説明

トウモロコシ澱粉の糖化を増強するトリコデルマ・レセイ(TRICHODERMAREESEI)A−アミラーゼ

トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)由来のマルトース産生α-アミラーゼ(TrAA)とその変異種はグルコアミラーゼの存在下、液状化したデンプンから高グルコース含有のシロップの生産に有用である。ここで、このように生産された当該高グルコース含有シロップは、少なくとも約97%のグルコースを含有する。この製造法では、TrAAはグルコースがマルトース−オリゴ糖へ戻る反応を抑える。TrAAとその変異種の産生に有用な発現宿主とTrAAをコードする核酸もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月14日に出願された米国仮出願60/906,811及び2007年3月14日出願の60/906,812の優先権を主張する。この各出願は引用により全体を組入れる。
配列表
【0002】
SEQ ID NOS:1−7を含む配列表も添付する。これらは添付書類としてその全体を本願に組入れられる。
【0003】
トリコデルマ・レセイ由来のマルトース産生α−アミラーゼ(TrAA)、これをコードする核酸及びこの核酸を含む宿主細胞が提供される。TrAAを使用する方法はデンプンを糖化して高グルコース含有シロップにすることを含む。
【背景技術】
【0004】
高フルクトース含有コーンシロップ(HFCS)は、高いフルクトース含量と、砂糖に匹敵する甘みをもつコーンシロップの加工品であり、HFCSはそのためソフトドリンクと他の加工食品において砂糖の代替品として有用である。HFCSは現在、10億ドル規模の産業を代表している。HFCSを製造する方法は酸加水分解から一連の酵素-触媒反応まで幾年にわたり進歩してきた。
(1) 液状化:α-アミラーゼ(EC3.2.1.1)は、最初に30-40%w/wの乾燥固体(ds)を含むデンプン懸濁液をマルトースデキストランへ分解するために使用される。α-アミラーゼは内部α-1,4-D-グルコシド結合の無作為な切断を触媒するエンドヒドロラーゼである。液状化は通常、高温、例えば約90-100℃で行われるので、熱に安定なα-アミラーゼ、例えばバシラス属のα-アミラーゼが、この工程には好まれる。
(2) 糖化:グルコアミラーゼと/又はマルトースα-アミラーゼは、普通、液状化の後に生成されたマルトデキストランの非還元末端の加水分解を触媒し、D-グルコース、マルトース及びイソマルトースを遊離するために使用される。脱分岐酵素、例えば、プルラナーゼは糖化を促すために使用できる。糖化は通常、高温、例えば60℃、pH4.3で酸性条件下で起こる。この工程で使用されるグルコアミラーゼは通常、菌類から得られる。例えば、Optidex(商標登録)L400で使用されるアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ(AnGA)またはフミコラ・グリセア(Humicola grisea)グルコアミラーゼ(HgGA)である。この用途に現在使用されているマルトース α-アミラーゼは植物アミラーゼとアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のα-アミラーゼ、Clarase(商標登録)Lの活性成分、を含む。
(3) 異性化:高グルコース含量のシロップは、甘い製品を望む場合には、さらに加工を受けフルクトースにされる。グルコースをフルクトースにする異性化はグルコースイソメラーゼで触媒され、約42%(w/v)のフルクトース、50-52%のグルコース、及び他の糖の混合物を生成する。さらに操作を加えて最終的にフルクトースの含量が、例えば42%、55%、又は90%の市販品質のHFCSを生成できる。
【0005】
α-アミラーゼとグルコアミラーゼは、直接にコーンシロップの加工バッチに加えられ、再使用はされない。一方、グルコースイソメラーゼは、カラムに固定化され、それに接して糖の混合物が通過する。グルコースイソメラーゼカラムは酵素がその活性の大部分を喪失するまで再使用される。
【0006】
糖化工程はHFCS製造の律速段階である。糖化は、48-72時間にわたり起こり、その時間までに多くの菌類のグルコアミラーゼは相当の活性を失う。さらに、マルトースα-アミラーゼとグルコアミラーゼの両者は糖化を触媒するために使用できるが、この酵素は通常異なる最適pHと温度で働く。例えば、マルトースα-アミラーゼは通常、少なくともpH5.0の最適pHと55℃未満の最適温度をもつが、AnGAは通常pH4.0-4.5の最適pHと約60℃の最適温度をもつ。2種の酵素の間の反応条件の違いはpHと温度を調整することを必要にし、全反応工程を遅くし、不溶性のアミロース凝集物の生成を引き起こすかも知れない。残存する細菌α-アミラーゼは、pHが低くされると失活される。しかし、後で細菌α-アミラーゼは酸に安定なα-アミラーゼにより置き換えられても良い。
【0007】
糖化工程は約95-97%w/wグルコース、1-2%w/w マルトース及び0.5-2%w/w イソマルトースからなる組成のシロップを産生することが理想的である。この高グルコース含有シロップは異性化工程、上記工程(3)で使用でき、または結晶性グルコースの製造にも用いられる。これらの高いグルコース濃度は容易には達成できない。例えば、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei) グルコアミラーゼ(TrGA)は、AnGA又はHgGAと比較して改善された活性を提供する。しかし、TrGAは最終的なグルコース濃度が約88%w/wの製品を生成する。さらに、シロップ中のグルコース濃度が高い場合はグルコースのマルトースとマルトトリオースへの転換が促される。
【0008】
従って、HFCSを作る改善された製造法が本願技術分野で必要とされ、この製造法は、菌類のグルコアミラーゼとともに使用できる最適pHと最適温度をもつα-アミラーゼを使用する糖化を含む。また、より短時間で糖化を触媒できるα-アミラーゼも必要とされている。さらに、糖化後に約96%w/wのグルコース濃度をもつシロップを産生し、これらの目的を達成できるα-アミラーゼが求められている。
【発明の概要】
【0009】
本願技術分野のこれら及び他の要望は、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)由来のマルトースα-アミラーゼ(TrAA)により満たされる。この酵素、この酵素の変異種、及びこれらをコードする核酸が提供される。TrAAを発現する宿主細胞もまた提供される。
【0010】
TrAAは種々の製造法において有利に用いられるが、特に液状化の後に生成されるマルトデキストランの糖化においてそうである。ある実施態様では、TrAAはマルトースの製造法において、それのみ、又はプルラナーゼのような他の酵素と併せて使用される。TrAAは比較的低いpHと高温でマルトースの製造をうまく触媒し、菌類のグルコアミラーゼ、例えばAnGAと共存できる反応条件を取ることができる。さらに、TrAAを産生する容易さの故に、これはマルトース製造に現在使用されているα-アミラーゼよりも、経済的である。
【0011】
別の実施態様では、TrAAは高濃度のグルコースを製造する糖化工程で使用される。TrAAはグルコースからマルトオリゴ糖を形成する逆反応をうまく抑え、処理を受けたコーンスターチ混合物中のグルコース濃度を約96%w/vもの高濃度にすることができる。さらに、このグルコース濃度を、反応がグルコアミラーゼのみで触媒されるときよりも短時間で達成することができる。ある実施態様では、グルコアミラーゼがTrAAに加えられる。このグルコアミラーゼは、TrGAのような菌類のグルコアミラーゼでも良く、または、例えば、TrGA、HgGA及びAnGAの組合せのように、グルコアミラーゼの混合物が加えられても良い。
【0012】
従って、本発明の一つの目的は以下を含む単離されたポリペプチドを提供することである。(i)SEQ ID NO:3の21-463残基、又は(ii)トリコデルマ・レセイα-アミラーゼ(TrAA)の変異種、ここでこの変異種は、α-アミラーゼ活性をもち、SEQ ID NO:3の21-463残基と少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%アミノ酸配列が同一である。例えば、この変異種は、SEQID NO:3の21-463残基と比較して1-10個のアミノ酸が置換され、挿入されまたは欠失している。または、このポリペプチドはSEQ ID NO:3を含み、またはSEQ ID NO:3の21-463の残基を含んでも良い。このポリペプチドはトリコデルマ・レセイ以外の種からのシグナル配列を含んでも良い。ある実施態様では、このポリペプチドはグリコシル化されている。この単離されたポリペプチドをさらに精製しても良い。
【0013】
本発明の他の目的は上記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。このポリヌクレオチドはSEQ ID No:2、つまりcDNA配列を含む。SEQ ID NO:2のT残基がU(ウラシル)残基と置換された場合、単離されたmRNAも提供される。
【0014】
本発明の別の目的は上記のポリヌクレオチドを含むベクターと、このベクターを含む細菌を提供することである。このポリヌクレオチドを発現する宿主細胞もまた提供される。ここでこの宿主細胞は、ある実施態様では、トリコデルマ属であり、特にT・レセイである。または、宿主はRL-P37単離体、糸状菌細胞、アスペルギルス属、フザリウム属またはペニシリウム属でも良い。アスペルギルス宿主細胞はアスペルギルス・ニードランス(Aspergillus nidulans)、A・アワモリ(A.awamori)、A・オリゼ(A.oryzae)、A・アキュレアタス(A.aculeatus)、A・ニゲル、またはA.ジャポニカス(A.japonicus)でも良い。フザリウム宿主細胞は、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、又はF・ソラニ(F. solani)でも良い。宿主細胞はさらに、異種のグルコアミラーゼ、つまり、宿主細胞と同一の種ではないグルコアミラーゼをコードする核酸を含んでも良い。このグルコアミラーゼは、例えば、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)グルコアミラーゼでも良い。その代わり、あるいはさらに、宿主細胞は、宿主細胞の内在性グルコアミラーゼを発現しなくても良い。
【0015】
本発明の別の目的は以下を含む、デンプンの糖化法を提供する。すなわち、液状化されたデンプン溶液に上記のポリペプチドを加え、液状化されたデンプン溶液を糖化する。このポリペプチドは乾燥固体1トン当たり約0.3-1kgで液状化されたデンプン溶液へ加えられる。この液状化されたデンプン溶液は、約20-35%w/w乾燥固体の液状化されたデンプンのスラリーでも良い。
【0016】
この方法はさらに、グルコアミラーゼをこの液状化されたデンプン溶液に加える工程を含んでも良く、この工程でデンプン溶液の糖化が行われ高グルコース含量のシロップが製造される。高グルコース含量のシロップ中のグルコース濃度は少なくとも約97%w/w dsに達する。高グルコース含量のシロップ中のグルコースの最大濃度は液状化したデンプン溶液にこのポリペプチドを加えてから約24時間以内に達しても良い。このグルコアミラーゼは、植物、菌類、又は細菌から生じても良い。例えば、このグルコアミラーゼはトリコデルマ・レセイグルコアミラーゼ(TrGA)、アスペルギルス・ニゲル グルコアミラーゼ(AnGA)、又はフミコラ・グリセアグルコアミラーゼ(HgGA)でも良い。このグルコアミラーゼは、アスペルギルス属、A.アワモリ、A.オリゼ、タラロマイセス属(Talaromyces sp)、T・エメルソニ(T.emersonii)、T・レイセッタナス(T.leycettanus)、T・デュポンチ(T.duponti)、T・テルモフィラス(T.thermophilus)、クロストリジウム属(Clostridium sp)、C・テルモアミロリチカム(C.thermoamylolyticum)または、C・テルモヒドロスルフリカム(C. thermohydrosulfuricum)である菌類に由来しても良い。このグルコアミラーゼは約0.02-2.0GAU/g dsまたは、約0.1-1.0GAU/g dsの量で加えられても良い。脱分岐酵素、異性化酵素、プルラナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ又はそれらの組合せを非限定的に含む他の酵素が追加されても良い。デンプンの糖化の方法はさらに糖化されたデンプン溶液を醗酵させてエタノールを製造することを含んでも良い。この液状化されたデンプン溶液は、約40℃から約60℃でもよい。液状化されたデンプン溶液は約pH4.0から約pH6.0、または約pH4.2から約pH4.8でもよい。
【0017】
上記のポリペプチドと任意に、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、β-アミラーゼ、TrAA以外の菌類のα-アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、へミセルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、イソアミラーゼ又はそれらの組合せを含むデンプン処理剤組成物を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0018】
溶液又はゲルに上記のポリペプチドを含むベーキング組成物を提供することが本発明の別の目的である。パン等を焼く方法は請求項46のベーキング組成物を焼き上げる材料へ加え、材料を焼くことを含む。
【0019】
さらにこのポリペプチドと任意に他の酵素を水溶液中に含む織物の糊抜き剤組成物を提供することが本発明の目的である。織物の糊抜きの方法は織物を糊抜きするに十分な時間、織物と糊抜き剤を接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付した図面はこの明細書に組み入れられ、その一部であり、種々の実施態様を説明している。図面において、
【図1】図1はグルコアミラーゼの存在下のTrAAの、グルコアミラーゼのみにより達成されるより優れた効率で糖化工程を触媒する能力を示す。y軸は、pH4.2、60℃で糖化工程の24時間後に製造されたグルコースの重量パーセント(DP 1)を示す。反応は1.0kg/mt ds グルコアミラーゼ (GA) のみまたは、kg/mt dsで示された量のTrAAと併せたGAにより触媒された。例えば1mgの酵素の32%乾燥固体を含む50mL溶液への添加は、この溶液が1mg酵素/16g ds、または0.0625kg/mt dsを含むことになることに留意せよ。
【図2】図2はTrAAの低pHでマルトースの製造を触媒する能力を示す。y軸は、55℃で0.5kg/mt ds TrAAにより触媒されるマルトース製造工程の24時間後に製造されるマルトース(DP2)の重量パーセントを示す。反応のpHはx-軸に示されている。
【図3】図3はTrAAのClarase(商標登録) Lに匹敵する効率でマルトースの製造を触媒する性能を示す。マルトースの製造工程48時間後に製造されるマルトースの重量%(DP2)がy軸上に示されている。この反応を触媒するために使用される酵素はx-軸に示されている。”Clarase”:pH5.5、55℃での10 SKBU/g dsのClarase(商標登録) L。”10 TrAA”:pH4.5、60℃での10SKBU/g ds トリコデルマ・レセイα-アミラーゼ。”15TrAA”と”20TrAA”はそれぞれ、pH4.5、60℃で15KBU/g dsと20 SKBU/g dsを表す。”20 TrAA+ PU”は、pH4.5、60℃で20 SKBU/g ds TrAAへ0.25kg/mt dsのプルラナーゼを加えることを表す。
【図4】図4は、プルラナーゼの最適量でTrAAにより触媒されたマルトース製造工程を示す。y-軸は、0.5kg/mt ds TrAAの存在下で、pH4.6、58℃で48時間後の製造されたマルトース(DP2)の重量%を示す。x-軸は反応へ加えられたkg/mt dsでのプルラナーゼの量を示す。
【図5】図5は、TrAA(レーン1)を発現している細胞の培養液の一部の、又は精製したTrAA(レーン2)のSDS-PAGE電気泳動で分離したタンパク質を示す。分子量マーカーはレーンMに示されている。
【図6A】図6Aは、基質としてCeralpha試薬(Megazyme International Ireland, Ltd., Wiclow.Ireland;Cat.No.K-CERA)を使用した、pHの関数として精製TrAAの相対的なα-アミラーゼ活性(尺度は任意)を示す。
【図6B】図6Bは、同じ人工基質を使用した、温度の関数として精製TrAAの相対的α-アミラーゼ活性(尺度は任意)を示す。
【図7】図7Aと図7BはSEQ ID NOS:1-7の一覧である。
【0021】
詳細な説明
菌類のα-アミラーゼはトリコデルマ・レセイから提供される。TrAAは現在使用されているα-アミラーゼに勝るいくつかの利点を提供する。第一に、TrAAは比較的低いpHと高い温度で活性であり、この酵素を同一の反応条件で菌類のグルコアミラーゼと組み合わせて使用することを可能にする。これはpHと温度がα-アミラーゼ又はグルコアミラーゼの最適な使用のため再調整されなければならないバッチプロセスで、糖化反応を行わせる必要をなくす。第二に、プルラナーゼと組み合わせて、TrAAは、普通使用されるより高価な酵素、例えばClarase(商標登録) Lと同一の効率でマルトースの製造を触媒する。
【0022】
1. 定義と略号
この詳細な説明に従い、以下の略号と定義が使用される。本願で使用される場合、文脈から明らかに違う場合を除き、単数形は複数をもさす。例えば、「酵素」というときは複数のそのような酵素を含み、「調合剤」というときは1以上の調合剤と、本願技術分野の技術者に知られているそれらの均等物などをさす。
【0023】
別に定義されている場合を除き、本願で使用される全ての技術的及び科学的用語は本願技術分野の普通の技術者により普通に理解されているのと同一の意味をもつ。以下の用語について下記に示す。
【0024】
1.1 定義
「アミラーゼ」は、特に、デンプンの分解を触媒できる酵素をいう。一般的に、α-アミラーゼ(EC 3.2.1.1;α-D-(1→4)-グルカングルカノヒドロラーゼ)は無作為にデンプン分子内部のα-D-(1→4)O-グリコシド結合を切断する、エンド型酵素として定義される。対照的に、エキソ型アミロース分解酵素、例えばマルトースα-アミラーゼ(EC 3.2.1.133);β-アミラーゼ(EC 3.2.1.2;とα-D-(1→4)-グルカン マルトヒドロラーゼ)、は基質の非還元末端からデンプン分子を切断する。β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ(EC3.2.1.20;α-D-グルコシド グルコヒドラーゼ)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3;α-D- D-(1→4)-グルカン グルコヒドロラーゼ)、及び製品に特異的なアミラーゼは、デンプンから特定の長さのマルトオリゴ糖を生成できる。グルコアミラーゼはアミロースとアミロペクチン分子の非還元性末端からグルコシル残基を遊離する。グルコアミラーゼは、α-1,4結合よりはるかに遅い速度ではあるが、α-1-6とα-1-3結合の加水分解も触媒する。
【0025】
「α-アミラーゼ変異種」、「α-アミラーゼ変異タンパク質」と「変異酵素」は野生型α-アミラーゼのアミノ酸配列を修飾したアミノ酸配列をもつα-アミラーゼタンパク質をいう。本願で使用する場合、「親酵素」「親配列」「親ポリペプチド」「野生型α-アミラーゼタンパク質」と「親ポリペプチド」はこのα-アミラーゼ変異ポリペプチドが基礎にしている酵素とポリペプチドをいう。例えば、トリコデルマ・レセイα-アミラーゼである。「親核酸」は親ポリペプチドをコードしている核酸配列をいう。野生型のα-アミラーゼは、天然に生じる。「α-アミラーゼ変異種」は成熟タンパク質、つまりシグナル配列のないタンパク質のアミノ酸残基が、野生型α-アミラーゼと異なる。このα-アミラーゼ変異種は異種のα-アミラーゼポリペプチドを含有する融合タンパク質であり得る。例えば、このα-アミラーゼタンパク質は別のα-アミラーゼのシグナルペプチドが連結した成熟型α-アミラーゼタンパク質を含むことができる。
【0026】
「変異種」はポリペプチドまたは核酸について用いる。用語「変異種」は用語「突然変異体」と相互に交換して使用できる。変異種は、アミノ酸又はヌクレオチド配列のそれぞれについて、一以上の位置での挿入、置換、転換、切断(truncation)、及び/または逆位を含んでいるものを含む。変異核酸は、本願に示す核酸配列にハイブリダイズできる配列に相補的な配列を含むことができる。例えば、変異配列は厳格な条件、例えば、50℃と0.2XSSC(1X SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)で、本願に示すヌクレオチドへハイブリダイズできる配列に相補的である。より特異的には、用語「変異」は高度に厳格な条件、例えば、65℃と0.1X SSCで本願に示す核酸配列にハイブリダイズできる配列に相補的である配列を含む。
【0027】
本願で使用する場合、用語「発現」は遺伝子の核酸配列に基づきポリペプチドが産生される過程をいう。この過程は転写と翻訳の両者を含む。
【0028】
「単離された」は、その配列が、自然では組み合わされている少なくとも1つの他の成分から少なくとも実質的に取り出されていることをいう。
【0029】
「精製された」は物質が比較的に純粋な状態、例えば少なくとも約90%純度、少なくとも約95%純度、または少なくとも約98%純度にあることをいう。
【0030】
「熱的に安定」とは酵素が高温に暴露された後に活性を保持していることをいう。α-アミラーゼのような、酵素の熱的安定性はその半減期(t1/2)により測定される。酵素活性の半分は半減期までに失われる。半減期の値は残存アミラーゼ活性を測定することにより、定めた条件で計算される。
【0031】
「pH範囲」は、その酵素が、5以上のpH単位にわたり酸性から塩基性条件で触媒活性を示す能力をいう。
【0032】
本願で使用する場合、「pHに安定」とは、広い範囲のpHにわたり酵素が活性を保持する能力についていう。
【0033】
本願で使用する場合、「アミノ酸配列」は「ポリペプチド」及び/または用語「タンパク質」と同義語である。ある場合には、用語「アミノ酸配列」は用語「ペプチド」と同義語である。ある場合では、用語「アミノ酸配列」は用語「酵素」と同義語である。
【0034】
本願で使用する場合、「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」はオリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列及びそれらの変異体、断片及び誘導体をいう。このヌクレオチド配列はゲノム、合成または組換えに由来しても良く、二重鎖又は一本鎖でも良く、これらはセンス鎖(sense strand)又はアンチセンス鎖でも良い。本願で使用する場合、用語「ヌクレオチド配列」は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA及びRNAを含む。
【0035】
「相同体」は対象アミノ酸配列や対象ヌクレオチド配列とある程度の同一性又は「相同性」をもつものをいう。「相同性配列」は別の配列と、あるパーセント、例えば、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列の同等性をもつポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。パーセント同一性は、配列の位置あわせをして、2本の配列を比較したとき、同一である塩基又はアミノ酸のパーセンテージをいう。アミノ酸が置換、削除又は加えられたときは、対象配列と比較してアミノ酸配列は同一ではない。配列の同一性は通常、対象タンパク質の成熟配列に関して測定される。つまり、例えば、シグナル配列を除去する、翻訳後の修飾の後に行う。通常、相同体は対象アミノ酸配列と同一の活性部位残基を含む。相同体はまた、対象タンパク質と異なる酵素的性質をもっても良いが、マルトース産生α-アミラーゼ活性も保持する。
【0036】
本願で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は核酸の鎖が相補鎖とが塩基対形成により結合する過程と、ポリメラーセ連鎖反応(PCR)技術で行われるような増幅の過程をいう。α-アミラーゼ変異核酸は一本鎖又は二本鎖DNAまたはRNAとして、RNA/DNAへテロ二重鎖又はRNA/DNAコポリマーとして存在しても良い。本願で使用する場合、「コポリマー」はリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの両者を含む一本鎖核酸配列をいう。α-アミラーゼ変異種核酸はさらに発現を増強するためにコドンが最適化されても良い。
【0037】
本願で使用する場合、「合成」化合物は、生体外(in vitro)の化学的または酵素的合成により作られる。これは、宿主生物、例えば、メチロトローフ性酵母ピキア・ハンセヌラ(Pichia Hansenula)、ストレプトマイセス(Streptomyces)及びトリコデルマ、例えばT・レセイ又は他の選択した発現宿主、の最適なコドン用法により調製されたα-アミラーゼ変異核酸を非限定的に含む。
【0038】
本願で使用する場合、「形質転換細胞」は組換えDNA技術の使用により形質転換された細菌及び菌類細胞の両者等の細胞を含む。形質転換は、通常1以上のヌクレオチド配列の細胞への挿入により起こる。挿入されたヌクレオチド配列は異種の核酸配列、つまり、形質転換を受ける細胞にとり固有ではない配列、例えば、融合タンパク質の配列でも良い。
【0039】
本願で使用する場合、「機能的に連結している」とは、説明された成分が意図したように機能するような関係にあることをいう。例えば、コーディング領域と機能的に連結している調節配列は、そのコーディング領域の発現がその制御配列と両立する条件で達成されるように連結している。
【0040】
本願で使用する場合、「生物学的に活性」とは、必ずしも同一という程度でなくとも良いが、天然の配列と類似の構造、調節又は生化学的機能をもつ配列をいう。
【0041】
用語「糸状菌」はエウミコチナ(Eumicotina) 亜門の全ての糸状菌形態をいう。Alexopoulos, INTRODUCTION MYCOLOGY,Wiley,New York(1962)参照。これらの菌類は、チチン、セルロース及び他の複雑な多糖からなる細胞壁を有する植物性菌糸体により特徴付けられる。糸状菌は形態学的に、生理学的に及び遺伝学的に酵母から区別される。糸状菌による植物的な生育は菌糸の延長により生じ、炭素の異化は必ず好気的である。糸状菌の親細胞はトリコデルマ属、例えばT・レセイ(以前はT・ロンギブラキアタム(T.longibrachiatum)として分類され、現在ヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)としても知られている。)、T・ビルデ、T・コニンギ(T.koningii)、T・ハルジアナム(T.harzianum)、ペニシリウム属、フミコラ属、例えば、H・インソレンス(H.insolens)及びH・グリセア(H.grisea)、クリソスポリウム属(Chrysosporium sp.)、C・ラクノウェンス(C.lucknowense);グリオクラジウム属(Gliocladium sp)、アスペルギルス属、例えば、A.オリゼ、A.ニゲル、及びA. アワモリ、フザリウム属、ニューロスポラ属(Neurospora sp.)、ヒポクレア属(Hypocrea sp)、及びエメリセラ属の細胞でも良い。Innisら、Science 228:21-26(1985)も参照せよ。
【0042】
本願で使用される場合、用語「デンプン」は、植物の複雑な多糖炭水化物からなるどのような物質もいい、(C6H10O5)xの化学式をもつアミロースとアミロペクチンからなる。ここでXはいずれの数字でも良い。用語「顆粒デンプン」は生の、つまり料理をされていないデンプンをいい、例えば、ゼラチン化されていないデンプンである。
【0043】
本願で使用する場合、用語「糖化」はデンプンからグルコースへの酵素的変換をいう。
【0044】
用語「液状化」は、ゼラチン化されたデンプンが加水分解されて低分子量の可溶性デキストリンを与える、デンプンの変換の工程をいう。用語「重合の程度」(DP)は、所与の糖類中の無水グルコピラノース単位の数(n)をいう。DP1の例は単糖であるグルコースとフルクトースである。DP2の例は、二糖マルトースとスクロースである。
【0045】
本願で使用する場合、「乾燥固体含量」(ds)は乾燥重量パーセントに基づくスラリーの全固体をいう。用語「スラリー」は不溶な固体を含有する水性の混合物をいう。
【0046】
用語「DE」または「デキストロース等価物」は還元糖、つまりD-グルコースの、シロップの全炭水化物中の割合として、パーセンテージとして定義される。
【0047】
用語「同時的糖化、醗酵(SSF)」は、エタノール産生微生物のような微生物と少なくとも1の酵素、例えばTrAAまたはそれの変異種、が同一の製造工程中に共存する生化学的製品を製造する工程をいう。SSFは、顆粒デンプン基質のグルコース等の糖類への加水分解と、糖類のアルコールへの醗酵を、例えば同一の反応槽で、同時に行うことをいう。
【0048】
本願で使用する場合、「エタノール産生性微生物」とは、糖又は多糖をエタノールへ変換する能力を備えた微生物をいう。
1.2 略号
以下の略号が、別に指示がない限り使用される。
ADA アゾジカルボンアミド
AnGA アスペルギルス・ニゲル グルコアミラーゼ
ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション
BBA Spezyme(商標登録) BBA 1500L β-アミラーゼ
cDNA 相補的DNA
DE デキストロース等価物
DEAE ジエチルアミノエタノール
DNA デオキシリボ核酸
DNS 3,5-ジニトロサリチル酸
DPn n個のサブユニットの重合度
ds 乾燥固体
EC 酵素分類のための酵素委員会
EDTA エチレンジアミン四酢酸
FGSC 菌類遺伝子貯蔵センター
G173A 173位のグリシン(G)残基がアラニン(A)残基により置換されていること。アミノ酸は本願技術分野で共通の単一の略号により指定されている。
GA グルコアミラーゼ
GAU グルコアミラーゼ活性単位
HFCS 高フルクトース含有コーンシロップ
HFSS 高フルクトース含有デンプン由来シロップ
HgGA フミコラ・グリセア グルコアミラーゼ
HS 高重合度糖類(higher sugars)(DPn、n>3)
Kb キロベース
LAT B.リケニホルミス(B.licheniformis)α-アミラーゼ
LB Luria Bertani 液体培地
LU リパーゼ力価単位、酵素1単位量当たりのホスホリパーゼ活性の尺度
MOPS 3-(n-モルホリノ)プロパンスルホン酸
mRNA メッセンジャーリボ核酸
mt メトリックトン(1000kg)
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
ppm 百万当たりの部分
PU プルラナーゼ又はプルラナーゼ単位
RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SD Sabouraud デキストロース液体培地
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SKBU/g ds 乾燥固体1グラム当たりのα-アミラーゼ力価単位 1α-アミラーゼ単位は、定量の条件下1時間当たりの1.0g の限界デキストリン基質(limit-dextrin substrate)を、デキストリン化(dextrinize)する。
1X SSC 0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0
SSF 同時的糖化、醗酵
TE 10mM トリス、pH7.4、1mM EDTA
TrAA トリコデルマ・レセイ α-アミラーゼ
TrGA トリコデルマ・レセイ グルコアミラーゼ
w/v 重量/容量
w/w 重量/重量
YM 酵母モルト抽出液体培地
μL マイクロリットル
【0049】
2. トリコデルマ・レセイα-アミラーゼ(TrAA)とその変異種
SEQ IDNO:3を含む単離され、かつ/又は精製されたポリペプチドが提供される。これは、20個のアミノ酸先導配列(leader sequence)を含む野生型トリコデルマ・レセイα-アミラーゼ(TrAA)である。ある実施態様では、TrAAはポリペプチドの成熟型であり、20個のアミノ酸の先導配列は開裂され、このポリペプチドのN-末端は、SEQ ID NO:3の21位のアスパラギン酸(D)残基で始まる。SEQ ID NO:3を含むこのポリペプチドをコードする核酸、又はSEQ ID NO:3の21-463位のアミノ酸残基をコードする核酸もまた提供される。ある実施態様では、TrAAをコードする核酸はSEQ ID NO:1を含むゲノムDNAである。別の実施態様では、この核酸はSEQ ID NO:2を含むcDNAである。本願技術分野の技術者により良く理解されているように、遺伝子コードは縮重している。つまりある場合には多数のコドンが同一のアミノ酸をコードすることがある。核酸は、TrAAまたはその変異種をコードするゲノムDNA、mRNA及びcDNAを含む。
【0050】
野生型のトリコデルマ・レセイα-アミラーゼ(TrAA)に加え、1以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失によるSEQ ID NO:3に示された野生型TrAAと異なるその変異種が提供される。例えば、変異α-アミラーゼは、マルトース産生α-アミラーゼ活性を維持する一方、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、又は40位のアミノ酸修飾、例えば、1-10位のアミノ酸置換を含んでも良い。変異TrAAは野生型TrAAより高い又は低い特異的活性を保持しても良い。この変異種は「相同体」と同義である。変異ポリペプチドをコードする変異核酸が提供される。変異核酸は変異ポリペプチドをコードする全ての核酸を含む。
【0051】
2.1 TrAA 変異種の特徴づけ
酵素変異種はその核酸及び一次ポリペプチド配列、三次構造のモデル、及び/またはその特異的活性により特徴づけることができる。TrAA変異種の他の特徴は、例えば、安定性、pH範囲、酸化安定性及び熱的安定性を含む。ある面では、野生型TrAAの性能特性を維持する一方、このTrAA変異種は野生型TrAAより高い水準で発現される。発現と酵素活性の水準はこの分野の技術者に知られている標準的な定量を用いて評価できる。別の面では、変異種は野生型酵素と比較して高温(つまり、70-120℃)での安定性、及び/又はpHの限度(つまり、pH4.0から6.0、またはpH8.0から11.0)を向上させるなど性能特性の向上を示す。
【0052】
発現特性とは、変異種が特定の宿主細胞で産生される場合の、変化させられたその変異種の発現水準をいう。発現は、一般的に、所定の時間にわたり、この分野で知られている標準的技術を使用して醗酵液体培地から回収できる活性な変異種の量に関する。発現はまた、その宿主細胞内で産生される、またはその宿主細胞により分泌される変異種の量と速度にも関係することがある。発現はまた、この変異種酵素をコードするmRNAの翻訳の速度に関係することもある。
【0053】
TrAA変異種はまた、親α-アミラーゼと比較して酸化安定性が変化しているかもしれない。例えば、酸化安定性の減少はデンプンを液状化する組成物において有利かもしれない。
【0054】
この変異TrAAは野生型α-アミラーゼよりも熱的安定性が高いかもしれない。そのようなTrAA変異種は高い温度が必要なベーキングや他の固定での使用に有利である。例えば、熱的に安定なTrAA変異種は約55℃から約80℃の温度でデンプンを分解できる。
【0055】
本願で述べるα-アミラーゼ変異種ポリペプチドは、高温で、特に約55℃から約95℃以上、特に約80℃で、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%以上、親酵素と比較して半減期を延長する突然変異も持ちうる。一実施態様では、このTrAA変異種は80℃以上で約1-10分間加熱することができる。
【0056】
このTrAA変異種ポリペプチドはさらに親ポリペプチドのシグナル配列において、またはこのTrAA親ポリペプチドの他の場所に突然変異を含むことができる。例えば、TrAA変異種は異種のポリペプチドを含む融合タンパク質の形態ででも良く、例えば細菌の宿主細胞から、発現されたタンパク質の分泌を促すためにB.リケニフォルミス(B.licheniformis)(LAT)のシグナルペプチドがTrAAに融合したものでも良い。この変異TrAAに融合できる他の異種のポリペプチドは、例えば発現されたタンパク質の精製を容易にする配列を含む。一実施態様では、異種配列は、異種の配列をこの発現された変異TrAAから切り離すことができるためプロテアーゼに感受性のある部位を含む。
【0057】
一面では、この核酸によりコードされたこのTrAA変異ポリペプチドは、この親配列と同一のpH安定性をもつ。別の面では、このTrAA変異種はpH安定性の範囲を広げ、又はこのpH範囲をこの酵素の市販品に適した好ましい領域へ移す突然変異を含む。例えば、ある実施態様では、このTrAA変異種は約pH4.5から約pH10.5でデンプンを分解できる。このTrAA変異ポリペプチドは、同一の条件下、親ポリペプチドと比較して長い半減期又は高い活性(定量法による)をもっても良く、またはこのTrAA変異種は親ポリペプチドと同一の活性をもっても良い。このα-アミラーゼ変異ポリペプチドは、また同一のpH条件において、親ポリペプチドと比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%またはそれ以上の半減期を持っても良い。または、或いはそれに加えて、TrAA変異種は同一のpH条件で親ポリペプチドと比較して高い特異的活性を持っても良い。
【0058】
別の面では、本願に記載されたTrAA変異種のいずれかをコードする核酸に相補的な核酸が提供される。加えて、この相補鎖にハイブリダイズできる核酸が提供される。別の実施態様では、本願に記載された方法と組成物に使用される配列は合成された配列である。これは、宿主生物、例えばメチロトローフな酵母トリコデルマ、ピキア、及びハンセヌラ(Hansenula)、に発現させるために最適なコドンにより作られた配列を、非限定的に含む。
【0059】
3. TrAAとその変異種の産生
ある実施態様では、野生型TrAAはT.reesi株に発現され、使用前に、任意に単離される。別の実施態様では、野生型TrAAが、発現後、精製される。特に高水準で野生型TrAAを発現する有用なT.reesi株は技術者に良く知られた技術を用いて選択される。高水準の発現は、培地1リットル当たり約12-20gのTrAAまたはその変異種、約14-18g/L、または約16-19g/Lである。他の実施態様では、この野生型TrAAまたはその変異種は宿主細胞に組換えにより発現される。このTrAA遺伝子は、例えば米国で公開された出願No.2007/0004018とNo.2006/0094080に記載されているようにクローンされ、発現できる。
【0060】
組換えにより発現される酵素
ある実施態様では、微生物はTrAA又はその変異種を発現するように遺伝学的に操作を受ける。適した宿主細胞は糸状菌細胞を含み、これは、例えば、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属またはペニシリウム属の株でも良い。特に適した宿主細胞は、アスペルギルス・ニードランス、A・アワモリ、A・オリゼ、A・アクレアタス(A.aculeatus)、A.・ニゲル、A・ジャポニカス、トリコデルマ・レセイ、T・ビブレ、フザリウム・オキシポラム及びF・ソラニを含む。アスペルギルス株は、Wardら、Appl.Microbiol.Biotechnol.39:738-743(1993)とGoedegebuurら、Curr.Gene.41:89-98(2002)に開示されている。特に適した実施態様では、宿主細胞は、比較的高い水準、例えば15-20g/LでTrAAを産生するTrichoderma reesei株である。適したT.reeseiは知られており、非限定的な例は、ATCC No 13631、ATCC No.26921、ATCC No.56764、ATCC No.56765、ATCC No. 56767及びNRRL 15709を含む。ある実施態様では、宿主株はRL-P37から誘導され、これはSheir-Neiseら、Appl.Microbiol.Biotechnology 20:46-53(1984)に開示されている。TrAAまたはその変異種が真核宿主細胞で発現されるときは、特に適した実施態様の発現されたTrAAは野生型のTrAAで見出されるものと同一のパターンのグリコシル化を受けている。特に適した宿主細胞は、米国特許第5,874,276号及びWO05/001036(Genencor International, Inc.)に記載された手順に従い操作される。
【0061】
他の実施態様では、この宿主細胞は、不活性化された固有の遺伝子、例えば欠失された遺伝子をもつ遺伝学的に操作を受けた宿主細胞である。例えば、菌類の宿主細胞中の一以上の遺伝子を不活性化には既知の方法を使用しても良い。例えば、米国特許第5,246,853号、米国特許第5,475,101号及びWO92/06209に記載されている方法である。遺伝子の不活性化は完全な又は部分的な欠失、挿入による不活性化、またはその意図した目的のために遺伝子を機能させなくするいずれか他の手段により達成されても良い。その結果この遺伝子は機能性タンパク質の発現が止められる。不活性な遺伝子は、例えば、エンドグルカナーゼとエキソセロビオヒドロラーゼのようなセルロース分解酵素をコードする遺伝子、例えばcbh1、cbh2、egl1、egl2及びegl3を含みうる。特に適した4個のタンパク質が欠失したT・レセイ宿主細胞は、米国特許第5,650,322号、及びWO05/001036に記載されている。別の実施態様では、例えば、米国特許第5,650,322号は、cbh1遺伝子とcbh2遺伝子を欠失しているRL-P37株の誘導体を開示している。
【0062】
別の実施態様では、適した宿主細胞はバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、B・レケニフォルミス(B.licheniformis)、B・レンタス(B.lentus)、B・ブレビス(B.brevis)、B・ステアロテルモフィラス(B.stearothermophilus)、B・アルカロフィラス(B.alkalophilus)、B・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B・コアグランス(B.coagulans)、B・シルカランス(B.circulans)、B・ラウタス(B.lautus)、B・スリンギエンシス(B.thuringiensis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)またはS・ムリナス(S.murinus)、含む群れから選択されるグラム陽性菌、又は、グラム陰性菌(このグラム陰性菌は大腸菌又はシュードモナス属である)を含む。
【0063】
ある実施態様では、宿主細胞は遺伝子工学的に操作を受け、アミノ酸配列が野生型TrAAと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列をもつTrAA変異種を発現するようにされている。ある実施態様では、TrAA又はその変異種をコードするこのポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2または、SED ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の配列の核酸配列をもつ。他の実施態様では、TrAAまたはその変異種を発現しているこの宿主株はまた遺伝子的に操作を受け異種のGAを発現する。
【0064】
3.2 ベクター
ある実施態様では、TrAAまたはその変異種をコードする核酸を含むDNA構造体は宿主細胞で発現されるように構成されている。TrAAをコードする代表的な核酸はSEQ ID NO:1及び2を含む。ある実施態様では、このDNA構造体はTrAAコーディング配列に機能的に連結している調節配列を含む発現ベクターにより宿主細胞へ移される。
【0065】
このベクターは、宿主細胞に導入されたとき、菌類の宿主細胞ゲノムに組み入れられ複製され得るいずれのベクターでも良い。FGSC Catalogue of Strainsは適したベクターを挙げている。www.fgsc.netのFGSC, Catalogue of Strains, University of Missouri(直近では2007年1月17日に変更)を参照せよ。適した発現及び/または組み込みベクターの他の例はSambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); Bennettら、MORE GENE MANIPULATION IN FUNGI, Academic Press, San Diego(1991)、pp.396-428;及び米国特許第5,874,276号に提供されている。特に有用なベクターは、pFB6、pBR322、PUC18、pUC100及びpENTR/D、pDONTM201、pENTRTM、pGEM(商標登録)3Z及びpGEM(商標登録)4Zを含む。細菌細胞で使用するための適したプラスミドはpBR322とpUC 19を含み、これらは大腸菌で複製し、そしてpE194は、例えば、バシラスで複製する。
【0066】
ある実施態様では、TrAAまたはその変異種をコードする核酸は機能的に適当なプロモーターと連結し、これは宿主細胞での転写を可能にする。このプロモーターは宿主細胞に相同又は異種のタンパク質をコードする遺伝子に由来しても良い。好ましくは、このプロモーターはトリコデルマ宿主で有用である。適したプロモーターの非制限的な例は、cbh1、cbh2、egl1及びegl2プロモーターを含む。ある実施態様では、このプロモーターは宿主細胞に固有である。例えば、T・レセイが宿主のときは、このプロモーターは固有のT・レセイのプロモーターである。ある実施態様では、このプロモーターは、T・レセイ cbh1、であり、これはGenBankにアクセス番号No.D86235で保存されている誘導性プロモーターである。「誘導性プロモーター」とは環境上または発生上の調節のもとで活性であるプロモーターである。別の実施態様では、このプロモーターは宿主細胞に対し異種である。他の有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・アワモリとA.ニゲルグルコアミラーゼからのプロモーターを含む。Nunbergら、Mol.Cell.Biol.4:2306-2315(1984)とBoelら、EMBO J.3:1581-1585(1984)参照。
【0067】
ある実施態様では、コードディング領域はシグナル配列と機能的に連結している。シグナル配列をコードするこのDNAは発現されるTrAA遺伝子と天然で組合せられているDNA配列でも良い。例えば、このコードするDNAはSEQ IDNO:4のヌクレオチド配列を含んでも良く、これはSEQID NO:5のTrAAシグナル配列をコードする。他の実施態様では、コードするDNAはSEQ ID NO:4を含まず、トリコデルマ・レセイ以外の種由来のシグナル配列をコードするヌクレオチド配列により置き換えられている。この実施態様ではシグナル配列をコードするポリヌクレオチドは、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの領域内の上流にある。別の実施態様では、菌類の宿主細胞へ導入されるシグナル配列とプロモーター配列を含むDNA構造体又はベクターは、同一の源に由来する。例えば、ある実施態様では、シグナル配列はcbh1プロモーターに機能的に連結しているcbh1シグナル配列である。
【0068】
ある実施態様では、この発現ベクターはまた、終止配列も含む。ある実施態様では、この終止配列とプロモーター配列は同一の源に由来する。別の実施態様では、終止配列は宿主細胞に相同である。特に適したターミネーター配列は、トリコデルマ株、特にT・レセイ由来のcbh1である。他の有用な菌類のターミネーター配列はアスペルギルス・ニゲルまたはA・アワモリグルコアミラーゼ遺伝子由来のターミネーターを含む。Nunbergら(1984)、上記、及びBoelら、上記(1984)参照。
【0069】
いくつかの実施態様では、発現ベクターは選択マーカーを含む。適した選択マーカーの例は、抗微生物剤、例えば、ハイグロマイシン又はフレオマイシンに耐性を与えるものを含む。栄養上の選択マーカーもまた適し、amdS、argB及びpyr4を含む。トリコデルマの形質転換のベクター系に有用なマーカーは、本願技術分野で知られている。例えば、BIOTECHNOLOGY OF FILAMENTOUS FUNGI, Finkelsteinら編、Butterworth-Heinemann,Boston,Mass.(1992)、第6章;及びKinghornら、APPLIED MOLECULAR GENETICS OF FILAMENTOUS FUNGI, Blackie Academic and Professional, Chapman and Hall,London(1992)参照。ある実施態様では、この選択的マーカーはamdS遺伝子であり、これは酵素アセトアミダーゼをコードする。これは形質転換された細胞が窒素源としてアセトアミドで増殖することを可能にする。選択マーカーとしてA・ニードランス amdS遺伝子の使用はKelleyら、EMBO J. 4:475-479(1985)とPenttila ら、Gene 61:155-164(1987)に記載されている。
【0070】
TrAAまたはその変異種をコードするポリヌクレオチドをもつDNA構造体を含む、適当な発現ベクターは、所与の宿主生物で自律的に複製することのできるいずれのベクターでも良い。ある実施態様では、この発現ベクターは、プラスミドである。ある実施態様では、遺伝子を発現させる2種の発現ベクターが認められている。最初の発現ベクターは、プロモーター、TrAAコーディング領域、及びターミネーター全てが発現をされる遺伝子に由来するDNA配列を含む。ある実施態様では、遺伝子の切断は、好ましくないDNA配列、例えば、不要な領域をコードするDNAを除去し、自らの転写と翻訳調節配列の制御の下、発現される予定の領域を残すことにより行われる。ある実施態様では、TrAA遺伝子またはその一部のコーディング領域がこの汎用発現ベクターに挿入され、その結果、この発現構造体のプロモーターとターミネーター配列の転写調節を受ける。ある実施態様では、遺伝子とその一部は強力なcbh1プロモーターの下流に挿入される。
【0071】
TrAAまたはその変異種、プロモーター、ターミネーター及び他の配列をコード化するポリヌクレオチドを含むDNA構造体を連結するため使用される方法とその構造遺伝子を適当なベクターに挿入する方法は本願技術分野でよく知られている。結合は一般に都合の良い制限部位で連結することにより達成される。そのような部位がない場合には、合成ヌクレトチドリンカーが一般的方法に従い使用される。例えば、Sambrook(2001)、上記及びBennettら(1991)上記、参照。加えて、ベクターは本願技術分野で良く知られている既知の組換え技術を用いて作成される。
【0072】
例えば、米国特許第5,246,853号、米国特許第5,475,101号及びWO92/06209で開示されているとおり既知の方法が一以上の不活性遺伝子をもつ菌類宿主細胞を得るために使用されても良い。遺伝子の不活性化は、完全なまたは部分的な欠失により、挿入による不活性化により、またはその意図する目的のため遺伝子を機能しなくするいずれか他の方法により達成されても良い。その結果この遺伝子は機能性タンパク質の発現を止められる。クローンされたトリコデルマ属由来または他の糸状菌宿主細胞由来のいずれの遺伝子も欠失できる。例えば、cbh1,cbh2,egl1及びegl2遺伝子である。ある実施態様では、遺伝子の欠失は本願技術分野の既知の方法により一形態の不活性化したい遺伝子をプラスミドヘ挿入することにより行われても良い。この欠失プラスミドは、次に望む遺伝子コーディング領域の内部の適当な制限酵素部位で切断され、配列またはその一部をコードする遺伝子は選択的マーカーにより置き換えられる。欠失を受ける遺伝子の両側のDNA配列は、例えば、約0.5から2.0kbの間にある、マーカー遺伝子のいずれかの側に残る。適当な欠失プラスミドは、両側のDNA配列と選択マーカーを含む、欠失を受ける遺伝子を含む断片が単一の断片として切除されるように、一般的に特有の制限酵素部位をもつ。
【0073】
宿主細胞の形質転換、発現及び培養
宿主細胞へのDNA構造体又はベクターへの導入は、形質転換;電気穿孔;核のマイクロインジェクション;形質導入;トランスフェクション、例えば、リポフェクション(lipofection)を介した、及びDEAE-デキストリンを介したトランスフェクション;リン酸カルシウムDNA沈殿との混合;DNAコート微粒子銃による高速導入;プロトプラスト融合のような技術を含む。一般的な形質転換の技術は本願技術分野で知られている。例えば、Ausbelら(1987)、上記、第9章;Sambrookら(2000)、上記;及びCampbellら、Curr.Genet.16:53-56(1989)参照。トリコデルマの異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号;米国特許第6,268,328号;Harkkiら Enzyme Microb. Technol. 13 :227-233;EP244,234;EP215,594;及びNevalainen らMOLECULAR INDUSTRIAL MYCOLOGY, Leong and Berka編 Marcel Dekker Inc., New Yrok(1992)、pp.129-148、”The molecular biology of Trichoderma and its application to the expression of both homologous and heterologous genes” に述べられている。また、Aspergillus株の形質転換についてCaoら、Science 9:991-1001(2000)も参照されよ。一実施態様では、一般的に安定な形質転換はTrAA又はその変異種が安定に宿主細胞染色体へ組み込まれるベクター系により行われる。形質転換された細胞は次に既知の技術により精製される。
【0074】
ある非限定的な実施例では、amdSマーカーを含む安定な形質転換種は不安定な形質転換種からその速い増殖速度と、アセトアミドを含む固形培地上に不規則な輪郭でなく滑らかな輪郭の円状のコロニーの形成により区別される。加えて、ある場合には、安定性に関するさらなる試験が、固形の非選択的培地、例えば、アセトアミドを含まない培地、で、形質転換種を増殖させ、この培地からの胞子を集め、続いてアセトアミドを含有する選択的培地で発芽し増殖するこれらの胞子のパーセンテージを決定することにより行われた。本願技術分野で既知の他の方法を、形質転換種を選択するために使用しても良い。
【0075】
ある特定の実施態様では、形質転換に使用するトリコデルマ属の調製には、菌類の菌糸体由来のプロトプラストの調製を含む。Campbellら、Curr.Genet.16:53-56(1989)参照。ある実施態様では、菌糸体は発芽した胞子から得られる。この菌糸体は、細胞壁を消化する酵素により処理され、プロトプラストとなる。このプロトプラストは懸濁媒体中で浸透圧安定化剤の存在により保護される。これらの安定化剤は、ソルビトール、マンニトール、塩化カリウム、硫酸マグネシウム等を含む。普通、これらの安定化剤の濃度は0.8Mと1.2Mの間で変動し、例えば、1.2Mのソルビトール溶液はこの懸濁媒体で使用できる。
【0076】
DNAの宿主トリコデルマ属への取り込みはカルシウムイオン濃度により変わる。一般的に、約10-50mM CaCl2の間が取り込み溶液に使用される。その他の安定な化合物はTE緩衝液(10mMトリス、pH7.4;1mM EDTA)または10mM MOPS、pH6.0とポリエチレングリコールのような緩衝系を含む。このポリエチレングリコールは細胞膜を溶解すると信じられ、そのため溶媒の内容物をトリコデルマ属の株の細胞質へ移動させる。この溶解によりプラスミドDNAの多くの複製物を宿主の染色体へ組み入れることが多い。
【0077】
普通、トリコデルマ属の形質転換は、通常、105から107/mL、特に2x106/mLの密度で、プロトプラスト又は透過性処理を受けた細胞を使用する。100μLの適当な溶液(例..1.2M ソルビトールと50mM CaCl2)のこれらのプロトプラストまたは細胞が目的のDNAと混合される。一般的に、高濃度のPEGが取り込み溶液へ加えられる。0.1から1容量の25%PEG 4000をプロトプラスト懸濁液に加えることができる。;しかし、約0.25容量をプロトプラスト懸濁液へ加えることは有用である。ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カルシウム等のような添加物も形質転換を促進するために、取り込み溶液へ加えられても良い。同様の手順が他の菌類の宿主細胞に利用できる。米国特許第6,022,775号と第6,268,328号参照。両者は引用により組み入れる。
【0078】
一般的に、次にこの混合物は0から30分の間、約0℃で接触される。追加のPEGが次に、この混合物へ加えられ、目的の遺伝子又はDNA配列のさらなる取り込みを促す。25%のPEG4000は、一般的に、形質転換混合物の5から15倍容量で加えられる。しかし、それより多い又は少ない量も適当かもしれない。25%PEG4000は通常、形質転換混合物の約10倍量である。PEGが加えられた後、この形質転換混合物は、ソルビトールとCaCl2溶液を加える前に室温または氷冷で処理される。このプロトプラスト懸濁液は次に、培地の溶融物に加えられる。この培地は形質転換種のみを増殖させる。
【0079】
一般的に、細胞は生理学的塩と栄養を含有する標準培地で培養される。Pourquieら、BIOCHEMISTRY AND GENETICS OF CELLULOSE DEGRADATION, Aubert ら編、Academic Press(1988), pp.71-86;及びIlemenら、Appl.Environ.Microbiol.63:1298-1306(1997)参照。一般に市販用に調製されている培地、例えば、Yeast Malt Extract(YM)液体培地、Luria Bertani(LB)液体培地またはサブローデキストロース(SD)液体培地もまた適している。
【0080】
標準培養条件が適当である。例えば、培養生物は約28℃で、適当な培地で振とう培養又は醗酵槽で、目的の水準のTrAA又はその変異種の発現が達成されるまで、培養される。 所与の糸状菌の好ましい培養条件は本願技術分野で既知であり、例えば、American Type Culture Collection (ATCC)と菌類遺伝子貯蔵センター(FGCS)から入手できる。菌類の増殖が終わった後、この細胞はTrAAまたはその変異種の発現を生じさせ又は可能にするに有効な条件に置かれる。
【0081】
3.4 TrAA活性の同定
宿主細胞におけるTrAAとその変異種の発現を評価するために、定量は発現されたタンパク質、対応するmRNA、またはマルトース産生α-アミラーゼ活性を測定できる。例えば、適当な定量はノーザン及びサウザーンブロッティング、PT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、及び適当にラベルされたハイブリダイズプローブを用いた、取り出しを要しない(in situ)ハイブリダイゼーションを含む。適当な定量はまた、サンプル中のTrAA活性を測定することも含み、例えば、培地中のグルコースのような還元糖を直接に測定する定量による。例えば、グルコース濃度はグルコース試薬キットNo.15-UV(Sigma Chemical Co.)または、Technicon Autoanalyzerのような機器を用いて決定しても良い。グルコアミラーゼ活性は、3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)法により定量しても良い。Gotoら、Biosci.Biotechnol.Biochem.58:49-54(1994)参照。
【0082】
一般的に、トリコデルマまたはアスペルギルス宿主により発現されているTrAAは1リットル当たり1グラムタンパク質(g/L)より多く、2g/Lより多く、5g/Lより多く、10g/Lより多く、20g/Lより多くまたは25g/Lより高い濃度で培地中に存在している。ある実施態様では、トリコデルマまたはアスペルギルス宿主により発現されたTrAAまたはその変異種は、グリコシル化されている。つまり、TrAAとその変異種はグリコシル部分を含む。ある特に適した実施態様では、グリコシル化パターンは野生型TrAAと同一であろう。
【0083】
3.5 TrAAの精製法
一般的に、細胞培養で産生されるTrAAまたはその変異種は、培地中に分泌され、例えば、不要な化合物を細胞培養培地から除くことにより、精製または単離される。ある場合には、TrAAまたはその変異種は細胞の加水分解により回収しても良い。そのような場合、この酵素は産生した細胞から本願の技術分野の技術者により日常的使用されている技術を用いて精製される。例には、アフィニティークロマトグラフィー、高分離イオン交換(high resolution ion-exchange)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、二相分配、エタノールによる沈殿、逆相HPLC、シリカまたは、DEAEのような陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、例えば、Sephadex G-75を用いたゲルろ過、を非限定的に含む。
【0084】
醗酵
ある実施態様では、TrAAまたはその変異種を発現する菌類はバッチ又は連続醗酵条件で培養される。古典的なバッチ醗酵は閉鎖システムであり、培地成分は醗酵の開始時に投入され、醗酵の間変わらない。醗酵の開始時に、培地に目的生物が加えられる。この方法では、醗酵はどの成分もこのシステムに追加することなく起こる。通常、バッチ醗酵は炭素源の追加に関し「バッチ」であり、pH及び酸素濃度のような因子の調節は行われることが多い。このバッチ系の代謝とバイオマス組成は醗酵が停止されるときまで継続して変化する。バッチ培地内では、細胞の増殖は定常的な遅滞期から高速対数増殖期そして最後の定常期(ここで増殖速度は減少または半減する)を経て進行する。処置をしない場合、定常期の細胞は最後には死滅する。一般に、対数増殖期の細胞が、製品の生産の大部分に寄与している。
【0085】
標準的バッチシステムの適当な変形は「流加バッチ醗酵」システムである。通常のバッチシステムのこの変形では、基質は醗酵が進行すると共に、基質が段階的に追加される。流加バッチシステムは異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害するような場合、そして培地中に限定された量の基質があることが望ましい場合に有用である。流加バッチシステムでの実際の基質濃度の測定は困難であり、そのためpH、溶存酸素及び、CO2のような廃ガスの分圧のような測定可能な因子の変化を基に見積もられる。バッチ醗酵と流加醗酵は本願技術分野ではありふれており、良く知られている。
【0086】
連続醗酵は、一定の醗酵培地が連続してバイオリアクターに加えられ、等量の反応を受けた培地が取り出される開放システムである。連続醗酵は一般的に一定の高い密度に培養物を維持し、細胞は主に対数増殖期にある。連続醗酵は細胞の増殖と/または製品濃度に影響を与える1以上の因子の調節を可能にする。例えば、ある実施態様では、炭素源または窒素源のような限定的な栄養素が一定の速度に維持され、他の全ての変動因子は加減される。他のシステムでは、増殖に影響する多くの因子が連続的に変化でき、一方、培地の濁度により測定される細胞の濃度は一定に保たれる。連続システムは定常状態の増殖条件を維持しようとしている。従って、培地が流出することによる細胞の損失は醗酵中の細胞増殖速度に対し釣り合う必要がある。連続醗酵法のため栄養素と増殖因子の調節法は、製品生成速度の最大化の技術と同様に、微生物工学の分野では良く知られている。
【0087】
4. TrAAとその変異種の組成物と用途
上記の方法によるTrAAとその変異種は種々の工業的用途に有用である。ある実施態様では、TrAAとその変異種はデンプン変換工程では有用であり、特に液状化を受けたデンプンの糖化工程においてそうである。目的の最終製品はデンプン基質の酵素的変換により製造されるどのような製品でも良い。例えば、目的の製品は高マルトース含有のシロップであり、HFCSの製造のような他の工程に使用できるものである。または製品は高グルコース含有シロップであり、たとえば、結晶性ブドウ糖の原料として直接に使用しうるか、アスコルビン酸中間体(例.グルコン酸;2-ケト-L-グルコン酸;5-ケト-グルコン酸;2,5-ジケトグルグルコン酸);1,3-プロパンジオール;芳香族アミノ酸(例.チロシン、フェニルアラニン及びトリプトファン);有機酸(例.乳酸、ピルビン酸、コハク酸、イソクエン酸及びオギザロ乳酸);アミノ酸(例.セリンとグリシン);抗生物質;酵素;ビタミン;及びホルモンのような多くの他の有用な製品に変換できる。
【0088】
さらに別の実施態様では、デンプンの変換工程は燃料又は飲料用(つまり飲用アルコール)のアルコールを製造するよう設計された醗酵工程の前に、又は同時に行っても良い。本願技術分野の技術者なら、これらの最終製品で使用されても良い種々の醗酵条件を知っている。TrAAとその変異種はまた組成物で及び食品の製造法で有用である。TrAAとその変異種のこれらの種々の使用は下記にさらに詳細に述べられる。
【0089】
デンプン原料の調製
本願技術分野の一般的技術者は本願に開示された製造法で使用するデンプン基質を調製するために使用できる方法を良く知っている。例えば、有用なデンプン原料は塊茎、根、茎、マメ科植物、穀物または全穀類から得られる。より特異的には、顆粒デンプンはトウモロコシ、トウモロコシの穂軸、小麦、大麦、ライ麦、マイロ、サゴ、キャッサバ、タピオカ、モロコシ、米、エンドウ、豆、バナナまたは馬鈴薯から得ても良い。トウモロコシは約60-68%のデンプンを含む。大麦は約55-65%のデンプンを含む。キビは約75-80%のデンプンを含む。小麦は約60-65%のデンプンを含む。脱穀精米された米は70-72%のデンプンを含む。特に認められているデンプン原料はトウモロコシ澱粉と小麦澱粉である。穀類から得られるデンプンは磨り潰されても良く、全体のままでも良く、穀粒、種皮、及び/またはトウモロコシの穂軸のようなコーンソリッド(corn solid)を含んでも良い。このデンプンは、未精製のデンプンまたはデンプン精製工程による精製された原料でも良い。種々のデンプンも市販されている。例えば、トウモロコシ澱粉はCerestar,Sigma及びKatayama Chemical Industry 社.(日本)から入手できる。;小麦デンプンはSigmaから入手できる。甘藷デンプンは、Wako Pure Chemical Industry 社(日本)から入手できる。馬鈴薯デンプンはNakaari Chemical Pharmaceutical 社(日本)から入手できる。
【0090】
デンプン原料は穀物全体を磨り潰した、デンプンではない部分、例えば胚残部や繊維等を含む、粗製デンプンでも良い。粉砕は湿式粉砕または乾燥粉砕を含んでも良い。湿式粉砕では、穀物全体は水または稀酸に浸漬され穀物をその構成部分、例えば、デンプン、タンパク質、胚、油、穀粒の繊維へ分離される。湿式粉砕は効率的に胚とあら挽き粉(つまり、顆粒デンプンとタンパク質)を分離し、特にシロップの製造に適している。乾燥粉砕では、穀粒全体は細かい粉末に磨り潰され、穀粒を構成部分に分離することなく処理される。乾燥粉砕はそのためデンプンに加え、相当量の非デンプン炭水化物化合物を含む。殆どのエタノールは乾燥粉砕から作られる。または、処理を受けるデンプンは高度に精製された品質でも良く、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99.5%純度である。
デンプンのゼラチン化と液状化
【0091】
本願で使用する場合、「液状化」又は「液状化する」はデンプンが、粘度が低く短鎖のデキストリンに変換される製造法をいう。一般的に、この製造法は、液状化誘導酵素が加えられることは任意であるが、α-アミラーゼの添加と同時の、又は添加に続くデンプンのゼラチン化を含む。ある実施態様では、上記のように調製されたこのデンプン原料は水でスラリーにされる。このデンプンスラリーは、約10-55%、約20-45%、約30-45%、
約30-40%、又は約30-35%の乾燥固体の重量パーセントで、デンプンを含んでいる。例えば、α-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)が、定量ポンプによりスラリーへ加えられても良い。この用途に使用されるα-アミラーゼは、通常、熱的に安定であり、B.リケニフォルミスα-アミラーゼのような細菌α-アミラーゼである。このα-アミラーゼは普通、デンプンの乾燥体1kg当たり約1500単位で供給される。α-アミラーゼ安定性と活性を最適化するために、スラリーのpHは約pH5.5-6.5に調節され、約1mMのカルシウム(約40ppmの遊離カルシウムイオン)が通常加えられる。他のα-アミラーゼは異なる条件を必要としても良い。液状化後のスラリー中に残存する細菌α-アミラーゼは、その後の反応工程でpHを低くすることにより、またはスラリーからカルシウムイオンを取り除くことにより不活性化されてもよい。
【0092】
デンプンとα-アミラーゼのスラリーは、105℃に蒸気加熱されたジェットクッカー(jet cooker)を通って連続的にポンプ輸送される。この条件下でゼラチン化が迅速に起こり、相当に大きいせん断力を受けて、この酵素の活性がデンプン原料の加水分解を始める。ジェットクッカー中の滞留時間は非常に短い。部分的にゼラチン化されたデンプンは100-105℃で維持された一続きの保持管を通り、5分間保持されてゼラチン化工程を完了しても良い。目的のDEへの加水分解は、保持タンクで90-100℃またはそれ以上高温で約1から2時間で終了する。これらタンクには邪魔板が逆混合を抑えるために備えられている。
【0093】
本願で使用する場合、用語「二次液状化」は、このスラリーが室温まで冷やされるときの、一次液状化(90-100℃に加熱)の後の液状化工程をいう。この冷却工程は30分から180分であり得、例えば、90分から120分であり得る。本願で使用する場合、用語「二次液状化の時間(minutes)」は、二次液状化の開始からデキストロース等価物(DE)が測定にかかるまでに経過する時間をいう。
【0094】
上記の工程により液状化されたデンプンは通常、約98%のオリゴ糖と約2%のマルトースと0.3%のD-グルコースを含む。液状化されたデンプンは通常、約10-50% ds;約10-45%;約15-40%;約20-40%;約25-40%;または約25-35%dsをもつスラリー状である。
糖化:グルコースまたはマルトースシロップの製造
【0095】
液状化されたデンプンは、任意に別の酵素存在下で、TrAAとその変異種を使用してグルコースまたはマルトースシロップへ糖化され得る。糖化製品の正確な組成は、処理を受ける顆粒デンプンの種類とともに使用した酵素の組合せにより変わる。本願に規定されたTrAAとその変異種を使用して得ることのできるグルコースシロップは、約96%w/wでD-グルコースを含むことが好都合である。いずれかの組の糖化条件下で現在得られるグルコースの最大量は約95-97%である。このグルコースシロップは高フルクトース含量のシロップの製造または結晶性グルコースの製造のため、濃縮後に直ちに使用されても良い。同様に、本願に規定されたTrAA とその変異種を使用して得られるマルトースシロップは、60%w/wを超えるマルトースを含むことが有利である。
【0096】
一般的に、TrAAとその変異種は乾燥固体1トン当たり約0.01-1kgの量で顆粒デンプン原料のスラリーに加えられる。ある実施態様では、TrAAまたはその変異種は0.1-5kg/mt dsまたは0.3-1kg/mt ds、または約0.5kg/mt dsで加えられる。TrAAまたはその変異種の固有の活性は、約10,000-80,000SKBU/g酵素、または15,000-60,000SKBU/g、または15,000-30,000SKBU/gでも良い。
【0097】
TrAAまたはその変異種は精製された酵素の形でスラリーへ加えられても良い。または、TrAAまたはその変異種は単離された酵素溶液として加えられても良い。ある実施態様では、TrAAまたはその変異種はTrAAまたはその変異種を発現する細胞の培養物から産生された細胞抽出物の形で加えられる。別の実施態様では、TrAAまたは変異種は、この酵素が連続的に反応へ加えられるように、TrAAまたは変異種を発現し反応培地へ分泌する宿主細胞の形で加えられる。この実施態様では、TrAAまたはその変異種を発現する宿主細胞はまた、TrAAまたはその変異種に加えて、糖化を触媒するために使用される別の酵素を発現しても良い。例えば、宿主細胞トリコデルマ・レセイまたはアスペルギルス・ニゲル等は、TrAAまたはその変異種とグルコアミラーゼ、例えばTrGAまたはHgGAを共に発現するよう操作されても良い。ある実施態様では、この宿主細胞はその固有のグルコアミラーゼが発現しないように遺伝学的に修飾を受ける。
【0098】
グルコースシロップ
ある面では、TrAAとその変異種は糖化工程で使用されグルコースを多量含むシロップを製造するために用いられる。グルコースシロップを製造するために、TrAAまたはその変異種は、通常グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)、例えば、AMGTMグルコアミラーゼとともに加えられる。表1、図1に示すように、また下記の実施例で述べるように、グルコアミラーゼの存在下TrAAまたはその変異種により触媒された糖化工程は、97%に近いまたは超えるグルコース濃度を与えることができる。最高のグルコース濃度が、この反応がグルコアミラーゼのみにより触媒された場合よりも短い時間で達成されえることが便宜である。ある実施態様では、最高グルコース濃度は12時間、24時間または36時間達成される。表2と関連する実施例の説明を参照せよ。TrAAとその変異種がグルコースからマルトースオリゴ多糖へ戻る反応を抑え、その結果グルコースの最高濃度が従来の糖化工程より長い時間維持されることが特に有利である。表2参照。ある実施態様では、最高濃度に達した後、グルコースの最高濃度は約12時間または約24時間維持される。
【0099】
一実施例ではグルコアミラーゼは、優れた特有の活性と熱的な安定性を持つトリコデルマ・レセイグルコアミラーゼ(TrGA)とその変異種である。米国の公開された出願第2006/0094080、2007/0004018、及び2007/0015266(Genencor International,Inc.)参照。
TrGAの適した変異種はグルコアミラーゼ活性と、野生型TrGAと少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%配列の同一性もつ株を含む。TrAAとその変異種はTrGAにより触媒される糖化工程で製造されるグルコースの収量を高めることが有利である。TrAAまたはその変異種を加えない場合、TrGAは通常pH4.3で約88%の溶液を与える。しかし、TrAAまたはその変異種が反応に加えられると、TrAAとTrGAの混合物はより高いグルコーズ濃度、例えば、94%の溶液を与える。このことは重要である。
【0100】
または、このグルコアミラーゼは植物、菌類または細菌由来の別のグルコアミラーゼでも良い。例えば、このグルコアミラーゼはアウペルギルス・ニゲルG1またはG2グルコアミラーゼまたはその変異種(例.Boelら、EMBO J.3:1097-1102(1984)、
、WO92/00381とWO00/04136(Novo Nordisk A/S));とA・アワモリグルコアミラーゼ(例.WO84/02921(Centus Corp.)でも良い。他の認められるアスペルギルスグルコアミラーゼは熱的安定性が向上した変異種、例えば、G137AとG139A(Chenら、Prot.Eng.9:499-505(1996));D257EとD293E/Q(Chenら、Prot. Eng.8:575-582(1995));N182(Chenら、Biochem.J.301:275-281(1994));A246C(Fierobe ら、Biochenistry, 35:8968-8704(1996));及びA435とS436位にPro残基をもつ変異種(Liら、Protein Eng. 10:1199-1204(1997))を含む。他の認められるグルコアミラーゼはタラロマイセス(Talaromyces)グルコアミラーゼ、特にT・エメルロニ(T.emersonii)(例.WO99/28448(Novo Nordisk A/S)、T・レイセタナス(例.米国特許第RE32,153号(CPC International,Inc.))、T・デュポンチ(T.duponti)、またはT・テルモフィラス(例.米国特許第4,587,215号)を含む。認められる細菌グルコアミラーゼはクロストリウム属、特にC.テルモアミロリチカム(C.thermoamylolyticum)(例.EP135,138号(CPC International, Inc.)とC・テルモヒドロスルフリカム(C.thermohydrosulfuricum)(例.WO86/01831(Michigan Biotechnology Institute))由来のグルコアミラーゼを含む。適したグルコアミラーゼはアスペルギルス・オリゼ由来のグルコアミラーゼを含む。例えば、WO00/04136(Novo Nordisk A/S)の、SEQ IDNO:2に示されたアミノ酸配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%もの相同性をもつグルコアミラーゼである。また、AMG 200L;AMG 300L;SANTMSUPERとAMGTME(Novozymes製);OPTIDEX(商標登録)300(Genencor International, Inc,製);AMIGASETMとAMIGASETMPLUS(DSM製);G-ZYME(商標登録)G900(Enzyme Bio-Systems);及びG-ZYME(商標登録)G990ZR(低タンパク質含量のA.nigerグルコアミラーゼ)のような市販のグルコアミラーゼが適している。グルコアミラーゼは通常、0.02-2.0GAU/g dsまたは0.1-1.0GAU/g ds、例えば0.2GAU/g dsで加えられる。
【0101】
TrAAまたはその変異種とともに使用できる他の適した酵素は、脱分岐酵素、例えばイソアミラーゼ(EC3.2.1.68)を含む。脱分岐酵素は本願技術分野の技術者に良く知られた有効量で加えられても良い。プルラナーゼ(EC3.2.1.41)、例えば、Promozyme(商標登録)もまた適している。プルラナーゼは通常100U/kg dsで加えられる。さらに、適した酵素はプロテアーゼ、例えば菌類と細菌のプロテアーゼを含む。菌類のプロテアーゼはアスペルギルス属、例えば、A・ニゲル、A・アワモリ、A・オリゼ;ムコール属(例.M.・ミーヘイ(M.miehei))及びリゾパス属(Rhizopus)から得られるものを含む。他の適した酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼとクチナーゼを非限定的に含む。
【0102】
液状化は一般的に連続工程として行われるが、糖化はバッチ工程として行われることが多い。糖化は通常、約60℃とpH. 4.0-4.5、例えばpH4.3で最も効率が高く、液状化したデンプンを冷却しpHを調整することが必要である。糖化は正常に撹拌タンク中で行われ、これは仕込みと取り出しに数時間かかる。酵素は通常、タンクに仕込むときに乾燥固体に対し一定の比率で加えられ、または仕込み開始時に一度に加えられる。グルコースシロップを作る糖化反応は約24-72時間、または24-48時間、または特に24時間以下、例えば20-21時間で行われる。最大量のDEが得られたときは、反応は、例えば85℃で5分間加熱することにより停止される。さらに、反応を行うと、DE量は低くなり、結局、約90DEとなる。なぜなら、反応を受けたグルコースが再重合され熱平衡に近づきイソマルトースとなるからである。グルコースの最終収量は、可溶化された乾燥固体総量のパーセントとして、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または98%でも良い。ある実施態様では、このグルコースは連続工程で製造され、実質的に全てのグルコースは、醗酵生産物、例えばエタノールの製造に使用される。
【0103】
4.3.2 マルトースシロップ
別の実施態様では、TrAAまたはその変異種は高マルトース含量のシロップを製造する工程で使用される。TrAAとその変異種による利点には、TrAAとその変異種を比較的低いpHで使用できることがある。マルトース(DP2)の製造に用いるTRAAのpH依存性の代表例は図2に示されている。糖化は通常、高温で酸性条件下、例えば、60℃、pH4.3で起こるので、これらの条件下でのTrAAまたはその変異種の高活性は、TrAAまたはその変異種が、糖化で使用される他の酵素、例えば、グルコアミラーゼにとり最適である条件下で使用される場合に利点となる。
【0104】
TrAAまたはその変異種により製造される高マルトース含有シロップは有利な特徴を持っている。TrAAまたはその変異種を使用して達成されたこのマルトース濃度はBBAまたは菌類のα-アミラーゼClarase(商標登録)Lのような、従来のマルトース産生酵素により達成される濃度に匹敵しまたは高い。表3と4と図2を参照。ある実施態様では、マルトースの濃度は約55%、約60%または約61%から約62%に達する。別の実施態様では、マルトースの濃度は約55%、約60%または約61%から約62%に達する。さらに、TrAAを使用して得られる高マルトース含有シロップは約8-9%の濃度でグルコースを含んでも良いが、一方、匹敵する条件で、例えば、Clarase(商標登録)Lを使用して製造される従来の高マルトース含有シロップは、通常約4-5%のグルコース濃度を有する。表3参照。TrAAまたはその変異種を使ったグルコースの比較的高い収量は、従来の酵素を使用して製造される高マルトース含有シロップより甘い高マルトース含有シロップを与える。
【0105】
TrAAまたはその変異種はそれのみで、または少なくとも1個の他の酵素存在下で高マルトース含有シロップの製造を触媒する。TrAAまたはその変異種との使用に特に適した酵素はプルラナーゼである。プルラナーゼの添加は、表5と図3に示すように、マルトースの収量を大きく増やす。加えるプルラナーゼの量は約0.1kg/mt ds、約0.25kg/mt ds、または約0.5kg/mt dsでも良い。一実施態様では、反応で製造されるマルトースの増加を最大にするような量のプルラナーゼが加えられる。表5のデータは、下記実施例に表5を添えた説明に記載したマルトースの製造に使用された特定の条件下、プルラナーゼの濃度が約0.25kg/mt dsであるときプルラナーゼのマルトース生成に対する効果が最大であることを示す。
【0106】
TrAAまたはその変異種と使用するため適した他の酵素は細菌β-アミラーゼ、例えば、BBA、他の菌類のα-アミラーゼ、例えばClarase(商標登録)L、またはグルコアミラーゼを含む。さらに適した酵素は、菌類と細菌プロテアーゼのようなプロテアーゼを含む。菌類プロテアーゼはアスペルギルス、例えば、A・ニゲル、A・アワモリ、A・オリゼ;ムコール属、例えばM.miehei;リゾパス属から得られるプロテアーゼを含む。他の適した酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、イソアミラーゼ及びクチナーゼ(cutinase)を非限定的に含む。
【0107】
β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)は末端-作用マルトース産生アミラーゼであり、これは1,4-α-グルコシド結合をアミロペクチンと関連するグルコースポリマーに加水分解し、それによりマルトースを遊離させる。β-アミラーゼは種々の植物と微生物から単離された。Fogartyら、PROGRESS IN INDUSTRIAL MICROBIOLOGY, 第15巻、PP.112-115(1979)参照。これらのβ-アミラーゼは40℃から65℃の範囲の最適温度と約4.5から約7.0の範囲の最適pHをもつ。認められたβ-アミラーゼは、大麦のspezyme(商標登録) BBA、Spezyme(商標登録)DBA、OptimatTMME、OptimatTMBBA(Genencor International Inc.);及びNovozymeTMWBA(Novozymes A/S) 由来のβ-アミラーゼを非限定的に含む。
【0108】
HFCS製造と醗酵
ある実施態様では、TrAA、その変異種またはTrAAまたはその変異種を含む混合物による加水分解物の処理によって産生された可溶性デンプン加水分解物は、高フルクトース含有デンプンベースシロップ(HFSS)、例えば、高フルクトース含有コーンシロップ(HFCS) へ変換される。この変換はグルコースイソメラーゼ、特に固体担体上に固定化されたグルコースイソメラーゼを用いて達成できる。pHは約6.0から約8.0、例えばpH7.5へ上げ、Ca2+はイオン交換により除かれる。適したイソメラーゼはSweetzyme(商標登録)、IT(Novozymes A/S);G-zyme(商標登録)IMGI、及びG-zyme(商標登録)G993、Ketomax(商標登録)、G-zyme(商標登録)G993、G-zyme(商標登録)G993液及びGenSweet(商標登録)IGIを含む。異性化に続き、この混合物は通常約40-45%のフルクトース、例えば42%のフルクトースを含む。
【0109】
別の実施態様では、可溶デンプン加水分解物、特に高グルコース含有シロップは通常約32℃、例えば30℃から35℃の温度で醗酵生物と加水分解物を接触させることにより発酵される。発酵産物はエタノール、クエン酸、グルタミン酸モノナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコノデルタラクトン及びエリスロビン酸ナトリムを含む。糖化と発酵工程は、同時的糖化発酵(SSF)工程として実行されても良い。発酵は、エタノールのその後の精製と回収を含んでも良い。発酵の間、液体培地のエタノール含量または「ビール」は少なくとも約8%、少なくとも約12%、または約16%エタノールに達しても良い。液体培地は、蒸留されて濃縮された、例えば約96%の純度の、エタノール溶液と製造しても良い。さらに、発酵により発生したCO2は、CO2浄化装置で収集され、圧縮され、他の用途、例えば、飲料水への炭酸溶解、ドライアイス製造に販売されても良い。発酵工程からの固体廃棄物は高タンパク質含有製品、たとえば、家畜の飼料として使用できる。
【0110】
エタノール産生微生物は、酵母、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)と細菌、例えば、ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を含み、アルコールデヒドロゲナーゼとピルビン酸デカルボキシラーゼを発現している。いくつかの実施態様では、エタノール産生微生物はキシロースレダクターゼとキシリトールデヒドロゲナーゼを発現し、これらはキシロースをキシルロースに変換する。酵母の販売元にはRED STAR(Red Star);FERMIOL(商標登録)(DSM Specialties)とSUPERSTART(商標登録)(Alltech)がある。
【0111】
ある実施態様では、異種のグルコアミラーゼと/又はTrAAまたはその変異種を発現している菌類の細胞は、バッチ式または連続的発酵条件で増殖される。古典的バッチ発酵は閉鎖システムであり、培地の成分は発酵開始時に投入される。つまり、発酵は系にいずれの成分も加えることなく開始できる。バッチ式製造の培地内では、細胞の増殖は定常的な遅滞期から高速対数増殖期、そして増殖速度が減少または半減する最後の定常期を経て進行する。一般に、対数増殖期の細胞が、異種のグルコアミラーゼ及び/またはTrAAまたはその変異種の生産の大部分に寄与している。
【0112】
本製造法の変法は「流加バッチ発酵」システムであり、発酵の進行につれて基質が分割して加えられるものである。流加バッチシステムは異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害するような場合、そして培地中に限定された量の基質があることが望ましい場合に有用である。流加バッチシステムでの実際の基質濃度はpH、溶存酸素及び、CO2のような廃ガスの分圧のような測定可能な因子の変化により見積もられる。バッチ醗酵と流加醗酵は本願技術分野ではありふれており、良く知られている。
【0113】
連続醗酵は、一定の醗酵培地が連続してバイオリアクターに加えられ、等量の反応を受けた培地が処理の取り出される開放システムである。連続醗酵は一般的に一定の高い密度に培養物を維持し、細胞は主に対数増殖期にある。連続醗酵は細胞の増殖と/または製品濃度の調節を可能にする。例えば、ある実施態様では、炭素源または窒素源のような限定的な栄養素が一定の速度に維持され、他のすべての変動因子が調節される。増殖は定常状態に維持されるので、培地が流出することによる細胞の損失は醗酵中の細胞増殖速度に対し釣り合う必要がある。連続醗酵法を最適化と製品生成速度の最大化の方法は、微生物工学の分野では良く知られている。
【0114】
ベーキング剤と食品用製品の組成と使用法
ベーキングと食品用の穀物粉の商用または家庭での使用では、穀物粉に適当な水準のα-アミラーゼ活性を維持することが重要である。余りにも高い活性水準があると、粘り気がありかつ/または生焼けで、そのため販売できない製品となるかもしれない。不十分なα-アミラーゼ活性をもつ穀物粉は適切に酵母が働くには不十分な糖しか含まず、乾燥した、もろいパンまたは焼き製品などになるかもしれない。従って、穀物粉中の、α-アミラーゼの水準を高めるためTrAAまたはその変異種がそれのみで又は別のα-アミラーゼと組み合わせて、穀物粉へ加えられてもよい。この実施態様のTrAAとその変異種は、例えば、30-90℃、40-80℃、40-50℃、45-65℃または50-60℃の範囲にデンプン存在下での最適温度を持つことができる。1%可溶デンプンの最適pHは、例えばpH4.5から6でも良い。
【0115】
大麦、オートムギ、小麦のような穀類は、トウモロコシ、ホップや米のような植物成分同じく、産業用及び家庭用の両方で醸造にも使用される。醸造に使用される原料は
麦芽が混ぜられなくてもよく、混ぜられて、つまり部分的に大麦が発芽して、α-アミラーゼ等の酵素の水準が高くなっても良い。醸造を成功させるために、発酵に用いる適当な水準の糖を得るために適当な水準のα- アミラーゼ酵素活性が必要である。従って、TrAAまたはその変異種が、それのみで又は別のα-アミラーゼと組み合わせて醸造に使用する原料に加えられても良い。
【0116】
本願で使用する場合、用語「穀物粉」は、粉砕またはすり潰された穀物の粒である。この用語「穀物粉」は、また磨り潰されたまたは篩にかけられたサゴまたは塊茎の製品をいう。いくつかの実施態様では、穀物粉は、また粉砕または篩過された穀粒または植物由来物質に加えて他の成分を含んでも良い。追加成分の例は、限定する意図はないが、酵母剤である。穀物粒は、小麦、オート麦、ライ麦と大麦を含む。塊茎製品はタピオカ粉、キャッサバ粉と粉末カスタードを含む。用語「穀物粉」は、磨り潰されたトウモロコシ粉、トウモロコシの挽き割り粉、米粉、全麦粉、ふくらし粉入りの小麦、タピオカ粉、キャッサバ粉、磨り潰した米、濃縮粉(enriched flower)及び粉末カスタードも含む。
【0117】
本願で使用する場合、用語「ストック(stock)」は、粉砕または潰された穀粒と植物成分をいう。例えば、ビールに使用する大麦は、発酵用の麦芽汁の製造に適したものを一貫して製造するために粗く磨り潰したまたは粉砕された穀粒である。本願で使用する場合、用語「ストック」は、粉砕または粗く磨り潰された形態の、先に述べた種類のいずれかの種類の植物と穀粒を含む。本願に述べられた方法は穀物粉とストックの両者でα-アミラーゼ活性を決定するために使用されても良い。
【0118】
TrAAまたはその変異種は、それのみでまたは他のアミラーゼと組み合わせて、新鮮さを失うこと、つまり、焼き製品が粉のように堅くなることを防ぐまたは、遅らせるために加えることができる。品質劣化防止アミラーゼの量は通常、1kgの穀物粉当たり0.01-10 mgの酵素タンパクの範囲、例えば、0.5mg/kg dsである。TrAAまたはその変異種と組み合わせて用いることのできる追加の品質劣化防止アミラーゼは、エンド-アミラーゼ、例えば、バシラス由来の細菌エンド-アミラーゼを含む。この追加のアミラーゼは、例えば、バシラス由来の別のマルトース産生α-アミラーゼ(EC 3.2.1.133)でありえる。Novamyl(登録商標)はB・ステアロテルモフィラス (B.stearothermophilus) 株NCIB 11837由来の、マルトース産生α-アミラーゼの例であり、Christophersen ら、Starch 50:39-45(1997)に記載されている。品質劣化防止エンド-アミラーゼの他の例はB.リケニフォルミスまたはB.アミロリケファシエンス由来の細菌α-アミラーゼを含む。品質劣化防止アミラーゼは、β-アミラーゼのような、エキソ-アミラーゼでも良く、例えば、これは植物由来、たとえば大豆、または、バシラスのような細菌由来でも良い。
【0119】
TrAAまたはその変異種を含有する焼き製品用組成物は、さらにホスホリパーゼを含みうる。このホスホリパーゼはリン脂質から脂肪酸を除くA1またはA2活性をもちリゾホスホリピドを形成しても良い。これは、リパーゼ活性、つまりトリグリセリド基質への活性を持っても良く、持たなくとも良い。ホスホリパーゼは通常、30-90℃、例えば、30-70℃の範囲に温度の最適値をもつ。添加されたホスホリパーゼは動物由来であり得、例えば、すい臓、例えば、ウシまたはブタのすい臓、ヘビの毒液または蜂の毒液由来であり得る。または、ホスホリパーゼは微生物由来、例えば、糸状菌、酵母または細菌、例えば、アスペルギルス属、A・ニゲル;ディクトステリアム属(Dictostelium)、D・ディスコデウム(D.discoideum)、ムコール属、M・ジャバニカス(M.javanicus)、M・ムセド(M.mucedo)、M・スブチリシマス(M.subtilissimus)、ニューロスポラ属、N・クラッサ(N.crassa)、リゾクームコール属、R・パシラス(R.pusillus) ;トリコフィトン属(Trichophyton)、T・ラブラム(T.rubrum);べツェリニア属(Whetzelinia)、W・スレロチオラム(W.sclerotiorum)、バシラス属(Bacillus)、B・メガテリウム(B.megaterium)、B・サブチリス;シトロバクター属(Citobacter),、C.フロンディ(C.freundii);エンテロバクター属、大腸菌、クレブシラ属、(Klebsiella)、K・ニューモニエ(K.pnuemoniae);プロテウス属(Proteus)、P・バルガリス(P.vulgaris) ;プロビデンシア属(Providencia)、P・スツアルチ(P.stuartii)、サルモネラ属(Salmonella)、S. ティフィムリウム(S.typhimurium)、セラチア属(Serratia)、S・リケファシエンス(S.liquefasciens)、S.マルセッセンス;シゲラ属(Shigella)、S・フレクスネリ(S.flexneri)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、S・ビオレセオルベル(S.violeceoruber)、エリシニア属(Yersinia)、Y・エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)、フザリウム属(Fusarium)、
F・オキシスポラム(F.ocysporum)由来である。
【0120】
ホスホリパーゼは、パンを焼く初期、特に最初24時間にパンの柔らかさを向上させる量が加えられる。ホスホリパーゼの量は、通常小麦粉1kg当たり0.01-10mg酵素タンパク質の範囲、例えば0.1-5mg/kgである。つまり、ホスホリパーゼの活性は、1kgの小麦粉当たり一般的に20-1000リパーゼ単位(LU)の範囲にあり、ここでリパーゼ単位は、アラビアガムをエマルション剤に用い、トリブチリンを基質として、30℃、pH7.0で、1分当たり1μmolのブタン酸を遊離するために必要とされる酵素量と定義される。
【0121】
パン生地の組成は一般的に完全あら引き粉または小麦粉、及び/または他の種類のあら引き粉、トウモロコシ粉のような粉またはデンプン、トウモロコシデンプン、ライ麦のあら引き粉、ライ麦粉、オート麦粉、オート麦のあら引き粉、大豆粉、モロコシのあら引き粉、もろこしの粉、馬鈴薯のあらびき粉、馬鈴薯の粉または馬鈴薯デンプンを含む。
パン生地は新鮮、冷凍または焼くときに調製されても良い。このパン生地はパン種を入れた生地またはパン種が加えられる予定の生地でも良い。この生地は種々の方法で、パン種が加えられても良く、例えば化学的なパン種、例えば重炭酸ナトリウム、または酵母を加えることにより、つまり生地を発酵させても良い。生地は、また適した酵母、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母)、例えばS・セレビシエ(S.cerevisiae)の市販されている株を加えても良い。
【0122】
生地は、また他の従来の成分、例えば、タンパク質、例えば、粉ミルク、グルテン、及び大豆;卵(例.卵全体、卵の黄身または卵の白身);酸化剤、例えばアスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド(ADA)または過硫酸アンモニウム;L-システインのようなアミノ酸;糖;または、塩、例えば、塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸カルシムも含んでも良い。この生地は、さらに脂肪、例えば、顆粒脂肪またはショートニングのような、トリグリデリドを含んでも良い。この生地はさらにモノまたはジグリセリド、モノ、またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸の糖のエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、モノグリセライドの酪酸のエステル、モノグリセリドの酢酸エステル、ポリオキシエトリレン(polyoxyetliylene)ステアリン酸、またはリソレシチン(lysolecithin)のようなエマルジョン剤を含んでも良い。
【0123】
任意に、追加の酵素が抗劣化アミラーゼとホスホリパーゼとともに使用されても良い。追加の酵素は、第2のアミラーゼ、例えば、アミログルコシダーゼ、β-アミラーゼ、シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ、またはリパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、特にペントサナーゼ、例えば、キシリナーゼ、プロテアーゼ、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、例えば、WO95/00636に開示されているようなタンパク質ジスルフィド、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ、分岐酵素(1,4-α-グルカン分岐酵素)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(デキストリン グルコシルトランスフェラーゼ)または酸化還元酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼまたは炭水化物オキシダーゼでも良い。追加の酵素は哺乳類及び植物等のいずれの起源でも良く、特に、微生物(細菌、酵母または菌類)起源でも良く、また本願技術分野で従来使用される技術により得られるものでも良い。
【0124】
キシリナーゼは通常、微生物起源、例えば細菌又は菌類起源、例えば、アスペルギルスの株、特にA・アクレアタス、A・ニゲル(WO91/19782参照)、A.アワモリ(例.WO91/18977)、またはA.ツビンゲンシス(A.tubingensis)に由来する。;トリコデルマ属の株由来、例えば、T・レセイ、またはフミコラの株由来、例えばH.インソレンス(例.WO92/17573)に由来する。Pentopan(登録商標)とNovozyme 384(登録商標)は、トリコデルマ・レセイから産生される市販のキシラナーゼ製品である。他の有用なアミラーゼ製品はGrindamyl(登録商標)A 1000またはA5000(Grindsted Products, Denmark)とAmylase(登録商標)HまたはAmylase(登録商標)P(Gist-Brocades,
オランダ)を含む。グルコースオキシダーゼは菌類のグルコースオキシダーゼでも良く、特にアスペルギルス・ニゲルグルコースオキシダーゼ(例えばGluzyme(登録商標))でも良い。プロテアーゼの例は、Neutrase(登録商標)である。リパーゼの例はテルモマイセス(Thermomyces)(フミコラ)、リゾムコール(Rhizomucor)、カンジダ属、アスペルギルス属、リゾパス属(Rhizopus)、またはシュードモナス属(Pseudomonas)、特にテルモマイセス・ラヌジノサス(Thermomyces lanuginosus)(フミコラ・ラヌギノサ)(Humicola lanuginosa)、リゾムコル・ミヘイ(Rhizomucor miehei)、カンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)、アスペルギル・ニゲル(Aspergillus niger)、リゾパス・デレマール(Rhizopus delemar)またはリゾパス・アルヒザス(Rhizopus arrhizus)または、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)の株に由来しても良い。具体的な実施例では、リパーゼは、例えば、WO88/02775に記載されているように、カンジダ・アンタークチカ由来のLipase AまたはLipase Bでも良く、またはリパーゼは例えばEP238,023に記載されているようなリゾムコル・ミヘイに由来しても良く、または、例えばEP305,216に記載されている、フミコラ・ラヌギノサ、または例えばEP214,761とWO89/01032に記載されているシュードモナス・セパシアに由来しても良い。
【0125】
この方法は、生地から調製されるどのような種類の焼き製品に使用されても良く、柔らかなまたはパリパリしたものでも、白い、色の薄いまたは濃い種類でも良い。例には、パン、特に白い、完全小麦のまたはライ麦製の、通常、塊またはロール型、例えば、フレンチバゲットタイプのパン、ピタパン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイの皮、ぱりぱりしたパン、蒸しパン、ピザ等がある。
【0126】
別の実施態様では、TrAAまたはその変異種は、抗劣化アミラーゼ、ホスホリパーゼとホスホリピッドと小麦粉を含む、予備混合物(pre-mix)で使用されても良い。この予備混合物は、他の生地改質及び/またはパン改質添加剤、例えば、先に述べた酵素等の添加物のいずれかを含んでも良い。ある面では、このTrAAまたはその変異種は、抗劣化アミラーゼとホスホリパーゼを含む酵素剤の成分であり、ベーキング用添加物として使用される。
【0127】
酵素剤は、任意に、顆粒または凝集粉末の形態である。この製剤は25から500μmの範囲に粒子の95%(重量で)より多くを有する狭い粒子体積分布をもちえる。顆粒と凝集した粉末は従来の方法により調製されても良く、例えば、TrAAとその変異種を流動床の担体へ噴霧することにより調製されても良い。この担体は適した粒子体積をもつ特定の核から作られても良い。この担体は可溶または不溶性であり、例えば塩(NaClまたは硫酸ナトリウム)、糖(例えば、スクロースまたはラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、デンプン、コメ、トウモロコ粒または大豆である。
【0128】
別の面ではTrAA またはその変異種、つまりα-アミラーゼを含む粒子を包む形態を考慮している。α-アミラーゼ粒子を包んだものを調製するために、この酵素は全てのα-アミラーゼ粒子を懸濁するに十分な量で、食品グレードの脂質と接触する。食品グレードの脂質は、本願で使用する場合、水に溶けるが、炭化水素またはジエチルエーテルのような非極性の有機溶媒に不溶ないずれの天然の化合物でも良い。適した食品グレードの脂質は、トリグリセリドを飽和または不飽和である脂肪または油の形のいずれかで、非限定的に含む。飽和トリグリセリドを作る脂肪酸とその組合せの例は、酪酸(乳脂肪から得られる)、パルミチン酸(動物及び植物脂肪から得られる)、及び/又はステアリン酸(動物及び植物から得られる)である。不飽和トリグリセリドを作る脂肪酸とその組合せの例は、パルミトレイン酸(動物と植物脂肪由来)、オレイン酸(動物と植物脂肪由来)、リノール酸(植物油由来)、及び/またはリノレン酸(アマニ油由来)を、非限定的に含む。他の適した食品グレードの脂質は、上記のトリグリセリドから得られるモノグリセリドとジグリセリド、リン脂質、糖脂質を非限定的に含む。
【0129】
食品グレードの脂質、特に液体のものは、脂質が、α-アミラーゼ粒子の少なくとも大部分、例えば、100%の表面の少なくとも一部を覆うようにリパーゼ粒子の粉末形と接触される。従って各α-アミラーゼ粒子は、脂質に別々に包まれる。例えば、全てのまたは実質的に全てのα-アミラーゼ粒子は、脂質の薄い連続的な被覆膜を与えられる。これは最初にある量の脂質を容器に入れ、次に、このα-アミラーゼ粒子をスラリー化し、脂質が完全に各α-アミラーゼ粒子の表面を湿潤させることにより行うことができる。短時間の撹拌後、被覆α-アミラーゼ粒子は、相当量の脂質をその表面付着して、回収される。α-アミラーゼの粒子にこのように使用される皮膜の厚みは、使用する脂質の種類を選択することにより、及び、望む場合には、より厚い皮膜を形成するようにこの操作を繰り返すことにより調節できる。
【0130】
酵素の充填された移動担体の貯蔵、取り扱い、組み入れは、包装混合体(packaged mix)という手段により達成できる。この包装混合体はこの被覆α-アミラーゼを含むことができる。しかし、この包装混合体はさらに製造業者またはパン製造業者により求められるときは、さらに追加の成分を含むことができる。被覆α-アミラーゼが生地へ組み入れられた後、パン製造業者はこの製品について正常な生産工程を続ける。
【0131】
α-アミラーゼ粒子を包む利点は、二つある。まず、食品グレードの脂質は熱に不安定なこの酵素のためパン製造過程において熱的な変性から酵素を保護する。その結果、α-アミラーゼは、発酵と焼き上げの間、安定化され、保護されるが、最終的な焼き製品の中で保護皮膜から遊離し、そこでポリグルカンのグルコシド結合を加水分解する。この充填された移動担体も活性な酵素を持続的に焼いた製品に放出する。つまり、焼き上げ工程の後、活性なα-アミラーゼは継続的に、劣化機構を和らげ、そしてその速度を抑える速度で保護皮膜から連続的に放出される。
【0132】
一般的に、α-アミラーゼ粒子に用いられる脂質の量は、脂質の性質、脂質がα-アミラーゼ粒子に適用される方法、処理を受ける生地混合物の組成、関連する生地混合操作の激しさにより、α-アミラーゼの総重量の数パーセントからその重量の何倍にも変わり得る。
【0133】
充填された移動担体、つまり、上記のようにして脂質に被覆された酵素は、焼き製品の有効期間を延長させるために有効な量で、焼き製品を調製するために使用される成分へ加えられる。パン製造業者は、目的とする抗劣化効果を達成するために必要とされる被覆α-アミラーゼの量を計算する。必要な被覆α-アミラーゼの量は、被覆される酵素濃度と指定された小麦粉に対するα-アミラーゼの比率に基づいて計算される。述べてきたように、抗劣化における観測可能な改善は、α-アミラーゼ濃度と線形的には対応しないが、広い範囲の濃度が有効であることが見出された。しかし、ある最小濃度より高いとき、α-アミラーゼ濃度を大きく増やしても殆ど改善を示さない。特定のパン製造で実際に使用されるこのα-アミラーゼ濃度は、パン製造業者に自らの不注意による低すぎる見積もりに備えるため必要最小量よりはるかに高いものにできる。酵素濃度の下限は、パン製造業者が達成しようとする最小の抗劣化効果により決定される。
【0134】
焼き製品を調製する方法は、a)脂質で被覆されたα-アミラーゼ粒子の調製、(ここで実質的に全てのα-アミラーゼ粒子が被覆される);b)小麦粉を含む生地の混合;c)脂質で被覆されたα-アミラーゼを混合が完了する前に生地へ加え、そして、脂質の皮膜がα-アミラーゼから取り除かれる前に混合を終了し;d)生地を発酵させ;そしてe)生地を焼き、焼き製品を与える。ここでα-アミラーゼは混合、発酵及び焼き上げの段階で不活性であり、焼き製品中で活性である。
【0135】
被覆α-アミラーゼは、混合サイクルの間、例えば、混合サイクルの終了時近くに生地に加えることができる。被覆α-アミラーゼは、それが生地全体へ十分に分散されるように混合時のある点で加えられる。しかし、混合段階は、保護皮膜がα-アミラーゼ粒子から取り除かれる前に終了される。生地の種類と量、混合機の作用と速度により、1分から6分それ以上が生地に、被覆α-アミラーゼを混ぜ込むために必要とされよう。しかし、2分から4分が平均である。このようにして、いくつかの変動要因が正確な手順を決定する。第一に、被覆α-アミラーゼの量は、被覆α-アミラーゼが生地混合物全体に広がることができる程十分な総量であるべきである。被覆α-アミラーゼの調製品が高度に濃縮されている場合、この被覆α-アミラーゼが生地へ加えられる前に、予備混合物に油を追加することが必要かもしれない。処方と製造方法は特定の修飾が必要かもしれない。しかし、パン生地の成分の指定された油の25%が保留され、濃縮された被覆α-アミラーゼの担体に使用される場合、α-アミラーゼが混合サイクルの終了近くに加えられるときは、一般的に良好な結果が達成できる。パンまたは他の焼き製品では、特に低脂肪含量の製品、例えば、フレンチスタイルのパンでは、乾燥小麦重量の約1%の被覆α-アミラーゼ混合物は生地と被覆α-アミラーゼを適切に混合するために十分である。適切なパーセンテージの範囲は広く、処方、最終製品、各パン製造業者の生産方法に基づく必要により変わる。第二に被覆α-アミラーゼ懸濁は生地に完全に混合されるだけの十分な時間をかけて加えられるべきである。しかし、過剰な機械的作用により被覆α-アミラーゼ粒子から保護脂質皮膜を取り去られるほどの時間であってはならない。
【0136】
7.織物の糊抜き組成物と用途
TrAAとその変異種を用いて、布地類を処理する組成物と方法(例えば、織物の糊抜き)もまた考えられている。布地類の処理法は本願技術分野で良く知られている(例えば、米国特許第6,077,316号)。例えば、ある面では、布地の感触と外観はこの布地をTrAAやその変異種を溶液中で接触させることを含む方法により改善される。ある面では、この布地は圧力下でこの溶液で処理される。
【0137】
ある面では、TrAAとその変異種は、織物を織る間またはその後に、または糊抜き段階において、または1またはそれ以上の追加の布地処理段階で使用される。織物を織る間、糸は相当の機械的張力にさらされる。機械織りを行う前に、縦糸は、その張力を増し、切断を防ぐため糊用デンプンまたはデンプン誘導体により被覆されることが多い。TrAA またはその変異種はこれらの糊用デンプンまたはデンプン誘導体を除くために紡織の間または後に使用できる。紡織後、TrAAまたはその変異種は、糊皮膜を除くために使用され、その後、均一かつ洗いに強くするため布地はさらに処理される。
【0138】
TrAAまたはその変異種は、それのみでまたは、他の糊抜き化学試薬と共に、及び/または糊抜き酵素とともに洗剤添加剤として、例えば水溶液組成物中で使用し、綿を含む布地等の糊を除去できる。TrAAまたはその変異種はまたインジゴ染めのデニム布地と衣類にストーンウォッシュ様の外観を与える組成物と方法で使用できる。布の製造では、布地は切断され布や衣類に縫い上げられるが、それらは後で仕上げられる。特に、デニムのジーンズの製造では、異なる酵素的仕上げが開発されてきた。デニムの衣服の仕上げは、普通、酵素的糊抜き段階により開始され、その間、この衣服はデンプン加水分解酵素の作用を受け柔らかさが与えられ、綿をその後の酵素的仕上げ工程がより効果があるようにする。TrAAとその組成物はデニムの衣服を仕上げる方法で使用でき(例えば、「生化学的擦り処理」)、酵素的糊抜きをして布地に柔軟さを与え、及び/または仕上げを行う。
【0139】
本願技術分野の技術者には、意図した用途の本質と範囲から外れずに種々の修飾と変更が同一のものを使用する組成物と方法に行いえることが明らかであろう。従って、請求項の発明やその均等物の範囲内にあるならば、それは修飾と変更である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
実施例
実施例1
1.1 TrAA遺伝子のクローニング
T・レセイQM6aの染色体DNAは、供給元(Qbiogene,Inc.,Irvine,カリフォルニア)により記載された方法に従いBIO101 Fast Prep(登録商標)Systemを使用したPotato Dextrose Broth(DifcoTMCat. No.254920)中の液体培養の菌糸体の集団から単離された。DNAはQuick Spin column(Qiagen, Inc.,カルフォルニア;Cat.第28106)を使用して精製された。TrAA遺伝子はTrAA-特異的配列をもつプライマーを使用して単離された。順方向プライマーNSP 331(SEQ ID NO:6:ATGAAGCTCCGGTACGCTCTCC)と逆方向のプライマーNSP322(SEQID NO:7:TCACGAAGACAGCAAGACAATGGGC)は、米国エネルギー省共同ゲノム研究所(United States Department of Energy Joint Genome Institute)のトリコデルマ・レセイゲノムのデータベースの予測されたヌクレオチド配列に従い設計された。これらのプライマーは、5’末端にGateway(登録商標)attB 配列(Invitrogen Corp., Carlsbad,カルフォルニア)が付されている。T.・レセイQM6a染色体のDNAがテンプレートとして使用された。
【0141】
PCR混合物は以下の成分を含んでいた。:4μLの順方向のプライマー(10μM);4μLに逆方向のプライマー(10μM);1μLのテンプレートDNA(500ng/μL);2μL dNTP(10mM);10μL 10x Cx緩衝剤;及び0.5μL Pfu Turbo(登録商標)Cx Hotstart DNA ポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla,カリフォルニア;Cat. No. 600410)。脱イオン化水が総量100μLまで加えられた。このPCR試験手順は、以下のようである。:98℃で30秒の初期変性;30サイクルの変性、アニーリング及び伸長、各操作は98℃で10秒;68℃で30秒;72℃で45秒である。最後の72℃で10分の伸長。
【0142】
PCR断片は1%アガローズゲルで電気泳動により分析を受けた。予想の大きさの断片がGel-Extraction Purification Kit(Qiagen Cat. No.28706)を使用して単離された。このPCR断片はGateway(登録商標)Entry ベクターpDONR201へクローンされ、大腸菌DH5αMax Efficiency 細胞(Invitrogen Cat. No.18258012)を形質転換した。挿入されたヌクレオチド配列が決定され、これよりTrAA遺伝子のゲノムのDNA配列が推定された(SEQ ID NO:1)。
1.2 T・レセイの形質転換とTrAAの発酵/発現
【0143】
TrAA 遺伝子を含むベクターDNAはT・レセイ発現ベクターpTrex3gに組み換えられた。これはWO2006/060062に詳細が記載されている。得られた発現ベクターは、PDS-1000/ヘリウム システム(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules、カルフォルニア;Cat. No. 165-02257)により、微粒子銃(particle bombardment)を使用して、種々の遺伝子を欠失した(Δcbh1、Δcbh2、Δegl1、Δegl2、つまり「4遺伝子欠失」;WO92/06184及びWO05/001036参照)RL-P37由来のT.reesei宿主株を形質転換した。この試験手順は下記に概説されている。また、WO05/001036の実施例6と11を参照されたい。
【0144】
T・レセイの4遺伝子が欠失した株の胞子の懸濁液(約5x108胞子/mL)が調製された。100-200μLの胞子の懸濁液がMinimal Medium(MM)アセトアミド培地のプレートの中心に広げられた。MMアセトアミド培地は0.6g/Lアセトアミド;1.68g/L Cs Cl;20g/L KH2PO4;0.6g/LCaCl22H2O;微量元素溶液;20 g/Lノーブル寒天;pH5.5。1000x 微量元素原液は5.0g/L FeSO47H2O;1.6g/L MnSO4H2O;.1.4g/L ZnSO47H2O;及び1.0g/L CoCl2・6H2Oを含んでいた。胞子懸濁液はMMアセトアミド培地の表面で乾燥された。
【0145】
形質転換は製造業者の指図に従った。簡単にいえば、60mgのM10タングステン粒子が微量遠心分離管に入れられた。1mLのエタノールが加えられ、この溶液は15秒間静置された。この微粒子は15,000rpmで、15秒間遠心分離された。このエタノールを除き、微粒子は、250μLの50%(v/v)無菌グリセロールが加えられる前に、滅菌dH2Oで3度洗浄された。25μLのこのタングステン粒子懸濁液は微量遠心分離管に入れられた。次に、以下の溶液が連続的なvortexによる撹拌を受けながら加えられた。5μL(100-200ng/μL)のプラスミドDNA、25μL2.5M CaCl2、及び10μL 0.1Mスペルミジン。この微粒子は3秒間遠心分離を受けた。この上澄液が取り除かれ、この微粒子は200μL 100%エタノールで洗浄を受け、3秒間遠心分離を受けた。この上澄液は取り除かれ、24μL 100%エタノールがピペットにより加えられ混合され、微粒子の8μL部分が取られ、デシケーターのマイクロキャリアーディスクの中心に加えられた。このタングステン/DNA溶液が乾燥すると、このマイクロキャリアーディスクは、胞子を着けたMMアセトアミドプレートとともに微粒子銃チャンバーに置かれた。微粒子銃による方法は製造業者の指図に従い行われた。タングステン/DNA微粒子によるプレート上の胞子へのDNA導入後、このプレートは30℃で培養された。形質転換されたコロニーはMMアセトアミド培地の新鮮なプレートへ移され、30℃で培養された。
【0146】
1.3 発現TrAAのα-アミラーゼ活性の実証
MMアセトアミドプレート上での5日の培養後、安定した形態を示す形質転換株が、30mLのProfro培地を含む250mL振とうフラスコに接種された。Profro培地は、30g/Lα-グルコース;6.5g/L(NH2SO4;2g/L KH2PO4;0.3g/L MgSO47H2O;0.2g/L CaCl2;微量元素溶液;2mL/L 10% Tween 80;22.5g/L ProFlo 綿実粉(Traders Protein, Memphis, テキサス);及び0.72g/L CaCO3を含んでいた。140rpmで振とうしながら28℃で培養した後、10%のProflo 培地が、30mLのラクトース規定培地(Lactose Defined Media)を含有する250mL振とうフラスコへ移された。このラクトース規定培地の組成は5g/L (NH2SO4;33g/LPIPPS緩衝液;9g/L カザミノ酸;4.5g/L KH2SO4;1.0g/LMgSO47H2O;5mL/L Mazu DF60-P 消泡剤(Mazur Chemicals, II);微量元素溶液;pH5.5である。滅菌後、40mL/L 40%(w/v)ラクトース溶液がこの培地に加えられた。このラクトース規定培地を含む振とうフラスコは、28℃、140rpmで4-5日間培養した。
【0147】
遠心分離により除去された菌糸と、上澄液が総タンパク質(BCA Protein AssayKit,Pierce CA;Cat.No.23225)について分析された。α-アミラーゼ活性は、Ceralpha 試薬(benzylidene-blocked p-nitrophenyl maltoheptaoside)を基質として使用して定量された(Megazyme International Ireland,Ltd., Wicklow,Ireland;Cat.No. K-CERA)。
【0148】
培養上澄液のサンプルは還元剤と適量の2X サンプルローディング緩衝液(sample loading buffer)と混合され、タンパク質は、MES SDS ランニングバッファーを加えたNUPAGE(登録商標)Novex 10% Bis-Tris Gelを使用し、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離された。タンパク質はSimplyBlueTMSafeStain(Invitrogen, Carlsbad、カリフォルニア)により染色された。培養上澄液の未精製サンプルのこのタンパク質染色パターンは図5、レーン1に示されている。レーンMの分子量マーカーと比較して決定されるように宿主細胞がみかけの分子量約47kDaのタンパク質を比較的多量に発現していることが明らかである。このTrAAは純度約89%であると評価されている。
【0149】
1.4 TrAA遺伝子産生物の生化学的特徴づけ
TrAAを発現する形質転換株は3L培養液で培養された。この宿主細胞はTrAAを約15-20g/Lの濃度で培地に分泌した。この培地のろ液は10,000Daの分子量限界をもつ超ろ過装置を使用して濃縮された(Pall Corp., OmegaTMMembrane, Cat. No. OS010c10)。この未精製酵素調製物はAKTA explorer 100FPLC System(Amersham Biosciences , Piscataway, ニュージャージー)を用いて精製された。HiPrep 16/10 FFQ-Sepharose カラム(Amersham BioSciences, Cat. No. 17-5190-01)は、25mM Tris, pH6.0で平衡化され、このタンパク質は100 mM NaCl、25mM Tris, pH6.0で溶出された。第2のアフィニティークロマトグラフィーの段階はCbind 200樹脂(Novagen Cat. No. 701212-3)と、溶出緩衝液として500mM NaClを含む50mM Tris pH7.0 を使用して行われた。このアフィニティークロマトによる精製後、TrAAは上記のようにして超ろ過により再度濃縮されても良い。精製されたTrAAはSDS-PAGEにより分析され、結果が図5、レーン2に示されている。TrAAは、純度約98%と見積もられた。
【0150】
遺伝子産生物のα-アミラーゼ活性のpHと温度のプロフィルはCeralpha 試薬(Megazyme International Ireland, Ltd., Wicklow, Ireland; Cat. No. K-CERA)を基質として使用して決定された。試験条件下、図6Aに示すように、TrAAは、約pH5-6の最適pH、及び、図6Bに示すように約42℃の最適温度を示している。
【0151】
実施例2
TrAAは低pHでグルコアミラーゼにより触媒される糖化反応でグルコースの収量を増加させるため有用である。TrAA (Lot No. GCI2004017/018-UF)は実施例1の1.3節で述べたように精製された。グルコアミラーゼはGA-L、Lot No.901-04290-001(Genencor International.,Inc.)であり、活性は385GAU/gであった。液状化したデンプン基質からなる基質は次のようにして調製された。:745g生のトウモロコシデンプンが水に稀釈され、32% w/w ds のスラリーとされた。熱的に安定な細菌α-アミラーゼSpezyme(登録商標)Ethyl(Genencor International, Inc.), Lot No. 107-04107-001、が0.3kg/mt dsの濃度へ加えられ、この溶液は92℃で25分間液状化された。ヨウ素試験が、デンプンの残存濃度を測定するために本願技術分野で良く知られている手順を使用して行われた。
【0152】
液状化されたデンプンは60℃に冷却され、pHは20% v/v硫酸により4.2に調節された。TrAAとOptimax(登録商標)4060が下記に示す濃度で加えられ、反応が60℃で30時間行われた。反応の終了時には、HPLC-グレードの水により1:40にサンプルを稀釈し、このサンプルを0.45ミクロンのフィルターを通してろ過した後、反応により生成されたDPnがHPLCを使用して決定された。HPLC分析のために、20μLのサンプルがPhenomenex Rezex ROA-Organic Acid (H+)カラムに注入され、60℃でHPLC-グレード水の移動層で16分に分離された。溶出液中の生成物(DPn)が屈折率の変動により測定された。
【0153】
表1は代表的反応例から得られるDPnを示す。図1は、この実施例で使用された酵素濃度の関数としてDP1生成物を示す。分かるとおり、グルコアミラーゼ存在下でTrAAはグルコアミラーゼのみの場合よりも高い濃度のグルコースを含むグルコース高含有シロップを産生している。

実施例3
【0154】
TrAAとグルコアミラーゼにより触媒される糖化反応は、グルコアミラーゼのみにより触媒される反応よりも短い時間でグルコースが高濃度になる。液状化された生のトウモロコシデンプンは、実施例32に述べられるように32% ds スラリーとして調製された。この液状化されたデンプンは、60℃まで冷却され、そのpHは、表2に示す濃度で酵素を添加する前にpH4.2へ調整された。TrAA(Lot No. GCI 12004017/018-UF)が実施例1の1.3節に述べられているように調製された。グルコアミラーゼはGA-L(Lot No. 901-04290-001)が、385GAU/gで加えられた。DPnは、上記実施例2で示す反応の終了時に測定された。

【0155】
TrAAの糖化反応への添加は、反応でDP1、つまりグルコースを増加させる。DP1産生の最適な条件はグルコアミラーゼが1kg/mt dsで、TrAAが0.5kg/mt dsであるときである。これらの条件でDP1は95.9%w/w dsに達し、これらはTrAAのない場合に得られた最大水準、95.2%w・/w dsよりも高い。DP1の最大水準はTrAAの存在下24時間後に達した。しかし、グルコアミラーゼのみでは24時間経過後のみに達した。0.5kg/mt dsのTrAAの存在下では、DP1の高次のオリゴ糖への逆行は、反応開始後48時間まで始まらなかった。
【0156】
実施例4
TrAAも糖化反応でマルトースの収量を増加させるため有用である。TrAAは、以下の実験で決定されたとおり比較的低いpHでマルトース産生活性を示す。デンプン基質からなる基質は、生のトウモロコシが水で稀釈され30% w/wのスラリーを作ることを除き、実施例2で述べられたように調製された液状化され、0.25kg/mt dsのSpezyme(登録商標)Ethyl(Genencor International, Inc., Lot No. 107-04107-001)が加えられた。92℃で25分間液状化の後、液状化されたデンプンは55℃へ冷却され、pHは20% v./v 硫酸を使用して調整された。DPnが上記実施例2に記載したように測定された。図2は0.5kg/mt ds TrAA(Lot No. GCI12004017/018-UF)で触媒された反応の48時間後のDP2産生のpH依存性を示す。図2に示すように、TrAAはpH5.0-5.5で最適な活性を示した。しかし、TrAAは、また、pH4.5から6.0の範囲にわたってほぼ最適の活性も示した。この実験はTrAAが比較的低いpH4.5で高度に活性であることを示す。
【0157】
実施例5
TrAAはDP2の産生を触媒してマルトース産生菌類α-アミラーゼClarase(登録商標)L(Genencor International, Inc.)により得られるものに匹敵する水準に至らせることができる。TrAAはT・レセイから産生され、上記実施例1に記載されている手順に従い生成される。この実験に使用されたTrAA(Lot No. 150906)は約18,000SKBU/gの特異的活性を示した。TrAAは、また、Optimax(登録商標)L-1000(Genencor International, Inc., Lot No. 107-04224-001)の形態のプルラナーゼ(約1040PUunit/gの特異的活性をもっていた)と組み合わせて試験された。この実験におけるClarase(登録商標)L(Lot No. 107-04330-001)の特異的活性は約41,000SKBU/gであった。
【0158】
液状化されたデンプンは実施例2に記載されているように調製され、55℃、pH5.5、または60℃、pH4.5に調整された。酵素は、下記に示す濃度で加えられ、反応は示された温度で48時間行われた。反応で産生されたDPnは、実施例2に述べられた手順を用いて、反応開始後24時間と48時間で測定された。表3は代表的反応から得られたDpnを示す。図3は、SKBU/g単位の酵素濃度の関数として糖化反応48時間後に得られるDP2の濃度を示す。

【0159】
48時間までに、DP2濃度は10SKBU/g Clarase(登録商標)L存在下、55℃、pH5.5で約58%まで上昇した。比較すると、60℃で20SKBU/g TrAAにより触媒される反応は、約55%のDP2を48時間までに産生した。20SKBU/gTrAAと0.25kg/mtプルラナーゼ存在下では、しかし、DP2は48時間で約59%w/wまで上昇し、Clarase(登録商標)Lによりえられた濃度を上回った。さらに、TrAAのみ、またはプルラナーゼとの組合せでは、Clarase(登録商標)Lにより得られるより高い濃度のDP1を含むマルトース高含量のシロップを産生した。つまり約4% w/w dsに対する約11% w/wである。この実験は従って、TrAAが低いpHでマルトース高含量のシロップ(このシロップは、Clarase(登録商標)Lで得られるよりも高い水準のグルコースと、匹敵する水準のマルトースを含む)の産生に使用できることを示す。
【0160】
実施例6
低いpHで使用するとき、TrAAは、以下の実験で示すように、他のこれまでのマルトース産生アミラーゼを相当に上回った。使用した実験条件は、反応が58℃、pH4.6で行われることを除き、実施例5と同一であり、DPn産生が0.2kg/mt ds BBA(β-アミラーゼ;Lot No. 05189-001)、0.2kg/mt ds Clarase(登録商標)L(Lot No. 9016231002)、または0.5 kg/mt ds TrAA(Lot NO. GCI2004017/018-UF)で触媒された。表4に示すとおり、BBAまたはClarase(登録商標)Lよりも相当に高い濃度のDP2がTrAA存在下で得られた。

【0161】
実施例7
TrAAにより産生されるDP2は、プルラナーゼの添加により相当に増加した。以下の実験では、実験条件は実施例5の条件と、58℃、pH4.6で反応が行われたことを除き、同じである。プルラナーゼはOptimax(登録商標)L-1000(Genencoor International, Inc,:1165PU/g で.;Lot No.9016167004)の形態で表5に示されている濃度で加えられた。この反応は、示した時間、58℃、pH4.6で行われた。表5に示すように0.1-0.25kg/mt dsのプルラナーゼは48時間でTrAAにより触媒されるDP2産生を相当に増加させる。

【0162】
上記で引用された全ての引用文献は全ての目的のためその全てを引用により本願に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリペプチドであって、(i)SEQ ID NO:3の21-463残基、または(ii)トリコデルマ・レセイα-アミラーゼ(TrAA)の変異種であって、当該変異種がα-アミラーゼ活性と、SEQ ID NO:3の21-463残基と少なくとも80%一致するアミノ酸配列をもつものを含むポリペプチド。
【請求項2】
請求項1の単離されたポリペプチドであって、前記変異種はSEQ ID NO:3の21-463残基と少なくとも90%一致するポリペプチド。
【請求項3】
請求項2の単離されたポリペプチドであって、当該変異種はSEQ ID NO:3の21-463残基と少なくとも95%一致するポリペプチド。
【請求項4】
請求項1の単離されたポリペプチドであって、当該変異種はSEQ ID NO:3の21-463残基と比較して1-10アミノ酸の置換、挿入または欠失をもつものであるポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:3を含む請求項1の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO:3の21-463残基からなる請求項1の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
SEQ ID NO:2からなる請求項7のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項7のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
請求項9のベクターを含む細菌の細胞。
【請求項11】
請求項7のポリヌクレオチドを発現する宿主細胞。
【請求項12】
請求項11の宿主細胞であって、トリコデルマ属の種(Trichoderma sp.)である宿主細胞。
【請求項13】
請求項11の宿主細胞であって、RL-P37単離体、糸状菌細胞、アスペルギルス属の種(Aspergillus sp)、フザリウム属の種(Fusarium sp.)またはペニシリウム属の種(Penicillium sp.)である宿主細胞。
【請求項14】
請求項11の宿主細胞であって、さらに異種のグルコアミラーゼをコードする核酸を発現する宿主細胞。
【請求項15】
グルコース高含有シロップを生産するための液状化デンプンを糖化する方法であり、液状化デンプン溶液に請求項1に記載するポリペプチドを加え、当該液状化デンプン溶液にグルコアミラーゼを加え、当該液状化デンプン溶液を糖化することを含むものであり、当該液状化デンプン溶液の前記糖化はグルコース高含有シロップを生産するものである方法。
【請求項16】
請求項15に記載する方法であって、前記ポリペプチドは、乾燥固体1トン当たり約0.3-1kgの割合で、当該液状化デンプン溶液に加えられるものである方法。
【請求項17】
請求項15に記載する方法であって、当該液状化デンプン溶液は約20-35%w/w 乾燥固体を含有する液状化デンプンのスラリーである方法。
【請求項18】
請求項1のポリペプチドを含むデンプン処理剤組成物。
【請求項19】
ベーキング(baking)の方法であって、請求項1のポリペプチドを焼く対象である基質へ加えることと、当該基質を焼くことを含む方法。
【請求項20】
織物の糊を除く方法であって、当該織物と請求項1のポリペプチドと、当該織物の糊を除くために十分な時間接触させることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2010−521159(P2010−521159A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553732(P2009−553732)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/056597
【国際公開番号】WO2008/112727
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(508377015)ダニスコ・ユーエス・インク、ジェネンコー・ディビジョン (31)
【Fターム(参考)】