記酵素加水分解方法において、エンド型酵素単独を、またはエンド型酵素とエキソ型酵素の両方を同時にトウモロコシグルテンタンパク質に処理して加水分解してもよい。前記エンド型酵素はタンパク質とペプチドをランダムに攻撃して低分子のペプチドを多量生成し、極少数の遊離アミノ酸を生成するのに対し、エキソ型酵素はタンパク質やペプチドの末端を攻撃して多量の遊離アミノ酸を生成する。
【0034】
具体的に、水にトウモロコシグルテンタンパク質を20%の濃度に含めた後、90℃以上において30〜60分間殺菌処理を施して、温度40〜50℃、pH5〜8内の条件下でエンド型酵素を単一処理してもよい。他の好適な例において、前記エンド型酵素とエキソ型酵素を併用して酵素分解を行ってもよい。
【0035】
前記酵素の分解にかかる時間は48〜96時間であってもよく、添加される酵素の濃度が低いほど酵素の分解時間を長くして酵素利用率を高めることが好ましい。
【0036】
しかしながら、タンパク質酵素分解においては、微生物による汚染問題がかなり大きい問題として台頭されて、耐塩性酵素を選択してもよく、これにより、5〜10%程度の塩濃度において酵素分解を行ってもよい。
【0037】
前記天然発酵は、微生物を接種し且つ培養して、トウモロコシグルテンタンパク質を加水分解する方法であり、トウモロコシグルテンタンパク質にニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)を接種し且つ培養して、コウジ(Koji:麹菌)を形成して行われてもよい。前記コウジを含む20%濃度の水溶液を製造した後、ここに酵素を少量投入してもよい。
【0038】
前記(b)は、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)を接種し、且つ、30℃において2日間培養し、エンド型酵素及びエキソ型酵素をそれぞれトウモロコシグルテン加水分解物の総タンパク質含量に対して1.0重量%添加してトウモロコシグルテンタンパク質を天然発酵する段階であってもよい。
【0039】
具体的に、全体反応液中の培養された原料の濃度が20%(w/w)、塩濃度が5%(w/w)になるように50℃の温水を加えて45℃を作った後、エンド型(endo-protease)とエキソ型(exo-protease)のタンパク質分解酵素を原料のタンパク質含量に対してそれぞれ1.0%(w/w)添加し、その後、45℃の温度で72時間反応させることにより、天然発酵を行ってもよい。
【0040】
前記天然発酵過程において、上記のトウモロコシグルテンタンパク質を含む反応液のpHは、好ましくは6〜8であってもよい。トウモロコシグルテンタンパク質の場合、元々pHは3〜5であるが、このようなpHの範囲では微生物が旺盛に増殖することができないため、微生物の生育最適pHである6〜8に調整することが微生物の生育をために好ましいからである。このとき、pHの調整は、通常のアルカリ物質、好ましくは、NaOHを用いて行われてもよい。
【0041】
さらに、上記のトウモロコシグルテンタンパク質の水分含量は45%以下であることが好ましい。水分の含量が45%より高ければ微生物により出るタンパク質分解酵素の力価が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0042】
前記段階(c)は、分解段階により製造されたトウモロコシグルテンタンパク質の分解物を分離、濃縮、沈殿、脱塩及びろ過して、分解物に含まれている分岐鎖アミノ酸(branch chain amino acid:BCAA)の含量を増加させる段階である。
【0043】
前記段階(c)の分離過程は、遠心分離(decanter)またはフィルタプレス(Filter press)を用いてトウモロコシグルテンタンパク質の分解物から固形分を液状と分離する過程を含んでいてもよい。
【0044】
場合によって、前記遠心分離またはフィルタプレスを用いて不溶性固形分を除去した後、珪藻土を投入して不溶性成分を完全に除去してもよい。
【0045】
また、前記段階(c)における分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含量増加は、濃縮、沈殿核の投入とpH調整により行われてもよい。前記濃縮は、トウモロコシグルテンタンパク質の分解物の体積に対して50%(V/V)以上に濃縮することが好まし、円滑な沈殿を誘導するために、分離過程により分離された液状のタンパク質の分解物に沈殿核を投入してもよい。前記沈殿核は沈殿しようとするアミノ酸の本来の標準物質であり、所望の効果を得るためには体積に対して0.1〜0.2%まで投入することが好ましい。前記液状のタンパク質の分解物のpHは5〜7に調整することが好ましい。
【0046】
前記濃縮過程後に沈殿過程を経るが、この沈殿過程は、濃縮過程を経た液状のタンパク質の分解物を低温、好ましくは、30〜40℃において、1〜75時間、好ましくは、15〜48時間滞留させて、液状と沈殿物を分離する過程であってもよい。
【0047】
これを通じて、下記の実施例において、立証されたことのように、滞留後に遠心分離機(decanter)やフィルタプレス(filter press) を用いて液状と固形分を分離すると、前記固形分の分岐鎖アミノ酸(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)の含量は滞留前と比較して最大40%〜60%まで増加することができるということを確認した。
【0048】
前記液状タンパク質分解物は目的アミノ酸の分離に利用できるように脱塩してもよく、前記脱塩は電気透析により行われてもよい。
【0049】
前記電気透析とは、陽イオンと陰イオンに荷電されているイオン交換膜を用いて陽イオンまたは陰イオンを選択的に透過させることにより、水溶液中においてイオンの分離機能を行う作業を意味する。このとき、目的アミノ酸の等電点の近くにpHを調整して目的アミノ酸の電荷をゼロ状態にする必要がある。電荷がゼロであるアミノ酸は電気透析を行う間にイオン交換膜を通過できずに希釈槽において濃縮現象が継続して起こる。これに対し、電荷を帯びた塩と低分子イオン性物質はイオン交換膜を通過して希釈槽から濃縮槽へと除去される。最終的には、目的とするアミノ酸が希釈槽において継続して濃縮される。
【0050】
この工程は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の濃縮を目的としているため、分離されたろ過液はpH1〜10、好ましくは、pH2〜8に調整してもよい。分岐鎖アミノ酸に含まれているアミノ酸の等電点が約3〜7であるが、ろ過液のpHが最大限に前記等電点の近くに調整されることにより、アミノ酸そのものを無極性にして、水への溶解度を最大限に低めることができる。
【0051】
前記電気透析は、反応液に含まれている分岐鎖アミノ酸(BCAA)の収率を増進させるために、塩を最大限に除去しなければならないが、電気伝導度が1.0s/m以下、好ましくは、0.7s/m以下に電気透析を終了してもよい。
【0052】
前記段階(c)において、電気透析により希釈槽に濃縮された液状タンパク質分解物の濃縮液を収去し、収去された液状タンパク質分解物の濃縮液と、濃縮及び沈殿過程中に沈殿されて液状タンパク質分解物から分離された沈殿物とを混合して、2次脱塩を行ってもよい。
【0053】
また、前記段階(c)において電気透析により希釈槽に濃縮された液状タンパク質分解物の濃縮液に分岐鎖アミノ酸(BCAA)以外のアミノ酸沈殿が誘導されると、液状タンパク質分解物の濃縮液中の沈殿物をろ過して除去した後、濃縮及び沈殿過程中に沈殿されて液状タンパク質分解物から分離された沈殿物と混合して、この混合液を2次脱塩してもよい。
【0054】
このとき、pHは等電点に調整するよりは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)のpKa値以下に調整して分岐鎖アミノ酸(BCAA)が陽の電荷を帯びるように誘導してもよい。この後、電気透析を行うと、陽イオンの電荷を帯びた分岐鎖アミノ酸(BCAA)は陽イオン膜を通過して希釈槽から濃縮槽へと移動して濃縮され、電気伝導度が0.7s/m以下、好ましくは、0.5s/m以下に達すると電気透析を終了してもよい。
【0055】
この場合、分岐鎖アミノ酸(BCAA)に含まれているアミノ酸のpKa値は約2〜4であるため、反応液のpHを3以下、好ましくは、1〜3に調整して分岐鎖アミノ酸(BCAA)の電荷が陽の電荷を帯びるように誘導した後に電気透析を行うと、陽イオンの電荷を帯びた分岐鎖アミノ酸(BCAA)は陽イオン膜を通過して希釈槽から濃縮槽へと移動して濃縮されるが、電荷を帯びていない不純物はイオン交換膜を通過できずに継続して希釈槽に残留して除去される。
【0056】
前記反応液に不溶性の固形分がなく、且つ、目的とするアミノ酸のみが電荷を帯びている状態であるため以後、限外ろ過膜(UF)に透過してろ過してもよい。
【0057】
すなわち、陽または陰に荷電された固定電荷を有する限外ろ過膜を用いて目的アミノ酸との静電気的反発力を利用することにより、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を一層濃縮してもよい。先行段階により分岐鎖アミノ酸(BCAA)の電荷が陽に荷電された状態であるため、陽に荷電された限外ろ過膜を用いて濃縮を行ってもよい。
【0058】
前記ろ過に用いられる膜は、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸及びポリサッカライドよりなる群から選ばれるいずれか1種の膜であってもよく、分岐鎖アミノ酸(BCAA)と膜との静電気的反発力及び膜の排除率を最大限に増加させるために、膜の分画分子量は、好ましくは、1,000(Dalton)以下であってもよい。
【0059】
本発明はまた、上記の製造方法により製造されたトウモロコシグルテン加水分解物に関するものであり、遊離アミノ酸及び分岐鎖アミノ酸(BCAA)を多量含有する。
【0060】
前記分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、ロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)、及びバリン(Valine)よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であってもよく、分岐鎖アミノ酸のうち、例えば、ロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)及びバリン(Valine)の含量はそれぞれ0〜99%(w/w)、好ましくは、1〜80%(w/w)であってもよい。すなわち、分岐鎖アミノ酸は、ロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)、及びバリン(Valine)のうちいずれか1種のみを含んでいてもよく、これらの2種を組み合わせて含んでいてもよく、これらの3種類の全てを含んでいてもよい。
【0061】
前記加水分解物は、総アミノ酸に対する遊離アミノ酸の割合、すなわち、総アミノ酸のうち遊離アミノ酸の占める割合が60〜99%(w/w)、好ましくは、70〜97%(w/w)であってもよく、前記遊離アミノ酸に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)の割合、すなわち、遊離アミノ酸のうち分岐鎖アミノ酸(BCAA)の占める割合は10〜50%(w/w)、好ましくは、30〜70%(w/w)であってもよい。このため、従来に比べて遊離アミノ酸の包含量が高く、これにより、顕著に高い分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含有量(従来の遊離アミノ酸に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)の割合:約12.8%(w/w))を期待することができる。
【0062】
さらに、本発明によるトウモロコシグルテン加水分解物は高い分岐鎖アミノ酸(BCAA)、例えば、ロイシン、イソロイシン及びバリンの含量を有するため、これに伴う機能性を要求する食品及び医薬品にも使用可能である。
【0063】
そこで、本発明は、前記トウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする機能性食料品組成物または美容食品組成物、化粧料組成物及び薬剤学的組成物を提供する。
【0064】
前記機能性食料品組成物または美容食品組成物は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含むトウモロコシグルテン加水分解物を用いて、トウモロコシ麦茶などの茶類、スープ類、機能性飲料及びタブレット、ダイエット食/代替食/生食の添加剤、乳児食/離乳食/粉乳の添加剤、発酵乳/乳酸菌飲料/牛乳の添加剤、各種の飲料添加剤、アイスクリーム製品、チューインガム、カラメル製品、キャンディ類、氷菓子類 、菓子類、美容食品などの各種食品類、清凉飲料、ミネラルウォータ、アルコール飲料などの飲料製品、ビタミンやミネラルなどを含む健康機能性食品類などに応用可能である。
【0065】
前記化粧料組成物は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含むトウモロコシグルテン加水分解物を用いて、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲル、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイルまたはボディエッセンスの形態に応用可能であるが、これらに制限されるものではなく、各剤形において、上述した必須成分を除く他の成分は使用目的などに応じて当業者が難しさなく適合しく選定して配合してもよい。
【0066】
また、前記薬剤学的組成物は、アルツハイマ病、脳疲労回復、脳機能強化、記憶回復、頭脳向上などの脳機能治療、肝硬変、肝癌、二日酔い解消、肝細胞成長促進(Hepatocyte growth factor)、肝機能回復などの肝疾患治療、食欲抑制、体重減少、体脂肪減少などの抗肥満効果、インシュリン調節、血糖調節などの第2型糖尿病の治療、ACE阻害効果などの高血圧の予防及び治療に使用可能である。
【0067】
本発明による加水分解物を医薬品に適用する場合には、前記加水分解物を有効成分とし、常用の無機または有機の担体を加えて、固体、半固体または液状の形態で経口投与剤もしくは非経口投与剤に製剤化してもよい。
【0068】
前記経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟・硬カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤などを挙げることができる。また、前記非経口投与のための製剤としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレイ、懸濁剤、乳剤、座剤などを挙げることができる。
【0069】
本発明の有効成分を製剤化するためには常法に従い容易に製剤化することができ、アラビアゴム、トウモロコシ澱粉、微細結晶質セルロースまたはゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムまたはラクトース、デキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、トウモロコシ澱粉またはジャガイモ澱粉、デキストリンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、スクロース、ステビオサイド、甘草またはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチルまたは果物香などの香味剤、界面活性剤、着色料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他の商用補助剤を適宜に使用することができる。 前記有効成分は、リポソーム、微細粒子またはマイクロカプセル、ナノカプセルなどの形態であってもよく、投与単位型がカプセル剤である場合には、剤形化成分の他にも、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、糖アルコール類または脂肪油などの液状/固相の担体が含まれていてもよい。
【0070】
本発明による前記加水分解物を医薬品に好適に製剤化した場合、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与可能である。
また、前記活性成分の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重と、治療する特定の疾患または病理状態、疾患または病理状態の重症度、投与経路及び処方者の判断によって異なってくる。これらの因子に基づく投与量の決定は当業者のレベル内であり、一般的に、投与量は、0.001mg/kg/日〜概ね2000mg/kg/日の範囲であってもよい。
【0071】
[発明の態様]
以下、実施例を挙げて本発明を一層詳述するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範疇がこれらにのみ限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
トウモロコシグルテンを125〜135℃のスチームを用いて6.5〜8.5分間均一に熱処理及び蒸煮してタンパク質を変性させた後、8〜10倍の水を加え、50℃、100rpmにて攪拌して2〜3回洗浄し、この後、20〜30%の濃度にてトウモロコシグルテン反応水を造成する(I組成物)。
【0073】
反応物の温度を40〜60℃、pHを4.0〜6.0に調整した後、食餌繊維加水分解酵素を固形分に対して0.5〜1.0%添加して1〜2時間酵素分解する。反応終了後、2〜3回遠心分離して固形分を得る(II組成物)。
【0074】
トウモロコシグルテンタンパク質と35%塩酸を同量混合した後、その量の1/3に見合う分の水を添加してスチームにより105℃、30時間以上酸加水分解する。滞留と冷却を行った後、50%苛性ソーダを用いて80℃、pH10までアルカリ化させる。さらに35%塩酸によりpH4.9まで逆中和させる(III組成物)。
【0075】
遠心分離とフィルタプレスを用いて固形分を除去した後、pH5.9〜6.1に調整して50%(V/V)濃縮する。20〜24時間低温滞留させ、遠心分離機やフィルタプレスを用いて固形分と液状を分離する(IV組成物)。
【0076】
液状のpHを5.9〜6.1に調整し、脱塩(電気透析)して0.7s/mに達したときに終了する(V組成物)。
【0077】
脱塩液とIV組成物の固形分と混合し、液状のpHを2.2以下に調整した後、2次脱塩する(VI組成物)。
【0078】
2次脱塩液を、限外ろ過膜を用いてUFした後、粉末化して製造する(VII組成物)。
【0079】
【表1】

【0080】
密度差により遠心分離を行ってトウモロコシからトウモロコシ澱粉を除去して得られたトウモロコシグルテンは60%(w/w)程度のタンパク質を含有している。また、主な余分の成分はセルロース(cellulose)、ヘミセルロース(hemicellulose)、リグニン(lignin)などの不溶性成分であり、総含量の20〜25%(w/w)程度に含まれている。トウモロコシグルテンに水を加えて高温下で熱処理を施すと、タンパク質の変性によりタンパク質の疎水基がさらに水溶液に露出され、且つ、組織が解かされてタンパク質以外の物質が水溶液に溶出される。表1を参考すると、加水と熱処理により約5%(w/w)程度のタンパク質含量(68.18%w/w)が増加される。また、トウモロコシグルテンにはセルロースが含有されているが、食餌繊維分解酵素を処理すると、概ね3〜4%(w/w)のタンパク質含量(70.92%w/w)が増加されることが分かる。結論的に、トウモロコシグルテンに対して熱水処理と食餌繊維酵素処理を施すと、最終品(VII組成物)のタンパク質含量は約7〜8%(w/w)だけ増加された70.12%(w/w)を示すことが確認された。
【0081】
【表2】

【0082】
トウモロコシグルテンの酸加水分解物(III組成物)において、遊離アミノ酸のうち分岐鎖アミノ酸(BCAA)の占める割合(BCAA/遊離アミノ酸)は一般的に14.4%である。この反応物のpHを分岐鎖アミノ酸(BCAA)の等電点と類似しく調整した後、濃縮及び滞留させて得られた沈殿物にはBCAA/遊離アミノ酸(%)が47.74%であった。沈殿物を混合した上澄液の脱塩工程においてもIII組成物に対して39.47%のBCAA/遊離アミノ酸含量が約増加され、pHを2.2以下に調整した2次脱塩工程においてもBCAA/遊離アミノ酸の含量が約76.38%増加された。最終品におけるBCAA/遊離アミノ酸(%)は36.80%であり、III組成物に比べて約2倍の増加効果があった。遊離アミノ酸は69.80%であり、下記表3の総アミノ酸である71.95%の97%(遊離アミノ酸/総アミノ酸)がアミノ酸単位に分解されることが分かる。
【0083】
【表3】

【0084】
[比較例1]
トウモロコシグルテンを実施例1の酸加水分解方法により分解し、遠心分離とフィルタプレスを用いて固形分を除去した後、脱塩(電気透析)を0.7s/mで終了し、限外ろ過膜を用いてUF後に粉末化して完成した。
【0085】
【表4】

【0086】
表4から明らかなように、通常の方法により製造された分解物のタンパク質含量は初期原料のタンパク質含量より低い(56.12%w/w)。これは、タンパク質が熱的、化学的に不安定であるため、加工処理の過程中に発生する加熱ストレス(heating stress)とpHの変化によりタンパク質沈殿を引き起こして最終品のタンパク質含量を落とすためである。
【0087】
【表5】

【0088】
表4の結果と類似しく、分解物におけるBCAA含量は脱塩とUF処理時にやや減少して、最終品の粉末のBCAA/遊離アミノ酸は約12.8%(w/w)であった。
【0089】
[実施例2]
実施例1と同じ方法でトウモロコシグルテンを洗浄し(A組成物)、食餌繊維加水分解により得られた固形分(B組成物)を用いて20%溶液を製造した後、90℃以上において30〜60分間殺菌処理して温度40〜50℃、pH5〜8、塩濃度5〜10%においてエンド型酵素を単一処理したり、エンド型酵素とエキソ型酵素を重複処理したりして48〜96時間酵素分解する(C組成物)。ろ過後に濃縮して沈殿物を除去(D組成物)、1次脱塩(E組成物)、2次脱塩(F組成物)、UF及び粉末化して製造した(G組成物)。
【0090】
【表6】

【0091】
実施例2においては、実施例1とは異なり、酸加水分解より酵素分解物のBCAA/遊離アミノ酸の含量が10%(w/w)以上多いことが分かる(III組成物とC組成物の比較)。また、pH6.0の条件下において濃縮した後、アミノ酸のうちチロシン(tyrosine)が多量含有されている沈殿物が発生されたことを確認することができる(D組成物の沈殿物)。この沈殿物を除去し、2回の脱塩とUF後の最終品には酵素反応液(C組成物)よりBCAA/遊離アミノ酸の含量が64.7%程度増加された約40%(w/w)のBCAAが含有されていることが分かる。遊離アミノ酸は46.62%(w/w)であり、下記表7に示すように総アミノ酸である67%(w/w)の70%(遊離アミノ酸/総アミノ酸)がアミノ酸単位に分解されることが分かる。
【0092】
【表7】

【0093】
[比較例2]
トウモロコシグルテンを実施例2の酵素分解方法により分解し、遠心分離機とフィルタプレスを用いて固形分を除去した後、脱塩(電気透析)を0.7s/mで終了し、限外ろ過膜を用いてUFした後に粉末化して完成した。
【0094】
【表8】

【0095】
比較例2においては、最初の酵素反応物より脱塩時に僅かな固形分の濃縮が起きてBCAAの占める割合が約5%w/w程度増加されて最終品には概ね30%w/w程度のBCAAが含有されていることが分かる。
【0096】
[実施例3]
実施例1において澱粉及び繊維質分解により得られた固形分を用いて水分の含量を20〜40%に調整した後、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)を接種し、30℃において2〜3日間培養した。培養後に20%の濃度になるように反応液を製造して5%の塩、45℃の条件下において少量のエンド型酵素及びエキソ型酵素を加え、72時間かけて酵素と反応させた(c組成物)。ろ過後に濃縮して沈殿物を除去(d組成物)、1次脱塩(e組成物)、2次脱塩(f組成物)、UF及び粉末化して製造した(g組成物)。
【0097】
【表9】

【0098】
実施例2と同様に、pH6.0の条件下において遊離アミノ酸のうちチロシン(tyrosine)が多量含有されている沈殿物を得ることができた。沈殿物中のチロシン(tyrosine)の含量は50%以上であり(d組成物の沈殿物)、この沈殿物を除去し、2回の脱塩によるBCAA濃縮工程を経た後のBCAA/遊離アミノ酸の含量(g組成物)はC組成物に比べて76.78%増加した。最終品におけるBCAA/遊離アミノ酸の含量は40%以上であった(g組成物)。遊離アミノ酸は66.51%(w/w)であり、下記表10に示すように、総アミノ酸(75%)の89%がアミノ酸単位%(遊離アミノ酸/総アミノ酸)に分解されることが分かる。
【0099】
【表10】

【0100】
[比較例3]
トウモロコシグルテンを実施例3の天然発酵方法により分解し、遠心分離とフィルタプレスを用いて固形分を除去した後、脱塩(電気透析)を0.7s/mで終了し、限外ろ過膜を用いてUF後に粉末化して完成した。
【0101】
【表11】

【0102】
比較例2と同様に、最初の酵素反応物より脱塩時に僅かな固形分の濃縮が起きてBCAAの占める割合が約3%(w/w)程度増加されて最終品には概ね25%(w/w)程度のBCAAが含有されていることが分かる。
【0103】
本発明が属する分野において通常の知識を有するであれば、前記内容を基に本発明の範疇内において種々の応用及び変形を行うことが可能であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トウモロコシグルテンに含有されている炭水化物、水溶性糖類、無機物または繊維質を除去し、トウモロコシグルテンタンパク質を分離する段階と、
(b)前記トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解、酵素分解及び天然発酵よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を通じて分解してトウモロコシグルテンタンパク質の分解物を製造する段階と、
(c)前記トウモロコシグルテンタンパク質の分解物を分離、濃縮、沈殿、脱塩及びろ過して、分解物に含まれている分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid:BCAA)の含量を増加させる段階と、
を含むトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項2】
前記段階(a)前に、トウモロコシグルテンを熱処理または蒸煮する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項3】
前記トウモロコシグルテンを110〜150℃において5〜10分間熱処理または蒸煮することを特徴とする請求項2に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項4】
前記繊維質は酵素を加えて分解されることを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項5】
前記酵素は、セルラーゼ(Cellulase)、ヘミセルラーゼ(Hemicellulase)及びペクチナーゼ(Pectinase)よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項6】
前記段階(b)は、トウモロコシグルテンタンパク質を酸加水分解した後、pH9〜11にアルカリ化し、さらにpH4〜6への酸性化により逆中和する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項7】
前記段階(b)は、エンド型酵素及びエキソ型酵素よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の酵素をトウモロコシグルテンタンパク質に処理してトウモロコシグルテンタンパク質を分解する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項8】
前記エンド型酵素は、アルカラーゼ(alcalase)、プロタメックス(protamex)及びニュートラーゼ(neutrase)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項9】
前記エキソ型酵素はフレーバーザイム(flavourzyme)であることを特徴とする請求項7に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項10】
前記段階(b)は、トウモロコシグルテンタンパク質にニホンコウジカビ (Aspergillus oryzae)を接種し、エンド型酵素及びエキソ型酵素よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の酵素を処理してトウモロコシグルテンタンパク質を分解する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項11】
前記段階(c)の分離過程は、遠心分離(decanter)またはフィルタプレス(Filter press)を通じてトウモロコシグルテンタンパク質の分解物から固形分を除去する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項12】
前記段階(c)の濃縮過程は、分離過程を通じて分離された液状タンパク質分解物に沈殿核を投入し、液状タンパク質分解物のpHを5〜7に調整して、生成された沈殿物を液状から分離することを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項13】
前記段階(c)の沈殿過程は、濃縮過程を経た液状タンパク質分解物を30〜40℃において1〜75時間滞留させて、生成された沈殿物を液状から分離することを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項14】
前記段階(c)の脱塩過程は、液状タンパク質分解物のpHを1〜10に調整して電気透析することを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項15】
前記段階(c)の脱塩過程は、液状タンパク質分解物のpHを2〜8に調整して電気透析することを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項16】
前記段階(c)は、脱塩過程を経た液状タンパク質分解物の濃縮液と、濃縮及び沈殿過程中に生成された沈殿物とを混合して、2次脱塩を行うことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項17】
前記段階(c)は、脱塩過程中に生成された分岐鎖アミノ酸(BCAA)以外のアミノ酸沈殿物を除去する過程をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項18】
前記液状タンパク質分解物の濃縮液と、濃縮及び沈殿過程中に液状タンパク質分解物から生成された沈殿物との混合液のpHを3以下に調整することを特徴とする請求項16に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項19】
前記段階(c)のろ過過程は、分離、濃縮、沈殿及び脱塩過程を通じて生成された分解物を限外ろ過膜に透過させることを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項20】
前記ろ過に用いられる膜は、ポリスルホン、ポリスチレンスルホン酸及びポリサッカライドよりなる群から選ばれるいずれか1種から製造されることを特徴とする請求項19に記載のトウモロコシグルテン加水分解物の製造方法。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれかに記載の製造方法に従い製造された分岐鎖アミノ酸(BCAA)含有トウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項22】
前記加水分解物は、加水分解物に含まれている総アミノ酸に対する遊離アミノ酸の割合が60〜99%であることを特徴とする請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項23】
前記加水分解物に含まれている遊離アミノ酸に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)の割合が10〜99%(w/w)であることを特徴とする請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項24】
前記加水分解物に含まれている遊離アミノ酸に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)の割合が30〜70%(w/w)であることを特徴とする請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項25】
前記分岐鎖アミノ酸は、ロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)及びバリン(Valine)よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項26】
前記分岐鎖アミノ酸中のロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)及びバリン(Valine)の含量はそれぞれ0〜99%(w/w)であることを特徴とする請求項25に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項27】
前記分岐鎖アミノ酸中のロイシン(Leucine)、イソロイシン(Isoleucine)及びバリン(Valine)の含量はそれぞれ1〜80%(w/w)であることを特徴とする請求項25に記載のトウモロコシグルテン加水分解物。
【請求項28】
請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする機能性食料品組成物。
【請求項29】
請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする美容食品組成物。
【請求項30】
請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする化粧料組成物。
【請求項31】
請求項21に記載のトウモロコシグルテン加水分解物を有効成分とする薬剤学的組成物。

【公表番号】特表2011−521629(P2011−521629A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510427(P2011−510427)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002667
【国際公開番号】WO2009/142441
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510304841)セムピオ フーズ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】