説明

トグル式型締装置の可動プラテン位置測定方法

【課題】 トグル式型締装置において、金型を開閉する際の可動プラテンの位置を、簡素な計測手段によって測定する方法である。
【解決手段】 型開閉動作中において、リンク機構のリンク部材に取り付けられた傾斜センサーにより、リンク部材の傾斜角度を測定し、測定された傾斜角度から可動プラテンの位置を制御装置によって換算する。換算された可動プラテンの位置にもとづいて、型開閉速度制御や停止位置の制御を行なう。計測手段の部品点数が少なくなるとともに、省スペース化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンや樹脂射出成形機などの成形機で用いられているトグル式型締装置において、可動プラテンの型開閉位置を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機の型締装置においては、可動型が取り付けられた可動プラテンの位置を型開閉中に測定し、その位置に応じた速度で制御し設定された位置で停止させることが、安全な金型タッチや確実な製品取出し、型開閉時間の最短化にとって非常に重要である。そのため、可動プラテンの位置を測定するセンサーが必ず設けられている。
【0003】
型締機構の1つの方式であるトグル式型締装置について、図4を用いて説明する。マシンベース16上には、固定型13を保持する固定プラテン12が図示せぬキーを介して動かないように載置されている。固定型13と閉じ合わさって製品形状の空間であるキャビティを形成する可動型15は、可動プラテン14に取り付けられている。可動プラテン14の金型と反対側には、第一リンク部材18と第二リンク部材19と第三リンク部材20およびリンクピン24などからなるリンク機構17、さらにリンクハウジング21が備えられている。可動プラテン14は、マシンベース16上を摺動可能となっていて、滑らかに型開閉動作できる。また、リンクハウジング21もマシンベース16上を移動可能となっており、金型の厚さによって位置が調整される。リンク機構17は、上下対称に取り付けられた第一リンク部材18、第二リンク部材19、第三リンク部材20がそれぞれ複数のリンクピン24を介して連結されている。リンクハウジング21には、型締シリンダー22が装着されており、そのシリンダーロッド23の先端には、クロスヘッド27が固着されている。クロスヘッド27はリンクピンを介してリンク機構17と連結しているので、図示せぬ油圧装置から型締シリンダー22に油圧を供給しシリンダーロッド23を動作させると、クロスヘッド27及びリンク機構17が動作し、可動プラテン14を開閉することができる。リンクハウジング21とリンクピン支持部29は一体となっている。
【0004】
図4においては、可動プラテン14の位置を測定するセンサーは、可動プラテン14とリンクハウジング21に取り付けられている。リンクハウジング21には、ロータリーエンコーダーの回転軸にピニオン歯車が取り付けられたピニオン&エンコーダー26が装着されている。一方、可動プラテン14には、ピニオンと噛み合うラック25が取り付けられている。可動プラテン14が開閉動作すると、ラック25によってピニオンおよびエンコーダーの回転軸が回転し、回転量を測定することにより、可動プラテン14の位置を測定できる。測定データは、図示せぬ制御装置に送信され、可動プラテン14の位置が認識されて、速度制御や停止制御に使われる。図4の上の図は、金型が閉じている状態を示し、下の図は開いている状態を示す。尚、図には型締力を受けるタイバーやタイバーナットは示されていない。
【0005】
図5は、別の方式の可動プラテン測定方法が示されている。センサーはロッド型センサー28であり、可動部分がシリンダーロッド23に固定されている。可動部分がセンサーのロッド上を移動することにより、クロスヘッド27の位置を測定できる。測定されたデータにもとづいて、制御装置が可動プラテン14の位置を換算する。
また、特許文献1にも、クロスヘッドにラックが装着され、リンクハウジングに装着されたピニオンとエンコーダーによってクロスヘッドの位置を測定する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−77290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4および図5から分かるように、従来の可動プラテン位置の測定方法では、トグル装置を構成する部品の相対位置を測定するため、センサーを2つの構成部品に取り付ける必要があり、部品点数の増加と取り付けスペースの広範囲化につながっていた。また、取り付けする際も双方の部品を位置制度良く取り付ける必要があり、取り付け作業の煩雑化が生じ、さらに位置がずれることにより故障の原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本願発明の第1の発明では、リンク機構のリンク部材に取り付けられた傾斜センサーによってリンク部材の傾斜角度を測定し、測定された傾斜角度から可動プラテンの位置を制御装置によって換算する。
第2の発明では、傾斜センサーの中心軸が、リンクハウジングに支持されたリンクピンの中心軸と同一線上となる位置に取り付ける。
【発明の効果】
【0009】
本願発明においては、傾斜センサーを1つのリンク部材に取り付けるだけで可動プラテン位置を測定できるため、センサー周辺の部品点数を削減することができる。また、センサー周辺部品によって占有されるスペースが狭い(省スペース化)ので、他の部品との干渉が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明に係る、トグル式型締装置における可動プラテン位置の測定方法を示す図である。
【図2】リンクの傾斜角度(θ)と可動プラテンの位置(x)との関係を示すグラフである。
【図3】本願発明に係る第2の実施例における、傾斜センサーの取り付け状態を示す図である。
【図4】従来技術における、可動プラテン位置の測定方法を示す図である。
【図5】従来技術における、他の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、本願発明において用いるセンサーについて説明する。用いるセンサーは、特許文献:特開2006−90796号公報などに記載されている傾斜センサーである。傾斜センサーは、センサーを取り付けた部品の重力方向に対する傾斜角度(傾き)を測定することが可能である。測定原理は、ホール効果を発揮する半導体素子で作られたホールICを用い、ホールICを透過する磁束が変化すると、ホールICに発生する電圧が変化することを利用する。傾斜センサー本体には、ホールICを固定するとともに、強磁性体を固着した振り子を揺動自在に支持する。傾斜センサー本体が傾くと、ホールICと重力方向にある振り子の位置関係が変わることになり、ホールICを透過する磁束が変化するので、ホールICに発生する電圧が変化する。それを電気的に測定することにより、傾斜角度を測定できる。
【0013】
図1に第1の実施例を示すが、トグル式型締装置自体は従来の構造と同じである。上述の傾斜センサー30は、第三リンク部材20に装着されている。型開閉動作に伴なってリンク機構17が動き、この時第三リンク部材20の傾きが変化する。この傾き角度(傾斜)は、可動プラテン14の位置と1対1で対応するため、傾斜角度(θ)を測定すると可動プラテン位置(x)が測定できる。傾斜センサー30は、第二リンク部材19に取り付けても良い。
【0014】
傾斜センサー30により測定されたデータは、電気配線を通じて制御装置に送信される。制御装置には、図2に示すようなリンク部材の傾斜角度(θ)と可動プラテン位置(x)との関係が予め求められて記憶されている。よって制御装置は、傾斜センサー30からの信号を受信すると、前述した関係から可動プラテン位置(x)を換算し、その位置に応じた速度制御と停止制御を行なうことができる。
【実施例2】
【0015】
図3は、第2の実施例における傾斜センサー30の取り付け方法を示す。図3はリンクハウジング21と一体であるリンクピン支持部29周辺を、上からと横から見た状態を詳細に示す図である。リンクピン支持部29と第二リンク部材19は、リンクピン24を介して連結されている。リンクピン24が抜けることがないように、リンクピンカバー35が取り付けられている。第二リンク部材19にブラケット31がボルト32によって取り付けられ、それに傾斜センサー30が固定されている。傾斜センサー30の振り子の揺動中心軸(傾斜センサー30の中心軸)は、円柱状のリンクピン24の中心軸と同一線上の位置である。型開閉動作中において、リンクハウジング21およびリンクピン支持部29は型開閉方向に動かないので、この中心軸も動くことはない。よって、傾斜センサー30は中心軸を中心に回転するだけで、型開閉方向(左右方向)の力が作用しない。そのため、傾斜センサー30内部の振り子は、左右方向に振れる(揺動)ことがなく、傾斜角度(θ)をより正確に測定することができる。
【0016】
実施例1においては、傾斜センサー30は第三リンク部材20に取り付けられているため、左右方向(型開閉方向)にも動くことになり、振り子が揺れる分、傾斜角度の測定が不正確になる。一方、第2の実施例においては、左右に動くことがないので、傾斜角度(θ)の測定精度を改善できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0017】
ダイカストマシンや射出成形機のトグル式型締装置において、型開閉動作中における可動プラテン位置の測定を簡素化することができる。それにより、型開閉時間の短縮が図れ、鋳造や成形の生産性向上に貢献する。
【符号の説明】
【0018】
10 トグル式型締装置
12 固定プラテン
13 固定型
14 可動プラテン
15 可動型
16 マシンベース
17 リンク機構
18 第一リンク部材
19 第二リンク部材
20 第三リンク部材
21 リンクハウジング
22 型締シリンダー
23 シリンダーロッド
24 リンクピン
24a 中心軸
25 ラック
26 ピニオン&エンコーダー
27 クロスヘッド
28 ロッド型センサー
29 リンクピン支持部
30 傾斜センサー
31 ブラケット
32 ボルト
35 リンクピンカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トグル式型締装置において、金型を開閉する際の可動プラテンの位置を測定する方法であって、
リンク機構のリンク部材に取り付けられた傾斜センサーによって前記リンク部材の傾斜角度を測定し、測定された前記傾斜角度から前記可動プラテンの位置を制御装置によって換算する、
ことを特徴とする可動プラテン位置の測定方法。
【請求項2】
前記傾斜センサーは、リンクハウジングとリンクピンを介して組み合わさるリンク部材に取り付けられ、
その取り付け位置は、前記傾斜センサーの中心軸が、前記リンクハウジングに支持された前記リンクピンの中心軸と同一線上となる位置である、
ことを特徴とする請求項1記載の可動プラテン位置の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−6194(P2012−6194A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142663(P2010−142663)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】