説明

トゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法及びワイヤロープの玉掛索製造装置及び同装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法並びにトゲのないワイヤロープの玉掛索

【課題】トゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法及びワイヤロープの玉掛索製造装置及び同装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法並びにトゲのないワイヤロープの玉掛索を提供する。
【解決手段】この発明トゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法は、束ストランド形成工程と、巻差し工程と、かご差し工程と、細束ストランド形成工程と、内層線切断工程と、内層線先端押込み工程と、細束ストランドかご差し工程と、外層線切断工程と、外層線先端押込み工程とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープの端部側を輪状に丸く折り曲げてその折り曲げた端部の自由端をワイヤロープに連設固定してワイヤロープの先端にループ状の玉掛索を形成するトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法及びワイヤロープの玉掛索製造装置及び同装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法並びにトゲのないワイヤロープの玉掛索に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製のワイヤロープは、数本ごとに金属素線を撚って形成したストランドという素線の束を更に多数撚ってロープとなるように構成している。
【0003】
そして、かかるワイヤロープを突起物に係合するためにはワイヤロープの先端に輪状のループ部を形成してこのループ部を突起物に係合する。
【0004】
従って、金属ワイヤロープの先端にはかかるループ部を形成して使用されることが多く、このループ形状を玉掛索と言っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようにループ部の玉掛索を形成する方法としては、まず、曲げられたワイヤロープの自由端をストランドの束毎に、すなわち、数本の金属素線を撚って形成した金属束毎にばらばらに解舒する。
【0006】
次いで、ワイヤロープのループ基端とすべき位置において鋭利なスパイキと呼ばれる針部材で撚られた各束ストランドの間に隙間をこじ開けて先ほどのばらばらにしたストランドのうちの一束目のストランドを差し込んで隙間から挿通する。
【0007】
このようにして、ばらばらにした各束ストランドを同じ様にして撚りストランドの異なる隙間に通していき、最終的には、すべてのばらばらにした各ストランドの自由端を、ワイヤロープのループ基端となるべき位置において形成されたストランド間隙に挿通する。これを数回繰り返すことを丸差し作業と称する。
【0008】
かかる丸差し作業が行われた後に間隙を挿通して突出した各束ストランド先端部を更に2組の細束に分岐し、その1組目の細束ストランドはワイヤロープ表面から所望の長さで切断すると共に、切断しない他の組の細束ストランドはそれぞれ異なるストランド間隙に挿通する。これを数回繰り返すことを半差し作業と称する。
【0009】
このようにして数回のストランド挿通作業を完了し間隙から突出した自由端を切断していくことによりワイヤロープのループ基端の連設固定作業を完了しループ状の玉掛索が出来上がる(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
すなわち、従来の手編み玉掛索の製作に使用されるワイヤロープは、心綱とその周囲に6組のストランドを六角状に配しこれを螺旋状に撚り込んで作られており、また、各ストランドは、内部側を構成する複数のワイヤ素線の束とから構成されている。
【0011】
一般に、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する場合において、ワイヤロープの先端を折り返してループ状とする所謂アイ加工では、法規で定められた基準を守って、例えば、かご差しや巻差しなどと呼ばれる特定の編み込み方法を用いて作られる。
【0012】
折り返した先端側をワイヤロープを構成する6組の束ストランドと心綱とをバラバラに分け、先端部分が折り返される基側、すなわち、ループ部基端となるべき位置において撚り込まれた各撚りストランドの間に決められた順序で各ばらばらにした束ストランドの先端を通し決まった間から抜き出す。
【0013】
ループ部基端においてワイヤロープの本線表面から抜き出た6組のばらばらにした束ストランドの先端側を、編み込み方法の種類によって決まった順序で、撚りストランドの特定の間から通して、別の特定の間から抜き出す作業を最低3回以上繰り返す。
【0014】
3回以上繰り返した後、本線の表面から外部に出ている6組のばらばらの各ストランドの先端側を、各組毎に更に外層線の細束と内層線の細束ストランドとにそれぞれ識別して、二つの組に細分化し12組の細束ストランド先端自由端部を形成し、ワイヤロープの表面から外部に出ている6組の各内層線の細束ストランドのみをワイヤロープの表面位置で切断する。
【0015】
また、切断しなかった6組の各外層線の細束を前記の編み込み方法の種類に決まっている順序で、ワイヤロープの螺旋状に撚り込まれたストランドの特定の間から通して、別の特定の間から抜き出す作業を最低2回以上繰り返す(これを「半差し作業」という)。その後、ワイヤロープの表面から外部に出ている6組の各外層線の細束ストランドをワイヤロープの表面位置で切断する。
【0016】
なお、各束ストランド又は各外層線の細束ストランドをどの間から通して他のどの間から抜き出すかのこれらの作業手順は、編み込み方法の種類に決まっている。また、各工程の途中ではワイヤロープ表面はハンマで軽く均される。
【0017】
従来はこのような方法によりワイヤロープを用いて手編み玉掛索が作られている。
【0018】
このような金属製のワイヤロープの端部側にループ状の輪を形成加工する編み込みによる玉掛索製造技術は、ワイヤロープの径が例えば20mm以上の場合、全工程を全て人手によって行われていた。
【0019】
かかる作業の効率化のために、ワイヤロープ本体側でループの基端に位置する撚りストランド間に間隙を形成する針部材としてのスパイキを改良して丁度ミシンの針のように先端にストランド束の自由端係止用の孔を形成したスパイキに関する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2006−291387号公報
【特許文献2】実開平5−5897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、前記の特許文献2の実開平5−5897のワイヤロープの端末加工機にあっては、次のような課題があった。
【0022】
すなわち、この特許文献では、スパイキの先端の孔中に予めばらばらにしたうちの一束のストランドの自由端を係止しておき、ワイヤロープのループ基端において孔付きのスパイキで各撚りストランドの間に間隙を形成しながらばらばらに解除いた複数の束ストランドの自由端も同時に撚りストランド間隙に挿通するものである。そのため作業効率は向上するものの、スパイキの先端は孔を有する分だけ大きくなり、その分ワイヤロープのループ基端に位置する撚りストランド間に上記のスパイキを差し込むと撚りストランドの周面を損傷しやすくワイヤロープの玉掛索の強度に影響して玉掛索使用時の事故を招くおそれがあった。
【0023】
また、かかる改良スパイキを使用しない従来の一般的な玉掛索の形成作業では、ワイヤロープの表面位置で切断された各内層線や各外層線の細束ストランドは、複数の強度のあるワイヤ素線の集まりであるため、その切断部分の所謂トゲは鋭利になっており、トゲに手が直接触ると手の表面を切ったりして非常に危険である。しかも、トゲの箇所は6個の細束の内層線で6箇所、6個の細束の外層線も6箇所あり、分岐した12個の細束ストランドにより合計12箇所のトゲの箇所がワイヤロープの本線表面に分散しており、このため、ワイヤロープのループ部基端表面を掴む場合には手袋をはめないと危険であった。
【0024】
また、従来の手編み玉掛索においては、内層線及び外層線の細束は当初は本線表面のぎりぎりの位置で切断されているが、トゲの箇所が分散されている本線部分を何回も折り曲げたりするうちに、トゲが本線表面から次第に一部突出し、突出するトゲは場合によっては手袋を裂いて手を切ることもあり、非常に危険であった。
【0025】
このように玉掛索における最大の問題は、ばらばらにした複数の束ストランドの自由端をスパイキで形成した撚りストランドの間隙から挿通して引出し先端を切断するため、ワイヤロープ周面から切断部分が突出し作業中に解舒ストランドの切断部分先端が鋭利となり作業中に作業員がケガするという危険があり、更には、最終的に完成した玉掛索のループ基端にストランドの切断自由端が突出しているためワイヤロープの玉掛索を使用する使用者にも非常に危険であったということにある。
【0026】
そこで、かかるストランドの突出自由端がワイヤロープ周面から突出しないような玉掛索の形成方法が特許文献1に記載されている。
【0027】
すなわち、手編み玉掛索の本線表面に現れる所謂トゲと呼ばれるワイヤ素線の切断端面がワイヤロープの表面に現れないようにして、手編み玉掛索の本線の表面に現れる切断端面の所謂トゲによって手が切れたりするのを確実に防いで安全性を高めることのできる手編み玉掛索の製作法が出願されている(特許文献1)。
【0028】
かかる特許文献1に記載された玉掛索の製造方法は、束ストランドの切断先端、いわゆるトゲがワイヤロープ周面から突出しないようにワイヤロープの中心部に形成された芯部空隙に押込む技術が開示されているが、ワイヤロープの玉掛索の使用中に徐々に押込まれたトゲが撚りストランドの間からワイヤロープ周面に突出するおそれがあった。その原因は、差し込まれる束ストランドがワイヤロープの撚りに対して常に一定の撚り方向、例えば、逆方向のかご差し方法でのみ差し込まれて編み込まれるためであり、撚りストランドと差し込まれた束ストランドによる編み込みで形成される芯部空隙がワイヤロープ周面と連通して芯部空隙をトゲ格納空間、すなわち、閉塞空間にできないことによると考えられる。
【0029】
更には、かかるトゲがワイヤロープ表面から突出せずにワイヤロープの芯部に格納されるようにした技術は、画期的な玉掛索であるが、かかる作業は、スパイキと呼ばれる針部材をワイヤロープのループ基端とすべき位置のストランド間に挿入してストランドの間に間隙を形成する者や、各ストランド間の間隙に解除いた端末側ストランドを差し込んで通す者や、ストランドの間の間隙を形成したスパイキを締め戻すと同時に差し通した端末側ストランドを挿通のために引っ張る者など全ての工程が分担の手作業で行われるために、太い径では3人以上の作業員による手間を要していた。
【0030】
しかも、撚りストランドに間隙を形成するためのスパイキの使用やばらばらの束ストランドの自由端の取扱い等に関しても危険を伴い作業中の人身事故が後を断たないのが実情であった。
【0031】
そこで、本願の発明者は、この作業を機械で行うことができるようにすると共に、玉掛索のループ基端に最後に挿通したストランドの自由端がワイヤロープの使用中に徐々に表面から突出しないようにしてワイヤロープの使用者の安全を確保できるトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法及びワイヤロープの玉掛索製造装置及び同装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法を開発した。
【0032】
すなわち、本願発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解除決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、ループ基端のワイヤロープ表面にストランドの自由端が突出することなく一定の品質を維持しながら端部側に玉掛索を形成したワイヤロープを製作することのできるワイヤロープの玉掛索製造方法を提供することにあり、特に径が大きなワイヤロープの端部側を輪状の玉掛索に加工する場合に、機械的に作業が行え、かつ可及的に自動化して最小の作業員で玉掛索加工が行えて危険を伴うこともなく、しかも、一部のワイヤ素線がばらけたり切れたりすることがない玉掛索製造装置を提供せんとすると共に、該装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法並びに該方法で製造したトゲのないワイヤロープの玉掛索を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を内層線と外層線とに分別して12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、細束ストランド形成工程終了後に、内層線よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する内層線切断工程と、内層線切断工程終了後に、切断した内層線である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む内層線先端押込み工程と、内層線先端押込み工程終了後に、外層線よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した外層線たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する外層線切断工程と、外層線切断工程終了後に、切断した外層線たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む外層線先端押込み工程とよりなるトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法とした。
【0034】
請求項2に記載の発明は、予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を内層線と外層線とに分別して12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、細束ストランド形成工程終了後に、外層線よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する外層線切断工程と、外層線切断工程終了後に、切断した外層線である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む外層線先端押込み工程と、外層線先端押込み工程終了後に、内層線よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した内層線たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する内層線切断工程と、内層線切断工程終了後に、切断した内層線たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む内層線先端押込み工程とよりなるトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法とした。
【0035】
請求項3に記載の発明は、予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を更に2組の束に分割し、第1細束と第2細束とし、合計で12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、細束ストランド形成工程終了後に、第1細束よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する第1細束切断工程と、第1細束切断工程終了後に、切断した第1細束である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む第1細束先端押込み工程と、第1細束先端押込み工程終了後に、第2細束よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した第2細束たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する第2細束切断工程と、第2細束切断工程終了後に、切断した第2細束たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む第2細束先端押込み工程とよりなるトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法とした。
【0036】
請求項4に記載の発明は、予め自由端側を複数の束ストランドに解舒し、ループ状に折り曲げたワイヤロープのループ部を固定すると共に、固定したループ部を該ワイヤロープの伸延方向を軸として正逆回転するループ部固定回転機構と、ワイヤロープのループ部から伸延するワイヤロープ下手部分を固定するワイヤロープ固定機構と、ループ部固定回転機構によってワイヤロープのループ部基端となるべき部分にスパイキを差し込み可能としたスパイキ昇降機構と、スパイキ昇降機構によりスパイキを差し込むことによって形成された撚りストランドの間隙に人手によって挿入した一束のストランドの自由端を把持して引っ張るストランド引張り機構と、を備えたワイヤロープの玉掛索製造装置とした。
【0037】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ループ部固定回転機構は、台座の左右両側に作動シリンダによって近接離反自在に構成した挟持部材を配設すると共に、台座をモータに連動連設した連動機構を介して正逆回転自在に構成したことを特徴とする。
【0038】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ワイヤロープ固定機構は、受台とクランプシリンダーで作動する挟圧体とで構成したことを特徴とする。
【0039】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、スパイキ昇降機構は、前後に走行自在の台板にスパイキ用シリンダを配設しその下端にスパイキを昇降自在に垂設し、その下方にはスパイキ受体を昇降自在に配設して構成したことを特徴とする。
【0040】
請求項8に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、ストランド引張り機構は、ワイヤロープの本体に挿通したストランド束の先端部を把持するクランプ装置と、クランプ部をストランドの撚りの締付け方向に引っ張る引張り装置とにより構成したことを特徴とする。
【0041】
請求項9に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明において、ばらばらに解除された複数の束ストランドを一時的に係止するための複数の係止機構を設けたことを特徴とする。
【0042】
請求項10に記載の発明は、請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置を用いながら、ワイヤロープ固定機構によりワイヤロープの下手部分を固定すると共に、予め折り曲げられたワイヤロープ本体のループ部固定回転機構により固定し、ワイヤロープ本体の自由端を手作業によりストランド毎にばらばらに解舒し、次いで、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において撚られた各ストランドの間にスパイキ昇降機構によりスパイキを差し込みループ部固定回転機構によりワイヤロープを回転することによりスパイキで形成した隙間をこじ開けてその撚りストランド間の間隙にワイヤロープの撚り方向と同じ方向で一束目のストランドの先端を手動で差し込んで間隙からワイヤロープ周面に突出し、ストランド引張り機構により束ストランドの突出端部を引張り、他の各束ストランドの自由端も同様に異なるストランドの隙間を挿通して引っ張っていき、最終的には、ばらばらに解舒した各束ストランドの自由端をすべて各ストランドの異なる隙間に挿通し、かかる作業を数回繰返し、次いで、ワイヤロープの撚り方向と逆の方向に上記と同じ作業を行い、次いで、突出した各束ストランド先端を更に2組の細束に分岐し、その1組目の細束ストランドはワイヤロープ表面から所望の長さで切断すると共に、すでに切断した1組目の細束ストランドの先端の切断部分をワイヤロープ中心部に内包した心綱の一部を抜いて形成した芯部空隙中に挿入格納し、次いで、切断しない他の組の細束ストランドはワイヤロープの撚り方向と逆の方向となるようにそれぞれ異なるストランドの間隙に挿通し、かかる作業を数回繰返し、かかる数回の切断しない細束ストランドの挿通作業が完了した後は、最終的に切断していない細束ストランドの自由端を切断し、スパイキで形成したストランドの間隙から、切断部分をワイヤロープ中心部に内包した心綱の一部を抜いて形成した芯部空隙中に挿入格納し、ワイヤロープ周面から突出しない状態としたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法とした。
【0043】
請求項11に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法により製造したトゲのないワイヤロープの玉掛索とした。
【発明の効果】
【0044】
請求項1に記載の発明によれば、ワイヤロープのループ基端部において、束ストランドや細束ストランドを撚りストランド間に挿通するに際し、まず、ワイヤロープの撚りと同じ方向の撚りに沿って束ストランドを撚りストランド間に挿通して編み込んでいき、この作業を複数回行い、次いで、ワイヤロープの撚りと逆の方向に沿って束ストランドを編み込んでいき、その後、内層線と外層線とに分別した後の外層線は、ワイヤロープの撚りと逆方向で撚りストランド間に挿通して編み込んでいくものである。従って、ワイヤロープの撚りと同じ方向と逆方向とにおいて、束ストランドの編み込みがなされることになり、ワイヤロープの芯部空隙中に押込んだ束ストランドや細束ストランドの切断先端部を格納した場合、ワイヤロープの撚りの方向と逆方向に交差した状態で束ストランドや細束ストランドが編み込まれて芯部空隙を形成することになる。すなわち、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが芯部空隙の周囲を囲繞した状態となり、ストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように封止することができる効果がある。そして、ワイヤロープの玉掛索として使用時に引張り応力が掛かると、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが縮小し、すなわち、引張り応力が大きいほど網目がより緊密に小さくなり、間隙のない円周状の側壁を形成した状態となり、芯部空隙にストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように完全に封入することができる効果がある。
【0045】
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤロープのループ基端部において、束ストランドや細束ストランドを撚りストランド間に挿通するに際し、まず、ワイヤロープの撚りと同じ方向の撚りに沿って束ストランドを撚りストランド間に挿通して編み込んでいき、この作業を複数回行い、次いで、ワイヤロープの撚りと逆の方向に沿って束ストランドを編み込んでいき、その後、内層線と外層線とに分別した後の内層線は、ワイヤロープの撚りと逆方向で撚りストランド間に挿通して編み込んでいくものである。従って、ワイヤロープの撚りと同じ方向と逆方向とにおいて、束ストランドの編み込みがなされることになり、ワイヤロープの芯部空隙中に押込んだ束ストランドや細束ストランドの切断先端部を格納した場合、ワイヤロープの撚りの方向と逆方向に交差した状態で束ストランドや細束ストランドが編み込まれて芯部空隙を形成することになる。すなわち、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが芯部空隙の周囲を囲繞した状態となり、ストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように封止することができる効果がある。そして、ワイヤロープの玉掛索として使用時に引張り応力が掛かると、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが縮小し、すなわち、引張り応力が大きいほど網目がより緊密に小さくなり、間隙のない円周状の側壁を形成した状態となり、芯部空隙にストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように完全に封入することができる効果がある。
【0046】
請求項3に記載の発明によれば、ワイヤロープのループ基端部において、束ストランドや細束ストランドを撚りストランド間に挿通するに際し、まず、ワイヤロープの撚りと同じ方向の撚りに沿って束ストランドを撚りストランド間に挿通して編み込んでいき、この作業を複数回行い、次いで、ワイヤロープの撚りと逆の方向に沿って束ストランドを編み込んでいき、その後、6組の各束ストランドを更に2組の束に分割し、第1細束と第2細束とした後の第2細束は、ワイヤロープの撚りと逆方向で撚りストランド間に挿通して編み込んでいくものである。従って、ワイヤロープの撚りと同じ方向と逆方向とにおいて、束ストランドの編み込みがなされることになり、ワイヤロープの芯部空隙中に押込んだ束ストランドや細束ストランドの切断先端部を格納した場合、ワイヤロープの撚りの方向と逆方向に交差した状態で束ストランドや細束ストランドが編み込まれて芯部空隙を形成することになる。すなわち、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが芯部空隙の周囲を囲繞した状態となり、ストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように封止することができる効果がある。そして、ワイヤロープの玉掛索として使用時に引張り応力が掛かると、網目状になって交差した束ストランドや細束ストランドが縮小し、すなわち、引張り応力が大きいほど網目がより緊密に小さくなり、間隙のない円周状の側壁を形成した状態となり、芯部空隙にストランド切断先端部たるトゲを封じ込めてワイヤロープの外部に突出できないように完全に封入することができる効果がある。
【0047】
請求項4に記載の発明によれば、予め自由端側を複数の束ストランドに解舒してループ状に折り曲げたワイヤロープのループ部を固定し、固定したループ部を該ワイヤロープの伸延方向を軸として正逆回転するループ部固定回転機構と、該ループ部固定回転機構で正逆回転自在に固定したワイヤロープのループ部から伸延するワイヤロープ下手部分を固定するワイヤロープ固定機構と、ストランド間隙に針部材を差し込みループ部固定回転機構によってワイヤロープのループ部基端となるべき部分を回転させてストランドの撚りを一部解舒し間隙を大きく拡げるためにワイヤロープ上方に昇降自在に配設しスパイキ昇降機構と、スパイキ昇降機構により針部材を差し込むことによって形成された撚りストランドの隙問に人手によって挿入した一束のストランドの自由端を把持して引っ張るストランド引張り機構とを備えたために、ワイヤロープにスパイキを差し込むためのストランド間の間隙を機械的に形成でき、人手による場合に比しスパイキの差込作業を安全に、かつ、容易に行える効果があり、更には、かかるスパイキの差込作業中に、ワイヤロープ固定機構でループ部から伸延するワイヤロープ下手部分を確実に固定することができるため、スパイキの差込作業を更に安全に行いやすくなり、更には、撚りストランド間の間隙に挿入した束ストランドをストランド引張り機構によって機械的に引っ張ることができるので、ワイヤロープに差し込んだストランドをワイヤロープの本線を構成する撚りストランドとより緊密に撚り合わせることができる効果がある。
【0048】
請求項5に記載の発明によれば、ループ部固定回転機構は、特に左右の挟持部材を近接離反自在に構成し、作動シリンダで近接離反可能に構成しているので、機械的に確実にワイヤロープのループ部を把持して、その後の丸差し作業や半差し作業を行いやすくすることができる効果がある。
【0049】
請求項6に記載の発明によれば、ワイヤロープ固定機構は、ワイヤロープを確実に固定してその後のスパイキの差込作業やストランドのワイヤロープの挿入作業を行いやすくできる効果がある。
【0050】
請求項7に記載の発明によれば、スパイキ昇降機構は、前後走行自在とした台板にスパイキを下端に有したスパイキ用シリンダを設置し、スパイキ用シリンダでスパイキを降下可能としているため、大径のワイヤロープにスパイキで間隙を形成する作業が容易となり、また、スパイキの位置を設定するに際しては、台板を前後に走行させながら所定のスパイキ差込位置を設定できるので、正確なスパイキ差込作業が行え、次のストランド挿入作業を容易にすることができる効果がある。
【0051】
請求項8に記載の発明によれば、ストランド引張り機構は、ワイヤロープの本線に挿入したストランドの先端部を把持するためのクランプ装置と、クランプ装置をストランドの撚りの締付け方向に引っ張ることができる機構を設けたので確実にかつ安全に、しかも強い力でストランドの先端部を引っ張ることができ、撚りの緊締を強くしてループ部基端とのワイヤロープの本線との連結を更に強固に行うことができる効果がある。
【0052】
また、請求項9に記載の発明によれば、端末側が解除かれた複数本のストランドを一時的に係止する複数の係止機構を設けた場合には、ワイヤロープ本体側のループ部基端の撚りのストランド間に差し込まない他のストランド自由端を一時的に係止機構に係止しておく。このように、ワイヤロープ本体側のループ部基端の撚りのストランド間に差し込まない他のストランドがワイヤロープのループ部の回転時に、作業の邪魔になったり、不規則な動きをする他の束ストランドによってケガするのを防ぐことができる効果がある。
【0053】
請求項10に記載の発明によれば、請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置を用いることにより、ループ部の基端部を束ストランドとしてワイヤロープの本線の撚りストランド間に撚りと同じ方向で挿通連結し、その後は、撚りと逆の方向で束ストランドを挿通し、かつ、途中でばらばらの複数組の束ストランドを更に2組に2分して一方の細束ストランドは切断し、他方の細束ストランドは撚りと逆方向で異なるストランド間隙に挿通して、最終的に切断したストランドの先端部はワイヤロープ中心部に内包した心綱の一部を抜いて形成した芯部空間中に挿入格納するものであるため、従来のいわゆる「トゲ」と称されていたストランドの切断部分がワイヤロープの表面に突出することなく、芯部空隙中にトゲを封じ込めて使用に際し安全なワイヤロープを製造することができる効果ある。
特に、請求項4に記載の製造装置を用いるために、ストランドの挿入作業を行うための間隙の形成が機械的に安全にかつ正確に行えると共にストランドの引張り作業も機械的に確実に行えるためにワイヤロープの玉掛索の強度を向上し、かつ安全確実に製造することができる効果がある。
【0054】
請求項11に記載の発明によれば、トゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法により製造したトゲのないワイヤロープの玉掛索であるため、心綱と共にストランドの自由端も芯部空隙中に戻すことになり、芯部が心綱と鋼線の芯とで構成され、ワイヤロープの表面にストランドの切断部分が突出することなく、しかも、芯部の空洞部分を埋めることになり、使用時の安全性と共にワイヤロープの鋼性及び強度を飛躍的に向上しうる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す斜視図である。
【図2】ワイヤロープの端部を示す分解斜視図である。
【図3】束ストランドをワイヤロープの撚りストランド間に通し抜き出す準備作業工程を示す図である。
【図4】1組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図5】2組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図6】3組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図7】4組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図8】5組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図9】6組目の束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す巻差し工程を示す図である。
【図10】束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出すかご差し工程を示す図である。
【図11】細束ストランド形成工程、内層線切断工程、内層線先端押込み工程及び細束ストランドかご差し工程を示す図である。
【図12】細束ストランドをワイヤロープの本線に通し抜き出す細束ストランドかご差し工程を示す図である。
【図13】細束ストランドをワイヤロープの本線に収納する外層線先端押込み工程を示す図である。
【図14】束ストランドをワイヤロープの撚りストランド間に通し抜き出す他の準備作業工程を示す図である。
【図15】かご差し作業終了後のワイヤロープと細束ストランドの状態を示めす斜視図である。
【図16】1本の束ストランドを内外層線に分けた状態を示す斜視図である。
【図17】ワイヤロープの心綱にスパイキを差し入れた状態を示す斜視図である。
【図18】1組の細束ストランドをワイヤロープの本線に収納する状態を示す斜視図である。
【図19】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す斜視図である。
【図20】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す平面図である。
【図21】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す右側側面図である。
【図22】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す左側側面図である。
【図23】本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す背面図である。
【図24】図20におけるB−B線断面を示す断面図である。
【図25】図20におけるA−A線断面を示す断面図である。
【図26】ループ部固定回転機構の要部を示す斜視図である。
【図27】ループ部固定回転機構の要部を示す斜視図である。
【図28】ワイヤロープ固定機構の要部を示す正面図である。
【図29】スパイキ受体を示す斜視図である。
【図30】クランプ装置の使用状態を示す斜視図である。
【図31】スパイキをワイヤロープに差し通した状態を示す斜視図である。
【図32】スパイキの作動状態を示す工程図である。
【図33】スパイキの作動状態を示す工程図である。
【図34】スパイキの作動状態を示す工程図である。
【図35】本ワイヤロープ玉掛索製造装置で製造したトゲのない玉掛ワイヤロープを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
一般に、ワイヤロープを用いて手編み玉掛索を製作する方法として以下の技術が知られている。即ち、「巻差し方法」と「かご差し方法」が用いられる。このうち、「巻差し方法」は、ワイヤロープの先端をストランドの単位にばらばらに解舒して、そのストランドをワイヤロープの撚りストランドの間に通して、ワイヤロープの撚り方向と「同方向」に巻いていく方法である。
【0057】
「かご差し方法」は、ワイヤロープの先端をストランドの単位に解舒して、その束ストランドをワイヤロープの撚りストランドの間に通して、ワイヤロープの撚り方向と「反対方向」に巻いていく方法である。
【0058】
このように巻差し方法とかご差し方法とは、ワイヤロープの撚り方向と同一か反対かによって区別する。
【0059】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。以下に、本願発明の玉掛索を製造する方法について説明する。
【0060】
I.[束ストランド形成工程]
束ストランド形成工程について説明する。図2に示すように、先ずワイヤロープ11の自由端部側に輪状のループ部12を作る。
【0061】
すなわち、ワイヤロープ11の先端側を折り返し、折り返した先端側でループ部12を構成すると同時に折り返したワイヤロープ11の先端部分において、6組の束ストランド1〜6とその中心にある心綱7とをばらばらに分ける。
【0062】
II.[準備作業工程]
ここで、ワイヤロープ11の本線11aの撚りストランドA〜F内に各束ストランド1〜6を通す作業(いわゆる巻差し方法による束ストランド挿通作業)の前段階としての準備作業工程を行う。すなわち、この準備作業工程は、地差し法による口入れと称するものであり、6組の各束ストランド1〜6を図3に示すように、撚りストランドA〜Fの適宜の間にスパイキ145を入れて、撚りストランドA〜F間の間隙に挿通する。この作業を図3に基づき詳説する。この工程は次工程の巻差し工程を行うためにばらばらの束ストランド1〜6の根元を撚りストランドA〜Fに係合し固定して束ストランドの巻差しが弛緩しないようにするためのものである。
【0063】
(1)束ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0064】
(2)束ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0065】
(3)束ストランド3をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドD・Eの間を抜く。
【0066】
(4)束ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。ここで通したストランド4を締め込む。
【0067】
(5)撚りストランドA・Fの間から撚りストランドB・Cの間にスパイキを差してストランドA・Fの間に心綱7を入れる。
【0068】
(6)束ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して撚りストランドA・Fの間を抜くと同時に、ストランドA〜Fの撚りを戻す。
【0069】
(7)束ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して撚りストランドA・Bの間に抜くと同時に、ストランドA〜Fの撚りを戻す。そして、ストランドA〜Fの撚りを戻した部分をハンマで軽く均す。
【0070】
図3を用いて説明した地差し方法は、束ストランドを5対1に分けて撚りストランドに挿通したが、その他に束ストランドを4対2に分けて行う地差し方法と、束ストランドを3対3に分けて行う地差し方法があり、これらの方法においても本実施形態のワイヤロープの玉掛索を得るための準備作業工程となり得る。
【0071】
他の実施例として上記地差し法による口入れ方法の他にフレミッシュ法による口入れ方法がある。ここでは、図14に基づきフレミッシュ法を詳説する。なお、フレミッシュ法には、束ストランドを3対3の2組に分けて行う方法と、4対2の2組に分けて行う方法の2種類があり、ここでは、束ストランドを3対3の2組に分けて行う方法について説明する。
【0072】
(1)ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0073】
(2)ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドA・Bの間を抜く。
【0074】
(3)ストランド3をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0075】
(4)ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0076】
(5)ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して撚りストランドD・Eの間を抜く。
【0077】
(6)ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して撚りストランドC・Dの間に抜く。
【0078】
このように6組の各束ストランド1〜6がそれぞれ撚りストランドA〜F間に挿通された状態となりフレミッシュ法による口入れを完了する(図14参照)。
【0079】
III.[巻差し工程]
このように6組の各束ストランド1〜6がそれぞれ撚りストランドA〜F間に挿通され準備作業工程が終了した後(図3参照)に、以下に示す巻差し方法による6組の各束ストランド1〜6の挿通作業が行われる。
【0080】
(1)例えば、図4に示すように、1組目の束ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。ここで通した束ストランド1を締め込む。
【0081】
(2)図5に示すように、2組目の束ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドC・Dの間を抜く。ここで通した束ストランド2を締め込む。
【0082】
(3)図6に示すように、3組目の束ストランドとしてのストランド3をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドD・Eの間を抜く。ここで通した束ストランド3を締め込む。
【0083】
(4)図7に示すように、4組目の束ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。ここで通したストランド4を締め込む。
【0084】
(5)図8に示すように、5組目の束ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して撚りストランドA・Fの間を抜くと同時に、ストランドA〜Fの撚りを戻す。ここで通した束ストランド5を締め込む。
【0085】
(6)図9に示すように、6組目の束ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して撚りストランドA・Bの間に抜くと同時に、ストランドA〜Fの撚りを戻す。ここで通した束ストランド6を締め込む。
【0086】
このようにして1回目の6組の束ストランド1〜6の巻差し方法による挿通作業が完了する。
【0087】
次に、同じ手順(1)〜(6)で2回目の巻差し方法による挿通作業を完了する。
【0088】
更に、同じ手順(1)〜(6)で3回目の巻差し方法による挿通作業を完了して次のかご差し工程を行う。
【0089】
なお、1回目〜3回目の巻差し方法による挿通作業においては、1組目の束ストランド1を1回目で挿通した同じ撚りストランドの間隙に、2回目の束ストランド1も、3回目の束ストランド1も挿通するものであり、1回目の束ストランド1は、ワイヤロープの撚りの第1旋回目部分における撚りストランドの間隙に挿通されるものであり、2回目の束ストランド1は、撚りの第2旋回目部分における同じ撚りの間隙に挿通されるものであり、3回目の束ストランド1は、撚りの第3旋回目部分における同じ撚りストランドの間隙に挿通されるものである。
【0090】
従って、撚りの第1旋回目部分の上手側に、撚りの第2旋回目部分があり、更にその上手側に撚りの第3旋回目部分が位置し、各旋回目毎に1組目の束ストランド1が挿通される。
【0091】
かかる手順は、図5に示すように2組目の束ストランド2においても同じように撚りの第1旋回目部分、第2旋回目部分、第3旋回目部分にそれぞれ挿通される。
【0092】
以下、3組目以下も同じように6組目までの束ストランド3〜6が図6〜図9に示すように各旋回目部分に挿通されて、各組の束ストランド3〜6の3回の巻差し作業が完了する。
【0093】
IV.[かご差し工程]
次いで、各組の束ストランド1〜6を「かご差し方法」による作業で撚りストランド間に挿通する。
【0094】
すなわち、ワイヤロープの撚りと反対に巻いていくかご差し方法を1回のみ実施するかご差し工程を行う。図10に示すのは1回のみ行うかご差し方法による各組の束ストランド1〜6の挿通状態である。以下詳説する。
【0095】
(1)例えば、1組目の束ストランド1をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0096】
(2)2組目の束ストランド2をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0097】
(3)3組目の束ストランド3をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドA・Bの間を抜く。
【0098】
(4)4組目の束ストランド4をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0099】
(5)5組目の束ストランド5をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0100】
(6)6組目の束ストランド6をワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して撚りストランドD・Eの間に抜く。
【0101】
V.[細束ストランド形成工程]
以上で6組の束ストランド1〜6は、巻差し、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの挿通作業が完了する。そして、束ストランド1〜6の各突出端を内層線の細束ストランド1a〜6aと、外層線の細束ストランド1b〜6bとに分別する細束ストランド形成工程を行う。一般にストランド単体を構成する複合線は、内外層線の多層線よりなり、これらを内層線、外層線と称しており、ここでは、これら内外層線に分別する作業を行う。
【0102】
VI.[内層線切断工程]
6組の束ストランド1〜6の内層線の細束ストランド1a〜6aは、ワイヤロープ表面の位置で切断する内層線切断工程を行い、6組の外層線、すなわち6組の細束ストランド1b〜6bを残す(図11、図15及び図16参照)。このとき、撚りストランドA〜F間から心綱7を引き出し切断(図17参照)して、同撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いた箇所に芯部空隙11bを形成する。
【0103】
VII.[内層線先端押込み工程]
切断された6組の細束ストランドの先端切断部分、いわゆる内層線トゲ6本は、撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いて生じた芯部空隙11b中に押し込む内層線先端押込み工程を行う。
【0104】
VIII.[細束ストランドかご差し工程]
突出したままのかかる外層線の細束ストランド1b〜6bは、半差しによるかご差し方法による作業で撚りストランドA〜F間に挿通する細束ストランドかご差し工程を行う。すなわち、図11に示すように1組目〜6組目の外層線の細束ストランド1b〜6bは、所定の撚りストランドA〜F間に、撚りと反対方向に巻回しながら挿通する。
【0105】
(1)例えば、1組目の細束ストランド1bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0106】
(2)2組目の細束ストランド2bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0107】
(3)3組目の細束ストランド3bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドD・Eの間を抜く。
【0108】
(4)4組目の細束ストランド4bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0109】
(5)5組目の細束ストランド5bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0110】
(6)6組目の細束ストランド6bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して撚りストランドA・Bの間に抜く。
【0111】
以上で6組の外層線の細束ストランド1b〜6bは、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの1回目の挿通作業が完了する。
【0112】
次に、同じ手順で6組の外層線の細束ストランド1b〜6bの2回目のかご差し方法による作業が行われる。図12を基に詳説する。
【0113】
(1)例えば、1組目の細束ストランド1bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0114】
(2)2組目の細束ストランド2bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0115】
(3)3組目の細束ストランド3bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドA・Bの間を抜く。
【0116】
(4)4組目の細束ストランド4bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0117】
(5)5組目の細束ストランド5bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0118】
(6)6組目の細束ストランド6bをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して撚りストランドD・Eの間に抜く。
【0119】
以上で6組の外層線の細束ストランド1b〜6bは、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの2回目の挿通作業が完了する。
【0120】
以上の細束ストランドかご差し工程において、半差しにおけるかご差し作業は2回行われるが、特に2回に限定されるものではなく2回以上であってもよい。
【0121】
IX.[外層線切断工程及び外層線先端押込み工程]
2〜3回のかご差しの作業が終了するとワイヤロープ表面位置において突出した6組の外層線の細束ストランド1b〜6bを切断する外層線切断工程を行う。切断した外層線の切断部分は、撚りストランドA〜Fの芯部空隙11b中に押込む外層線先端押込み工程を行う。
【0122】
例えば、図13に示すように、6組の外層線の各細束ストランド1b〜6bのうち2組ずつを束ねて根元をテーピングし、新たに3組のテーピングストランド束を形成し、その後、テーピングの先端から突出した細束ストランドを切断して3組のテーピング束ストランドの先端部分を芯部空隙11b内に差し込む(図18参照)。そして、外部に引出していた心綱7を芯部空隙11bに戻す。なお、図13で説明した6組の外層線の細束ストランド1b〜6bを2本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、6組の外層線の細束ストランドをばらばらの状態で芯部空隙11bに収めるようにしてもよし、また、6組の外層線の細束ストランドを3本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、さらに、6組の外層線の細束ストランドを1つに束ねて芯部空隙11bに収めるようにしてもよい。
【0123】
以上のI〜IXの各工程を経て、トゲなしのワイヤロープ玉掛索が完成する。
【0124】
[他の玉掛索製造方法]
以下に、本願発明の他の玉掛索を製造する方法について説明する。本願発明の他の玉掛索製造方法は、上述した玉掛索製造方法におけるI.束ストランド形成工程〜V.細束ストランド形成工程まで同様に行い、その後の各工程が次ぎのように異なる。すなわち、各工程は、VI-a.外層線切断工程と、VII-a.外層先端押込み工程と、VIII-a.細束ストランドかご差し工程と、IX-a.内層線切断工程と内層線先端押込み工程とにおいて異なることとなる。
【0125】
すなわち、上記実施例VI〜IXの各工程中、特に細束ストランド形成工程で内外層の細束ストランドに分割し、内層線の細束ストランド1a〜6aを先に切断し、切断部分の内層線トゲ6本を芯部空隙11bに押し込み、その後に外層線の細束ストランド1b〜6bのかご差し工程を行い、次いで切断して先端押込み工程を行なうものであるが、以下の他の実施例では、上記実施例の内層線と外層線との押し込み工程の順序を逆にして、先に外層線の細束ストランド1b〜6bを切断し、芯部空隙11bに押し込み、その後に内層線のかご差し工程を行い、次いで切断して先端押込み工程を行うようにした。
【0126】
先ず、本願発明の他の玉掛索製造方法におけるI.束ストランド形成工程〜V.細束ストランド形成工程まで説明については、上述した玉掛索製造方法と同一であり重複説明を省略する。
【0127】
VI-a.[外層線切断工程]
6組の束ストランド1〜6の外層線の細束ストランド1b〜6bは、ワイヤロープ表面の位置で切断する外層線切断工程を行い、6組の内層線、すなわち6組の細束ストランド1a〜6aを残す。このとき、撚りストランドA〜F間から心綱7を引き出し切断して、同撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いた箇所に芯部空隙11bを形成する。
【0128】
VII-a.[外層線先端押込み工程]
切断された6組の細束ストランドの先端切断部分、いわゆる外層線トゲ6本は、撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いて生じた芯部空隙11b中に押し込む外層線先端押込み工程を行う。
【0129】
VIII−a.[細束ストランドかご差し工程]
突出したままのかかる内層線の細束ストランド1a〜6aは、半差しによるかご差し方法による作業で撚りストランドA〜F間に挿通する細束ストランドかご差し工程を行う。すなわち、1組目〜6組目の内層線の細束ストランド1a〜6aは、所定の撚りストランドA〜F間に、撚りと反対方向に巻回しながら挿通する。
【0130】
(1)例えば、1組目の細束ストランド1aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0131】
(2)2組目の細束ストランド2aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0132】
(3)3組目の細束ストランド3aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドD・Eの間を抜く。
【0133】
(4)4組目の細束ストランド4aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0134】
(5)5組目の細束ストランド5aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0135】
(6)6組目の細束ストランド6aをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して撚りストランドA・Bの間に抜く。
【0136】
以上で6組の内層線の細束ストランド1a〜6aは、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの1回目の挿通作業が完了する。
【0137】
次に、同じ手順で6組の内層線の細束ストランド1a〜6aは、2回目のかご差し方法による作業が行われる。
【0138】
以上の細束ストランドかご差し工程において、半差しにおけるかご差し作業は2回行われるが、特に2回に限定されるものではなく2回以上であってもよい。
【0139】
IX-a.[内層線切断工程及び内層線先端押込み工程]
2〜3回のかご差しの作業が終了するとワイヤロープ表面位置において突出した6組の内層線の細束ストランド1a〜6aを切断する内層線切断工程を行う。切断した内層線の切断部分は、撚りストランドA〜Fの芯部空隙11b中に押込む内層線先端押込み工程を行う。
【0140】
例えば、6組の内層線の各細束ストランド1a〜6aのうち2組ずつを束ねて根元をテーピングし、新たに3組のテーピングストランド束を形成し、その後、テーピングの先端から突出した細束ストランドを切断して3組のテーピング束ストランドの先端部分を芯部空隙11b内に差し込む。そして、外部に引出していた心綱7を芯部空隙11bに戻す。なお、6組の内層線の細束ストランド1a〜6aを2本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、6組の内層線の細束ストランドをばらばらの状態で芯部空隙11bに収めるようにしてもよい。また、6組の内層線の細束ストランドを3本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、さらに、6組の内層線の細束ストランドを1つに束ねて芯部空隙11bに収めるようにしてもよい。
【0141】
以上のI〜V、VI−a〜IX−aの各工程を経て、トゲなしのワイヤロープ玉掛索が完成する。
【0142】
[更に他の玉掛索製造方法]
以下に、本願発明の更に他の玉掛索製造方法について説明する。本願発明の更に他の玉掛索製造方法は、上述した玉掛索製造方法におけるI.束ストランド形成工程〜IV.かご差し工程まで同様に行い、その後の各工程が次ぎのように異なる。すなわち、各工程は、V-b.細束ストランド形成工程と、VI-b.第1細束切断工程と、VII-b.第1細束先端押込み工程と、VIII-b.細束ストランドかご差し工程と、IX-b.第2細束切断工程と第2細束先端押込み工程とにおいて異なることとなる。
【0143】
この他の実施例では、巻差し、かご差しにより撚りストランドへの挿通作業終了後に、細束ストランド形成工程において、特に内層線と外層線との細束ストランド1a〜6a、1b〜6bに分割するのではなく、束ストランド1〜6の各突出端のそれぞれを任意に2束の細束ストランドに分割して、先ずその一方の束の細束ストランド(6組)を先に切断し、芯部空隙11bに押し込み、その後に他方の束の細束ストランド(6組)のかご差し工程を行い、次いで切断し、先端押込み工程を行うようにした。
【0144】
先ず、本願発明の更に他の玉掛索製造方法におけるI.束ストランド形成工程〜IV.細束ストランド形成工程まで説明については、上述した玉掛索製造方法と同一であり重複説明を省略する。
【0145】
V-b.[細束ストランド形成工程]
以上で6組の束ストランド1〜6は、巻差し、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの挿通作業が完了する。そして、束ストランド1〜6の各突出端を更に2組の束に分割し、第1細束と第2細束とする。すなわち、第1細束の細束ストランド1c〜6cと、第2細束の細束ストランド1d〜6dとに2分割する細束ストランド形成工程を行う。
【0146】
VI-b.[第1細束切断工程]
6組の束ストランド1〜6の第1細束の細束ストランド1c〜6cは、ワイヤロープ表面の位置で切断する第1細束切断工程を行い、6組の第2細束、すなわち6組の細束ストランド1d〜6dを残す。このとき、撚りストランドA〜F間から心綱7を引き出し切断して、同撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いた箇所に芯部空隙11bを形成する。
【0147】
VII-b.[第1細束先端押込み工程]
切断された6組の細束ストランドの先端切断部分、いわゆる第1細束トゲ6本は、撚りストランドA〜Fの中心部の心綱7の一部を抜いて生じた芯部空隙11b中に押し込む第1細束先端押込み工程を行う。
【0148】
VIII-b.[細束ストランドかご差し工程]
突出したままのかかる第2細束の細束ストランド1d〜6dは、半差しによるかご差し方法による作業で撚りストランドA〜F間に挿通する細束ストランドかご差し工程を行う。すなわち、1組目〜6組目の第2細束の細束ストランド1d〜6dは、所定の撚りストランドA〜F間に、撚りと反対方向に巻回しながら挿通する。
【0149】
(1)例えば、1組目の細束ストランド1dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドD・Eの間から挿入して心綱7の左を通して撚りストランドB・Cの間を抜く。
【0150】
(2)2組目の細束ストランド2dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドE・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドC・Dの間を抜く。
【0151】
(3)3組目の細束ストランド3dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Fの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドD・Eの間を抜く。
【0152】
(4)4組目の細束ストランド4dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA・Bの間から挿入して心綱7の右を通して撚りストランドE・Fの間を抜く。
【0153】
(5)5組目の細束ストランド5dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドB・Cの間から挿入して撚りストランドA・Fの間を抜く。
【0154】
(6)6組目の細束ストランド6dをワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドC・Dの間から挿入して撚りストランドA・Bの間に抜く。
【0155】
以上で6組の第2細束の細束ストランド1d〜6dは、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの1回目の挿通作業が完了する。
【0156】
次に、同じ手順で6組の第2細束の細束ストランド1d〜6dは、2回目のかご差し方法による作業が行われ、かご差しの各方法による撚りストランドA〜Fへの2回目の挿通作業が完了する。
【0157】
以上の細束ストランドかご差し工程において、半差しにおけるかご差し作業は2回行われるが、特に2回に限定されるものではなく2回以上であってもよい。
【0158】
IX-b.[第2細束切断工程及び第2細束先端押込み工程]
2〜3回のかご差しの作業が終了するとワイヤロープ表面位置において突出した6組の第2細束の細束ストランド1d〜6dを切断する第2細束切断工程を行う。切断した第2細束の切断部分は、撚りストランドA〜Fの芯部空隙11b中に押込む第2細束先端押込み工程を行う。
【0159】
例えば、6組の第2細束の各細束ストランド1d〜6dのうち2組ずつを束ねて根元をテーピングし、新たに3組のテーピングストランド束を形成し、その後、テーピングの先端から突出した細束ストランドを切断して3組のテーピング束ストランドの先端部分を芯部空隙11b内に差し込む。そして、外部に引出していた心綱7を芯部空隙11bに戻す。なお、6組の第2細束の細束ストランド1d〜6dを2本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、6組の外層線の細束ストランドをばらばらの状態で芯部空隙11bに収めるようにしてもよい。また、6組の第2細束の細束ストランドを3本ずつ束ねて芯部空隙11bに収めるようにしたが、さらに、6組の第2細束の細束ストランドを1つに束ねて芯部空隙11bに収めるようにしてもよい。
【0160】
以上のI〜IV、V−b〜IX−bの各工程を経て、トゲなしのワイヤロープ玉掛索が完成する。
【0161】
以下に、上記したトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法を実施するための製造装置について具体的に説明する。なお、このワイヤロープの玉掛索製造装置は、従来のトゲのある玉掛索製造方法の実施にも使用することができる。
【0162】
かかるワイヤロープの玉掛索製造装置は、ワイヤロープ11の本線11aにループ部に基端部を形成すべく本線11a側の撚りストランドA〜F間にばらばらにした複数の束ストランド1〜6を作業員が手で差し込んで通す作業以外の他の作業が行えるものである。
【0163】
すなわち、ループ部固定回転機構110によりワイヤロープ11のループ部12を固定し回転して11a側に撚り解舒を行う作業と、ワイヤロープ固定機構130によりワイヤロープの本線11aを固定する作業と、スパイキ145で本線11a側に間隙Sを形成する作業と、ストランド引張り機構160により間隙Sに差し込んだ束ストランド1〜6の先端を引っ張る作業等を機械的に行うものである。
【0164】
以下に、ワイヤロープ玉掛索製造装置101の構造について説明する。
図1及び図19は本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す斜視図、図20は本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す平面図、図21は本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す右側側面図、図22は本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す左側側面図、図23は本実施形態のワイヤロープ玉掛索製造装置を示す背面図、図24は図20におけるB−B線断面を示す断面図、図25は図20におけるA−A線断面を示す断面図、図26及び図27はループ部固定回転機構の要部を示す斜視図、図28はワイヤロープ固定機構の要部を示す正面図、図29はスパイキ受体を示す斜視図、図30はクランプ装置の使用状態を示す斜視図、図31はスパイキをワイヤロープに差し通した状態を示す斜視図、図32、図33及び図34はスパイキの作動状態を示す工程図、図35は本ワイヤロープ玉掛索製造装置で製造したトゲのない玉掛ワイヤロープを示す平面図である。
【0165】
ワイヤロープ玉掛索製造装置101は、予め自由端側を複数の束ストランド1〜6に解舒して、ループ状に折り曲げたワイヤロープ11のループ部12を固定すると共に、固定したループ部12を該ワイヤロープ11の伸延方向を軸として正逆回転するループ部固定回転機構110と、ワイヤロープ11のループ部12から伸延するワイヤロープ下手部分を固定するワイヤロープ固定機構130と、ループ部固定回転機構110によってワイヤロープ11のループ部基端となるべき部分にスパイキ145を差し込み可能としたスパイキ昇降機構140と、スパイキ昇降機構140によりスパイキ145を差し込むことによって形成された撚りストランドA〜Fの間隙S(図31参照)に人手によって挿入した複数の束ストランド1〜6の自由端を把持して引っ張るストランド引張り機構160と、より構成されている。
【0166】
次に各機構について説明する。
【0167】
(1)ループ部固定回転機構110は、ループ部12を載置する台座112と、台座112の両側に近接離反自在に設けた挟持部材113と、挟持部材113を近接離反自在に作動させるために台座112の裏面に配設された作動シリンダ114と、台座112の先端部に連結部材115を介して連結した回転軸116と、回転軸116に連動機構117を介して連動連設したモータ118とよりなる。
【0168】
挟持部材113は、左右二個配設されており断面略コ字状に形成された挾持面を対峙して設けており、断面略コの字状の挾持面の凹部113a(図27参照)には、ループ部12を形成するワイヤロープ11が遊嵌されるように構成されており、また、挟持部材113の後端部には、ループ部12の基部となるべき個所を押圧挾持するための突部材119が突設されている。かかる構成により、ワイヤロープ11のループ部12は、台座112上に載置されて、挟持部材113により挾持固定される。
【0169】
また、台座112の裏面には作動シリンダ114(図26及び図27参照)を配設している。
【0170】
すなわち、作動シリンダ114は、両端より左右ピストンロッド120,120を伸縮自在に突出し、左右ピストンロッド120,120の先端にはブラケット121,121を介して左右挟持部材113,113が連設されている。
【0171】
従って、挟持部材113,113は、台座112上において作動シリンダ114の作動により近接離反自在に作動することによりワイヤロープ11のループ部12を挾持固定する。
【0172】
(2)ワイヤロープ固定機構130は、ワイヤロープ11のループ部12から延伸する本線を固定するための機構である。
【0173】
すなわち、全体フレーム102に設けられたクランプ部材131と、クランプ部材131を作動させるクランプ用シリンダ132とより構成されており、クランプ部材131は、受台133とその上方で昇降する挾圧体134とより構成されている。
【0174】
挾圧体134は、縦型に設置されたクランプ用シリンダ132のピストンロッド135先端に略L字状に連設されている(図24及び図28参照)。
【0175】
このように、ワイヤロープ11の本線11aは受台133と挾圧体134とに挾持固定される。
【0176】
(3)スパイキ昇降機構140は、全体フレーム102に配設した左右の走行レール142,142に沿って前後に走行自在に載置した台板141と、スパイキ用シリンダ143と、スパイキ用シリンダ143のピストンロッド144に垂設したスパイキ145と、台板141と一体に走行すべく台板141側端に連設しコ字状フレーム146を介してスパイキ145の垂直下方に配設したスパイキ受体147とより構成される。なお、141aは台板141下面に設けた摺動コマを示し走行レール上を摺動する。
【0177】
スパイキ受体147は、ゴムで筒状に形成しており、スパイキ145が降下した場合にスパイキ先端を筒状内部148(図29参照)によって受止めることができるように構成している。
【0178】
スパイキ受体147は、下部に断面略コ字状の基板153を有し、基板153上に昇降シリンダ150を載置し、昇降シリンダ150のロッド151先端にスパイキ受板147aを連設して構成している。スパイキ受板147a上には、断面V型の受溝149aを形成したストランド保持体149を載置し、撚りストランドにスパイキ145を差し込むために受溝149aにワイヤロープ11の本線11aを載置固定するように構成している。
【0179】
しかも、スパイキ受体147は、全体フレーム102の下部に敷設した154上をスパイキ昇降機構140と共に走行するように構成している。
【0180】
すなわち、基板153の下底面には摺動コマ153aを設け、摺動コマ153aが左右の走行レール154上を滑動できるように構成している。
【0181】
従って、スパイキ昇降機構140とスパイキ受体147とは、上下の走行レール142,154上を同時に移動できるようにスパイキ用シリンダ143の側面と昇降シリンダ150の側面との間をコ字状フレーム146によって連設している。
【0182】
(4)ストランド引張り機構160は、撚りストランドA〜F間にスパイキ145で形成した一束のストランド1〜6を挿入してワイヤロープ11の本線反対側から引出した場合、その先端部を機械的に引っ張るように構成している。
【0183】
そのために、ストランド引張り機構160は、ストランド先端部を把持するためのクランプ装置170と、クランプ装置170に先端を連結したワイヤ163と、ワイヤ163を張り巡らせるために全体フレーム102の所定位置に設けた多数のワイヤ係合コマ体161と、ワイヤ163の基端を連結したウインチ部162とより構成している。
【0184】
従って、ウインチ部162をワイヤ巻取り作動させると、引張りワイヤ163を介してクランプ装置170は、一束のストランド1〜6の先端部を所定方向、すなわち、ワイヤロープ11の本線11a内を挿通した一束のストランド1〜6の締め付け方向に引張ることができる。
【0185】
クランプ装置170は、図30及び図31に示すように、機枠171に設けたワイヤ受け体172と、ワイヤ受け体172の上方に配設した押え体173と、押え体173の上端を折曲げ部174において枢支したL型レバー175と、L型レバー175の基端を機枠171に枢支した枢支部176と、L型レバー175の先端に枢支したアーム177とより構成しており、クランプ装置170は引張りワイヤ163を介して束ストランド1〜6の締付け方向に引張れるように構成している。なお、167は、アーム177のガイド部材を示す。すなわち、アーム177をウインチ部162に連動連結した引張りワイヤ先端と連結し、ワイヤ受け体172と押え体173の間にストランド先端部を介在させて挾持しておき、ウインチ部162により引張りワイヤ163を引張っていくと、クランプ装置170のL型レバー175が枢支部176を中心に回動仕勢されて押え体173をワイヤ受け体172に圧接していき束ストランド先端部を把持しながら、クランプ装置170は先端部を把持した束ストランドの撚りの締付け方向に引張っていく。
【0186】
このようにして、ウインチ部162の作動操作によってワイヤロープ11の本線11aに形成した間隙Sに挿通した束ストランド1〜6は先端方向に強く引張られ撚りの締め付けを行う。
【0187】
上記したループ部固定回転機構110とワイヤロープ固定機構130とスパイキ昇降機構140と、ストランド引張り機構160とは、略方形状に枠構成した全体フレーム102の所定個所に設けられている。
【0188】
全体フレーム102には、上記した各機構以外にループ部12を形成すべく折り曲げたワイヤロープ11の先端を各束ストランド1〜6の束毎にばらばらにした際の各束を一時固定しておくストランド仮止め機構180を設けており、該ストランド仮止め機構180はループ部固定回転機構110の横側方に下底面に山型の切欠部181を有するマグネット金属片を載置し、磁力によって、ループ部固定回転機構110の横側方に配設した金属板に固着自在としている。
【0189】
なお、ストランド引張り機構160は、クランプ部材131におけるL型レバー175先端に枢支連結したアーム177の基端を上記の構成以外にシリンダの伸縮ロッド先端に枢支連結して、ウインチ部162と引張りワイヤ163とのかわりとすることもできる。
【0190】
以下、ワイヤロープの玉掛索製造装置を用いて玉掛索を製造する手順を説明する。
【0191】
まず、ワイヤロープに玉掛索を形成すべくワイヤロープ11の先端部分を略U字状に曲げてループ部固定回転機構110の台座112上に載置する。
【0192】
そして、左右の挟持部材113,113によって挟持しながら作動シリンダ114により左右の挟持部材113,113を近接方向に摺動させる。
【0193】
この状態でループ部12となる略U字状の折返し部分は、台座112に固定される。
【0194】
次いで、ワイヤロープ11の本線11a部分をワイヤロープ固定機構130を介して全体フレーム102に固定する。
【0195】
従って、ワイヤロープ11はループ部12となるべき先端部分とその下手側の本線11a側とが全体フレーム102に固定されたことになる。
【0196】
かかる状態で、或いはワイヤロープ11を台座112上に固定する前に予め、ワイヤロープ11の先端部分を構成するストランドの撚りを解舒する。
【0197】
すなわち、6組の束ストランド1〜6とその中心にある心綱7とをばらばらにしておく。
【0198】
次いで、スパイキ昇降機構140によってワイヤロープ11のループ部基端部となるべき位置にスパイキ145を差し込む。必要に応じて、スパイキ145を差し込む前に予めワイヤロープ固定機構130の回転によりワイヤロープ11の本線11aを撚りと反対方向に回転させて、撚りを緩めておく場合がある。
【0199】
すなわち、スパイキ昇降機構140のスパイキ用シリンダ143に垂設したスパイキ145を該スパイキ用シリンダ143の降下作動によってワイヤロープ11の本線11aに差し込む。そして、スパイキ145は、撚りストランドA〜Fの隣接間に差し込まれる。
【0200】
このように、ワイヤロープ11の本線11a側の撚りストランドA〜F間にスパイキ145を串刺し状態とする。
【0201】
次いで、かかるスパイキ145の串刺し状態においてループ部固定回転機構110によって台座112を回転させる。
【0202】
台座112を各撚りストランドA〜Fの撚りを戻す方向に回転させると、針部材のスパイキ145の先端側が貫通した部分では、貫通したスパイキ145を中心として撚りを戻す側に位置するループ部基端の撚りストランドA〜Fは回転移動するが、撚りを戻す側の反対側に位置する撚りストランドA〜Fは貫通したスパイキ145の先端側によってその回転が阻止される。このため、撚りを戻す側に回転移動する撚りストランドA〜Fと貫通したスパイキ145との間で間隙Sが徐々に広がり始め、貫通したスパイキ145の周辺に束ストランド1を挿入できる広さの間隙Sが形成される。
【0203】
スパイキ145が貫通した周辺に撚りストランドC〜D間に十分な間隙Sが確保されると、台座112の回転を停止させる。
【0204】
作業員は束ストランド1をスパイキ145が貫通した周辺に形成されたストランドC,D間の間隙Sに差し込んで通す(図33参照)。間隙Sは十分な広さであるので、差し込み時にストランド同士が接触して傷つくのが防がれる。間隙Sに差し込んで通した後にストランド1の先端側を、ループ部固定回転機構110の片側に設けられているストランド引張り機構160の先端側に挟んで固定する。
【0205】
ウインチ部162の駆動により、束ストランド1の先端側を把持したクランプ装置170は引張られて移動し、これにより、撚りストランドC,D間の間隙Sに差し込まれて貫通した束ストランド1はストランド引張り機構160の作動により引張り締め上げられる。従来のように作業員が引張り締め上げた場合に比べて、ストランド引張り機構160による引張り締め上げ力は一定であるので、品質が一定となる。
【0206】
また、ストランド引張り機構160の作動に合わせて、モータ118を逆向きに回転させて、台座112を先ほどと逆向きに回転させる。
【0207】
撚りストランドA〜Fは撚り方向に回転するので、広げられていた間隙Sは閉じられる。
【0208】
また、先端側がワイヤロープを貫通していたスパイキ145は、撚りストランドA〜Fが撚り方向に回転することにより、螺旋状に撚られた撚りストランドA〜F間に沿ってワイヤロープのループ部基端側方向に移動して、束ストランド1が差し込まれた箇所から離れた場所に移動する(図34参照)。
【0209】
このように、ストランド1が撚り方向に回転し、また貫通していたスパイキ145が移動することにより、ストランド1が差し込まれた部分は締め戻される。
【0210】
ワイヤロープの撚りと逆方向に束ストランド1〜6を差し込むかご差しにあっては、貫通していたスパイキ145は撚りストランドA〜Fから一旦引き抜かれた後、再び、撚りストランドA〜F間に差し込まれて、以下同様な作業が繰り返される。
【0211】
また、別の差し方にあっては、貫通していたスパイキの周辺に再び、間隙をあけて束ストランド1を差し込んでこれをストランド引張り機構160で引張り締め上げながら、撚りストランドA〜Fを撚り方向に回転させて撚りを戻すようにして、これを数回繰り返す。このようにして、端部側に輪状のループ部12が形成されたトゲのないワイヤロープの玉掛索(図35参照)が製造されることになる。
【0212】
しかも、かかる作業の途中で6組の束ストランド1〜6の先端は、人手により内層線1a〜6aと外層線1b〜6bとに分別し、内層線1a〜6aの先端を切断し、ワイヤロープ11の芯部空隙11b中に押し込み、また、外層線1b〜6bの細束ストランドも撚りストランドA〜F間に差し込まれた後に先端が切断されて芯部空隙11b中に押し込まれる。かかる作業においては、前述したスパイキ145をワイヤロープ11の撚りストランドA〜F間に差し込む作業はスパイキ昇降機構140により行うと共に撚りストランドA〜F間の間隙を押し拡げる作業はループ部固定回転機構110により行う。また、切断先端を芯部空隙11b中に押込む作業は、スパイキ昇降機構140とループ部固定回転機構110により行う。すなわち、スパイキ昇降機構140でワイヤロープ11の撚りストランドA〜F間にスパイキ145を差し込み、ループ部固定回転機構110の回転によりスパイキ差し込み部分を拡開して、その拡開部分より切断先端のトゲを人手により芯部空隙11b中に押し込むものである。
【0213】
なお、本ワイヤロープの玉掛索製造装置は、金属以外の合繊ロープの玉掛索製造にも応用することができる。この場合はスパイキの形状を変更して使用するようにしている。
【符号の説明】
【0214】
A〜F 撚りストランド
1〜6 束ストランド
1a〜6a 内層線の細束ストランド
1b〜6b 外層線の細束ストランド
1c〜6c 第1細線の細束ストランド
1d〜6d 第2細線の細束ストランド
7 心綱
11 ワイヤロープ
101 ワイヤロープ玉掛索製造装置
110 ループ部固定回転機構
112 台座
113 挟持部材
114 作動シリンダ
115 連結部材
116 回転軸
117 連動機構
118 モータ
119 突部材
120 ピストンロッド
121 ブラケット
130 ワイヤロープ固定機構
131 クランプ部材
132 クランプ用シリンダ
133 受台
135 ピストンロッド
140 スパイキ昇降機構
141 台板
142,154 走行レール
143 スパイキ用シリンダ
144 ピストンロッド
145 スパイキ
147 スパイキ受体
149 ストランド保持体
150 昇降シリンダ
151 ロッド
153 基板
160 ストランド引張り機構
161 ワイヤ係合コマ体
162 ウインチ部
163 ワイヤ
170 クランプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、
束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、
巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、
かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を内層線と外層線とに分別して12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、
細束ストランド形成工程終了後に、内層線よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する内層線切断工程と、
内層線切断工程終了後に、切断した内層線である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む内層線先端押込み工程と、
内層線先端押込み工程終了後に、外層線よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、
細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した外層線たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する外層線切断工程と、
外層線切断工程終了後に、切断した外層線たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む外層線先端押込み工程とよりなる
ことを特徴とするトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法。
【請求項2】
予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、
束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、
巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、
かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を内層線と外層線とに分別して12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、
細束ストランド形成工程終了後に、外層線よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する外層線切断工程と、
外層線切断工程終了後に、切断した外層線である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む外層線先端押込み工程と、
外層線先端押込み工程終了後に、内層線よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、
細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した内層線たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する内層線切断工程と、
内層線切断工程終了後に、切断した内層線たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む内層線先端押込み工程とよりなる
ことを特徴とするトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法。
【請求項3】
予め折り曲げられたワイヤロープ本体の自由端をストランド毎にばらばらに解舒してワイヤロープ先端部分に6組の束ストランドに形成する束ストランド形成工程と、
束ストランド形成工程終了後に、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において、撚られた各ストランドの間に6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と同じ方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う巻差し工程と、
巻差し工程終了後に、撚られた各ストランドの間に差し込んだ前記6組の束ストランドをそれぞれ別々にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を行うかご差し工程と、
かご差し工程終了後に、突出した6組の各束ストランドの先端を更に2組の束に分割し、第1細束と第2細束とし、合計で12組の細束ストランドを形成する細束ストランド形成工程と、
細束ストランド形成工程終了後に、第1細束よりなる6組の細束ストランドの突出先端を切断する第1細束切断工程と、
第1細束切断工程終了後に、切断した第1細束である6組の細束ストランドの先端をワイヤロープの撚り束ストランドの中心に形成された芯部空隙中心に押込む第1細束先端押込み工程と、
第1細束先端押込み工程終了後に、第2細束よりなる6組の細束ストランドをワイヤロープの撚られた各ストランドの間にワイヤロープの撚り方向と逆の方向に差し込んでワイヤロープ周面から突出させる編み込み作業を複数回行う細束ストランドかご差し工程と、
細束ストランドかご差し工程終了後に、突出した第2細束たる6組の各細束ストランドの突出先端を切断する第2細束切断工程と、
第2細束切断工程終了後に、切断した第2細束たる6組の細束ストランドの先端を、ワイヤロープの撚りストランドの中心の芯部空隙中に押込む第2細束先端押込み工程とよりなる
ことを特徴とするトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法。
【請求項4】
予め自由端側を複数の束ストランドに解舒し、ループ状に折り曲げたワイヤロープのループ部を固定すると共に、固定したループ部を該ワイヤロープの伸延方向を軸として正逆回転するループ部固定回転機構と、
ワイヤロープのループ部から伸延するワイヤロープ下手部分を固定するワイヤロープ固定機構と、
ループ部固定回転機構によってワイヤロープのループ部基端となるべき部分にスパイキを差し込み可能としたスパイキ昇降機構と、
スパイキ昇降機構によりスパイキを差し込むことによって形成された撚りストランドの間隙に人手によって挿入した一束のストランドの自由端を把持して引っ張るストランド引張り機構と、
を備えたことを特徴とするワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項5】
ループ部固定回転機構は、台座の左右両側に作動シリンダによって近接離反自在に構成した挟持部材を配設すると共に、台座をモータに連動連設した連動機構を介して正逆回転自在に構成した
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項6】
ワイヤロープ固定機構は、受台とクランプシリンダーで作動する挟圧体とで構成した
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項7】
スパイキ昇降機構は、前後に走行自在の台板にスパイキ用シリンダを配設しその下端にスパイキを昇降自在に垂設し、その下方にはスパイキ受体を昇降自在に配設して構成した
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項8】
ストランド引張り機構は、ワイヤロープの本体に挿通したストランド束の先端部を把持するクランプ装置と、クランプ部をストランドの撚りの締付け方向に引っ張る引張り装置とにより構成した
ことを特徴とする請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項9】
ばらばらに解除された複数の束ストランドを一時的に係止するための複数の係止機構を設けた
ことを特徴とする請求項4及び請求項5に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置。
【請求項10】
請求項4に記載のワイヤロープの玉掛索製造装置を用いながら、ワイヤロープ固定機構によりワイヤロープの下手部分を固定すると共に、予め折り曲げられたワイヤロープ本体のループ部固定回転機構により固定し、ワイヤロープ本体の自由端を手作業によりストランド毎にばらばらに解舒し、次いで、ワイヤロープのループ部基端とすべき位置において撚られた各ストランドの間にスパイキ昇降機構によりスパイキを差し込みループ部固定回転機構によりワイヤロープを回転することによりスパイキで形成した隙間をこじ開けてその撚りストランド間の間隙にワイヤロープの撚り方向と同じ方向で一束目のストランドの先端を手動で差し込んで間隙からワイヤロープ周面に突出し、ストランド引張り機構により束ストランドの突出端部を引張り、他の各束ストランドの自由端も同様に異なるストランドの隙間を挿通して引っ張っていき、最終的には、ばらばらに解舒した各束ストランドの自由端をすべて各ストランドの異なる隙間に挿通し、かかる作業を数回繰返し、次いで、ワイヤロープの撚り方向と逆の方向に上記と同じ作業を行い、次いで、突出した各束ストランド先端を更に2組の細束に分岐し、その1組目の細束ストランドはワイヤロープ表面から所望の長さで切断すると共に、すでに切断した1組目の細束ストランドの先端の切断部分をワイヤロープ中心部に内包した心綱の一部を抜いて形成した芯部空隙中に挿入格納し、次いで、切断しない他の組の細束ストランドはワイヤロープの撚り方向と逆の方向となるようにそれぞれ異なるストランドの間隙に挿通し、かかる作業を数回繰返し、かかる数回の切断しない細束ストランドの挿通作業が完了した後は、最終的に切断していない細束ストランドの自由端を切断し、スパイキで形成したストランドの間隙から、切断部分をワイヤロープ中心部に内包した心綱の一部を抜いて形成した芯部空隙中に挿入格納し、ワイヤロープ周面から突出しない状態とした
ことを特徴とする請求項4に記載の装置を用いたトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか1項に記載のトゲのないワイヤロープの玉掛索製造方法により製造したトゲのないワイヤロープの玉掛索。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2010−189827(P2010−189827A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155775(P2009−155775)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390022035)株式会社勝山ロープ (4)
【Fターム(参考)】