説明

トキソカラ症を検出するための組換え抗原

生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トキソカラ症を検出するための組換え抗原に関する。より詳細には、本発明は、TES遺伝子に由来するポリヌクレオチドを有するベクター、及びin vitroで培養したトキソカラ幼虫に由来する組換えTES抗原のポリペプチドを提供する。本発明は、組換えTES抗原を使用してトキソカラ症を検出するための方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
トキソカラ症は、回虫、イヌ回虫(Toxocara canis)、又はネコ回虫(Toxocara cati)により引き起されるヒトの蠕虫感染症である。この感染症は、十分に発育したトキソカラ種の感染幼虫を含有する孵化卵を摂取する場合に生じる。ヒト腸中の幼虫は、腸壁を透過し血管を通って移動して、肝臓、筋肉、及び肺、さらに目及び脳にさえ達するだろう。したがって、トキソカラ症を診断及び検出するための方法は、その予防及び治療に重要である。
【0003】
従来技術にはトキソカラ症の検出又は診断に関するいかなる特許技術もほとんど存在しない。従来技術で開示されている線虫寄生生物に関する血清学的及び免疫学的研究のほとんどは、米国特許第6103484号明細書に記述されているようなイヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)などのイヌ糸状虫症を診断することを目的としている。
【0004】
幾つかの特許技術は、トリキネラ属(Trichinella)、オステラジア(Osteragia)、ディロフィラリア属(Dirofilaria)、及びトキソカラ属などの種を含む線虫寄生生物の種々の種に対する抗体を産生及び検出することを目標としている。米国特許第5948644号明細書では、11kDa、17kDa、3OkDa、37kDa、及び81kDaの分子量を有する排泄−分泌タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドセグメントが開示されている。それとは別に、40kDaの分子量を有する寄生線虫種に由来する精製された抗原も、米国特許第5871738号明細書に開示されている。これら発明は、抗原及び関連分子に対する抗体、該抗体を含む抗体組成物、及び該抗原を含むワクチンなどを提供するのに役立つ。しかしながら、これら方法は複雑であり、使用されるタンパク質は特異的でない。
【0005】
該特許技術のほとんどでは、線虫寄生生物の検出に、より高い分子量のタンパク質が使用される。加えて、開示されている方法では、トキソカラ症を特異的に検出又は診断することが可能ではない。しかしながら、たとえ、in vitroの限定培地中で維持されたイヌ回虫(T.canis)第二期感染幼虫(L2)に由来する排泄‐分泌抗原が、ヒトトキソカラ症の免疫診断、回虫症、フィラリア症、及び糞線虫症の患者に由来する血清試料を使用するイムノアッセイに広範に使用されているとしても、天然TESとの交差反応性を示す。
【0006】
したがって、本発明により、トキソカラ症を特異的に検出することが可能な抗原を革新して、従来技術の欠点を克服することが望まれている。低分子量の抗原は、トキソカラ症を検出するための高分子タンパク質よりも特異的であることが示されているため、トキソカラ幼虫に由来する好適なタンパク質は、この疾患のためのより有用でより有効な血清診断マーカーの開発に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6103484号
【特許文献2】米国特許第5948644号
【特許文献3】米国特許第5871738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主要目的は、トキソカラ症を特異的に及び効果的に検出又は診断することが可能な組換えタンパク質又は抗原を開発することである。
【0009】
本発明の別の目的は、トキソカラ症を検出するための、より高感度でより特異的な、より低い分子量を有する抗原を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、生体試料中のトキソカラ症を検出する際に、組換え抗原として使用することができるTESポリペプチドを発現するベクターを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体の存在を検出及び診断するための、特異的で高感度の信頼性が高い方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的の少なくとも1つは、本発明により全体的に又は部分的に満たされており、本発明の実施形態の1つは、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターについて記述している。好ましくは、ベクターは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−タグ付ベクターである。
【0013】
本発明の別の実施形態は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するベクターを含む細菌細胞である。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態の1つによると、ポリペプチドは、組換えタンパク質又は抗原である。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ付ベクター及びTES−26遺伝子によりコードされた、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドである。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための方法であって、a)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列又はその相補的配列をクローニングすること、b)該クローンを発現ベクターで発現して該ポリペプチドを得ること、およびc)該ポリペプチドを使用してイムノアッセイを開発し、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出することを含む方法である。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、TES−26遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)又は完全コード配列(cds)に由来する。好ましくは、発現ベクターはGSTタグ付ベクターである。
【0019】
当業者であれば、本発明は、これら目的を実施して、言及された結果及び利点並びにそこに備わっているものを得るのに十分に適合していることを容易に認識するだろう。本明細書に記述されている実施形態は、本発明の範囲を限定するものとして意図されていない。
【0020】
本発明についての理解を容易にするために、添付の図面には、好ましい実施形態が例示されており、それを検討することにより、本発明、その構築及び操作、並びにその利点の多くは、以下の説明と関連して考慮されると容易に理解及び評価されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するためのポリペプチドが挿入されたベクターのアミノ酸配列を示す図である。
【図2】TES−26のORF又は完全cdsによりコードされたアミノ酸配列を含むポリペプチドを示す図である。
【図3】TES−26遺伝子を検出及び特定するための逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)で使用されるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列、及び本発明の好ましい実施形態の1つにより記述されているクローニングベクターを示す図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態の1つにより記述されている、TES−26遺伝子の増幅RT−PCT産物の電気泳動ゲルを示す図であり、レーン2には793bpのバンドサイズが示されている。レーン1は100bp DNAサイズマーカーであり、レーン4及びレーン5は、それぞれRT−PCR反応の陽性及び陰性対照である。
【図5】分子量が69kDaの精製TES−26 GST融合タンパク質のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)プロファイル(レーン3)を示す図である。レーン1はタンパク質サイズマーカーである。
【図6】種々の分類の血清を用いて探索された組換えTES−26抗原に関するウエスタンブロット分析を示す図である。レーン1はタンパク質サイズマーカーであり、レーン2〜4は、3人の異なるトキソカラ症患者を指し、レーン5は鞭虫症患者を指し、レーン6はトキソプラズマ症患者を指し、レーン7及び8は健常正常体を指す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、トキソカラ症を検出するための組換え抗原に関する。より詳細には、本発明は、TES遺伝子に由来するポリヌクレオチドを有するベクター、及びin vitroで培養したトキソカラ幼虫に由来する組換えTES抗原のポリペプチドを提供する。本発明は、組換えTES抗原を使用してトキソカラ症を検出するための方法も提供する。
【0023】
下記において、本発明は、本発明の好ましい実施形態に従って、添付の説明及び図面を参照することにより記述される。しかしながら、本発明の好ましい実施形態及び図面に説明を限定することは、単に本発明の考察を容易にするために過ぎないことが理解されるべきであり、当業者であれば、添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、種々の改変を考案することができることを起想する。
【0024】
本発明は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを開示する。
【0025】
本発明の1つの実施形態は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ付ベクター及びTES−26遺伝子によりコードされた、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドである。図1は、TES−26タンパク質を有する発現ベクターのアミノ酸配列を示しており、それを配列番号1と称する。TESポリペプチドのアミノ酸配列は、図2に示されている。このポリペプチドの発現に使用される好ましいベクターは、GSTタグ付ベクターであり、GSTタグ付ベクターは、好ましくは市販のpET42「b」型である。
【0026】
好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、TES遺伝子のORF又は完全cdsに由来していてもよく、TES遺伝子は、好ましくは、26kDaタンパク質をコードするTES−26遺伝子である。検出に使用することができる生体試料には、ヒト血清、血漿、又は全血(抗凝血剤を有するか又は有していない)が含まれる。
【0027】
本発明の別の実施形態は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するベクターを内包する細菌細胞である。細菌細胞は、in vitroで培養することができる発現宿主である。本発明の好ましい実施形態によると、細菌宿主は、BL21(DE3)、XL1−Blue、DH5α、TOP10、又はNovaBlueであってもよく、それらは市販されている。最も好ましい実施形態では、BL21(DE3)が、細菌宿主として使用される。しかしながら、本発明は、ポリペプチドの発現に利用可能な好適な宿主の使用を制限することを意図していない。
【0028】
本発明は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドも開示する。このポリペプチドは、グリコシル化されていない。ポリペプチドのグリコシル化は、糖部分を認識する他の生物に対する抗体との交差反応を増加させることに結び付く場合がある。したがって、本発明の非グリコシル化ポリペプチドは、そのような交差反応により影響を受けないであろう。非グリコシル化ポリペプチドは、分子量が低く、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体の存在を、感度良く、特異的に、及び高信頼性で検出及び特定するために使用するためにも好適である。
【0029】
この組換えタンパク質は、rTES−26としても知られており、ヒトトキソカラ症を検出するために、単独抗原として、又はrTES−30及び/若しくはrTES−120などの他の組換え抗原と組み合わせて使用することができる。その上、このrTES−26は、マイクロプレートELISA、ドットブロット、ウエスタンブロット、及び凝集アッセイなどのイムノアッセイに使用することができる。rTES−26は、通過画分検査(flow−through test)及びイムノクロマトグラフィー検査(側方流動検査)などの迅速検査を開発するために使用することもできる。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための方法であって、a)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列又はその相補的配列をクローニングすること、b)該クローンを発現ベクターで発現して該ポリペプチドを得ること、およびc)該ポリペプチドを使用してイムノアッセイを開発し、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出することを含む方法である。
【0031】
先述の説明に示されているように、適用されるポリヌクレオチド配列は、TES遺伝子のORF又は完全cdsに由来しており、TES遺伝子は好ましくはTES−26である。図2に例示されているのは、本方法で使用されるポリペプチドである。このポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むTES−26遺伝子によりコードされている。
【0032】
本発明の好ましい実施形態は、トキソカラ種を含有する生体試料中のTES−26遺伝子を検出及び特定するために設計された配列番号3及び配列番号4のヌクレオチド配列を含む1組のプライマーを開示する。図3に示されている配列番号3及び配列番号4の順方向及び逆方向プライマーは、GenBankから得られるTES−26遺伝子のORF又は完全cdsを参照することにより設計される。RT−PCRは、好ましくは、TES−26遺伝子のヌクレオチド断片を得るために、生体試料に由来するRNAを使用して実施される。
【0033】
結果的に、TES−26をコードする遺伝子は、末端部がAである新しく精製されたRT−PCR産物であり、好ましくはクローニングベクターにクローニングされ、クローニングベクターは好ましくはTOPOベクターである。しかしながら、本発明は、pJET1.2、pT7Blue T、pCRTM II、pGEM[R]−T、又はpLUG(登録商標)−Multi TAクローニングベクターなどの任意の他の市販のPCRクローニングベクターの使用を制限することを意図していない。商業的に取得することができる好適なTOPOベクターは、TOPO TAクローニングベクターである。その後、クローニングされたプラスミドは、コンピテント細菌細胞に転換され、コンピテント細菌細胞は、好ましくは市販の大腸菌宿主である。その後、組換えプラスミドの方向性は、両TES遺伝子特異的プライマー(配列番号3及び配列番号4)を使用して、及びベクター特異的M13Rプライマー(配列番号5)を、TES遺伝子特異的な逆方向プライマー(配列番号4)と共に使用して、PCRスクリーニングにより確認することができる。プライマー配列は、図3に示されている。操作された遺伝子の存在は、好ましくはDNA配列決定法により確認される。
【0034】
塩基突然変異は、クローニングプロセス中に生じる場合がある。したがって、発現宿主への形質転換前に、in vitroのPCRに基づく指定部位突然変異誘発を実施して、TES−26−TOPOベクター組換えプラスミドに生じた塩基エラーを修正することができる。市販の塩基突然変異修復キットを適用することができる。図4の電気泳動ゲルに示されているように、TES−26をコードする遺伝子のORFの増幅RT−PCR産物(レーン2)は、およそ793bpのバンドサイズを示す。
【0035】
本発明の好ましい実施形態の1つに記述されているように、組換えプラスミド及び発現ベクターは、GSTタグ付ベクター、例えばpET42「b」型ベクターにサブクローニングされる前に、制限酵素で消化することができる。しかしながら、本発明は、標的とされたポリペプチドを産生するために利用可能な他の好適な発現ベクターの使用を制限することを意図していない。DNA配列決定で確認した後、構築されたプラスミドを形質転換プロセスにかけ、形質転換プロセスでは、細菌細胞又は宿主が適用される。先述の説明で示されているように、細菌細胞は、好ましくはBL21(DE3)である。しかしながら、利用可能な他の好適な宿主も、このポリペプチドを発現するために適用することができる。
【0036】
組換え細菌は、対数期の中間部まで培養することができ、その後イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で発現が誘導される。培養物は、3時間後に回収され、十分な量の組換えタンパク質が活性又は可溶性形態で存在する場合、天然条件下で精製することができる。組換え細菌細胞を溶解緩衝液中で溶解し、GST樹脂を使用して精製する親和性精製法を適用することができる。その後、このGSTタグは、第Xa因子酵素などの制限等級の部位特異的プロテアーゼにより切断又は除去される。
【0037】
標的タンパク質を切断した後、第Xa因子は、アフィニティークロマトグラフィーで除去される。切断又は除去は、電気泳動法により確認することができる。タンパク質及びポリペプチドのサイズを決定するために適用することができる最も好ましい方法の1つは、SDS−PAGEである。しかしながら、本発明は、同様に他の好適な方法の使用を制限することを意図していない。図5に示されているように、SDS−PAGE分析により決定された発現標的タンパク質のサイズは、およそ69kDaである。GSTタグは、タンパク質の免疫原性に影響及ぼす場合があるおよそ26kDaの大型分子であるため、したがって、イムノアッセイを開発する前にGSTタグを除去することが必要であった。GSTタグを切断又は除去した後、TES−26組換えタンパク質の分子量は、およそ30〜34kDaを示す。
【0038】
随意に、組換えタンパク質の免疫反応性の分析を実施することができる。使用される好ましい方法は、ウエスタンブロットである。図6は、トキソカラ症、鞭虫症、トキソプラズマ症に罹患している患者に由来する血清、及び健常正常体に由来する血清を含む種々の分類の血清を用いて探索された組換えTES−26抗原についてのウエスタンブロット分析を示す。図6に示されているように、切断型TES−26組換えタンパク質の抗原性は、トキソカラ症患者に由来する血清試料中でのみ反応性である。健常個体及び他の蠕虫感染に由来する血清はどれも、いかなる反応性も示さない。
【0039】
前記の説明に示されているように、その後、TES−26の精製組換えタンパク質を使用してELISA検査を開発することができ、そのELISA検査は、好ましくは、イヌ回虫に感染した患者に由来する血清中の特異的抗体を検出するためのIgG4−ELISA検査である。好ましい手順は、以下の例でさらに記述されている。続いて、これらアッセイの感度及び特異性は、一群のトキソカラ症血清、健常正常体、及び他の蠕虫関連感染を使用して、トキソカラ症の検出におけるその有用性について評価される。本発明のIgG4−ELISA rTES−26抗原は、78%〜85%の感度レベル、及び95%〜99%の特異性レベルを達成可能である。
【0040】
本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれているもの並びに上記で説明されているものを含む。本発明は、その好ましい形態で、ある程度詳細に記述されているが、好ましい形態の本開示は、単なる例としてなされているに過ぎず、本発明の範囲から逸脱せずに、構築の詳細並びに部分の組合せ及び配置における多数の変更を用いることができることが理解される。
【0041】
実施例
本発明は、以下の例を参照してさらに記述することができる。これらの例は、本発明の様々な態様及び実施形態を例示するために提供されており、開示された発明を限定することはいかなる点でも意図されておらず、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例1】
【0042】
実施例1:TES−26遺伝子のコード配列のPCR増幅
TES−26遺伝子の配列(オープンリーディングフレーム又は完全cds)を、Genbankから取得した(受入番号:U29761)。プライマーは、Vector NTiバージョン6.0(Informac Inc.社製、Invitrogen社製、米国)を用いて設計及び分析した。使用した順方向及び逆方向プライマーの配列は、それぞれ配列番号3及び配列番号4に示されている。RT−PCRを、Easy−A(商標)高フィデリティーPCRクローニング酵素キット(Stratagene社製、米国)を用いた市販のStrataScript(商標)One−Tube RT−PCRシステムを使用することにより実施した。実験反応は、39.5μlの無RNase水、5μlの1O×RT−PCR緩衝液、1μlの順方向及び逆方向プライマー(各々20pmol/μl)、1μlの40mM dNTP混合物、1μlのmRNA試料、1μlの希釈StrataScript RT(2.5U/μl)、及び0.5μlのEasy−A HiFi PCRクローニング酵素を含んでいた。その後全成分を0.2mlのPCRチューブに添加し、50μlの総反応容積にした。増幅プロセスを以下のように実施した:42℃で15分間の第1鎖合成;95℃で1分間のStrataScript RT不活化;95℃で30秒間の変性、60℃で30秒間のテンプレート−プライマーのアニーリング、68℃で2分間の伸長(40サイクル)、及び68℃で5分間の最終伸長。
【実施例2】
【0043】
実施例2:TES−26をコードする遺伝子のクローニング 末端部がAである新しく精製されたRT−PCR産物を、TOPO TAクローニングベクター(PCR2.1 TOPO TA−Invitrogen社製、米国)にクローニングし、その後TOP1O大腸菌宿主(Invitrogen社製、米国)に形質転換した。その後、組換えプラスミドの方向性を、両遺伝子特異的プライマー(TES26F及びTES26R)を使用して、及びベクター特異的プライマー(M13R)を、遺伝子特異的プライマー(TES26R)と共に使用して、PCRスクリーニングにより確認した。この後でDNA配列決定を行い、次いで、Vector NTiソフトウェア バージョン6.0(Informac Inc.社製、Invitrogen社製、米国)を使用して、操作された遺伝子の配列を公開配列と比較した。
【実施例3】
【0044】
実施例3:塩基突然変異の修復 in vitroのPCRに基づく指定部位突然変異誘発を、市販キット(QuickChange XL、Stratagene社製、米国)を使用して実施して、TES−26組換えプラスミド(TES−26/TOPO)の4つの塩基エラー(124、502、613、及び768bp)を修正した。TES−26をコードする遺伝子のORFの増幅RT−PCR産物は、ゲル電気泳動法により示されている。
【実施例4】
【0045】
実施例4:細菌発現ベクターへのサブクローニング 組換えプラスミド及び発現ベクターを、EcoR1酵素(Fermentas社製、米国)で消化した。消化した後、TES−26組換えプラスミドを、T4迅速DNAライゲーションキット(Roche Diagnostics社製、ドイツ)を使用して、pET42「b」型(Novagen社製、ドイツ)にサブクローニングした。構築体をDNA配列決定により確認した後、組換えプラスミドを発現宿主、BL21(DE3)(Novagen社製、ドイツ)に形質転換した。
【実施例5】
【0046】
実施例5:TES−26の発現及び精製 組換え細菌を、30μg/mlのカナマイシンを含有するテリフィックブロス(TB、Terrific broth)中で培養し、OD600が対数期の中間部(OD600=0.5)に達するまで37℃でインキュベートした。その後、インキュベーター振とう器中30℃で、終濃度1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて発現を誘導した。その後、培養物を3時間後に回収した。続いて、組換え細菌細胞を、NaHPO、KHPO、NaCl、及びKClを含有する溶解緩衝液中でフレンチプレスを使用することにより溶解し、GST樹脂(Novagen社製、ドイツ)を使用して精製した。制限等級の部位特異的プロテアーゼである第Xa因子酵素を、市販キット(第Xa因子切断捕捉キット、Novagen社製、ドイツ)を使用してGSTタグを特異的に切断/除去するために使用した。標的タンパク質を切断した後、第Xa因子を、Xarrest(商標)アガロース(Novagen社製、ドイツ)を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより除去した。発現された標的タンパク質のサイズを、SDS−PAGE分析により決定した。
【実施例6】
【0047】
実施例6:ウエスタンブロット 組換えタンパク質の免疫反応性を、血清試料中のIgG4抗体を検出することに基づくウエスタンブロット法により分析した。rTES−26(20μg/ml)を、10%SDS−PAGEで電気泳動し、セミドライ式トランスブロット(BioRad社製、米国)を使用してニトロセルロース膜(Osmonic社製、米国)に移した。膜を切断して細片にし、1%カゼインブロッキング溶液(Roche Diagnostic社製、ドイツ)で1時間ブロッキングした。続いて、細片を、血清試料(0.5%ブロッキング溶液で1:100に希釈)と共に4℃で終夜インキュベートし、その後、1:2000(0.5%ブロッキング溶液中)のモノクローナル抗ヒトIgG4−HRP(Zymed社製、米国)と共に30分間インキュベートした。BM化学ルミネセンスブロッティング試薬(Roche Diagnostic社製、ドイツ)及びX線フィルム(コダック社製、米国)を使用して、ブロットを現像した。
【実施例7】
【0048】
実施例7:酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)
rTES−26抗原に基づくELISAを開発し、アッセイの感度及び特異性を検証するために、トキソカラ感染、他の蠕虫関連感染、及び健常個体を含む一群の血清を使用して実験室評価を実施した。96穴平底マイクロタイタープレート(NUNC社製Immuno(商標)Maxisorp、デンマーク)の各ウエルを、0.02M重炭酸塩緩衝液(pH9.6)中10μg/mlの至適濃度のrTES−26を100μl使用してコーティングした。その後、プレートにカバーをかけ、加湿チャンバー中4℃で終夜、及び37℃で2時間インキュベートした。0.05%(容積/容積)のツイーン−20、pH7.2を含有するリン酸緩衝生理食塩水、pH7.2(PBS−T)でプレートを洗浄して、あらゆる未吸着抗原を除去した。5×5分間の洗浄ステップの後、各ウエルを、1.0%ブロッキング試薬(Roche Diagnostics社製、ドイツ)を用いて、37℃で1時間ブロッキングした。前述のようにプレートを再び洗浄し、その後、各血清希釈液(PBSで1:50に希釈された100μlのヒト血清)を重複して各ウエルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。過剰な血清を洗い流した後、1:1000に至適稀釈(PBS中)されたマウスモノクローナル抗ヒトIgG4−HRP(Zymed社製、米国)を添加し、37℃で30分間インキュベートした。最終洗浄ステップの後、2’,2−アジノ−ビス[3−エチルベンズ−チアゾリン−6−スルホン酸−ジアンモニウム塩](ABTS)基質(Roche Diagnostics社製、ドイツ)を添加し、吸光度405nm(基準490nm)での光学密度(O.D)を、ELISA分光光度計(Tecan社製、スウェーデン)を使用して30分後に測定した。陽性を決定するためのカットオフ値(COV)として、0.200のO.D測定値を使用して、陽性と陰性を識別した。このCOVは、平均O.D.測定値に、健常個体由来の30個の血清試料の3標準偏差(SD)を加えた値に基づいていた。O.D測定値をPBS(ブランクとして)でブランクし、0.200と等しい及び/又はそれを超えるO.D測定値を、陽性症例として解釈した。IgG4−ELISAの感度及び特異性の評価結果は、表1に示されている。
感度評価:
【0049】
【表1】

【0050】
特異性評価:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項2】
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ付ベクターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するベクターを含む細菌細胞。
【請求項4】
生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための、配列番号2のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項5】
組換えタンパク質である、請求項4に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ付ベクター及びTES−26遺伝子によりコードされた、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項7】
生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出するための方法であって、
a)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列又はその相補的配列をクローニングすること、
b)前記クローンを発現ベクターで発現して前記ポリペプチドを得ること、及び
c)前記ポリペプチドを使用してイムノアッセイを開発し、生体試料中にあるトキソカラ種に対する抗体を検出することを含む方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチド配列が、TES−26遺伝子のオープンリーディングフレーム又は完全コード配列に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発現ベクターが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ付ベクターである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが組換えタンパク質である、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−511325(P2012−511325A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540619(P2011−540619)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/MY2009/000044
【国際公開番号】WO2010/068084
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501084259)ユニヴァーシティ サインズ マレーシア (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY SAINS MALAYSIA
【住所又は居所原語表記】11800,PULAU PINANG,MALAYSIA
【Fターム(参考)】