説明

トウ

【課題】 全繊度が中間デニ−ルにあり、且つ高速度の開繊性に優れ、開繊後のウエブが嵩高で均一な不織布等に加工出来る熱可塑性繊維のトウおよび該トウを用いた吸収性物品等を提供することにある。本発明のトウは、それ単独で、または他の部材例えば、不織布や、フイルム、パルプ等の液吸収材、等と積層、混合等をし、傷当て材、医療用材、包装材、クツション材、断熱材等に使用される。
【解決手段】 顕在捲縮およびまたは潜在捲縮を有し、且つ単糸繊度0.5〜100デニ−ル、全繊度1万〜30万デニ−ルの熱可塑性繊維が集束された繊維束であり、開繊係数が3以上であることを特徴とするトウ。熱可塑性繊維トウとして、融点差が15℃以上ある2成分系熱融着性複合繊維や、異成分系混繊熱収縮差混繊、異形断面繊維、顕在/潜在捲縮混繊等がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成繊維のトウに関する。更に詳しくは、全繊度が中間デニールにあり、且つ高速度の開繊性に優れ、かつ開繊後のウエブが嵩高で、均一な不織布等に加工出来る熱可塑性繊維のトウに関する。本発明のトウは、それ単独で、または他の部材例えば、不織布や、フィルム、パルプ等と積層、混合等をし、各種包装材、傷当て材、包帯、ハップ材、クツション材、断熱材等に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来より不織布製造の一手段として、合成繊維トウを用いたいわゆるトウ開繊法が知られている。通常このトウ開繊法は生産性を上げる目的で、全繊度が数十万〜数百万デニ−ルの大繊度トウを用いるのが一般的である。通常、これら大繊度トウは多数のガイドバ−や、多数のガイドロ−ル等を備えたトウの予備開繊装置を低速で通してトウのテンション等を均一にし、少なくとも2対のニツプロ−ルを主構成部材として有する開繊装置や該ニツプロ−ルと併用された気流噴出型開繊機等の主開繊装置等を通し、低速で開繊するのが一般的である。
単繊維間の開繊性を良くする目的で、コロナ放電装置や、摩擦帯電装置等の開繊補助装置等を併用し、単繊維間の交絡を解除し、束状の未開繊物を極力減少させる方法も知られている。しかし、大繊度トウは該開繊補助装置等を併用しても略20m/分以下の低速でしか開繊できない。また開繊性が悪く、束状の未開繊物が多量に混合し易い。また多数のガイドバ−を通したり、無理な高延伸倍率での開繊をとる傾向にあり、無理な開繊による単糸の切断、毛羽の多量発生等、毛羽等の各種ロ−ルへの巻き付き、等の課題がある。また上記大繊度トウは、幅が略1m以上もある比較的広幅なフィルムや不織布等の他の物品と積層、熱融着等を行い、略20m/分以下の低速で生産することは可能であるが、幅が略0.5m以下の比較的狭い幅の他の物品と高速で積層したり、開繊後のトウを短繊維状に切断し、比較的狭い幅の他の物品と混合等をした、中間物品ないし最終物品等を略60m/分〜500m/分で製造する、いわゆる高速インライン生産には追従できないと言う課題がある。
【0003】
また従来のトウは、ほとんどが同一成分からなる物であり、異成分混繊による
、染色性や、吸湿性、熱融着性等の改良ができず、さらに熱収縮差のある繊維の混繊や、異繊度差のある混繊等による、嵩高性、風合い等の改良等は不可能である。また異形断面による風合い等の改良等が出来ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全繊度が中間デニ−ルにあって、且つ高速度で均一に開繊出来るトウを提供することにある。また他の目的は、比較的狭い幅の他の部材と積層したり、開繊後のウエブを切断した後他の物品と混合することができ、かつ他の部材と併用し、高速インライン生産にも追従出来るトウを提供することにある。また、他の目的は開繊後のウエブをそれ単独または他の物品と併用し、熱融着や熱エンボス圧着等の熱処理でそれ単独の熱融着不織布としたり、他の物品との複合化等ができるトウを提供することにあり、更には、二種以上の異なる繊度や異なる成分の繊維の混繊、二種以上の異繊度混繊、二種以上の異なる熱収縮差混繊、等のトウを提供し、ウエブや不織布、その併用物等の嵩高や風合い等を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明で特許請求される発明は以下のとおりである

(1)顕在捲縮および/または潜在捲縮を有し、且つ単糸繊度0.5〜100デニ−ル、全繊度1万〜30万デニ−ルの熱可塑性繊維が集束された繊維束であり
、かつその開繊係数が3以上であることを特徴とするトウ。
(2)熱可塑性繊維が顕在捲縮数10〜50山/25mmである前記(1)記載のトウ。
(3)熱可塑性繊維が、単糸繊度1〜30デニ−ル、全繊度3万〜20万デニ−ルである前記(1)または(2)記載のトウ。
【0006】
(4)熱可塑性繊維が、ポリオレフイン系繊維、ポリエステル系繊維およびポリアミド系繊維から選ばれた少なくとも1種である前記(1)〜(3)の何れかに記載のトウ。
(5)熱可塑性繊維が、融点差15℃以上を有する少なくとも2成分からなる複合繊維である前記(1)〜(4)の何れかに記載のトウ。
(6)熱可塑性繊維が、異形断面構造を有する前記(1)〜(5)の何れかに記載のトウ。
(7)熱可塑性繊維が、二種以上の繊維の混合繊維である前記(1)〜(6)の何れかに記載のトウ。
【0007】
(8)混合繊維が、異成分混合繊維である前記(7)記載のトウ。
(9)混合繊維が、異繊度混合繊維である前記(7)または(8)記載のトウ。
(10)混合繊維が、熱収縮差混合繊維である前記(7)〜(9)の何れかに記載のトウ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトウはト−タル繊度が中間デニ−ルに設計され、且つ単糸間の粘着がなく、開繊性がきわめて良好である。従って本発明のトウを最終製品や中間製品等を製造すべき製造ライン上で、高速で均一に開繊し、他の不織布やフィルム等の材料等と積層し、インラインで該製品等の製造が出来る。また、熱融着性複合繊維や、異成分混繊、熱収縮差混繊、異繊度差混繊、異形断面構造繊維等を含む本発明のトウは、熱融着性や、嵩高性、光輝性、液拡散性、風合い等を顕著に改善できる。また本発明のトウを開繊後、ウエブとし、該ウエブをその構成部材の少なくとも一部材として用いた液吸収性物品は、風合い、液拡散性等が良好である。また本発明のトウは開繊後短繊維状に切断し、他の物品と混合したり、積層し、様々な物品に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のトウは熱可塑性繊維のトウである。該熱可塑性繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンを主とする他のαオレフインとの2〜4元共重合体、等のポリオレフイン、ナイロン−6、ナイロン−66、等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、酸成分としてイソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル等のポリエステル、等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸したレギュラ−繊維、およびまたは前記熱可塑性樹脂を種々の組み合せで複合紡糸した複合繊維等である。
本発明のトウは、単糸繊度が0.5〜100デニ−ル、好ましくは0.6〜80デニールで、全繊度が1万〜30万デニ−ルの物である。その使用分野が、柔軟性や良い風合い等が要求されるような用途に用いられる不織布や、傷当て材、包帯、ハツプ材等の場合、単糸繊度が約0.5〜15デニ−ルである。またフイルタ−や断熱材、クッション材等の場合、約0.8〜100デニ−ルである。単糸繊度が0.5デニ−ル未満の場合、開繊時の単糸切れや毛羽立等が出来易く且つ高速で開繊することが不可能である。また100デニ−ルを超えると、トウの集束性の低下および高速開繊が不可能であり、その用途が限定される。
【0010】
本発明のトウは全繊度が1万デニ−ル〜30万デニ−ル、好ましくは1.2万〜28万デニールである。その用途がフイルタ−や不織布等の場合約1万〜30万デニ−ル、使い捨てカイロや医療用材料等の場合約2万〜15万デニ−ル、傷当て材や、ハツプ材等の場合約1万〜10万デニ−ルである。
【0011】
本発明のトウは、顕在捲縮および/または潜在捲縮何れも使用できる。またその捲縮形状は、山/谷状のいわゆるジグザグ型、U型、スパイラル型等の物いずれであっても良い。
またトウの顕在捲縮数は約8〜70山/25mmあればよい。該捲縮数は好ましくは約9〜65山/25mm、更に好ましくは約10〜50山/25mmである。捲縮数が8山/25mm未満の場合、トウの集束性が劣り、トウの箱詰め、トウの引き上げ等の時に、繊維間の過度の割れ等が起きるので高速開繊がしにくい、また70山/25mmを超えると単繊維間の過度の絡合や高密度化により、やはり高速開繊が困難である。
なお潜在捲縮の場合熱処理前の捲縮数が約7〜60山/25mmで熱処理後で8〜70山/25mmあればよい。なお潜在捲縮の熱処理温度はレギュラ−繊維にあっては、その繊維の融点以下の温度で5分間加熱処理後の捲縮数であり、複合繊維にあっては、複合成分の高融点成分の融点以下の温度で5分間加熱処理した後の捲縮数である。
【0012】
本発明のトウは、下記のように規定する開繊係数が3以上である。
開繊係数(K)=B/A
A:開繊処理前のトウの幅(単位mm)
B:トウをピンチロ−ル形の開繊機で、速度25m/分、倍率1.4倍で延伸 開繊維し、更に開繊後のトウを熱風乾燥機で100℃、5分間熱処理後のトウ 幅(単位mm)。
該開繊係数は、好ましくは3.1〜50、更に好ましくは3.2〜40である
。開繊係数が3未満の場合、略60m/分以上の高速における均一開繊が不可能である。また開繊係数が50を超えてもよいが、50を超えると、束状の繊維が混在しかつトウ割れが発生し易い傾向にある。トウの開繊係数を3以上とする手段は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂の選定、紡糸、延伸、捲縮付与条件の設定、使用すべき装置等の設定、付着すべき紡糸油剤等、トウの製造条件や製造装置等を試行錯誤的に設定することにより製造できる。例えばトウがポリエチレンレギュラ−繊維やポリエチレン/ポリプロピレン鞘芯型複合繊維等の場合
、延伸温度を、ポリエチレンが粘着を開始する温度以下、即ち約120℃以下の温度で延伸する方法が例示される。またスタツフア−ボツクス型クリンパ−を用いて捲縮を付与する場合、トウが狭い部屋に押し込まれることによる、自然発熱による単繊維の粘着化等を阻止するための水を捲縮加工直前のトウに付与する方法や、単繊維間の糸離れ性を良くするための平滑性油剤等を少量付与する方法等が例示できる。またスタツフア−ボツクス型クリンパ−を冷却しながら捲縮を付与したり、捲縮付与後のトウを略60〜130℃で熱処理し、捲縮の微妙な変化をトウに付与する等の方法が例示できる。
【0013】
トウの捲縮加工機として、高圧高温蒸気や、加熱加圧空気等の気体押し込み型捲縮加工機を用いた場合、加熱気体の温度や、加工機内でのトウの滞留時間等の設定、および前記水等を付与する等の方法が例示できる。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレ−ト鞘芯型複合繊維を捲縮加工する場合、気体温度をポリエチレンの融点以上の温度とし、捲縮加工機内での滞留時間を短時間に設定することにより、単繊維間の粘着を阻止出来る。また圧力をコントロ−ルしたり
、筒状の捲縮加工機内部の気体を排除するための網等のメツシュやその構造等を試行錯誤的に設定し、過度の長大なル−プの発生を阻止したりすること等により達成出来る。
【0014】
また開繊係数を3以上とする他の手段として、易剥離性添加物を繊維に添加したり、繊維を異形断面構造とする方法、他の高速クリンパ−、例えば一対の高速回転体の間にトウを押し込、その回転体の速度差により捲縮を付与する高速クリンパ−を使用する等の方法も例示できる。
【0015】
本発明のトウが融点差が15℃以上ある鞘芯型、並列型、海島型、多成分分割型複合繊維等の場合、開繊後のウエブ等をその低融点成分の融点以上高融点成分の融点以下の温度で加熱することにより、繊維自体の熱融着や、該繊維と他の不織布等の部材と熱融着できる。また異形断面構造を有する繊維も使用できる。異形断面繊維の場合、その光輝性や、手触わり等の風合いや、液体拡散性等が改良できる。
【0016】
また本発明のトウは実質的に同種の繊維からなる非混繊型のトウや、異種繊維の混繊、例えば第一の熱可塑性繊維と第二の熱可塑性繊維で、その成分や繊度、複合形態、熱融着温度、熱収縮挙動、染色挙動、色相、水吸収性、等が異なる繊維等が混繊されたトウ等何れであってもよい。また、熱可塑性繊維と他の繊維との混繊、例えばポリオレフイン繊維とレ−ヨンやアクリル繊維等との混繊であってもよい。これら第一の繊維と第二の繊維の混繊比は約10〜90/90〜10重量%である。好ましくは約15〜85/85〜15重量%である。第一の繊維が10重量%未満であると、第一の繊維固有の特性が利用困難である、また90重量%を超えると第二の繊維固有の特性の利用が困難である。
異成分混繊の場合、例えばポリエチレンレギュラ−繊維とポリプロピレンレギュラ−繊維の50/50重量%混繊の場合、ポリエチレン繊維を熱融着性繊維として利用できる。またポリエチレン(鞘成分)/ポリプロピレン(芯成分)複合繊維と、レ−ヨンとの混繊の場合、複合繊維のポリエチレン成分による熱融着およびレ−ヨンによる吸液性等、両方の改善が出来る。またポリエチレンレギュラ−繊維とポリプロピレン中空繊維との70/30重量%の混繊の場合、熱融着性および剛性、液拡散性等の改良ができる。
また異繊度混繊の場合、例えば、単糸繊度0.7デニ−ルのポリエチレンテレフタレ−ト繊維と、単糸繊度18デニ−ルのポリプロピレン繊維との60/40重量%混繊の場合、熱カレンダ−ロ−ルや、熱エンボスロ−ル等による熱圧着処理により、高性能のフイルタ−が製造できる。
また熱収縮差混繊の場合、低収縮繊維と高収縮繊維との同一温度での熱収縮差が3%以上あればよい。例えば、低熱収縮繊維がポリプロピレンレギュラ−繊維で、高熱収縮繊維がプロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体/ポリプロピレン並列型複合繊維で、混繊比60/40重量%の混繊の場合、開繊後のウエブまたは開繊後切断したステ−プル状のウエブ等を加熱することにより、ウエブ収縮が起き、嵩高性が格段に優れた不織布が得られる。
また、前記何れかに記載のトウを切断してステープルとし、該ステープルをパルプや高分子高吸水材等と混合し、加熱処理することにより嵩高化やパルプ等と熱融着が起きるので、吸水性、形態保持性等の様々な機能のよい不織布等がえられる。
また本発明のトウを開繊しウエブとし、該ウエブを他の不織布やフィルム等と積層した物や、該ウエブを他の不織布やフィルム等と積層後更に熱融着処理し一体化した物や、該ウエブ/パルプ/フィルム等を積層後更に熱融着処理した物等
、或いは、該ウエブとパルプ等と混合された不織布等は、優れた風合いや、液拡散性等の効果がある。
【実施例】
【0017】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例中、開繊後のウエブの均一性の判定は、前記開繊係数(K)を測定するために得た条件で開繊後のウエブを長さ20cm、幅20cmのサンプルを切取り、幅8mm以上で長さが100mm以上の未開繊束が6個以下の場合均一性良と判定し、6個を超える場合均一性不良と判定した。なお開繊後の幅が20cmに満たないものは他のウエブを切りとりその幅を合わせた。
【0018】
実施例1
鞘成分が融点133℃の高密度ポリエチレンで芯成分が融点168℃のポリプロピレンからなる複合比50/50重量%の複合繊維を溶融紡糸した。該未延伸糸を温度90℃で3.4倍延伸し、スタフア−ボツクス型クリンパ−で17山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度3.1デニ−ル、全繊度65100デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウに水をスプレ−し、クリンパ−ボツクス内で、トウが圧着されることによる自己発熱および繊維の粘着化等による開繊性が阻害されることを防止した。また捲縮付与後のトウを100℃で7分間加熱処理し、水分の乾燥および、加熱による捲縮のわずかな変化をおこさせ
、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数3.8、均一性が良、単糸強度が2.9g/d、単糸伸度が59%であつた。
【0019】
開繊係数測定用の装置とは別の、一対ずつのピンチロ−ルを3段備え、且つ第三段目のピンチロ−ルの直前にエア−ブロ−形の開繊補助装置を備えた、高速開繊機を用い、延伸比1.5倍、速度230m/分で高速開繊処理しウエブを得た
。該ウエブは均一性が良であつた。前記トウは、高速度で、均一なウエブに開繊し、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層したところ、熱融着処理の有無にかかわらず、液吸収性や風合い向上材として使用可能と判断された。
【0020】
実施例2
融点166℃のポリプロピレンレギュラ−繊維を溶融紡糸した。該未延伸糸を温度80℃で4.2倍延伸し、スタフア−ボツクス型クリンパ−で24山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度2.2デニ−ル、全繊度54600デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウにアルキルホスヘ−トK塩を主成分とする油剤を少量含む水をスプレ−し、トウがクリンパ−ボツクス内で、圧着されることによる自己発熱および繊維の粘着化等による開繊性が阻害されることを防止した。また油剤による単糸間の開繊性向上処理をした。なお油剤の付着量は0.25重量%であつた。また捲縮付与後のトウを100℃で7分間加熱処理し、水分の乾燥および、加熱による捲縮のわずかな変化を起こさせ、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数4.2、均一性が良、単糸強度が4.1g/d
、単糸伸度が43%であつた。
【0021】
該トウを前記実施例1に同じ高速開繊機を用い、延伸比1.6倍、速度205m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウは、高速度で、均一なウエブに開繊し、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用可能と判断された。なお高速開繊後のトウの幅の測定は中止した。
【0022】
比較例1
融点135℃の高密度ポリエチレンレギュラ−繊維を溶融紡糸した。その未延伸糸を温度70℃で4.6倍延伸し、前記実施例1に同じクリンパ−を用い21山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度3.9デニ−ル、全繊度60200デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウに水のスプレ−は行わなかつた。該トウは開繊係数2.7、均一性が不良、単糸強度が3.1g/d、単糸伸度が63%であつた。このトウは手で開繊すると僅かに単繊維間の粘着がある繊維が認められた。
【0023】
該トウを前記実施例1に同じ高速開繊機を用い、延伸比1.6倍、速度230m/分で高速開繊処理をした。しかし短時間の運転で第2段目のピンチロ−ルおよび第3段目のピンチロ−ルに単繊維毛羽が巻き付き高速開繊が不可能であつた
。かろうじて得たウエブは均一性が不良であつた。
該トウを、延伸比を1.5倍に下げ、且つ速度を50m/分、および30m/分の低速で開繊処理した。ピンチロ−ルへの単繊維毛羽の巻き付きは発生しなかつたが、ウエブの均一性は両者速度のウエブ全て不良であつた。
該トウは、高速度で、均一なウエブに開繊することが不可能であった。また、該ウエブは、均一性が劣るので、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用不可能と判断された。
【0024】
実施例3
鞘成分が融点137℃のプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマ−で、芯成分が融点168℃のポリプロピレンからなる複合比50/50重量%の鞘芯型複合繊維を溶融紡糸した。該未延伸糸を温度100℃で3.2倍延伸し
、高速クリンパ−を用い19山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度12.9デニ−ル、全繊度53000デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウに水のスプレ−はしなかった。また捲縮付与後のトウを110℃で5分間加熱処理し、加熱による捲縮のわずかな変化をおこさせ、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数6.7、均一性が良、単糸強度が2.7g/d、単糸伸度が68%であつた。
【0025】
該トウを前記実施例1と同じ高速開繊機を用い、延伸比1.5倍、速度300m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウは、高速度で均一なウエブに開繊した後、ウェブを短繊維に切断しパルプや高分子吸収材等と混合し、あるいは該パルプ等の液吸収材と積層し、傷当て材等の吸収材等に使用可能と判断された。また、他の不織布、体液吸収材、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用可能と判断された。
【0026】
実施例4
第1成分紡糸孔と第2成分紡糸孔が均等に分散して穿孔された混繊型紡糸口金を用い、第1成分として融点135℃の高密度ポリエチレンを、第2成分として融点258℃のポリエチレンテレフタレ−トを用い、混繊比50/50(重量%
)で混繊紡糸した。該未延伸糸を温度100℃で4.0倍に延伸し、高速クリンパ−を使用し、22山/25mmの捲縮を付与し第1成分と第2成分の平均の単糸繊度が3.4デニ−ル、全繊度72600デニ−ルのトウを得た。なお延伸時前記実施例1同様、クリンパ−直前のトウに水をスプレ−した。また捲縮付与後のトウを90℃で3分間加熱処理し、水分の乾燥および、加熱による捲縮のわずかな変化をおこさせ、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数7.7、均一性が良、第1成分と第2成分の平均の単糸強度が3.2g/d、第1成分と第2成分の平均の単糸伸度が68%であつた。
【0027】
該トウを前記実施例1と同じ高速開繊機を用い、速度230m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウは、高速度で均一なウエブに開繊し、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用可能と判断された。
【0028】
実施例5
前記実施例4と同じ混繊型紡糸口金を用い、第1成分として融点137℃のプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマ−を用い、第2成分として融点168℃のポリプロピレンを用い、第1成分と第2成分の吐出量を替え、混繊比を40/60(重量%)とし、異繊度混繊糸を紡糸した。該未延伸糸を前記実施例1同様、温度83℃で3.1倍延伸し、クリンパ−で11山/25mmの捲縮を付与し、第1成分の単糸繊度が6.1デニ−ル、第2成分の単糸繊度が9.2デニ−ル、全繊度222000デニ−ルのトウを得た。なお延伸時クリンパ−直前のトウに水蒸気を適度に暴露した。また捲縮付与後のトウの熱処理は行わなかつた。該トウは開繊係数5.2、均一性が良、第1成分の単糸強度が2.6g/d、第1成分の単糸伸度が71%、第2成分の単糸強度が2.2g/d、第2成分の単糸伸度が78%であつた。
【0029】
該トウを前記実施例1と同じ高速開繊機を用い、速度160m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウは、開繊しウエブとした後、熱融着等をし、またはそのままウエブ状で、フイルタ−や、詰物、断熱材等に使用可能であつた。またパルプや高分子吸水材等と混合等をし、傷当て材等の液吸収材として使用可能と判断された。
【0030】
実施例6
第1の低熱収縮繊維として融点166℃のポリプロピレンレギュラ−繊維を溶融紡糸した。該繊維とは別に第2の高熱収縮性繊維として、潜在捲縮性のある鞘芯偏芯型複合繊維を複合紡糸法で溶融紡糸した。該第2の繊維は、鞘成分が融点135℃のプロピレン・エチレン・ブテン−1ランダムコポリマ−で、芯成分が融点166℃のポリプロピレンからなり、且つ芯成分が高度に偏芯した複合繊維であつた。第1の繊維と第2の繊維を混繊比50/50(重量%)で均等に分散して引き揃え、該混繊未延伸糸を前記実施例1同様、温度70℃で2.8倍に延伸し、クリンパ−で18山/25mmの捲縮を付与し第1の低熱収縮繊維と第2の高熱収縮且つ潜在捲縮性複合繊維の平均の単糸繊度が1.6デニ−ル、全繊度50100デニ−ルの混繊トウを得た。なお延伸時前記実施例1同様、クリンパ−直前のトウに水をスプレ−した。また捲縮付与後のトウを60℃で3分間加熱処理し、水分の乾燥および、加熱による捲縮のわずかな変化をおこさせ、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数4.8、均一性が良、第1の繊維と第2の繊維の平均単糸強度が2.6g/d、第1の繊維と第2の繊維の平均の単糸伸度が71%であつた。
【0031】
なお前記第1の繊維および第2の繊維を混繊せず、各々単独で前記実施例6同一条件で、延伸、捲縮加工等をし、捲縮数18山/25mm、全繊度50100デニ−ルの非混繊トウを2種製造した。
該第1の低熱収縮繊維トウは、105℃、5分間加熱で、熱収縮率が2.6%であり、捲縮数は18山/25mmであつた。また該第2の高熱収縮且つ潜在捲縮性複合繊維トウは105℃10分加熱で、熱収縮率が56%であり、加熱後の捲縮数が29山/25mmでスパイラル捲縮であつた。
【0032】
前記混繊トウを温度125℃10分加熱後の熱収縮率は、24%であつた。また加熱後、第2の繊維の顕在捲縮および熱収縮により、第2の繊維の捲縮が略スパイラル状に変化しかつ捲縮数が増加していることを確認した。また加熱により
、トウが嵩高化していることを確認した。
【0033】
該混繊トウを前記実施例1に同じ高速開繊機を用い、速度185m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウを、ウエブに開繊し、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用可能と判断された。なお高速開繊後のトウの幅の測定は中止した。
【0034】
比較例2
第1成分が融点133℃の高密度ポリエチレン80重量%と融点111℃の低密度ポリエチレン20重量%の混合物で、第2成分が融点167℃のポリプロピレンからなる複合比50/50重量%の並列型複合繊維を溶融紡糸した。該未延伸糸を前記実施例1同様、温度110℃で3.1倍延伸し、クリンパ−で16山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度3.1デニ−ル、全繊度65200デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウへの水のスプレ−および捲縮付与後のトウの加熱処理は行わなかつた。該トウは開繊係数2.8、均一性が不良、単糸強度が3.4g/d、単糸伸度が51%であつた。また該トウは手で開繊したところ単糸間の粘着が少々認められた。
【0035】
該トウを前記実施例1に同じ高速開繊機を用い、延伸比1.5倍、速度60m/分で低速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が不良であつた。速度を更に落し、35m/分、延伸比1.5倍で開繊したウエブは均一性が不良であつた。該トウは、高速度で均一なウエブに開繊することが不可能であった。また、該ウエブは、均一性が劣るので、不織布、体液吸収材、フィルム、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用不可能と判断された。
【0036】
比較例3
融点166℃のポリプロピレンレギュラ−繊維を溶融紡糸した。該未延伸糸を前記実施例1同様温度105℃で5.2倍延伸しクリンパ−で8山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度116デニ−ル、全繊度45100デニ−ルのトウを得た。なお延伸時前記実施例1同様、クリンパ−直前のトウに水をスプレ−した。また捲縮付与後のトウを温度90℃で1分間加熱処理し、水分の乾燥および、加熱による捲縮のわずかな変化をおこさせ、開繊性の向上処理をした。該トウは開繊係数6.8、均一性が良、単糸強度が4.3g/d、単糸伸度が44%であつた。 該トウは開繊性はよいが、単糸繊度が大きすぎ、ハップ材等の一部材として、使用困難と判断した。なお高速での開繊性テストは中止した。
【0037】
実施例7
前記実施例2で紡糸した未延伸糸を用い、温度80℃で4.2倍延伸し、高圧蒸気押し込み型クリンパ−で19山/25mmの捲縮を付与し、単糸繊度2.2デニ−ル、全繊度54600デニ−ルのトウを得た。なお延伸時、クリンパ−直前のトウに水のスプレ−およびトウの加熱処理は行わなかつた。またスタフア−ボツクス型クリンパ−の圧力を前記実施例2より低く設定し、トウが過度に押しこまれ、単糸の開繊性が阻害されるのを防止した。該トウは開繊係数4.0、均一性が良、単糸強度が3.9g/d、単糸伸度が45%であつた。
【0038】
該トウを前記実施例1に同じ高速開繊機を用い、延伸比1.6倍、速度205m/分で高速開繊処理しウエブを得た。該ウエブは均一性が良であつた。該トウは、高速度で均一なウエブに開繊し、不織布、体液吸収材、微多孔性フィルム等の他の部材と積層し熱エンボス法等の熱融着処理あり、またはなしで、液吸収性や風合い向上材として使用可能であつた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕在捲縮および/または潜在捲縮を有し、且つ単糸繊度0.5〜100デニ−ル、全繊度1万〜30万デニ−ルの熱可塑性繊維が集束された繊維束であり、かつその開繊係数が3以上であることを特徴とするトウ。
【請求項2】
熱可塑性繊維が顕在捲縮数10〜50山/25mmである請求項1記載のトウ。
【請求項3】
熱可塑性繊維が、単糸繊度1〜30デニ−ル、全繊度3万〜20万デニ−ルである請求項1または2記載のトウ。
【請求項4】
熱可塑性繊維が、ポリオレフイン系繊維、ポリエステル系繊維およびポリアミド系繊維から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3の何れかに記載のトウ。
【請求項5】
熱可塑性繊維が、融点差15℃以上を有する少なくとも2成分からなる複合繊維である請求項1〜4の何れかに記載のトウ。
【請求項6】
熱可塑性繊維が、異形断面構造を有する請求項1〜5の何れかに記載のトウ。
【請求項7】
熱可塑性繊維が、二種以上の繊維の混合繊維である請求項1〜6の何れかに記載のトウ。
【請求項8】
混合繊維が、異成分混合繊維である請求項7記載のトウ。
【請求項9】
混合繊維が、異繊度混合繊維である請求項7または8記載のトウ。
【請求項10】
混合繊維が、熱収縮差混合繊維である請求項7〜9の何れかに記載のトウ。

【公開番号】特開2006−124903(P2006−124903A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349133(P2005−349133)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【分割の表示】特願平8−351862の分割
【原出願日】平成8年12月11日(1996.12.11)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】